説明

内臓脂肪蓄積抑制組成物

【課題】 脂肪は、蛋白質、糖質とともに重要な栄養素で、特にエネルギー源として有用であるとともに高カロリー(9Kcal/g)であり、肥満を助長し生活習慣病等の問題を引き起こす原因となる。近年、特に健康の維持増進、疾病の予防治療に対する関心が高まり、脂肪と肥満や生活習慣病との関連についての研究が数多く行われている。本発明は、内臓脂肪蓄積抑制作用に優れ、かつ普段の食生活の中で毎日無理なく安心して継続摂取でき、健康維持のために有用な内臓脂肪蓄積抑制組成物を提供する事を目的とする。
【解決手段】 アムラの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有する事により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康維持のために有用な内臓脂肪蓄積抑制作用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪は、蛋白質、糖質とともに重要な栄養素で、特にエネルギー源として有用であるとともに高カロリー(9Kcal/g)であり、肥満を助長し生活習慣病等の問題を引き起こす原因となる。脂肪を多く使用した食事はおいしく、しかも現代人はこのような食事に慣れてしまっている為、飽食状態にある先進諸国においては、医療費の増大とあいまって、国家的な問題となっている。このような背景から、近年、特に健康の維持増進、疾病の予防治療に対する関心が高まり、脂肪と肥満や生活習慣病との関連についての研究が数多く行われている。
【0003】
肥満は、摂取エネルギー量が消費エネルギー量を上回る事により誘導される。油脂代替物、非吸収性油脂を用いて、脂肪の吸収量を抑制する事、即ち、摂取エネルギー量を抑制する以外に、第三成分を添加する事により生体が本来有する脂肪の代謝を促進して肥満を防止しようとするものもある。例えば前者においては油脂代替物、非吸収性油脂を用いて脂肪の吸収量を抑制する方法が試みられている(例えば特許文献1参照)が、肛門漏洩や脂溶性及び脂溶性ビタミンの吸収阻害等安全性に関しての問題が懸念されている。後者においては、烏龍茶ポリフェノールやカプサイシン、ガルシニアに含まれるヒドロキシクエン酸等が知られている。烏龍茶ポリフェノールは、高脂肪食ラットに与えた場合、脂肪排泄量が増加し、併せて、脂肪分解酵素リパーゼの活性化を起こし、カプサイシンは、脳に働きかけ、副腎からのアドレナリンの分泌を促進し、また、ヒドロキシクエン酸は脂肪の合成を阻害すると言われている。カプサイシンやカフェインによる植物由来の成分が脂肪の代謝を促進し、脂肪の分解を促す効果が示唆されている(例えば非特許文献1、2参照)。
【0004】
生活習慣病は、食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群といわれている。高脂肪食や運動不足等の生活習慣の欧風化に伴い、糖尿病、高血圧症、高脂質血症(脂質代謝異常)といった生活習慣病の増加が大きな社会問題のひとつとなっている。
【0005】
生活習慣と関連する疾患として、食習慣との関連では糖尿病(成人型)、肥満、高脂血症、高尿酸血症、循環器病、大腸がん、歯周病等の疾患が、運動習慣との関連では糖尿病(成人型)、肥満、高脂血症、高血圧等の疾患が、喫煙との関連では肺肩平上皮がん、慢性気管支炎、肺気腫、狭心症や心筋梗塞等の心臓病を含む循環器病、歯周病等の疾患が、さらに飲酒習慣との関連ではアルコール性肝疾患等肝臓疾患が指摘されている。
【0006】
肥満、糖尿病、高血圧症、脂質代謝異常、心筋梗塞等の動脈硬化促進に対して幾つかの危険因子が集まっている事から、臨床分野ではこれらを1つの症候群(Multiple risk factor syndorome)として捉えようとする動きがあり、この動きにならって1998年にはWHO(世界保健機構)により当該症候群を代謝異常症候群(メタボリック・シンドローム:Metabolic Syndrome)として名付ける事が提唱された。WHOの提唱では、2型糖尿病あるいは耐糖能異常(インスリン抵抗性)を有する患者がさらに、肥満、特に内臓肥満(腹部)、脂質代謝異常、高血圧、微量アルブミン尿のうち、2つ以上の危険因子を併せ持つ場合に代謝異常症候群と称する事が決められている。
【0007】
メタボリックシンドロームの構成要素は、発症基盤となる「背景因子」と、その結果として生じる動脈硬化促進性の代謝異常症、すなわち「血管障害因子」とに大別する事かできる。背景因子には、運動不足、過栄養、遺伝素因、加齢と肥満、特に内臓脂肪蓄積が含まれる。
【0008】
メタボリックシンドローム治療の基本戦略は、その病態をもたらす背景因子を解消する事にある。遺伝素因や加齢に対する介入は現在行う事かできないため、治療の主眼は運動不足や過度の栄養摂取を是正する事による内臓脂肪蓄積を抑制する事にある。
【0009】
欧米では1日のカロリー摂取を500〜1,000kcal低下させ、0.5〜1kgの体重減少を目安に、1年程度の期間に7〜10%の体重減少を達成する事を推奨している。これに対して日本人の場合には、欧米人に比べて肥満の程度が顕著でない症例も多く、体重あるいはBMI(body mass lndex)に加え、ウエスト周囲径の減少(つまり内臓脂肪の減量)に着目した生活指導が奏功する場合がある。運動については、中程度の強度で毎日20〜30分ずつ規則的に継続する事により、メタボリックシンドロームのすべてのリスクファクターを改善させ得る事が報告されている。
【0010】
しかしながら、日常生活の中に適度な運動を取り入れる事は難しい現代社会であるので、食事による内臓脂肪の減量が重要視されている。
【0011】
【特許文献1】米国特許第3600186号
【非特許文献1】吉田ら、J.Nutr.Sci.Vitaminol 1988 Dec.;34(6)587−594
【非特許文献2】吉岡ら、J.Nutr.Sci.Vitaminol 1990 Apr.;36(2)173−178
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、内臓脂肪蓄積抑制作用に優れ、かつ普段の食生活の中で毎日無理なく安心して継続摂取でき、健康維持のために有用な内臓脂肪蓄積抑制組成物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、アムラの果実、果汁又はそれらの抽出物に内臓脂肪蓄積を抑制する効果がある事を見出した。
【0014】
本発明は、アムラの果実、果汁又はそれらの抽出物からなる内臓脂肪蓄積抑制組成物を提供するものである。また、本発明はアムラの果実、果汁又はそれらの抽出物からなる内臓脂肪蓄積低減飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明における内臓脂肪蓄積抑制組成物とはアムラの果実、果汁又はそれらの抽出物であり、その抽出物に起因する内臓脂肪蓄積抑制効果を有し、メタボリックシンドロームを改善させる事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明における内臓脂肪蓄積抑制効果とは、脂肪組織の分化抑制、トリグリセリドの蓄積抑制等により、脂肪の蓄積を抑制する効果の事である。本発明では特に下腹部脂肪、内臓脂肪、腎周囲脂肪の蓄積抑制に効果がある。
【0017】
本発明の内臓脂肪蓄積抑制組成物に用いる「アムラ」とは、エンビリカ・オフィシナル(Emblica officinale)、又は、フィランサス・エンブリカ(Phyllanthus embilica)という学名をもつ植物である。アムラは、トウダイグサ科コミカンソウ属に属する落葉の亜高木であり、インドからマレーシア地域及び中国南部にかけて分布しており、インドが原産地と考えられている。また、アムラは、各地方又は言語により各々固有の名称を有しており、例えば、余柑子、油甘、奄摩勒、エンブリック・ミロバラン、アーマラキー、マラッカノキ、マラッカツリー、インディアングーズベリー、アロンラ、アミラ、アミラキ、アミラキャトラ、ネリカイ、ネルリ、タシャ、カユラカ、ケムラカ、ナックホンポン等とも称されている。
【0018】
インドの伝承医学「アユルヴェーダ」において、アムラは、あらゆる病気の予防薬、治療薬として最もよいとされる3つの果実のうちのひとつに挙げられている。しかしながら、アムラが内臓脂肪蓄積抑制効果を有するという事実に関する具体的な報告はこれまでになく、本願発明者が鋭意研究の末に今回新規に知見したものである。
【0019】
内臓脂肪蓄積抑制組成物に使用されるアムラの部位としては果実、果汁又はそれらの抽出物が好ましい。アムラ果実の形態は、特に限定するものではなく、未熟果実、完熟果実、乾燥果実等のいずれでもよい。果汁の形態は、特に限定するものではなく、液状、粉末状のいずれでもよい。果汁を用いるメリットは、水不溶性成分の含有量が少ないのでそのまま使用でき、当該成分を除去する工程の省略が可能な点である。抽出物の形態は、特に限定するものではなく、液状、粉末状のいずれでもよい。抽出物を用いるメリットとして、特定の成分を濃縮した抽出物を作る事が可能な点である。
【0020】
生果実を使用する場合には、あらかじめ種子を除去した後、必要に応じて水を添加したうえで、抽出を行う。なお、抽出効率を高めるために、ミキサー等により破砕、均質化したものを抽出原料として使用する事が好ましい。乾燥果実を使用する場合についても基本的には同様の事がいえるが、抽出効率を高めるために、40メッシュ以下の粒度になるように粉砕しておく事が好ましい。なお、果汁も抽出原料として好適に使用される。
【0021】
抽出に使用する溶媒や温度条件等については、特に限定されるものではなく、任意に選択、設定する事ができる。抽出溶媒としては、水、アルカリ、酸等といった非有機溶媒や、親水性溶媒、アセトン等といった有機溶媒を選択する事ができる。親水性溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びブチルアルコールからなる低級アルコール群から選択される1種類以上が、操作性、抽出効率の点から好ましい。ただし、有機溶媒による抽出よりもむしろ非有機溶媒による抽出が好ましく、なかでも水、アルカリ及び酸のいずれかを選択する事がよい。
【0022】
酸又はアルカリを抽出溶媒に使用する場合、抽出物を中和させる事が好ましい。中和反応によって生成された塩は、透析法やゲル濾過等、公知の方法により、取り除く事ができる。ただし、水を抽出溶媒として用いた場合には、上記のような中和反応は必要なく、生成された塩を取り除く必要もない。よって、工数減及び低コスト化の観点から、水を用いる事が最も好ましい。
【0023】
このとき使用する酸としては、特に限定するものではなく、大部分の酸を使う事ができる。ただし、入手のしやすさ及び操作性の観点から、塩酸又は硫酸の使用、あるいは塩酸及び硫酸の併用が好ましい。
【0024】
また、アルカリとしては、特に限定するものではなく、大部分のアルカリを使う事ができる。ただし、入手のしやすさ及び操作性の観点から、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの使用、あるいは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの併用が好ましい。
【0025】
抽出に使用される酸又はアルカリの濃度は、抽出物を酵素処理する前であっても後であっても特に限定するものではない。酸又はアルカリの強さによって変化するが、操作性及び抽出効率の観点から、0.01モル濃度〜0.5モル濃度の酸又はアルカリを使用する事が好ましい。
【0026】
上記の抽出においては酵素処理を併用する事が好ましく、この処理によれば収率や風味を改善する事ができ、また内臓脂肪蓄積抑制効果の高い成分を得る事ができる。なお、酵素処理は抽出前に行ってもよく、抽出時に行ってもよい。酵素処理をするときのpHは、使用する酵素の至適pH及びpH安定性を指標にして、適宜設定する事ができる。また、酵素処理をするときの温度に関しても、使用する酵素の至適温度及び温度安定性を指標にして、適宜設定する事ができる。
【0027】
本発明の酵素処理に用いる酵素は、特に限定されるべきではないが、食品工業分野でよく用いられる加水分解酵素である事が好ましい。この種の酵素は使用実績があり、安全性等の観点からも好ましいからである。上記酵素の具体例としては、例えば、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、タンナーゼ、デキストラナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、トリプシン、パパイン等の加水分解酵素が挙げられる。これらのなかでも好ましくは、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、タンナーゼ、セルラーゼから選択される1種類を使用する、又は2種類以上を組み合わせて使用する事である。これによれば抽出効率をさらに向上させる事が可能となる。なお、酵素処理は、アムラ果実やアムラ果汁に対して行ってもよい。
【0028】
本発明に用いたペクチナーゼとは、特に限定されるものではないが、酵素番号(EC Number)がEC 3.2.1.15のペクチニン酸、ペクチン及びペクチン酸等のα1→4ガラクツロニル結合を水分解する酵素を指し、カビ、細菌、酵母、高等植物及びカタツムリ及び遺伝子組換え技術により生産されたもの等を用いる事ができ、その由来は限定されないが、商業的な利用の観点から、好ましくはカビ及び酵母由来である。例えば、カビとしては、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス プルベルレンタス(Aspergillus pulverulentus)、アスペルギルス ジャポニクス(Aspergillus japonicus)、酵母としては、トリコデルマ ビィリデ(Trichoderma viride)由来のものを用いる事ができる。
【0029】
さらに、上記の抽出において、抽出残渣に対して再度抽出工程を1回又はそれ以上繰り返す事が好ましく、この方法によれば抽出効率を向上させる事ができる。この場合の抽出に用いる溶媒は、同じものであっても異なるものであってもよい。
【0030】
上記の抽出物は、そのままでも使用できるが、濾過、遠心分離及び分留といった処理を行って、不溶性物質及び溶媒を取り除く事がより好ましい。このような処理を行う事で、内臓脂肪蓄積抑制効果が高くなり、応用範囲も広くなる。
【0031】
不溶性物質及び溶媒を取り除いた後、果汁又は抽出液をそのまま又は濃縮した後に有機溶媒を用いて分配を行い、それぞれの溶媒可溶画分を得る。これら溶媒可溶画分は、さらに内臓脂肪蓄積抑制効果が高くなるので好ましい。有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、メチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、アセトン、クロロホルム等が使用できる。また、可溶画分の純度を上げるためには、他の疎水性溶媒による分配を組み合わせる事もできるが、この場合にはエチルアルコールの使用が好ましい。これら溶媒の濃度としては、特に限定するものではないが、収率及び効果の観点から、終濃度として20%〜80%(v/v)が好ましく、20%〜60%(v/v)がさらに好ましい。
【0032】
さらに純度を高めるために、例えば、フェノール系、スチレン系、アクリル酸系、エポキシアミン系、ピリジン系、メタクリル系等を母体とする疎水性樹脂を用いたクロマトグラフィーやカラムによる精製を行ってもよい。その場合、樹脂吸着後の溶離液としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール及びアセトンを、単独又は水溶液として使用できる。
【0033】
抽出物及び画分はそのままで使用する事も可能であるが、必要に応じて噴霧乾燥や凍結乾燥等の手段により乾燥粉末化させて使用する事も可能である。
【0034】
本発明の内臓脂肪蓄積抑制組成物は、飲食品、飼料、医薬部外品、医薬品等に幅広く応用できるが、特に人が手軽に摂食できる飲食品に応用する事が好ましい。
【0035】
本発明において、内臓脂肪蓄積抑制組成物又はそれを含有する飲食品等に加工する際に、各種栄養成分を強化する事ができる。
【0036】
強化できる栄養成分としては、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン(ニコチン酸)、パントテン酸、葉酸等のビタミン類、リジン、スレオニン、トリプトファン等の必須アミノ酸類や、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅等のミネラル類、及び、例えば、α−リノレン酸、EPA、DHA、月見草油、オクタコサノール、カゼインホスホペプチド(CPP)、カゼインカルシウムペプチド(CCP)、水溶性食物繊維、水不溶性食物繊維、オリゴ糖等の人の健康に寄与する物質類、その他の食品や食品添加物として認可されている有用物質の1種又は2種以上が使用できる。
【0037】
本発明における飲食品とは、溶液、懸濁物、粉末、固体成形物等、経口摂取可能な形態であればよく、特に限定するものではない。飲食物の具体例としては、例えば、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品等の即席食品類、清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、栄養飲料、アルコール飲料等の飲料類、パン、パスタ、麺、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品、飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、デザート菓子等の菓子類、ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素等の調味料、加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズ等の油脂類、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、アイスクリーム類、クリーム類等の乳製品、冷凍食品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品等の水産加工品、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品、農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアル等の農産加工品、栄養食品、錠剤、カプセル等を挙げる事ができる。
【0038】
本発明の内臓脂肪蓄積抑制効果を出すための成人1日当たりの投与量は、内臓脂肪蓄積抑制組成物として50〜3000mg、好ましくは100〜1500mg、さらに好ましくは200〜1000mgである。上記飲食物は、病気の状態や食品等の形態によって、1日1ないし数回にわけて摂取する事ができる。
【0039】
飲料中の内臓脂肪蓄積抑制組成物の含有量は0.05〜10.0重量%、好ましくは0.1〜7.5重量%、更に0.15〜5.0重量%が好ましい。また、1.0重量%以上であるとアムラの多量の摂取が容易でありながら、飲用時に効果感を持った味となり好ましい。
【0040】
飲料のpHは、25℃で3〜7、好ましくは3〜6、特に好ましくは3〜5とするのが、味及び化学的安定性の点で好ましい。
【0041】
これら内臓脂肪蓄積抑制組成物は、果汁・果実飲料、紅茶飲料、野菜飲料等の他の飲料と組み合わせる事で、幅広い範囲のアムラ飲料を提供する事が可能である。例えばソフトドリンクである炭酸飲料、果実エキス入り飲料、野菜エキス入りジュースや、ニアウオーター、スポーツ飲料、ダイエット飲料等に適宜添加する事もできる。
【0042】
また甘味料を使用する場合については低カロリーの人口甘味料を使用するほうが好ましい。
【0043】
飲料には、内臓脂肪蓄積抑制組成物に併せて、処方上添加して良い成分として、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤を単独、又は併用して配合しても良い。
【0044】
飲料を容器詰飲料にする場合、使用される容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の形態で提供する事ができる。ここでいう容器詰飲料とは希釈せずに飲用できるものをいう。
【0045】
また、容器詰飲料は、例えば、金属缶のように容器内を完全に液で満たすか、脱気、窒素置換又はその両方を行って後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で製造される。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器等で高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用される。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。更に、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻す事や、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻す等の操作も可能である。
【0046】
内臓脂肪蓄積を抑制するために必要な飲用期間として、4週を超える事が好ましい。
【0047】
本発明における飼料とは、ヒト以外の生物に摂食させるための食べ物の事をいい、その形態については特に限定されない。飼料を適用しうる生物としては特に限定されないが、例えば、養殖動物やペット動物等が挙げられる。養殖動物としては、例えば、ウマ、ウシ、ブラ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ラマ等の家畜や、マウス、ラット、モルモット、ウサギ等の実験動物や、ニワトリ、アヒル、七面鳥、ダチョウ等の家禽等がある。ペット動物としては、例えば、イヌ、ネコ等がある。
【0048】
本発明における医薬部外品及び医薬品とは、経口投与又は非経口投与に適した賦形剤、その他の添加剤を用い、常法に従って経口製剤又は注射剤として調製されたものをいう。好ましい医薬部外品及び医薬品の態様は経口製剤であり、最も好ましいのは経口固形製剤である。経口固形製剤は、容易に服用でき、かつ保存、持ち運びに便利だからである。
【0049】
経口固形製剤としては、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤等がある。本発明の経口固形製剤は、適宜の薬理学的に許容され得る坦体、賦形剤(例えばデンプン、乳糖、白糖、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等)、結合剤(例えばデンプン、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等)、滑沢剤(例えばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等)、崩壊剤(例えばカルボキシメチルセルロース、タルク等)、等を内臓脂肪蓄積抑制組成物と混合して固形化する事により得られる。
【0050】
また、経口液状製剤とは、製薬学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エチルアルコールを含むものをいう。本発明の経口液状製剤は、内臓脂肪蓄積抑制組成物及び希釈剤のほかに、湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤等をさらに含有していてもよい。
【0051】
非経口投与に適した注射剤は、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤等を含んでいる。水性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えば、注射用蒸留水及び生理食塩水がある。非水溶性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エチルアルコールのようなアルコール類、ポリソルベート80等がある。この注射剤は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えばラクトース)、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸)のような補助剤を含んでもよい。これらは、例えばバクテリア保管フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは、無菌の固体組成物を製造し、その使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解して、使用する事もできる。
【0052】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0053】
実施例1
アムラの内臓脂肪蓄積抑制作用
(1)使用動物:7週齢、体重167.7±0.76gのWister系雄ラット(日本クレア(株))
(2)飼育:室温23±2℃、湿度55±10%、照明8〜20時、飲料水は水道水を自由に与えた。
(3)飼料:100g中の各成分の含有量(g)
【0054】
【表1】

【0055】
(4)使用したアムラ抽出物:アムラ乾燥果実300gに、蒸溜水1L及びスミチームAP−2(新日本化学工業株式会社製、Aspergillus由来、12000U/mL)0.90gを入れ、60℃で4時間抽出した。その後、90℃で30分間酵素失活させた。その後、濾過し、濾液のBrixを測定し、アムラ抽出液の固形分と同等のパインデックスを加えた後スプレードライし、本発明の内臓脂肪蓄積抑制組成物200gを得た。
(5)投与方法:ラットを3群(5匹/群)に分け、上記組成の飼料を5週間自由摂取させ、飲料水は脱イオン水を自由に与えた。ラットをアムラ抽出物投与群と水道水投与群に分け、アムラ粉末を水道水に溶解させ、50mg/kgBWとして金属製の胃ゾンデを用いて無麻酔下で経口投与した。
(6)総脂肪組織の採取:飼育開始時から1ヶ月後に12時間絶食させたマウスをエーテル麻酔下で直ちに開腹し、総脂肪組織(下腹部脂肪組織、内臓脂肪組織、腎周囲脂肪組織)を採取し重量測定した。
(7)統計的検定法:得られた数値は平均値±標準偏差で示し、ANOVAで分散分析を行い、差が認められたものについてTukeyの多重比較有意差検定を行った。尚、p<0.05を有意とした。
【0056】
表2に測定結果を示した。
【0057】
体重変化
食餌摂取カロリーは図1に示すように高脂肪食群と高脂肪食+アムラ群において、有意差は認められなかった。図2に示すように高脂肪食+アムラ群は試験終了後の体重が通常食を与えたときより少なくなっており、アムラの抗肥満効果が認められた。
【0058】
【表2】

【0059】
表3に内臓脂肪重量の測定結果を示す。
【0060】
内臓脂肪重量
高脂肪食+アムラ群の内臓脂肪重量は図3に示すように高脂肪食群と比較して有意に低い値を示した。
【0061】
【表3】

【0062】
アムラ抽出物を摂取する事により、内臓脂肪蓄積抑制効果が認められた。
【0063】
実施例2
内臓脂肪蓄積抑制組成物含有食品(錠菓)の調製
実施例1で得られた内臓脂肪蓄積抑制組成物5g、乳糖30g、DHA含有粉末油脂(サンコートDY−5;太陽化学株式会社製)12g、ショ糖脂肪酸エステル4g、ヨーグルト香料4gを混合し、この混合物をロータリー式打錠機を用いて加圧成形して1錠が300mgの本発明の内臓脂肪蓄積抑制組成物含有飲食品(錠菓)を得た。また、これに対する比較例として、内臓脂肪蓄積抑制組成物のみを含有しない反面、乳糖等の他の成分を含有する飲食品(錠菓)を、同様の方法により得た。
【0064】
そして、これら2種の錠菓について、5名のパネラーによる官能検査を行った結果、色、匂い及び味のいずれにおいても両者に有意差が認められなかった。また、これら2種の錠菓を常温で長期間(1ヶ月間,3ヶ月間,6ヶ月間)保存したところ、両者とも色、匂い及び味について特に目立った変化は認められず、いずれも保存性に優れていた。
【0065】
実施例3
内臓脂肪蓄積抑制組成物含有飲料の調製
実施例1で得られた内臓脂肪蓄積抑制組成物5g、1/5濃縮グレープフルーツ透明果汁2.1g、エリスリトール30g、クエン酸結晶2.5g、クエン酸三ナトリウム0.5g、L−アスコルビン酸0.5g、乳酸カルシウム1.93g、CCP0.15g、グレープフルーツ香料1.0を水に混合溶解し、全量を1000mLとした。それを100mLの瓶に充填し、キャップで密栓した後、90℃、30分間加熱殺菌をして、本発明の内臓脂肪蓄積抑制組成物含有飲食品(飲料)を得た。また、これに対する比較例として、内臓脂肪蓄積抑制組成物のみを含有しない反面、他の成分を含有する飲食品(飲料)を、同様の方法により得た。
【0066】
そして、これら2種の飲料について、5名のパネラーによる官能検査を行った結果、色、匂い及び味のいずれにおいても両者に有意差が認められなかった。また、これら2種の飲料を冷蔵庫で長期間(1ヶ月間,3ヶ月間,6ヶ月間)保存したところ、両者とも色、匂い及び味について特に目立った変化は認められず、いずれも保存性に優れていた。
【0067】
実施例4
内臓脂肪蓄積抑制組成物含有飲料(野菜果汁混合飲料)の調製
実施例1で得られた内臓脂肪蓄積抑制組成物0.2g、グアーガム分解物(サンファイバーR;太陽化学株式会社製)3gを市販の野菜果汁混合飲料100mLに添加混合溶解して、本発明の内臓脂肪蓄積抑制組成物含有飲食品(野菜果汁混合飲料)を得た。また、これに対する比較例として、内臓脂肪蓄積抑制組成物を含有せず、グアーガム分解物を含有する飲食品(野菜果汁混合飲料)を、同様の方法により得た。
【0068】
そして、これら2種の野菜果汁混合飲料について、5名のパネラーによる官能検査を行った結果、色、匂い及び味のいずれにおいても両者に有意差が認められなかった。また、これら2種の飲料を冷蔵庫で1ヶ月間保存したところ、両者とも色、匂い及び味について特に目立った変化は認められず、いずれも保存性に優れていた。
【0069】
実施例5
内臓脂肪蓄積抑制組成物含有クッキーの調製
実施例1で得られた内臓脂肪蓄積抑制組成物4g、市販のケーキミックス粉200gを容器に入れた後、バター35gを入れ、木杓子で混ぜ合わせた。それに溶き卵25gを加えて、なめらかな生地になるまで良く練った。小麦粉を振った台の上に生地を取り出し、さらに小麦粉を振って麺棒で5mmの厚さに伸ばし、丸型で抜き、それを170℃のオーブンで10分間焼いて、1個約5gの本発明の内臓脂肪蓄積抑制組成物含有クッキーを得た。
【0070】
実施例6
内臓脂肪蓄積抑制組成物含有ヨーグルトの調製
実施例1で得られた内臓脂肪蓄積抑制組成物1g、市販の脱脂乳(明治乳業社製、蛋白質含量34%)95g、及び市販の無塩バター(雪印乳業社製)35gを温水0.8Lに溶解し、均質化し、全量を1Lに調整した。次いで、これを90℃で15分間加熱殺菌した後、冷却し、市販の乳酸菌スターター(ハンゼン社製)3g(ストレプトコッカス・サーモフィラス2g及びラクトバシラス・ブルガリクス1g)を接種した。さらに、これを均一に混合し、100mLの容器に分注・充填した後、密封して37℃で20時間発酵させた後、冷却する事で、本発明の内臓脂肪蓄積抑制組成物含有ヨーグルトを得た。
【0071】
実施例7
内臓脂肪蓄積抑制組成物含有経口流動食の調製
カゼインナトリウム(DMV社製)50g、卵白酵素分解物(太陽化学社製)42.5g、デキストリン(松谷化学社製)100gを水1Lに溶解させ、水相をタンク内に調製した。これとは別に、MCT(花王社製)45g、パーム油(不二製油社製)17.5g、サフラワー油(太陽油脂社製)35g、レシチン(太陽化学社製)0.7g、消泡剤(太陽化学社製)1gを混合溶解し、油相を調製した。タンク内の水相に油相を添加し、攪拌して混合した後、70℃に加温し、さらに、ホモゲナイザーにより14.7MPaの圧力で均質化した。次いで、90℃で10分間殺菌した後、濃縮し、噴霧乾燥して、中間製品粉末約260gを調製した。この中間製品粉末200gに、実施例1で得られた内臓脂肪蓄積抑制組成物,4g、デキストリン(松谷化学社製)156g、グアーガム分解物(サンファイバーR;太陽化学株式会社製)18g、少量のビタミン・ミネラル、及び粉末香料を添加し、均一に混合して、内臓脂肪蓄積抑制組成物を含有する経口流動食約380gを得た。
【0072】
実施例8
内臓脂肪蓄積抑制組成物含有錠剤の調製
実施例1で得られた内臓脂肪蓄積抑制組成物10g、結晶セルロース5g、トウモロコシデンプン13.8g、乳糖32.5g、ヒドロキシプロピルセルロース3.3gを混合し、顆粒化した。この顆粒化物にステアリン酸マグネシウム1.0gを加え、均一に混合し、この混合物をロータリー式打錠機で加圧成形する事により、一錠が130mgの本発明の内臓脂肪蓄積抑制組成物含有錠剤を得た。
【0073】
実施例9
内臓脂肪蓄積抑制組成物含有ドリンク剤の調製
実施例1で得られた内臓脂肪蓄積抑制組成物55gに、ブドウ糖528g、果糖85.4g、粉末クエン酸15.8g、クエン酸ナトリウム11.2g、乳酸カルシウム1.3g、塩化マグネシウム1.3g、粉末天然香料13.2g、ビタミンCを添加し、さらに水を加えて11リットルとした。この液体を乾熱滅菌済の110ml褐色瓶に充填して、アルミキャップで密封した後、120℃、30分間の滅菌を行い、ドリンク剤100本を得た。
【0074】
実施例10
内臓脂肪蓄積抑制組成物含有カプセル剤の調製
実施例1で得られた内臓脂肪蓄積抑制組成物50gに、銅クロロフィリン酸ナトリウム1gを加えて熱殺菌した後、それを日本薬局カプセル(#1)に1カプセルあたり0.4g充填し、カプセル剤100個を得た。
【0075】
実施例11
内臓脂肪蓄積抑制組成物含有豚繁殖用飼料の調製
実施例1で得られた内臓脂肪蓄積抑制組成物5重量部に対し、とうもろこし40.0重量部、マイロ28.0重量部、大豆油かす11.0重量部、ふすま6.0重量部、魚粉5.0重量部、動物性油脂2.0重量部、ビタミン・ミネラル類3.0重量部を配合して、豚繁殖用飼料1kgを調製した。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】試験例におけるラットの摂取カロリー比較を示すグラフである。
【図2】試験例におけるラットの体重比較を示すグラフである。
【図3】試験例におけるラットの内臓脂肪重量比較を示すグラフである。
【図4】試験例におけるラットの下腹部脂肪重量比較を示すグラフである。
【図5】試験例におけるラットの腎周囲脂肪重量比較を示すグラフである。
【図6】試験例におけるラットの総脂肪重量比較を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アムラの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有する事を特徴とする内臓脂肪蓄積抑制組成物

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−247871(P2008−247871A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94344(P2007−94344)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】