内蔵式超高感度画像センサ
【解決手段】本発明は、画像センサのための基本的な装置に関しており、装置は、第1の導電型のドープ領域から構成されたフォトダイオード(32)を備えており、フォトダイオード(32)は、第1の基準電圧(Vref1)でバイアスされる第2の導電型の半導体基板(30)の表面に形成されている。フォトダイオードは、電荷転送(36)増加(38,40,42)絶縁(44)デバイスと組み合わせられており、完全に空にされている。装置は、第1の導電型のドープ領域の表面に、第2の基準電圧(Vref2) でバイアスされる第2の導電型の過剰ドープ領域(34)を更に備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体型画像センサの分野、より具体的には低光照射下で微細な検出を可能にするセンサの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの一体型画像取込装置が知られている。このようなセンサの中で最新の構造は複数の基本的な検出デバイス、すなわち画素を備えており、各検出デバイスは、半導体基板に形成されたフォトダイオードを有しており、フォトダイオードは電荷転送素子と、転送された電荷を読み取るための読取回路とに関連付けられている。前記構造は、一般的に複数のフォトダイオードに関して1つの読取回路を使用することによりセンサ要素の数を最小限度に抑えることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0176213 号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像センサが光ビームを受けると、入射光子が半導体基板に入り込み、この半導体基板に電子/正孔対が形成される。その後、電子/正孔対の内の電子がフォトダイオードによって取り込まれ、関連付けられた読取回路に向かって電荷転送トランジスタによって転送される。
【0005】
米国特許出願公開第2007/0176213 号明細書は、上述された要素に加えて、各画素に関連付けられており、センサの感度を高めるために前記画素で光発生させた電子を増幅することが可能な素子を備えた構造について述べている。このような増幅、つまり電荷の増加を行うために、CCD (電荷結合素子)レジスタに関連付けられた技術を使用すること、つまり、交互にバイアスされる金属の絶縁ゲートの組立体を半導体基板の表面に形成することが知られている。このように絶縁ゲートに交互にバイアスすることにより、光発生電子をいわゆる電子なだれ効果によって増加させることを可能にする。
【0006】
図1は、電荷増加段を備えた画像センサの画素を図示しており、図2A乃至2Eは、検出の様々なステップにおけるこの画素の動作を図示する電圧曲線である。
【0007】
図1に図示された画素は、例えばアースである基準電圧でバイアスされるP型基板10の内部及び該P型基板10上に形成されている。P型基板10では、N型過剰ドープ領域(N+)から形成されたフォトダイオード12がP型基板10の表面に形成されている。フォトダイオード12は光ビーム13によって照射される。転送信号VTによって制御され絶縁された転送ゲート14が、フォトダイオード12の近くに設けられている。電子なだれ効果によって電荷の増加を可能にする複数の絶縁されたゲートが、転送ゲート14の隣に形成されている。図示された例では、4つのゲート16,18,20,22 が、制御信号Φ1,Φ2,Φ3,Φ4 によって夫々制御される。尚、図1の図示は非常に簡略化されており、特に実際の装置では、各画素の表面の大部分がフォトダイオードに割り当てられている。
【0008】
図2A乃至2Eは、画像取込みの様々なステップでの図1の面におけるP型基板10の電圧を図示している。これらの図面には、電子の蓄積、転送及び増加の1つのサイクルが図示されている。各図面に図示された電圧はP型基板10の電圧であり、以下「最大電位線」と呼ばれる線をたどる。この線は、P型基板10の深さ方向で、絶縁された複数のゲートの下とフォトダイオードとに最も高くバイアスするポイントを通って延びる。尚、絶縁された異なる複数のゲートに印加される電圧に応じて、最大バイアス線が、P型基板10における深さが可変なポイントを通って延びる。尚、以下の説明では、ゲート16は初期転送ステップでも機能するが「第1の増加ゲート」と呼ばれる。
【0009】
図2Aは、フォトダイオード12に電荷を蓄積する初期段階でのフォトダイオード12及びP型基板10の電圧曲線を示している。図1に示されたセンサへの光照射により、N型領域であるフォトダイオード12に電子が蓄積され、最初電圧V1と等しいN型領域12の電圧が減少して電圧V2に達する。電圧V2は、蓄積される電子の数、ひいては入射光子の数の関数である。蓄積段階中に、転送ゲート14に印加される転送電圧VTは零であり、このため、ポテンシャル壁が形成され、フォトダイオード12からの電子の放出が回避される。第1の増加ゲート16に関連付けられる電圧Φ1 は、好ましくは転送ステップの直前に次のステップを見越して電圧V1より大きい電圧V3である。
【0010】
図2Bのステップでは、電圧V1と略等しいか、又は電圧V1より僅かに大きい転送電圧VTが転送ゲート14に印加される一方、第1の増加ゲート16に印加される電圧Φ1 は、(電圧V1より大きい)電圧V3に等しく、第2の増加ゲート18に印加される電圧Φ2 は零である。従って、フォトダイオード12に蓄積された電荷は、第1の増加ゲート16の下のP型基板10に形成されたポテンシャル井戸に転送される。
【0011】
図2Cのステップでは、転送ゲート14の転送電圧VTが基準電圧に戻る一方、電圧Φ2 は、例えば零に等しいこの基準電圧のままであり、このため、第1の増加ゲート16の下のP型基板10の領域内の電子が阻止される。その後、新たな電荷蓄積段階がフォトダイオード12のレベルで開始され得る。
【0012】
図2Dに図示されたステップでは、第1の増加ゲート16に印加される電圧Φ1 は、低電圧V4まで減少する。従って、第1の増加ゲート16の下のP型基板10の電圧は低下する。このステップの間、転送ゲート14に印加される転送電圧VT及び第2の増加ゲート18に印加される電圧Φ2 は、零(基準電圧)である。好ましくは、次のステップの直前に、ゲート20に印加される電圧Φ3 は、次のステップを見越して電圧V4よりはるかに大きい電圧V5に設定される。
【0013】
図2Eに図示されたステップでは、第2の増加ゲート18に印加される電圧Φ2 は、電圧V4程度、又は電圧V4より僅かに大きい電圧に迅速に増加する。電圧Φ3 は(電圧V4よりはるかに大きい)電圧V5と等しく、電荷はゲート20の下のP型基板10の領域に転送される。(電圧V4と略等しい)第2の増加ゲート18の下の領域の電圧と(電圧V5と等しい)ゲート20の下の領域の電圧との電圧差は、電子なだれ効果によって電荷を増加させ得るべく十分大きい。このステップの間、ゲート22は零電圧でバイアスされ、このため、ポテンシャル壁が形成され、ゲート20のレベルで電荷が阻止される。一例として、電圧V4は1V程度であってもよく、電圧V5は10V程度であってもよい。尚、電荷転送ステップ(図2B)で、電荷の増幅が行なわれてもよく、この電荷転送ステップの間に第1の増加ゲート16に印加される電圧は、増加を引き起こすことが可能な高電圧である。
【0014】
電子なだれ効果による電荷の増加を顕著にするために、図2D及び2Eのステップが複数回繰り返される。このために、前後への転送が転送ゲート14及びゲート16,18,20,22 のレベルで行なわれ、形成されるべきゲートの数を制限することが可能になる。
【0015】
装置が非常に低い光照射レベル下に長期間置かれ続けた場合、例えば画像センサが暗い環境での画像(例えば夜間の画像)の検出用である場合に問題が生じる。この場合、図2Bのステップ中の電荷の転送が不十分であるか、又は歪めて行われる場合がある。そのため、センサからの信号の品質が、特に信号対雑音比の点で著しく低下する。
【0016】
従って、低光照射下であっても、高品質の信号を検出して伝送することが可能な装置が必要である。
【0017】
本発明の実施形態の目的は、低光照射下で優れた検出を行う画像センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明の実施形態は、画像センサの基本的な装置において、第1の導電型のドープ領域から形成されたフォトダイオードを備えており、該フォトダイオードは、第1の基準電圧でバイアスされ得る第2の導電型の半導体基板の表面に形成されており、前記フォトダイオードは、電荷転送増加絶縁デバイスに関連付けられており、完全な空乏タイプであり、前記装置は、前記第1の導電型のドープ領域の表面に、第2の基準電圧でバイアスされ得る前記第2の導電型の過剰ドープ領域を更に備えていることを特徴とする装置を提供する。
【0019】
本発明の実施形態によれば、前記電荷転送増加絶縁デバイスは、転送ゲートと、絶縁ゲートと、下にある前記半導体基板の電圧を設定し、電子なだれ効果によって電荷の転送、絶縁及び増加を可能にすべくバイアスされ得る複数の増加ゲートとを有している。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記電荷転送増加絶縁デバイスは少なくとも5つのゲートを有している。
【0021】
本発明の実施形態によれば、前記第1の基準電圧及び前記第2の基準電圧は等しく、アース電圧である。
【0022】
本発明の実施形態によれば、前記半導体基板の表面で、且つ前記転送ゲート、前記絶縁ゲート及び前記増加ゲートの下に前記第1の導電型のドープ層が形成されている。
【0023】
本発明の実施形態によれば、前記電荷転送増加絶縁デバイス上に形成された光学マスクを更に備えている。
【0024】
本発明の実施形態によれば、前記半導体基板は薄くされており、前記電荷転送増加絶縁デバイスが形成されている面と反対側の面から光照射される。
【0025】
本発明の実施形態によれば、前記第1の導電型はN型である。
【0026】
本発明は、上述されたような複数の基本的な装置を備えていることを特徴とする画像センサを更に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来の電荷増幅画像センサを示す図である。
【図2A】図1に示された電荷増幅画像センサが十分光照射されたときの電荷増幅画像センサの動作を示す電圧曲線である。
【図2B】図1に示された電荷増幅画像センサが十分光照射されたときの電荷増幅画像センサの動作を示す電圧曲線である。
【図2C】図1に示された電荷増幅画像センサが十分光照射されたときの電荷増幅画像センサの動作を示す電圧曲線である。
【図2D】図1に示された電荷増幅画像センサが十分光照射されたときの電荷増幅画像センサの動作を示す電圧曲線である。
【図2E】図1に示された電荷増幅画像センサが十分光照射されたときの電荷増幅画像センサの動作を示す電圧曲線である。
【図3】図1に示された構造を示す図である。
【図4A】光照射が行なわれない状態又は低光照射下でこの構造に生じ得る問題を示す電圧曲線である。
【図4B】光照射が行なわれない状態又は低光照射下でこの構造に生じ得る問題を示す電圧曲線である。
【図4C】光照射が行なわれない状態又は低光照射下でこの構造に生じ得る問題を示す電圧曲線である。
【図5】本発明の実施形態に係る画像センサを示す図である。
【図6】図5に示された画像センサにおける電圧曲線である。
【図7】図5に示された画像センサにおける電圧曲線である。
【図8】本発明の実施形態に係る画像センサの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の前述及び他の目的、特徴及び利点を、添付図面を参照して本発明を限定するものではない具体的な実施形態について以下に詳細に説明する。
【0029】
明瞭化のために、同一の要素は異なる図面において同一の参照番号で示されており、更に、集積回路の図示ではよく見られるように、様々な図面は正しい縮尺で示されていない。
【0030】
図3は、光照射がほとんど行なわれない(光ビーム13が照射されない)場合における図1に示された構造を図示している。装置は、P型基板10の表面に形成されN型過剰ドープ領域(N+)から形成されたフォトダイオード12と、P型基板10の表面に形成され、転送信号VTによって制御され、絶縁された転送ゲート14と、信号Φ1,Φ2,Φ3,Φ4 によって夫々制御され、絶縁された電荷増加ゲート16,18,20,22 とを備えている。
【0031】
図4A乃至4Cは、図3に示された装置の様々な動作ステップ中に最大電位線をたどるP型基板10の電圧曲線である。
【0032】
図4Aは、(転送ゲート14の転送電圧VTが零と電圧V1との間で変動する状態における)一連の電荷の蓄積及び転送ステップ中のP型基板10の電圧を図示している。フォトダイオード12が光照射されないとき、電子/正孔対は生成されず、フォトダイオード12の電圧は理論上一定のままである。しかしながら、前記電圧は蓄積及び転送サイクルの間に徐々に増加し、示された例では電圧V1' に達する(図4B)ことが分かる。
【0033】
光照射が行なわれない状態又は非常に僅かな光照射しか行なわれない状態での一連のサイクル中のフォトダイオードの電圧の増加は、N型過剰ドープ領域であるフォトダイオード12と電荷増加ゲート16の下の空間電荷領域との間の漏れ電流に起因する。転送電圧VTが電圧V1に等しい転送段階中、フォトダイオード12の電圧と転送ゲート14の下に形成されたチャネルの電圧とはほとんど同一であり、フォトダイオード12の領域の電荷は、式(−qV/kT )で表現される低反転電流則に従って転送ゲート14の下のチャネルを通って電荷増加ゲート16の下に形成されたポテンシャル井戸に向かって漏れる。q は電気素量であり、V は転送ゲート14とフォトダイオード12との電位差であり、k は、ボルツマン定数であり、T は温度である。従って、フォトダイオード12の領域の電圧は転送ゲート14の電圧より大きくなる。尚、十分な光照射が行われている場合には、漏れ電流が光照射に起因する電流と比較して無視できるので、この問題は生じない。しかしながら、低光照射レベルでは、この現象は増加段への電荷注入を妨げ、従って、必須の役割を担うべき最も重要な場合にこの増加段は役に立たなくなる。
【0034】
電圧V1'に達すると、低光照射であり、少量の電子がフォトダイオード12に蓄積される(図4C)場合、電荷読取効率が非常に悪く、少量の電子が、転送中に転送ゲート14の下の領域によって形成されるポテンシャル障壁を通過し得る。実際、フォトダイオード12の電圧が電圧V1から電圧V1' に変わるので、フォトダイオード12の電圧は転送中、転送電圧VTより大きい電圧V1' である。このため、フォトダイオード12に蓄積された電子のいかなる転送も妨げるか、又は前記電子の部分的な転送のみを可能にするポテンシャル壁が形成される。更に、転送のために十分な量の電子がフォトダイオード12に蓄積されている場合、転送は、フォトダイオード12が光照射されていない期間中の電圧の変動により歪められる(フォトダイオード12に実際に蓄積されている電荷より少ない電荷が転送される)。
【0035】
従って、非常に僅かな光照射しか行なわれない場合又は光照射が行われない場合には、図3に示された装置による電荷の読取りが良好ではない。
【0036】
この問題を解決するために、本発明者は特定のフォトダイオードの使用を提供し、より具体的には、電子取込領域の電圧が所定の閾値を超えて増加し得ないフォトダイオードの使用を提供する。従って、光発生させた電荷が、低光照射の場合を含めて適切に読み取られ得る。
【0037】
図5は、このようなフォトダイオードを図示している。本発明者は、クランプタイプの完全な空乏フォトダイオード又はPIN フォトダイオードの使用を提供する。フォトダイオードは、P型基板30に形成されており、取込のためのN型ドープ領域32を備えており、N型ドープ領域32は、N型ドープ領域32の表面に延びる薄いP型過剰ドープ領域34(P+)を有している。P型基板30は、第1の基準電圧Vref1でバイアスされ、P型過剰ドープ領域34は、第2の基準電圧Vref2でバイアスされる。第1の基準電圧Vref1及び第2の基準電圧Vref2 は等しくてもよく、アース電圧に相当してもよいが、P型基板30及びP型過剰ドープ領域34に異なる基準電圧でバイアスしてもよい。
【0038】
フォトダイオードは、転送ゲート36と、電荷増加ゲート38,40,42と、フォトダイオードに近いP型基板30の表面に形成された絶縁ゲート44とに関連付けられている。転送ゲート36、電荷増加ゲート38,40,42及び絶縁ゲート44は絶縁されたゲート構造を有しており、制御信号VT, Φ1,Φ2,Φ3,Φ4 を用いて夫々制御される。好ましくは、保護層(不図示)又は光学マスクが、転送ゲート36、増幅ゲート、すなわち増加ゲート38,40,42及び絶縁ゲート44の上方に設けられており、そのため、入射光ビームがこれらのゲートの下に位置付けられたP型基板30に電荷を発生させない。
【0039】
P型過剰ドープ領域34がN型ドープ領域32を完全に空にするように、N型ドープ領域32及びP型過剰ドープ領域34のドーピングが調整される。従って、熱力学平衡に達しておらず、いかなる光照射も行われていない場合、N型ドープ領域32の電圧が、フォトダイオード及びP型基板30のドーピングによってのみ設定され、このため、電荷増加ゲート38の下のP型基板30に向かって電荷を転送している間の低反転状態が回避される。尚、図5に示された構成とは逆に、実際の装置では、各画素の表面積の大部分がフォトダイオード(装置の検出領域)に割り当てられている。
【0040】
図6は、第1の基準電圧Vref1 と第2の基準電圧Vref2 とが0Vに等しい場合の、フォトダイオード(N型ドープ領域32及びP型過剰ドープ領域34)のレベルで装置の高さに沿って図5の断面A-A で示された構造の電圧曲線である。フォトダイオードが光照射されていないとき、N型ドープ領域32内の電圧は、P型基板30、N型ドープ領域32及びP型過剰ドープ領域34のドーピングによって完全に決定され、従って、N型ドープ領域32は最大限でも電圧V1maxに達する。
【0041】
従って、図3及び図4A乃至4Cに関連して説明された不利点、つまり、低光照射の場合のフォトダイオードの取込領域の最大電圧の変動が回避される。フォトダイオードが光照射されるとき、N型ドープ領域32の電圧は減少し、電荷が転送されるとき、N型ドープ領域32の電圧は電圧V1max に戻る。
【0042】
図7は、図5に示された装置の場合の(最大電位線に沿って)図4Aに示された電圧曲線と同一の電圧曲線を示している。この場合、フォトダイオードが光照射されていないときでも、N型ドープ領域32の電圧は常時電圧V1max に等しいか、又は電圧V1max より小さいままである。従って、光発生させ、フォトダイオードに蓄積された全ての電荷は、転送電圧VTが電圧V1max と等しいか、又は電圧V1max より僅かに大きい電圧V4になる転送段階で転送され、このため、センサは、非常に僅かな光照射しか行なわれていない場合、又は光照射が行われない長期間の後でも効率的になる。
【0043】
フォトダイオードから電荷増加ゲート38の下の空間電荷領域まで電子の転送が行われると、電荷増幅サイクルが、2つの隣り合うゲート間に相当な電場を加えることにより従来通りに行われる。大幅に増幅すべく電荷増加ゲート38,40,42の下で電荷を強制的に前後に移動させることによる電子なだれ効果を利用している。増幅利得は、電荷増加ゲート38,40,42の下での前後への移動回数を制限することにより調整される。そのため、転送ゲート36及び絶縁ゲート44は、電荷の増幅中に電荷が装置から出ることを回避するためのポテンシャル壁として使用される。電荷増加ゲート38及び電荷増加ゲート42は、電子なだれ効果を可能にする十分な電圧差を生成するために交互にバイアスされる。尚、電荷転送増幅絶縁デバイスは、5を超える隣り合うゲートを組み合わせることにより形成されてもよい。
【0044】
任意には、薄いN型ドープ層46が、転送ゲート36、電荷増加ゲート38,40,42及び絶縁ゲート44の下で且つP型基板30の表面に形成されてもよい。薄いN型ドープ層46により、最大電圧ポイントがP型基板30の表面から僅かに離れて、ゲートの絶縁体と半導体基板との間の界面によく存在する寄生現象(雑音)を避けることが可能になる。
【0045】
図8は、図5に示された装置の変形例を図示しており、変形例では、画像センサがP型基板30の裏面から光照射される。図8に示された装置は、P型基板30が薄くされ、転送ゲート36、電荷増加ゲート38,40,42及び絶縁ゲート44が形成されている面の反対側の面から光照射される点で図5に示された装置とは異なる。蓄積段階中に、P型基板30に達する光ビーム48がP型基板30内に電子/正孔対を発生させ、電子/正孔対の内の電子がフォトダイオード32によって形成されるポテンシャル井戸に集められる。有利には従来通りに、基板の裏面から達するビームが障害物をあまり横切らず、基板の前面に達するビームより更に容易に検出され得る。この装置の動作は、上述された動作と同様である。
【0046】
本発明の具体的な実施形態が説明された。様々な変更、調整及び改良が当業者に想起される。特には、有用な光発生電荷が電子である装置が本明細書に説明されているが、有用な電荷が正孔である同様の装置が更に提供されてもよい。このために、様々なドープ領域の導電型が反転され、電荷の転送のために様々なゲートに印加される電圧は、上述された電圧と反対の符号になる。
【0047】
図5及び8に示された装置は、強力な光照射レベルの場合に使用されてもよい。この場合、画素の飽和状態を回避すべく、適した電子回路によって光照射に応じてフォトダイオードの集積化又は電荷蓄積の時間を適合させてもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体型画像センサの分野、より具体的には低光照射下で微細な検出を可能にするセンサの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの一体型画像取込装置が知られている。このようなセンサの中で最新の構造は複数の基本的な検出デバイス、すなわち画素を備えており、各検出デバイスは、半導体基板に形成されたフォトダイオードを有しており、フォトダイオードは電荷転送素子と、転送された電荷を読み取るための読取回路とに関連付けられている。前記構造は、一般的に複数のフォトダイオードに関して1つの読取回路を使用することによりセンサ要素の数を最小限度に抑えることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0176213 号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像センサが光ビームを受けると、入射光子が半導体基板に入り込み、この半導体基板に電子/正孔対が形成される。その後、電子/正孔対の内の電子がフォトダイオードによって取り込まれ、関連付けられた読取回路に向かって電荷転送トランジスタによって転送される。
【0005】
米国特許出願公開第2007/0176213 号明細書は、上述された要素に加えて、各画素に関連付けられており、センサの感度を高めるために前記画素で光発生させた電子を増幅することが可能な素子を備えた構造について述べている。このような増幅、つまり電荷の増加を行うために、CCD (電荷結合素子)レジスタに関連付けられた技術を使用すること、つまり、交互にバイアスされる金属の絶縁ゲートの組立体を半導体基板の表面に形成することが知られている。このように絶縁ゲートに交互にバイアスすることにより、光発生電子をいわゆる電子なだれ効果によって増加させることを可能にする。
【0006】
図1は、電荷増加段を備えた画像センサの画素を図示しており、図2A乃至2Eは、検出の様々なステップにおけるこの画素の動作を図示する電圧曲線である。
【0007】
図1に図示された画素は、例えばアースである基準電圧でバイアスされるP型基板10の内部及び該P型基板10上に形成されている。P型基板10では、N型過剰ドープ領域(N+)から形成されたフォトダイオード12がP型基板10の表面に形成されている。フォトダイオード12は光ビーム13によって照射される。転送信号VTによって制御され絶縁された転送ゲート14が、フォトダイオード12の近くに設けられている。電子なだれ効果によって電荷の増加を可能にする複数の絶縁されたゲートが、転送ゲート14の隣に形成されている。図示された例では、4つのゲート16,18,20,22 が、制御信号Φ1,Φ2,Φ3,Φ4 によって夫々制御される。尚、図1の図示は非常に簡略化されており、特に実際の装置では、各画素の表面の大部分がフォトダイオードに割り当てられている。
【0008】
図2A乃至2Eは、画像取込みの様々なステップでの図1の面におけるP型基板10の電圧を図示している。これらの図面には、電子の蓄積、転送及び増加の1つのサイクルが図示されている。各図面に図示された電圧はP型基板10の電圧であり、以下「最大電位線」と呼ばれる線をたどる。この線は、P型基板10の深さ方向で、絶縁された複数のゲートの下とフォトダイオードとに最も高くバイアスするポイントを通って延びる。尚、絶縁された異なる複数のゲートに印加される電圧に応じて、最大バイアス線が、P型基板10における深さが可変なポイントを通って延びる。尚、以下の説明では、ゲート16は初期転送ステップでも機能するが「第1の増加ゲート」と呼ばれる。
【0009】
図2Aは、フォトダイオード12に電荷を蓄積する初期段階でのフォトダイオード12及びP型基板10の電圧曲線を示している。図1に示されたセンサへの光照射により、N型領域であるフォトダイオード12に電子が蓄積され、最初電圧V1と等しいN型領域12の電圧が減少して電圧V2に達する。電圧V2は、蓄積される電子の数、ひいては入射光子の数の関数である。蓄積段階中に、転送ゲート14に印加される転送電圧VTは零であり、このため、ポテンシャル壁が形成され、フォトダイオード12からの電子の放出が回避される。第1の増加ゲート16に関連付けられる電圧Φ1 は、好ましくは転送ステップの直前に次のステップを見越して電圧V1より大きい電圧V3である。
【0010】
図2Bのステップでは、電圧V1と略等しいか、又は電圧V1より僅かに大きい転送電圧VTが転送ゲート14に印加される一方、第1の増加ゲート16に印加される電圧Φ1 は、(電圧V1より大きい)電圧V3に等しく、第2の増加ゲート18に印加される電圧Φ2 は零である。従って、フォトダイオード12に蓄積された電荷は、第1の増加ゲート16の下のP型基板10に形成されたポテンシャル井戸に転送される。
【0011】
図2Cのステップでは、転送ゲート14の転送電圧VTが基準電圧に戻る一方、電圧Φ2 は、例えば零に等しいこの基準電圧のままであり、このため、第1の増加ゲート16の下のP型基板10の領域内の電子が阻止される。その後、新たな電荷蓄積段階がフォトダイオード12のレベルで開始され得る。
【0012】
図2Dに図示されたステップでは、第1の増加ゲート16に印加される電圧Φ1 は、低電圧V4まで減少する。従って、第1の増加ゲート16の下のP型基板10の電圧は低下する。このステップの間、転送ゲート14に印加される転送電圧VT及び第2の増加ゲート18に印加される電圧Φ2 は、零(基準電圧)である。好ましくは、次のステップの直前に、ゲート20に印加される電圧Φ3 は、次のステップを見越して電圧V4よりはるかに大きい電圧V5に設定される。
【0013】
図2Eに図示されたステップでは、第2の増加ゲート18に印加される電圧Φ2 は、電圧V4程度、又は電圧V4より僅かに大きい電圧に迅速に増加する。電圧Φ3 は(電圧V4よりはるかに大きい)電圧V5と等しく、電荷はゲート20の下のP型基板10の領域に転送される。(電圧V4と略等しい)第2の増加ゲート18の下の領域の電圧と(電圧V5と等しい)ゲート20の下の領域の電圧との電圧差は、電子なだれ効果によって電荷を増加させ得るべく十分大きい。このステップの間、ゲート22は零電圧でバイアスされ、このため、ポテンシャル壁が形成され、ゲート20のレベルで電荷が阻止される。一例として、電圧V4は1V程度であってもよく、電圧V5は10V程度であってもよい。尚、電荷転送ステップ(図2B)で、電荷の増幅が行なわれてもよく、この電荷転送ステップの間に第1の増加ゲート16に印加される電圧は、増加を引き起こすことが可能な高電圧である。
【0014】
電子なだれ効果による電荷の増加を顕著にするために、図2D及び2Eのステップが複数回繰り返される。このために、前後への転送が転送ゲート14及びゲート16,18,20,22 のレベルで行なわれ、形成されるべきゲートの数を制限することが可能になる。
【0015】
装置が非常に低い光照射レベル下に長期間置かれ続けた場合、例えば画像センサが暗い環境での画像(例えば夜間の画像)の検出用である場合に問題が生じる。この場合、図2Bのステップ中の電荷の転送が不十分であるか、又は歪めて行われる場合がある。そのため、センサからの信号の品質が、特に信号対雑音比の点で著しく低下する。
【0016】
従って、低光照射下であっても、高品質の信号を検出して伝送することが可能な装置が必要である。
【0017】
本発明の実施形態の目的は、低光照射下で優れた検出を行う画像センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明の実施形態は、画像センサの基本的な装置において、第1の導電型のドープ領域から形成されたフォトダイオードを備えており、該フォトダイオードは、第1の基準電圧でバイアスされ得る第2の導電型の半導体基板の表面に形成されており、前記フォトダイオードは、電荷転送増加絶縁デバイスに関連付けられており、完全な空乏タイプであり、前記装置は、前記第1の導電型のドープ領域の表面に、第2の基準電圧でバイアスされ得る前記第2の導電型の過剰ドープ領域を更に備えていることを特徴とする装置を提供する。
【0019】
本発明の実施形態によれば、前記電荷転送増加絶縁デバイスは、転送ゲートと、絶縁ゲートと、下にある前記半導体基板の電圧を設定し、電子なだれ効果によって電荷の転送、絶縁及び増加を可能にすべくバイアスされ得る複数の増加ゲートとを有している。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記電荷転送増加絶縁デバイスは少なくとも5つのゲートを有している。
【0021】
本発明の実施形態によれば、前記第1の基準電圧及び前記第2の基準電圧は等しく、アース電圧である。
【0022】
本発明の実施形態によれば、前記半導体基板の表面で、且つ前記転送ゲート、前記絶縁ゲート及び前記増加ゲートの下に前記第1の導電型のドープ層が形成されている。
【0023】
本発明の実施形態によれば、前記電荷転送増加絶縁デバイス上に形成された光学マスクを更に備えている。
【0024】
本発明の実施形態によれば、前記半導体基板は薄くされており、前記電荷転送増加絶縁デバイスが形成されている面と反対側の面から光照射される。
【0025】
本発明の実施形態によれば、前記第1の導電型はN型である。
【0026】
本発明は、上述されたような複数の基本的な装置を備えていることを特徴とする画像センサを更に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来の電荷増幅画像センサを示す図である。
【図2A】図1に示された電荷増幅画像センサが十分光照射されたときの電荷増幅画像センサの動作を示す電圧曲線である。
【図2B】図1に示された電荷増幅画像センサが十分光照射されたときの電荷増幅画像センサの動作を示す電圧曲線である。
【図2C】図1に示された電荷増幅画像センサが十分光照射されたときの電荷増幅画像センサの動作を示す電圧曲線である。
【図2D】図1に示された電荷増幅画像センサが十分光照射されたときの電荷増幅画像センサの動作を示す電圧曲線である。
【図2E】図1に示された電荷増幅画像センサが十分光照射されたときの電荷増幅画像センサの動作を示す電圧曲線である。
【図3】図1に示された構造を示す図である。
【図4A】光照射が行なわれない状態又は低光照射下でこの構造に生じ得る問題を示す電圧曲線である。
【図4B】光照射が行なわれない状態又は低光照射下でこの構造に生じ得る問題を示す電圧曲線である。
【図4C】光照射が行なわれない状態又は低光照射下でこの構造に生じ得る問題を示す電圧曲線である。
【図5】本発明の実施形態に係る画像センサを示す図である。
【図6】図5に示された画像センサにおける電圧曲線である。
【図7】図5に示された画像センサにおける電圧曲線である。
【図8】本発明の実施形態に係る画像センサの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の前述及び他の目的、特徴及び利点を、添付図面を参照して本発明を限定するものではない具体的な実施形態について以下に詳細に説明する。
【0029】
明瞭化のために、同一の要素は異なる図面において同一の参照番号で示されており、更に、集積回路の図示ではよく見られるように、様々な図面は正しい縮尺で示されていない。
【0030】
図3は、光照射がほとんど行なわれない(光ビーム13が照射されない)場合における図1に示された構造を図示している。装置は、P型基板10の表面に形成されN型過剰ドープ領域(N+)から形成されたフォトダイオード12と、P型基板10の表面に形成され、転送信号VTによって制御され、絶縁された転送ゲート14と、信号Φ1,Φ2,Φ3,Φ4 によって夫々制御され、絶縁された電荷増加ゲート16,18,20,22 とを備えている。
【0031】
図4A乃至4Cは、図3に示された装置の様々な動作ステップ中に最大電位線をたどるP型基板10の電圧曲線である。
【0032】
図4Aは、(転送ゲート14の転送電圧VTが零と電圧V1との間で変動する状態における)一連の電荷の蓄積及び転送ステップ中のP型基板10の電圧を図示している。フォトダイオード12が光照射されないとき、電子/正孔対は生成されず、フォトダイオード12の電圧は理論上一定のままである。しかしながら、前記電圧は蓄積及び転送サイクルの間に徐々に増加し、示された例では電圧V1' に達する(図4B)ことが分かる。
【0033】
光照射が行なわれない状態又は非常に僅かな光照射しか行なわれない状態での一連のサイクル中のフォトダイオードの電圧の増加は、N型過剰ドープ領域であるフォトダイオード12と電荷増加ゲート16の下の空間電荷領域との間の漏れ電流に起因する。転送電圧VTが電圧V1に等しい転送段階中、フォトダイオード12の電圧と転送ゲート14の下に形成されたチャネルの電圧とはほとんど同一であり、フォトダイオード12の領域の電荷は、式(−qV/kT )で表現される低反転電流則に従って転送ゲート14の下のチャネルを通って電荷増加ゲート16の下に形成されたポテンシャル井戸に向かって漏れる。q は電気素量であり、V は転送ゲート14とフォトダイオード12との電位差であり、k は、ボルツマン定数であり、T は温度である。従って、フォトダイオード12の領域の電圧は転送ゲート14の電圧より大きくなる。尚、十分な光照射が行われている場合には、漏れ電流が光照射に起因する電流と比較して無視できるので、この問題は生じない。しかしながら、低光照射レベルでは、この現象は増加段への電荷注入を妨げ、従って、必須の役割を担うべき最も重要な場合にこの増加段は役に立たなくなる。
【0034】
電圧V1'に達すると、低光照射であり、少量の電子がフォトダイオード12に蓄積される(図4C)場合、電荷読取効率が非常に悪く、少量の電子が、転送中に転送ゲート14の下の領域によって形成されるポテンシャル障壁を通過し得る。実際、フォトダイオード12の電圧が電圧V1から電圧V1' に変わるので、フォトダイオード12の電圧は転送中、転送電圧VTより大きい電圧V1' である。このため、フォトダイオード12に蓄積された電子のいかなる転送も妨げるか、又は前記電子の部分的な転送のみを可能にするポテンシャル壁が形成される。更に、転送のために十分な量の電子がフォトダイオード12に蓄積されている場合、転送は、フォトダイオード12が光照射されていない期間中の電圧の変動により歪められる(フォトダイオード12に実際に蓄積されている電荷より少ない電荷が転送される)。
【0035】
従って、非常に僅かな光照射しか行なわれない場合又は光照射が行われない場合には、図3に示された装置による電荷の読取りが良好ではない。
【0036】
この問題を解決するために、本発明者は特定のフォトダイオードの使用を提供し、より具体的には、電子取込領域の電圧が所定の閾値を超えて増加し得ないフォトダイオードの使用を提供する。従って、光発生させた電荷が、低光照射の場合を含めて適切に読み取られ得る。
【0037】
図5は、このようなフォトダイオードを図示している。本発明者は、クランプタイプの完全な空乏フォトダイオード又はPIN フォトダイオードの使用を提供する。フォトダイオードは、P型基板30に形成されており、取込のためのN型ドープ領域32を備えており、N型ドープ領域32は、N型ドープ領域32の表面に延びる薄いP型過剰ドープ領域34(P+)を有している。P型基板30は、第1の基準電圧Vref1でバイアスされ、P型過剰ドープ領域34は、第2の基準電圧Vref2でバイアスされる。第1の基準電圧Vref1及び第2の基準電圧Vref2 は等しくてもよく、アース電圧に相当してもよいが、P型基板30及びP型過剰ドープ領域34に異なる基準電圧でバイアスしてもよい。
【0038】
フォトダイオードは、転送ゲート36と、電荷増加ゲート38,40,42と、フォトダイオードに近いP型基板30の表面に形成された絶縁ゲート44とに関連付けられている。転送ゲート36、電荷増加ゲート38,40,42及び絶縁ゲート44は絶縁されたゲート構造を有しており、制御信号VT, Φ1,Φ2,Φ3,Φ4 を用いて夫々制御される。好ましくは、保護層(不図示)又は光学マスクが、転送ゲート36、増幅ゲート、すなわち増加ゲート38,40,42及び絶縁ゲート44の上方に設けられており、そのため、入射光ビームがこれらのゲートの下に位置付けられたP型基板30に電荷を発生させない。
【0039】
P型過剰ドープ領域34がN型ドープ領域32を完全に空にするように、N型ドープ領域32及びP型過剰ドープ領域34のドーピングが調整される。従って、熱力学平衡に達しておらず、いかなる光照射も行われていない場合、N型ドープ領域32の電圧が、フォトダイオード及びP型基板30のドーピングによってのみ設定され、このため、電荷増加ゲート38の下のP型基板30に向かって電荷を転送している間の低反転状態が回避される。尚、図5に示された構成とは逆に、実際の装置では、各画素の表面積の大部分がフォトダイオード(装置の検出領域)に割り当てられている。
【0040】
図6は、第1の基準電圧Vref1 と第2の基準電圧Vref2 とが0Vに等しい場合の、フォトダイオード(N型ドープ領域32及びP型過剰ドープ領域34)のレベルで装置の高さに沿って図5の断面A-A で示された構造の電圧曲線である。フォトダイオードが光照射されていないとき、N型ドープ領域32内の電圧は、P型基板30、N型ドープ領域32及びP型過剰ドープ領域34のドーピングによって完全に決定され、従って、N型ドープ領域32は最大限でも電圧V1maxに達する。
【0041】
従って、図3及び図4A乃至4Cに関連して説明された不利点、つまり、低光照射の場合のフォトダイオードの取込領域の最大電圧の変動が回避される。フォトダイオードが光照射されるとき、N型ドープ領域32の電圧は減少し、電荷が転送されるとき、N型ドープ領域32の電圧は電圧V1max に戻る。
【0042】
図7は、図5に示された装置の場合の(最大電位線に沿って)図4Aに示された電圧曲線と同一の電圧曲線を示している。この場合、フォトダイオードが光照射されていないときでも、N型ドープ領域32の電圧は常時電圧V1max に等しいか、又は電圧V1max より小さいままである。従って、光発生させ、フォトダイオードに蓄積された全ての電荷は、転送電圧VTが電圧V1max と等しいか、又は電圧V1max より僅かに大きい電圧V4になる転送段階で転送され、このため、センサは、非常に僅かな光照射しか行なわれていない場合、又は光照射が行われない長期間の後でも効率的になる。
【0043】
フォトダイオードから電荷増加ゲート38の下の空間電荷領域まで電子の転送が行われると、電荷増幅サイクルが、2つの隣り合うゲート間に相当な電場を加えることにより従来通りに行われる。大幅に増幅すべく電荷増加ゲート38,40,42の下で電荷を強制的に前後に移動させることによる電子なだれ効果を利用している。増幅利得は、電荷増加ゲート38,40,42の下での前後への移動回数を制限することにより調整される。そのため、転送ゲート36及び絶縁ゲート44は、電荷の増幅中に電荷が装置から出ることを回避するためのポテンシャル壁として使用される。電荷増加ゲート38及び電荷増加ゲート42は、電子なだれ効果を可能にする十分な電圧差を生成するために交互にバイアスされる。尚、電荷転送増幅絶縁デバイスは、5を超える隣り合うゲートを組み合わせることにより形成されてもよい。
【0044】
任意には、薄いN型ドープ層46が、転送ゲート36、電荷増加ゲート38,40,42及び絶縁ゲート44の下で且つP型基板30の表面に形成されてもよい。薄いN型ドープ層46により、最大電圧ポイントがP型基板30の表面から僅かに離れて、ゲートの絶縁体と半導体基板との間の界面によく存在する寄生現象(雑音)を避けることが可能になる。
【0045】
図8は、図5に示された装置の変形例を図示しており、変形例では、画像センサがP型基板30の裏面から光照射される。図8に示された装置は、P型基板30が薄くされ、転送ゲート36、電荷増加ゲート38,40,42及び絶縁ゲート44が形成されている面の反対側の面から光照射される点で図5に示された装置とは異なる。蓄積段階中に、P型基板30に達する光ビーム48がP型基板30内に電子/正孔対を発生させ、電子/正孔対の内の電子がフォトダイオード32によって形成されるポテンシャル井戸に集められる。有利には従来通りに、基板の裏面から達するビームが障害物をあまり横切らず、基板の前面に達するビームより更に容易に検出され得る。この装置の動作は、上述された動作と同様である。
【0046】
本発明の具体的な実施形態が説明された。様々な変更、調整及び改良が当業者に想起される。特には、有用な光発生電荷が電子である装置が本明細書に説明されているが、有用な電荷が正孔である同様の装置が更に提供されてもよい。このために、様々なドープ領域の導電型が反転され、電荷の転送のために様々なゲートに印加される電圧は、上述された電圧と反対の符号になる。
【0047】
図5及び8に示された装置は、強力な光照射レベルの場合に使用されてもよい。この場合、画素の飽和状態を回避すべく、適した電子回路によって光照射に応じてフォトダイオードの集積化又は電荷蓄積の時間を適合させてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像センサの基本的な装置において、
第1の導電型のドープ領域から形成されたフォトダイオード(32)を備えており、
該フォトダイオード(32)は、第1の基準電圧(Vref1) でバイアスされ得る第2の導電型の半導体基板(30)の表面に形成されており、
前記フォトダイオード(32)は、電荷転送(36)増加(38,40,42)絶縁(44)デバイスに関連付けられており、完全な空乏タイプであり、
前記装置は、前記第1の導電型のドープ領域の表面に、第2の基準電圧(Vref2) でバイアスされ得る前記第2の導電型の過剰ドープ領域(34)を更に備えていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記電荷転送増加絶縁デバイスは、転送ゲート(36)と、絶縁ゲート(44)と、下にある前記半導体基板(30)の電圧を設定し、電子なだれ効果によって電荷の転送、絶縁及び増加を可能にすべくバイアスされ得る複数の増加ゲート(38,40,42)とを有していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電荷転送増加絶縁デバイスは少なくとも5つのゲート(36,38,40,42,44)を有していることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の基準電圧(Vref1)及び前記第2の基準電圧(Vref2) は等しく、アース電圧であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記半導体基板(30)の表面で、且つ前記転送ゲート(36)、前記絶縁ゲート(44)及び前記増加(38,40,42)ゲートの下に前記第1の導電型のドープ層(46)が形成されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記電荷転送増加絶縁デバイス上に形成された光学マスクを更に備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記半導体基板(30)は薄くされており、前記電荷転送増加絶縁デバイスが形成されている面と反対側の面から光照射されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記第1の導電型はN型であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかの複数の基本的な装置を備えていることを特徴とする画像センサ。
【請求項1】
画像センサの基本的な装置において、
第1の導電型のドープ領域から形成されたフォトダイオード(32)を備えており、
該フォトダイオード(32)は、第1の基準電圧(Vref1) でバイアスされ得る第2の導電型の半導体基板(30)の表面に形成されており、
前記フォトダイオード(32)は、電荷転送(36)増加(38,40,42)絶縁(44)デバイスに関連付けられており、完全な空乏タイプであり、
前記装置は、前記第1の導電型のドープ領域の表面に、第2の基準電圧(Vref2) でバイアスされ得る前記第2の導電型の過剰ドープ領域(34)を更に備えていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記電荷転送増加絶縁デバイスは、転送ゲート(36)と、絶縁ゲート(44)と、下にある前記半導体基板(30)の電圧を設定し、電子なだれ効果によって電荷の転送、絶縁及び増加を可能にすべくバイアスされ得る複数の増加ゲート(38,40,42)とを有していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電荷転送増加絶縁デバイスは少なくとも5つのゲート(36,38,40,42,44)を有していることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の基準電圧(Vref1)及び前記第2の基準電圧(Vref2) は等しく、アース電圧であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記半導体基板(30)の表面で、且つ前記転送ゲート(36)、前記絶縁ゲート(44)及び前記増加(38,40,42)ゲートの下に前記第1の導電型のドープ層(46)が形成されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記電荷転送増加絶縁デバイス上に形成された光学マスクを更に備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記半導体基板(30)は薄くされており、前記電荷転送増加絶縁デバイスが形成されている面と反対側の面から光照射されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記第1の導電型はN型であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかの複数の基本的な装置を備えていることを特徴とする画像センサ。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2012−527106(P2012−527106A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510344(P2012−510344)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050919
【国際公開番号】WO2010/130950
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(507362786)コミサリア ア エナジー アトミック エ オックス エナジーズ オルタネティヴ (22)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050919
【国際公開番号】WO2010/130950
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(507362786)コミサリア ア エナジー アトミック エ オックス エナジーズ オルタネティヴ (22)
【Fターム(参考)】
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