説明

内装改修方法

【課題】内装下地上に貼付された内装材に破れや剥がれが生じた区画領域を簡単に、かつ、美しく改修することができる内装改修方法を提供する。
【解決手段】内装下地2上にシート状のビニールクロス3が貼付された壁面1等の1の区画領域に対する内装改修方法であって、内装下地2が露出した要補修部分を、ビニールクロス3の表面と面一となるように補修材4を用いて補修する下地処理工程S1と、下地処理工程S1の後、要補修部分を含む区画領域に、ゼオライト・珪藻土配合塗料を下塗りする下塗り工程S2と、下塗り工程S2の後、区画領域にゼオライト・珪藻土配合塗料を上塗りし、所定のテクスチャーを形成する上塗り工程S3と、を備え、上塗りは、下塗りよりも厚塗りで仕上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙等の内装材が貼付された壁や天井等の内装改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、居室内の壁等に貼付されたビニールクロスの汚れを洗浄した後、ビニールクロスの表面に、層状珪酸塩鉱物等を含む液状若しくはスラリ状のコーティング材を吹き付け又は塗布し、自然乾燥させることで薄く透明なコーティング層を形成するコーティング方法(内装改修方法)が知られている(特許文献1参照)。
このように形成されたコーティング層は、調湿性を有し、カビの発生を抑制する効果を奏すると共に、薄く透明であるため下地となるビニールクロスの表面の模様等を損なうことがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−329391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ビニールクロス等の内装材は、汚れだけでなく、経年変化等により破れや端部の剥がれが生じる場合がある。
しかし、従来の内装改修方法では、内装材に破れや剥がれが生じた状態で透明のコーティング層を形成すると、破れや剥がれがそのまま表面に現れると共に、コーティング層に凹凸が生じるため、美観が損なわれるという問題があった。また、内装材の汚れがひどい場合には、汚れによるにじみを防止するため、一般的に、下塗り塗料(シーラー)を別途用意し、塗布する作業が必要になっていた。したがって、破れ若しくは剥がれまたは汚れがひどい場合は、内装材を張り替える必要があった。
【0005】
本発明は、内装下地上に貼付された内装材に破れや剥がれが生じた区画領域を簡単に、かつ、美しく改修することができる内装改修方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内装改修方法は、内装下地上にシート状の内装材が貼付された壁または天井の1の区画領域に対する内装改修方法であって、内装下地が露出した要補修部分を、内装材の表面と面一となるように補修材を用いて補修する下地処理工程と、下地処理工程の後、要補修部分を含む区画領域に、ゼオライト・珪藻土配合塗料を下塗りする下塗り工程と、下塗り工程の後、区画領域にゼオライト・珪藻土配合塗料を上塗りし、所定のテクスチャーを形成する上塗り工程と、を備え、上塗りは、下塗りよりも厚塗りで仕上げることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、下地処理工程により、内装下地と内装材との段差(凹凸)をなくすことができ、下塗り工程により、ゼオライト・珪藻土配合塗料で下塗りされた区画領域(内装面)を形成することができる。そして、上塗り工程では、塗膜の厚みを確保すると共に、仕上がりのテクスチャーが形成される。これにより、内装材に破れや剥がれが生じている場合でも、仕上がった区画領域に破れ等が現れることがなく、所定のテクスチャーが形成されているため、美観に優れた区画領域とすることができる。さらに、汚れがひどい場合にも、上塗りの塗料と異なる下塗りのための塗料を別途用意する必要がない。なお、所定のテクスチャーの例としては、スティップル状、コテパターン状、玉吹状、ウェーブ状等、適当な凹凸を設けることが考えられる。もちろん、凹凸を設けず、平滑な面に仕上げてもよい。
【0008】
他の内装改修方法は、内装下地上にシート状の内装材が貼付された壁または天井の1の区画領域に対する内装改修方法であって、内装材の剥がれている部分を所定幅で除去する剥離部除去工程と、剥離部除去工程の後、所定幅よりも幅広に形成されたシート状の捲れ防止材を、内装材を除去した部分を覆うように貼付する段差補修工程と、段差補修工程の後、捲れ防止材を貼付した要補修部分を、内装材表面と面一となるように補修材を用いて補修する下地処理工程と、下地処理工程の後、要補修部分を含む区画領域に、ゼオライト・珪藻土配合塗料を下塗りする下塗り工程と、下塗り工程の後、区画領域にゼオライト・珪藻土配合塗料を上塗りし、所定のテクスチャーを形成する上塗り工程と、を備え、上塗りは、下塗りよりも厚塗りで仕上げることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、内装材に、補修材のみでは補修できない程の大きな破れや剥がれが生じている場合でも、剥離部除去工程において、剥がれている部分(破れている部分を含む。)を所定幅で除去し、段差補修工程において、その除去した部分を覆うように捲れ防止材を貼付した後に、下地処理工程を行うことで、内装下地と内装材との段差(凹凸)をなくすことができる。これにより、内装材の破れや剥がれに起因する凹凸のない、美しい区画領域に仕上げることができる。また、所定幅で除去した部分を覆うように捲れ防止材を貼付しているため、除去した端部から内装材が更に剥がれてしまうことを防止することができる。
【0010】
また、他の内装改修方法は、内装下地上にシート状の内装材が貼付された壁または天井の1の区画領域に対する内装改修方法であって、内装材の剥がれている部分を所定幅で除去する剥離部除去工程と、剥離部除去工程の後、内装材と同一の厚みで、かつ、所定幅より僅かに狭い幅を有するパッチ材を、内装材を除去した部分に貼付する段差補修工程と、段差補修工程の後、パッチ材と内装材との間の内装下地が露出した要補修部分に対し、内装材の表面と面一となるように補修材を用いて補修する下地処理工程と、下地処理工程の後、要補修部分を含む区画領域に、ゼオライト・珪藻土配合塗料を下塗りする下塗り工程と、下塗り工程の後、区画領域にゼオライト・珪藻土配合塗料を上塗りし、所定のテクスチャーを形成する上塗り工程と、を備え、上塗りは、下塗りよりも厚塗りで仕上げることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、内装材に、補修材のみでは補修できない程の大きな破れや剥がれが生じている場合でも、剥離部除去工程において、剥がれている部分(破れている部分を含む。)を所定幅で除去し、段差補修工程において、その除去した部分にパッチ材を貼付した後に、下地処理工程を行うことで、内装下地と内装材との段差(凹凸)をなくすことができる。これにより、内装材の破れや剥がれに起因する凹凸のない、美しい区画領域に仕上げることができる。
【0012】
この場合、下塗り工程で用いるゼオライト・珪藻土配合塗料にのみ硬化剤が添加されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、下塗りされたゼオライト・珪藻土配合塗料は、自然乾燥させるものと比べて、早く硬化する。これにより、下塗りされた区画領域(内装面)の形成を迅速に行えるため、続く上塗り工程へと速やかに移行することができる。すなわち、内装改修全体に係る時間を大幅に短縮することができる。
【0014】
この場合、下塗り工程は、砂骨用ローラーを用いてゼオライト・珪藻土配合塗料を塗布する塗布工程と、塗布工程の後、ヘラを用いて区画領域に塗布したゼオライト・珪藻土配合塗料を平滑に均す均し工程と、を有することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、砂骨用ローラーを用いることで、(コテ等を用いて塗る場合に比べて)ゼオライト・珪藻土配合塗料の塗布が簡単になると共に、当該塗布に係る時間を短縮することができる。また、砂骨用ローラーによる塗布の後に、ヘラを用いて均すことで、区画領域においてゼオライト・珪藻土配合塗料が、薄く平滑に塗り広げられる。特に、表面に凹凸がある内装材の場合、ヘラを用いて均すことで塗料が内装材に密着するため、平滑で、かつ、剥がれにくい塗膜が形成される。
【0016】
また、この場合、上塗り工程では、砂骨用ローラーを用い、下塗りに比べて単位面積当り2割増し程度の質量のゼオライト・珪藻土配合塗料が上塗りされることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、砂骨用ローラーを用いてゼオライト・珪藻土配合塗料を塗布するだけで、簡単に区画領域の表面に所定のテクスチャーが形成される。また、下塗りの2割程度増量したゼオライト・珪藻土配合塗料を塗布することで、塗膜を厚く形成することができる。これにより、ゼオライト・珪藻土配合塗料が有する調湿性および脱臭性等の優れた機能を有効に発揮可能な区画領域を形成することができる。
【0018】
この場合、上塗り工程の後、ゼオライト配合エマルション塗料を塗布するトップコート工程を備えていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、ゼオライト配合エマルション塗料によるトップコート層(仕上げ面)が形成される。これにより、上塗りしたゼオライト・珪藻土配合塗料が経年劣化した場合でも、優れた調湿性および脱臭性等を有する区画領域を、簡単に再生(補修)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係る内装改修方法のフローチャートである。
【図2】第1実施形態に係る内装改修方法の下地処理工程を説明する模式図であって、(a)は壁面の立面図、(b)は壁面の断面図である。
【図3】第1実施形態に係る内装改修方法を実施した後の壁面の断面を模式的に示した図である。
【図4】第2実施形態および第3実施形態に係る内装改修方法のフローチャートである。
【図5】第2実施形態に係る内装改修方法の剥離部除去工程、段差補修工程および下地処理工程を説明する模式図であって、(a)は壁面の平面図、(b)は壁面の断面図である。
【図6】第3実施形態に係る内装改修方法の剥離部除去工程、段差補修工程および下地処理工程を説明する模式図であって、(a)は壁面の平面図、(b)は壁面の断面図である。
【図7】第5実施形態に係る内装改修方法を実施した後の壁面の断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照して、本発明の第1実施形態に係る内装改修方法について説明する。この内装改修方法は、居室内の壁や天井に貼付したビニールクロス等の内装材の上にゼオライト・珪藻土配合塗料を塗装し、調湿機能および脱臭機能等を有する塗膜を形成するものである。そこで、先ず、ゼオライト・珪藻土配合塗料について簡単に説明する。
【0022】
ゼオライト・珪藻土配合塗料は、砂骨用ローラー等での塗布が可能で、調湿、消臭およびホルムアルデヒドの吸着・分解等の機能を有する。当該塗料に含まれているゼオライトは、微小な細孔を有する多孔質の天然鉱物であり、水や有機分子の吸収・放出機能を備えている。また、当該塗料に含まれている珪藻土は、藻類の死骸が、海底や湖底に堆積してできた泥土(粘土状)で、断熱、遮音、調湿および脱臭等の機能を備えている。
【0023】
続いて、図1ないし図3を参照して、第1実施形態に係る内装改修方法について説明する。この内装改修方法は、内装下地2の上にシート状の内装材が貼付された壁または天井の1の区画領域に対して改修を施すものである。本実施形態では、説明を簡単にするために、壁面1に貼付されたビニールクロス3の改修について説明する。
【0024】
図1に示すように、内装改修方法は、内装下地2の上にシート状の内装材となるビニールクロス3が貼付された壁面1に対し、内装下地2が露出した要補修部分を、ビニールクロス3の表面と面一となるように補修材4を用いて補修する下地処理工程S1と、下地処理工程S1の後、要補修部分を含む壁面1に、ゼオライト・珪藻土配合塗料を下塗りする下塗り工程S2と、下塗り工程S2の後、壁面1にゼオライト・珪藻土配合塗料を上塗りし、所定のテクスチャーを形成する上塗り工程S3と、を備えている。第1実施形態に係る内装改修方法は、壁面1に貼付された複数枚のビニールクロス3の相互間の継目に生じた隙間が数ミリ程度(10mm未満)の場合および数ミリ角程度の微小な範囲の浮き若しくは破れまたは剥がれが生じている場合に行われる(図2(a)参照)。なお、言うまでもないが、内装改修作業の開始前に改修対象となる壁面1の周囲には、養生(マスキング)が行われている。
【0025】
図2に示すように、経年変化等により、ビニールクロス3の相互間の継目に数ミリ程度の隙間が生じている。下地処理工程S1では、壁面1に貼付された複数枚のビニールクロス3の相互間の継目に生じた隙間を、パテベラでなぞるようにして補修材4(ビニールクロス3の下地用のパテ材)を、当該隙間に埋め込んで行く(いわゆるパテ処理)。その後、埋め込んだ補修材4を乾燥させる。ビニールクロス3の継目に生じた隙間以外に、数mm程度の部分的な破れや剥がれ等が生じている場合にも、補修材4によるパテ処理が行われる。使用する補修材4としては、パテベラによる伸びが良く、乾燥が早く、かつ、乾燥後の体積変化が少ない(やせが少ない)合成樹脂エマルション系のものが好ましい。この下地処理工程S1により、内装下地2と壁面1との段差(凹凸)が解消される。
【0026】
図1に示すように、下塗り工程S2は、砂骨用ローラーを用いてゼオライト・珪藻土配合塗料を塗布する塗布工程S21と、塗布工程S21の後、均しヘラを用いて壁面1に塗布したゼオライト・珪藻土配合塗料を平滑に均す均し工程S22と、を有している。
【0027】
図3に示すように、塗布工程S21は、砂骨用ローラーを用いて壁面1にゼオライト・珪藻土配合塗料を下塗りし、下塗り層20を形成する。コテ等を用いて壁面1を塗るには熟練を必要とするが、本実施形態では、砂骨用ローラーを用いることで、誰でも簡単に広範囲の壁面1にゼオライト・珪藻土配合塗料の下塗りを実施することができる。なお、本実施形態では、砂骨用ローラーを用いて、1平方メートル当り220g(±10g)のゼオライト・珪藻土配合塗料を塗布している。
【0028】
均し工程S22では、均しヘラを用いて均すことで、壁面1に塗布したゼオライト・珪藻土配合塗料が、薄く平滑に塗り広げられる。一般的にビニールクロス3の表面には、模様となる凹凸がある場合が多いため、均しヘラを用いて均すことで、ゼオライト・珪藻土配合塗料がビニールクロス3の表面の凹部に入り込む。これにより、下塗り層20(ゼオライト・珪藻土配合塗料の塗膜)は、平滑化され、かつ、ビニールクロス3の表面に密着して剥がれにくくなる。なお、均し工程S22は、作業性を考慮して、下塗り層20の表面硬化前、半乾きの状態で速やかに、均しヘラを軽く押し付ながら滑らせて、下塗り層20の厚みを均一にするように行われる。
【0029】
その後、下塗り層20を硬化させる。なお、送風機を用いることで下塗り層20の硬化を促進させることもできる。これにより、硬化時間を短縮することができ、遅滞無く次の工程に移行することができる。
【0030】
次に、図3に示すように、上塗り工程S3では、砂骨用ローラーを用い、下塗り工程S2での下塗りに比べて単位面積当り約2割増の質量のゼオライト・珪藻土配合塗料を上塗りし、上塗り層30を形成する。なお、本実施形態では、1平方メートル当り260g(±20g)のゼオライト・珪藻土配合塗料を塗布している。本実施形態では、下塗りに比べ、2割程度増量したゼオライト・珪藻土配合塗料を塗布することで、上塗り層30を厚く形成し、ゼオライト・珪藻土配合塗料が有する調湿性および脱臭性等の優れた機能を有効に発揮可能な壁面1(内装)を形成している。
【0031】
また、上塗り工程S3では、目の粗い砂骨用ローラーを用いていることから、ゼオライト・珪藻土配合塗料を塗布するだけで、簡単に壁面1(上塗り層30)の表面に所定のテクスチャー(凹凸模様)が形成される。なお、所定のテクスチャーの例としては、スティップル状、コテパターン状、玉吹状、ウェーブ状等、適当な凹凸を設けることが考えられる。もちろん、凹凸模様を設けず、平滑な面に仕上げてもよい。
【0032】
なお、上塗り工程S3の後に、上塗り層30の表面を仕上げヘラで軽く均し、凹凸模様を整えるパターン形成工程S4を、更に実施してもよい。パターン形成工程S4は、仕上げヘラを一定の圧力で軽く押え付けるようにして一方向に動かし、上塗り層30の表面の凹凸模様の凸部の先端を僅かにつぶして整える(完全には潰さない。)。これにより、砂骨用ローラーを用いて塗布しただけの壁面1とは異なる風合いの壁面1に仕上げることができる。なお、パターン形成工程S4を実施するか否かは任意であるため、図1(後述する図4)では破線で表している。また、パターン形成工程S4に代えて、別途用意した任意のパターンローラーやコテを用いて上塗り層30の表面に任意の模様をつけてもよい。
【0033】
以上の構成により、ビニールクロス3の継目に隙間や微小な破れ等が生じている場合でも、仕上がった壁面1に隙間や微小な破れ等が現れることがなく、また、所定のテクスチャーが形成されているため、美観に優れた壁面1とすることができる。さらに、汚れがひどい場合にも、ゼオライト・珪藻土配合塗料と異なる下塗りのための塗料(シーラー)を別途用意する必要がなく、改修に要する手間とコストを削減することができる。
【0034】
(第2実施形態)
続いて、図4および図5を参照して、本発明の第2実施形態に係る内装改修方法について説明する。なお、第1実施形態に係る内装改修方法と異なる点のみを説明する。
図4に示すように、この内装改修方法は、ビニールクロス3の剥がれている部分を所定幅で除去する剥離部除去工程S11と、剥離部除去工程S11の後、所定幅よりも幅広に形成されたシート状の捲れ防止材5を、ビニールクロス3を除去した部分を覆うように貼付する段差補修工程S12と、が下地処理工程S1に先立って行われる。
【0035】
図5に示すように、剥離部除去工程S11は、壁面1に貼付された複数枚のビニールクロス3の相互間の継目に生じた隙間が10mm程度の場合および10mm角程度の範囲の浮き若しくは破れまたは剥がれが生じている場合に行われる。また、ビニールクロス3の端の部分に剥がれ等が生じている場合にも行われる。剥離部除去工程S11では、継目の隙間や剥がれ等が生じた部分を含む範囲に、所定の幅でカッターの刃を入れ、傷んだビニールクロス3を切除する。特に、ビニールクロス3の継目の周りを切除する場合には、継目と平行に、所定の幅で2列の切れ目を入れる(図5(a)参照)。
【0036】
段差補修工程S12では、ビニールクロス3を切除した部分を覆うように捲れ防止材5を貼付する。捲れ防止材5は、片面に粘着層を有する網目(格子)状に形成された薄いシート状の部材であり、ビニールクロス3を切除した幅よりも幅広に形成されている。捲れ防止材5は、所定幅で除去した部分を覆うように貼付されるため、除去した端部からビニールクロス3が更に剥がれてしまうことを防止することができる。なお、ビニールクロス3は、端(際)の部分から剥がれてくることが多いため、破れや剥がれ等が生じていなくとも、ビニールクロス3の端(際)の部分に対し、上記した剥離部除去工程S11および段差補修工程S12を実施することが好ましい。
【0037】
そして、下地処理工程S1では、捲れ防止材5を貼付した部分を、ビニールクロス3の表面と面一となるように(均すように)補修材4を埋め込んで補修する。これにより、ビニールクロス3の継目の隙間や剥がれ等に起因する凹凸のない、美しい壁面1に仕上げることができる。
【0038】
(第3実施形態)
続いて、図4および図6を参照して、本発明の第3実施形態に係る内装改修方法について説明する。なお、第1実施形態および第2実施形態に係る内装改修方法と異なる点のみを説明する。
図4に示すように、この内装改修方法は、ビニールクロス3の剥がれている部分を所定幅で除去する剥離部除去工程S11と、剥離部除去工程S11の後、ビニールクロス3と同一の厚みで、かつ、所定幅と同一の幅を有するパッチ材6を、ビニールクロス3を除去した部分に貼付する段差補修工程S12と、が下地処理工程S1に先立って行われる。
【0039】
図6に示すように、第3実施形態に係る剥離部除去工程S11は、第2実施形態に係るものと略同様であるが、壁面1に貼付された複数枚のビニールクロス3の相互間の継目に生じた隙間が20mm以上の場合および20mm角以上の範囲の浮き若しくは破れまたは剥がれが生じている場合に行われる。剥離部除去工程S11では、継目の隙間や剥がれ等が生じた部分を含む範囲に、100mm幅の定規をあてがい、その定規の幅でカッターの刃を入れ、傷んだビニールクロス3を切除する。
【0040】
第3実施形態に係る段差補修工程S12では、ビニールクロス3を切除した部分にパッチ材6を貼付する。パッチ材6は、ビニールクロス3と同一厚で、所定の幅(96mm)に形成され、裏面に粘着層を有するものである。パッチ材6は、両端に約2mmの隙間を空けてビニールクロス3を切除した部分に貼付される。これにより、内装下地2とビニールクロス3との段差(凹凸)をなくすことができる。なお、図示は省略するが、第2実施形態に記載したように捲れ防止材5を、既設のビニールクロス3とパッチ材6との継目(隙間)に貼付してもよい。
【0041】
そして、下地処理工程S1では、既設のビニールクロス3とパッチ材6との継目に補修材4を埋め込み、表面を面一となるように補修する。これにより、補修材4のみでは補修できない程の大きな破れや剥がれが生じている場合でも、ビニールクロス3の継目の隙間や剥がれ等に起因する凹凸のない、美しい壁面1に仕上げることができる。なお、第3実施形態に係る剥離部除去工程S11および段差補修工程S12を、継目の隙間が20mm以下の場合に実施してもかまわない。
【0042】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る内装改修方法について説明する。なお、第1ないし第3実施形態に係る内装改修方法と異なる点のみを説明する。第4実施形態に係る内装改修方法では、下塗り工程S2と上塗り工程S3とで、それぞれ異なるゼオライト・珪藻土配合塗料を使用している。具体的には、下塗り工程S2で用いるゼオライト・珪藻土配合塗料にのみ硬化剤が添加されている。
【0043】
この構成によれば、下塗りされたゼオライト・珪藻土配合塗料は、自然乾燥させるものと比べて、早く硬化する。これにより、下塗り層20の形成を迅速に行えるため、続く上塗り工程S3へと速やかに移行することができる。すなわち、内装改修全体に係る時間を大幅に短縮することができる。
【0044】
(第5実施形態)
続いて、図7を参照して、本発明の第4実施形態に係る内装改修方法について説明する。なお、第1ないし第3実施形態に係る内装改修方法と異なる点のみを説明する。
第5実施形態に係る内装改修方法は、上述した第1ないし第4実施形態に係る内装改修方法を施した後(数ヶ月から数年後)に補修する場合に、上塗り層30の上にゼオライト配合エマルション塗料を塗布し、トップコート層7を形成するトップコート工程を備えている。
【0045】
ゼオライト配合エマルション塗料は、下塗り工程S2および上塗り工程S3で用いたゼオライト・珪藻土配合塗料とは異なるものであり、多孔質の天然鉱物であるゼオライトの調湿性や脱臭性等の機能を有し、VPローラー等での塗布が可能な水性の塗料である。
【0046】
本実施形態におけるトップコート工程では、ゼオライト配合エマルション塗料を2回(下塗りおよび上塗り)塗布している。なお、1回当りの塗布量は150g(±10g)である。これにより、下塗りコート層71と上塗りコート層72とから成るトップコート層7が形成され、上塗り層が経年劣化した場合でも、優れた調湿性および脱臭性等を有する区画領域を、簡単に再生(補修)することができる。
なお、ゼオライト・珪藻土配合塗料の塗布量と、ゼオライト配合エマルション塗料の塗布量との合計が1700g/m^2を越えない範囲であれば、トップコート工程を繰り返し行っても、塗膜のひび割れやビニールクロス3の剥がれ等が生じないことが実験により証明されている。したがって、ゼオライト・珪藻土配合塗料による内装改修以降、トップコート工程のみを行う改修(補修)を、5〜7回行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
1:壁面、2:内装下地、3:ビニールクロス、4:補修材、5:捲れ防止材、6:パッチ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内装下地上にシート状の内装材が貼付された壁または天井の1の区画領域に対する内装改修方法であって、
前記内装下地が露出した要補修部分を、前記内装材の表面と面一となるように補修材を用いて補修する下地処理工程と、
前記下地処理工程の後、前記要補修部分を含む前記区画領域に、ゼオライト・珪藻土配合塗料を下塗りする下塗り工程と、
前記下塗り工程の後、前記区画領域に前記ゼオライト・珪藻土配合塗料を上塗りし、所定のテクスチャーを形成する上塗り工程と、を備え、
前記上塗りは、前記下塗りよりも厚塗りで仕上げることを特徴とする内装改修方法。
【請求項2】
内装下地上にシート状の内装材が貼付された壁または天井の1の区画領域に対する内装改修方法であって、
前記内装材の剥がれている部分を所定幅で除去する剥離部除去工程と、
前記剥離部除去工程の後、前記所定幅よりも幅広に形成されたシート状の捲れ防止材を、前記内装材を除去した部分を覆うように貼付する段差補修工程と、
前記段差補修工程の後、前記捲れ防止材を貼付した要補修部分を、前記内装材表面と面一となるように補修材を用いて補修する下地処理工程と、
前記下地処理工程の後、前記要補修部分を含む前記区画領域に、ゼオライト・珪藻土配合塗料を下塗りする下塗り工程と、
前記下塗り工程の後、前記区画領域に前記ゼオライト・珪藻土配合塗料を上塗りし、所定のテクスチャーを形成する上塗り工程と、を備え、
前記上塗りは、前記下塗りよりも厚塗りで仕上げることを特徴とする内装改修方法。
【請求項3】
内装下地上にシート状の内装材が貼付された壁または天井の1の区画領域に対する内装改修方法であって、
前記内装材の剥がれている部分を所定幅で除去する剥離部除去工程と、
前記剥離部除去工程の後、前記内装材と同一の厚みで、かつ、前記所定幅より僅かに狭い幅を有するパッチ材を、前記内装材を除去した部分に貼付する段差補修工程と、
前記段差補修工程の後、前記パッチ材と前記内装材との間の前記内装下地が露出した要補修部分に対し、前記内装材の表面と面一となるように補修材を用いて補修する下地処理工程と、
前記下地処理工程の後、前記要補修部分を含む前記区画領域に、ゼオライト・珪藻土配合塗料を下塗りする下塗り工程と、
前記下塗り工程の後、前記区画領域に前記ゼオライト・珪藻土配合塗料を上塗りし、所定のテクスチャーを形成する上塗り工程と、を備え、
前記上塗りは、前記下塗りよりも厚塗りで仕上げることを特徴とする内装改修方法。
【請求項4】
前記下塗り工程で用いる前記ゼオライト・珪藻土配合塗料にのみ硬化剤が添加されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の内装改修方法。
【請求項5】
前記下塗り工程は、
砂骨用ローラーを用いて前記ゼオライト・珪藻土配合塗料を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、ヘラを用いて前記区画領域に塗布した前記ゼオライト・珪藻土配合塗料を平滑に均す均し工程と、を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の内装改修方法。
【請求項6】
前記上塗り工程では、砂骨用ローラーを用い、前記下塗りに比べて単位面積当り2割増し程度の質量の前記ゼオライト・珪藻土配合塗料が前記上塗りされることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の内装改修方法。
【請求項7】
前記上塗り工程の後、ゼオライト配合エマルション塗料を塗布するトップコート工程を備えたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の内装改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−97507(P2012−97507A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247456(P2010−247456)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000150006)日本総合住生活株式会社 (35)
【出願人】(591076121)フジワラ化学株式会社 (5)
【Fターム(参考)】