説明

内装材の合わせ部構造

【課題】組み付け作業性を向上させることができ、第1内装材の端部と第2内装材の端部を確実に組み付けることができる内装材の合わせ部構造を提供する。
【解決手段】第1内装材1の端部1Jに挟持片5が設けられ、前記裏面1J1と挟持片5に第2内装材2の端部4Kが挟持され、挟持片5は、一側縁5S1が前記裏面1J1に対向するように第1内装材1の端部1Jに設けられるとともに、見切りAに直交する方向Bに対して傾斜し、第1内装材1の端部1Jを第2内装材2の端部4Kの意匠面側に移動させて、挟持片5の他側縁5S2を第2内装材2の端部4Kに押し付けるに伴って、挟持片5が板面5Mの外方側に弾性変形するとともに、第2内装材2の端部4Kが挟持片5を乗り越え、挟持片5が弾性復元して、第1内装材1の端部1Jの裏面1J1と挟持片5の一側縁5S1とが第2内装材2の端部4Kを挟持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
第1内装材の端部の裏面に、この裏面と対向する挟持片が設けられ、
第2内装材の端部が前記第1内装材の端部の裏面側に重ねられ、
前記第1内装材の裏面と前記挟持片に前記第2内装材の端部が挟持されている内装材の合わせ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記の内装材の合わせ部構造では、特許文献1に開示されているように、前記挟持片は、前記第1内装材の端部と前記第2内装材の端部との見切りに直交する方向に沿っていた。
また、挟持片の長さ(上下方向の長さ)は短く設定され、挟持片の剛性が比較的高かった。
そして、第2内装材の端部を第1内装材の端部の裏面と挟持片の間に見切りに直交する上方から挿入して、第1内装材の端部の裏面と挟持片に挟持させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−132984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造によれば、前記挟持片は、前記見切りに直交する方向に沿い、比較的剛性が高く、第2内装材の端部を前記見切りに直交する上方から挿入させるように構成してあったために、第2内装材の端部の挿入作業時に第2内装材の端部が挟持片の頂部に当接した場合、第2内装材の端部が挟持片に挿入方向とは反対側(上方)に真直ぐに押し返されていた。
その結果、第2内装材の端部を第1内装材の端部の裏面と挟持片の間に挿入しにくくなり、組み付け作業性が低下していた。
そして、第2内装材の端部が第1内装材の端部の裏面と挟持片に挟持されないまま第1内装材の端部と第2内装材の端部が組み付けられてしまい、第1内装材の端部と第2内装材の端部の合わせ部に大きな隙間ができたり、第1内装材の端部が第2内装材の端部に対して浮き上がったりする不具合があった。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、組み付け作業性を向上させることができ、第1内装材の端部と第2内装材の端部を確実に組み付けることができる内装材の合わせ部構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
第1内装材の端部の裏面に、この裏面と対向する挟持片が設けられ、
第2内装材の端部が前記第1内装材の端部の裏面側に重ねられ、
前記第1内装材の端部の裏面と前記挟持片に前記第2内装材の端部が挟持されている内装材の合わせ構造であって、
前記挟持片は、一側縁が前記第1内装材の端部の裏面に対向するように前記第1内装材の端部に設けられるとともに、前記第1内装材の端部と前記第2内装材の端部との見切りに直交する方向に対して傾斜し、
前記第1内装材の端部を前記第2内装材の端部の意匠面側に相対的に移動させて、前記挟持片の他側縁を前記第2内装材の端部に押し付けるに伴って、前記挟持片が前記挟持片の板面の外方側に弾性変形するとともに、前記第2内装材の端部が前記挟持片を乗り越え、前記挟持片が弾性復元して、前記第1内装材の端部の裏面と前記挟持片の一側縁とが前記第2内装材の端部を挟持する点にある。(請求項1)
【0006】
上記の構成により、前記第1内装材の端部を前記第2内装材の端部の意匠面側に相対的に移動させて、前記挟持片の他側縁を前記第2内装材の端部に押し付けるに伴って、前記挟持片が前記挟持片の板面の外方側に弾性変形するとともに、前記第2内装材の端部が前記挟持片を乗り越え、前記挟持片が弾性復元して、前記第1内装材の端部の裏面と前記挟持片の一側縁とが前記第2内装材の端部を挟持する。
前記挟持片は、前記第1内装材の端部と前記第2内装材の端部との見切りに直交する方向に対して傾斜しているから、前記挟持片の他側縁を前記第2内装材の端部に押し付けた時に、前記挟持片が挟持片の板面の外方側に弾性変形しやすくなる。これにより、組み付け作業性を向上させることができる。また、第1内装材の端部と第2内装材の端部を確実に組み付けることができる。
その結果、第2内装材の端部が第1内装材の端部の裏面と挟持片に挟持されないまま組み付けられてしまう不具合を回避することができ、第1内装材と第2内装材の合わせ部に大きな隙間が形成されたり、第1内装材の端部が第2内装材の端部に対して浮き上がったりすることを回避することができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記挟持片の挟持部が、前記第1内装材の端部の裏面に対する前記挟持片の接続部よりも薄肉に設定されていると、挟持片を挟持片の板面の外方側に弾性変形させやすくすることができ、第2内装材の端部が挟持片を乗り越えやすくすることができるとともに、挟持片を弾性復元させやすくすることができ、組み付け作業性をより向上させることができる。(請求項2)
【0008】
本発明において、
前記挟持片は頂部側に向かって次第に薄くなるように設定されていると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0009】
例えば、前記第1内装材の端部の裏面に対する前記挟持片の接続部と挟持片の挟持部との間に段差部を介在させることで前記挟持部の肉厚を前記接続部よりも薄く設定した構造では段差部に応力が集中するが、本発明の上記構成によれば、特定の部分への応力の集中を回避することができ、挟持片の破損を防止できる。(請求項3)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、
組み付け作業性を向上させることができ、第1内装材の端部と第2内装材の端部を確実に組み付けることができる内装材の合わせ部構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】フロントピラートリムと周辺部品の斜視図
【図2】フロントピラートリムとルーフライニングの合せ部構造の斜視図
【図3】フロントピラートリムの組み付けの様子を示す図であり、(a1)は組み付け前半を示す断面図(図2のA−A断面図)、(a2)は図3(a1)に対応する斜視図、(b1)は第2内装材の端部が挟持片を乗り越える状態を示す断面図(図2のA−A断面図)、(b2)は図3(b1)に対応する斜視図、(c1)は第2内装材の端部が第1内装材の端部の裏面と挟持片に挟持された状態を示す断面図(図2のA−A断面図)、(c2)は図3(c1)に対応する斜視図
【図4】フロントピラートリムとルーフライニングの合せ部構造の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、フロントピラーインナパネルに取り付けられるフロントピラートリム1(第1内装材に相当)と、ルーフパネルに取り付けられてフロントピラートリム1の上端部1Jに接続するルーフライニング2(第2内装材に相当)と、フロアパネル等に支持されるインストルメントパネル3とが自動車の前部に設けられている。フロントピラートリム1とルーフライニング2とインストルメントパネル3はいずれも樹脂で成形されている
【0013】
前記ルーフライニング2は上面視で車両前後方向に長い長方形状に形成され、ルーフライニング2の前側コーナー部からフロントピラートリム1に対する接続部4が下方に延びている。図4に示すように、前記接続部4の下端部4K(ルーフライニング2の端部に相当)はルーフライニング2の裏面側(車室外側W2)にフランジ状に折曲されている。
【0014】
また、フロントピラートリム1の車両前後方向の両側部が車室外側W2に折曲されて前側の側壁(図示せず)と後ろ側の側壁6(図1,図4参照)が形成されている。そして、フロントピラートリム1の上端部1Jとルーフライニング2の接続部4の下端部4Kが重ね合わされている。次に、その合わせ構造について説明する。
【0015】
[フロントピラートリム1の上端部1Jとルーフパネルの接続部4の下端部4Kとの合わせ構造]
図2,図3(c1),図3(c2),図4に示すように、フロントピラートリム1の上端部1Jの裏面1J1に、この裏面1J1と対向する板状の挟持片5が設けられ、ルーフライニング2の接続部4の下端部4Kが、フロントピラートリム1の上端部1Jの裏面1J1側に重ねられ、フロントピラートリム1の上端部1Jの裏面1J1と挟持片5にルーフライニング2の接続部4の下端部4Kが挟持されている。
【0016】
前記挟持片5は、車室内側W1の一側縁5S1がフロントピラートリム1の上端部1Jの裏面1J1に対向するようにフロントピラートリム1の上端部1Jに設けられるとともに、フロントピラートリム1の上端部1Jとルーフライニング2の接続部4の下端部4Kとの見切りA(図3(c1)参照)に直交する方向Bに対して傾斜している(図2参照)。つまり、フロントピラートリム1の上端部1Jの裏面1J1と挟持片5の一側縁5S1とでルーフライニング2の接続部4の下端部4Kを挟持している。
【0017】
図2に示すように、フロントピラートリム1の後ろ側の側壁6の上端部は上側ほど車両後方側Rrに位置するように湾曲し、挟持片5は上側ほど後ろ側の側壁6の上端部と離間するように傾斜している。Frは車両前方側を示している。
【0018】
[挟持片5の構造]
挟持片5の下半部5Aは、フロントピラートリム1の上端部1Jの裏面1J1に対する接続部に構成され、上半部5Aの車室内側W1の側部が前記裏面1J1に一体に接続している。また、挟持片5の上半部5Bは挟持部に構成され、この上半部5Bが下半部5Aよりも幅狭に成形されて、上半部5Bの車室内側W1の一側縁5S1が前記裏面1J1と間隔を空けて対向している。
【0019】
挟持片5の車室外側W2の他側縁5S2(下半部5Aと上半部5Bの他側縁)は、下端部側ほどフロントピラートリム1の上端部1Jの裏面1J1から車幅方向で離間するように傾斜している。フロントピラートリム1の上端部1Jの後ろ側の側壁6の内面6N(図2,図4参照)にはコの字状の台座7が立設され、この台座7の上壁7Jに挟持片5の下端部が一体に接続している。
【0020】
図3(a1),図3(a2)に示すように、フロントピラートリム1の上端部1Jをルーフライニング2の接続部4の下端部4Kの意匠面側に相対的に移動させて、挟持片5の他側縁5S2をルーフライニング2の接続部4の下端部4Kに押し付けると、それに伴って、図3(b1),図3(b2)に示すように、挟持片5が挟持片5の板面5Mの外方側(フロントピラートリム1の幅方向外方側、車両後方側Rr、後ろ側の側壁6の内面6N側)に弾性変形するとともに、ルーフライニング2の接続部4の下端部4Kが挟持片5を乗り越え、図3(c1),図3(c2)に示すように、挟持片5が弾性復元して、フロントピラートリム1の上端部1Jの裏面1J1と挟持片5の一側縁5S1とがルーフライニング2の接続部4の下端部4Kを挟持する。
【0021】
前記挟持片5の上半部5Bは下半部5Aよりも薄肉に設定され、挟持片5は頂部側に向かって次第に薄くなるように設定されている。
【0022】
上記の構成によれば、前記挟持片5は、フロントピラートリム1の上端部1Jとルーフライニング2の接続部4の下端部4Kとの見切りAに直交する方向Bに対して傾斜しているから、挟持片5の他側縁5S2をルーフライニング2の接続部4の下端部4Kに押し付けた時に、前記挟持片5が挟持片5の板面の外方側に弾性変形しやすくなる。これにより、組み付け作業性を向上させることができる。
また、フロントピラートリム1の上端部1Jとルーフライニング2の接続部4の下端部4Kを確実に組み付けることができる。
その結果、ルーフライニング2の接続部4の下端部4Kがフロントピラートリム1の上端部1Jの裏面1J1と挟持片5に挟持されないまま組み付けられてしまう不具合を回避することができ、フロントピラートリム1とルーフライニング2の合わせ部に大きな隙間が形成されたり、フロントピラートリム1の上端部1Jがルーフライニング2の接続部4の下端部4Kに対して浮き上がったりすることを回避することができる。
【0023】
また、前記挟持片5の上半部5Bが下半部5Aよりも薄肉に設定されているから、挟持片5を挟持片5の板面5Mの外方側に弾性変形させやすくすることができ、ルーフライニング2の接続部4の下端部4Kが挟持片5を乗り越えやすくすることができるとともに、挟持片5を弾性復元させやすくすることができ、組み付け作業性をより向上させることができる。
【0024】
例えば、挟持片5の上半部5Bと下半部5Aとの間に段差部を介在させることで上半部5Bの肉厚を下半部5Aの肉厚よりも薄く設定した構造では段差部に応力が集中するが、本発明の上記構成によれば、挟持片5は、頂部側に向かって肉厚が次第に薄くなるように設定されているから、特定の部分への応力の集中を回避することができ、挟持片5の破損を防止できる。
【0025】
[別実施形態]
(1) 前記第1内装材1はフロントピラートリム1以外の内装材であってもよく、前記第2内装材2はルーフライニング2以外の内装材であってもよい。
(2) ルーフライニング2の接続部4の下端部4Kとフロントピラートリム1の上端部1Jとの組み付けの際に、ルーフライニング2の接続部4の下端部4Kをフロントピラートリム1の上端部1Jの裏面1J1側に移動させて、ルーフライニング2の接続部4の下端部4Kを挟持片5の他側縁5S2に押し付けてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 第1内装材(フロントピラートリム)
1J 第1内装材の端部
1J1 第1内装材の端部の裏面
2 第2内装材(ルーフライニング)
4K 第2内装材の端部
5 挟持片
5A 挟持片の接続部(挟持片の下半部)
5B 挟持片の挟持部(挟持片の上半部)
5M 挟持片の板面
5S1 一側縁(挟持片の一側縁)
5S2 他側縁(挟持片の他側縁)
A 見切り
B 見切りに直交する方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1内装材の端部の裏面に、この裏面と対向する挟持片が設けられ、
第2内装材の端部が前記第1内装材の端部の裏面側に重ねられ、
前記第1内装材の端部の裏面と前記挟持片に前記第2内装材の端部が挟持されている内装材の合わせ構造であって、
前記挟持片は、一側縁が前記第1内装材の端部の裏面に対向するように前記第1内装材の端部に設けられるとともに、前記第1内装材の端部と前記第2内装材の端部との見切りに直交する方向に対して傾斜し、
前記第1内装材の端部を前記第2内装材の端部の意匠面側に相対的に移動させて、前記挟持片の他側縁を前記第2内装材の端部に押し付けるに伴って、前記挟持片が前記挟持片の板面の外方側に弾性変形するとともに、前記第2内装材の端部が前記挟持片を乗り越え、前記挟持片が弾性復元して、前記第1内装材の端部の裏面と前記挟持片の一側縁とが前記第2内装材の端部を挟持する内装材の合わせ部構造。
【請求項2】
前記挟持片の挟持部が、前記第1内装材の端部の裏面に対する前記挟持片の接続部よりも薄肉に設定されている請求項1記載の内装材の合わせ部構造。
【請求項3】
前記挟持片は頂部側に向かって次第に薄くなるように設定されている請求項1又は2記載の内装材の合わせ部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−136204(P2012−136204A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291635(P2010−291635)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】