説明

内装袋とその製造方法

【課題】外装容器に落下等の強い衝撃が与えられても、内部で破損をせず、収納物を外装容器の内部で漏らすようなことのない強度を向上させた合成樹脂製の内装袋を提供する。
【解決手段】筒状胴部2の上下端に筒口7付き天板3と底板4とからなる端材を接合して閉鎖され全体が可撓性を有し、天板3と底板4の周囲に筒状胴部2と溶着される溶着片8,9を垂直方向に連成しており、筒状胴部2が伸び率や耐衝撃性などの材質の特性が相違する内層材と外層材の二重構造で、内層材と外層材との間に前記天板3や底板4の溶着片8,9を挟み込んで溶着されている内装袋1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外装容器内に収納される可撓性を有する内装袋に関し、さらに詳しくは、外装容器に外部から加えられる衝撃に対しても破損したりすることのないように強度が向上した内装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、保形部材となるドラム缶等の比較的剛性のある外装容器の内側に装着し、その内部に各種液体や粉体を収納し、これらの保存や輸送を行う可撓性の内装容器として合成樹脂製の内装袋が使用されている。
【0003】
内装袋の使用により、外装容器の内壁に収納物が直接接触しないので、収納物を取り出した後、内装袋を外装容器から取り出せば、外装容器の内壁は収納物により汚染されておらず、使用後の外装容器内部を洗浄することなく、再び他の内装袋を装着することで、他の種類の収納物でもそのまま続けて収納することができる。
【0004】
上記のような内装袋は、熱可塑性合成樹脂シートを用いた筒状胴部の上下端に同じく熱可塑性合成樹脂製シートからなる天板と底板を溶着することでクローズ状の内装袋を成形するようにしていた。
【0005】
出願人は、先に、熱可塑性合成樹脂を用いた筒状体の下半部を内側に折り返して二重筒に形成し、この二重筒における内側筒及び外側筒の上端部をそれぞれ径方向の内側に向かう折り曲げ部とし、内側筒の折り曲げ部上に熱可塑性合成樹脂を用いた底板の周囲を重ね、外側筒の折り曲げ部上に熱可塑性合成樹脂を用いた天板の周囲を重ね、上記底板と外側筒の折り曲げ部の間に非溶着材を介在させた状態で、上記外側筒の折り曲げ部と天板及び内側筒の折り曲げ部と底板のそれぞれの重なり部分を周方向の全長にわたって同時に加熱溶着し、この溶着後に、天板に設けた筒口から上記非溶着材を抜き取る構成を採用することで、筒状胴部の上端側と下端側を閉鎖する溶着処理を同時に行うことで、クローズ状の袋体を得ることができる製造方法を提供した(特許文献1参照)。
【0006】
上記特許文献1の発明により、筒状胴部の上端側と下端側を閉鎖する溶着処理を行うことで、両端部を端部材で閉鎖したクローズ状の内装袋が得られるようになった。
【0007】
ところで、内装袋は、その寸法や形状がドラム缶等の外装容器の内部空間に一致していないと、例えば上下寸法が外装容器の内部高さより短いと、内装袋が外装容器の内部で落ち込んでしまい、直径(幅)が小さいと外装容器の上部開口にセットできなくなり、逆に、内装袋の寸法が外装容器の内部空間より大きいと、外装容器内で内装袋に皺が発生し、皺により収納物の本来の容量を減らしてしまったり、皺の間に収納物が貯まり、完全に取り出すことが出来なくなる等の問題がある。
【0008】
よって、内装袋の形状、寸法は、使用される外装容器の内部空間の形状、寸法に合わせた形状、寸法に作られており、外装容器内にセットされた場合、内装袋は皺無くぴったりと外装容器の内壁に接するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3723540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上、日本国内においては、上記のように外装容器に内装袋を使用するのが主流となっているが、諸外国においては、内装袋を使用せず、ドラム缶等の外装容器に直接収納物を収納することを主流とする地域もあり、これらの地域においては、使用後に外装容器を直接水洗い等で収納物の残渣を洗い出し、その後新たな収納物を収納する等で使用されている。
【0011】
しかし最近、これらの地域においても、外装容器の洗浄による土壌の汚染、汚濁の問題がクローズアップされてきており、環境問題意識の高まりから、今後は外装容器の洗浄を伴わなくてもよい内装袋を使用することが、世界的になされていくものと考えられる。
【0012】
ところで、外装容器の保管や使用、運搬方法は世界各地域で千差万別であり、外装容器を船から地面に落として降ろしたり、また、事故等により高さのある場所から外装容器が落下するような環境で使用される場合もある。
【0013】
外装容器が底面と側面の境目の角部分から地面に落下した場合、ドラム缶等の鉄製の外装容器であれば、外装容器の底面と側面の境目の角部分にへこみが生じる。一方、底面が地面とほぼ水平状態で落下した場合、落下直後に収納物が外側に広がり外装容器を横方向に押し広げ、この圧力により外装容器は横方向に膨張する。これは一瞬で生じる現象であるが、スローモーションで確認すると、落下の衝撃の大きさにもよるが、外装容器が横方向にかなり膨張するのがわかる。
【0014】
そのため、ドラム缶等の外装容器については、落下試験が行われ、所定の高さから落下しても、外装容器に破損が生じて収納物が流出しないようになっている。
【0015】
ところが、内装袋を内部に装着した外装容器の場合、鉄製のドラム缶等が底面が地面と水平で落下した際の外装容器の横方向の膨張に伴い、内装袋も横方向に膨張するが、合成樹脂製の内装袋は、ある限度を超えると、内装袋に膨張による加わる引っ張り力により破れて破損してしまうことがある。
【0016】
また、衝撃力は筒状胴部と天板や底板とを接合する溶着部分にも加わり、この溶着部分が衝撃による引っ張り力で引き剥がされてしまい、筒状胴部と天板や底板との境目に亀裂が生じてしまうこともある。
【0017】
たとえ外装容器が落下により破損しなくとも、内部で内装袋が破損や亀裂が生じてしまうと、収納物が内装袋の破損・亀裂箇所から外装容器に内部に流出してしまい、外装容器の内壁を汚染してしまうので、外装容器に内装袋を装着することで、使用後に内部を洗浄することなく続けて使用できるという、内装袋を使用する意義が失われてしまう。
【0018】
この発明は、上記のような課題を解決し、外装容器に落下等の強い衝撃が与えられても、内装袋や溶着箇所で破損や亀裂を生じず、収納物を外装容器の内部で漏らすようなことのない強度を向上させた合成樹脂製の内装袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記のような課題を解決するため、請求項1の発明は、外装容器内に収納されて使用され、筒状胴部の上下端に筒口付き天板と底板とからなる端材を接合して閉鎖され全体が可撓性を有する内装袋において、天板と底板の周囲に筒状胴部と溶着される溶着片を垂直方向に連成しており、筒状胴部が伸び率や耐衝撃性などの材質の特性が相違する内層材と外層材の二重構造で、内層材と外層材との間に前記天板や底板の溶着片を挟み込んで溶着されていることを特徴とする内装袋である。
【0020】
なお、この発明の場合、天板や底板の溶着片より内側に位置する筒状体を内層材、天板や底板の溶着片より外側に位置する筒状体を外層材としており、内層材又は外層材のそれぞれが必ずしも一層の筒状体である必要はなく、二層以上の多層構造であってもよい。
【0021】
請求項2の発明は、上記請求項1に記載の内装袋において、筒状胴部の上端付近の外周に、筒状胴部と略同径でかつ筒状胴部より上下寸法の短い筒状体を、その上部を前記天板と筒状胴部とを接合する溶着部分にて溶着して外装容器への引っ掛け用の係合片を形成した構成を採用する。
【0022】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2項に記載の内装袋において、天板にその周縁部に達しない部分的に凸部又は/及び凹部を筒口の部分を避けて設け、底板にその周縁部に達しない部分的に凹部を設けた構成を採用する。
【0023】
請求項4の発明は、上記請求項1に記載の内装袋の製造方法であって、筒状胴部の一方端に筒状胴部と略同径の円板状の鏝台を内側から嵌めておいて、底板の溶着片を筒状胴部の一方端の外層材と内層材の間に挿入してから鏝により鏝台上の内層材、溶着片、外層材の溶着を行い筒状胴部と底板を一体化し、次に、筒状胴部の他方端に筒状胴部の直径と略同径の直径のリング状とこのリングの対向2カ所で折り曲げて重ねた弓状とに変換自在となる治具をリング状にして嵌めておいて、天板の溶着片を筒状胴部の他方端の外層材と内層材の間に挿入してから鏝により鏝台上の内層材、溶着片、外層材の溶着を行い筒状胴部と天板を一体化し、その後、治具をリング状から弓状に変換して、天板の筒口から弓状の治具を外側に取り出すことを特徴とする内装袋の製造方法である。
【発明の効果】
【0024】
この発明の請求項1に記載の内装袋においては、筒状胴部と天板、筒状胴部と底板、それぞれの溶着箇所において内層材と外層材の特性の違う材質が一体化しており、それぞれの材質の持つ優劣を補完し合い、衝撃力をそれぞれの材質の特性により緩和し、突発的な衝撃に対して強い内装袋となる。
【0025】
また、溶着箇所を天板及び底板と一体の溶着片を、筒状胴部が内層材と外層材で挟んで少なくとも3層構造にて溶着しているため、内装袋の内側からの衝撃力が加わって内層材の溶着面が引っ張られても、溶着部分が厚み方向に深く、溶着部分の亀裂が生じにくく、更に、天板又は底板の溶着片が緩衝材となり、外層材の溶着面にかかる衝撃は減少しているので溶着部分は破損されずに保たれることになる。
【0026】
また、請求項2に記載の内装袋によれば、筒状胴部の上端部外側に短い筒状体を装着して形成した係合片をドラム缶等の外装容器上部に引っ掛けることにより内装袋の脱落防止となる。
【0027】
また、請求項3に記載の内装袋によれば、内装袋が装着され収納物を収納した状態の外装容器が落下した際、外装容器の膨張に伴い内装袋が横方向に膨張して、天板の基準平面と凸部(凹部)とに横方向への引っ張り力が加えられた際に、凸部(凹部)と基準平面の段差部分が、垂直から斜め方向になることで基準平面と凸部(凹部)が横方向に引っ張られる際の緩衝材の役割を果たし、その結果、内装袋に加わる引っ張り力による破損を防ぐことができ、構造的にもより耐衝撃性の高い内装袋となる。
【0028】
さらに、請求項4に記載の内装袋の製造方法によれば、二層構造の筒状胴部と、溶着片付きの天板及び底板を溶着することができ、請求項1乃至3に記載された内装袋を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の内装袋の斜視図である。
【図2】(a)(b)はこの発明の内装袋の筒状胴部の構成を示す斜視図である。
【図3】この発明の内装袋の天板、底板、係止片を示す斜視図である。
【図4】この発明の内装袋の製造に用いる治具を示す斜視図である。
【図5】(a)(b)(c)はこの発明の内装袋の製造方法を示す概要図である。
【図6】(d)(e)(f)はこの発明の内装袋の製造方法を示す概要図である。
【図7】(g)(h)はこの発明の内装袋の製造方法を示す概要図である。
【図8】(i)(j)(k)はこの発明の内装袋の製造方法を示す概要図である。
【図9】(l)(m)はこの発明の内装袋の製造方法を示す概要図である。
【図10】(n)(o)(p)はこの発明の内装袋の製造方法を示す概要図である。
【図11】この発明の内装袋の製造方法を示す一部拡大断面図である。
【図12】この発明の内装袋の製造に用いる治具で、(a)は斜視図、(b)は底面図、(c)は折り畳み状態の斜視図である。
【図13】この発明の内装袋の製造方法を示す一部拡大断面図である。
【図14】この発明の第2の実施形態の内装袋を示す平面図である。
【図15】この発明の第2の実施形態の内装袋の斜視図である。
【図16】この発明の第3の実施形態の内装袋の製造方法を示す一部拡大断面図である。
【図17】この発明の第4の実施形態の内装袋の製造方法を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
図1は、この発明の合成樹脂製の第1の実施形態の内装袋1を示すものである。
【0031】
内装袋1は、所定の長さに切断した筒状胴部2の上端部及び下端部に、天板3及び底板4を取り付けて全体をクローズ状に密閉化されたものである。
【0032】
前記筒状胴部2は、図2(a)(b)に示すように、インフレーション法などにより筒状に形成された、それぞれ材質が異なる材料からなる2つの熱収縮性合成樹脂の筒状体を内層材5と外層材6として重ねた二重構造としてあり、この実施形態では一例として内層材5はPEチューブ、外層材6はPE/Ny/PEチューブを用いている。
【0033】
PE(ポリエチレンフィルム)チューブは、ポリオレフィンの一種で、フィルムの素材としては最も多く利用されている。構造や密度の違いにより、高密度(HDPE)、中密度(MDPE)、低密度(LDPE)、リニア低密度(L−LDPE)、メタロセン触媒系リニア低密度(mL−LDPE)など多岐にわたって区分され、それぞれが比較的安価で、ヒートシール性に優れ、加工も容易なため幅広く使われており、この実施形態では内層材5として使用される。
【0034】
一方、NY(ナイロンを主原料とした二軸延伸のナイロンフィルム)は、タフネス性・耐ピンホール性に優れており、液体包装・ボイル・レトルト食品等、食品・非食品の包装用途に幅広く使用されており、この実施形態ではこれをPEと組み合わせたものを外層材6として使用している。
【0035】
天板3と底板4は、図3に示すような形状であり、中央部に内装袋に収納物を収納するために内部と導通する筒口7を中央部寄りに設けている天板3は、天板3より大きな円板状シートを中心に天板3の形状を残して周囲を加熱等により収縮させるなどして天板3に対して垂直方向に下方へ突出する溶着片8が天板3の全周囲にわたって形成され、また底板4についても天板3と同様に、底板4より大きな円板状シートを中心に底板3の形状を残して周囲を加熱等により収縮させるなどして底板4に対して垂直方向に上方に立ち上がる溶着片9が底板4の全周囲にわたって形成されている。
【0036】
前記筒状胴部2と天板3との接合は、二層構造の筒状胴部2の内層材5と外層材6との間に天板3の溶着片8を挟み、内層材5及び外層材6の上端が天板3付近に達した状態で接着するが、この実施例の内装袋1の場合、更に天板3付近には、図3で示すような、筒状胴部2とほぼ同じ直径の筒状で、寸法は数cm〜数十cm程度の係合片10が、外層材6の外側を覆うように設けてある。
【0037】
図1のように筒状胴部2の内層材5、外層材6、溶着片7及び係合片10が重なった部分の全周囲にわたる溶着部分11にて熱溶着を行って、筒状胴部2の内層材5と外層材6の接着と筒状胴部2と天板3の一体化を図ると同時に係合片10の取り付けを行う。
【0038】
溶着部分11にて溶着により取り付けられた係合片10は、溶着部分11より下側がフリーで、この部分をドラム缶等の外装容器の上端開口部の外側に引っ掛けて、内装袋1のドラム缶内への落ち込みを防止するものであり、この係合片10の材質は熱溶着可能な可撓性や或る程度の耐久性を持つ合成樹脂シートからなるものであれば特に材料は限定されるものではない。
【0039】
なお、筒状胴部2の下部と底板4との接合も、筒状胴部2と天板3との取り付けと同様に、二層構造の筒状胴部2の下端で、内層材5と外層材6との間に底板4の溶着片9を挟み、内層材5及び外層材6の下端が底板4付近に達した状態で溶着部分12にて熱溶着を行って、筒状胴部2の内層材5と外層材6の一体化を図ると同時に、筒状胴部2と底板4の一体化を行っている。
【0040】
上記内装袋1の製造方法としては、まず、既に図2(a)(b)で示したように、インフレーション法などにより筒状に形成された内層材5の外側に外層材6を重ねて、二重構造の筒状体となった筒状胴部2を構成する。
【0041】
図4で示す治具13は、円板状の鏝台14の中央から一方側に棒状体15を突出させた構造であり、この治具13を二重構造の筒状体となった筒状胴部2の内部に挿入し、棒状体15を内側にして円板状の鏝台14を筒状胴部2の一方端部に持って行き、筒状胴部2の端部付近を内側から保持するようにする(図5(a)(b))。
【0042】
治具13における鏝台14の材料は、実施形態では、一例としてステンレス製の上面にフッ素樹脂コートなどの非粘着性材料がコートされているが、これらについても、剛性を有する材料であれば実施形態のものに限定されず、金属製、樹脂製など種々の材質のものを使用できる。但し、内装袋の材料と熱により溶着することがないように、特に鏝台14の外周面側に関しては、四フッ化エチレン樹脂等の非溶着性を有する材料で構成するか、又は非溶着性材料を表面にコーティングしておくのが好ましい。
【0043】
この治具13の鏝台14によって内部から支持された付近における筒状胴部2端部の外層材6を内層材5から引き離して二点鎖線の部分で外側に折り返す(図5(c))。
【0044】
次に、底板4の溶着片9を筒状胴部2の外層材6を剥がした内層材5の上にかぶせるように装着し(図6(d)(e))、その後、外側に折り返していた外層材6を元の状態に戻し、溶着片9の上に外層材6が被さるようにする(図6(f))。
【0045】
次に、鏝16を鏝台14の部分に表面側から押し当てて加熱しながら筒状胴部2を回転させて鏝台14の周囲全体を溶着し、溶着完了の後、治具13を開放側(天側)から抜き出して一方が底板4にて閉鎖され、他方が開放した筒状胴部2が得られる(図7(g)(h))。
【0046】
図11は、底板4の溶着作業時の一部拡大断面図であり、内側の鏝台14側から順番に(筒状胴部2の)内層材5、(底板4の)溶着片9、(筒状胴部2の)外層材6が鏝16による加熱によって一体化される。
【0047】
次に、筒状胴部2の開放側端部に、図12で示すような、治具17を筒状胴部2の開放側端部に挿入し、筒状胴部2の開放端部付近を内側から保持するようにするする(図8(i))。
【0048】
図12は、治具17を示すもので、(a)は円形に広げた状態の斜視図、(b)は同底面図、(c)は折り畳んだ状態の斜視図である。
【0049】
図12(a)の円形に広げた状態の治具17は、リング状の形状で、平板をこのリング形状に切り抜いたように所定の厚みを有して剛性を確保した上で、リング形状の円の中心を通る直線によって分割されて対称2等分された2つの鏝台18からなり、この鏝台18の下側の分割された部分には蝶番19が設けられており、この蝶番19の部分で分割された鏝台18同士を合わせるように折り畳んで図12(c)に示すような弓状とすることができる。
【0050】
この治具17の各部寸法としては、まずリング状の鏝台18の外径は製造される内装袋1の内径と略同一寸法(若干大きめ)となっており、一例として、ドラム缶用の内装袋の製造に使用するものとしては、外径がドラム缶の直径とほぼ同じ約700mm、その直径方向での幅は約80〜120mm程度、厚みは両者とも10〜20mm程度としているが、これに限られること無く、製造される内装袋の種類や寸法に応じて適宜変更されるものであり、特に図12(c)の弓形にした時、天板3の筒口7から取り出せるような寸法であることも必要である。。
【0051】
治具17における鏝台18の材料は、実施形態では、一例としてステンレス製の上面にフッ素樹脂コートなどの非粘着性材料がコートされているが、これらについても、剛性を有する材料であれば実施形態のものに限定されず、金属製、樹脂製など種々の材質のものを使用できる。但し、内装袋の材料と熱により溶着することがないように、特に鏝台18の外周面側に関しては、四フッ化エチレン樹脂等の非溶着性を有する材料で構成するか、又は非溶着性材料を表面にコーティングしておくのが好ましい。
【0052】
次に、底板4の取り付けで行ったのと同様に、この治具17の鏝台18付近の筒状胴部2端部の外層材6を内層材5から引き離して外側に折り返して、筒口7付き天板3を、その溶着片8が治具17の鏝台18によって内部から支持された部分の内層材5の上に被さるように装着する(図8(j))。
【0053】
その後、外側に折り返していた外層材6を元の状態に戻し、溶着片8の上に外層材6が被さるようにする(図8(k))。
【0054】
次に、筒状胴部2の天板3を装着した側の端部に、筒状胴部2とほぼ同直径の短筒状となる、図3で示される係止片10をかぶせ、係止片10の上から鏝16を治具17の鏝台18の周囲側面の部分に沿って当てていく(図9(l)(m))。
【0055】
筒状胴部2を回転させて溶着部を形成すると、図1で示すような、内部の治具17の鏝台18上に、内側から内層材5、溶着片8、外層材6、係止片10が重なった溶着部分11が形成される(図10(n))。
【0056】
図13は、天板3の溶着作業時の一部拡大断面図であり、内側の鏝台18側から順番に(筒状胴部2の)内層材5、(天板3の)溶着片8、(筒状胴部2の)外層材6、係止片10が鏝16による加熱によって一体化される。
【0057】
その後、治具17を、蝶番19で折りたたんで、ドーナツ形状から図12(c)で示す弓状とし、天板3の筒口7から外部に引き抜く(図10(o))。
【0058】
こうして、二重構造の筒状胴部2の上下端部が天板3と底板4にて閉鎖され、天板3の周囲に係止片10が形成された内装袋1が形成される(図10(p))。
【0059】
このような材質の異なる内層材5と外層材6との二重構造の筒状胴部2を有し、内層材5と外層材6が天板3や底板4の溶着片8や9を挟んで溶着されている構造の内装袋1は、外部から衝撃が加わって外装容器が瞬間的に変形した際、収納物に加わる衝撃が内層材5に伝わった場合、内装袋1の内側からの衝撃力が加わっても、天板3又は底板4の溶着片8,9が緩衝材となり、溶着部分11,12にかかる衝撃は減少しているので溶着部分11,12は破損されずに内装袋1の気密は保たれる。
【0060】
また、筒状胴部2と天板3、及び筒状胴部2と底板4、それぞれの溶着部分11,12において内層材5と外層材6の特性の違う材質が一体化しており、それぞれの材質の持つ優劣を補完し合い、衝撃力をそれぞれの材質の特性により緩和し、突発的な衝撃に対して強くなる。
【0061】
図14と図15は、第2の実施形態の内装袋20を示すもので、図14は平面図、図15は斜視図であるが、先の図1乃至図13の実施形態と同一の役割を果たす部分は同一の符号を付して説明する。
【0062】
この実施形態における天板3には、大小の筒口7と筒口21が設けられており、内容物の取り入れ用、取り出し用など、用途により使い分けできるようになっており、この筒口7と筒口21の部分を避けるように凸部22と、凹部23が一体に設けられている。
【0063】
凸部22は、天板3の基準平面から高さ約2〜5cm程度の厚み分だけ立ち上がっており、全体が糸巻き型で中心から筒口7と筒口21が無い部分へは周縁部の近くにまで達しており、凹部23は、天板3と同心円状の深さ約2〜5cm程度の溝で、凸部22の部分を除く部分に設けられ、天板3に予め凸部22や凹部23の部分や、先の実施形態の図3で示すような溶着片8をかたどった金型を使用し熱成型等の方法により天板3と一体成形されている。
【0064】
底板4は、平板の円板状で、その中央部に底板4と同心円状で外側から見て凹み、内部空間側に約2〜5cm程度で突出する凹部24が形成されている。
【0065】
この凹部24についても、天板3における凸部22、凹部23、溶着片8と同様、底板4に予め凹部24や、先の実施形態の図3で示すような溶着片9の部分をかたどった金型を使用し熱成型等の方法により底板4と一体成形されている。
【0066】
上記の構成の内装袋20は、各種流体や粉体の収納用として用いることができ、例えばドラム缶の内側に装着し、ドラム缶の蓋にある上部注入口と内装袋20の筒口7や21の位置を合わせてドラム缶に蓋をして各種液体や粉体等の収納物の収納に使用し、天板3に設けた筒口7や21を通じて流体や粉体の出し入れが可能になる。
【0067】
また、ドラム缶等の外装容器に、落下による衝撃が加わり、収納物がその重量により外装容器を瞬間的に横方向に押し広げた際、合成樹脂製の内装袋20は、天板3や底板4に設けられた凸部22、凹部23、及び凹部24が、その周囲の天板3や底板4の基準平面との段差部分の垂直部分が斜めになることで天板3や底板4を拡張方向に広げ、内装袋20に加えられた横方向の引っ張り力の緩衝材としての役割を果たし、内装袋20の破損を防ぐことになる。
【0068】
よって、凸部22、凹部23及び24は、その周囲の天板3や底板4との基準平面との段差部分が緩衝材の役目を果たすので、なるべく凸部22、凹部23及び24の周囲全面に段差部分が生じるように、天板3や底板4の周縁部に達しないように部分的に設けられる必要がある。
【0069】
底板4に設けられる凹部24についても、天板に設けられた凸部22(凹部23)と同様に、底板の基準面との段差部分が落下の衝撃による膨張に伴う横方向への引っ張り力の緩衝の役割を果たしているので、底板の周縁部に達しない部分的に設けられ、1つ又は2以上であってもよい。
【0070】
以上のように、この実施形態の内装袋20によると、外装容器に転倒や高所からの落下等の大きな衝撃が加わった際、収納されている液体や粉体等の収納物が衝撃により内部で周囲へ広がり、外装容器を瞬間的に横方向に膨張させるようなことがあっても、内装袋20の天板3や底板4に設けてある凹部23,24や凸部22の段差部分がその段差を無くすように伸びることにより、外装容器の瞬間的な膨張に追随して膨張する内装袋の膨張を吸収することになり、筒状胴部2と天板3及び底板4との溶着部分11,12に加わる衝撃力を低下させ、より耐衝撃性の高い内装袋となる。
【0071】
なお、天板3に設けるものは凸部22のみ、凹部23のみでも両方設けてもかまわないし、それぞれが1つずつである必要はなく、複数個設けるようにしてもよく、一方、底板4に設けるのは外側から見て凹状となる凹部24のみとしたのは、外装容器から収納物を完全に取り去る際に、外装容器を斜めにして底板の一番下になる周縁部に筒口からホース等の管を入れて、この底板の一番下となった周縁部に溜まった収納物を吸い出すのであるが、仮に内装袋の底板に外部に突出する凸部を設けると、内装袋の内側から見て凸部の部分が凹部状態となり、この凹部分に入り込んだ収納物は、底板の周縁部まで落ち込まないので、収納物を完全に取り出せないことが生じるからである。
【0072】
図16は、この発明の第3の実施形態の内装袋において、鏝台18と鏝16を用いて天板3と筒状胴部2を溶着する作業を拡大した断面図であり、この実施形態においても、第1の実施形態と実施形態と同一の役割を果たす部分は同一の符号を付して説明する。
【0073】
この実施形態の内装袋は、その筒状胴部2が、3つの筒状体を重ねた三層構造となっているが、天板3の溶着片8より内側となる二層を内層材5,5とし、天板3の溶着片8より外側になる一層を外層材6とする。
【0074】
この実施形態の内層材5,5及び外層材6についても、特に材質は限定されず、種々の材料を用いることができ、更に、内層材5,5についても、必ずしも同じ材質のものを用いる必要がなく、別の材料のものを用いた二層の内層材とすることもでき、これら内層材5,5及び外層材6の材料の組み合わせにより、それぞれの材料の特質、特性を補完して、より強靭で耐衝撃性に優れた内装袋とすることができる。
【0075】
図17は、この発明の第4の実施形態の内装袋において、鏝台18と鏝16を用いて天板3と筒状胴部2を溶着する作業を拡大した断面図であり、この実施形態においても、第1の実施形態と実施形態と同一の役割を果たす部分は同一の符号を付して説明する。
【0076】
この実施形態の内装袋は、第3の実施形態と同様に三層構造となっているが、天板3の溶着片8より内側となる一層を内層材5とし、天板3の溶着片8より外側になる二層を外層材6,6とする点が相違している。
【0077】
以上、図16及び図17に示す第3、第4の実施形態のように、本発明の内装袋において、内層材5および外層材6は、必ずしも一層づつにする必要はなく、内層材5、外層材6のそれぞれを、同質材料又は異質材料の他層構造としてもよく、要するに、二層構造以上の三層、四層・・・となる多層構造の筒状胴部2を用い、いずれかの層間に、天板3の溶着片8や底板4の溶着片9を挟み込むようにして溶着した構造であればよい。
【0078】
以上、この発明の内装袋の実施の形態を説明したが、内装袋の種類や寸法、材料、等の詳細については、これらの実施形態にとらわれることなく、この発明の目的の範囲内で適宜変更して実施することができる。
【0079】
また、内装袋20の天板3に設けられた凸部22、凹部23、及び底板4に設けられた凹部24の形状、大きさ、段差の高さ等については、実施形態の記述や図示にとらわれることなく、落下の際の衝撃による内装袋の横方向への拡張を、これら凸部22、凹部23、及び凹部24の段差部分が緩衝材の役割を果たす範囲内で、適宜設計を変更して実施することができる。
【0080】
更に、実施形態で説明した内装袋1,20の天板3は、筒口を1つ乃至2つ設けたものであったが、これについても数は限定されず、要するに、この発明は、実施の形態にて示した形状・大きさの内装袋に限定されることなく、種々の内装袋に適用することができるものである。
【符号の説明】
【0081】
1 内装袋
2 筒状胴部
3 天板
4 底板
5 内層
6 外層
7 筒口
8 溶着片
9 溶着片
10 係止片
11 溶着部分
12 溶着部分
13 治具
14 鏝台
15 棒状体
16 鏝
17 治具
18 鏝台
19 蝶番
20 内装袋
21 筒口
22 凸部
23、24 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装容器内に収納されて使用され、筒状胴部の上下端に筒口付き天板と底板とからなる端材を接合して閉鎖され全体が可撓性を有する内装袋において、天板と底板の周囲に筒状胴部と溶着される溶着片を垂直方向に連成しており、筒状胴部が伸び率や耐衝撃性などの材質の特性が相違する内層材と外層材の二重構造で、内層材と外層材との間に前記天板や底板の溶着片を挟み込んで溶着されていることを特徴とする内装袋。
【請求項2】
筒状胴部の上端付近の外周に、筒状胴部と略同径でかつ筒状胴部より上下寸法の短い筒状体を、その上部を前記天板と筒状胴部とを接合する溶着部分にて溶着して外装容器への引っ掛け用の係合片を形成したことを特徴とする請求項1に記載の内装袋。
【請求項3】
天板にその周縁部に達しない部分的に凸部又は/及び凹部を筒口の部分を避けて設け、底板にその周縁部に達しない部分的に凹部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の内装袋。
【請求項4】
上記請求項1に記載の内装袋の製造方法であって、筒状胴部の一方端に筒状胴部と略同径の円板状の鏝台を内側から嵌めておいて、底板の溶着片を筒状胴部の一方端の外層材と内層材の間に挿入してから鏝により鏝台上の内層材、溶着片、外層材の溶着を行い筒状胴部と底板を一体化し、次に、筒状胴部の他方端に筒状胴部の直径と略同径の直径のリング状とこのリングの対向2カ所で折り曲げて重ねた弓状とに変換自在となる治具をリング状にして嵌めておいて、天板の溶着片を筒状胴部の他方端の外層材と内層材の間に挿入してから鏝により鏝台上の内層材、溶着片、外層材の溶着を行い筒状胴部と天板を一体化し、その後、治具をリング状から弓状に変換して、天板の筒口から弓状の治具を外側に取り出すことを特徴とする内装袋の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−6611(P2013−6611A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140213(P2011−140213)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(594010674)日新産商株式会社 (11)
【Fターム(参考)】