説明

内視鏡システム

【課題】内視鏡システムで通常使用している光源とは異なる光源を用いた場合であっても、使用者が表示画像の色味に違和感を抱くことが少ない表示画像を生成する。
【解決手段】白色LED12から射出された白色光L1を観察対象へ照射して、撮像素子22により撮像し、RGB画像信号を取得して、推定分光データ算出部33へ出力する。推定分光データ算出部33では、RGB画像信号と記憶部41に記憶されている推定分光マトリクスデータを用いてマトリクス演算を行なって、推定分光データ(q1〜q61)を算出する。擬似通常画像生成部36では、この推定分光データと記憶部41に記憶されている擬似補正システムマトリクスデータとを用いてマトリクス演算を行なって擬似3色画像信号(R’、G’、B’)を生成する。表示信号生成部36では、擬似RGB画像信号から擬似通常画像表示信号を生成して表示装置2へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察対象への光の照射により観察対象の像を撮像素子により撮像し、その撮像素子から出力された画像信号を取得する画像取得方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、体腔内の組織を観察する内視鏡装置が広く知られており、白色光によって照明された体腔内の観察対象を撮像して通常画像を得、この通常画像をモニタ画面上に表示する電子内視鏡装置が広く実用化されている。
【0003】
このような内視鏡装置においては、白色光を射出する光源としては通常キセノンランプが使用されている。一方、近年LEDの開発が進められ、内視鏡装置の光源としても実用化されつつある。
【0004】
特許文献1には、R光を射出するLED、B光を射出するLEDおよびR光を射出するLEDを用いて白色光を構成して画像を取得する内視鏡システムが記載されている。また、特許文献2においては、白色光を射出するLEDと、複数個の狭帯域光を射出するLEDとからなる光源を有するカプセルタイプの内視鏡システムが開示されている。この内視鏡システムにおいては、RGBモザイクフィルタが設けられた撮像素子により同時方式でカラーの通常画像の取得および狭帯域画像の取得を行っている。
【特許文献1】特開2007−29555号公報
【特許文献2】特開2006−68488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、内視鏡システムの光源としては、キセノンランプが用いられることが多く、キセノンランプから射出された光を照射して取得したカラー画像を使用者は見慣れている。キセノンランプから射出される光の分光放射特性を図1に示す。一方、白色LEDの分光放射特性は、LEDのタイプによりさまざまに異なっている。例えば、青色LEDと蛍光体を組み合わせることにより生成した白色LEDから射出される光の分光放射特性を図2に示す。
【0006】
このように、白色LEDから射出される光の分光放射特性が、キセノンランプの分光放射特性とはかなり異なる場合には、白色LEDから発せられた光を観察対象に照射して画像を取得した場合、その表示画像は青みを帯びた表示画像となり、キセノンランプから発せられた光を用いて取得した表示画像に慣れた使用者は、表示画像の色味に違和感を持つ虞がある。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、通常使用している光源とは異なる光源を用いた場合であっても、使用者が表示画像の色味に違和感を抱くことが少ない表示画像を生成することができる内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内視鏡システムは、観察対象へ照射する照明光を射出する光源部と、
前記照明光が照射された前記観察対象の像を撮像する撮像素子を備える撮像部と、
前記撮像素子から出力された画像信号に基づいて、表示画像を生成するプロセッサ部とを備える内視鏡システムにおいて、
前記照明光の分光放射特性および前記撮像手段の分光特性に基づいた推定分光マトリクスを記憶する第1の記憶部と、
前記照明光とは分光放射特性が異なる擬似照明光の分光放射特性および前記撮像手段の分光特性に基づいた擬似システムマトリクスを記憶する第2に記憶部と、
前記撮像素子により取得された画像信号と、前記第1の記憶部に記憶されている前記推定分光マトリクスとを用いて、推定分光マトリクスデータを算出する推定分光データ算出手段と、
該推定分光データ算出手段において算出された推定分光データと前記第2の記憶部に記憶されている擬似システムマトリクスとを用いて、表示画像として擬似通常画像を生成する擬似通常画像生成手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
なお、なお、ここで「照明光」とは白色光であってもよいし、あるいは所望の波長帯域の光であってもよい。また白色光であれば、キセノンランプのような単一の光源から射出される光であってもよいし、R光、G光、B光の3色の光源から射出される光を重畳した光であってもよい。R光、G光、B光の3色の光から構成される光である場合には、R光、G光、B光の3色の光は同時に照射されるものであってもよいし、あるいは順次照射されるものであってもよい。また、撮像部とプロセッサ部とは直接電気的に接続されるものであってもよいし、あるいは無線等により接続されるものであってもよい。
【0010】
また、前記光源部および前記第1の記憶部は、前記撮像部内に設けられていてもよい。さらに、前記光源部は、LEDからなるものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の内視鏡システムによれば、撮像素子により取得された画像信号と、記憶されている推定分光マトリクスとを用いて、推定分光マトリクスデータを算出し、この推定分光データと、照明光とは分光放射特性が異なる擬似照明光の分光放射特性および撮像手段の分光特性に基づいた擬似システムマトリクスとを用いて、表示画像としての擬似通常画像を生成することにより、観察対象へ照明光ではなく、擬似照明光を照射した場合に得られる画像信号に基づく表示画像を表示することができ、通常使用している光源とは異なる光源を用いた場合であっても、通常使用している光源を用いて撮像した表示画像と近時した表示画像を表示することができ、使用者が表示画像の色味に違和感を抱くことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の画像取得装置の一実施形態を用いた内視鏡システムについて詳細に説明する。図3は、本発明の実施形態を用いた内視鏡システム5の概略構成を示すものである。本内視鏡システムは、白色光の照射および狭帯域光の照射を時分割で行い、白色光の照射により撮像した通常画像と、狭帯域光の照射により撮像した狭帯域画像とを並べて表示装置に表示するものである。
【0013】
内視鏡システム1は、図3に示すように、被験者の体腔内に挿入され、観察対象を観察するためのスコープユニット10と、このスコープユニット10が着脱自在に接続されるプロセッサユニット30とから構成されている。
【0014】
スコープユニット10は、照明用光学系11、LED12〜14、該LED12〜14を駆動するLED駆動部16、結像光学系21、撮像素子22、該撮像素子22を駆動する撮像素子駆動部25、撮像素子22から出力されて信号を処理するCDS/AGC回路23、該CDS/AGC回路23から出力された信号をA/D変換するA/D変換部24、および各部の動作を制御するスコープコントローラ26を備えている。
【0015】
LED12は、通常画像撮像用の白色光L1を射出するLEDであり、LED13および14は、狭帯域画像撮像用の狭帯域光を射出するLEDである。図2は白色LED12の発光スペクトルを示すものである。また、図2は狭帯域LED13および14の発光スペクトルを示すものであり、この図2に示すように、LED13からは、中心波長415nm、半値幅20〜40nmの狭帯域光がL2射出され、LED14からは中心波長540nm、半値幅20〜40nmの狭帯域光L3が射出される。
【0016】
撮像素子22はたとえばCCDやCMOS等からなり、結像光学系21により結像された観察対象像を光電変換して画像情報を取得するものである。この撮像素子22には、微小なRGBフィルタから構成される色フィルタ27が撮像面の前面に設けられている。撮像素子22により取得された画像信号は、CDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)回路23によりサンプリングおよび増幅され、A/D変換部24によりA/D変換され、その後プロセッサユニット30に出力される。
【0017】
プロセッサユニット30は、スコープユニット10から入力された画像信号から表示用の画像を生成するプロセッサ部31と、該プロセッサ部31へ接続され、推定分光マトリクスおよび擬似システムマトリクスを記憶する記憶部41と、キーボードあるいはタッチパネルなどからなる入力部42とを備えている。なお、推定分光マトリクスおよび擬似システムマトリクスの詳細は後述する。
【0018】
プロセッサ部31は、スコープユニット10から入力された画像信号からR成分、G成分、B成分の3色画像信号を取得するRGB信号取得部32と、RGB画像信号と推定分光マトリクスデータとを用いて推定分光データを算出する推定分光データ算出部33と、この推定分光データと擬似システムマトリクスデータとを用いて、擬似通常画像信号を生成する擬似通常画像生成部34と、狭帯域光L2および狭帯域光L3の照射により取得されたRGB画像信号に基づいて狭帯域画像信号を生成する狭帯域画像生成部35と、補正通常画像生成部34で生成された補正通常画像信号と、狭帯域画像生成部35において取得された狭帯域画像信号とに対し、種々の処理を施して表示用画像信号を生成する表示信号生成部36とを備えている。
【0019】
記憶部41には、観察対象の推定分光データを算出するための推定分光マトリクスデータが記憶されている。推定分光マトリクスデータはテーブルとして記憶部32にあらかじめ記憶されている。この推定分光マトリクスデータは、観察対象へ照射される白色光L1の分光放射率と、撮像素子22の分光感度特性および色フィルタ27の波長透過特性等を含む撮像システム全体の分光特性とを加味したマトリクスデータであり、撮像素子22により撮像されたRGB画像信号と、この推定分光マトリクスデータとの演算により、白色光L1の分光放射特性や撮像システムの固有の分光特性等に依存しない、観察対象の分光データを得ることができる。なお、この推定分光マトリクスデータの詳細は、特開2003−93336号公報あるいは特開2007−202621号公報などに開示されている。本実施形態において、この記憶部32に格納されている推定分光マトリクスデータの一例は次の表1のようになる。
【表1】

【0020】
この表1のマトリクスデータは、例えば400nmから700nmの波長域を5nm間隔で分けた61の波長域パラメータ(係数セット)p1〜p61とから構成されている。
【0021】
また、記憶部41には、観察対象の推定分光データから擬似通常画像信号を算出するための擬似システムマトリクスデータが記憶されている。擬似システムマトリクスデータはテーブルとして記憶部32にあらかじめ記憶されている。
【0022】
まず、通常のシステムマトリクスデータについて説明し、その後で擬似システムマトリクスデータについて説明する。システムマトリクスは、観察対象に照射される白色光L1の分光放射率と、撮像素子22の分光感度特性および色フィルタ27の波長透過特性等を含む撮像システム全体の分光特性とを加味したマトリクスデータであり、観察対象の分光反射率と、このシステムマトリクスとの演算により、白色光L1の分光放射特性や撮像システムの固有の分光特性等を反映した観察対象の3色画像信号を得ることができる。なお、システムマトリクスと前述の推定分光マトリクスとは一般化逆行列の関係となる。
【0023】
一方、擬似システムマトリクスは、擬似通常画像を生成する際に使用する擬似光源、例えばキセノンランプから射出された光の分光放射率と、撮像素子22の分光感度特性および色フィルタ27の波長透過特性等を含む撮像システム全体の分光特性とを加味したシステムマトリクスデータである。観察対象の分光反射率と、この擬似システムマトリクスとの演算により、キセノンランプから射出された光の分光放射特性や撮像システムの固有の分光特性等を反映した観察対象の3色画像信号を得ることができる。すなわち、観察対象へ白色光L1ではなく、キセノンランプから射出された光を照射した場合に得られる画像信号を演算により算出することができる。本実施形態において、この記憶部41に格納されている擬似システムマトリクスデータの一例は次の表2のようになる。
【表2】

【0024】
この表2のマトリクスデータは、R画像信号、G画像信号、B画像信号と対応する3つの画像信号パラメータ(係数セット)pr、pg、pbから構成されている。
【0025】
表示装置2は、液晶表示装置やCRT等から構成され、プロセッサユニット30から出力された表示用の画像信号に基づいて擬似通常画像および狭帯域画像を表示するものである。
【0026】
次に、本実施形態の内視鏡システムの動作について説明する。まず、スコープユニット10の挿入部分が体腔内に挿入された後、プロセッサユニット30のプロセッサ部31からの制御信号に基づいて、LED駆動部16は、白色LED12と、狭帯域LED13および14とを1/60秒間隔で交互に駆動する。
【0027】
白色LED12、または狭帯域LED13および14が駆動されると、この白色LED12から射出された白色光L1または狭帯域LED13および14から射出された狭帯域光L2およびL3は、照明用光学系11を介して観察対象に照射される。撮像素子駆動部25によって駆動された撮像素子22が観察対象の像を撮像して、画像信号を出力する。この画像信号はCDS/AGC回路23で相関二重サンプリングと自動利得制御による増幅を受けた後、A/D変換部24でA/D変換されて、デジタル信号としてプロセッサユニット30のRGB信号取得部32へ入力される。
【0028】
RGB信号取得部32では、撮像素子22から出力された画像信号からR成分、G成分、B成分からなるRGB画像信号を生成する。なお、白色光L1の照射により生成されたRGB画像信号は、推定分光データ算出部33へ出力され、狭帯域光L2およびL3の照射により生成されたRGB画像信号は、狭帯域画像信号生成部35へ出力される。なお、狭帯域光L2は中心波長415nmの光であるためB画像信号に対応し、狭帯域光L3は中心波長540nmの光であるためG画像信号に対応する。なお、R画像信号は赤色の光が観察対象へ照射されていないため、ゼロ値として出力される。
【0029】
RGB信号取得部32から白色光L1の照射によるRGB画像信号が入力されると、推定分光データ算出部33では、画素毎に、RGB信号取得部32から出力された白色光L1によるRGB画像信号と、記憶部41に記憶されている推定分光マトリクスデータを用いて、次式で示すマトリクス演算を行なって推定分光データ(q1〜q61)を作成し、擬似通常画像生成部34へ出力する。
【数1】

【0030】
擬似通常画像生成部34は、この推定分光データ(q1〜q61)と、記憶部41に記憶されている擬似補正システムマトリクスデータ(pr,pg,pb)とを用いて、次式で示すマトリクス演算を行なって補正3色画像信号(R’、G’、B’)を生成し、適宜各種の信号処理を施した上、擬似RGB画像信号として表示信号生成部36へ出力する。
【数2】

【0031】
その後、RGB信号取得部32から狭帯域光L2および狭帯域光L3の照射によるRGB画像信号が入力される。なお、前述したように狭帯域光L2は中心波長415nmの光であるためB画像信号として、狭帯域光L3は中心波長540nmの光であるためG画像信号として入力される。なお、R画像信号は赤色の光が観察対象へ照射されていないため、画像信号は入力されない。
【0032】
狭帯域画像生成部35では、入力されたB画像信号を表示用のB画像信号およびR画像信号へ割り当て、また入力されたG画像信号を、表示用のG画像信号へ割り当てる。この表示用のRGB画像信号へ適宜各種の信号処理を施した上、狭帯域RGB画像信号として表示信号生成部36へ出力する。
【0033】
表示信号生成部36では、擬似通常画像生成部34から入力された擬似RGB画像信号から輝度信号Yと色差信号Cで構成されるY/C信号を生成し、さらに、このY/C信号へ対し、I/P変換およびノイズ除去などの各種信号処理を施して擬似通常画像表示信号を生成する。また、狭帯域画像生成部35から入力された狭帯域RGB画像信号から輝度信号Yと色差信号Cで構成されるY/C信号を生成し、さらに、このY/C信号へ対し、I/P変換およびノイズ除去などの各種信号処理を施して狭帯域画像表示信号を生成する。狭帯域画像表示信号と擬似通常画像表示信号とを合成して表示信号を生成して表示装置2へ出力する。なお、表示装置2には、1/30秒間隔で更新される動画が表示される。
【0034】
表示装置2は、入力された表示信号に基づいて、擬似通常画像および狭帯域画像を表示する。擬似通常画像は、観察対象へ白色光L1ではなく、キセノンランプから射出された光を照射した場合に得られる画像信号を演算により算出して表示したものである。
【0035】
以上の説明で明らかなように、本実施の形態においては、観察対象へ白色光L1ではなく、キセノンランプから射出された光を照射した場合に得られる画像信号に基づく表示画像を表示するので、通常使用しているキセノンランプとは異なる光源を用いた場合であっても、使用者が表示画像の色味に違和感を抱くことを防止することができる。
【0036】
次に、図4を用いて、本発明の第2の実施形態について説明する。図4は、本発明の第2の実施形態である内視鏡システム6の概略構成図を示すものである。なお、図1に示す第1の実施形態である内視鏡システム5と同一の部位については、同符号を付与し、説明を省略する。
【0037】
図4に示すように、本発明の実施形態を用いた内視鏡システム6は、被験者の体腔内に挿入され、観察対象を観察するためのスコープユニット50と、このスコープユニット50が着脱自在に接続されるプロセッサユニット51とから構成されている。
【0038】
本内視鏡システム6は、プロセッサユニット51に設けられた記憶部52には、擬似システムマトリクスのみが記憶され、推定分光マトリクスは、スコープユニット50に設けられた記憶部53に記憶されている点が、図3に示す内視鏡システム5とは異なるものである。
【0039】
RGB信号取得部32から白色光L1の照射によるRGB画像信号が入力されると、推定分光データ算出部33では、画素毎に、RGB信号取得部32から出力された白色光L1によるRGB画像信号と、スコープコントローラ26を介して記憶部53から読み出した推定分光マトリクスデータを用いて推定分光データ(q1〜q61)を作成し、擬似通常画像生成部34へ出力する。なお、スコープユニット50の記憶部53に記憶されている推定分光マトリクスデータは、スコープユニット50に設けられている白色LED12の分光放射率を反映したものである。
【0040】
一般に、プロセッサユニットとスコープユニットとは着脱自在に構成されている。またスコープユニットは使用する毎に洗浄が必要であり、そのため一台のプロセッサユニットに対して、複数個のスコープユニットが順次接続されて使用される。一方、白色LEDの分光放射率は、個々のバラツキが大きい。このため、白色LED12の分光放射率を反映する推定分光マトリクスがプロセッサユニットに設けられた記憶部に記憶されている場合には、この推定分光マトリクスは、個々のスコープユニットに搭載されている白色LED12の平均的な分光放射率を反映したものであり、個々の白色LED12の分光反射率を正確に反映しているとは言い難い。一方、本実施の形態においては、スコープユニット50を製造する際に、このスコープユニット50に搭載されている白色LED12に対応する推定分光マトリクスを求めて、記憶部53へ記憶させる。このため、記憶部53へ記憶されている推定分光マトリクスは、白色LED12の分光放射率をより正確に反映したマトリクスである。
【0041】
擬似通常画像生成部34は、この推定分光データ(q1〜q61)と、記憶部52に記憶されている擬似補正システムマトリクスデータとを用いて、マトリクス演算を行なって補正3色画像信号(R’、G’、B’)を生成し、適宜各種の信号処理を施した上、擬似RGB画像信号として表示信号生成部36へ出力する。
【0042】
表示信号生成部36では、この擬似RGB画像信号から擬似通常画像表示信号を生成し、また狭帯域画像生成部35から入力された狭帯域RGB画像信号から狭帯域画像表示信号を生成し、狭帯域画像表示信号と擬似通常画像表示信号とを合成して表示信号を生成して表示装置2へ出力する。
【0043】
以上の説明で明らかなように、本実施の形態の内視鏡システムにおいては、第1の実施の形態と同様な効果が得られ、さらに推定分光マトリクスが白色LED12の分光反射率をより正確に反映したものであるため、より正確な推定分光データ(q1〜q61)を得ることができ、より実際の通常画像に近く、信頼性の高い擬似通常画像を表示することができる。
【0044】
なお、上記第1の実施形態および第2の実施形態においては、白色光L1用の光源として白色LED12を用いたが、これに限定されるものではなく、R光を射出するLED、G光を射出するLEDおよびB光を射出するLEDの3つの光源を用いてもよい。あるいはR光を射出するLEDと、LED13、およびLED14とを白色光用の光源として使用することもできる。
【0045】
次に、図5を用いて、本発明の第3の実施形態について説明する。図5は、本発明の第5の実施形態である内視鏡システム7の概略構成図を示すものである。なお、図1に示す第1の実施形態である内視鏡システム5と同一の部位については、同符号を付与し、説明を省略する。
【0046】
内視鏡システム7は、図5に示すように、被験者の体腔内に挿入され、観察対象を観察するためのスコープユニット60と、このスコープユニット60が着脱自在に接続されるプロセッサユニット61とから構成されている。
【0047】
スコープユニット60には、光源としてLED62が設けられている。LED62は、図6に示すような分光放射率を有する光L4を射出するものである。光L4は、430nmおよび540nmにおいて放射率のピークを有する。すなわち、通常画像撮像用の白色光と、狭帯域画像撮像用の狭帯域光とを同時に射出するLEDである。
【0048】
プロセッサユニット61は、スコープユニット60から入力された画像信号から表示用の画像を生成するプロセッサ部63と、該プロセッサ部63へ接続され、推定分光マトリクスおよび擬似システムマトリクスを記憶する記憶部41と、入力部42とを備えている。
【0049】
プロセッサ部63は、図3に示す第1の実施形態である内視鏡システム5のプロセッサ部31のRGB信号取得部32の代わりに、撮像素子22から出力された画像信号からR成分、G成分、B成分からなるRGB画像信号を生成し、推定分光データ算出部33および狭帯域画像信号生成部35へ出力するRGB画像取得部64を備えている。他の構成は内視鏡システム5のプロセッサ部31の構成と同様である。
【0050】
スコープユニット60の挿入部分が体腔内に挿入された後、プロセッサユニット61のプロセッサ部63からの制御信号に基づいて、LED駆動部16は、LED62を駆動する。LED62から射出された光L4は、照明用光学系11を介して観察対象に照射される。 撮像素子駆動部25によって駆動された撮像素子22が観察対象の像を撮像して、画像信号を出力する。この画像信号はCDS/AGC回路23で相関二重サンプリングと自動利得制御による増幅を受けた後、A/D変換部24でA/D変換されて、デジタル信号としてプロセッサユニット63のRGB信号取得部64へ入力される。
【0051】
RGB信号取得部64では、撮像素子22から出力された画像信号からR成分、G成分、B成分からなるRGB画像信号を生成し、推定分光データ算出部33および狭帯域画像信号生成部35へ出力する。
【0052】
以下、図3に示す第1の実施形態である内視鏡システム5のプロセッサ部31と同様に、推定分光データ算出分33で推定分光データ(q1〜q61)を作成し、擬似通常画像生成部34で擬似RGB画像信号を算出して表示信号生成部36へ出力する。なお、記憶部41に記憶されている推定システムマトリクスは、LED62から射出される光L4の分光反射率を反映するものである。
【0053】
以上の説明で明らかなように、本実施の形態の内視鏡システムにおいては、第1の実施の形態と同様な効果が得られ、さらに一つのLEDのみから構成される簡易な光源を用いて、狭帯域画像と擬似通常画像とを表示することができる。
【0054】
また、上記実施形態の内視鏡システムにおいては、スコープユニットの撮像素子として、RGBの色フィルタを有する原色型撮像素子を用いるようにしたが、これに限らず、例えばCMY(シアン、マゼンダ、イエロー)の色フィルタを有する補色型撮像素子を用いてもよい。
【0055】
また、本実施の形態のような、スコープ部を備えた内視鏡装置にかぎるものではなく、腹腔鏡やコルポスコープあるいはカプセル内視鏡などにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】キセノンランプから射出された光の分光放射率を示す図
【図2】白色LEDから射出された光の分光放射率を示す図
【図3】本発明の第1の実施形態である内視鏡システムの概略構成を示すブロック図
【図4】本発明の第2の実施形態である内視鏡システムの概略構成を示すブロック図
【図5】本発明の第3の実施形態である内視鏡システムの概略構成を示すブロック図
【図6】LEDから射出される光の分光放射率を示す図
【符号の説明】
【0057】
5,6,7 内視鏡システム
2 表示装置
10,50,60 スコープユニット
11 照明用光学系
12,13,14,62 LED
16 LED駆動部
21 結像光学系
22 撮像素子
23 CDS/AGC回路
24 A/D変換部
25 撮像素子駆動部
26 スコープコントローラ
27 色フィルタ
30,51,61 プロセッサユニット
31,63 プロセッサ部
32,64 RGB信号取得部
33 推定分光データ算出部
34 擬似通常画像生成部
35 狭帯域画像生成部
36 表示信号生成部
41 記憶部
42 入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象へ照射する照明光を射出する光源部と、
前記照明光が照射された前記観察対象の像を撮像する撮像素子を備える撮像部と、
前記撮像素子から出力された画像信号に基づいて、表示画像を生成するプロセッサ部とを備える内視鏡システムにおいて、
前記照明光の分光放射特性および前記撮像手段の分光特性に基づいた推定分光マトリクスを記憶する第1の記憶部と、
前記照明光とは分光放射特性が異なる擬似照明光の分光放射特性および前記撮像手段の分光特性に基づいた擬似システムマトリクスを記憶する第2に記憶部と、
前記撮像素子により取得された画像信号と、前記第1の記憶部に記憶されている前記推定分光マトリクスとを用いて、推定分光マトリクスデータを算出する推定分光データ算出手段と、
該推定分光データ算出手段において算出された推定分光データと前記第2の記憶部に記憶されている擬似システムマトリクスとを用いて、表示用の通常画像としての擬似通常画像を生成する擬似通常画像生成手段とを備えることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記光源部および前記第1の記憶部が前記撮像部内に設けられていることを特徴とする請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記光源部がLEDからなることを特徴とする請求項2記載の内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−99172(P2010−99172A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271844(P2008−271844)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
【Fターム(参考)】