説明

内視鏡システム

【課題】内視鏡装置の挿入部の物体内、物体外を確実に検出可能とすること。
【解決手段】挿入部10を物体Oの挿入口Iから挿入し、物体内面を観察する内視鏡システムは、可視光源からの可視光が所定のパターンで強度変調されるように該可視光源を制御する変調部12を備え、変調された可視光を照明光として発する照明ユニット14と、前記変調された可視光を検出する検出部16と、前記検出部16の検出結果に基づいて、前記挿入部10が物体内にあるかどうかを判断する判断部18と、を備え、前記照明ユニット14を物体外部に配置し、前記検出部16を前記挿入部10に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置の挿入部を物体の挿入口から挿入し、物体内面を観察する内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置においては、観察対象である物体内面を照明するための光源として、レーザなどの発光点の小さなものや、紫外光や青色光などの比較的高エネルギーな光を放射するものが用いられている。
【0003】
このような光源装置から放射される放射光に対し、人体の最大露光許容量(MPE)は眼に対するものと皮膚に対するものとで大きく異なっている。すなわち、眼に対するMPEに対し、皮膚に対するMPEは数十倍以上大きな値となっている。そこで、生体用内視鏡装置においては、体外では眼に対するMPEに基づく光量上限を設定し、また体内では皮膚に対する光量上限を想定しつつ、観察に必要な光量で発光させるように制御するため、体内、体外を検出する検出手段が望まれている。
【0004】
また、被検者がまぶしさに対して不快に感じるのを防ぐ目的においても、体内、体外を検出する検出手段が望まれている。
【0005】
一方、工業用内視鏡装置にあっては、光源装置の寿命を延ばしたり、省電力を達成するために、挿入部が観察対象物体の外に有る場合には光源を停止したり減光したりする目的で、やはり、観察対象物体内、物体外を検出する検出手段が望まれている。
【0006】
これに対し、特許文献1には、蛍光灯のフリッカをスコープ先端に取り付けた検出器で検出することで、生体内、生体外を検出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4316118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術では、蛍光灯のフリッカを利用しているため、生体用内視鏡装置においては蛍光灯を用いていない診察室では体内外を検出することができず、工業用内視鏡装置においても蛍光灯を用いていない観察環境では観察対象物体内外を検出することができない。また、部屋に蛍光灯が有った場合でも、他の照明装置が併用されている場合には、これらの光に埋もれて蛍光灯のフリッカを確実に検出できない恐れが有る。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、内視鏡装置の挿入部の物体内、物体外を確実に検出可能とする内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の内視鏡システムの一態様は、
内視鏡装置の挿入部を物体の挿入口から挿入し、物体内面を観察する内視鏡システムにおいて、
可視光源からの可視光が所定のパターンで強度変調されるように該可視光源を制御する変調部を備え、変調された可視光を照明光として発する照明ユニットと、
前記変調された可視光を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記挿入部が物体内にあるかどうかを判断する判断部と、
を具備し、
前記照明ユニットは物体外部に配置され、前記検出部は前記挿入部に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所定のパターンで強度変調された可視光を照明ユニットより能動的に発し、内視鏡装置の挿入部での該変調された可視光の検出状態により、該挿入部が物体内にあるかどうか判別するので、内視鏡装置の挿入部の物体内、物体外を確実に検出可能とする内視鏡システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1(A)は、本発明の第1実施形態に係る内視鏡システムの概略構成図であり、図1(B)は、第1実施形態に係る内視鏡システムにおける判断部の動作フローチャートを示す図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る内視鏡システムの使用状況の例を示す図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係る内視鏡システムにおける照明ユニットの構成を示す断面図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係る内視鏡システムにおける内視鏡装置の構成を示す図である。
【図5】図5は、図4の内視鏡装置の照明に係わる構成を示す図である。
【図6】図6は、図4の内視鏡装置のスコープ先端部を示す斜視図である。
【図7】図7は、第1実施形態に係る内視鏡システムにおける変調部の機能を説明するための図である。
【図8】図8は、第1実施形態の変形例に係る内視鏡システムにおける変調部の機能を説明するための図である。
【図9】図9は、本発明の第2実施形態に係る内視鏡システムにおける内視鏡装置のスコープ先端部の構成を示す図である。
【図10】図10は、本発明の第3実施形態に係る内視鏡システムの使用状況の例を示す図である。
【図11】図11は、第3実施形態に係る内視鏡システムにおける照明ユニットの構成を示す図である。
【図12】図12は、図11の照明ユニットの制御回路の動作フローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る内視鏡システムは、図1(A)に示すように、物体Oの挿入口Iから挿入される内視鏡装置の挿入部10と、可視光源からの可視光が所定のパターンで強度変調(点滅)されるように該可視光源を制御する変調部12を備え、上記所定のパターンで強度変調された可視光(以下、変調可視光と称する。)を照明光として発する照明ユニット14と、該照明ユニット14から発せられた上記変調可視光を検出する検出部16と、該検出部16の検出結果に基づいて、挿入部10が物体内にあるかどうかを判断する判断部18と、から構成される。ここで、照明ユニット14は物体外部に配置され、検出部16は挿入部10に配置されている。
【0014】
このような内視鏡システムでは、判断部18は、内視鏡装置の動作開始に伴って、図1(B)に示すように、まず、検出部16の検出結果を受け、その検出結果より、検出部16で変調可視光が検出されているか否かを判別する(ステップS1)。ここで、検出部16で変調可視光が検出されていると判別した場合には、挿入部10が物体外にあると判断して、その旨を出力する(ステップS2)。その後、内視鏡装置の動作終了か否かを判別し(ステップS3)、まだ動作終了でなければ、上記ステップS1に戻る。
【0015】
一方、挿入部10が物体内にある場合には、変調可視光は当該物体Oで遮られて、検出部16に入射しない。したがって、上記ステップS1において、検出部16で変調可視光が検出されなくなったと判別したならば、判断部18は、挿入部10が物体内にあると判断して、その旨を出力する(ステップS4)。その後、上記ステップS3に進んで、内視鏡装置の動作終了か否かを判別し、まだ動作終了でなければ、上記ステップS1に戻る。
【0016】
そして、上記ステップS3において、内視鏡装置の動作終了と判別したならば、動作を終了する。
【0017】
なお、ここでは、何れの判断結果も出力するとしたが、少なくとも一方の判断結果を出力すれば、該判断部18の出力を受ける部材は、当該判断結果が出力されているか否かにより、挿入部10が物体内、物体外の何れであるかを知ることができる。
【0018】
以下、内視鏡装置が生体の管腔に挿入部10を挿入して使用する生体用内視鏡装置である場合を例に、より具体的な構成を説明する。
図2に示すように、内視鏡観察時に、医師等の作業者OPは、左手で内視鏡装置の操作部20を保持し、右手で挿入部10を保持して、被検者SUの管腔の挿入口I、例えば口や鼻より該挿入部10を挿入する。
【0019】
照明ユニット14は、被検者SUの管腔外であって、管腔に挿入部10を挿入するときに作業者OPの手元である管腔の挿入口Iを照明可能な位置に配置される。具体的には、照明ユニット14は、たとえば作業室の天井に取り付けられている。
【0020】
照明ユニット14は、図3に示すように、照明光源としての複数の白色LED22が搭載された基板24と、白色LED22の発光を制御する制御回路26とを有している。制御回路26は、予め決められた所定のパターンで、白色LED22を点滅制御させるものであり、上述した変調部12としての機能を備える。なお、この所定のパターンは、人間が点滅を認識できず、連続点灯していると誤認できるのに十分早い周期、たとえば30Hzより高速で点滅するパターンであることが必要であり、その詳細は後述する。
【0021】
また、照明ユニット14は、該照明ユニット14を天井等に固定する固定部28と、基板24を取り囲む筐体30と、該筐体30に設けられ、白色LED22から放射された照明光(変調可視光)を外部に照射する照明光照射窓32と、を有している。
【0022】
一方、生体用内視鏡装置は、図4に示すように、医師等の作業者OPが手に持って作業を行うスコープ部34と、トロリTに搭載される本体部36と、に分離可能に構成されている。具体的には、スコープ部34から延在する接続ケーブル38が、本体部36のコネクタ等の接続部40に対して着脱可能に構成されている。
【0023】
なお、トロリTとは、内視鏡装置を搭載する移動可能なラックを言い、本体部36に加えて、モニタMの他、撮影画像を印刷するプリンタ等が搭載されるものである。このトロリTには、特に図示はしていないが、スコープ部34を保持する保持部が設けられており、本体部36にスコープ部34を接続した状態で、スコープ部34を吊り下げて保持できるようになっている。使用時にはスコープ部34を保持部から外して使用する。
【0024】
本体部36は、スコープ部34に電力を供給し、またスコープ部34の先端に配された撮像部(後述)が撮影した画像を処理したりする画像処理装置(ビデオプロセッサ)42と、例えばスコープ部34の先端から照明光を放射するための光源装置44を含む内視鏡観察に必要な様々な部材と、を備え、撮像部が撮影した画像等を表示するモニタMと接続している。
【0025】
なお、上述した判断部18は、画像処理装置42内に構成しても良いし、光源装置44内に構成しても良いし、それらとは独立して本体部36内に構成しても構わない。
【0026】
また、図4では、画像処理装置42と光源装置44を一つの本体部36の筐体内に組み込んだ例を示したが、それぞれ別筐体でなる複数の装置を組み合わせて全体として一つの本体部36を構成するものであっても構わない。
【0027】
光源装置44は、例えば、図5に示すように、発光点の小さなレーザや、紫外光、青色光などの比較的高エネルギーな光を放射するLEDといった励起光源46と、該励起光源46からその励起光を集光する光学系48とを備え、さらに特に図示はしていないが、励起光源46の発光量や発光タイミングを制御する光源制御部を備えている。一方、照明対象物に対しては、白色光等の観察に適した波長の光で照明されることが必要である。そこで、スコープ部34の先端部には、波長変換部50が搭載されている。そして、励起光源46と波長変換部50とは、光ファイバ52で接続されている。すなわち、光ファイバ52は、接続ケーブル38とスコープ部34の内部に配置されている。よって、励起光源46から射出された励起光が光ファイバ52を経由して波長変換部50に照射されると、波長変換部50から照明光が放射され、照明光は照明対象物に向かって照射される。
【0028】
なお、接続ケーブル38内には、光ファイバ52に加えて、スコープ部34と本体部36との間の電気配線も形成されていることは言うまでもない。
【0029】
一方、スコープ部34は、上述したように、医師等の作業者OPが右手でその先端近傍を保持して生体の管腔に挿入操作する挿入部10と、作業者が左手で持って操作する操作部20と、によって構成されている。挿入部10は、管腔の屈曲に応じて容易に変形可能に構成され、操作部20の操作や医師等の作業者OPの操作により湾曲する湾曲部54と、該湾曲部54の先端部に設けられた、変形しない硬質部56と、からなる。この硬質部56の先端面には、図6に示すように、照明光を射出する二つの照明光射出部58と、照明光により照射された照明対象物を撮像する撮像部60と、鉗子等を挿入するチャネル62と、が設けられている。照明光射出部58の硬質部56内部に、上記波長変換部50が搭載されている。また、撮像部60の硬質部56内部に、撮像光学系と、可視光を検出可能なCCD等の不図示撮像素子と、が搭載されている。
【0030】
ここで、撮像部60の撮像素子は、可視光を検出可能であるため、照明ユニット14の白色LED22から放射される変調照明光(白色光)を検出することが可能である。よって、本実施形態では、撮像素子を上記検出部16として用いて変調照明光を検出する。
【0031】
なお、撮像素子は、所定のフレームレート、例えば30フレーム/秒で画像を撮像し、挿入部10、操作部20及び接続ケーブル38内を延びる不図示の信号配線を介して、本体部36内のたとえば画像処理装置42に構成された上記判断部18へデータを転送する。
【0032】
このとき、照明ユニット14の白色LED22の点滅における所定パターンが、撮像素子のフレームレートと同じか、その整数倍であると、判断部18では、連続点灯と区別することができない。そこで、照明ユニット14の制御回路26は、撮像素子のフレームレートと異なる周期の点滅パターンで白色LED22を点滅させることが必要である。
【0033】
すなわち、図7(A)は、撮像素子のフレームレートの例を示している。撮像素子の1周期pは、画像を取得する画像取得期間iと、取得した画像データを画像処理装置42内の処理回路へ転送するデータ転送期間dと、からなっている。この1周期pは、30フレーム/秒のフレームレートであれば、1/30秒である。
【0034】
図7(B)は、照明ユニット14の白色LED22を連続点灯させた場合の例を示している。
【0035】
なお、図7(B)乃至(E)において、実線の波形は、ハイレベルが点灯を、ローレベルが消灯を示している。また、黒丸を付した太い縦線は、その線の位置で終わる画像取得期間iに取得される検出信号の量を表しており、長さ(高さ)が信号量の目安である。なお、図7(B)乃至(E)においては、比較のために、白色板等の同一の被写体を撮像した場合の検出信号の量を示している。
【0036】
図7(B)に示すように、連続点灯した状態では、撮像素子からの検出信号は一様となる。一方、図7(C)は、フレームレートのちょうど3倍の周期で照明ユニット14の白色LED22を点滅させた場合の例を示している。撮像素子の画像取得期間iにおいて、照明光は常に2回発光している。撮像素子が検出する光量は、この2回の発光の時間積分となるため、検出される光量は変化しない。結果、常に点灯しているのと同様に一様の検出信号しか得られないので、判断部18では、照明ユニット14の点滅すなわち変調可視光の有無を検出することができない。
【0037】
図7(D)は、これとは異なる周期(フレームレートの15/8倍の周期であって、整数倍ではない)のため、撮像素子が検出する光量は、時間とともに変化する。この結果、判断部18は、照明ユニット14の点滅すなわち変調可視光の有無を検出することができる。
【0038】
また、図7(E)は、一回ごとの点滅は図7(C)と同じフレームレートの3倍であるが、3回点灯したら、1回休むというパターンを持っている。すなわち、周期としては、フレームレートの3/4倍となっており、これもフレームレートの整数倍ではないため、判断部18は、照明ユニット14の点滅すなわち変調可視光の有無を検出することができる。
【0039】
図7の例では、わかり易く説明したが、実際には、フレームレートに対し、もっと高速で、もっと複雑なパターンで点滅させることで、変調可視光の検出を容易に且つ確実にすることが可能となる。
【0040】
以上のように、生体用内視鏡の場合の内視鏡システムにおいては、照明ユニット14から発せられる変調可視光をスコープ部34の挿入部10に設けられた撮像部60の撮像素子を検出部16として用いて変調可視光を検出する構成である。そして、被検者SUの管腔に挿入部10を挿入するときに作業者OPの手元である管腔の挿入口Iを照明可能な位置に照明ユニット14を予め設置する。こうすることで、変調可視光が管腔の挿入口Iへ確実に照射されるので、作業者OPやその他の室内部材の陰になり、スコープ部34先端が体外に有るにもかかわらず、検出部16が変調可視光を検出できず、判断部18が体内と判断してしまう、という恐れをほとんど無くすことができる。また、本実施形態では、所定のパターンで強度変調した変調可視光を能動的に発し、その所定のパターンに合致する変調可視光が検出されたか否かにより、体内であるのか体外であるのか、を誤検出なく、確実に検出できる。さらに、本実施形態では、スコープ部34の撮像素子を検出部16として利用できるため、特別な装置をスコープ部34に取り付ける必要なく、スコープ部34先端が管腔内、管腔外のいずれに有るのかを容易に検出することができる。
【0041】
なお、判断部18は、光源装置44の図示しない光源制御部と接続して、その判断結果を光源制御部に出力することができる。こうすることで、光源制御部は、体外では眼に対するMPEに基づく光量上限を設定し、また体内では皮膚に対するMPEに基づく光量上限を想定しつつ、観察に必要な光量が得られるように、励起光源46を制御することが可能となる。
【0042】
また、内視鏡装置の本体部36のたとえば画像処理装置42は、該内視鏡装置の電源オン直後等の挿入部10が確実に管腔外に有るときに、照明ユニット14の変調可視光の強度変調(点滅)を検出可能であるか確認する確認部を備えても良い。この確認部の確認結果を作業者OPに報知することで、作業者OPが正常に機能しない内視鏡装置を使用する恐れを無くすことができる。また、照明ユニット14の変調部12として機能する制御回路26は、照明光の強度変調の周期を選択切り替えできるよう構成し、有線または無線による作業者OPの切り替え操作により、検出可能な周期に切り替え調整(キャリブレーション)できるようにしても良い。もちろん、作業者OPを煩わせることなく、確認部の確認結果に応じて自動的にキャリブレーションするような構成としても良い。
【0043】
[変形例]
なお、本実施形態では、撮像素子を検出部16と兼用するとき、内視鏡画像を検出する画像検出期間に、同時に変調照明光(白色光)を検出する例を示したが、これを時間的に分離しても良い。すなわち、同じ撮像素子を用い、内視鏡画像を検出する画像取得モードと、変調された可視光を検出する検出モードを連続的に繰り返すように構成しても良い。
【0044】
図8(A)は、このような例を示しており、撮像系の1周期pに、内視鏡画像取得期間ie、内視鏡画像データ転送期間deにより構成される画像取得モードMiに加え、複数の変調可視光検出期間isと検出データ転送期間dsを所定周期で繰り返す検出モードMsを有する例を示している。図8(B)は、このときの変調照明光(白色光)の変調パターン(点滅パターン)と、画像取得モードMi、検出モードMs時に検出される光信号量si,ssを示している。
【0045】
この例では、変調可視光の変調周期は、内視鏡画像取得モードMiの周期の整数倍に設定され、また、検出モードMsでの変調可視光を検出する検出周期は、変調可視光の変調周期の整数倍に設定されている。例えば、変調可視光の変調周期は、画像取得モードMiの周期の3倍に、検出モードMsでの変調可視光を検出する所定周期は、変調可視光の変調周期の2倍に、それぞれ設定されている。
【0046】
このように構成することで、画像取得モードMi時に撮像素子が検出する光信号は変化せず、かつ、変調可視光の変化を確実に検出することが可能になる。この結果、挿入部10の体腔内外を確実に検出でき、かつ、挿入部10が体腔外にある場合でも画面にちらつきの無い画像を得ることができる。
【0047】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
なお、本第2実施形態も、生体用内視鏡装置による内視鏡システムとして説明する。以下、上記第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0048】
上記第1実施形態では、撮像部60の撮像素子を検出部16と兼用するものとした。これに対し、本第2実施形態では、照明ユニット14から発せられる変調可視光(白色光)を、撮像素子ではなく専用の照明光検出器により検出する構成としている。
【0049】
すなわち、図9に示すように、挿入部10の硬質部56の側面に、上述した検出部16としての可視光検出部64が設けられている。可視光検出部64は、変調可視光を連続的に受光し、受光量に応じた電流を放出する。放出された電流は、挿入部10、操作部20及び接続ケーブル38の内側に配置された、図示しない配線により本体部36のたとえば画像処理装置42に構成された判断部18に伝送される。
【0050】
なお、硬質部56内にIV変換素子を設け、挿入部10先端部で電流を電圧に変換し、電圧信号として判断部18に伝送することで、ノイズ等の影響を受けにくい構成を実現することができる。
【0051】
また、可視光検出部64の設置位置に関し、硬質部56の軸回り位置については、作業者OPが、挿入部10を被検者SUの管腔に挿入するように保持したときに照明ユニット14からの変調可視光を受光できる位置であれば良い。しかしながら、照明ユニット14と対向する位置、たとえば照明ユニット14を天井側に配置したならば上側、に位置するように、可視光検出部64を硬質部56に配置することがより好ましい。このようにすることで、変調照明光の受光の安定性を向上することができる。
【0052】
さらに、硬質部56の長手方向位置については、挿入部10を被検者の管腔に挿入する際に、挿入口Iからある深さまで挿入されたときに物体内つまり体内であると判断されることが望ましい、適した設置位置が存在する。例えば、管腔である口から食道、胃へと挿入部10を挿入していく場合、食道への挿入を確実に行うため、被検者ののど部では明るく照明される必要が有る。よって、口内の長さである唇部からのど部への長さを考慮すると、可視光検出部64は、具体的には、硬質部56の先端の端部から5cm程度の範囲に設置されることが望ましい。さらには、硬質部56が口内に挿入された瞬間に体内と検出することを避けるためには、端部から1cm以上の位置に配置されることが望ましい。
【0053】
本実施形態に係る内視鏡システムは、照明ユニット14から発せられる変調可視光(白色光)を専用の可視光検出部64で検出する構成としているため、変調の周期を撮像素子のフレームレートを考慮することなく設定できる。よって、撮像素子のフレームレートの整数倍の変調周期とすることができ、撮像素子の画像に影響を与えることがない。すなわち、撮像された画像は常に安定に発光した状態で撮像されており、変調可視光の影響を受けて画面の明暗が変化するようなことはない。
【0054】
以上のように、本実施形態では、検出部16として専用の可視光検出部64を設けることで、より安定で確実な検出が可能となる。また、撮像素子の画像に影響を与えない変調周期を選択することが可能となる。
【0055】
なお、可視光検出部64を硬質部56の長手方向に複数併設し、それらの検出強度の差分を取ることにより、挿入部10先端の硬質部56の管腔への挿入の度合いを検出するようにしても良い。
【0056】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
なお、本第3実施形態も、生体用内視鏡装置による内視鏡システムとして説明する。以下、上記第1及び第2実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0057】
本実施形態は、照明ユニット14の可視光の変調のタイミングに関する上記第1または第2実施形態への付加的な機能を設けたものである。すなわち、本実施形態では、内視鏡装置の稼動状態に応じて変調可視光を発するようにしている。
【0058】
具体的には、図10に示すように、内視鏡装置の本体部36の一部に、電波発信機66を設ける。この電波発信機66は、内視鏡装置の本体部36に電源が投入され、観察可能である状態において、照明ユニット14に向けて電波を発信する。
【0059】
一方、照明ユニット14には、図11に示すように、電波受信機68を基板24上に設ける。
【0060】
このような構成において、照明ユニット14の制御回路26は、不図示の照明スイッチの投入に応じて動作を開始して、図12に示すように、まず、通常照明動作を行う(ステップS11)。なお、この通常照明動作では、白色LED22を連続点灯として明るさを向上したり、または所望の節電モード等により、光量、変調パターン等を、内視鏡装置とは関係なく、自由に設定することができる。
【0061】
そしてその後、電波受信機68が内視鏡装置の電波発信機66から発信された電波を受信しているか否かを判別することで、内視鏡装置が観察可能状態であるか否かを認識する(ステップS12)。ここで、電波受信機68が電波を受信していないと判別した場合には、内視鏡装置が観察可能状態でないとして上記ステップ11に戻り、通常照明動作を続ける。
【0062】
これに対して、電波受信機68が電波を受信していると判別した場合には、内視鏡装置が観察可能状態であると認識し、所定の変調パターンで可視光が変調されるよう白色LED22を制御する(ステップS13)。その後は、上記ステップS12に戻ることで、電波受信機68が電波を受信している間、つまり内視鏡装置に電源が投入されている間は変調可視光を発し続ける。
【0063】
そして、内視鏡装置に電源が遮断されて電波発信機66が電波の発信を終了すると、上記ステップS12にて電波受信機68が電波を受信していないと判別されて、上記ステップS11の通常照明動作に戻ることとなる。
【0064】
以上のように、本実施形態では、内視鏡装置に電源が投入され、観察可能状態であることを照明ユニット14が認識し、所定の変調パターンで可視光の変調を開始する。したがって、変調部12は内視鏡装置の稼働状態に連動して動作するので、内視鏡装置に電源が投入されていない状態では、照明ユニット14は内視鏡装置とは関係なく、連続点灯やその他さまざまな強度、変調パターン等で発光できる。
【0065】
なお、ここでは電波による無線通信を利用したが、それに限定するものではなく、赤外線や可視光による無線通信を用いても良い。また、無線通信ではなく有線通信としても良く、そうすることで通信をより確実にすることができる。
【0066】
さらに、単に電波の有無を判別するだけでなく、何らかの情報を電波に乗せて内視鏡装置の本体部36から照明ユニット14の制御回路26にその情報を伝達して、その情報に基づいて制御回路26が動作するように構成することも可能である。たとえば、上記第1実施形態で説明したようなキャリブレーションにおける、照明ユニット14の変調可視光の強度変調(点滅)を検出可能であるか確認する確認部の確認結果に基づく変調周期の切り替え情報を本体部36から制御回路26に送信して、キャリブレーションを実行することができる。
【0067】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0068】
例えば、上記第1乃至第3実施形態は、生体用内視鏡装置の場合を例に説明したが、工業用内視鏡装置の場合にも同様に適用可能である。この場合、判断部18は、光源装置44の図示しない光源制御部と接続して、その判断結果を光源制御部に出力することができる。こうすることで、光源制御部は、物体外では、光源装置44の寿命を延ばしたり、省電力を達成するために、照明光を減光したり、停止したりするとともに、物体内では、観察に必要な光量が得られるように、励起光源46を制御することが可能となる。
【0069】
また、光源装置44は、波長変換部50は波長を変換せず、散乱させる散乱部や、ビームの広がり角等を変換する出射光特性変換部であっても良い。
【符号の説明】
【0070】
O…物体、 I…挿入口、 OP…作業者、 SU…被検者、 T…トロリ、 M…モニタ、 10…挿入部、 12…変調部、 14…照明ユニット、 16…検出部、 18…判断部、 20…操作部、 22…白色LED、 24…基板、 26…制御回路、 28…固定部、 30…筐体、 32…照明光照射窓、 34…スコープ部、 36…本体部、 38…接続ケーブル、 40…接続部、 42…画像処理装置、 44…光源装置、 46…励起光源、 48…光学系、 50…波長変換部、 52…光ファイバ、 54…湾曲部、 56…硬質部、 58…照明光射出部、 60…撮像部、 62…チャネル、 64…可視光検出部、 66…電波発信機、 68…電波受信機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡装置の挿入部を物体の挿入口から挿入し、物体内面を観察する内視鏡システムにおいて、
可視光源からの可視光が所定のパターンで強度変調されるように該可視光源を制御する変調部を備え、変調された可視光を照明光として発する照明ユニットと、
前記変調された可視光を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記挿入部が物体内にあるかどうかを判断する判断部と、
を具備し、
前記照明ユニットは物体外部に配置され、前記検出部は前記挿入部に配置されることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記内視鏡装置は、生体の管腔に前記挿入部を挿入して使用する内視鏡装置であって、
前記照明ユニットは、前記管腔外に配置され、
前記検出部は、前記挿入部に配置されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記照明ユニットは、前記生体の管腔に前記挿入部を挿入するとき、前記管腔の挿入口を照明可能な位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記検出部は、前記可視光の強度変調のパターンを検出することを特徴とする請求項3に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記照明ユニットの前記可視光源は、白色光を放射し且つ強度変調可能な白色LED光源であることを特徴とする請求項4に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記内視鏡装置は、前記挿入部を有するスコープ部と、該スコープ部で観察した観察画像を処理し、表示する本体部と、に分離可能であり、
前記判断部は、前記本体部内に構成され、
前記検出部は、前記挿入部の先端部に組み込まれていることを特徴とする請求項4に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記検出部は、前記挿入部の先端部において、前記生体の管腔に前記挿入部を挿入する際に、前記照明ユニットと対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記内視鏡装置は、内視鏡画像を取得可能な撮像素子を有し、
前記検出器は、前記撮像素子を兼用し、
前記変調部は、前記可視光の強度変調のパターンの周期が、前記撮像素子のフレームレートの整数倍とは異なる周期となるように、前記可視光源を制御することを特徴とする請求項4に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記内視鏡装置は、内視鏡画像を取得可能な撮像素子を有し、
前記検出器は、前記撮像素子を兼用し、
前記撮像素子は、前記内視鏡画像を取得する画像取得モードと、前記変調された可視光を検出する検出モードと、を有することを特徴とする請求項4に記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記検出部が前記変調された可視光を検出可能であるか否か確認する確認部をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の内視鏡システム。
【請求項11】
前記変調部は、前記内視鏡装置の稼働状態に連動して動作することを特徴とする請求項4乃至10の何れかに記載の内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−152273(P2012−152273A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11871(P2011−11871)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】