説明

内視鏡洗滌消毒装置

【課題】内視鏡の洗滌/消毒に必要な液体が不足するのを確実に防止でき、無駄のない効率的な内視鏡の洗滌/消毒処理を行う。
【解決手段】消毒液供給部32は、洗滌槽2を供給先とする薬液供給管路23に流れる消毒液350の流量を検出する流量センサ323と、圧力タンク320の内部圧力を検出する圧力センサ324と、を備え、流量センサ323及び圧力センサ324の検出値は、制御回路200に出力されるようになっている。制御回路200は、3方弁322の切り替えを制御すると共に、流量センサ323及び圧力センサ324の検出値に基づき、薬液ボトル321の消毒液350の残量を推定し、推定結果により、操作パネル41の表示部41a、ブザー41bを用いて所定の告知を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を貯留する薬液ボトルの内部を加圧し、前記薬液を送液する送液機構を備えた内視鏡洗滌消毒装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡は、医療分野及び工業用分野において広く利用されている。医療分野において用いられる内視鏡は、細長い挿入部を体腔内に挿入することによって、体腔内の臓器を観察したり、必要に応じて処置具の挿通チャンネル内に挿入した処置具を用いて各種処置をしたりすることができる。
【0003】
特に医療分野の内視鏡は、検査及び治療を目的として体腔内に挿入して使用されるものであるため、内視鏡を洗滌消毒することが必要である。内視鏡を洗滌消毒する場合、内視鏡洗滌消毒装置が使用される。内視鏡は、内視鏡洗滌消毒装置の洗滌槽内にセットされ、洗滌、消毒、濯ぎ及び水切りがされる。
【0004】
また、内視鏡の内部には、送気送水管路、鉗子口など複数の管路を有している。これら管路内は、十分に洗滌液及び消毒液が通過し、確実に洗滌及び消毒などされる必要がある。
【0005】
このような、内視鏡及びその内部に有している各種管路を洗滌及び消毒などする内視鏡洗滌消毒装置としては、例えば、特開平09−253029号公報に提案されているものがある。
【特許文献1】特開平09−253029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の内視鏡洗滌消毒装置では、洗剤、アルコール、消毒液などの薬液を貯留された薬液ボトルより装置内に供給しているが、薬液ボトル内の残量は、ボトルトレーに設けられた窓から目視により確認するしかなく、また、装置側でボトル内残量が無くなった場合には、エラーにて告知していたが、事前に残量が少なくなったことを自動告知することができないといった問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、内視鏡の洗滌/消毒に必要な液体が不足するのを確実に防止でき、無駄のない効率的な内視鏡の洗滌/消毒処理を行うことのできる内視鏡洗滌消毒装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内視鏡洗滌消毒装置は、
加圧手段により薬液を貯留する薬液ボトルの内部を加圧し、前記薬液を送液先に送液する送液機構を備えた内視鏡洗滌消毒装置において、
前記加圧手段と前記薬液ボトルとの間に設けられ、前記加圧手段により一定圧に加圧された加圧流体を貯蔵する定圧タンクと、
前記定圧タンクの内圧を計測する圧力センサと、
前記加圧流体の前記薬液ボトルへの供給の開始/停止を制御する加圧流体制御手段と、
前記送液先に送液される前記薬液の流量を計測する流量センサと、
前記流量センサの計測結果に基づき、前記薬液ボトルの内部の前記薬液の残量を推定する推定手段と
を備えて構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内視鏡の洗滌/消毒に必要な液体が不足するのを確実に防止でき、無駄のない効率的な内視鏡の洗滌/消毒処理を行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について述べる。
【実施例1】
【0011】
図1ないし図14は本発明の実施例1に係わり、図1は内視鏡洗滌消毒装置の概略構成を説明するための図、図2は図1の洗滌槽に内視鏡が設置されている状態における内視鏡洗滌消毒装置の外観を示す斜視図、図3は図1の消毒液供給部の構成を説明するための図、図4は図3の消毒液供給部の動作原理を説明する第1の図、図5は図3の消毒液供給部の動作原理を説明する第2の図、図6は図3の消毒液供給部の動作原理を説明する第3の図、図7は図3の消毒液供給部の動作原理を説明する第4の図、図8は図3の消毒液供給部の動作原理を説明する第5の図、図9は図3の消毒液供給部の動作原理を説明する第6の図、図10は図3の消毒液供給部の動作原理を説明する第7の図、図11は図3の消毒液供給部の動作原理を説明する第8の図、図12は図3の消毒液供給部の動作原理を説明する第9の図、図13は図3の制御回路の処理の流れを示すフローチャート、図14は図13の処理の変形例の流れを示すフローチャートである。
【0012】
図1を参照しながら、本発明の実施例1の内視鏡洗滌消毒装置40について説明する。図1は、内視鏡洗滌消毒装置40の概略構成を説明するための図である。本実施例においては、図2に示すような形状の内視鏡1が内視鏡洗滌消毒装置40にセットされて洗滌及び消毒される。
【0013】
図1に示すように、内視鏡洗滌消毒装置40は、内視鏡1を洗滌又は消毒するための槽(以下、洗滌槽という。)2と、この洗滌槽2の上部に設けられるトップカバー3とを有している。
【0014】
また、内視鏡洗滌消毒装置40には、被洗滌消毒物である内視鏡1が洗滌槽2にセットされる。内視鏡1は、操作部1a及び挿入部1bが操作部保持部材4及び複数の挿入部保持部材5によって洗滌槽2の内部の所定の位置において保持されるようにセットされている。
【0015】
操作部保持部材4は、内視鏡1の操作部1aがセットされたことを認識して検知する図示しないセンサ、例えば、光学的センサ又は接触センサなどを有している。
【0016】
洗滌槽2の内側の一壁面には、内視鏡洗滌消毒装置40の内部を循環する循環液の水位を検知するための水位検知センサ6と、希釈循環液の注入口であるノズル18が設けられている。
【0017】
水位検知センサ6は、内視鏡洗滌消毒装置40の洗滌槽2内に貯留する循環液の液面が洗滌槽2内底面からの異なった高さである少なくとも2水準に達したことを検知するための2つの液面検知部を有している。一方の液面検知部(以下、第1の液面検知部という)は、他方の液面検知部(以下、第2の液面検知部という)よりも洗滌槽2の底面側に循環液の所定の水位を検知できるように設けられている。また、第2の液面検知部は、洗滌槽2内にセットされる内視鏡1が十分に水没する循環液の所定の水位を検知できるように設けられている。
【0018】
内視鏡洗滌消毒装置40の外部にある、希釈循環液としての水道水を供給するための蛇口16は、洗滌槽2の上部側の内壁面に設けられるノズル18と給水系管路15により連通するように接続される。この給水系管路15の途中には、蛇口16側から順に水道水等の給水及び止水をする電磁弁の給水弁17と、水道水をろ過する給水フィルタ10と、循環液の逆流を防止するための逆止弁11と、が介装されている。給水弁17は、水道水の供給及び停止するために、推定手段としての制御回路200の制御信号が供給され、内部の弁が開閉する。
【0019】
洗滌槽2にセットされる内視鏡1を十分に浸漬できる液量の消毒液が内部に貯溜している、液体供給手段である消毒液供給部32が設けられている。また、消毒液は、消毒工程の有効使用回数が決められ、この有効使用回数終了後に補充される。なお、消毒液供給部32の詳細は、後述する。
【0020】
消毒液供給部32は、加圧手段としてのコンプレッサ34と接続され、コンプレッサ34からの流体(エアー)の圧力が消毒液供給部32に加えられるようになっている。消毒液供給部32は、薬液供給管路23とも接続されている。この薬液供給管路23は、洗滌槽2に設けられる供給口14と連通するように接続されている。消毒液供給部32及びコンプレッサ34は、制御回路200により制御される。
【0021】
一方、洗滌槽2に底面には、排水管路35に接続された排水口13が設けられている。排水ポンプ28は、洗滌槽2の循環液を、この排水管路35側から吸引し、後述する排水ホース42(図2参照)側に送り出す。こうして、洗滌槽2に貯溜する循環液は、内視鏡洗滌消毒装置40の外部に排出される。排水ポンプ28は、制御回路200と電気的に接続されており、排水ポンプ28は、制御回路200によって、始動、停止などが制御される。
【0022】
また、洗滌槽2は、底面に循環液吸引口20と一壁面に循環液噴出口7も有している。これら循環液吸引口20と循環液噴出口7は、循環液洗滌消毒用管路9によって連通するように接続されている。循環液洗滌消毒用管路9には、循環液洗滌消毒用ポンプ8が設けられている。この循環液洗滌消毒用ポンプ8と循環液吸引口20の間の循環液洗滌消毒用管路9に管路内洗滌用管路19の一端が接続されている。
【0023】
この管路内洗滌用管路19の他端は、エアー供給管路30と連通するように接続されている。また、管路内洗滌用管路19には、循環液洗滌消毒用管路9と接続する側から順に管路内洗滌用ポンプ21及び逆止弁36が設けられている。
【0024】
エアー供給管路30の一端は、コンプレッサ31と接続され、他端は、電磁開閉弁25と接続されている。また、エアー供給管路30には、管路内洗滌用管路19と接続される接続部とコンプレッサ31の間に逆止弁29が設けられている。
【0025】
電磁開閉弁25は、3方向に分岐する分岐管路27とも接続されている。これら分岐管路27が3方向に分岐した分岐端は、各々に流量センサを有する3つの電磁開閉弁24a、24b、24cと接続されている。
【0026】
これら3つの電磁開閉弁は、管路ジョイント部22の、図示しない管路洗滌ノズルに連通する3つの送液チューブに各々、接続されている。管路ジョイント部22は、洗滌槽2の側壁に設けられる孔部に挿通している。この管路ジョイント部22は、駆動機構26によって洗滌槽2の内部に向かって前進又はその内部から遠ざかるように後退する。
【0027】
図2は、内視鏡1が洗滌槽2に設置されている状態における内視鏡洗滌消毒装置40の外観を示す斜視図である。
【0028】
図2に示すように、内視鏡洗滌消毒装置40は、外装部材の一側面に各工程を始動又は停止させるなどする各種スイッチ及び、ブザー、表示パネルなどを備える操作パネル41を有する。この操作パネル41は、電気的に装置内部の制御回路200に接続されており、各種指示信号を制御回路200に供給する。
【0029】
制御回路200は、内視鏡洗滌消毒装置40の各種ポンプ及び各種電磁弁などに制御信号の供給も行う。また、内視鏡洗滌消毒装置40の本体からは、内部の循環液を外部に排水するための排水ホース42が延出している。
【0030】
内視鏡洗滌消毒装置40の洗滌槽2の一内壁面には、孔部が設けられ、管路ジョイント部22がこの孔部から洗滌槽2に設置される内視鏡1の操作部1aに向かって延出している。
【0031】
図2に示す内視鏡1は、内視鏡洗滌消毒装置40の洗滌槽2内に設けられた複数の挿入部保持部材5に係止されるように挿入部1bが設置される。さらに、操作部保持部材4に操作部1aが所定の位置に位置決めされるように設置される。この内視鏡1の操作部1aには、管路ジョイント部22が接続され、内視鏡1の複数の内視鏡管路(図示せず)と管路ジョイント部22の複数の管路洗滌ノズル(図示せず)が連通する。操作部保持部材4には、上述したように、内視鏡1の操作部1aが所定にセットされたことを検知する光学的センサが設けられている。
【0032】
図3に示すように、消毒液供給部32は、消毒液350を貯蔵している薬液ボトル321と、この薬液ボトル321の内部に定圧のエアーを供給する圧力タンク320と、を備えて構成される。コンプレッサ34は、エアー管路326により圧力タンク320と接続され、エアー管路326を介して圧力タンク320に空気を供給し、圧力タンク320の内圧を所定圧に設定する。エアー管路326の途中にはリーク弁325が設けられており、圧力タンク320の内圧が所定の上限値を超えることがないように構成されている。
【0033】
また、薬液ボトル321と圧力タンク320とは、定圧管路327により接続されている。この定圧管路327の途中には加圧流体制御手段としての3方弁322が設けられており、この3方弁322は、薬液ボトル321の内部と外部が連通されて、薬液ボトル321の内部の圧力を大気圧とした第1の状態と、薬液ボトル321の内部と圧力タンク320の内部が連通されて、薬液ボトル321の内部の圧力を圧力タンク320の内部圧とした第2の状態とに切り替えることができるようになっている。
【0034】
薬液ボトル321は、薬液供給管路23と連通し、薬液ボトル321内部の下面近傍部分にて開口した薬液連通路328と、定圧管路327と連通し、薬液ボトル321内部の上面近傍部分にて開口した薬液連通路329と、を有して構成される。
【0035】
また、消毒液供給部32は、洗滌槽2を供給先とする薬液供給管路23に流れる消毒液350の流量を検出する流量センサ323と、圧力タンク320の内部圧力を検出する圧力センサ324と、を備え、流量センサ323及び圧力センサ324の検出値は、制御回路200に出力されるようになっている。
【0036】
制御回路200は、3方弁322の切り替えを制御すると共に、流量センサ323及び圧力センサ324の検出値に基づき、薬液ボトル321の消毒液350の残量を推定し、推定結果により、操作パネル41の表示部41a、ブザー41bを用いて所定の告知を行うようになっている。また、制御回路200は、操作パネル41の入力部41cからの入力情報をメモリ201に格納し、このメモリ201を用いて各種演算処理を実行する。
【0037】
次に、消毒液供給部32の動作原理について、図4ないし図12を用いて説明する。
【0038】
図4に示すように、薬液ボトル321内に貯蔵される消毒液350の残量が十分な状態において、制御回路200は、3方弁322を外部に開放して薬液ボトル321の内部圧力を大気圧とする。また、制御回路200は、圧力センサ324を用いてコンプレッサ34を駆動し、圧力タンク320の内部圧力を大気圧より高い所定圧P0とする。この状態では、薬液ボトル321と圧力タンク320とは連通していない。
【0039】
そこで、制御回路200は、3方弁322を制御して、図5に示すように、薬液ボトル321と圧力タンク320とを連通させる。すると、薬液ボトル321の内部圧力は、略圧力タンク320の内部圧力である所定圧P0となって、平衡状態に遷移する。このように、薬液ボトル321の内部圧力が略所定圧P0に加圧されるため、薬液ボトル321の内の消毒液350が薬液供給管路23に流れ、供給先である洗滌槽2に消毒液350が供給される。このとき薬液供給管路23に流れる消毒液350の流量は、流量センサ323により検出され、その検出信号が制御回路200に出力される。
【0040】
また、図6に示すように、薬液ボトル321内に貯蔵される消毒液350が使用され、その残量が一定の量に減った状態において、制御回路200は、3方弁322を外部に開放して薬液ボトル321の内部圧力を大気圧とする。また、制御回路200は、圧力センサ324を用いてコンプレッサ34を駆動し、圧力タンク320の内部圧力を大気圧より高い所定圧P0とする。この状態では、薬液ボトル321と圧力タンク320とは連通していない。
【0041】
そこで、制御回路200は、3方弁322を制御して、図7に示すように、薬液ボトル321と圧力タンク320とを連通させる。すると、薬液ボトル321の内部圧力は、大気圧より高いが、圧力タンク320の内部圧力である所定圧P0より小さい圧力P1となって、平衡状態に遷移する。このように、薬液ボトル321の内部圧力が圧力P1に加圧されるため、薬液ボトル321の内の消毒液350が薬液供給管路23に流れ、供給先である洗滌槽2に消毒液350が供給される。このとき薬液供給管路23に流れる消毒液350の流量は、流量センサ323により検出され、その検出信号が制御回路200に出力される。
【0042】
なお、図5の状態における薬液供給管路23に流れる消毒液350の流速をV0とし、図7の状態における薬液供給管路23に流れる消毒液350の流速をV1とすると、V0>V1となる。
【0043】
また、図8に示すように、薬液ボトル321内に貯蔵される消毒液350が使用され、その残量が最小残量に近づいている状態において、制御回路200は、3方弁322を外部に開放して薬液ボトル321の内部圧力を大気圧とする。また、制御回路200は、圧力センサ324を用いてコンプレッサ34を駆動し、圧力タンク320の内部圧力を大気圧より高い所定圧P0とする。この状態では、薬液ボトル321と圧力タンク320とは連通していない。
【0044】
そこで、制御回路200は、3方弁322を制御して、図9に示すように、薬液ボトル321と圧力タンク320とを連通させる。すると、薬液ボトル321の内部圧力は、大気圧より高いが、圧力タンク320の内部圧力である所定圧P0より小さく、かつ圧力P1より小さい圧力P2となって、平衡状態に遷移する。このように、薬液ボトル321の内部圧力が圧力P2に加圧されるため、薬液ボトル321の内の消毒液350が薬液供給管路23に流れ、供給先である洗滌槽2に消毒液350が供給される。このとき薬液供給管路23に流れる消毒液350の流量は、流量センサ323により検出され、その検出信号が制御回路200に出力される。図9の状態における薬液供給管路23に流れる消毒液350の流速をV2とすると、V1>V2となる。V1は図7の状態における薬液供給管路23に流れる消毒液350の流速である。
【0045】
ここで、図9のような状態で、薬液ボトル321から消毒液350を薬液供給管路23に流すと、薬液供給管路23内にエアーが混入することとなる。
【0046】
例えば、図10に示すように、薬液ボトル321内に貯蔵される消毒液350が使用され、その残量がない状態において、制御回路200は、3方弁322を外部に開放して薬液ボトル321の内部圧力を大気圧とする。また、制御回路200は、圧力センサ324を用いてコンプレッサ34を駆動し、圧力タンク320の内部圧力を大気圧より高い所定圧P0とする。この状態では、薬液ボトル321と圧力タンク320とは連通していない。
【0047】
そこで、制御回路200は、3方弁322を制御して、図11に示すように、薬液ボトル321と圧力タンク320とを連通させる。すると、薬液ボトル321の内部圧力は、大気圧となって、平衡状態に遷移する。この場合、平衡状態に遷移する前においては、薬液ボトル321の内部圧力が圧力P0に加圧されるため、薬液供給管路23に高速にエアーが流れることとなり、薬液供給管路23に流れるエアーの流量が、流量センサ323により検出され、その検出信号が制御回路200に出力される。
【0048】
すなわち、図8に示した薬液ボトル321内に貯蔵される消毒液350の残量が最小残量に近づいている状態で、薬液ボトル321と圧力タンク320とを連通させ、消毒液350が薬液供給管路23に流すと、図11に示した状態が混在することとなり、薬液供給管路23内にエアーが混入することとなる。
【0049】
以上のように、例えば図12に示すように、薬液ボトル321と圧力タンク320とを連通させた平衡状態においては、薬液供給管路23に流れる消毒液350の流速は一定あるが、薬液ボトル321内に貯蔵される消毒液の残量により変化する(V0>V1>V2)。図12において、流量の変化が直線近似でき、平衡状態である周波数安定領域では、薬液ボトル321の消毒液350の残量が多いほど、近似した直線の傾きが大きくなる。
【0050】
なお、ここで、周波数とは、流量センサ323が単位時間あたりにカウントするカウント値であって、近似した直線の傾きとなる。
【0051】
また、薬液ボトル321内に貯蔵される消毒液350が使用され、その残量が最小残量に近づいている状態において、薬液ボトル321と圧力タンク320とを連通させ、消毒液350が薬液供給管路23に流すと、薬液供給管路23内にエアーが混入し、平衡状態とはならず、流量センサ323にて検出される流量の変化量が変動することになる。例えば、図12においては、薬液ボトル321の消毒液350の使用回数が、50回となり、残量が図11に示すような状態となると、エアーの混入により流量センサ323のカウント値が不安定となる。
【0052】
つぎに、本実施例の具体的な作用について、図13のフローチャートを用いて説明する。
【0053】
制御回路200は、ステップS1にて回路内部のタイマ(図示せず)のカウントを開始する。このステップS1の段階では、制御回路200は、3方弁322を制御して、3方弁322を外部に開放して薬液ボトル321の内部圧力を大気圧としている。
【0054】
続いて、制御回路200は、ステップS2にてコンプレッサ34を駆動し圧力タンク320内を加圧する。そして、制御回路200は、ステップS3にて圧力センサ324を用いて圧力タンク320内の圧力を検出し、圧力センサ324の検出値が設定値である所定圧力P0以上になったかどうか判定する。
【0055】
圧力タンク320内の圧力が所定圧力P0未満の場合には、制御回路200は、ステップS2に処理を戻す。一方、圧力センサ324の検出値が設定値である所定圧力P0以上になると、制御回路200は、処理をステップS4に移行させる。
【0056】
制御回路200は、ステップS4にてコンプレッサ34を停止し、ステップS5にて3方弁322を制御して薬液ボトル321と圧力タンク320とを連通させる。
【0057】
次に、制御回路200は、ステップS6にて回路内部のタイマ(図示せず)のカウント値が設定値以下であるかどうか判断する。このステップS6の処理は図12にて説明した、薬液供給管路23への消毒液350の送液時間が所定時間(設定値)を超えたかどうか判定している。
【0058】
そして、回路内部のタイマ(図示せず)のカウント値が設定値以下、すなわち薬液供給管路23への消毒液350の送液時間が所定時間(設定値)を超えていないと判断すると、制御回路200は、ステップS7にて流量センサ323のカウント値(流量カウント=積算流量)が設定値に達したかどうかを判定する。流量センサ323のカウント値(流量カウント=積算流量)が設定値に達した場合には、制御回路200は、ステップS11にて3方弁322を制御して、3方弁322を外部に開放して薬液ボトル321の内部圧力を大気圧とし、処理を終了する。また、流量センサ323のカウント値(流量カウント=積算流量)が設定値に達していない場合は、制御回路200は、処理をステップS6に戻す。
【0059】
ステップS6において、制御回路200は、回路内部のタイマ(図示せず)のカウント値が設定値を超えた、すなわち薬液供給管路23への消毒液350の送液時間が所定時間(設定値)を超えたと判断すると、処理をステップS8に移行させる。
【0060】
そして、制御回路200は、ステップS8にて流量センサ323の単位時間あたりのカウント値であるカウント周波数を流量センサ323からの検出値より算出する。
【0061】
次に、制御回路200は、ステップS9にて、このカウント周波数が設定値未満かどうか判定する。このときの設定値は、図12において、例えば45回目使用した際の薬液ボトル321内の消毒液350の残量の近似した直線の傾きとなる。
【0062】
カウント周波数が設定値未満ならば、制御回路200は、ステップS10にて「残量小」を意味する表示及び/または音により、表示部41a/ブザー41bを用いて告知しステップS7に進み、カウント周波数が設定値以上ならば、制御回路200は、ステップS9からステップS7に処理を移行する。例えばステップS10の処理により、ブザー41bからは告知音が発せられ、表示部41aには「消毒液の残りの使用回数は5回です。消毒液を補充してください」等の告知表示がなされる。
【0063】
なお、ステップS3、S6、S7及びS9における各設定値は、入力部41cより入力され、メモリ201に記憶されている値である。
【0064】
以上のように、本実施例では、薬液供給管路23への消毒液350の送液時間が所定時間経過後の、上記の平衡状態である周波数安定領域における、近似した直線の傾きである周波数に基づき、薬液ボトル321内の残量を推定して、推定結果を告知するので、簡単かつ確実に使用可能な薬液の残量が検出でき、適切なタイミングで薬液の補充を促す告知を行うことができる。したがって、内視鏡洗滌消毒装置40による内視鏡の洗滌/消毒中に消毒液がなくなることが防止でき、無駄のない効率的な内視鏡の洗滌/消毒処理が可能となる。
【0065】
なお、図14に示すように、ステップS8の後に、ステップS20及びステップS21の処理を加えても良い。すなわち、ステップS8の後、制御回路200は、ステップS20にて、ステップS8において算出したカウント周波数に、所定以上の変動があるかどうか判断し、変動がない場合はステップS9に進み、変動がある場合はステップS21に進む。制御回路200は、ステップS20にて「消毒液がありません。消毒液を補充してください」等の警告告知を行い、ステップS11に進む。
【0066】
このステップS20における、カウント周波数の変動の有無は、図12におけるエアー混入の有無であって、図14の処理では、図13の処理による効果に加え、カウント周波数の変動が所定以上の変動となる場合には、エアー混入と判断、すなわち、消毒液がないと判断することができる。
【0067】
ところで、上述した消毒液供給部32及びコンプレッサ34とからなる液体供給機構では、薬液ボトル321内に貯蔵される消毒液350の残量により、ボトル内に送り込む気体量が異なり、制御が複雑になる。また、ポンプにて一定量の消毒液等の液体を吸い上げ供給先に供給し、流量センサにて供給量を測定する液体供給機構の場合であっても、流量センサやポンプを制御しなければならず、制御系が複雑になる。
【0068】
そこで、以下にこれらの問題を解決できる、安価で簡単な制御により一定量の液体を送り出すことのできる液体供給機構を、図15及び図16を用いて説明する。
【0069】
図15に示す液体供給機構は、蛇腹形状の液体ボトル100と、この液体ボトル100の先端側に当接し保持するボトル支え部101と、液体ボトル100の基端側に当接し保持するボトル押し当て部102と、ボトル押し当て部102に連結されボトル押し当て部102をボトル支え部101に移動させる移動部材103と、を備えて構成される。ボトル支え部101を介して、液体ボトル100先端は、図示しない供給先に接続されている送液路108と連通している。
【0070】
また図15に示す液体供給機構では、移動部材103は、スライドレール104上に接続配置され、ボトル支え部101からボトル押し当て部102に至る方向に延びたボールネジ106に螺合して構成される。このボールネジ106の先端はボールネジ支え105により保持され、ボールネジ106の基端にはモータ107が接続されて構成されている。
【0071】
図15の液体供給機構では、モータ107を回転させることで、モータ軸と連動してボールネジ106が回転する。このボールネジ106の回転によって、移動部材103が前後に移動することが可能となっている。移動部材103はスライドレール104上に接続配置されているため、ボールネジ106の回転によって同時に回転することなく、前後のみ移動する。この結果、移動部材103に連結されたボトル押し当て部102が蛇腹形状の液体ボトル100を押しつぶすことによって、送液が可能となる。
【0072】
図16は液体ボトル100の送液メカニズムを説明する図である。蛇腹形状の液体ボトル100は、蛇腹の山の1段1段に、それぞれ、1回分の量の液体が充填されている。モータ107を回転させ、ボールネジ106を一定量回転させることで、移動部材103を一定量移動させ、液体ボトル100の基端面を押し込む。これによって、蛇腹の山が1段分縮むまで液体ボトル100の基端面を押し込み、1回分の量の液体を送液路108に供給することができるようになっている。
【0073】
これを繰り返し、モータ107の回転数を制御することで、液体ボトル100内の液体を送液路108に所定量単位にて供給できる。例えば、1回分の供給量を送り出すために必要な回転数がR(rpm)ならば、2回分は2R(rpm)となる。
【0074】
内視鏡洗滌消毒装置側にて、新しい液体ボトル100のセットを検知して、このときの液体供給カウントを0とし、液体を供給する度にカウントを増やし、そのカウント数によってモータ107の回転数を増やして、ボールネジ106の送り出し量を決めることで、確実に一定量の液体の送液が可能となる。
【0075】
なお、液体ボトル100は、蛇腹形状をなしているために、使用済みの場合には、小さく折り畳むことができる。
【0076】
本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施例1に係る内視鏡洗滌消毒装置の概略構成を説明するための図
【図2】図1の洗滌槽に内視鏡が設置されている状態における内視鏡洗滌消毒装置の外観を示す斜視図
【図3】図1の消毒液供給部の構成を説明するための図
【図4】図3の消毒液供給部の動作原理を説明する第1の図
【図5】図3の消毒液供給部の動作原理を説明する第2の図
【図6】図3の消毒液供給部の動作原理を説明する第3の図
【図7】図3の消毒液供給部の動作原理を説明する第4の図
【図8】図3の消毒液供給部の動作原理を説明する第5の図
【図9】図3の消毒液供給部の動作原理を説明する第6の図
【図10】図3の消毒液供給部の動作原理を説明する第7の図
【図11】図3の消毒液供給部の動作原理を説明する第8の図
【図12】図3の消毒液供給部の動作原理を説明する第9の図
【図13】図3の制御回路の処理の流れを示すフローチャート
【図14】図13の処理の変形例の流れを示すフローチャート
【図15】安価で簡単な制御により一定量の液体を送り出すことのできる液体供給機構示す図
【図16】図15の液体ボトルの送液メカニズムを説明する図
【符号の説明】
【0078】
1…内視鏡
2…洗滌槽
23…消毒液供給部
34…コンプレッサ
40…内視鏡洗滌消毒装置
41…操作パネル
200…制御回路
201…メモリ
320…圧力タンク
321…薬液ボトル
322…3方弁
323…流量センサ
324…圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧手段により薬液を貯留する薬液ボトルの内部を加圧し、前記薬液を送液先に送液する送液機構を備えた内視鏡洗滌消毒装置において、
前記加圧手段と前記薬液ボトルとの間に設けられ、前記加圧手段により一定圧に加圧された加圧流体を貯蔵する定圧タンクと、
前記定圧タンクの内圧を計測する圧力センサと、
前記加圧流体の前記薬液ボトルへの供給の開始/停止を制御する加圧流体制御手段と、
前記送液先に送液される前記薬液の流量を計測する流量センサと、
前記流量センサの計測結果に基づき、前記薬液ボトルの内部の前記薬液の残量を推定する推定手段と
を備えたことを特徴とする内視鏡洗滌消毒装置。
【請求項2】
前記推定手段は、前記流量センサの流量計測値の単位時間あたりの変化量に基づき、前記残量を推定する
ことを特徴とする請求項1に内視鏡洗滌消毒装置。
【請求項3】
前記推定手段は、
前記加圧流体制御手段が前記加圧流体の前記薬液ボトルへの供給を開始してから所定の時間経過後の、前記単位時間あたりの変化量に基づき、前記残量を推定する
ことを特徴とする請求項2に内視鏡洗滌消毒装置。
【請求項4】
前記推定手段は、
前記単位時間あたりの変化量の変動状態により、前記残量の有無を判断する
ことを特徴とする請求項2または3に内視鏡洗滌消毒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−172012(P2009−172012A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10851(P2008−10851)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】