説明

内視鏡用フード

【課題】内視鏡の拡大視野下においても的確にマーキングできる内視鏡用処置具を提供する。
【解決手段】内視鏡用処置具1は、内視鏡6の先端部外周に着脱自在に装着される筒状のフード2と、患者の処置部にマーキングを行うマーキング用ワイヤー4と、これを挿通するガイドチューブ3とを備える。フード2は、内視鏡6の先端部外周に装着される装着部11と、装着部11から内視鏡6の前方に向けて突出する突出部12とを有する。突出部12は、その内周面と内視鏡6の先端面とによって作業空間13を形成する。ガイドチューブ3は、装着部11の軸方向に沿って延びる基部16と、基部16から突出部12を介して作業空間13に向けて湾曲する第1湾曲部17と、作業空間13内で突出部12の軸方向と平行となるように湾曲する第2湾曲部18とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の先端部に装着される内視鏡用処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食道、胃、小腸、大腸等の消化管の表層における初期癌の治療方法として、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術、Endoscopic Submucosal Dissection)と呼ばれる方法が提案されている。
【0003】
このESDでは、切除すべき範囲を特定するために、腫瘍の周りを高周波ナイフ等のマーキングデバイスでマーキングする。その際には、腫瘍の取り残しや正常組織の過剰切除を防止するために、正確なマーキングを行うことが必須とされる。
【0004】
そのため、術者は、マーキングを行う際に、腫瘍組織と正常組織の境目を確認するため、内視鏡の画面を通常の視野から拡大操作して前記境目を観察する。
【0005】
しかしながら、従来のマーキングデバイスは内視鏡の画面から離れた内視鏡鉗子孔から挿入されるものであるため、この拡大操作を行うと、マーキングデバイスの先端は拡大画面の外に出てしまう。したがって、マーキングを行う際には、術者が目測で前記境目の位置を覚えておき、通常視野に戻してからマーキング操作を行う。そして、術者は、自らが意図したところにマーキングされているか否か確認するために再度拡大操作を行い、意図しないところにマークされていた場合には、上記マーキングを最初から繰り返す。
【0006】
したがって、従来のマーキングデバイスでは、手技が煩雑であり時間がかかると共に、マーキングを繰り返すとどのマークが前記境目を示すか不明確になるという問題がある。
【0007】
ところで、内視鏡鉗子孔以外からマーキングデバイスを挿通する手段として、内視鏡の先端に装着されるフードとガイドチューブとを備え、該フードには該ガイドチューブを内視鏡の内腔に向けて挿入するための挿入孔が斜めに形成されている内視鏡用処置具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
この内視鏡用処置具によれば、ガイドチューブにマーキングデバイスを挿通することにより、マーキングデバイスが内視鏡の内腔に向けて斜めに突出するので、前記拡大操作下においても、内視鏡の画面にマーキングデバイスの先端が映る場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−93247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、この内視鏡用処置具は、マーキングデバイスが内視鏡の内腔に向けて斜めに突出するので、前記フードの先端とマーキングしようとする境目との距離によって、マーキングデバイスの先端が拡大画面の範囲外に出ることがある。また、前記処置具では、内視鏡の画面に対して斜め前方に突出するので、狙ったところにマーキングすることが困難であるという問題がある。
【0011】
本発明は、かかる不都合を解消して、内視鏡の拡大視野下においても的確にマーキングできる内視鏡用処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の内視鏡用処置具は、内視鏡の先端部外周に着脱自在に装着される筒状のフードと、患者の処置部にマーキングを行うマーキング用ワイヤーと、該マーキング用ワイヤーを挿通するガイドチューブとを備えた内視鏡用処置具において、該フードは、内視鏡の先端部外周に装着される装着部と、該装着部から内視鏡の前方に向けて突出し、その内周面と該内視鏡の先端面とによって作業空間を形成する突出部とを有し、該ガイドチューブは、該装着部の軸方向に沿って延びる基部と、該基部から該突出部を介して該作業空間に向けて湾曲する第1湾曲部と、該作業空間内で該突出部の軸方向と平行となるように湾曲する第2湾曲部とを有し、該マーキング用ワイヤーは、該ガイドチューブに沿って湾曲され、該ガイドチューブの先端部から出没自在になっていることを特徴とする。
【0013】
本発明の内視鏡用処置具では、ガイドチューブは、術者の手元である内視鏡の挿入口から内視鏡の先端部に向かって、まず、装着部の軸方向に沿って延びる基部を有し、次に、該基部が第1湾曲部によって、突出部を介して該作業空間に向けて湾曲する。さらに、ガイドチューブは、第2湾曲部によって作業空間内で該突出部の軸方向と平行となるように再度湾曲する構造となっている。マーキング用ワイヤーは、このガイドチューブに沿って湾曲され、ガイドチューブの先端部から出没自在になっている。
【0014】
したがって、マーキング用ワイヤーは、略クランク状に湾曲することから、内視鏡の先端面の中心寄りから突出することになる。また、マーキング用ワイヤーは、突出部と内視鏡との軸方向が一致していることから、内視鏡の先端部と平行に突出することになる。
【0015】
この結果、本発明の内視鏡用処置具によれば、マーキング用ワイヤーが前記中心寄りの位置から内視鏡と平行に突出するので、内視鏡の拡大画面下において常にマーキング用ワイヤーの先端を確認しながら的確にマーキングできると共に、平行に突出するので、突出部の先端とマーキング箇所の距離によらず容易にマーキングすることができる。
【0016】
本発明の内視鏡用処置具において、前記フードは、前記突出部の内方に突出して前記ガイドチューブを支持する凸状の支持部を有し、該支持部は、前記作業空間内の該ガイドチューブに当接して支持していることが好ましい。
【0017】
前記構成を備える内視鏡用処置具によれば、ガイドチューブは、前記支持部によって支持されることから、より的確にマーキング用ワイヤーの先端の方向付けをすることができる。
【0018】
本発明の内視鏡用処置具において、前記フードは、可撓性を有する装着部と、第1湾曲部の大径側に当接する部分において剛体部を有する突出部とを備えることが好ましい。
【0019】
または、本発明の内視鏡用処置具において、前記フードは、可撓性を有する装着部と、第2湾曲部の大径側に当接する部分において剛体部を有する支持部とを備えることが好ましい。
【0020】
前記構成を備える内視鏡用処置具によれば、フードの装着部は可撓性を有するので、内視鏡の先端部に嵌着することができる。
【0021】
一方、フードの第1湾曲部及び第2湾曲部の大径側に当接する部分が可撓性を有すると、マーキング用ワイヤーは、これを挿入する圧力により、前記当接部分を変形させ食い込むことがある。このような変形は、マーキングワイヤーを挿入するのに抵抗が生じさせ、その操作性を悪化させる。
【0022】
これに対し、前記構成を備える内視鏡用処置具によれば、前記大径側に当接する部分に剛体部を有する突出部や支持部を備えていることから、マーキング用ワイヤーを挿入する圧力により前記当接部分が変形することを防止することができるので、マーキング用ワイヤーをスムーズかつ的確に操作をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態の内視鏡用処置具を示す全体図。
【図2】本発明の実施形態の内視鏡用処置具の先端部を示す拡大斜視図。
【図3】(a)は本発明の実施形態の内視鏡用処置具の先端部を示す斜視図、(b)はIII−III線に沿う断面図。
【図4】(a)は本発明の実施形態のガイドチューブの支持部を示す斜視図、(b)はIV−IV線に沿う断面図。
【図5】(a)は本発明の実施形態のフード本体を示す斜視図、(b)はV−V線に沿う断面図。
【図6】(a)は本発明の実施形態の内視鏡用処置具の変形例を示す斜視図、(b)はVI−VI線に沿う断面図、(c)は変形例のガイドチューブの支持部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示すように、本実施形態の内視鏡用処置具1は、筒状のフード2と、フード2の後端面に接続されるガイドチューブ3と、ガイドチューブ3内を進退自在に挿通されたマーキング用ワイヤー4と、マーキング用ワイヤー4の後端部に接続されたスライダー5とを備えている。
【0025】
内視鏡用処置具1は、フード2を内視鏡6の先端部に装着し、ガイドチューブを内視鏡6に沿ってテープで固定した状態で、患者の体腔内に挿入される。また、スライダー5は、患者の体腔外に配置され、これを術者が次の操作することで、マーキング用ワイヤー4がガイドチューブ3内を進退自在に移動し、その先端部がフード2の先端部から出没する。
【0026】
スライダー5は、スライダー本体部7とスライダー操作部8とを備え、術者が、スライダー本体部7を把持し、スライダー操作部8を軸方向に前後させることで、前記操作を行う。
【0027】
また、スライダー5は、高周波発生装置に接続するための端子10を備えており、この接続を行うことで、マーキング用ワイヤー4は高周波ナイフとして機能する。
【0028】
図2に示すように、本実施形態のフード2は、内視鏡6の先端部の外周に装着される装着部11と、内視鏡6の先端部の前方に突出する突出部12とを備える。突出部12の内周は、内視鏡6の先端面とで作業空間13を形成している。また、突出部12は、作業空間13に向かって凸状に突出した支持部14を有している。
【0029】
また、フード2は、装着部11の後端部から突出部12の先端部に向かって、略クランク状のガイド孔15が貫通されている。詳しくは、まず、ガイド孔15は、装着部11の後端部から装着部11の軸方向と平行に基部16aが形成されている。次に、ガイド孔15は、突出部12の内部に形成された第1湾曲部17aによって、作業空間13方向に向けて湾曲される。そして、ガイド孔15は、支持部14の内部に形成された第2湾曲部18aによって、突出部12の軸方向と平行に湾曲されて、突出部12の先端部に通じている。
【0030】
ガイドチューブ3は、先端部近傍において、ガイド孔15内に収納された状態で固定されている。ガイドチューブ3は、ガイド孔15内に沿って、装着部11の軸方向と平行な基部16bと、第1湾曲部17aによって湾曲される第1湾曲部17bと、第2湾曲部18aによって湾曲される第2湾曲部18bとを有することとなる。
【0031】
マーキング用ワイヤー4は、このガイドチューブ3に進退自在に挿通されている。そのため、マーキング用ワイヤー4は、ガイドチューブ3の基端部側から先端部側に向かって進むときは、まず第1湾曲部17bの大径部に沿って曲げられ、さらに、第2湾曲部18bの大径部に沿って曲げられて、突出部12の先端から突出する。
【0032】
図3乃至図5に示すように、本実施形態のフード2は、フード本体20と、ガイドフード21という2つの部品からなる。そして、図4に示すように、フード本体20はガイド溝22を有し、図5に示すように、ガイドフード21はガイド溝23を有し、この2つの溝によりガイド孔15が形成される。
【0033】
図4に示すように、フード本体20は、例えば、ポリ塩化ビニルなどの可撓性の合成樹脂によって、円筒状の装着部11と突出部12との一部とを形成する。従って、フード本体20は、内視鏡6の先端部に嵌着することができる。
【0034】
図5に示すように、ガイドフード21は、例えば、ABSなどの硬質性の合成樹脂によって、突出部12の一部(支持部14を含む)を形成する。この突出部12の一部には、第1湾曲部17aと第2湾曲部18aも含まれる。従って、第1湾曲部17aの大径部と第2湾曲部18aの大径部も硬質性の合成樹脂によって形成されている。
【0035】
次に、本実施形態の内視鏡用処置具1の使用方法について説明する。
【0036】
まず、術者は、内視鏡6の先端にフード2を装着し、ガイドチューブ3を内視鏡の軸に沿って、テープで固定する。
【0037】
次に、マーキング用ワイヤー4をスライダー5に備えられた端子10を介して高周波発生装置(図示せず)に接続する。
【0038】
次に、術者は、マーキング用ワイヤー4がフード2の先端部から突出しないようにスライダー5を調整したうえで、内視鏡の通常視野下において、内視鏡用処置具1が取り付けられた内視鏡6を病変部付近に配置する。
【0039】
次に、術者は、内視鏡6の画面を通常視野から拡大操作し、腫瘍組織と正常組織の境目を拡大画面で確認する。そして、スライダー5を押し込む操作をすることによって、その確認した境目に向かってマーキング用ワイヤー4を突出させてマーキングを行う。
【0040】
本実施形態の内視鏡用処置具1によれば、マーキング用ワイヤー4は、突出部12の内周から作業空間13方向に張り出した位置、すなわち、内視鏡6の中心軸寄りの位置から内視鏡6とほぼ平行に突出する。したがって、本実施形態の内視鏡用処置具1は、内視鏡6の拡大画面下においても、常にマーキング用ワイヤー4の先端を確認しながら的確にマーキングすることができる、また、マーキング用ワイヤー4の先端が、内視鏡6とほぼ平行に突出するので、突出部12の先端面とマーキング箇所の距離によらず的確にマーキングすることができる。
【0041】
さらに、本実施形態の内視鏡用処置具1によれば、上述の通り、第1湾曲部17aの大径部と第2湾曲部18aの大径部とは硬質性の合成樹脂製なので、マーキング用ワイヤー4を押し込んでも、その圧力により第1湾曲部17aの大径部と第2湾曲部18aの大径部が変形することはない。仮に、この変形によりが生じた場合には、マーキング用ワイヤー4が第1湾曲部17a及び第2湾曲部18aにおいて大きく屈曲し、マーキング用ワイヤー4を押し込む操作が困難になる。したがって、本実施形態の内視鏡用処置具1によれば、この変形を防止することにより、マーキング用ワイヤー4をスムーズに操作することができる。
【0042】
なお、本実施形態の内視鏡用処置具1の突出部12は、図6に示すように、支持部14を有さないものであってもよい。この場合には、例えば、ガイドチューブ3を熱硬化性樹脂で形成し先端部を熱処理することによって、ガイドチューブ自体を湾曲した状態で硬質化させて第2湾曲部を形成する。
【符号の説明】
【0043】
1…内視鏡用処置具、 2…フード、 3…ガイドチューブ、 4…マーキング用ワイヤー、 5…スライダー、 6…内視鏡、 11…装着部、 12…突出部、 13…作業空間、 14…支持部、 16a…基部、 17b…第1湾曲部、 18b…第2湾曲部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の先端部外周に着脱自在に装着される筒状のフードと、
患者の処置部にマーキングを行うマーキング用ワイヤーと、該マーキング用ワイヤーを挿通するガイドチューブとを備えた内視鏡用処置具において、
該フードは、内視鏡の先端部外周に装着される装着部と、該装着部から内視鏡の前方に向けて突出し、その内周面と該内視鏡の先端面とによって作業空間を形成する突出部とを有し、
該ガイドチューブは、該装着部の軸方向に沿って延びる基部と、該基部から該突出部を介して該作業空間に向けて湾曲する第1湾曲部と、該作業空間内で該突出部の軸方向と平行となるように湾曲する第2湾曲部とを有し、
該マーキング用ワイヤーは、該ガイドチューブに沿って湾曲され、該ガイドチューブの先端部から出没自在になっていることを特徴とする内視鏡用処置具。
【請求項2】
請求項1記載の内視鏡用処置具において、前記フードは、前記突出部の内方に突出して前記ガイドチューブを支持する凸状の支持部を有し、
該支持部は、前記作業空間内の該ガイドチューブに当接して支持していることを特徴とする内視鏡用処置具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の内視鏡用処置具において、前記フードは、可撓性を有する装着部と、第1湾曲部の大径側に当接する部分において剛体部を有する突出部とを備えることを特徴とする内視鏡用処置具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3いずれか1項に記載の内視鏡用処置具において、前記フードは、可撓性を有する装着部と、第2湾曲部の大径側に当接する部分において剛体部を有する支持部とを備えることを特徴とする内視鏡用処置具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−30764(P2011−30764A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179805(P2009−179805)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(509218294)
【出願人】(509007702)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】