説明

内部位置センサーを有する灌注式カテーテル

【課題】電気生理学的カテーテルを提供する。
【解決手段】カテーテルが、灌注式の焼灼用の先端部電極内で遠位側の同軸の位置に位置センサーを支持する。先端部電極は、空洞を画定するシェル壁を有し、その空洞を通じて、流体が流れ、シェル壁に形成された流体ポートを経由して脱出する。その空洞は、内部部材によって密封され、内部部材は、阻流部分と遠位部分によって空洞の中に延びる。遠位部分は位置センサーを安全に収容し、阻流部分は、空洞を通じた流れをより一様にするために、先端部電極に進入する流体を拡散し、分散する。先端部電極上のすべての箇所で冷却をより一様にするために、遠位部分は、先端部電極の長さ方向に沿って延びる環状領域を設けて、先端部電極上のより遠位側の流体ポートへの流体供給を改善するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓組織の焼灼及び電気活動の検知に特に有用な電気生理学的カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
電極カテーテルは、長年にわたって医療行為に一般的に使用されている。電極カテーテルによる心不整脈の診断及び治療には、心臓組織の電気特性をマッピングすること、及びエネルギーの印加によって心組織を選択的に焼灼することが含まれる。そのような焼灼により、望ましくない電気信号が心臓のある部分から別の部分へと伝播するのを止めるかあるいは修正することができる。焼灼プロセスは、非伝導性の病変部を形成することによって、望ましくない電気的経路を破壊するものである。病変部を形成するための様々なエネルギー伝達様式が開示されており、マイクロ波、レーザー、より一般的には高周波エネルギーを使用して、心組織壁に沿って伝導遮断を生じさせることが含まれる。
【0003】
2段階の手技、つまりマッピングに続く焼灼においては、心臓内の各点における電気活動が通常、1個以上の電気センサー(又は電極)を収容したカテーテルを心臓の中に前進させ、多数の点におけるデータを取得することによって検知され測定される。次いでこれらのデータが利用されて、焼灼が実施される組織の標的領域が選択される。
【0004】
使用にあたり、電極カテーテルは、主要な静脈又は動脈、例えば大腿動脈の中に挿入され、次いで対象となる心室の中に案内される。基準電極が設けられ、一般的には患者の皮膚にテープで付けられる。高周波(RF)電流が先端部電極に印加され、周囲の媒体、すなわち血管及び組織を通じて、基準電極に向かって流れる。電流の分布は、組織よりも伝導性の高い血液と比較すると、組織と接触する電極表面の大きさに依存する。
【0005】
組織の電気抵抗により組織の加熱が生じる。組織は、心組織において細胞の破壊を引き起こすように十分に加熱され、この破壊の結果として、非導電性の病変部が心組織内に形成される。このプロセスの間、加熱された組織から電極自体へと伝導する結果、電極の加熱もまた生じる。電極温度が十分に高くなり、おそらくは60℃超となる場合、乾燥した血液の薄い透明な膜が電極の表面上に形成され得る。温度が上昇し続けた場合、この血液の乾燥層は次第に厚くなり、結果として電極表面上に血液凝固を生じ得る。乾燥した生物学的物質は、組織よりも高い電気抵抗を有するため、組織の中に向かう電気エネルギーの流れに対するインピーダンスも増加する。インピーダンスが十分に増加する場合、インピーダンス上昇が生じ、カテーテルを身体から取り除き、先端部電極を洗浄しなければならない。
【0006】
RF電流の通常の印加において、循環血液により、焼灼電極がいくぶんか冷却される。別の方法は、血液によってもたらされるより受動的な生理的冷却に頼る代わりに、焼灼電極を、例えば、生理的食塩水で室温にて灌注して、焼灼電極を能動的に冷却することである。RF電流の強度が境界面の温度による制限を受けなくなるため、電流を増加させることができる。この結果として病変部は、より大きくかつより球状のものとなる傾向があり、通常、約10〜12mmに達する。
【0007】
焼灼電極を灌注することの臨床的な効果は、電極構造内における流れの分布及び先端部を通じた灌注流れの速度に依存する。各効果は、電極全体の温度を低下させ、血塊の形成を惹起し得る、焼灼電極内でのホットスポットを排除することによって達成される。チャネルをより多くし、流量をより多くすると、全体的な温度及び温度変動、すなわちホットスポットを減じる上でより効果的となる。冷却剤の流量は、患者に注入され得る流体の量、及び、手技の間に注入装置を監視し、場合によっては再充填するのに必要となる臨床的な負担の増加に対して釣り合いのとれたものでなければならない。血液が冷却剤の通路に逆流するのを防止するために、焼灼の間の灌注流れに加えて、典型的にはより低速な流量のメンテナンス用の流れが手技の全体を通じて必要となる。したがって、冷却剤の流れを可能な限り効率的に利用することによって冷却剤の流れを減じることが、望ましい設計目的となる。
【0008】
別の検討事項は、カテーテル先端部の位置と向きを正確に制御する能力である。この能力は重要であり、カテーテルの実用性を大きく左右するものである。カテーテルの遠位端部の配置を判定するための電磁式(EM)3軸配置/位置センサーを、電気生理学的カテーテルに組み込むことが一般に知られている。通常はカテーテルの遠位端部の近くの遠位先端部内にある、カテーテル内のEMセンサーが信号を発生させ、その信号は、身体に対してあるいは心臓自体に対して外側に固定された基準系に対する装置の位置を判定するために使用される。EMセンサーは能動型であっても受動型であってもよく、また、電場、磁場、若しくは超音波エネルギー場、又は当該技術分野において既知の他の好適な形態のエネルギーを発生させるか、又は受容することによって動作することができる。
【0009】
参照によってすべての開示内容が本願に組み込まれる米国特許第5,391,199号には、カテーテルの遠位端部内に収容された小型センサーコイルを備える位置応答式カテーテルについて記載されている。コイルは、外側から印加された磁場に応答して電気信号を発生させ、それらの磁場は、患者の体外に置かれた磁場発生コイルによって生成される。それらの電気信号が解析されて、コイルの3次元座標が判定される。
【0010】
参照によってすべての開示内容が本願に組み込まれる米国特許第6,690,963号は、侵襲医療器具、例えばカテーテル又は内視鏡の、基準系に対する配置と向きを判定するための配置システムに関するものであり、このシステムは、駆動信号に応答して、既知の識別可能な磁場、好ましくは連続的なAC磁場を発生させる複数の磁場発生器と、前記磁場に応答してセンサー信号を発生させる、遠位端部に近接して侵襲医療器具に定置された複数のセンサーと、前記駆動信号及び前記センサー信号に対応する複数の信号に対する入力を有し、侵襲医療器具上のある点の3つの位置の座標と3つの向きの座標を生成する信号処理器とを備える。
【0011】
先端部電極の大きさ、及びその中の限られた内部空間により、EMセンサーは多くの場合、先端部電極の外側に、先端部電極の近位側に、またしばしば先端部電極から軸外に配置され、それにより、センサーの位置検知能力の精度が低下することがある。先端部電極の外側にあることにより、位置センサーはまた、曲げ応力に曝され、遠位先端部区間の可撓性と偏向性が制限され得る。更に、センサーは焼灼の間にRFエネルギーによって損傷を受けることがある。
【0012】
焼灼手技は5時間又は6時間に及び、結果として患者の流体負荷が甚大となり得るので、遠位先端部が灌注される場合、灌注による冷却の効率は重要な要素となる。従来の灌注式先端部電極は通常、約30ワット未満のRF焼灼エネルギーで約17mL/分から、約30ワット以上のRF焼灼エネルギーで約30〜50mL/分の流量で動作する。また遠位先端部内の空間が限られていることにより、管の壁などの望ましくない場所にプーラーワイヤーを定着することになり、管の壁の引裂き及び/又は意図しない非対称的な偏向を引き起こすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、位置センサーが保護され、遠位側にかつ軸上に配置されるハウジングを含む先端部構成を提供することによって、先端部を通じた灌注流体の流れと分散を妨げることなく、冷却及び位置検知特性を改善して、カテーテルがマッピング及び焼灼に適合されることが望ましい。また、そのようなカテーテルが対称的な二方向性の偏向を呈し、カテーテルの壁が偏向用のプーラーワイヤーによって損傷を受けないことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、心臓組織のマッピング及び焼灼に適合されたカテーテルに関し、そのカテーテルは、灌注される焼灼用の先端部電極内で遠位側の軸上の位置に位置センサーを支持する。本発明のカテーテルは、細長いカテーテル本体と、そのカテーテル本体の遠位側にある偏向可能な区間とを有する。この先端部電極は、流体の拡散と分散を促進する内部構成を有する。
【0015】
一実施形態において、先端部電極は、空洞を画定するシェル壁を有し、その空洞を通じて流体が流れ、シェル壁に形成された流体ポートを経由して脱出する。その空洞は、内部部材によって密封され、内部部材は、阻流部分と遠位部分によって空洞の中に延びる。遠位部分は位置センサーを安全に収容し、阻流部分は、空洞を通じた流れをより一様にするために、先端部電極に進入する流体を拡散し、分散する。先端部電極上のすべての箇所で冷却をより一様にするために、遠位部分は、先端部電極の長さ方向に沿って延びる環状領域を設けて、先端部電極上のより遠位側の流体ポートへの流体供給を改善するように構成されている。
【0016】
更に詳述する実施形態において、阻流部分は、シェルの内部空間に適合しない断面を有し、そのため、分離した別個の軸方向流路が設けられ、先端部電極に進入する流体の軸方向運動量が低下するようになっている。例えば、シェルの内部空間が概ね円形である場合、阻流部分は多角形の(規則的又は不規則的な)断面を有し、流体は、先端部電極の空洞に進入するとき、その断面に衝突する。加えて、先端部電極の内側の空間をより効率的に使用するために、流体が空洞に進入する通路は、細長い断面を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明のこれらの及び他の特徴と利点は、添付の図面とともに考慮すれば、以下の詳細な説明を参照することによって更に理解されよう。
【図1】本発明のカテーテルの実施形態の側面図。
【図2A】第1の直径に沿った、カテーテル本体と偏向可能な中間区間との接合部を示す図1のカテーテルの側断面図。
【図2B】第1の直径に対して概ね垂直な第2の直径に沿った、カテーテル本体と偏向可能な中間区間との接合部を示す図1のカテーテルの側断面図。
【図2C】線c−cに沿った、図2A及び2Bの偏向可能な中間区間の縦断面図。
【図3A】中立位置及び偏向位置にあるカテーテルを示す、制御ハンドルの実施形態の概略図。
【図3B】中立位置及び偏向位置にあるカテーテルを示す、制御ハンドルの実施形態の概略図。
【図3C】中立位置及び偏向位置にあるカテーテルを示す、制御ハンドルの実施形態の概略図。
【図4】偏向制御アセンブリを含む、制御ハンドルの実施形態の平面図。
【図5】制御ハンドルに装着された偏向アーム及び張力調節ノブの実施形態の部分側方斜視図。
【図6A】偏向制御アセンブリで使用されるロッカー部材の実施形態の頂面斜視図及び底面斜視図。
【図6B】偏向制御アセンブリで使用されるロッカー部材の実施形態の頂面斜視図及び底面斜視図。
【図7】偏向制御アセンブリで使用されるプーリーの実施形態の側面図。
【図8】先端部電極アセンブリの実施形態の分解斜視図。
【図9】先端部電極アセンブリの実施形態の断面斜視図。
【図9A】線a−aに沿った、図9の先端部電極アセンブリの縦断面図。
【図9B】線b−bに沿った、図9の先端部電極アセンブリの縦断面図。
【図9C】線c−cに沿った、図9の先端部電極アセンブリの縦断面図。
【図9D】線d−dに沿った、図9の先端部電極アセンブリの縦断面図。
【図9E】線e−eに沿った、図9の先端部電極アセンブリの縦断面図。
【図9F】線f−fに沿った、図9の先端部電極アセンブリの縦断面図。
【図10】先端部電極アセンブリの別の実施形態の分解斜視図。
【図10A】内部部材の別の実施形態の端部断面図。
【図10B】内部部材の更に別の実施形態の端部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、位置検知及び冷却能力を改善したカテーテル10の実施形態を示している。このカテーテルは、近位端部と遠位端部とを有する細長いカテーテル本体12と、カテーテル本体12の遠位端部にある中間偏向区間14と、灌注式のマッピング及び焼灼用の先端部電極17を有する遠位区間15とを有している。カテーテルはまた、カテーテル本体12の近位端部にある制御ハンドル16を有しており、この制御ハンドル16は、中間区間14の二方向性の偏向を制御するためのものである。有利にも、先端部電極17は、遠位側かつ軸上の箇所に電磁式位置センサーを収容すると共に、センサーをRF焼灼及び曲げ応力から保護している。先端部電極はまた、シェルから流体への熱の移動を向上させるために灌注流体の乱流及び分散を促進し、それにより、流量をより少なくし、結果として患者の流体負荷を低減させるように構成されている。組織を冷却し、凝血を減じ、かつ/又はより深部での病変部の編成(formation)を促進するために、流体、例えば、食塩水又はヘパリンで凝結防止した食塩水が、チップ電極から焼灼部位に送給され得る。神経抑制剤(neuroinhibitors)及び神経興奮剤(neuroexcitors)などの診断用及び治療用の流体を含めて、他の流体が同様に送給され得ることは理解されよう。
【0019】
図2A及び2Bを参照すると、カテーテル本体12は、単一の軸方向又は中央ルーメン18を有する、細長い管状の構造を備えている。カテーテル本体12は可撓性であり、すなわち曲げることができるが、その長さに方向に沿って実質的に圧縮不可能である。カテーテル本体12は、任意の好適な構造をなし、任意の好適な材料で作られることができる。現行の好ましい構造は、ポリウレタン又はペバックス(PEBAX)で作られた外壁20を備えている。外壁20は、カテーテル本体12の捩り剛性を高めるために、ステンレス鋼などの、埋め込まれた編組みメッシュを備えており、その結果、制御ハンドル16が回転されると、カテーテル10の中間区間14がそれに対応する形で回転するようになっている。
【0020】
カテーテル本体12の外径は重要ではないが、好ましくは約8フレンチ以下、より好ましくは7フレンチである。同様に、外壁20の厚さも重要ではないが、中央ルーメン18がプーラー部材(例えば、プーラーワイヤー)、リードワイヤー、及び他の任意の所望のワイヤー、ケーブル又は管を収容できるように、十分に薄いものとなっている。所望により、外壁20の内部表面は、捩り安定性を改善するために補剛チューブ22で裏張りされる。開示する実施形態において、このカテーテルは、約2.29mm(0.090インチ)〜約23.88mm(0.94インチ)の外径と、約1.55mm(0.061インチ)〜約1.65mm(0.065インチ)の内径を有する外壁20を有している。
【0021】
補剛チューブ22及び外壁20の遠位端部は、ポリウレタン接着剤などで接着接合部23を形成することによって、カテーテル本体12の遠位端部の近くに固定式で取り付けられている。より乾燥が遅くかつ強力な接着剤、例えばポリウレタンを使用して、第2の接着接合部25が、補剛チューブ20及び外壁22の近位端部同士の間に形成されている。
【0022】
制御ハンドル16と偏向可能な区間14との間に延びる構成要素が、カテーテル本体12の中央ルーメン18を通過している。これらの構成要素には、先端部区間上の先端部電極17及びリング電極21のためのリードワイヤー40と、流体を先端部区間15に送給するための灌注管38と、位置配置センサー46のためのケーブル48と、中間区間14を偏向させるための一対のプーラーワイヤーと、遠位先端部区間15における温度を検知するための一対の熱電対ワイヤー41、45とが含まれる。接着接合部28は、これらの構成要素の近位部分を補剛チューブの内側に固定する。
【0023】
図2A、2B及び2Cには、管19の短区間を含む中間区間14の実施形態が示されている。この管はまた、複数の軸外ルーメン、例えば、ルーメン26、27、30及び32を有する編組みメッシュ構造を有している。直径方向に対向する第1及び第2のルーメン26の各々は、二方向に偏向させるためのプーラーワイヤー36を支持している。第3のルーメン30は、リードワイヤー40、熱電対ワイヤー41及び45、並びにセンサーケーブル48を支持している。第4のルーメン32は、灌注管38を支持している。
【0024】
中間区間14の管19は、カテーテル本体12よりも可撓性の高い好適な非中毒性材料でできている。管19に好適な材料は、編組みポリウレタン、すなわち編み組まれたステンレス鋼などの埋込みメッシュを有するポリウレタンである。各ルーメンの寸法は重要ではないが、それらのルーメンを通じて延びるそれぞれの構成要素を収容するのに十分なものである。
【0025】
カテーテル本体12を中間区間14に取り付けるための手段が、図2A及び2Bに示されている。中間区間14の近位端部は、カテーテル本体12の外壁20の内側表面を受容する外周ノッチ24を備えている。中間区間14とカテーテル本体12は、接着剤29などで取り付けられる。
【0026】
所望により、カテーテル本体内の補剛チューブ(設けられる場合)の遠位端部と中間区間の近位端部との間にスペーサ(図示せず)が配置されることができる。そのスペーサは、カテーテル本体と中間区間との接合部において可撓性を推移させるものであり、それによって、この接合部は、折れたり捻れたりすることなく滑らかに曲がることが可能となる。そのようなスペーサを有するカテーテルが、米国特許第5,964,757号に記載されており、その開示内容は参照によって本願に組み込まれる。
【0027】
各プーラーワイヤー36は、好ましくはテフロン(登録商標)でコーティングされている。プーラーワイヤー36は、ステンレス鋼又はニチノールなどの任意の好適な金属で作られることができ、テフロンコーティングはプーラーワイヤーに潤滑性を付与する。プーラーワイヤーは好ましくは、約0.15〜約0.25mm(約0.006〜約0.010インチ)に及ぶ直径を有している。
【0028】
図2Bに示すように、各プーラーワイヤー36のうちの、カテーテル本体12を通じて延びる部分は、プーラーワイヤー36を囲む関係をなす圧縮コイル35を通過している。圧縮コイル35は、カテーテル本体12の近位端部から中間区間14の近位端部へと延びている。圧縮コイル35は、任意の好適な金属、好ましくはステンレス鋼でできており、圧縮には抗するが可撓性、すなわち曲げ性を備えるようにそれ自体で緊密に巻回されている。圧縮コイルの内径は好ましくは、プーラーワイヤー36の直径よりもわずかに大きなものである。カテーテル本体12内で、圧縮コイル35の外側表面はまた、例えばポリイミドの管でできた、可撓性の非導電性シース39で被覆されている。図2B及び2Cに示すように、各プーラーワイヤー36のうちの、中間区間14を通じて延びる部分は、非電導性保護シース47で被覆されている。
【0029】
プーラーワイヤー36の近位端部は、制御ハンドル16に定着されている。プーラーワイヤー36の遠位端部は、以下で更に説明するように、先端部区間15に定着されている。プーラーワイヤー36がカテーテル本体12とは別にかつ独立に長手方向に運動することにより、結果として、中間区間14と先端部区間15が偏向することになるが、この運動は、制御ハンドル16の適切な操作によって達成される。
【0030】
図示の実施形態において、制御ハンドル16は、偏向アーム62(図5)と回転可能な又はロッカー部材64(図6A及び6B)とを有する偏向アセンブリ60(図4)を有しており、ロッカー部材64は、プーラーワイヤー36に作用して中間区間14を、したがって先端部区間15を偏向させる一対のプーリー66(図7)を支持している。偏向アーム62とロッカー部材64は、ユーザーが偏向アーム62を回転させるとロッカー部材64が回転するように、回転可能に整列され結合されている。ロッカー部材64が偏向アーム(線62で表す)によって回転されると、区間14を同じ側に向かって偏向させるように、一方のプーリー66がカテーテルの一方の側のプーラーワイヤー36を、そのカテーテルの定着された近位端部37に対して引っ張り、プーリー66は中立位置(図3A)から変位される(図3B及び3C)。リードワイヤー、灌注管、及びセンサーケーブルなどの構成要素は、保護管68内でロッカー部材64を通じて延びることができる。偏向張力ノブ67(図5)により、ユーザーは緩み(the ease)を調節することが可能となり、それによって偏向アーム62を回転させることができる。好適な偏向アセンブリ及び制御ハンドルが、2008年12月30日に出願され「偏向可能なシース案内器(DEFLECTABLE SHEATH INTRODUCER)」と題された、同時係属中の米国特許出願第12/346,834号に記載されており、そのすべての開示内容が参照によって本願に組み込まれる。他の好適な偏向アセンブリが、2008年9月16日に出願され「調節可能な偏向感度を有するカテーテル(CATHETER WITH ADJUSTABLE DEFLECTION SENSITIVITY)」と題された、同時係属中の米国特許出願第12/211,728号、及び2008年5月27日に出願され「二方向カテーテル用の操向機構(STEERING MECHANISM FOR BI-DIRECTIONAL CATHETER)」と題された米国特許出願第12127704号に記載されており、これらのすべての開示内容が参照によって本願に組み込まれる。
【0031】
中間区間14の遠位端部に、先端部区間15があり、先端部区間15は、先端部電極17と、先端部電極17と中間区間14との間のコネクタ管53の比較的短い一片とを含んでいる。図8及び9の図示の実施形態において、3個のリング電極21が管53上に装着されており、管53は、先端部電極のリードワイヤー40T、電磁式センサーのケーブル48、熱電対ワイヤー41及び45、並びに灌注管38を先端部電極17の中に通す単一のルーメンを有している。コネクタ管53のこの単一のルーメンにより、これらの構成要素は、中間区間14におけるそれぞれのルーメンから先端部電極17内におけるそれらの配置へと向かって、必要に応じて向きを変えることが可能となっている。
【0032】
先端部電極17は、長手軸線50を画定しており、導電性のシェル又はドーム51と内部部材又はハウジング52とを含む二部構成をなしている。シェルは、概ね円筒形の形状である。シェルは、より幅広の遠位部分54から近位側にある、より幅狭の開いたネック部分56を有している。遠位部分は、無傷遠位端部72を有しており、遠位端部72は、平坦な遠位表面と、丸みの付いた円周縁部を有している。遠位部分は、概ね円筒形の空洞70をシェル内に画定する内壁58を有している。近位ネック部分56は、長手軸線50と整列し、長手軸線50と同軸にある。ネック部分56が遠位部分54よりも幅狭である必要がないことは理解されよう。実際に、遠位部分54は露出しており、ネック部分56はコネクタ管43で被覆されていることを除き、これら2つの部分は、同じ直径を有していてもよい。
【0033】
シェル51は、生体適合性の合金を含めて、生体適合性の金属で構成されている。好適な生体適合性の合金には、ステンレス鋼の合金、貴金属の合金、及び/又はそれらの組み合わせから選択された合金が挙げられる。一実施形態において、シェルは、約80重量%のパラジウムと、約20重量%の白金で構成される。別の実施形態において、シェルは、約90重量%の白金と、約10重量%のイリジウムで構成される。シェル51は、深絞り製造プロセスによって形成されることができ、その深絞り製造プロセスでは、マッピング及び焼灼手技の間の取扱い、患者の身体を通じた輸送、及び組織の接触に好適な、十分に薄くかつ頑丈な壁が製作される。深絞りされたシェルはまた、放電加工(EDM)プロセスで、空洞70とシェル51の外側との間の連通を可能にする複数の大きなスルーホール又はポート74を遠位部分54内に形成するのに好適である。開示する実施形態において、シェルは、約0.05mm(0.002インチ)〜0.13mm(0.005インチ)、好ましくは約0.08mm(0.003インチ)〜0.10mm(0.004インチ)に及ぶ壁厚を有し、この壁は、約21個〜140個、好ましくは約33個〜60個、より好ましくは約33個〜57個に及ぶ複数のホールを有し、各ホールの直径は、約0.05mm(0.002インチ)〜0.25mm(0.010インチ)、好ましくは約0.08mm(0.003インチ)〜0.10mm(0.004インチ)、好ましくは約0.10mm(0.004インチ)に及び得る。
【0034】
内部部材52は、空洞70内の遠位側かつ中心の位置にてセンサー46を保護し封入するように構成されており、そのため、センサーは、性能が最適となるように、先端部電極内にて遠位側かつ中心にある。つまり、センサーが先端部電極内で中心に寄るにつれて、またセンサーが先端部電極の遠位端部に近づくにつれて、センサーから供給されるデータはより正確となる。図示の実施形態において、内部部材52の全体がシェル51内に受容されている。
【0035】
内部部材52は、先端部区間15の長手軸線50と整列しかつその長手軸線50と同軸となる細長い形状を有している。有利にも、内部部材は、管状の遠位部分80と、阻流中間部分81と、ステム部分82と、近位ベース部分83とを有している。センサー46とセンサーケーブル48を受容するように、内部部材の全長を通じて軸上通路84が延びている。開示する実施形態において、管状の遠位部分80は、概してシェルの空洞70内に位置しており、阻流部分81、ステム部分82、及びベース部分83は、概してシェルのネック部分56内に位置している。つまり、この二部構成により、内部部材52はシェル51に挿入されかつ受容されることが可能となっており、管状の遠位部分80は、シェル51の遠位部分54において延び、近位側の残部(阻流中間部分81、ステム部分82、及びベース部分83)は、シェル51のネック部分56において延びている。
【0036】
内部部材52のベース部分83は、円形の断面(図9f)を有しており、この断面は、シェルのネック部分56と滑り嵌めされて、先端部電極17の近位端部に液密な密封を形成するように適合されている。ベース部分は、約0.08mm(0.003インチ)〜0.10mm(0.004インチ)に及ぶ厚さを有することができる。
【0037】
ベース部分の遠位側に、幅狭のステム部分82があり、このステム部分82は、シェル51内のベース部分83と阻流中間部分81との間に、開いた環状の空隙88を形成している(図9e)。ステム部分の幅は、約2.29mm(0.090インチ)〜2.79mm(0.110インチ)に及び得る。
【0038】
阻流中間部分81の図示の実施形態は、等辺三角形状の断面(図9d)を有しており、3つの辺90が、切頭された3つの角部92の間に広がり、これらの角部92は、シェル51のネック部分56と周囲で接触している。この接触により有利にも、シェル51と内部部材52との間の、滑りによる同軸の(又は心合わせした)嵌め合いが可能となっている。三角形状の断面はまた有利にも、先端部電極17の中に入る流体に対して、様々な軸方向流路又はチャネル94を形成している。シェル51の空洞70の中に流れ込む流体は、阻流中間部分81によって、別個の流路に分離される。これらの流路は、ベース部分にて先端部電極14に進入する流体の分散を容易にする。複数の流路が形成され、流体圧力に大きな低下を伴うことなく乱流が発生する限り、阻流部分81の断面は、三角形状の形状に限定される必要はなく、四辺形又は五辺形を含めて多角形となり得ることが理解されよう。阻流部分の遠位端部と近位端部との間の長さは、約1.27mm(0.050インチ)〜5.08mm(0.200インチ)に及び得る。
【0039】
センサー46を完全に受容し、管状部分の遠位端部とセンサーの遠位端部との間に間隙100を残すように、管状部分80は、ある長さと内径を有している。従来のセンサーは、約1mmの直径と、約5mmの長さを有する。間隙100はポリウレタンなどの密封剤101(図9A)を充填されており、そのため、センサーは、管状部分80において効果的に固定され、密封され、保護されている。管状部分は、空洞の長さの約60%〜90%、好ましくは約80%に及ぶ長さを有している。別の実施形態において、管状部分は、阻流部分とは別の構成要素であり、阻流部分に封着されている。阻流部分81は、導電性材料で作られなければならないが、管状部分はポリイミドなどのプラスチックで作られることができる。管状部分は、空洞70の直径の約25%〜40%、好ましくは約30%に及ぶ外径を有している(図9B及び9C)。長さと直径のこのような相違により、有利にも、シェル51の遠位端部と管状部分80の遠位端部との間の遠位側間隙102と、先端部電極における流体の分散と流れを改善するための、少なくとも管状部分の全長にわたって広がる環状領域104とが残る。図示の実施形態において、管状部分80は円形の断面を有しているが、この断面は、任意の多角形の形状、例えば、三角形、矩形を含めて、任意の適切な形状をなし得ることが理解されよう。
【0040】
センサー46の近位端部において、内部部材52を貫く通路84が幅狭となって、センサー46の近位端部に当接するようにストップ106(図9C)を形成している。センサーとセンサーケーブルとの接合部がこのストップに位置し、センサーケーブルはここから近位側に、通路84の残部を通じて中間区間14の中へと延びている。したがって、ケーブル48とセンサー46との接合部は、内部部材52の内側に隠され、内部部材によって囲まれ、ケーブルの分離及び曲げ応力に対して更に保護される。またこの特徴により、先端部電極の長さを全体により短くでき、カテーテルをより操作しやすいものにすることが可能となる。
【0041】
内部部材のベース部分にある他の形成物には、スルーホール85、86A、86B、87A、及び87Bが挙げられる。灌注管38の遠位端部が終端し、流体スルーホール85において定着されている。熱電対ワイヤー41及び45の遠位端部は、ホール87Aにおいて固定されている。先端部電極のリードワイヤー40Tの遠位端部は、スルーホール87Bにおいて定着されている。先端部電極のリードワイヤー40は、シェル51に、また少なくとも内部部材52のベース部分83にエネルギーを与える。各プーラーワイヤーの遠位端部は、当該技術分野において知られるように、T字形アンカーを有している。T字形アンカーは、直径方向に対向するスルーホール86A、86Bに半田付けされており、したがって、プーラーワイヤーは、裂け得る管の壁ではなくベース部分83に定着されている。そのようにホール86A、86Bに定着されると、プーラーワイヤーによってカテーテルは、中間区間14の対称的な二方向性の偏向性を得る。ベース部分はまた、管状部分80の遠位端部とシェル51の遠位端部との間の間隙102を維持するために、シェル51の近位端部に対する当接部として、近位面に環状リップ106を有することができる。リップとシェル51の近位端部は、例えばレーザー溶接によって、固定式で接合されることができる。
【0042】
本発明の別の特徴によれば、流体のスルーホール85は、ホール85が縁部90に面するように、阻流中間部分81と整列され、したがって、ホール85を脱出した流体は、縁部90と衝突し、ステム部分82の周りに拡散する。ホール85(及び灌注管38)と縁部90との間のこのような整列を、ステム部分82によって設けられる環状の間隙88と組み合わせることにより、流路94を通じて、半径方向においてより均一で均等な流れが可能となり、次いでこの流路94は、空洞70の環状空間104において、乱流を増加させ、流量をより均一にし、したがってシェル51上における対流冷却を増大させる。先端部電極における灌注はしたがって、先端部電極の全長にわたってより均一となる。内部部材はこのように、先端部電極に進入する流体の速度により、流体が更に遠位側のポート74に運ばれ、より近位側のポート74に供給されなくなるという傾向に、効果的に対処する。
【0043】
灌注管38の軸外のスルーホール85の横断面は細長いものであり、つまり、大きい寸法Yと、その大きい寸法Yに対して概ね垂直な小さい寸法Xによって規定される、円形よりも楕円形に近いものとなっている。開示する図9fの実施形態において、この断面は、例えばインゲンマメ又は三日月形状の断面を与えるように、湾曲Cを有する細長いものとなっている。同様に湾曲したものでなくとも少なくとも細長い断面により、内部通路84の軸上の位置及びセンサーケーブル48との干渉をあまり伴うことなく、先端部電極の中に向かう流体流れを増大させ得るスルーホールが設けられることが、本発明によって認められる。
【0044】
灌注管85は可撓性であり、例えば、ポリウレタンでできているため、灌注管38はスルーホール85の形状に容易に適合する。灌注流体が管38によってスルーホール85を通じて先端部電極17の中に送給されるとき、灌注流体はステム部分82にある環状の間隙88の中に進入し、流れ込み、ここで、阻流部分81によって分散され、辺90と角92によって画定される流れチャネル94の中に流れ込む。流体が管状部分80とシェル51との間の空洞70に進入するとき、流体は空洞70内で更に分散し、最終的にポート74を経由して空洞を去る。カテーテル10は、焼灼の間の冷却特性を格別ではなくとも改善されたものにするために、先端部電極内における流体の流れと分散をより良好にしている。本発明の先端部電極は、30ワット前後の場合、約12mL/分で動作することができる。したがって、5時間又は6時間の手技において患者の流体負荷を減じることは非常に重要となり得る。更に、プログラム可能なポンプによって流量が調整される場合、ワット数が低下すると、流量が更に低下することがある。
【0045】
図10の別の実施形態において、内部部材52は、放射状の突起又はフィン110を有しており、これらは、先端部電極の長手軸線50に対して概ね垂直な方向に、管状部分80から外向きに延びている。フィン110は、先端部電極内の空洞70の環状領域104において遠位側に移動するときの流体の速度を減少させるのに役立つ。図10において、フィンは、管状部分80の長さ方向に沿って、互いに対して等距離ではなくとも周期的な位置に配置された、薄い環状のディスクである。一実施形態において、先端部電極の長さ方向に沿って、またシェル51内のすべてのポート74を通じてシェルの外側に向かって、流体の分散をより均一にするために、フィンの直径は、近位方向に向かって増加しており、そのため、流体速度を減少させる効果は、流体が先端部電極17内の環状空間104に最初に進入したときに最大となる。
【0046】
また、図10及び10Bの実施形態において、阻流中間部分81は、一様な放射パターンで外向きに広がる複数の突起又はアーム93を有する星形の断面を有しており、各端部は、シェル51のネック部分56と周囲で接触しており、ここでもアームの間に別個の軸方向流路94を形成している。しかしながら、本発明はまた、図10Aに示すように、阻流中間部分81とネック部分56とが周囲で接触しない断面をも含むことが理解されよう。様々ではあるが必ずしも別個ではない軸方向流路又はチャネル94が設けられ、それらによっても、先端部電極の環状空間104の中に向かう分散及び流れが促進される。
【0047】
また、内部部材の全体は、シェルの上記の材料で構成され得る。少なくとも管状部分80が、パラジウム・白金合金を含めて導電性の金属で構成される場合、EMセンサーは、ポリイミドなどの硬いプラスチックによってRF焼灼に対して遮蔽される。また、金属泊が、電極ハウジングの全体に電気的に接続されている限り、センサーを遮蔽するために使用され得る。本発明はまた、コストを削減するために、内部部材の各部分、例えば、管状部分80及びハウジング52が、プラスチック、ポリイミド、ポリウレタン、又はPEBAXなどの別の材料で構成される別の実施形態を含む。
【0048】
シェルの遠位端部から内部部材の近位端部までの先端部電極の長さは、約2mm〜12mm、好ましくは約3mm〜10mmに及び得る。
【0049】
コネクタ管53上に装着されるリング電極21は、白金又は金、好ましくは白金とイリジウムとの組み合わせなど、任意の好適な固体導電材料で作られることができる。このリング電極は、コネクタ管53の上に接着剤などで装着されることができる。別法として、リング電極は、白金、金、及び/又はイリジウムのような導電性材料で管53をコーティングすることによって形成されることができる。コーティングは、スパッタリング、イオンビーム蒸着、又は等価な技術を用いて施されることができる。管53上のリング電極の個数は、所望に応じて異なり得る。リングは単極であっても双極であってもよい。図示の実施形態において、遠位側の単極リング電極と、近位側の一対の双極リング電極がある。各リング電極は、対応するリードワイヤー40Rに接続されている。
【0050】
各リードワイヤ40Rは、対応するリング電極に任意の好適な方法で取り付けられる。リードワイヤーをリング電極に取り付けるための好ましい方法は、まず、非導電性カバー又は管の壁部を貫く小ホールを形成することを伴う。そのようなホールは、例えば、永久的なホールを形成するように非導電性カバーを貫いて針を挿入し、針を十分に加熱することによって形成されることができる。リードワイヤーは次いで、マイクロフックなどを使用することによって、ホールの中に引き込まれる。次いで、リードワイヤーの端部はコーティングを剥ぎ取られ、リング電極の下側に溶接され、次いでその電極が、ホールの上の所定位置に滑り込まされ、ポリウレタン系接着剤などで適所に固定される。別法として、各リング電極は、非導電性カバーの周りにリードワイヤーを複数回巻き付け、リードワイヤーの絶縁コーティングを外向きに面する表面においてリードワイヤーから剥ぎ取ることによって形成される。
【0051】
先端部電極17は、焼灼のエネルギー源にリードワイヤ40Tで電気的に接続されている。リング電極21は、対応するリードワイヤー40Rによって、適切なマッピング及び監視システムに電気的に接続されている。
【0052】
リードワイヤー40T及び40Rは、偏向可能な中間区間14の管19のルーメン30及びカテーテル本体12の中央ルーメンを通過している。リードワイヤーのうちの、カテーテル本体12の中央ルーメン18及びルーメン24の近位端部を通じて延びる部分は、保護シース(図示せず)に封入されることができ、その保護シースは、任意の好適な材料、好ましくはポリイミドで作られることができる。保護シースは、ルーメン24にポリウレタン系接着剤などで接着することにより、遠位端部にて中間区間14の近位端部に定着される。各電極のリードワイヤーは、制御ハンドル16の近位端部にてコネクタ内で終端する近位端部を有している。
【0053】
従来の構成方法は、先端部電極を「外から内」に構成するものであるが、この二部構成により、「内から外」の構成が可能となる。つまり、先端部電極の二部構成により、カテーテルを異なる順序であるいは逐次的に組み立てることも可能となる。例えば、リング電極21は、先端部電極17の組立てとは別の段階で、コネクタ管53に装着されることができる。管、プーラーワイヤー、センサー、及び熱電対は、従来のカテーテル組立て方法と比較して、更に後の段階又は時期に先端部電極に加えられ得る。
【0054】
重要なことに、先端部電極17の二部構成及び組立てにより、先端部電極が完全に組み立てられる前に、先端部電極の内部の試験、評価、及び検査が可能となる。先端部電極を組み立てる一方法は、センサーが内部部材の管状部分80に受容され(センサーの近位端部がストップ106に当接する状態で)、ケーブル48が、中央通路84を通じて遠位側に、ベース部分83の近位面から外に延びるように、センサー46とケーブル48を内部部材52の中央通路84の中に挿入することを含む。その後、センサー46は、管状部分80の遠位端部を充填する密封材101によって、管状部分80内で密封される。次いで、先端部電極のためのリードワイヤー40、プーラーワイヤー36、及び熱電対ワイヤー41、45の遠位端部が、対応するホール86a、86b、87a、87bにおいて、T字形の定着及び/又は半田付けを含めた手段を用いて、内部部材52のベース部分83に定着され、取り付けられる。次いで灌注管38の遠位端部が、細長いホール85に挿入され、接着剤で固定される。理解されたいこととして、ベース部分のホールにおける、これらの定着及び取り付けの各々により、液密な密封が形成され、そのため、灌注流体が、先端部電極17の近位側でコネクタ管53の中へと流出することがなくなる。組立てのそのような段階が満たされた後、シェルが内部部材に受容される前に、先端部電極及びリング電極を含めた、先端部電極の機能性及び保全性、様々な電気構成要素と流体接合部及び接続部、並びに様々な液密な密封部が、有利にも試験され、評価され、検査されることができる。この特徴は、従来の焼灼及びマッピングカテーテルに対する更なる重大な利点となるものであり、従来の焼灼及びマッピングカテーテルでは、先端部電極の内部へのアクセスは容易でなく、試験は「盲目的に」行われる。
【0055】
先端部電極の試験後、シェル51は、阻流部分81の角部92とシェル51のネック部分56との接触によって心合わせされ整列された内部部材52の上に置かれることができる。シェルは次いで、圧入、接着剤、電気若しくはレーザー溶接、機械的変形、又は2つの部品を接合する他の手段により阻流部分に取り付けられる。次いで、コネクタ管53がネック部分56の上に滑り込まされ、偏向可能な中間区間14の管19の遠位端部に接続される。
【0056】
上記の説明は、本発明の特定の例示的実施形態を参照して提示されたものである。本発明に関連する分野及び技術の当業者には、説明した構造に対する変形及び変更が、本発明の原理、趣旨、及び範囲から大きく逸脱することなく実施され得ることは理解されよう。図面は、必ずしも縮尺通りではないことが理解される。したがって、上記の説明は、添付の図面に記載し説明した厳密な構造のみに関するものとして解釈されるべきではない。むしろ、上記の説明は、以下の特許請求の範囲と整合するものとして、またその特許請求の範囲を支持するものとして解釈されるべきであり、この特許請求の範囲は、最も完全でかつ公正な範囲を有するものである。
【0057】
〔実施の態様〕
(1) 位置センサーを支持するように適合されたカテーテルであって、
細長いカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位側にある偏向可能な区間と、
前記偏向可能な区間の遠位側にある先端部電極であって、長手軸線を有し、
空洞を画定するシェルであって、流体ポートを有する、シェルと、
前記センサーを概ね囲み、前記センサーを前記空洞において概ね心合わせし、前記長手軸線と同軸に配置するように構成された内部部材と、
前記シェルと前記内部部材との間に前記長手軸線に沿って延びる環状領域であって、前記先端部電極に輸送される流体は、前記環状領域において分散され、前記流体ポートを通して前記シェルの外側に通される、環状領域と、を備える、先端部電極と、を備える、カテーテル。
(2) 前記内部部材は、管状部分と、阻流部分と、ベース部分とを含む、実施態様1に記載のカテーテル。
(3) 前記センサーは前記管状部分に受容される、実施態様2に記載のカテーテル。
(4) 前記阻流は、前記内部部材と前記シェルとの間に間隙を画定し、その間隙を通じて前記灌注流体が移動して前記環状領域に達する、実施態様2に記載のカテーテル。
(5) 前記シェルは生体適合性の金属を備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(6) 前記生体適合性の金属は、ステンレス鋼の合金及び/又は貴金属の合金、並びにそれらの組み合わせである、実施態様5に記載のカテーテル。
(7) 前記シェルはパラジウムと白金との合金を含む、実施態様1に記載のカテーテル。
(8) 前記内部部材の少なくとも一部分が、生体適合性の金属を含む、実施態様1に記載のカテーテル。
(9) 前記生体適合性の金属は、ステンレス鋼の合金及び/又は貴金属の合金、並びにそれらの組み合わせである、実施態様8に記載のカテーテル。
(10) 遠位端部が前記ベース部分に定着される一対のプーラー部材を更に備える、実施態様2に記載のカテーテル。
【0058】
(11) 位置センサーを支持する焼灼カテーテルであって、
細長いカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位側にある偏向可能な区間と、
前記偏向可能な区間の遠位側にある先端部電極であって、長手軸線を有し、内部部材と、流体ポートを有する外側シェルと、前記先端部電極に入り前記流体ポートを脱出する流体を受容するための、前記内部部材と前記外側シェルとの間に延びる環状領域とを備える、先端部電極と、を備え、前記内部部材は、
前記先端部電極において心合わせされ、同軸に置かれた前記センサーを支持する管状部分と、
ベース部分と、
前記環状領域の中に向かう複数の流体流路を画定する阻流部分と、を有する、焼灼カテーテル。
(12) 前記シェルは、遠位部分と近位ネック部分とを有し、前記センサーを支持する前記管状部分は、前記遠位部分に配置され、前記ベース近位部分は、前記ネック部分に配置される、実施態様11に記載のカテーテル。
(13) 前記センサーは前記内部部材の前記管状部分に封入される、実施態様11に記載のカテーテル。
(14) 前記管状部分は前記センサーを概ね囲む関係にある、実施態様11に記載のカテーテル。
(15) 前記ベース部分は灌注用のホールを含み、前記ホールは細長い断面を有する、実施態様11に記載のカテーテル。
(16) 前記ベース部分は灌注用のホールを含み、前記阻流部分は縁部を含み、前記ホールと前記縁部は整列される、実施態様11に記載のカテーテル。
(17) 前記管状部分はフィンを含む、実施態様11に記載のカテーテル。
(18) 前記流路は別個のものである、実施態様11に記載のカテーテル。
(19) 前記シェルはパラジウム・白金合金を含む、実施態様11に記載のカテーテル。
(20) 前記内部部材は、パラジウム・白金合金で構成された少なくとも1つの部分を有する、実施態様11に記載のカテーテル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置センサーを支持するように適合されたカテーテルであって、
細長いカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位側にある偏向可能な区間と、
前記偏向可能な区間の遠位側にある先端部電極であって、長手軸線を有し、
空洞を画定するシェルであって、流体ポートを有する、シェルと、
前記センサーを概ね囲み、前記センサーを前記空洞において概ね心合わせし、前記長手軸線と同軸に配置するように構成された内部部材と、
前記シェルと前記内部部材との間に前記長手軸線に沿って延びる環状領域であって、前記先端部電極に輸送される流体は、前記環状領域において分散され、前記流体ポートを通して前記シェルの外側に通される、環状領域と、を備える、先端部電極と、を備える、カテーテル。
【請求項2】
前記内部部材は、管状部分と、阻流部分と、ベース部分とを含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記センサーは前記管状部分に受容される、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記阻流は、前記内部部材と前記シェルとの間に間隙を画定し、その間隙を通じて前記灌注流体が移動して前記環状領域に達する、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記シェルは生体適合性の金属を備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記生体適合性の金属は、ステンレス鋼の合金及び/又は貴金属の合金、並びにそれらの組み合わせである、請求項5に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記シェルはパラジウムと白金との合金を含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記内部部材の少なくとも一部分が、生体適合性の金属を含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記生体適合性の金属は、ステンレス鋼の合金及び/又は貴金属の合金、並びにそれらの組み合わせである、請求項8に記載のカテーテル。
【請求項10】
遠位端部が前記ベース部分に定着される一対のプーラー部材を更に備える、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項11】
位置センサーを支持する焼灼カテーテルであって、
細長いカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位側にある偏向可能な区間と、
前記偏向可能な区間の遠位側にある先端部電極であって、長手軸線を有し、内部部材と、流体ポートを有する外側シェルと、前記先端部電極に入り前記流体ポートを脱出する流体を受容するための、前記内部部材と前記外側シェルとの間に延びる環状領域とを備える、先端部電極と、を備え、前記内部部材は、
前記先端部電極において心合わせされ、同軸に置かれた前記センサーを支持する管状部分と、
ベース部分と、
前記環状領域の中に向かう複数の流体流路を画定する阻流部分と、を有する、焼灼カテーテル。
【請求項12】
前記シェルは、遠位部分と近位ネック部分とを有し、前記センサーを支持する前記管状部分は、前記遠位部分に配置され、前記ベース近位部分は、前記ネック部分に配置される、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記センサーは前記内部部材の前記管状部分に封入される、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記管状部分は前記センサーを概ね囲む関係にある、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記ベース部分は灌注用のホールを含み、前記ホールは細長い断面を有する、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記ベース部分は灌注用のホールを含み、前記阻流部分は縁部を含み、前記ホールと前記縁部は整列される、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記管状部分はフィンを含む、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記流路は別個のものである、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記シェルはパラジウム・白金合金を含む、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記内部部材は、パラジウム・白金合金で構成された少なくとも1つの部分を有する、請求項11に記載のカテーテル。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図10】
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【図10A】
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【図10B】
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【公開番号】特開2011−229918(P2011−229918A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−96838(P2011−96838)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(508080229)バイオセンス・ウエブスター・インコーポレーテツド (79)
【Fターム(参考)】