説明

内部空洞を備えるハニカム体

本発明は、ハニカム体(1)の入口面(5)から出口面(6)に通じる通路(4)を形成する内壁(2,3)を備えたハニカム体(1)において、ハニカム体(1)の少なくとも1つの部分領域に、内壁(2,3)のない複数の空洞(9)が設けられ、これらの空洞(9)は、それぞれ、当該部分領域(T)における通路(4)の平均断面積(q)の少なくとも10倍の大きさの最大断面積(Qmax)を有する少なくとも1つの球形自由空間(10)を含むように形成および設計されているハニカム体(1)に関する。ハニカム体(1)は、特に、少なくとも1つの金属薄板(2,3)を巻回した、絡ませた、および/または、積層したハニカム体(1)とすることができ、多数の少なくとも部分的に構造化された薄板層(3)を備え、その構造化によって通路(4)が形成され、ハニカム体(1)の少なくとも1つの部分領域において、薄板層(2,3)が、当該部分領域における通路(4)の平均断面積(q)の10倍より大きい有効断面積を持つ穴(7,8)を有し、穴(7,8)は、ハニカム体(1)内に、隣接する薄板層(2,3)の穴(7,8)と共に、少なくとも5つの連続する薄板層(2,3)の穴が互いに重なり合うことによって、繋がっている大容積の空洞(9)を形成するように配置および形成され、これら5つの全ての薄板層(2,3)におけるそれぞれの穴(7,8)の重なり面積が、部分領域(T)における通路(4)の平均断面積(q)の少なくとも10倍の大きさであり、流れ方向(S)における穴(7,8)の広がりが、空洞内に開口する通路(4)の平均流体直径の少なくとも2倍である、好ましくは3倍より多い。このようなハニカム体は、特に、粒子フィルタのような、自動車の排気ガスの浄化に関して特に好ましい特性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に内燃機関の排気ガスを浄化するためのハニカム体に関する。
【0002】
このようなハニカム体は、金属またはセラミックス製基本構造物を有し、排気ガスシステムにおいて、排気ガスと相互作用する広い表面積を提供するために用いられる。すなわち、ハニカム体は、触媒活性材料を被覆され、および/または、排気ガスから微粒子を分離して変換するように形成される。さらに、このようなハニカム体は、有害物質、特に炭化水素および/または窒素酸化物を一時的に吸着するために用いられる吸着材料をも被覆される。
【0003】
このようなハニカム体は、一般に、ほぼ平行に延びハニカム体の入口面から出口面に通じる多数の通路を備えている。従って、ハニカム体が組み込まれた状態において、排気ガスは、ハニカム体を流れ方向にほぼ一様に通過するが、ハニカム体の個々の通路への排気ガスの配分は、最初に主として入口面における流れ分布によって決まる。従来技術では、個々の通路内の流れおよび/またはハニカム体内の流れ分布に影響を及ぼす数多くの手段も開示されている。個々の金属薄板層から構成される高度に発達した金属ハニカム体には、しばしば、ハニカム体の流れ特性を最適化するためのさまざまな公知の手段が用いられている。特に、金属ハニカム体は2つの典型的な構造形態に区別される。独国特許出願公開第2902779号明細書に典型的な例が示されている初期の構造形態は、実質的に、1つの平形金属薄板層と1つの波形金属薄板層とが重ねて配置され、螺旋状に巻回された螺旋状の構造形態である。もう1つの構造形態の場合、ハニカム体は、多数の交互に配置された平形金属薄板層と波形金属薄板層、または、異なる波形金属薄板層から構成され、金属薄板層は、初めに1つ又は複数のスタックを形成し、これらのスタックが相互に絡み合わされる。この場合、全ての金属薄板層の端部は、外側にくることになり、ハウジングまたは外被管に結合され、それによりハニカム体の耐久性を増す多数の結合部が作成される。欧州特許第0245737号明細書または国際公開第90/03220号パンフレットには、これらの構造形態の典型的な例が記載されている。金属薄板層に、流れに影響を及ぼす、および/または、個々の流路間で相互混合するための追加構造を装備することも、やはり、ずっと以前から知られている。このような構成の典型的な例が、国際公開第91/01178号パンフレット、国際公開第91/01807号パンフレット、及び、国際公開第90/08249号パンフレットに記述されている。最後に、場合によっては、やはり、流れに影響を及ぼすさらなる追加構造物を備えた円錐状構造のハニカム体もある。例えば、国際公開第97/49905号パンフレットにはこのようなハニカム体の記載がある。
【0004】
本発明は、国際公開第2004/022937号パンフレットに基づくものである。この文献から分るように、ハニカム体は穴明き金属薄板層から作られ、金属薄板層の穴は通路の断面より大きくすることが可能である。このような穴明き金属薄板層から作られたハニカム体は、個々の通路における圧力差が穴によって等しくされ、同時に、通過するガスが渦巻き、その結果ガスと表面との接触が改善されるので、ハニカム体の内部における流れ分布に関して特に好ましい特性を有している。穴の数及び位置は、さまざまな条件に適応するハニカム体を製作することができるように、広い限界内で変更可能である。
【0005】
さらに、国際公開第2004/022937号パンフレットには、製造中に、個々の金属薄板層に適正な空所を形成することによって、ハニカム体内に例えばラムダセンサを収容するための大きい中空スペースを作成することが記載されている。最新の製造技術によれば、製造されるハニカム体内のどの個所に中空スペースを形成すべきかを予め正確に決定することができる。さらなる詳細については、その開示内容が参考までに本明細書においてそっくりそのまま援用されている国際公開第2004/022937号パンフレットを参照されたい。
【0006】
欧州特許出願公開第1428577号明細書にも、金属薄板層に穴の明いたハニカム体が記載されている。このハニカム体は、1つの平形金属薄板と1つの波形金属薄板から螺旋状に巻回されている。もちろん、穴の明いた金属薄板層からハニカム体を製造するための全てのプロセスにおいて、連続する金属薄板層のいくつかの穴は互いにほぼ一列にされている。このようにして、ハニカム体内に、下記において空洞と称するより大きい中空スペースがほぼランダムに生じる。特殊な手段を用いることなく、特に、穴が金属薄板層上に均等に配列されている場合、これらの空洞は極めて不規則に形成され、ハニカム体の外側領域において箔の面積と穴の面積との比率に応じて一般に大きく湾曲するかまたは中断されることさえある。
【0007】
現在では、さまざまな用途に関して、特に、排気ガスから微粒子を除去するために、ハニカム体内に、全方向に比較的大きな寸法を有する比較的多数の空洞を形成すると特に有利であることが分かってきた。このような空洞の特性について述べるに当たっての難点は、これらの空洞が、閉じた壁によって包囲されているのではなく、それどころか、平形金属薄板層と波形金属薄板層とにおける互いにほぼ一列にされた穴によって形成されている点である。これらの穴の縁部が空洞の一種の包囲層を形成する。ハニカム体の特性にとって有利なこのような空洞に関する説明は、空洞内に収容される球体の大きさがどれほどになるかを示すことである。従って、以下においては、図面も参照しながら、特に、空洞内に収容可能な最大の球体に基づいて空洞の特性を説明することを試みる。すぐに明らかになるように、ハニカム体のいかなる空洞も、箔の穴を通り抜ける球体より大きい球体を収容することは不可能である。従って、空洞に合う球体のサイズは、一方では穴のサイズによって決まり、他方では隣接する穴の重なり度によって決まる。
【0008】
さらに、本発明に関する波形箔の穴を検討する場合、いつも波形箔の中心面上への穴の投影だけが検討される。本発明及び空洞の形成において波の形状は重要ではなく、波形金属薄板層内の穴の投影サイズだけが重要である。しかしながら、波形はハニカム体における通路のサイズにとって重要である。単純な構造のハニカム体の場合、全ての通路は、断面積がほぼ同じであるが、特定の断面領域内にさまざまな通路断面積が生じるハニカム体も存在する。従って、以下においては、一般化のために、最も単純な事例では単に各通路の断面積を意味するだけであるが、より複雑な事例では、ハニカム体の断面の特定領域に関して、この断面領域における通路数でハニカム体の全断面積を割った値を意味する平均通路断面積について言及する。
【0009】
本発明の課題は、流れ状況、圧力損失、排気ガス中の有害物質および/または微粒子の変換に関する特性を改良したハニカム体を提供することにある。
【0010】
この課題は、独立請求項1及び独立請求項8に基づくハニカム体によって解決される。それぞれの従属請求項には有利な実施態様が記載されている。
【0011】
本発明によるハニカム体は、ハニカム体の入口面から出口面に通じる通路を形成する内壁を有している。ハニカム体は、少なくとも1つの部分領域に、内壁のない複数の空洞を有し、これらの空洞は、それぞれ、当該部分領域における通路の平均断面積の少なくとも10倍の大きさの最大断面積を有する少なくとも1つの球形自由空間を含むように形成および設計されている。
【0012】
内壁に多数の穴を備えたハニカム体は、確かに、個々の通路間の圧力差の有効な補償を可能にするが、それにもかかわらず、隣接通路間に大きな圧力差が生成されない場合、直線状の線条流れが形成されることが分かっている。この線条流れは、比較的小さい中空スペースをただ単に一様に通過するだけなので、粒子の特定の相互混合または変換もしくは分離の増大は生じない。この状況は、内壁の穴が、通路の平均断面積の少なくとも10倍の大きさの最大断面積を有する少なくとも1つの球形自由空間を形成するように配列される場合に変化する。これは、互いに接近して配置された少なくとも10個の通路が自由空間内に開口し、再び反対側でこの自由空間から外へ通じることを意味している。このようなサイズの空洞の場合、大きな横方向混合が生じ、その結果ハニカム体内で所望のプロセスが促進される。必要な必須条件は、空洞を形成する内壁の穴の断面積が同様に平均通路断面積の少なくとも10倍の大きさを有することである。単位断面積当りの通路数が多いハニカム体にとって特に重要である本発明の有利な実施態様において、球形自由空間の最大断面積は、通路の平均断面積の20〜100倍、好ましくは30〜50倍の大きさである。これによって、通路サイズに比較して巨大な空洞であって、特に脈動性ガス流の場合に渦巻き及び横流を生じることがある空洞が得られる。その結果、過醍な圧力損失なく、より良好な変換特性をもたらすことが可能になる。
【0013】
多数の通路、例えば10〜500個の通路が1つの空洞内に開口し、この空洞から再び外へ通じていると有利である。
【0014】
本発明による空洞の有利な特性が、ハニカム体内のできる限り多くの流れ部分に影響を及ぼすことができるようにするために、ハニカム体の通路の50〜100%は、少なくとも1つ、好ましくは3つより多い空洞と交差するのが望ましい。安定性の理由から、ハニカム体内の空洞は最も外側の外被まで全く達しておらず、それゆえ場合によっては100%の全ての通路が1つの空洞と交差しないことが必要であり得る。しかしながら、その有利な特性を利用するためには、できるだけ多くの通路が1つの空洞または好ましくは複数の空洞と交差するのが望ましい。
【0015】
このため、空洞がハニカム体の体積にわたって均等(一様)に分布すると有利である。
【0016】
いずれにしても、空洞を、好ましくはハニカム体の内部領域に、および/または、入口面または出口面に向かって集まるように、不均等に分布することは、容易でありかつ排気ガス浄化システム内の流れ状況に応じて有利である。これによって、本発明をさまざまな用途に適応させることができる。
【0017】
ハニカム体内に空洞を導入する仕方に応じて、空洞自体はもちろん球形ではない。球形の中空スペースは、空洞の寸法状況の理論的記述に役立つだけである。実際に生じる空洞はむしろ円筒または湾曲した円筒の形状を有し、その軸方向の広がりは通路の延びに対してほぼ垂直に位置する。
【0018】
ここまで示された本発明の説明は、金属薄板層から製作されたハニカム体に制限されず、適切なプロセスを利用して空洞が形成されるなら、セラミックス製ハニカム体に適用することも可能である。セラミックス製ハニカム体を製作する場合、例えば素材を、焼成の前に比較的容易に加工し、打抜きによって、または、既に押し出し時の処置によって空洞を作成することが可能である。
【0019】
独立請求項8は、特に、薄板を巻回した、絡ませた、および/または、積層したハニカム体に関する。このようなハニカム体は、多数の少なくとも部分的に構造化された金属薄板層を備え、その構造化によってハニカム体の入口面から出口面に至る通路が形成されている。薄板層は、これらの薄板層が1つ又は複数の個別薄板から構成されているか否かに関係なく、ハニカム体の連続する層を意味するものと理解されたい。留意すべきことは、原理的に、金属薄板ストリップの一部を波形にし、金属薄板ストリップの残りの平形部分を曲げ加工によって波形部分の上に折り重ねることによって、単一金属薄板だけからハニカム体を製作することが可能であることである。このようにして形成される構造体は、曲げ線から螺旋状に巻回して、ハニカム体を形成することが可能である。次の可能性は、1つの平形金属薄板と1つの波形金属薄板を利用して、螺旋状に巻回されたハニカム体を製作することである。3つまたはそれ以上の金属薄板から形成される多重螺旋も可能である。最後に、平形金属薄板と波形金属薄板とが交互になった1つ又は複数のスタックから製作される多数の構造形態が存在する。このようなハニカム体は多数の薄板を含むが、金属薄板の数と連続する金属薄板層の数とは必ずしも同じである必要はない。この理由から、例えばハニカム体の一部だけしか示されていない図面では、金属薄板と金属薄板層とを区別することがしばしば不可能であるとしても、原理的にこの区別を行うことは可能である。本発明の場合、第一次近似における構造形態は重要ではない。これに関連して、螺旋状に構成されたハニカム体の場合、多数の個々の金属薄板から製作されたハニカム体の場合に比べて、空洞を形成する穴の位置を計算するのが容易である。しかしながら、根本的な問題を生じる構造形態はなかった。本発明によるハニカム体は、ハニカム体の少なくとも1つの部分領域において、薄板層が当該部分領域における通路の平均断面積の10倍より大きい有効断面積を持つ穴を有し、これらの穴は、ハニカム体内に、隣接する薄板層の穴と共に、少なくとも5つの全ての連続する薄膜層の穴が互いに重なり合うことによって、繋がっている大容積の空洞を形成するように配置および形成され、これらの5つの全ての薄膜層における当該穴の重なり面積が、部分領域における通路の平均断面積の少なくとも10倍の大きさであることを特徴とする。図面に関連してさらに詳細に述べるように、いくつかの空洞は常に穴明き金属薄膜層から成るハニカム体に形成されるが、極端な場合全ての空洞が互いに繋がることさえあり、このようなことは、各金属薄板層の穴の面積が金属薄板層の残りの面積より大きい場合にはいつでも起こる。波形金属薄膜層の場合、波形金属薄膜層の中心面に金属薄膜層の穴を投影することによって生じる用語「有効面積」が用いられる。
【0020】
本発明にとって、穴はハニカム体内に小さい分岐した中空スペースを形成するのではなく、比較的大容積の空洞を形成する点が重要であるが、これは、隣接する金属薄膜層の穴が互いにほぼ一列になるか、あるいは、広い面積にわたって重なり合う場合に生じる。本発明による装置はさらに所望の特性を備えた空洞を有している。穴の形状は原則的に自由に選択することが可能であるが、亀裂の形成を回避するための機械的理由から、丸みのある縁部を備えた穴を選択するのが望ましい。さらに、穴は流れ方向に対して直角にそれぞれ3つ又はそれ以上の通路を互いに繋ぐのが望ましい。また、穴は、流れ方向においても、ある特定の最小サイズ、すなわち、空洞内に開口する通路の平均流体直径の少なくとも2倍のサイズ、好ましくは3倍よりも大きいサイズを有するが望ましい。流体直径は、通路の断面積とその断面形状とから生じ、丸い通路の場合を除いて、通路の最大幅より小さい。
【0021】
本発明の1つの望ましい実施態様において、ハニカム体は、円筒形であり、金属薄板からなる1つ又は複数のスタックから形成され、各スタックの金属薄板は長さL及び幅Bを有し、LはBより大きく、さらに、各スタックの金属薄板はそれぞれ多数の穴を有し、これらの穴の間隔は、幅Bの方向では1つのスタックの全ての金属薄板についてほぼ一定であるが、長さLの方向では異なる。正確にはこれは従来技術の公知の構造形態には当てはまらない。製造を簡単にするために、また、本発明の知識がないために、穴明き金属薄板は一般にその全長にわたって均等(一様)に穴を備えているが、これでは、金属薄板層を螺旋状に巻回する場合でも、あるいは、1つ又は複数の金属薄板スタックからハニカム体を製作する場合でも、本発明によるハニカム体を生み出すことは不可能である。
【0022】
本発明のもう1つの望ましい典型的な実施態様は長さL及び幅Bを有する少なくとも1つの金属薄板によって形成されたハニカム体であり、LはBより大きく、ハニカム体は螺旋状に巻回され、少なくとも1つの金属薄板は、幅方向ではほぼ一定の間隔を持ち長さ方向では異なる間隔を持つ多数の穴を有している。穴の正確なパターンはそれぞれの利用条件によって決まる。しかしながら、巻回された全てのハニカム体は、用いられた金属薄板の幅方向においては穴の間隔がほぼ一定であることが必要である点で共通している。こうして、穴は、製造上の理由によって、流れ方向において互いに一列になり、この間隔に特に注意を払う必要はない。各金属薄板の長手方向における穴の間隔だけは正しく計算されなければならない。この場合、空洞は、例えば、特定の間隔で個々の穴を省略することによって的確に形成することもできるし、あるいは、穴のパターンを変えることによって、例えばハニカム体の内部よりもハニカム体の外部領域で、金属薄板層の1回転当たりの空洞数が多くなるようにすることも可能である。
【0023】
所定の製造公差を補償するために、穴を長穴として構成すると有利であり、通路方向に対して直角方向への長穴の広がりは通路方向より大きくなるようにすべきである。
【0024】
本発明によるハニカム体は、その内部において、金属薄板にさらなる構造物を追加して備えることが可能である。ここで述べた本発明による手段に、ハニカム体の内部における流れに影響を及ぼす全ての公知手段を追加することが可能である。従来技術によって知られている手段に従って、ハウジング内への取り付けや、例えば円錐状の構造形態の形成を実施することも可能である。
【0025】
本発明によるハニカム体は、特に、ディーゼルエンジンの内燃機関の排気ガス浄化装置の一部として適している。一般に望ましい適用分野は、自動車の排気ガス浄化である。
【0026】
以下において図面を参照しながら本発明及びその実施形態についてさらに詳述する。
【0027】
図1には、例えば、1つの平形金属薄板2と1つの波形金属薄板とから螺旋状に製作することができるハニカム体1が示されている。図においては製作がまだ完了していないハニカム体1は、波形金属薄板3の構造化によって形成されハニカム体の入口面5から出口面6に通じる通路4を備えている。ハニカム体1には、浄化されるべき排気ガスが流れ方向Sに流れることが可能である。平形金属薄板2は、幅B及び長さLを有し、多数の穴7を備えている。本例の場合、これらの穴は長穴であり、平形金属薄板2の長さL方向に、すなわち、後続の流れ方向Sに対して直角方向に最長の広がりを有している。波形金属薄板3も、本例の場合、同様に、同じ方向に延びる長穴として形成された多数の穴を備えている。波形状態における波形金属薄板3の穴8の寸法が平形金属薄板2の穴7の寸法にほぼ一致するためには、波形金属薄板層3の穴8は、金属薄板層を延ばした時に、平形金属薄板の穴7よりもかなり長くならなければならないことが明らかである。本発明にとって、波形金属薄板3の中心面への波形金属薄板3の穴8の投影だけが重要である。金属薄板2,3の幅Bに関する穴7,8の間隔はほぼ一定であるので、この方向において隣接する金属薄板層の穴は常に実際に完全に互いに重なり合う。しかしながら、同様に、穴7,8が金属薄板2,3の長さL方向において互いに等間隔にある場合、金属薄板が巻回されると、巻かれるハニカム体1の直径が増すにつれて、穴のずれが常に生じることは明らかである。従って、本発明による特性を備えた大きい空洞を実現するためには、金属薄板2,3の長さL方向における穴7,8の間隔を相応に整合させなければならない。最も単純には、製作前に、ハニカム体のどこに、どれほどの寸法の空洞が存在すべきかを決定し、その後、金属薄板2,3のどの位置に、どんな形状の穴が配置されるべきかを定めることである。この作業は、さまざまな構造形状のハニカム体のために複雑さもさまざまになるが、単純な試験及び穴7,8を明ける機械の適切な制御によって、問題を生じることなく、処理することが可能である。図1の穴7,8は、必ずしも、一定の縮尺で描かれたものとみなすべきではなく、本発明に従ってかなり大きくすることも可能であることを表わしている。
【0028】
図2には、本発明による空洞9の領域におけるハニカム体の断面が概略的に描かれている。平形金属薄板層2と波形金属薄板層3が、金属薄板層2,3の穴が互いにほぼ重なり合うようにして、上下に積層され、その結果、自由空洞9が形成される。この空洞9は最大断面積Qmaxを有する球形自由空間10を含み、この空間には理論的にこの直径の球体が収まることになる。球形空間の最大断面積Qmaxは、この球体の最大断面積を意味するものと理解すべきである。図面においてハッチングによっても示されているように、個々の各通路4は、本例の場合、全ての通路についてほぼ等しい断面積qを有している。しかしながら、異なる通路断面積が生じるハニカム体の構造形態も存在する。この場合、平均通路断面積qを容易に計算することができる。本発明において重要なことは、空洞9が、平均通路断面積qの少なくとも10倍の大きさの最大断面積Qmaxを有する球形自由空間10が収まるような大きさと形状を有していることである。特に、例えば600cpsi(平方インチ当たりセル数)から1200cpsiを超える高セル密度のハニカム体の場合には、比率がさらに著しく大きい球形自由空間でさえ空洞9に収まる実施形態が望ましい。
【0029】
本発明によれば、特に圧力損失、材料の利用、及び、流れ特性に関して好ましい特性を得ると同時に、排気ガスからの微粒子の除去の改善に関して、排気ガス浄化システム用の高度に発達したハニカム体の特性をさらに改良することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】穴明き金属薄板層から本発明によるハニカム体を製作する方法の概略図
【図2】本発明によるハニカム体の空洞領域の断面を示す概略図
【符号の説明】
【0031】
1 ハニカム体
2 ほぼ平らな金属薄板層(平形金属薄板)
3 波形金属薄板層(波形金属薄板)
4 通路
5 入口面
6 出口面
7 平形金属薄板の穴
8 波形金属薄板の穴
9 空洞
10 最大の球形自由空間
B 金属薄板の幅
L 金属薄板の長さ
AB 幅Bの方向における穴の間隔
AL 長さLの方向における穴の間隔
S 流れ方向
Qmax 最大断面積
q 平均通路断面積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム体(1)の入口面(5)から出口面(6)に通じる通路(4)を形成する内壁(2,3)を備えた、特に内燃機関の排気ガスを浄化するためのハニカム体(1)において、ハニカム体(1)の少なくとも1つの部分領域に、内壁(2,3)のない複数の空洞(9)が設けられ、これらの空洞(9)は、それぞれ、当該部分領域(T)における通路(4)の平均断面積(q)の少なくとも10倍の大きさの最大断面積(Qmax)を有する少なくとも1つの球形自由空間(10)を含むように形成および設計されていることを特徴とするハニカム体。
【請求項2】
球形自由空間(10)の最大断面積(Qmax)が、通路(4)の平均断面積(q)の20〜100倍、好ましくは30〜50倍の大きさであることを特徴とする請求項1に記載のハニカム体。
【請求項3】
空洞(9)がそれぞれ10〜500個の通路(4)と交差することを特徴とする請求項1又は2記載のハニカム体。
【請求項4】
ハニカム体(1)の通路(4)の50〜100%が、少なくとも1つ、好ましくは3つより多い空洞(9)と交差することを特徴とする請求項1乃至3の1つに記載のハニカム体。
【請求項5】
空洞(9)がハニカム体の体積にわたって均等に分布していることを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載のハニカム体。
【請求項6】
空洞(9)が、好ましくはハニカム体(1)の内部領域に、および/または、入口面(5)または出口面(6)に向かって集まるように、ハニカム体(1)内に不均等に分布していることを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載のハニカム体。
【請求項7】
空洞(9)が、好ましくは通路(4)の延びに対してほぼ垂直な軸方向延びを有するほぼ円筒または湾曲した円筒の形状を持っていることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載のハニカム体。
【請求項8】
少なくとも1つの薄板(2,3)を巻回した、絡ませたおよび/または積層したハニカム体(1)であって、多数の少なくとも部分的に構造化された薄板層(3)を備え、その構造化によってハニカム体(1)の入口面(5)から出口面(6)に至る通路(4)が形成されているハニカム体(1)において、ハニカム体(1)の少なくとも1つの部分領域において、薄板層(2,3)が、当該部分領域における通路(4)の平均断面積(q)の10倍より大きい有効断面積を持つ穴(7,8)を有し、穴(7,8)は、ハニカム体(1)内に、隣接する薄板層(2,3)の穴(7,8)と共に、少なくとも5つの連続する薄板層(2,3)の穴が互いに重なり合うことによって、繋がっている大容積の空洞(9)を形成するように配置および形成され、これらの5つの全ての薄板層(2,3)における当該穴(7,8)の重なり面積が、部分領域(T)における通路(4)の平均断面積(q)の少なくとも10倍の大きさであり、流れ方向(S)における穴(7,8)の広がりが、空洞内に開口する通路(4)の平均流体直径の少なくとも2倍であり、好ましくは3倍より多いことを特徴とするハニカム体。
【請求項9】
ハニカム体(1)が、円筒形であり、薄板からなる1つ又は複数のスタックから形成され、各スタックの薄板が長さ(L)及び幅(B)を有し、L>Bであり、各スタックの薄板がそれぞれ多数の穴(7,8)を有し、これらの穴(7,8)の間隔(AB,AL)が、幅(B)の方向では1つのスタックの全ての薄板についてほぼ一定であり、長さ(L)の方向では異なることを特徴とする請求項1乃至8の1つに記載のハニカム体。
【請求項10】
ハニカム体(1)が、長さ(L)及び幅(B)の少なくとも1つの薄板(2,3)を螺旋状に巻回してなり、L>Bであり、少なくとも1つの薄板(2,3)が、幅(B)の方向ではほぼ一定の間隔(AB)を持ち長さ(L)の方向では異なる間隔(AL)を持つ多数の穴(7,8)を有することを特徴とする請求項1乃至8の1つに記載のハニカム体。
【請求項11】
通路(4)の方向における穴(7,8)の少なくとも1つの部分が、通路(4)の方向に対する直角方向よりも狭い広がりを有し、穴(7,8)が好ましくは長穴であることを特徴とする請求項8乃至10の1つに記載のハニカム体。
【請求項12】
ハニカム体が内燃機関、特にディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置の一部であり、内燃機関の排気ガスからすす粒子を除去するのに用いられることを特徴とする請求項1乃至11の1つに記載のハニカム体。
【請求項13】
ハニカム体が通路に追加開口部および/または渦流構造物を有することを特徴とする請求項1乃至12の1つに記載のハニカム体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−532735(P2008−532735A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555534(P2007−555534)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001449
【国際公開番号】WO2006/087207
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(500038927)エミテック ゲゼルシヤフト フユア エミツシオンス テクノロギー ミツト ベシユレンクテル ハフツング (156)
【Fターム(参考)】