説明

円盤状基板の研削方法、研削装置

【課題】円盤状基板の外周研削および内周研削にて、研削後の内周および外周にて同心度を高める。
【解決手段】中央に開孔を有する円盤状基板10を回転させながら研削する円盤状基板10の研削方法であって、内周砥石31を外周方向(C方向)に送りつつ円盤状基板10の内周12を研削するとともに、外周砥石51を内周方向(A方向)に送りつつ円盤状基板10の外周13を研削し、この内周砥石31と外周砥石51の送りを略同時に停止せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば磁気記録媒体用ガラス基板などの円盤状基板の研削方法、研削装置に係り、特に、円盤状基板の外周と内周とを研削する研削方法、研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録メディアとしての需要の高まりを受け、近年、円盤状基板であるディスク基板の製造が活発化している。このディスク基板の一つである磁気ディスク基板としては、アルミ基板とガラス基板とが広く用いられている。このアルミ基板は加工性も高く安価である点に特長があり、一方のガラス基板は強度、表面の平滑性、平坦性に優れている点に特長がある。特に最近ではディスク基板の小型化と高密度化の要求が著しく高くなり、基板の表面の粗さが小さく高密度化を図ることが可能なガラス基板の注目度が高まっている。
【0003】
このような磁気ディスク基板の製造装置については種々の改良が加えられている。公報記載の従来技術として、中心孔を有する円盤状基板(ガラス基板、ガラス円盤)の外周面および内周面を研削する技術が存在する(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0004】
この特許文献1では、ガラス円盤の内外周面研削加工装置において、複数工程を同時並行的に実行する技術が開示されている。そして、この中で、ターンテーブルに固定されたガラス円盤に対し、外周面加工用の砥石と内周面加工用の砥石とを変位させてガラス円盤の外周面と内周面とに接触させ、外周面加工と内周面加工とを同時並行的に行っている。
【0005】
また、特許文献2では、ハードディスク用ガラス基板の外周部と内周部の端面と斜面を、メタルボンド外面砥石とメタルボンド内面砥石を用いて同時に研削加工している。更に、このメタルボンド外面砥石とメタルボンド内面砥石は、同軸上に一定の間隔を隔てて複数(10個)の台形溝が設けられ、この10個のうちの半分の台形溝を粗加工用に、残りの半分の台形溝を仕上加工用に成形している。そして、メタルボンド外面砥石によりガラス基板の外周部の端面と斜面を同時に加工し、かつメタルボンド内面砥石によりガラス基板の内周部の端面と斜面を同時に加工している。
【0006】
【特許文献1】特開2005−14176号公報
【特許文献2】特開2001−105292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来から円盤状基板の内周面(内周)と外周面(外周)とを同時に研削する技術は存在していた。しかしながら、例えば、砥石の接触では内周に比べて外周が点接触状態となっていることや、研削すべき距離(円周方向の距離)が内周に比べて外周が大きくなっていること、更に砥石軸負荷の違い、円盤状基板の内外周の周速の違い等、外周の研削と内周の研削とはその加工レートを含む研削内容が異なる。そして、このように研削内容が異なっている場合でも研削後の内周および外周にて高い寸法精度と高い同心度が要求されている。そのために、円盤状基板の内周と外周とを同時に研削する際には、より適切な研削条件を定めなければ良好な研削結果を得ることができない。
【0008】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、円盤状基板の外周研削および内周研削にて、研削後の内周および外周にて同心度を高めることにある。
また他の目的は、円盤状基板の外周研削および内周研削にて、加工に要する時間を減らすとともに、研削後の内・外周の寸法精度を高く維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明は、中央に開孔を有する円盤状基板を回転させながら研削する円盤状基板の研削方法であって、内周研削手段を外周方向に送りつつ円盤状基板内周を研削するとともに、外周研削手段を内周方向に送りつつ円盤状基板外周を研削し、この内周研削手段と外周研削手段の送りを略同時に停止せしめることを特徴とする。
【0010】
更に、停止の状態に於いて決められた時間、円盤状基板の回転を継続させることで、円盤状基板内周および円盤状基板外周に残存する突出部を除去することを特徴とする。
また更に、円盤状基板がその上下面を押圧する保持手段によって保持されていることを特徴とする。
【0011】
ここで、この内周研削手段および外周研削手段は、回転する研削面を有することを特徴とする。
また、この内周研削手段および外周研削手段は、粗削り部と仕上げ削り部とを各々有することを特徴とすれば、粗削りと仕上げ削りを例えば連続した工程で行うことができる点で好ましい。
【0012】
更に、この粗削り部を用いた研削に際して内周研削手段と外周研削手段の半径方向の送りを略同時に停止せしめ、その後、仕上げ削り部を用いた研削に際して内周研削手段と外周研削手段の半径方向の送りを略同時に停止せしめることを特徴とすることができる。
【0013】
一方、本発明が適用される研削装置は、円盤状基板の内周を研削する内周砥石と、円盤状基板の外周を研削する外周砥石と、この内周砥石を円盤状基板の外周に向けて半径方向に移動させる内周砥石移動機構と、外周砥石を円盤状基板の内周に向けて半径方向に移動させる外周砥石移動機構と、この内周砥石および外周砥石を回転させながら、内周砥石移動機構と外周砥石移動機構とを作動させ略同時に停止させて円盤状基板を研削する制御部とを備えた。
【0014】
ここで、この制御部は、内周砥石移動機構による内周砥石の移動距離と外周砥石移動機構による外周砥石の移動距離とが略一致するように制御することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように構成された本発明によれば、これらの構成を採用しない場合に比べて、円盤状基板の外周研削および内周研削にて、研削後の内周および外周にて同心度を高めることが可能となる。
【0016】
また、これらの構成を採用しない場合に比べて、円盤状基板の外周研削および内周研削にて、加工に要する時間を減らすことが可能となり、また、研削後の内・外周の寸法精度を高く維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1−1(a)〜(d)、図1−2(e)〜(h)は、本実施の形態が適用される円盤状基板(ディスク基板)の製造工程を示した図である。この製造工程では、まず図1−1(a)に示す1次ラップ工程にて、円盤状基板(ワーク)10の原材料を定盤21に載置し、円盤状基板10の平面11を削る。このとき、円盤状基板10を載置した定盤21の表面には、例えばダイヤモンドの砥粒が分散して散りばめられる。
【0018】
次に、図1−1(b)に示す内外周研削工程にて、円盤状基板10の中心に設けられた開孔(hole)の内周12を内周砥石31によって研削し、円盤状基板10の外周13を外周砥石51によって研削する。このとき、内周砥石31と外周砥石51とで円盤状基板10の内周12の面(内周面)と外周13の面(外周面)を、円盤状基板10の半径方向に挟み込んで同時加工することで、内径と外径の同軸度(同心度)を確保し易くしている。この内周砥石31と外周砥石51の表面には、例えばダイヤモンドの砥粒が分散して散りばめられる。
【0019】
その後、図1−1(c)に示す外周研磨工程では、外周研磨用ブラシ24を用いて円盤状基板10の外周13が研磨される。その後、図1−1(d)に示す2次ラップ工程にて、円盤状基板10を定盤21に載置し、円盤状基板10の平面11を更に削る。
【0020】
次に、図1−2(e)に示す内周研磨工程にて、円盤状基板10の中心の開孔にブラシ25を挿入し、円盤状基板10の内周12を研磨する。その後、図1−2(f)に示す1次ポリッシュ工程にて、円盤状基板10を定盤27に載置し、円盤状基板10の平面11を磨く。このときの研磨には、例えば不織布(研磨布)として硬質ポリッシャが用いられる。更に、図1−2(g)に示す2次ポリッシュ工程にて、軟質ポリッシャを用いた平面研磨が行われる。その後、図1−2(h)に示す最終洗浄・検査工程にて洗浄と検査が行われて、円盤状基板(ディスク基板)10が製造される。
【0021】
ここで、本実施の形態の特徴的な工程である図1−1(b)に示す内外周研削工程について詳述する。
まず、図2〜図4を用いて、内外周研削工程にて用いられる研削装置100について説明する。図2は研削装置100の全体構成図を示し、図3は円盤状基板10を研削する研削装置100の研削機構部分を拡大して示している。更に、図4は、円盤状基板10と内周砥石31および外周砥石51との関係を平面軸上に表現している。
本実施の形態が適用される研削装置100は、ワークである円盤状基板10の内周12を研削する内周研削機構30と、円盤状基板10の外周13を研削する外周研削機構50と、円盤状基板10の上下面を押圧して保持し、保持した円盤状基板10を回転させる基板保持・回転機構70とを備えている。また、この内周研削機構30や外周研削機構50、基板保持・回転機構70の動きは、制御部(図示せず)によって制御されている。
【0022】
内周研削機構30は、図2および図3に示すように、回転する研削面を有する内周砥石31と、内周砥石31を回転させる回転軸34とを備えている。また、図2に示すように、内周砥石31を回転させる回転駆動装置35と、回転駆動装置35を保持し図のZ軸方向(図の上下方向)に移動させるための内周砥石用テーブル36を備えている。更に、この内周砥石用テーブル36をZ軸方向に移動させるためのZ軸方向移動機構として、スライドレール37と、駆動源であるサーボモータ38と、サーボモータ38の回転力を内周砥石用テーブル36のスライド方向の移動に変えるボールネジ39とを備えている。また、この内周砥石用テーブル36とZ軸方向移動機構とをX軸方向(図4のC方向およびD方向、円盤状基板10の半径方向)に移動させるためのX軸方向移動機構として、スライドレール41と、駆動源であるサーボモータ42とを備えている。
【0023】
内周砥石31は、例えばダイヤモンドの粒をSK材(炭素工具鋼鋼材)に散りばめた構造を有している。そして、図4に示すように、図の下方である先端側に粗削り用にダイヤモンドを粗に散りばめた粗削り面(粗削り部)32が設けられている。そして、この粗削り面32に連続して回転軸側に一体的に設けられ、仕上げ用にダイヤモンドを密に散りばめた仕上げ削り面(仕上げ削り部)33を有している。ここで、粗削り面32を用いた切削に比べて仕上げ削り面33を用いた切削ではより高い精度が要求される。そこで、回転むらの影響を考慮して、回転軸34に近い方に仕上げ削り面33を設け、回転むらの大きい回転軸34から遠い方に粗削り面32を設けている。尚、粗削り面32および仕上げ削り面33のZ軸方向の長さは、円盤状基板10の厚さに比べて充分に長い。
【0024】
この内周研削機構30は、研削前の状態では、円盤状基板10が載置される研削位置に対して内周砥石31をZ軸の上方に位置させている。円盤状基板10が基板保持・回転機構70に上下面を押圧されて保持された際に、図2に示すサーボモータ38を駆動し、ボールネジ39とスライドレール37とによって内周砥石用テーブル36がZ軸の下方(図4のZ1方向)に移動する。尚、サーボモータ38の制御によって、図4に示す粗削り面32および仕上げ削り面33の何れか一方が、円盤状基板10の内周12に対峙する。また、粗削り作業から仕上げ削り作業に移行する際、または研削作業が終了した際に、サーボモータ38の回転駆動と、ボールネジ39およびスライドレール37とによって、内周砥石用テーブル36がZ軸の上方(図4のZ2方向)に移動する。
【0025】
また、内周研削機構30は、研削時には、内周砥石31の歯先が、例えば図4の移動開始位置(第1の移動開始位置(第1移動開始位置)または第2の移動開始位置(第2移動開始位置))から移動終了位置(第1の移動終了位置(第1移動終了位置)または第2の移動終了位置(第2移動終了位置))までC方向(外周方向)へ移動する。このとき、回転駆動装置35による回転駆動力が回転軸34に加わり、内周砥石31を一方向に回転させる。また、研削終了後は、内周砥石31の歯先が、例えば図4の移動終了位置から所定の位置までD方向へ移動する。このC方向およびD方向の移動に際し、図2に示すサーボモータ42を駆動させ、スライドレール41と、図示しないボールネジなどの作用によって、内周砥石用テーブル36とZ軸方向移動機構とを移動させる。
【0026】
外周研削機構50は、図2に示すように、回転する研削面を有する外周砥石51と、外周砥石51を回転させる回転軸54とを備えている。また、外周砥石51を回転させる回転駆動装置55と、回転駆動装置55からの回転力を回転軸54に伝える伝達機構60とを備えている。更に、回転駆動装置55および伝達機構60を保持し、これらを図のZ軸方向(図の上下方向)に移動させるための外周砥石用テーブル56を備えている。また、この外周砥石用テーブル56をZ軸方向に移動させるためのZ軸方向移動機構として、スライドレール57と、駆動源であるサーボモータ58と、サーボモータ58の回転力を外周砥石用テーブル56のスライド方向の移動に変えるボールネジ59とを備えている。更に、この外周砥石用テーブル56とZ軸方向移動機構とをX軸方向(円盤状基板10の半径方向)に移動させるためのX軸方向移動機構として、スライドレール61と、駆動源であるサーボモータ62とを備えている。ここで、本実施の形態で定義するX軸方向は、図の鉛直方向であるZ軸方向に対して円盤状基板10の半径方向を意味しており、所謂三軸(XYZ軸)方向定義のX軸およびY軸で形成される平面軸(水平軸)である。尚、図2および図3に示す例では、基板保持・回転機構70によって保持される円盤状基板10の中心と外周砥石51の中心軸とは、図面上のそのまま左側ではなく、紙面の手前側(または紙面の後方側)に向けて所定の角度を有した関係にある。
【0027】
外周砥石51は、内周砥石31と同様に、例えばダイヤモンドの粒をSK材に散りばめた構造を有している。そして、図4に示すように、内周砥石31と同様に、図の下方に粗削り用にダイヤモンドを粗に散りばめた粗削り面(粗削り部)52が設けられている。そして、この粗削り面52に連続してその上方に一体的に設けられ、仕上げ用にダイヤモンドを密に散りばめた仕上げ削り面(仕上げ削り部)53が備えられている。上方に仕上げ削り面53を設けているのは、仕上げ削りに際して回転むらの影響を少なくするためである。尚、粗削り面52および仕上げ削り面53のZ軸方向の長さは、円盤状基板10の厚さに比べて充分に長い。そして、内周砥石31の粗削り面32と外周砥石51の粗削り面52とのZ軸方向の長さをほぼ等しくし、内周砥石31の仕上げ削り面33と外周砥石51の仕上げ削り面53とのZ軸方向の長さをほぼ等しくすれば、内外周の同時研削に際して両者のZ軸方向の位置制御を簡易に行うことができる。
【0028】
この外周研削機構50は、内周研削機構30と同様に、研削前の状態では円盤状基板10が載置される研削位置に対して外周砥石51を上方に位置させている。円盤状基板10が基板保持・回転機構70にセット(調整されて保持)された際に、図2に示すサーボモータ58を駆動させ、ボールネジ59とスライドレール57とによって外周砥石用テーブル56がZ軸の下方(図4のZ1方向)に移動する。尚、サーボモータ58の制御によって、図4に示す粗削り面52および仕上げ削り面53の何れか一方が、円盤状基板10の外周13に対峙する。また、粗削り作業から仕上げ削り作業に移行する際、または研削作業が終了した際に、サーボモータ58の回転駆動と、ボールネジ59およびスライドレール57とによって、外周砥石用テーブル56がZ軸の上方(図4のZ2方向)に移動する。
【0029】
また、外周研削機構50は、研削時には、外周砥石51の歯先が、例えば図4の移動開始位置から移動終了位置までA方向(内周方向)へ移動する。このとき、回転駆動装置55による回転駆動力が伝達機構60を介して回転軸54に加わり、外周砥石51を一方向に回転させる。また、研削終了後は、外周砥石51の歯先が、例えば図4の移動終了位置から所定の位置までB方向へ移動する。これらの移動に際し、図2に示すサーボモータ62を駆動させ、スライドレール61と、図示しないボールネジなどの作用によって、外周砥石用テーブル56とZ軸方向移動機構とを移動させる。
【0030】
一方、基板保持・回転機構70は、図2および図3に示すように、円盤状基板10の上下面を押圧して保持するための第1の保持機構71と第2の保持機構72とを備えている。また、図2に示すように、第1の保持機構71および第2の保持機構72によって保持された円盤状基板10を回転させるための回転軸73と、回転のための駆動力を提供する駆動源74と、駆動源74からの駆動力を回転軸73に伝達する伝達機構75とを備えている。更に、第2の保持機構72をZ軸方向に上下動させる機構として、駆動源である油圧シリンダなどのシリンダ76と、このシリンダ76からの駆動力を第2の保持機構72に伝達する伝達軸77とを備えている。
【0031】
この第1の保持機構71に円盤状基板10が置かれて位置決めされた後に、シリンダ76の動作によって伝達軸77を介して第2の保持機構72が図の下方に移動し、この第1の保持機構71と第2の保持機構72とによって円盤状基板10を押さえ込む。これによって、基板保持・回転機構70にて円盤状基板10の面を押圧し、円盤状基板10をしっかりと押さえて保持することができる。また、駆動源74からの駆動力は伝達機構75を介して回転軸73に伝わり、円盤状基板10を保持した第1の保持機構71および第2の保持機構72を回転させる。
【0032】
また、図3に示すように、この第1の保持機構71には、第1の保持機構71のステージに載置された円盤状基板10を吸引する吸着ヘッド78と、円盤状基板10の内周12を基準として芯を出すためのチャック機構79とを備えている。
基板保持・回転機構70は、第1の保持機構71の先端であるステージ上に円盤状基板10が置かれた後、吸着ヘッド78により円盤状基板10を吸着する。また、このとき、チャック機構79は、例えば横方向に開く複数の突出部を閉じた状態で円盤状基板10の内周12に挿入し、この複数の突出部を均等に横に開き内周12の位置を特定して円盤状基板10を移動させる。これにより、円盤状基板10の内周12に対して芯を出した状態で円盤状基板10が第1の保持機構71に位置決め配置される。
【0033】
次に、上述した研削装置100を用いて実行される内外周研削処理の流れについて説明する。
図5は、内外周研削工程の処理を示すフローチャートである。ここでは、1枚ごとに行われる研削処理を示しており、この処理が1枚毎に繰り返し行われる。図2〜図4を用いて説明すると、まず、例えばロボット機構(図示せず)等を用いて、円盤状基板10を第1の保持機構71の先端(ステージ)に置く(ステップ101)。次いで、前述したチャック機構79の動作によって円盤状基板10の内周12に対して芯出しを行い、吸着ヘッド78によって円盤状基板10を第1の保持機構71の先端(ステージ)に吸着した状態で、第2の保持機構72を移動させ、円盤状基板10を保持する(ステップ102)。この円盤状基板10の保持では、シリンダ76を動作させ、伝達軸77を介して第2の保持機構72を図のZ軸の下方に移動させることで行われる。
【0034】
その後、内周砥石31と外周砥石51とを図3のZ軸の下方(図4のZ1方向)に移動し、図4に示すように、内周砥石31の粗削り面32を円盤状基板10の内周12に対峙させ、外周砥石51の粗削り面52を円盤状基板10の外周13に対峙させる(ステップ103)。この工程にて、内周砥石31のZ1方向の移動は、図2に示すサーボモータ38を駆動し、ボールネジ39とスライドレール37とによって内周砥石用テーブル36を移動させることによって行う。このサーボモータ38の回転を制御することによって、内周砥石31の粗削り面32が内周12を研削できる位置となるように、内周砥石31のZ軸方向の位置を調整する。
【0035】
同様に外周砥石51のZ1方向の移動は、図2に示すサーボモータ58を駆動し、ボールネジ59とスライドレール57とによって外周砥石用テーブル56を移動させることによって行う。このサーボモータ58の回転を制御することによって外周砥石51の粗削り面52が外周13を研削できる位置となるように、外周砥石51のZ軸方向の位置を調整する。
尚、例えば粗削り面32,52のZ軸方向の略中央位置が円盤状基板10のZ軸方向の中心位置と一致する等、粗削り面32,52のZ軸方向の位置(上下位置)から円盤状基板10の端面が外れないように、Z軸方向の位置が調整される。
【0036】
そして、内周砥石31をC方向、外周砥石51をA方向に移動させ、内周砥石31および外周砥石51を第1の移動開始位置(図4参照)まで送る(ステップ104)。この第1の移動開始位置は、円盤状基板10の内周12および外周13(内外周)の粗削り研削を同時に終了させるために決定される、砥石の送り開始の位置である。この第1の移動開始位置は、内周砥石31の外周方向(C方向)への送りと、外周砥石51の内周方向(A方向)への送りを決定するものであり、研削対象である円盤状基板10(ワーク)の受け入れ寸法精度や切削距離などを考慮して所定の余裕を持った値として決定されている。尚、ステップ103によるZ方向の移動前に予め第1の移動開始位置に設定されている場合には、このステップ104の処理を省略することができる。
【0037】
そして、内周砥石31、外周砥石51、円盤状基板10を回転させながら、第1の移動開始位置から第1の移動終了位置まで内周砥石31を送り(C方向に内周砥石31を移動させ)、同時に、第1の移動開始位置から第1の移動終了位置まで外周砥石51を送る(A方向に外周砥石51を移動させる)(ステップ105)。尚、このとき、例えばアルカリ溶液からなるクーラント液が切削部分に供給される。このクーラント液は、例えば冷却や装置の錆の防止、ドレス作用(ダイヤモンド砥石のパッド表面を削り落としてパッドの新鮮な面を出す作用)を促すこと等を目的として用いられる。
【0038】
このステップ105の処理にて、内周砥石31および外周砥石51の回転は、回転駆動装置35,55によって行われる。また、円盤状基板10の回転は、駆動源74を介して行われる。これらの回転は、対峙する位置(接触方向)にてそれぞれが反対方向となるように、即ち、円盤状基板10の回転に対して、内周12も外周13もアッパーカットとなるような方向にて回転する。円盤状基板10と外周砥石51とは同方向、円盤状基板10と内周砥石31とは逆方向に回転する。
【0039】
本実施の形態を採用した一実施例を以下に示す。
・ディスクの種類 : 1.89インチ
円盤状基板10の外周13は約φ48mm、内周12は約φ12mm
・内周砥石31 : 直径 約9mm
回転数 10,000〜12,000ppm
・外周砥石51 : 直径 約160mm
回転数 3,500〜4,000ppm
・円盤状基板10(ワーク)の回転数 : 約14rpm
【0040】
そして、サーボモータ42を制御して内周砥石31をC方向へ移動し、サーボモータ62を制御して外周砥石51をA方向へ移動させる。このとき、本実施の形態では、内周12側における第1の移動開始位置と第1の移動終了位置との距離、および外周13側における第1の移動開始位置と第1の移動終了位置との距離が、同一となっている点に特徴がある。このように、砥石の移動距離を内周側と外周側とで同じくし、同一のタイミングで移動を開始し、同一の速度でスライド移動させることで、内周砥石31と外周砥石51とは、同一のタイミングで移動開始位置に到達する。即ち、内周砥石31と外周砥石51との送りを略同時に停止せしめている。図4に示す例では、第1の移動開始位置と第1の移動終了位置とは0.9mmと設定されている。
【0041】
また、本実施の形態では、内周砥石31側の第1の移動開始位置と内周12との距離d1(図4参照)と、外周砥石51側の第1の移動開始位置と外周13との距離d2(図4参照)とは、
d1>d2
の関係にある。即ち、第1の移動開始位置から同時に送りを開始し、同一速度で送られる場合に、最初に外周砥石51が外周13に到達し、外周13の研削を行う。その後、内周砥石31も内周12に到達し、内外周が同時に研削される。このように、d1>d2とし、最初に外周13を研削するようにしたのは、研削対象となる受け入れワーク(円盤状基板10)にて、一般に内周12に比べ外周13の寸法精度が粗くなっていることから、内周12に比べて外周13の研削量を多くすることが好ましいためである。この外周13に外周砥石51が接触し、内周12に内周砥石31が接触していない最初の段階では、外周13だけの切削であり条件は好ましくない。しかし、その後、外周砥石51および内周砥石31の両者が円盤状基板10に接触してから、好ましい切削状態で切削作業がなされ、最終の研削結果は良好なものとなる。
【0042】
そして、内周砥石31および外周砥石51が第1の移動終了位置まで送られた際に、サーボモータ42によるC方向への送り動作、およびサーボモータ62によるA方向への送り動作を終了する。このように、研削の開始は必ずしも一致していないが、送り動作の終了を一致させて内外周の同時研削を実行している。送り動作の終了を一致させることで、内周12および外周13の同心度を高めた状態で所望の切り込み量を確保することが可能となる。
【0043】
その後、移動終了位置にて送りを停止させ、位置を保持したそのままの状態で、内周砥石31、外周砥石51、および円盤状基板10を一定時間回転させ、所謂スパークアウトを行う(ステップ106)。この一定時間としては、例えば12〜18秒程度が好ましい。このスパークアウトによって、内周12や外周13の周面表面を滑らかに仕上げることができる。このスパークアウトでは、内周砥石31、外周砥石51の回転数は、水平方向へ移動させながらの研削時と同様な回転数である。一方、円盤状基板10は、例えば24rpm程度まで等、負荷が掛からなくなる分だけ回転数を高くして、スパークアウトの処理速度を速めている。
【0044】
以上によって、粗削り面32,52を用いた第1段階の粗削りの研削処理が終了し、砥石を円盤状基板10から離間させる。即ち、サーボモータ42を制御して内周砥石31をD方向、サーボモータ62を制御して外周砥石51をB方向に移動する(ステップ107)。次いで、サーボモータ38,58を制御して内周砥石31および外周砥石51を図の下方であるZ1方向に移動し、仕上げ削り面33,53を内周12および外周13に対峙させる(ステップ108)。その後、サーボモータ42,62を制御して内周砥石31をC方向、外周砥石51をA方向に移動して、それぞれの第2の移動開始位置まで共に送る(ステップ109)。この図4に示す例では、第1の移動終了位置と第2の移動開始位置とが共に同じ位置となっている。尚、このときに、既に内周砥石31および外周砥石51を回転させていることが好ましい。
【0045】
そして、内周砥石31、外周砥石51、円盤状基板10を回転させながら、第2の移動開始位置から第2の移動終了位置まで内周砥石31を送り(C方向に内周砥石31を移動させ)、第2の移動開始位置から第2の移動終了位置まで外周砥石51を送る(A方向に外周砥石51を移動させる)(ステップ110)。尚、図4に示す例では、第2の移動開始位置と第2の移動終了位置との距離(移動距離)は0.1mmと設定されている。そして、内周砥石31および外周砥石51が第2の移動終了位置まで送られた際に、サーボモータ42によるC方向への送り動作、およびサーボモータ62によるA方向への送り動作を終了する。このように送り動作の終了を一致させることで、内周12および外周13の同心度を高めた状態で所望の切り込み量を確保している。
【0046】
その後、第2の移動終了位置にて送りを停止させ、位置を保持したそのままの状態で、内周砥石31、外周砥石51、および円盤状基板10を一定時間回転させ、所謂スパークアウトを行う(ステップ111)。これによって、仕上げ削り研削である第2段階を終了する。このスパークアウトを行う一定時間は、例えば12〜18秒程度である。このスパークアウトでは、内周砥石31、外周砥石51の回転数は、C方向、A方向へ移動させながらの研削時と同様な回転数で行っても良い。一方、円盤状基板10は、例えば負荷がかからなくなる分だけ回転数を高くし(例えば24rpm程度)、スパークアウトの処理速度を速めることできる。これらの条件は、粗削り研削を行った第1段階と同様である。
【0047】
その後、離間方向、即ち内周砥石31をD方向、外周砥石51をB方向に移動し、内周砥石31および外周砥石51をZ2方向(図4の上方向)に移動させ(ステップ112)て、内周砥石31および外周砥石51を円盤状基板10の設置位置から待避させる。そして、第2の保持機構72(図3参照)を図3のZ方向に移動して円盤状基板10に対する押圧を解除し、例えば自動ロボット(図示せず)によって円盤状基板10を取り除いて(ステップ113)、内外周研削工程を終了する。
【0048】
尚、第2段階である仕上げ削りの研削工程にて、「第2の移動開始位置」を「第1の移動終了位置」と同一の位置としたが、この「第2の移動開始位置」は第1の移動終了位置よりも研削面の離間側(内周12の研削ではD方向、外周13の研削ではB方向)と考えても良い。本実施の形態では、第1段階である粗削り面32,52を用いた粗削り研削と、第2段階である仕上げ削り面33,53を用いた仕上げ削り研削とで、全体で切削のための移動距離が1mm(0.9mm+0.1mm)となるように設計しており、全体の移動距離が定まれば、「第2の移動開始位置」が離間側に離れていても問題はない。
【0049】
また、本実施の形態では、図5のステップ106、ステップ111に示すように、粗削り研削および仕上げ削り研削にて所謂スパークアウトを実施している。しかしながら、必要に応じ、特にステップ106に示す粗削り研削にて、このスパークアウトを省略することも可能である。
【0050】
尚、本実施の形態の応用として、円盤状基板10の端面と斜面(面取り部)の形状に応じた研削方法を採用することも可能である。
図6は、円盤状基板10の端面と斜面とを同時加工するための内周砥石31および外周砥石51の構造例を説明するための図である。
内周12と外周13には、端面とその端面の角を削った斜面(面取り部)とが設けられる。この斜面(面取り部)を設けることで、各種加工工程や組み付け工程などにおけるクラック、チッピングなどの不具合を抑制している。図6に示す内周砥石31および外周砥石51は、この端面と斜面とを同時に研削するために、内周砥石31および外周砥石51の円筒面に台形形状砥石面32a,33a,52a,53aを設けている。この台形形状砥石面32a,33a,52a,53aには、円盤状基板10の内周12および外周13に設けられた端面と斜面(面取り部)との研削形状に合わせた加工が施されている。この台形形状砥石面32a,33a,52a,53aの一つの溝に円盤状基板10の端面と斜面(面取り部)とを当接させることで、円盤状基板10の端面と斜面(面取り部)とを高精度に同時研削することが可能である。
【0051】
また、図6に示す例では、内周砥石31の粗削り面32と仕上げ削り面33とに、また、外周砥石51の粗削り面52と仕上げ削り面53とに、それぞれ複数(図6に示す例では5つ)の台形形状砥石面32a,33a,52a,53aが、設けられている。これによって、例えば研削加工により一つの台形形状砥石面32a,33a,52a,53aが摩耗した場合でも、Z1方向またはZ2方向にシフトして摩耗していない他の台形形状砥石面32a,33a,52a,53aを使用することで、砥石の有効利用と連続加工を実現している。
【0052】
以上、詳述したように、本実施の形態では、中央に開孔を有する円盤状基板10を回転させながら研削する円盤状基板10の研削方法にて、内周研削手段を外周方向に送りつつ円盤状基板10の内周12を研削するとともに、外周研削手段を内周方向に送りつつ円盤状基板10の外周13を研削した。そして、この円盤状基板10の内周径と外周径が所定値になったとき、即ち、送り量を同じくして研削後の寸法が定まったときに、内周研削手段と外周研削手段の送りを略同時に停止せしめている。従前の内外周同時研削では、終了時間が同一となるように制御されておらず、一般に、先に内周が終了してしまい外周が後から終了してしまう。その結果、スパークアウトの時間がずれ、内周と外周とで切削の寸法がばらつき易かった。本実施の形態によれば、内周12および外周13を円盤状基板10を挟んで研削し、その研削を同時に終わらせることで、研削による寸法のばらつきを抑制することができる。また、例えば、砥石が摩耗して切削能力が落ちた場合でも、比較的良好な切削を長時間に亘って維持することが可能となる。即ち、砥石が摩耗して切削能力が落ち、一方にて、例えば外周13側にて負荷が変わった場合などでも、他方の、例えば内周12側の切削のばらつきを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1−1】(a)〜(d)は、本実施の形態が適用される円盤状基板(ディスク基板)の製造工程を示した図である。
【図1−2】(e)〜(h)は、本実施の形態が適用される円盤状基板(ディスク基板)の製造工程を示した図である。
【図2】内外周研削工程にて用いられる研削装置の全体構成を示した図である。
【図3】円盤状基板を研削する研削装置の研削機構部分を拡大して示した図である。
【図4】円盤状基板と内周砥石および外周砥石との関係を平面軸上に表現した図である。
【図5】内外周研削工程の処理を示すフローチャートである。
【図6】円盤状基板の端面と斜面とを同時加工するための内周砥石および外周砥石の構造例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0054】
10…円盤状基板、12…内周、13…外周、30…内周研削機構、31…内周砥石、32…粗削り面(粗削り部)、33…仕上げ削り面(仕上げ削り部)、50…外周研削機構、51…外周砥石、52…粗削り面(粗削り部)、53…仕上げ削り面(仕上げ削り部)、70…基板保持・回転機構、71…第1の保持機構、72…第2の保持機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に開孔を有する円盤状基板を回転させながら研削する円盤状基板の研削方法であって、
内周研削手段を外周方向に送りつつ円盤状基板内周を研削するとともに、外周研削手段を内周方向に送りつつ当該円盤状基板外周を研削し、当該内周研削手段と当該外周研削手段の送りを略同時に停止せしめる円盤状基板の研削方法。
【請求項2】
更に、前記停止の状態に於いて決められた時間、前記円盤状基板の回転を継続させて、前記円盤状基板内周および前記円盤状基板外周に残存する突出部を除去することを特徴とする請求項1に記載の円盤状基板の研削方法。
【請求項3】
更に、前記円盤状基板がその上下面を押圧する保持手段によって保持されていることを特徴とする請求項1に記載の円盤状基板の研削方法。
【請求項4】
前記内周研削手段および前記外周研削手段は、回転する研削面を有することを特徴とする請求項1に記載の円盤状基板の研削方法。
【請求項5】
前記内周研削手段および前記外周研削手段は、粗削り部と仕上げ削り部とを各々有することを特徴とする請求項1に記載の円盤状基板の研削方法。
【請求項6】
前記粗削り部を用いた研削に際して前記内周研削手段と前記外周研削手段の半径方向の送りを略同時に停止せしめ、その後、前記仕上げ削り部を用いた研削に際して当該内周研削手段と当該外周研削手段の半径方向の送りを略同時に停止せしめることを特徴とする請求項5に記載の円盤状基板の研削方法。
【請求項7】
円盤状基板の内周を研削する内周砥石と、
前記円盤状基板の外周を研削する外周砥石と、
前記内周砥石を前記円盤状基板の外周に向けて半径方向に移動させる内周砥石移動機構と、
前記外周砥石を前記円盤状基板の内周に向けて半径方向に移動させる外周砥石移動機構と、
前記内周砥石および前記外周砥石を回転させながら、前記内周砥石移動機構と前記外周砥石移動機構とを作動させ略同時に停止させて前記円盤状基板を研削する制御部と
を備えた研削装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記内周砥石移動機構による前記内周砥石の移動距離と前記外周砥石移動機構による前記外周砥石の移動距離とが略一致するように制御することを特徴とする請求項7に記載の研削装置。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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