説明

円筒形の容器を滅菌するための装置

【課題】室1内で電磁振動を発生させて、真空中で容器3の滅菌しようとする領域の近傍においてプラズマ13を生ぜしめることによってプラズマ処理を実施する形式の、円筒形の容器3を滅菌するための装置を改良して、複雑な充填ラインにおいても細菌除去に関する高い要求を高いプロセス信頼性と共に保証することができるようにする。
【解決手段】室1内に搬送装置が設けられており、該搬送装置が、搬入から搬出を行う搬送中に室1内において容器3をほぼ回転運動させるようになっており、前記搬送装置が、円筒形の容器3のための枠6又は格子を有していて、この枠6又は格子によって、容器3及び搬送装置6,10,11の全面的な滅菌が実施されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載した形式の、円筒形の容器を滅菌するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医学又は食料品テクノロジーにおける容器、例えばアンプル、蓋付きグラス、セプテングラス(Septenglaeser)又はいわゆるバイアル(小瓶)若しくはその他のいわゆる非経口パッケージ(Parenteralia-Verpackung)等の容器内における有害な細菌又は病原菌を取り除くために物理的又は化学的な方法を用いることは従来より知られている。
【0003】
さらにまた、乾燥した熱によって、蒸気によって、化学物質(例えば過酢酸又は過酸化水素を蒸気で又はガス状の酸化エチレンと共に)によって滅菌を実施することが公知である。さらに、滅菌するために紫外線、ベータ線又はガンマ線を使用する方法も公知である。
【0004】
医学分野に使用するためには、滅菌、つまり菌を含有する有機体の除去だけでは不十分である。この場合さらに、死滅した菌の着火性の残留物を確実に取り除き、少なくともその発熱作用を永続的に不活性化させる必要がある。
【0005】
これは内毒素、特にグラム陰性菌のいわゆるリボ多糖類のために当てはまる。リボ多糖類は細胞壁の外側にあって、血液循環系に達すると拒絶反応を引き起こすことがある。内毒素の十分な除去に関する要求は、目下のところ少なくとも250゜の容器温度における加熱作用を介してのみ満たされる。
【0006】
しかしながら以上のような方法は、特に、加熱作用に基づいて、操作しようとする装置を、温度の安定した材料例えば鋼、セラミック又はガラスより製作する必要がある、という欠点を有している。また、熱処理は、非経口剤(Parenteralia)を充填する領域内において高価な冷却を行う必要があり、これは、室温において温度に敏感な材料を充填することができるようにするためにエネルギー、スペース及び投資を必要とする。
【0007】
このようないわゆるステラジアン(Sterrad)プラズマプロセスは、長い時間と、攻撃的な化学物質(例えば過酸化水素又は過酢酸)を必要とすることになり、このような攻撃的な化学物質は、装置をさらに使用する前に、完全に取り除く必要がある。また、中空体において十分な除菌及び、中空体内部の内毒素除去を確実に実施するためには、特別な装置が必要となる。さらに、このようなステラジアンプロセスは、十分な抗発熱性作用を有していないという欠点がある。滅菌作用は、ステラジアンプロセスにおいては、プラズマによってではなく、化学物質によって得られる。プラズマは、このような化学物質の残留物を十分に不活性化させるためにのみ使用される。
【0008】
このような欠点のうちの少なくとも幾つかを克服するために、例えばドイツ連邦共和国特許公開第10138938号明細書によれば、電磁振動を発生させることによって、プラズマを真空内で容器の滅菌しようとする領域の近傍に作用させる方法及び装置について記載されている。このために、容器の滅菌しようとする領域は、室への搬入と搬出との間で、所定の1回の又は複数回の時間間隔に亘って、容器を運動させることによって、かつ/又は振動を発生させる装置を運動させることによって、振動を発生させる装置に接近せしめられ、この領域内で容器の内側及び外側においてプラズマが生ぜしめられるようになっている。この場合、プラズマ内で容器が常に回転されることによって、ホルダエレメントと共に全面的に滅菌若しくは抗発熱性処理が得られる。
【0009】
複雑な充填ラインにおいても細菌除去に関する高い要求を高いプロセス信頼性と共に保証することができるようにするために、すべての方法段階及び装置の特徴を費用に関して最適にする必要がある。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許公開第10138938号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明の課題は、以上のような従来技術における欠点を取り除くことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題を解決した本発明によれば、円筒形の容器を滅菌するための装置であって、室内で電磁振動を発生させて、真空中で容器の滅菌しようとする領域の近傍においてプラズマを生ぜしめることによってプラズマ処理が実施されるようになっている形式のものにおいて、室内に搬送装置が設けられており、該搬送装置が、搬入から搬出を行う搬送中に室内において容器をほぼ回転運動させるようになっており、前記搬送装置が、円筒形の容器のための枠又は格子を有していて、この枠又は格子によって、容器及び搬送装置の全面的な滅菌が実施されるようになっている。
【発明の効果】
【0012】
冒頭に述べた従来技術のものにおいては、滅菌しようとする容器においては、もっぱら設置部材(Setzgut)による運転又は連続的な装着運転から出発しており、この場合、設置部材運転においては容器はプラズマ処理中に定置であって、つまり不動である。これは、接触箇所が異なっているか、又は容器とホルダとの間が分離されない、という欠点を有している。残りの滅菌媒体例えば過酸化水素蒸気の限定的な分割性のために、このような公知の方法では生物学的な汚染を完全に除去することは不可能である。
【0013】
連続的な運転時には、毎分600個までの容器を取り出すためのロックゲート技術(Schleusentechnik)の必要性が求められる。この場合、ロックゲートの方法時間及びポンピング時間を、容器搬入時間のために考慮する必要がある。プラズマプロセスを真空中で行う必要がある限りにおいて、これはポンピング技術及びロックゲート動作に関する高い要求を課することになる。何故ならば、容器を搬送する場合に、同時に搬入するか、若しくは充填された第2のロックゲートを排気するために、2重の室ロックゲートを用いる必要があるからである。しかしながら、このような並行性は、高い技術的なコストを要求する。システムの密閉性は、2つのロックゲート室を備えた方法において、搬入及び搬出による圧力の影響及びガス組成の影響を避けるために、プロセス室に対するダイナミックなシールを必要とする。
【0014】
本発明は、特に設置部材内での運転を利用したものである。つまり容器は、開放されたプラズマ室において搬送され、搬送終了後に、室ドアが閉鎖され、プロセスのために最適な真空が得られるまで、室容積が排気されるようになっている。容器及びホルダエレメント若しくは搬送装置のプラズマ滅菌中に、室壁も同様に滅菌されるので、プロセス後にプロセス室の全内室が滅菌されている。次いで室ドアが充填器に向かって開放され、この際に、容器又は充填器が再汚染されることはない。
【0015】
接触箇所においても、容器及びホルダエレメントを確実に全面的に滅菌するために、プロセス中における容器の運動が不可欠である。これは、本発明によれば特に有利な形式で、円筒形の容器の転動を生ぜしめる、重力を利用して又は強制的なリニア(線)運動によって得られる。この運動を重力によって行う場合、室全体が所定の角度だけ傾倒される。これによって確実に、すべての容器がその縦軸線を中心にして転動することになる。
【0016】
容器が互いにぶつかり合ったり、摩擦し合ったりしないようにするために(これによって外観上の欠陥が生じる)、容器は一平面上で枠又は格子の区画内に配置される。この場合、これらの区画は、回転可能性が得られるように、例えば容器としてのバイアルが区間壁間に固着しないようになっている。リニア運動の場合、上記枠が移動せしめられ、これは同様に円筒形左右対称の容器が転動せしめられる。いずれの場合も、転動は一方方向に行われるか、又はまず一方方向に、次いで他方方向に行われる。
【0017】
プラズマは、容器の載設面を通って生ぜしめられる。このために面は高周波を通す材料、例えばガラス又はテフロン(R)より製作されている。この面は室底部を形成し、室壁に対してシールされている。容器をプラズマ源に直接載せることによって、本発明の有利な実施例によれば、容器内部で最大電磁磁界密度が確実に得られ、これによって本発明の方法の効率が保証される。しかも載設面は有利な形式で冷却面で外部から冷却可能であって、それによって容器の温度負荷を制限することができる。
【0018】
別の有利な実施例によれば、第2の面状に作用するプラズマ源が、処理しようとする容器の上側に配置されているので、容器、枠上側及び室壁も滅菌プロセスにさらされる。この第2のプラズマ源は、やはり面状に構成されていて、それによって室蓋を形成している。有利な形式でこの第2のプラズマ源は、例えば種々異なる容器直径に適合させることができるようにするために、第2のプラズマ源は高さ調節可能である。この調節可能性は、付加的に待機のために、及び枠を取り付けるために利用することもできる。
【0019】
本発明のその他の有利な実施例は、従属請求項に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に図面を用いて、円筒形の容器を滅菌するための装置の実施例を説明する。
【0021】
図1a及び図1bには、プラズマ源2を備えた室1の概略図が示されており、この室1を通って滅菌しようとする容器3が搬送される。図1aでは、容器2が水平な平面上に位置しており、図1bでは容器3が、室1を傾倒させて回転運動せしめられる状態が示されている。
【0022】
図2には、本発明による装置の機能を説明するための、室1の特別な実施例が示されている。ここでは下側のプラズマ源4と、高さ調節可能な上側のプラズマ源5とが設けられており、これらのプラズマ源によって、低圧室又は真空室1内で容器3の前記滅菌が実施される。容器3は枠6内に入れられてガイドされ、図1bを用いて説明された傾倒運動によって回転せしめられる。
【0023】
室1は、閉鎖可能な2つの室ドア7,8を有しており、これらの室ドア7,8によって、容器3をさらに、後続の充填器にさらに搬出及び搬送させることができる。待機又は修理のために、2つの室ドア7,8のうちの一方だけが常に開放されているので、それぞれの閉鎖された他方の室ドアは充填ラインの滅菌制限を形成している。
【0024】
図3に示した実施例によれば、それぞれ側方の室壁で保持されたガイドレール又はスライドレール9が、枠6の各側において摩擦を減少させるためのそれぞれ1つの表面層を備えていて、枠6の反対側に固定されたそれぞれ2つのピン10,11が、このようにして層被覆されたスライドレール9上で粒子を発生させることなしに移動できるようになっている。次いで枠6の運動中に、一方のピン10(図3に示されている)が、次いで他方のピン11が全面的に、スライドレール9の切欠内でプラズマ13によって負荷され、これに対してそれぞれ他方のピン10又は11(図3に示されている)がガイドレール9内の各湾曲部12内に位置している。
【0025】
滅菌過程は、例えば次のようにして行われる。室1が充填された後で供給側の室ドア7が開放され、空の枠6が室1から自動的に取り出されて、供給側で室1の前方に存在する側方の待機位置に移動せしめられる。次いで前もって容器3が装着されている枠6が室1内にもたらされ、この場合、枠6は側方にガイドされ、室1内の所定の位置において係止される。室ドア7は閉鎖され、次いで基準真空に排気される。次いでプロセスガスが入れられ、プラズマプロセスのための初期条件が調節される。
【0026】
プラズマは、冒頭に述べた形式でプラズマ源4,5内内において高周波発生器によって生ぜしめられ、室1を傾倒させる過程によって又は枠6をリニア(線)状に摺動させる過程によって、或いはこれら2つの過程の組み合わせによって、容器3及び枠6の運動が機械的に導入される。
【0027】
このプロセスの終了後に、プラズマ発生が停止され、室1が滅菌空気で満たされる。容器3の次の充填領域内と同じ圧力が得られると、導出側の室ドア8が開放され、処理しようとする容器3を有する枠6が充填器に向かって取り出される。
【0028】
次いで室1の後方で充填器に向かう導出側において側方の待機位置に待機されている第3の空の枠6が、室1内に移動せしめられる。次いで室ドア8が閉鎖され、次いで供給側の室ドア8が開放される。
【0029】
図4には、例として、室1内でスライドレール9上に概略的に載っている枠6が示されており、この枠は室1の前方の供給側で、若しくは室1の後方の導出側で、充填又は排出され、常に同一に構成することができる。しかしながらこれらの枠を容器の製造業者に前もって提供し、取り出し後に、場合によっては洗浄して室1に直接供給することも可能である。この場合、枠6は、真空に適し、かつプラズマ滅菌された材料より製作され、容器3に接触した時に容器外壁における外見的な欠陥が避けられるような表面を有している。
【0030】
図5及び図6には、枠6内容器3の受容部に関連した、及び室壁14にピン10,11を介して固定されたスライドレール9上における枠6の載設に関連した詳細が図示されている。
【0031】
容器3は、容器3を容器枠6内に簡単かつ注意深く移し替えることができるような特別な搬送枠内で提供することも可能である。
【0032】
さらにまた、容器3を処理枠6から、充填器内で循環する特別な充填枠内に移動させることも可能である。枠は、オートクレーブ(圧力釜)で処理可能、若しくは過酸化水素蒸気によってバイオ除染処理可能である。この場合、枠載設は、枠6が室1内において側方のガイドレールで所定にガイドされるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1a】室内でプラズマ源によってプラズマが発生されるようになっている、滅菌しようとする容器を通過させるための概略的な搬送装置を備えた傾倒可能な室の、容器が水平状態にある概略図である。
【図1b】室内でプラズマ源によってプラズマが発生されるようになっている、滅菌しようとする容器を通過させるための概略的な搬送装置を備えた傾倒可能な室の、容器が傾けられた状態にある概略図である。
【図2】2つのプラズマ源と、容器のための搬送装置としての枠又は格子とを備えた室を有する装置の1実施例の断面図である。
【図3】枠又は格子に取り付けられたピンを備えた搬送装置の詳細を示す断面図である。
【図4】容器の枠の実施例の斜視図である。
【図5】図4に示した枠と共に搬送される容器の、図5のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図4に示した枠と共に搬送される容器の詳細を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 室、 2 プラズマ源、 3 容器、 4 下側のプラズマ源、 5 上側のプラズマ源、 6 枠、 7,8 室ドア、 9 スライドレール、 10,11 ピン、 12 湾曲部、 14 室壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の容器(3)を滅菌するための装置であって、室(1)内で電磁振動を発生させて、真空中で容器(3)の滅菌しようとする領域の近傍においてプラズマ(13)を生ぜしめることによってプラズマ処理が実施されるようになっている形式のものにおいて、
室(1)内に搬送装置が設けられており、該搬送装置が、搬入から搬出を行う搬送中に室(1)内において容器(3)をほぼ回転運動させるようになっており、
前記搬送装置が、円筒形の容器(3)のための枠(6)又は格子を有していて、この枠(6)又は格子によって、容器(3)及び搬送装置(6,10,11)の全面的な滅菌が実施されるようになっている、
ことを特徴とする、円筒形の容器を滅菌するための装置。
【請求項2】
搬送装置が、枠(6)又は格子を傾倒及び/又は摺動させることによって容器(3)を回転運動させるように構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
重力によって室(1)を一方側に傾倒させるか又は一方側及び他方側に交互に傾倒させることによって枠(6)又は格子を傾倒及び/又は摺動させるようになっている、請求項2記載の装置。
【請求項4】
ピン(10,11)を有する枠(6)又は格子が、室壁(14)の側方に取り付けられたスライドレール(9)上でガイドされている、請求項2又は3記載の装置。
【請求項5】
ピン(10,11)が枠(6)又は格子の両側に2重に取り付けられていて、摺動又は傾倒中に交互に、一方又は他方のピン(10,11)が滅菌のために解放されるようになっている、請求項4記載の装置。
【請求項6】
室(1)の互いに反対側でスペーサピンを線状に摺動させることによって、室(1)の外部で枠(6)又は格子を摺動させることができるようになっている、請求項4又は5記載の装置。
【請求項7】
弾性的な金属薄板によって枠(6)が可動に載設されている、請求項6記載の装置。
【請求項8】
電磁振動を発生させるための装置を備えたプラズマ源(2;4,5)が室(1)の外部に取り付けられていて、室(1)の内部に対して分離配置されており、この分離配置によって、電磁振動が室(1)内における容器(3)の滅菌しようとする領域に接続され、室(1)の真空が、この真空とは異なる室(1)の外側の圧力に対してしゃ断されるようになっている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
容器(3)の上側に少なくとも1つの別のプラズマ源(5)が配置されている、請求項8記載の装置。
【請求項10】
上側のプラズマ源(5)が、容器(3)の下側に配置された、第1のプラズマ源(4)の第1の電極に対する対抗電極として接続されている、請求項9記載の装置。
【請求項11】
別のプラズマ源(5)が高さ調節可能に構成されている、請求項9又は10記載の装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−167470(P2006−167470A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363309(P2005−363309)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】