説明

再充填用インク及びインクカートリッジ

【課題】カートリッジ内の残留インクと混合した場合にも保存安定性が良好であり、かつ吐出安定性が良好な再充填用インク及び該再充填用インクを再充填したインクカートリッジの提供。
【解決手段】少なくとも着色剤、湿潤剤、及び界面活性剤を含有し、使用済みのインクカートリッジ内に再充填される再充填用インクであって、前記使用済みのインクカートリッジ内に残留している残留インクと、前記再充填用インクとを体積比(残留インク:再充填用インク)が1:1になるように混合した混合インクにおける混合直後の粒径0.5μm以上の粗大粒子数Aと、前記混合インクを25℃、50%RH環境下、24時間放置後の粒径0.5μm以上の粗大粒子数Bとが、次式、B/A≦2の関係を満たす再充填用インクである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクカートリッジ内に残留している残留インクと混合した場合にも保存安定性が良好であり、かつ吐出安定性が良好なインクジェット記録用の再充填用インク及び該再充填用インクを再充填したインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、普通紙に記録が可能で、カラー化が容易であり、かつ小型で価格も安価で、しかもランニングコストが低いなどの理由から、近年、急速に普及してきている。このようなインクジェットプリンタの普及に伴って、インクカートリッジの使用量も急速に増加しているが、そのほとんどが使い捨てであるため、廃棄物として環境に与える影響は大きく、大きな課題となっている。各メーカーとも、回収方法を模索しているが、回収率は満足のいくものでなく、また回収したカートリッジの再利用についても、進んでいないのが実情である。
【0003】
このようなインクカートリッジの中でも、内部に負圧形成のためのインク吸収体を有するタイプのものは、再充填する際にインクがうまくインク吸収体に吸い込まれず、均一な負圧が得られなかったり、インク注入口からインクがあふれ出たりするという問題がある。また、使用済みのインクカートリッジ内には少量のインクが残留しているが、この残留インクを再利用しない場合には、該残留インクを洗い流す洗浄工程を追加する必要がある。
【0004】
これまで、内部にインク吸収体を有するインクカートリッジの再充填に関しては、種々の提案がなされている。
例えば特許文献1では、溶媒の蒸発によりインクカートリッジ内のインク吸収体に残存する濃縮されたインクを考慮したリフィル方法が提案されている。この提案は、同組成のインクでのリフィルを想定したものである。
また、特許文献2では、インクタンクのリサイクル方法として、内部を洗浄する方法を提示するとともに、内部のインク吸収体の負圧保持力がリサイクル可能かどうかを見極めて効率的にカートリッジを再利用する方法が提案されている。しかし、この提案は、残留インクを再利用していない点、洗浄工程が増える点を考慮するとあまり得策な手段ではない。
また、特許文献3では、カートリッジ内部のインク吸収体からの気泡発生を抑えて、インクが充填口からあふれ出ることなくリフィルする方法が提案されているが、これもインク吸収体を備えるカートリッジ特有の課題を解決しているにすぎない。
また、特許文献4では、カートリッジ内の残留インクを無駄にしないリフィル方法が提案されている。この提案では、インク残量の測定、残留インクの成分の測定等を吸光度やクロマトグラフィーを用いて測定するという時間のかかる工程が必要となる。
また、特許文献5では、残留インクと再充填インクとの物性の差異がある一定の範囲にすることで、残留インクと再充填インクとの混合による変質乃至変色を防げるとしているが、物性の差異の範囲も狭く、汎用性に欠けるものである。
【0005】
これらの染料主体のインクへの提案に対し、染料インクと顔料インクの交換を可能にする提案として、例えば特許文献6、特許文献7、及び特許文献8などが挙げられる。これらの提案は、いずれも、双方のインクのpHを考慮したもの、あるいは粘度を考慮したものであって、やはりその限定範囲が狭く汎用性に欠けるものであった。
【0006】
このように再充填用インクとしては染料インクを対象とするものが多く、最近主流となっている顔料インクの再充填に関しては、未だ充分な検討がなされておらず、また使用済みカートリッジの再利用については何ら有効な対策がとられていないのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開平9−248919号公報
【特許文献2】特開平7−323560号公報
【特許文献3】特許第3473253号公報
【特許文献4】特開平7−309017号公報
【特許文献5】特開2002−121435号公報
【特許文献6】特開2002−60665号公報
【特許文献7】特開2005−320509号公報
【特許文献8】特開2005−320531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、インクカートリッジ内に残留している残留インクと混合した場合にも、保存安定性が良好であり、かつ吐出安定性が良好な再充填用インク及び該インクを再充填することにより、膨大なカートリッジの廃棄を減少させ、環境負荷を低減することができるインクカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、使用済みのインクカートリッジにリフィル(再充填)されてインクジェット記録装置にて再利用される再充填用インクにおいて、使用済みのインクカートリッジ内で残留している残留インクと混合した場合にも、混合インク中の粗大粒子数の増加が少なければ、保存安定性が良好であり、かつ吐出安定性であり、再充填用インクとして使用可能であることを知見した。
【0010】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも着色剤、湿潤剤、及び界面活性剤を含有し、使用済みのインクカートリッジ内に再充填される再充填用インクであって、
前記使用済みのインクカートリッジ内に残留している残留インクと、前記再充填用インクとを、体積比(残留インク:再充填用インク)で1:1に混合した混合インクにおける混合直後の粒径0.5μm以上の粗大粒子数Aと、前記混合インクを25℃、50%RH環境下で、24時間放置後の粒径0.5μm以上の粗大粒子数Bとが、次式、B/A≦2の関係を満たすことを特徴とする再充填用インクである。
該<1>の再充填用インクについては、再充填するカートリッジ内に残留している残留インクの物性にできるだけ近いインクを充填することが、記録システムとのマッチングも取れたものとなり、画質を確保し、また、保存安定性及び吐出安定性を確保する上でも望まれる。しかし、現在多種多様なプリンタが普及している中で、それぞれの記録システムにあわせた再充填インクを製造するには、残留インクの成分分析等を行う必要があり、かなり困難なことである。
そこで、再充填インクについて最も重要なことは、プリンタの目詰まりを起こさせないことである。そのためには、再充填インクが残留インクと混合された時の粗大粒子数が増加しないことが重要であり、混合インクを25℃、50%RH環境下で24時間放置後の粒径0.5μm以上の粗大粒子数が混合直後の粗大粒子数の2倍以下となるようにインクを調製することで目的が達成される。
<2> 使用済みのインクカートリッジ内に残留している残留インクと、再充填用インクとを、体積比(残留インク:再充填用インク)で1:1に混合した混合インクにおける保存前の25℃での粘度をCとし、前記混合インクを25℃、50%RH環境下、1週間保存後の25℃での粘度をDとすると、次式、D/C≦2の関係を満たす前記<1>に記載の再充填用インクである。
該<2>に記載の再充填用インクにおいては、インクの粘度が変化すると吐出量や吐出速度が変わるため、残留インクの物性との差異が大きいほど、画質が低下することが考えられる。従ってこれもできるだけ残留インクの物性に近いことが望ましいが、混合した後、1週間放置した状態で増粘がなければ、目詰まりを起こす危険も低く、再充填用インクとして使用可能である。
<3> 使用済みのインクカートリッジ内に残留している残留インクと、再充填用インクとを、体積比(残留インク:再充填用インク)で1:1に混合した混合インクにおける保存前の体積平均粒径をEとし、前記混合インクを25℃、50%RH環境下、1週間保存後の体積平均粒径をFとすると、次式、F/E≦1.5の関係を満たす前記<1>から<2>のいずれかに記載の再充填用インクである。
該<3>に記載の再充填用インクにおいては、インクの体積平均粒径が変化すると吐出量や吐出速度が変わるため、残留インクの物性との差異が大きいほど、画質が低下することが考えられる。従ってこれもできるだけ残留インクの物性に近いことが望ましいが、混合した後、1週間放置した状態で平均粒径が大きくならなければ、目詰まりを起こす危険も低く、再充填用インクとして使用可能である。
<4> 再充填用インク中の2価の金属イオン含有量Xと、残留インク中の2価の金属イオン含有量Yとが、次式、1<X/Y≦5の関係を満たす前記<1>から<3>のいずれかに記載の再充填用インクである。
該<4>に記載の再充填用インクにおいては、顔料インクが凝集を起こすメカニズムについては、いろいろな原因が考えられ、特定することは難しいが、一つに多価金属イオン量が挙げられる。インクの精製度が上がればそれだけ信頼性は向上するが、それに伴ってコストがアップする。本発明では残留インクに含有される多価金属イオン量の1倍より大きく5倍以内に調整すれば、吐出信頼性が確保され、中でも、2価の金属イオン量を調整することが重要である。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の再充填用インクを容器中に再充填してなることを特徴とするインクカートリッジである。
該<5>に記載のインクカートリッジにおいては、本発明の前記再充填用インクをインクカートリッジに再充填して使用することにより、膨大なインクカートリッジの廃棄を防ぎ、環境負荷を低減することができる。
<6> 内部にインク吸収体を有していない前記<5>に記載のインクカートリッジである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における前記問題を解決することができ、二次元及び三次元の少なくともいずれかのパターンが形成されたマスターからパターンを複製するものであり、特に二次元の平面状パターンを複製することができ、マスターの機械的劣化が極めて小さく、簡便な設備により短時間で効率よく複製可能なパターンの形成方法及びパターンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(再充填用インク)
本発明の再充填用インクは、使用済みのインクカートリッジ内に再充填され、少なくとも着色剤、湿潤剤、及び界面活性剤を含有してなり、浸透剤、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0013】
本発明においては、前記使用済みのインクカートリッジ内で残留している残留インクと、前記再充填用インクとを、体積比(残留インク:再充填用インク)で1:1に混合した混合インクにおける混合直後の粒径0.5μm以上の粗大粒子数Aと、前記混合インクを25℃、50%RH環境下、24時間放置後の粒径0.5μm以上の粗大粒子数Bとが、次式、B/A≦2の関係を満たし、B/A≦1.5が好ましく、0.5≦B/A≦1.2がより好ましい。前記B/Aが2を超えると、フィルターが目詰まりしやすくなり、吐出安定性が損なわれてしまうことがある。
前記混合直後とは、残留インクと、再充填用インクとを混合した後30分間以内までを意味する。
前記再充填用インク中の粗大粒子数は、少ないことが好ましく、30,000〜500,000がより好ましい。
ここで、前記粒径0.5μm以上の粗大粒子数は、例えばAccuSizer 780(Particle Sizing Systems社製)を用いて測定することができる。
【0014】
また、使用済みのインクカートリッジ内で残留している残留インクと、再充填用インクとを、体積比(残留インク:再充填用インク)で1:1に混合した混合インクにおける保存前の25℃での粘度をCとし、前記混合インクを25℃、50%RH環境下、1週間保存後の25℃での粘度をDとすると、次式、D/C≦2の関係を満たすことが好ましく、D/C≦1.5がより好ましく、0.8≦D/C≦1.2が更に好ましい。前記D/Cが2を超えると、粘度が高くなりすぎて、ヘッドの吐出力が不足するため、吐出安定性が損なわれるか、吐出する液滴量が減って、画像濃度が低くなってしまうことがある。
前記保存前とは、残留インクと、再充填用インクとを混合した後30分間以内までを意味する。
前記再充填用インクの25℃での粘度Cは、残留(純正)インクの粘度±2mPa・sが好ましく、残留(純正)インクの粘度±1mPa・sがより好ましい。
ここで、前記粘度は、例えば東機産業株式会社製のRL500を用いて測定することができる。
【0015】
また、使用済みのインクカートリッジ内で残留している残留インクと、再充填用インクとを、体積比(残留インク:再充填用インク)で1:1に混合した混合インクにおける保存前の25℃での体積平均粒径をEとし、前記混合インクを、25℃、50%RH環境下、1週間保存後の25℃での体積平均粒径をFとすると、次式、F/E≦1.5の関係を満たすことが好ましく、F/E≦1.3がより好ましく、0.9≦F/E≦1.2が更に好ましい。前記F/Eが1.5を超えると、吐出安定性が低下することがある。
前記保存前とは、残留インクと、再充填用インクとを混合した後30分間以内までを意味する。
前記再充填用インクの体積平均粒径は、10〜200nmが好ましく、30〜150nmがより好ましい。
ここで、前記体積平均粒径は、例えば日機装株式会社製のマイクロトラックUPA150を用いて測定することができる。
【0016】
前記再充填用インク中の2価の金属イオン含有量Xと、残留インク中の2価の金属イオン含有量Yとが、次式、1<X/Y≦5の関係を満たすことが好ましく、1<X/Y≦3がより好ましく、1<X/Y≦2が更に好ましい。前記X/Yが5を超えると、着色剤が凝集を起こし、吐出不良を起こすことがある。
前記再充填用インク中の2価の金属イオンの含有量は、合計で、1ppm〜50ppmが好ましい。また、前記2価の金属イオンとしては、例えばCa2+、Mg2+、Ba2+などが挙げられる。
ここで、前記インク中の2価の金属イオン含有量の測定は、例えばイオンクロマトグラフィーなどにより行うことができる。
【0017】
本発明の再充填用インクは、上記特性を備えていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上述したように、少なくとも着色剤、湿潤剤、及び界面活性剤を含有してなり、浸透剤、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。以下、インクの各成分について説明する。
【0018】
−着色剤−
前記着色剤としては、顔料が好適に用いられる。該顔料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、紺青、金属粉などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックなどが好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
【0019】
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。なお、前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、アゾメチン系顔料、ローダミンBレーキ顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
前記顔料の色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、黒色用のもの、カラー用のもの、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記黒色用のものとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料、などが挙げられる。
【0021】
前記ブラック顔料インクに使用されるカーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックが好ましい。
このようなカーボンブラックとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、No.2300、No.900、MCF−88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B(いずれも、三菱化学株式会社製);Raven700、同5750、同5250、同5000、同3500、同1255(いずれも、コロンビア社製);CAB−O−JET200、Regal400R、同330R、同660R、MogulL、Monarch700、同800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、Monarch1400(いずれも、キャボット社製);カラーブラックFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、プリンテックス35、同U、同V、同140U、同140V、スペシャルブラック6、同5、同4A、同4(いずれも、デグッサ社製)、Bonjet CW−1(オリエント社製)などが挙げられる。
【0022】
前記カラー用のものとしては、黄色インク用では、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、2、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、16、17、23、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、73、74、同75、81、83(ジスアゾイエローHR)、93、95、97、98、100、101、104、108、109、110、114、117、120、128、129、138、150、151、153、154などが挙げられる。
【0023】
マゼンタ用では、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、7、12、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、92、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(ジメチルキナクリドン)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、209、219、などが挙げられる。
【0024】
シアン用では、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15(銅フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、15:34、16、17:1、22、56、60、63;C.I.バットブルー4、60などが挙げられる。
また、中間色では、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばレッド、グリーン、ブルー用として、C.I.ピグメントレッド177、194、224;C.I.ピグメントオレンジ43;C.I.ピグメントバイオレット3,19,23,37;C.I.ピグメントグリーン7、36などが挙げられる。
【0025】
また、前記顔料としては、顔料の表面に少なくとも1種の親水基が直接もしくは他の原子団を介して結合するように表面改質されたもの(自己分散型の顔料と称することもある)が好適である。この場合、顔料の表面にある特定の官能基(スルホン基やカルボキシル基等の官能基)を化学的に結合させるか、あるいは、次亜ハロゲン酸及びその塩の少なくともいずれかを用いて湿式酸化処理するなどの方法が用いられる。これらの中でも、顔料の表面にカルボキシル基を結合しており、水中に分散されている形態が特に好ましい。顔料が表面改質され、カルボキシル基が結合しているために、分散安定性が向上するばかりではなく、高品位な印字品質が得られるとともに、印字後の記録媒体の耐水性がより向上する。
前記自己分散型の顔料を含むインクは乾燥後の再分散性に優れるため、長期間印字を休止し、インクジェットヘッドのノズル付近のインクの水分が蒸発した場合も目詰まりを起こさず簡単なクリーニング動作で容易に良好な印字が行えるようになる。このような自己分散型の顔料は、後述する界面活性剤及び浸透剤と組み合わせた時に、特に相乗効果が大きく、より信頼性の高い、高品位な画像を得ることが可能となる。
【0026】
上記形態の顔料に加え、ポリマー微粒子に水不溶性又は難溶性の色材を含有させたポリマーエマルジョンを使用することも可能である。「色材を含有させたポリマーエマルジョンの意味するものは、ポリマー微粒子中に色材を封入したもの、及び/又はポリマー微粒子の表面に色材を吸着させたものである。この場合、全ての色材が封入乃至吸着している必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲で該色材がエマルジョン中に分散にしていてもよい。該色材は、水不溶性又は難溶性であって、上記ポリマーに含有させることの可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、油溶性染料や分散染料等の染料や、上記具体例として列挙した顔料などが挙げられる。これらの中でも、得られる記録物の耐光性の点から、顔料を用いることが好ましい。
前記ポリマーエマルジョンを形成するポリマーとしてはビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、及びポリウレタン系ポリマー等が挙げられるが、特に好ましいポリマーはビニル系ポリマー及びポリエステル系ポリマーである。
【0027】
更に、分散剤で水性媒体中に分散させて得られた顔料を併用することも可能である。前記分散剤としては、従来公知の顔料分散液を調整するのに用いられる公知の分散剤を使用することができ、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などが挙げられる。
前記分散剤の質量平均分子量は、3,000〜50,000が好ましく、5,000〜30,000がより好ましく、7,000〜15,000が更に好ましい。
前記分散剤の添加量は、顔料を安定に分散させ、本発明の他の効果を失わせない範囲で適宣添加され、質量比(顔料:分散剤)で1:0.06〜1:3が好ましく、1:0.125〜1:3がより好ましい。
【0028】
前記分散剤にはカルボキシル基が結合していることが好ましい。このように分散剤にカルボキシル基が結合していると、分散安定性が向上するばかりではなく、高品位な印字品質が得られるとともに、印字後の記録媒体の耐水性がより向上する。更に上記の裏抜けを防止する効果が得られる。特に、カルボキシル基が結合している分散剤で分散した顔料と、浸透剤とを併用した場合においては、普通紙などの比較的サイズ度の高い記録媒体に印字した場合においても、十分な乾燥速度が得られ、かつ、裏抜けが少ないという効果が得られる。これは、カルボン酸の解離定数が他の酸基に比較して小さいため、顔料が記録媒体に付着した後、インクのpH価の低下や、記録媒体表面近傍に存在するカルシウムなどの多価金属イオンとの相互作用などにより、分散剤自体の溶解度が低下し、分散剤自体や顔料が凝集するためと推定される。
【0029】
前記着色剤としては、上記顔料のみでなく、以下のような染料を使用することも可能である。
前記水溶性染料としては、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、塩基性染料、反応性染料、食用染料に分類される染料であり、好ましくは耐水性、及び耐光性に優れたものが用いられる。
【0030】
前記酸性染料及び食用染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142;C.I.アシッドレッド 1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289;C.I.アシッドブルー 9,29,45,92,249;C.I.アシッドブラック 1,2,7,24,26,94;C.I.フードイエロー 3,4;C.I.フードレッド 7,9,14;C.I.フードブラック 1,2などが挙げられる。
【0031】
前記直接性染料としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144;C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227;C.I.ダイレクトオレンジ 26,29,62,102;C.I.ダイレクトブルー 1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,87,90,98,163,165,199,202;C.I.ダイレクトブラック 19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171などが挙げられる。
【0032】
前記塩基性染料としては、例えば、C.I.べーシックイエロー 1,2,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,40,41,45,49,51,53,63,64,65,67,70,73,77,87,91;C.I.ベーシックレッド 2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112;C.I.べーシックブルー 1,3,5,7,9,21,22,26,35,41,45,47,54,62,65,66,67,69,75,77,78,89,92,93,105,117,120,122,124,129,137,141,147,155;C.I.ベーシックブラック 2,8などが挙げられる。
【0033】
前記反応性染料としては、例えば、C.I.リアクティブブラック 3,4,7,11,12,17;C.I.リアクティブイエロー 1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67;C.I.リアクティブレッド 1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97;C.I.リアクティブブルー 1,2,7,14,15,23,32,35,38,41,63,80,95などが挙げられる。
【0034】
前記インク中に使用される顔料の平均粒径は10nm〜200nmの範囲であることが望ましい。ここでいう平均粒径とは、体積累積パーセント50%の値を指す。体積累積パーセント50%の値を測定するには、例えば、インク中のブラウン運動を行っている粒子にレーザー光を照射し、粒子から戻ってくる光(後方散乱光)の振動数(光の周波数)の変化量から粒子径を求める動的光散乱法(ドップラー散乱光解析)といわれる方法を用いることができる。
前記平均粒径が10nmよりも小さいと、インク中の分散安定性が損なわれ、また印字されたときの画像濃度が劣る結果となる。またそのレベルまで顔料を微粒子化するのにコストがかかるという問題も生じる。一方、平均粒径が200nmを超えると、画像の定着性が劣るほか、長期保存時に凝集が起こりやすく、目詰まりしやすくなることがある。
前記着色剤のインク中の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%〜15質量%が好ましく、5質量%〜12質量%がより好ましい。
【0035】
−湿潤剤−
前記湿潤剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用して使用してもよい。これらの中でも、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類が特に好ましい。このような湿潤剤を含有することにより、インクの水分蒸発を防止し、インク吐出口での着色剤の析出、粘度上昇による吐出不良をより良く抑制することができ、吐出信頼性の高い顔料インクを提供することができる。
【0036】
前記多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1、3−プルパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,5ペンタンジオール、1、6ヘキサンジオール、グリセロール、1、2、6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオールなどが挙げられる。
前記多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
前記多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
前記含窒素複素環化合物としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタムなどが挙げられる。
前記アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
前記アミン類としては、例えば、モノエタノ−ルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
前記含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノールなどが挙げられる。
【0037】
これらの中でも、溶解性と水分蒸発による噴射特性不良の防止に対して優れた効果が得られる点から、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドンが好適であり、グリセリン、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−ピロリドンが特に好ましい。
【0038】
前記湿潤剤の前記インク中における含有量は、5質量%〜30質量%が好ましく、10質量%〜30質量%がより好ましい。前記含有量が、5質量%未満であると、湿潤剤添加による効果が得られないことがあり、30質量%を超えると、水性インクの粘度が高くなってしまい、吐出安定性に影響を与えてしまうことがある。
【0039】
−界面活性剤−
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが挙げられる。このような界面活性剤の添加により、紙への浸透性を高め、速乾燥性で、文字にじみ、境界にじみを更に低減させた高品位な画像を得ることができる。
【0040】
前記アニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
【0041】
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
前記アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。該アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品として、例えば、エアープロダクツ社(米国)のサーフィノール104、82、465、485、TGなどが挙げられる。
【0042】
前記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。具体的には、ラウリルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、ステアリルジメチルアミンオキシド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシド、ポリオキシエチレンヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド、ジメチルアルキル(ヤシ)ベタイン、ジメチルラウリルベタイン、などが挙げられる。
【0043】
前記界面活性剤の中でも、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩系界面活性剤が特に好ましい。これらは、単独で用いても、複数のものを混合して用いてもよい。単独では記録液中で容易に溶解しない場合も、混合することで可溶化され、安定に存在することができる。なお、合成時の副生成物として生成される無機塩をイオン交換樹脂で精製し、除去したものが好ましい。
【0044】
市販の界面活性剤としては、日光ケミカルズ株式会社より入手可能なBTシリーズ、日本触媒株式会社より入手可能なソフタノールシリーズ、日本油脂株式会社より入手可能なディスパノール、日光ケミカルズ株式会社より入手可能なNIKKOL ECTシリーズ、NIKKOL AKYPOシリーズ、三洋化成工業株式会社より入手可能なビューライトシリーズなどが好適に挙げられる。
【0045】
また、画像品質をより向上させるためには、高浸透特性を有するフッ素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤を使用することが好ましく、これらの中でも、フッ素系界面活性剤が特に好ましい。
【0046】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。これらの中でも、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越シリコーン株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社などから容易に入手できる。
【0047】
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物、などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少なく、近年問題視されているフッ素化合物の生体蓄積性についても低く安全性の高いものであり、特に好ましい。
【0048】
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルカルボン化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステルの塩、などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩、などが挙げられる。
これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)などが挙げられる。
【0049】
前記フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
該市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも、旭硝子株式会社製)、フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431(いずれも、住友スリーエム株式会社製)、メガファックF−470、F1405、F−474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製)、ゾニールTBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR(いずれも、デュポン社製)、FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(いずれも、株式会社ネオス製)、PF−151N(オムノバ社製)などが挙げられる。これらの中でも、信頼性と発色向上に関して良好な点から、ゾニールFS−300、FSN、FSN−100、FSO(いずれも、デュポン社製)が特に好ましい。
【0050】
前記界面活性剤のインク中の含有量は0.01質量%〜5.0質量%が好ましく、0.5質量%〜3質量%がより好ましい。前記含有量が、0.01質量%未満であると、添加した効果はなく、5.0質量%を超えると、記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0051】
−浸透剤−
前記浸透剤としては、ポリオール化合物、グリコールエーテル化合物などが用いられ、特に、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物の少なくともいずれかが好適である。
前記ポリオール化合物の炭素数が8未満であると、十分な浸透性が得られず、両面印刷時に記録用メディアを汚したり、記録用メディア上でのインクの広がりが不十分で画素の埋まりが悪くなるため、文字品位や画像濃度の低下が生じることがある。
前記炭素数8以上のポリオール化合物としては、例えば、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどが好適である。
【0052】
前記グリコールエーテル化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0053】
前記浸透剤のインク中への添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.5質量%〜10質量%がより好ましい。
【0054】
−消泡剤−
本発明のインクには消泡剤を添加してもよい。特にシリコーン系の消泡剤は破泡効果に優れるものが多く、種類としてはオイル型、コンパウンド型、自己乳化型、エマルジョン型などがあるが、水系での使用を考慮すると、自己乳化型もしくはエマルジョン型を用いることが、信頼性を確保する上で好ましい。また、アミノ変性、カルビノール変性、メタクリル変性、ポリエーテル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、アルキレンオキサイド変性等の変性シリコーン系消泡剤を使用してもよい。
前記消泡剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001質量%〜3質量%が好ましく、0.05質量%〜0.5質量%がより好ましい。
市販の消泡剤で入手可能なものとしては、信越化学工業株式会社製のシリコーン消泡剤(例えばKS508、KS531、KM72、KM85など)、東レ・ダウ・コーニング株式会社製のシリコーン消泡剤(例えばQ2−3183A、SH5510など)、日本ユニカー株式会社製のシリコーン消泡剤(例えばSAG30など)、旭電化工業株式会社製の消泡剤(アデカネートシリーズ)などが挙げられる。
【0055】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができ、例えば、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、などが挙げられる。
【0056】
前記防腐防黴剤としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、などが挙げられる。
【0057】
前記pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響をおよぼさずにpHを7以上に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて任意の物質を使用することができる。該pH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物;水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、などが挙げられる。
【0058】
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、などが挙げられる。
【0059】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、などが挙げられる。
【0060】
本発明のインクジェット記録方法に用いる再充填用インクは、少なくとも着色剤、湿潤剤、及び界面活性剤、更に必要に応じてその他の成分を水性媒体中に分散又は溶解し、更に必要に応じて攪拌し、混合させて製造する。前記分散は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシャイカー、超音波分散機等により行うことができ、攪拌混合は通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等で行うことができる。
【0061】
前記インクの着色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどが挙げられる。これらの着色を2種以上併用したインクセットを使用して記録を行うと、多色画像を形成することができ、全色併用したインクセットを使用して記録を行うと、フルカラー画像を形成することができる。
【0062】
(インクカートリッジ)
本発明のインクカートリッジは、本発明の前記再充填用インクを容器中に再充填してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材などを有してなる。本発明の前記再充填用インクをインクカートリッジに再充填して使用することにより、膨大なインクカートリッジの廃棄を防ぎ、環境負荷を低減することができる。
【0063】
前記インクカートリッジは、内部にインク吸収体を有さないものである。これにより、再充填用インクのインクカートリッジ内への再充填が容易に行える。
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを少なくとも有するもの、などが好適に挙げられる。
【0064】
次に、インクカートリッジについて、図1及び図2を参照して説明する。ここで、図1は、本発明のインクカートリッジの一例を示す図であり、図2は図1のインクカートリッジ10のケース(外装)も含めた図である。
インクカートリッジ10は、図1に示すように、インク注入口42からインク袋41内に充填され、排気した後、該インク注入口42は融着により閉じられる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口43に装置本体の針を刺して装置に供給される。
インク袋41は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋41は、図2に示すように、通常、プラスチックス製のカートリッジケース44内に収容され、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0066】
−残留インクNo.1〜残留インクNo.4の調製−
ジェルジェットプリンター(株式会社リコー製、IPSiO G717)用の純正仕様のブラックインク、イエローインク、マゼンタインク、及びシアンインクを、それぞれインクカートリッジに搭載して、印字を行い、使用済みとなったインクカートリッジ内に残留している残留インクNo.1(ブラック、Bk)、残留インクNo.2(イエロー、Y)、残留インクNo.3(マゼンタ、M)、及び残留インクNo.4(シアン、C)を使用した。
【0067】
(製造例1)
−再充填用インクNo.1(ブラックインク)の調製−
下記処方のインク組成物を作製し、室温にて十分に攪拌した後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて濾過を行い、再充填用インクNo.1を作製した。
・カーボンブラック(Bonjet CW−1、オリエント社製)・・・30質量%
・グリセリン・・・7.5質量%
・ジエチレングリコール・・・22.5質量%
・2−ピロリドン・・・2質量%
・界面活性剤(ECTD3NEX、日光ケミカルズ株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩)・・・1質量%
・シリコーン消泡剤(KS508、信越化学工業株式会社製、自己乳化型)・・・0.1質量%
・イオン交換水・・・残量
【0068】
(製造例2)
<再充填用インクNo.2(イエローインク)の調製>
−イエロー顔料分散液1の作製−
下記成分を混合した後、湿式サンドミルにて分散を行い、遠心処理にかけて粗大粒子を取り除き、イエロー顔料分散液1を作製した。
・C.I.ピグメントイエロー 97・・・30質量%
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム・・・15質量%
・エチレングリコール・・・30質量%
・純水・・・残量
【0069】
−イエローインクの作製−
下記処方のインク組成物を作製し、室温にて十分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行い、再充填用インクNo.2を作製した。
・上記イエロー顔料分散液1・・・10質量%
・グリセリン・・・8質量%
・ポリエチレングリコール・・・20質量%
・アセチレングリコール系界面活性剤(サーフィノール465、エアープロダクツ社製)・・・1質量%
・シリコーン消泡剤(KS531、信越化学工業株式会社製)・・・0.1質量%
・イオン交換水・・・残量
【0070】
(製造例3)
<再充填用インクNo.3(マゼンタインク)の調製>
−マゼンタ顔料分散液2の作製−
下記成分を混合した後、3本ロールミルにて分散を行い、マゼンタ顔料分散液2を作製した。
・C.I.ピグメントレッド 122・・・30質量%
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム・・・15質量%
・グリセリン・・・30質量%
・純水・・・残量
【0071】
−マゼンタインクの作製−
下記処方のインク組成物を作製し、室温にて十分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行い、再充填用インクNo.3を作製した。
・上記マゼンタ顔料分散液2・・・10質量%
・グリセリン・・・8質量%
・ジエチレングリコール・・・22質量%
・2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・2質量%
・界面活性剤(ECTD3NEX、日光ケミカルズ株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩)・・・1質量%
・シリコーン消泡剤(KS531、信越化学工業株式会社製)・・・0.1質量%
・イオン交換水・・・残量
【0072】
(製造例4)
<再充填用インクNo.4(シアンインク)の調製>
−シアン顔料分散液3の作製−
下記成分を混合した後、湿式サンドミルにて分散を行い、シアン顔料分散液3を作製した。
・C.I.ピグメントブルー 15:3・・・30質量%
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム・・・15質量%
・エチレングリコール・・・30質量%
・純水・・・残量
【0073】
−シアンインクの作製−
下記処方のインク組成物を作製し、室温にて十分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行い、再充填用インクNo.4を作製した。
・上記シアン顔料分散液3・・・15質量%
・グリセリン・・・8質量%
・ジエチレングリコール・・・22質量%
・2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・2質量%
・界面活性剤(ECTD3NEX、日光ケミカルズ株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩)・・・1質量%
・シリコーン消泡剤(KS531、信越化学工業株式会社製)・・・0.1質量%
・イオン交換水・・・残量
【0074】
(製造例5)
−再充填用インクNo.5(シアンインク)の調製−
下記処方のインク組成物を作製し、室温にて十分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行い、再充填用インクNo.5を作製した。
・C.I.Direct Blue 199・・・5質量%
・グリセリン・・・7質量%
・ジエチレングリコール・・・23質量%
・界面活性剤(ECTD3NEX、日光ケミカルズ株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩)・・・1質量%
・シリコーン消泡剤(KS531、信越化学工業株式会社製)・・・0.1質量%
・イオン交換水・・・残量
【0075】
(製造例6)
−再充填用インクNo.6(マゼンタインク)の調製−
下記処方のインク組成物を作製し、室温にて十分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行い、再充填用インクNo.6を作製した。
・C.I.Direct Red 227・・・5質量%
・グリセリン・・・7.5質量%
・ジエチレングリコール・・・22.5質量%
・界面活性剤(ECTD3NEX、日光ケミカルズ株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩)・・・1質量%
・シリコーン消泡剤(KS531、信越化学工業株式会社製)・・・0.1質量%
・イオン交換水・・・残量
【0076】
(製造例7)
−再充填用インクNo.7(ブラックインク)の調製−
下記処方のインク組成物を作製し、室温にて十分に攪拌した後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて濾過を行い、再充填用インクNo.7を作製した。
・カーボンブラック(CAB−O−JET200、キャボット社製)・・・30質量%
・グリセリン・・・8質量%
・ジエチレングリコール・・・22質量%
・2−ピロリドン・・・2質量%
・界面活性剤(ECTD3NEX、日光ケミカルズ株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩)・・・1質量%
・シリコーン消泡剤(KS531、信越化学工業株式会社製)・・・0.1質量%
・イオン交換水・・・残量
【0077】
(製造例8)
−再充填用インクNo.8(マゼンタインク)の調製−
下記処方のインク組成物を作製し、室温にて十分に攪拌した後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて濾過を行い、再充填用インクNo.8を作製した。
・上記マゼンタ顔料分散液2・・・20質量%
・グリセリン・・・10質量%
・ジエチレングリコール・・・20質量%
・2−ピロリドン・・・2質量%
・界面活性剤(ECTD3NEX、日光ケミカルズ株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩)・・・1質量%
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル・・・1.5質量%
・シリコーン消泡剤(KS531、信越化学工業株式会社製)・・・0.1質量%
・イオン交換水・・・残量
【0078】
次に、残留インクNo.1〜No.4及び再充填用インクNo.1〜8について、以下のようにして、諸特性を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
<粗大粒子数の測定>
AccuSizer 780(Particle Sizing Systems社製)を用いて、各インクのそれぞれ5μL中に存在する粒径0.5μm以上の粗大粒子数の測定を行った。
【0080】
<2価の金属イオン量の測定>
TOADKK社製のイオンクロマトグラフィー ICA−5222を使用し、10倍希釈したインクを0.2μmのフィルターで濾過したものに含まれる2価の金属イオン(Ca2+、Mg2+)量を測定した。
【0081】
<インク粘度の測定>
インクの粘度は、東機産業株式会社製のRL500を用いて25℃で測定した。
【0082】
<体積平均粒径の測定>
インクの体積平均粒径については、日機装株式会社製のマイクロトラックUPA150を用いて、各顔料濃度が0.01質量%になるように希釈して測定を行った。
【0083】
【表1】

表1の結果から、再充填用インク中の2価の金属イオン含有量Xと、残留インク中の2価の金属イオン含有量Yとは、次式、1<X/Y≦5の関係を満たしていることが分かった。
【0084】
次に、残留インクNo.1〜No.4及び再充填用インクNo.1〜8を組み合わせた混合インクについて、下記評価1、2及び3を行った。
【0085】
<評価1:インク中の粗大粒子数の測定>
残留インクNo.1〜No.4及び再充填用インクNo.1〜8を表2に示す組み合わせで、残留インクと、再充填用インクとを1:1(体積比)になるように混合した混合インクについて、混合直後、混合後25℃、50%RH環境下で24時間放置した後の粒径0.5μm以上の粗大粒子数をそれぞれ測定した。結果を表2に示す。
なお、粗大粒子数は、Accu Sizer 780(Particle Sizing Systems社製)を用いて、各混合インクのそれぞれ5μL中に存在する粒径0.5μm以上の粗大粒子数の測定を行った。
【0086】
【表2】

【0087】
<評価2:混合インクの保存安定性の評価>
残留インクNo.1〜No.4及び再充填用インクNo.1〜8を表3及び表4に示す組み合わせで、残留インクと、再充填用インクとを1:1(体積比)になるように混合した混合インクについて、25℃、50%RH、及び50℃、30%RHで1週間保存し、保存前後の粘度と平均粒径を測定した。粘度については東機産業株式会社製のRL500を用いて25℃にて測定した。また、体積平均粒径については日機装株式会社製のマイクロトラックUPA150を用いて、各顔料濃度が0.01質量%になるように希釈して測定を行った。結果を表3及び表4に示す。
【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【0090】
<評価3:吐出安定性の評価>
残留インクNo.1〜No.4及び再充填用インクNo.1〜8を表5に示す組み合わせで、残留インクと、再充填用インクとを1:1(体積比)になるように混合した混合インクについて、連続印字評価を行った。
評価機としてはジェルジェットプリンター(株式会社リコー製、IPSiO G717)を使用し、各色とも同じ吐出量となるベタ画像のチャートを連続印字させて、画像かすれが生じる連続印字枚数をチェックした。画像かすれがなく連続印字できた枚数を表5に示す。
【0091】
【表5】

【0092】
表2〜表5の結果から、評価1のB/Aの値が2倍以下である実施例1〜6のインクは、評価2の保存性及び評価3の吐出安定性がともに良好な結果が得られた。
これに対し、評価1のB/Aの値が2倍を超える比較例1及び2のインクは、評価2の保存性も悪く、評価3の吐出安定性についても悪い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の再充填用インクは、吐出安定性、及び保存安定性に優れ、高品位な画像記録が可能であり、使用済みのインクカートリッジ内に再充填してインクカートリッジを無駄なく再使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、本発明のインクカートリッジの一例を示す図である。
【図2】図2は、図1のインクカートリッジのケースも含めた図である。
【符号の説明】
【0095】
10 インクカートリッジ
41 インク袋
42 インク注入口
43 インク排出口
44 カートリッジ外装

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色剤、湿潤剤、及び界面活性剤を含有し、使用済みのインクカートリッジ内に再充填される再充填用インクであって、
前記使用済みのインクカートリッジ内に残留している残留インクと、前記再充填用インクとを、体積比(残留インク:再充填用インク)で1:1に混合した混合インクにおける混合直後の粒径0.5μm以上の粗大粒子数Aと、前記混合インクを25℃、50%RH環境下で、24時間放置後の粒径0.5μm以上の粗大粒子数Bとが、次式、B/A≦2の関係を満たすことを特徴とする再充填用インク。
【請求項2】
使用済みのインクカートリッジ内に残留している残留インクと、再充填用インクとを体積比(残留インク:再充填用インク)が1:1になるように混合した混合インクにおける保存前の25℃での粘度をCとし、前記混合インクを25℃、50%RH環境下、1週間保存後の25℃での粘度をDとすると、次式、D/C≦2の関係を満たす請求項1に記載の再充填用インク。
【請求項3】
使用済みのインクカートリッジ内に残留している残留インクと、再充填用インクとを、体積比(残留インク:再充填用インク)で1:1に混合した混合インクにおける保存前の体積平均粒径をEとし、前記混合インクを25℃、50%RH環境下、1週間保存後の体積平均粒径をFとすると、次式、F/E≦1.5の関係を満たす請求項1から2のいずれかに記載の再充填用インク。
【請求項4】
再充填用インク中の2価の金属イオン含有量Xと、残留インク中の2価の金属イオン含有量Yとが、次式、1<X/Y≦5の関係を満たす請求項1から3のいずれかに記載の再充填用インク。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の再充填用インクを容器中に再充填してなることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項6】
内部にインク吸収体を有していない請求項5に記載のインクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−179804(P2008−179804A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334848(P2007−334848)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】