説明

再利用可能性判定装置、車両、再利用可能性判定方法

【課題】組電池を構成する複数の単電池それぞれについて容量測定を行って、組電池の状態を評価する手法では、作業者の作業負担が大きい。
【解決手段】それぞれが複数の単電池から構成される複数のグループから構成されている組電池において、それぞれの前記グループを構成する複数の単電池間で閾値を超える電圧値ばらつきが生じた場合に前記複数の単電池それぞれの電圧値を均等化させる均等化処理を実行する均等化処理部(101)と、前記均等化処理部における均等化処理の実行回数を示す情報を、前記複数のグループそれぞれについて取得する実行回数情報取得部(102)と、前記実行回数情報取得部にて取得される情報が示す各グループでの実行回数に基づいて、各グループの再利用可能性をグループ単位で判定する判定部(103)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単電池が電気的に接続された組電池の余寿命を推測する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の単電池を積層し、これら複数の単電池を電気的に接続してなる組電池を有する電池パックが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−204538号公報
【特許文献2】特開2008−134060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の単電池を積層してなる組電池を有する電池パックにおける電池劣化を判定する場合、例えば、個々の単電池の容量測定を行うなど、手間のかかる作業を行う必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明である再利用可能性判定装置は、それぞれが複数の単電池から構成される複数のグループから構成されている組電池において、それぞれの前記グループを構成する複数の単電池間で閾値を超える電圧値ばらつきが生じた場合に前記複数の単電池それぞれの電圧値を均等化させる均等化処理を実行する均等化処理部と、前記均等化処理部における均等化処理の実行回数を示す情報を、前記複数のグループそれぞれについて取得する実行回数情報取得部と、前記実行回数情報取得部にて取得される情報が示す各グループでの実行回数に基づいて、各グループの再利用可能性をグループ単位で判定する判定部と、を有する。
【0006】
ここでの「グループ」とは、均等化処理部における均等化処理の対象となる単位を意味しており、どのような組合せの単電池群について均等化処理を行うかは、任意に設定可能である。
【0007】
ここで、前記グループは、複数の単電池から構成されるブロックである構成とすることができる。これにより、個々の単電池の容量測定をせずとも、電池が再利用可能か否かを判定することができる。また、電池の再利用判定を、電池パックを車両に搭載したままで実行することができる。
【0008】
また、前記判定部は、前記実行回数情報取得部にて取得される情報から求められる積算実行回数が所定値を超えるグループを構成する複数の単電池については、再利用不可能であると判定することを特徴とすることができる。
【0009】
また、前記判定部は、前記実行回数情報取得部にて取得される情報から求められる単位期間あたりの実行回数が所定値を超えるグループを構成する複数の単電池については、再利用不可能であると判定することを特徴とすることができる。
【0010】
また、前記均等化処理部における均等化処理の実行回数を示す情報は、エレクトロニックコントロールユニットで記憶されていることを特徴とすることができる。
【0011】
また、前記均等化処理部における均等化処理の実行回数を示す情報は、前記組電池の状態を監視する電池監視ユニットで記憶されていることを特徴とすることができる。
【0012】
また、上述のような構成の再利用可能性判定装置を搭載した車両を提供することもできる。
【0013】
また、それぞれが複数の単電池から構成される複数のグループから構成されている組電池において、それぞれの前記グループを構成する複数の単電池間で閾値を超える電圧値ばらつきが生じた場合に前記複数の単電池それぞれの電圧値を均等化させる均等化処理を実行する均等化処理ステップと、前記均等化処理ステップにおける均等化処理の実行回数を示す情報を、前記複数のグループそれぞれについて取得する実行回数情報取得ステップと、前記実行回数情報取得ステップにて取得される情報が示す各グループでの実行回数に基づいて、各グループの再利用可能性をグループ単位で判定する判定ステップと、を備える再利用可能性判定方法を提供することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の単電池を積層してなる組電池を有する電池パックにおいて、均等化回路による均等化処理の実行回数を基準として電池劣化を判定することにより、個々の単電池の容量測定をせずとも、電池が再利用可能か否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例である再利用可能性判定装置と電池パックからなるシステムを示す概略構成図である。
【図2】本実施例に係る再利用可能性判定装置が備える機能を示す機能ブロック図である。
【図3】積算実行回数に基づく判定処理を行なう場合に、PROCESSOR801が参照するデータテーブルの一例を示す図である。
【図4】単位期間あたりの実行回数に基づく判定処理を行なう場合に、PROCESSOR801が参照するデータテーブルの一例を示す図である。
【図5】本実施例による再利用可能性判定方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0017】
本発明の再利用可能性判定装置について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例である再利用可能性判定装置と電池パックからなるシステムを示す概略構成図である。
【0018】
実施例の電池パックは、図示するように、出力端子が電源ラインにより負荷Lに接続された組電池Cである。
【0019】
組電池Cは、例えばリチウムイオン電池などの複数の単電池b1〜bnを直列接続してなる複数のブロックG1〜Gnを直列接続して構成されている。各ブロックG1〜Gnには、各単電池の電圧を検出するための電圧検出ラインk1〜knが設けられている。

【0020】
それぞれのブロックG1〜Gnに対応して設けられている均等化回路A1〜Anは、電圧検出ラインk1〜knにより検出される電圧値に基づいて、各単電池の電圧値の均等化を行なう。均等化回路A1〜Anによる均等化処理は、均等化処理を開始するための所定の条件が満たされたときに実行してもよいし、所定時間毎(例えば30分毎など)に繰り返し実行してもよい。電圧検出ラインk1〜knは、各単電池b1〜bnの接続端に接続されており、電圧検出ラインk1〜knのライン間の電位差を検出するために用いられる。
【0021】
均等化処理が実行されると、各均等化回路は、それぞれのブロックを構成する各単電池の電圧を電圧検出ラインによって検出し、各単電池の電圧値のバラツキが大きい場合、電圧が高い単電池に対する電気抵抗を増大させ、電力を消費させることにより、各単電池の電圧値を均等化させる。なお、ここでの均等化回路による均等化処理の手法は、あくまで一例であり、この他の種々の公知の均等化処理を採用することも可能であることは言うまでもない。
【0022】
ECU(electronic control unit)2は、例えばエンジン運転における電気的な制御等を総合的に行うためのマイクロコントローラである。ECU2は、PROCESSOR201を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムや一時的なデータを記憶する記憶部202を備える。
【0023】
均等化回路A1〜Anのいずれかにおいて均等化処理が実行されると、均等化処理を実行した均等化回路は、その旨をECU2に通知する。均等化回路A1〜AnからECU2への上記通知処理は、所定時間毎の積算回数等をまとめて通知してもよいし、均等化処理が実行されるたびに通知してもよい。
【0024】
制御部1は、再利用可能性判定装置における処理を総括的に管理する役割を有しており、ECUから受信する情報等に基づく判定処理等を行なう。制御部1は、PROCESSOR801と記憶部802とを備える。
【0025】
表示部7は、例えば、再利用可能性判定装置における処理内容に関する情報の画面表示を行なうことのできるディスプレイである。表示部7における表示内容は、例えば、制御部1により制御される。
【0026】
図2は、本実施例に係る再利用可能性判定装置が備える機能を示す機能ブロック図である。
【0027】
図2に示すように、本実施例に係る再利用可能性判定装置は、均等化処理部101、実行回数情報取得部102および判定部103を備えている。これらの各機能の一部または全部は、例えば、制御部1における記憶部802に格納されているプログラムをPROCESSOR801により実行することにより、あるいは回路的に実現することができる。
【0028】
均等化処理部101は、それぞれが複数の単電池b1〜bnから構成される複数のブロックG1〜Gn(それぞれのブロックがグループに相当)から構成されている組電池において、それぞれのブロックG1〜Gnを構成する複数の単電池間で閾値を超える電圧値ばらつきが生じた場合に複数の単電池それぞれの電圧値を均等化させる「均等化処理」を実行する。具体的に、ここでの均等化処理部101は、均等化回路A1〜Anに相当する。
【0029】
実行回数情報取得部102は、均等化処理部101における均等化処理の実行回数を示す情報を、複数のグループそれぞれについて取得する。ここでの「均等化処理の実行回数を示す情報」としては、例えば、実際の均等化処理の実行回数のカウント値でもよいし、実行回数に対応付けてあらかじめ決められている所定の識別情報等であってもよい。
【0030】
判定部103は、実行回数情報取得部102にて取得される情報が示す各ブロックG1〜Gnでの実行回数に基づいて、各ブロックG1〜Gnの再利用可能性をブロック単位で判定する。換言すれば、判定部103は、実行回数情報取得部102にて取得される情報が示す各ブロックG1〜Gnでの実行回数から得られる所定の評価値が閾値を超える場合には、閾値を超えたブロックについて劣化が進んでいる(すなわち、電池が再利用不可能)旨の判定を行う。一方、ブロックG1〜Gnの中で均等化処理の実行回数が閾値よりも少ないブロックについては、容量バラツキが小さく(すなわち劣化バラツキが小さく)、劣化が少なく再利用可能であると判定する。
【0031】
このような判定方法により電池の再利用可能性を判定することで、個々の単電池の容量測定をせずとも、電池が再利用可能か否かを判定することができる。
【0032】
また、上記判定方法によれば、電池パックを車両に積載した状態で、当該電池パックを構成する電池の再利用可能性を判定することができる。
【0033】
なお、本実施例では、「グループ」が、「ブロック」に相当する場合を例示したが、これに限られるものではなく、均等化回路による均等化処理の対象となる単位を意味している。
【0034】
均等化処理部101における均等化処理の実行回数を示す情報は、例えば、ECU2の記憶部202にて記憶されている。
【0035】
具体的に、判定部103は、実行回数情報取得部102にて取得される情報から求められる積算実行回数が所定値を超えるグループを構成する複数の単電池については、劣化しており再利用不可能であると判定する。図3は、積算実行回数に基づく判定処理を行なう場合に、PROCESSOR801が参照するデータテーブルの一例を示す図である。当該データテーブルは、例えば、記憶部802や記憶部202に格納されている。
【0036】
また、判定部103は、実行回数情報取得部102にて取得される情報から求められる単位期間あたりの実行回数が所定値を超えるグループを構成する複数の単電池については、劣化しており再利用不可能であると判定することもできる。図4は、単位期間あたりの実行回数に基づく判定処理を行なう場合に、PROCESSOR801が参照するデータテーブルの一例を示す図である。当該データテーブルは、例えば、記憶部802や記憶部202に格納されている。
【0037】
このとき、判定部103による劣化判定は、ブロック単位で行なわれる。
【0038】
この他、均等化処理部101における均等化処理の実行回数を示す情報は、組電池の状態を監視する電池監視ユニット9にて記憶させることもできる。
【0039】
電池監視ユニット9は、組電池Cを構成する複数の単電池b1〜bnにおける電圧値を監視したり、組電池Cの電流値を監視したりする。複数の単電池b1〜bnにおける電圧値としては、各単電池b1〜bnの電圧値であってもよいし、複数の単電池b1〜bnを複数のグループに分けたときの各グループの電圧値であってもよい。電池監視ユニット9で得られた情報は、不図示のPCU(Power Control Unit)に送られ、組電池Cの充放電を制御するために用いられる。
【0040】
また、判定部103は、上述のようにして得られる判定結果を、例えば表示部7にて画面表示させたり、所定の送信先に対して通知することができる。ここでの表示部7は、サービスマン等が作業時に視認しやすいように電池パック付近に配置してもよいし、さらに視認性を高めるためにカーナビゲーションシステムのディスプレイと兼用してもよい。また、表示部7は、必ずしもディスプレイである必要はなく、簡単なランプとすることもできる。
【0041】
図5は、本実施例による再利用可能性判定方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【0042】
実行回数情報取得部102は、均等化処理部101における均等化処理(均等化処理ステップ)の実行回数を示す情報を、複数のグループそれぞれについて取得する(実行回数情報取得ステップ)(S101)。
【0043】
判定部103は、実行回数情報取得部102にて取得される情報が示す各ブロックG1〜Gnでの実行回数に基づいて(S102)、各ブロックG1〜Gnの再利用可能性をブロック単位で判定する(判定ステップ)(S103)。
【0044】
また、上述した再利用可能性判定装置による判定処理は、電池パックを車両に搭載した状態でも実行できるため、リアルタイムでの電池再利用可能性の判定を行うために再利用可能性判定装置を車両に搭載することもできる。
【0045】
なお、上述の実施例では、劣化判定の対象がリチウムイオン電池である場合を例に挙げたが、複数のニッケル水素電池の電池セルを電気的に接続して構成される組電池等にも適用可能であることは言うまでもない。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
101:均等化処理部 102:実行回数情報取得部
103:判定部 b1〜bn:単電池
G1〜Gn:ブロック k1〜kn:電圧検出ライン
A1〜An:均等化回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが複数の単電池から構成される複数のグループから構成されている組電池において、それぞれの前記グループを構成する複数の単電池間で閾値を超える電圧値ばらつきが生じた場合に前記複数の単電池それぞれの電圧値を均等化させる均等化処理を実行する均等化処理部と、
前記均等化処理部における均等化処理の実行回数を示す情報を、前記複数のグループそれぞれについて取得する実行回数情報取得部と、
前記実行回数情報取得部にて取得される情報が示す各グループでの実行回数に基づいて、各グループの再利用可能性をグループ単位で判定する判定部と、
を備える再利用可能性判定装置。
【請求項2】
前記グループは、複数の単電池から構成されるブロックであることを特徴とする請求項1に記載の再利用可能性判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記実行回数情報取得部にて取得される情報から求められる積算実行回数が所定値を超えるグループを構成する複数の単電池については、再利用不可能であると判定することを特徴とする請求項1に記載の再利用可能性判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記実行回数情報取得部にて取得される情報から求められる単位期間あたりの実行回数が所定値を超えるグループを構成する複数の単電池については、再利用不可能であると判定することを特徴とする請求項1に記載の再利用可能性判定装置。
【請求項5】
前記均等化処理部における均等化処理の実行回数を示す情報は、エレクトロニックコントロールユニットで記憶されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の再利用可能性判定装置。
【請求項6】
前記均等化処理部における均等化処理の実行回数を示す情報は、前記組電池の状態を監視する電池監視ユニットで記憶されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の再利用可能性判定装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のうちいずれか1つに記載の再利用可能性判定装置を搭載した車両。
【請求項8】
それぞれが複数の単電池から構成される複数のグループから構成されている組電池において、それぞれの前記グループを構成する複数の単電池間で閾値を超える電圧値ばらつきが生じた場合に前記複数の単電池それぞれの電圧値を均等化させる均等化処理を実行する均等化処理ステップと、
前記均等化処理ステップにおける均等化処理の実行回数を示す情報を、前記複数のグループそれぞれについて取得する実行回数情報取得ステップと、
前記実行回数情報取得ステップにて取得される情報が示す各グループでの実行回数に基づいて、各グループの再利用可能性をグループ単位で判定する判定ステップと、
を備える再利用可能性判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−36936(P2013−36936A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175259(P2011−175259)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】