説明

再吸収可能な先端を備えるセルフタップねじ

【課題】治癒の早い整形外科用ねじの提供。
【解決手段】骨ねじなど骨の中で使用する固定装置は、第1端部4および第2端部6を含む。第1部分は、短期再吸収可能物質から製造されてよく、第2部分は非再吸収可能または長期再吸収可能物質から製造されてよい。第1部分は骨をセルフタップすることができる先端を備えてよい。第2部分は、その外面に形成される少なくとも1つのねじ山、およびドライバと適合するように形成される頭部を含んでよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人の体内で使用するように構成された固定装置に関する。詳細には、本発明は整形外科用ねじに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用インプラントを人の身体の骨に装着するのに使用するように構成されたねじ式装置がよく知られている。骨ねじは、骨に骨プレートを装着するなど種々の用途で採用される。いくつかの骨ねじは、骨にねじを挿入する際パイロットホールにねじ込まれるとき、骨の中にセルフタップ式にねじ込むように構成されている。他の骨ねじは、適切な期間後、身体に再吸収されるように構成されている。
【発明の開示】
【0003】
本発明は第1部分および第2部分を備える整形外科用ねじに関する。第1部分は第1物質を備え、セルフタップ先端を含む。第2部分は第1部分に接続されてよく、再吸収可能または非再吸収可能であり得る第2物質から構成されてよい。第1物質は、第2物質が体内に再吸収され得る速度より速い速度で人の体内に再吸収されるように構成される。
【0004】
第1物質は、ポリ(DL−ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)またはポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)の少なくとも1つを有してよい。他の実施形態では、第1物質は、ポリ(エチレングリコール)−コ−ポリラクチド、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの少なくとも1つを有してよい。実施形態では、第1物質は、ヒアルロン酸、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、デキストランまたはアガロースの少なくとも1つを有してよい。さらに、実施形態では、第2物質はポリ(L−ラクチド)またはポリ(DL−ラクチド−コ−L−ラクチド)を有してよい。
【0005】
第1物質の固有の粘性は、約0.1または0.2dL/gの低さおよび約1、1.5または3dL/gの高さの固有の粘性を有してよい。第2物質は、約0.1または0.2dL/gの低さおよび約1、1.5または3dL/gの高さの固有の粘性を有してよい。
【0006】
第2部分は、ドライバと適合するように構成される頭部を含んでよい。さらに、第1部分は外面を包囲する少なくとも1つのねじ山を含んでよい。外面を包囲するねじ山は、始動ねじ山であってよく溝を含んでよい。実施形態では、第2部分もねじ山を含んでよい。第2部分のねじ山は、第1部分のねじ山と整列されてよい。第1部分は、骨の硬さと少なくとも同等の硬さを有してよい。
【0007】
本発明の利点は、ねじの残りの部分と比較して、ねじの先端部が比較的速く再吸収されることである。
【0008】
本発明のさらなる利点は、ねじの先端部が比較的迅速に再吸収されることによって、ねじの先端周辺の身体が治癒し、ねじの残りの部分が例えば骨の上に骨プレートを固定することが可能になる。
【0009】
一形態において、本発明はセルフタップ先端を含み、第1再吸収可能物質の少なくとも一部に形成される遠位部分、および第2再吸収可能物質および非再吸収可能物質のうちの1つの少なくとも一部に形成される近位部分を含むねじ込みシャフトを含む整形外科用ねじを提供する。
【0010】
別の形態において、本発明は再吸収可能物質の少なくとも一部に形成される遠位先端部分を含む整形外科用ねじ、およびドライバインターフェースを備える近位端を含み、第2再吸収可能物質および非再吸収可能物質のうちの1つの少なくとも一部に形成されるねじ込みシャフト部分を提供する。
【0011】
本発明の上記のおよび他の特徴および利点、ならびにこれらを実現する方法は、添付の図面と併せて本発明の実施形態の以下の記載を参照することによってより明確になり、本発明自体はよりよく理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態を示す固定装置2の斜視図を示す。固定装置2は、骨ねじまたは骨内釘であってよく、例えば、第1または遠位部分4、および第2または近位部分6を含む。示される実施形態において、第1部分4は骨ねじ2の先端を表し、第2部分6は骨ねじ2の本体を表す。
【0013】
本実施形態において、第1部分4は、第1端部8および第2端部10を含む。第1部分4はさらに、全体的に数字11でそれぞれ示される複数の溝および全体的に数字12で示されるねじ山を含む。溝11は、当技術分野で知られた任意の構造を有してよく、一般に骨の中にセルフタップするように成形されてよい。開始ねじ山と称されることがあるねじ山12が第1部分4の外面の一部を包囲し、骨の中にねじ山を形成することができる。したがって、ねじ山12を含む第1部分4は一般に、骨よりも大きな硬度を有する物質から製造される。実施形態において、溝11は、ねじ山12が第1部分4の周囲で移動するのを防ぐ。
【0014】
第2部分6は、第1端部14および第2端部16を含む。本実施形態において、第1部分4および第2部分6が1つのユニットとして回転可能に駆動できるように、第1端部14は、適切な方法で第1部分4の第2端部10に適合するように構成される。例えば本発明の実施形態において、図2および3に示すように、第2端部10は、六角形の突起13を含み、第1端部14は相補的六角形の窪み15を含むか、または逆も同様である。窪み15は第1部分4が第2部分6に適合する際、突起13を収容することができる。2つの部分4、6を適合させるのに必要に応じて他の好適な構造を採用してよい。
【0015】
さらに実施形態において、第1端部14は、例えば生体適合可能な接着剤によって第2端部10固定されてよい。実施形態において、端部10、14は例えば溶接によって結合されてよい。
【0016】
再び図1を参照すると、第2端部16はドライバ適合部18を含む。本実施形態においてドライバ適合部18は、窪み22を含む頭部20を有する。頭部20は、装置2の目的の用途に好適ないかなる形状であってよい。例えば頭部20は半球形、または球形であってよい。
【0017】
示される実施形態において、第2部分6は、窪み22などの当技術分野で知られたドライバ(図示せず)を収容するように構成されたドライバインターフェースを含む。窪み22は、当技術分野で一般に採用されるドライバの形状と相補的な任意の知られた形状であってよい。他の実施形態において、ドライバ適合部18は、ドライバと適合することが可能な任意の知られた構造を取り入れてよい。例えばドライバ適合部18は、ドライバ工具に収容されるように構成された突起(図示せず)を含んでよい。他の実施形態において適合部18はドライバ工具の突起を収容するように構成された少なくとも1つの窪みを含んでよい。
【0018】
第2部分6はさらに全体的に数字24で示されるねじ山を含む。示される実施形態において、ねじ山24は、第1端部14から第2端部16に向かってドライバ適合部18に近接した位置まで延在する。さらに、示される実施形態において、ねじ山12は次第にねじ山24に推移してよく、ねじ山12、24は相補的であってよい。例えば、ねじ山12、24は均一のピッチを有し同様の回り方向であってよく、すなわちねじ山12、24は回転する際同一の進行方向を共有してよい。
【0019】
第1部分4は、生体再吸収工程を介して、または電解腐食工程を介してなど知られた任意の工程によって数時間または数日の間に再吸収されてよい。第1部分4はまた、一般に骨よりも大きな硬度を有し、人の身体が再吸収することができる任意の知られた物質から製造されてよい。例えば、第1部分4は、ポリ(DL−ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)またはポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)などの合成ポリマーから製造されてよい。上記のポリマーの任意の組み合わせを有するポリマー混合物など他の物質を使用して、第1部分4を形成してもよい。ポリ(エチレングリコール)−コ−ポリラクチド、メチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースなどの合成ヒドロゲル物質を使用して第1部分4を形成してもよい。さらに天然バイオポリマーは、ヒアルロン酸などのアニオン性バイオポリマー、キトサンなどのカチオン性バイオポリマー、コラーゲン、ゼラチン、フィブリンなどの両親媒性ポリマー、デキストランまたはアガロースなどの中性多糖類を含む。
【0020】
最終工程および滅菌に続く第1部分4の固有の粘性は、約0.1または0.2dL/gの低さおよび約1、1.5または3dL/gの高さであってよい。
【0021】
第2部分6は、所望の用途に好適な任意の物質から製造されてよい。第2部分6を構成する物質は、生体適合可能プラスチック、Ti6−4ELIを含めたチタン、または等級316Lを含めたステンレス鋼などの非再吸収可能物質から、あるいは何日もまたは何ヶ月も人の身体に再吸収され得ない長期再吸収可能物質から製造されてよい。例えば、第2部分6はポリ(L−ラクチド)およびポリ(DL−ラクチド−コ−L−ラクチド)などの合成ポリマーから製造されてよい。さらに第2部分6は、これらの合成ポリマーの混合物から製造されてよい。さらに、粒子または繊維質の形態の水酸リン灰石、またはリン酸三カルシウムなどリン酸カルシウム充填剤を含む合成物質を上記の任意のポリマーまたはポリマー混合物共に使用してよい。
【0022】
最終工程および滅菌に続く第2部分6の固有の粘性は、約0.1または2dL/gの低さおよび約5または10dL/gの高さであってよい。
【0023】
図4から6は、固定装置2の例示的な使用、すなわち骨プレート26を骨28に装着するための使用を示す。図に示されるように、骨プレート26は、骨28の表面の形状に対して相補的な形状を有する。プレート26はまた、固定装置2を収容するような大きさの貫通穴27を含む。図5に示されるように、プレート26は、知られた仮の締め具(図示せず)によって骨28に固定されてよい。プレート26の貫通穴の位置と整列するように、パイロットホール30は知られた方法で骨28内に形成されてよい。パイロットホール30の側壁は、ほぼ平坦に示されているが、ねじ山をつけられてもよい。
【0024】
固定装置2は次いで、図4に示されるようにプレート26の貫通穴に、およびパイロットホール30に挿入されてよい。パイロットホール30は固定装置2がパイロットホール30の側壁に接触するような大きさにされている。
【0025】
図5に示されるように固定装置2が回転すると、溝11が骨物質内を切削することによってパイロットホール30の大きさを増大させる。さらに、ねじ山12はパイロットホール30の側壁内を切削し、装置2のねじ山12、24に対応する痕跡を形成する。装置2がパイロットホール30を移動し続ける際、ねじ山12はパイロットホール30の側壁内を切削し続け、ねじ山24は新規に形成される切断面を移動し続ける。
【0026】
装置2が完全に挿入されると、図6に示されるように骨28に対するその位置でプレート26を維持するために第2部分6のみを残して、第1部2は迅速に身体に再吸収されてよい。有利には、第1部分4が比較的迅速に再吸収されることにより第1部分4に近接する組織はより迅速に治癒し、第2部分6は骨28に対してプレート26を接続することが可能になる。
【0027】
例示の設計を有するように本発明を記載してきたが、本発明は開示の精神および範囲内でさらに改変されてよい。したがって本出願は、その包括的原理を使用して、本発明の任意の変形、使用または適用を包含することを意図している。さらに本出願は、本出願が関連する当技術分野に知られたまたは慣行内にある本開示から逸脱するものを包含することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】固定装置の斜視図である。
【図2】図1の固定装置の第1の拡大斜視図である。
【図3】図1の固定装置の第2の拡大斜視図である。
【図4】骨に固定されるように構成された骨プレートを併用する、図1に示す固定装置の側面図である。
【図5】骨プレートを貫通する骨への固定装置の挿入を示す側面図である。
【図6】骨プレートを貫通して骨へ完全に挿入され、固定装置の先端が再吸収される固定装置を示す側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1再吸収可能物質の少なくとも一部に形成されセルフタップ先端を含む遠位部分と
第2再吸収可能物質および非再吸収可能物質のうちの1つの少なくとも一部に形成される近位部分
を有するねじ込みシャフトと
を備える整形外科用ねじ。
【請求項2】
前記第2部分が第2再吸収可能物質で形成され、前記第1再吸収可能物質が前記第2再吸収可能物質より速い速度で人の体内に再吸収可能である、請求項1に記載の整形外科用ねじ。
【請求項3】
前記第2物質がポリ(L−ラクチド)またはポリ(DL−ラクチド−コ−L−ラクチド)からなる群から選択される、請求項1に記載の整形外科用ねじ。
【請求項4】
前記第2物質がチタンまたはステンレス鋼からなる群から選択される、請求項1に記載の整形外科用ねじ。
【請求項5】
前記第1物質が、ポリ(DL−ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)およびポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)からなる群から選択される、請求項1に記載の整形外科用ねじ。
【請求項6】
前記第1物質が、ポリ(エチレングリコール)−コ−ポリラクチド、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される、請求項1に記載の整形外科用ねじ。
【請求項7】
前記第1物質がヒアルロン酸、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、デキストランまたはアガロースからなる群から選択される、請求項1に記載の整形外科用ねじ。
【請求項8】
前記第2部分がドライバと適合するように構成された頭部を含む、請求項1に記載の整形外科用ねじ。
【請求項9】
前記第1部分がねじ山の少なくとも一部を含む、請求項1に記載の整形外科用ねじ。
【請求項10】
前記第1物質が約0.1から3dL/gの範囲内の固有の粘性を有する、請求項1に記載の整形外科用ねじ。
【請求項11】
前記第2物質が約0.1から10dL/gの範囲内の固有の粘性を有する、請求項1に記載の整形外科用ねじ。
【請求項12】
前記第1部分が前記第2部分と非回転式に適合する、請求項1に記載の整形外科用ねじ。
【請求項13】
前記第1部分が接着剤によって前記第2部分に接合される、請求項1に記載の整形外科用ねじ。
【請求項14】
前記第1部分が溶接によって前記第2部分に接合される、請求項1に記載の整形外科用ねじ。
【請求項15】
再吸収可能物質の少なくとも一部に形成される遠位先端部分と、
ドライバインターフェースを備える近位端を含み、第2再吸収可能物質および非再吸収可能物質のうちの1つの少なくとも一部に形成されるねじ込みシャフトと
を備える整形外科用ねじ。
【請求項16】
前記第2部分が第2再吸収可能物質で形成され、前記第1再吸収可能物質が前記第2再吸収可能物質より速い速度で人の体内に吸収可能である、請求項15に記載の整形外科用ねじ。
【請求項17】
前記第1部分が、前記第2部分に非回転式に適合する、請求項15に記載の整形外科用ねじ。
【請求項18】
前記第2物質がポリ(L−ラクチド)およびポリ(DL−ラクチド−コ−L−ラクチド)からなる群から選択される、請求項15に記載の整形外科用ねじ。
【請求項19】
前記第2物質がチタンまたはステンレス鋼からなる群から選択される、請求項15に記載の整形外科用ねじ。
【請求項20】
前記第1物質が約0.1から3dL/gの範囲内の固有の粘性を有する、請求項15に記載の整形外科用ねじ。
【請求項21】
前記第2物質が約0.1から10dL/gの範囲内の固有の粘性を有する、請求項15に記載の整形外科用ねじ。
【請求項22】
前記第1物質がポリ(DL−ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)およびポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)からなる群から選択される、請求項15に記載の整形外科用ねじ。
【請求項23】
前記第1物質が、ポリ(エチレングリコール)−コ−ポリラクチド、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される、請求項15に記載の整形外科用ねじ。
【請求項24】
前記第1物質が、ヒアルロン酸、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、デキストランおよびアガロースからなる群から選択される、請求項15に記載の整形外科用ねじ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−212624(P2008−212624A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278574(P2007−278574)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(507356246)ズィマー テクノロジー,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】