説明

再封機能付き多層フィルム及びこれを用いた包装体

【課題】良好な易開封性と再封性とを併有する再封機構付き多層フィルムおよびこれを用いた包装体の提供。
【解決手段】熱可塑性樹脂(a)を主成分として含有する表面樹脂層3と、動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定される損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が−35℃以上のスチレン系熱可塑性エラストマー(b)を主成分として含有する粘着樹脂層4と、熱可塑性樹脂(c)を主成分として含有するヒートシール樹脂層5とが、3/4/5の順に積層されている多層フィルムにおいて、前記ヒートシール樹脂層5を被シール体のヒートシール部8でヒートシールさせ、次いで該ヒートシール部8から前記多層フィルムを剥離した後に、前記ヒートシール部8において、前記粘着樹脂層4と前記ヒートシール樹脂層5とが層間剥離し、前記粘着樹脂層4が前記ヒートシール樹脂層5と再封止可能な状態で露出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルムに関し、さらに詳細には、食品や医薬品などの包装に好適に用いられる再封機能付き多層フィルム及びこれを用いた再封可能な包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
使用する度に開封と再封を繰り返す化粧品や生理用品、あるいは一度では消費しきれない量の食品や医薬品などの包装手段としては、従来、再封機能を有する各種の包装体が用いられていた。この包装体は、開封後に残存する内容物の酸化劣化、あるいは吸湿、乾燥などによる変敗を防ぐことができ、例えば、プラスチック製のジッパーをラミネートしたジッパータイプの包装体が知られている。しかし、この包装体は繰り返し開封可能であり、優れた耐久性を有するものの、ジッパーなどの付属物を包装体に取り付けるための専用装置が必要であり、またそれに伴う加工工程も必要であるため、製造コストが嵩み、生産効率も低下するなどの問題点があった。
【0003】
一方、ジッパーなどの付属物を取り付けることなく包装体自体に再封機能を付与させることのできる多層フィルムも開発されている。例えば、特許文献1及び2には、表面樹脂層(A)と、スチレン−ジエン系ゴム質ブロック共重合体の水素添加物と粘着付与剤とを含有してなる粘着樹脂層(B)と、ヒートシール樹脂層(C)とからなる蓋材用多層フィルムであって、底材から前記多層フィルムを剥がす際に粘着樹脂層(B)がヒートシール部分において再封可能な粘着状態で露出可能な多層フィルムが開示されている。
【0004】
しかし、これらの多層フィルムは、粘着樹脂層(B)に必須成分としてゴム質ブロック共重合体の水素添加物と、ロジン系樹脂、テルペン樹脂、石油炭化水素樹脂などの粘着付与樹脂とを多量に含有させる必要があるため、例えば、共押出多層フィルムを製膜する場合には、粘着樹脂層(B)の樹脂組成物をあらかじめニ軸押出機などの混練装置で均一にコンパウンドしておくか、あるいは粘着樹脂層(B)の押出設備としてニ軸押出機を導入する必要がある。通常、共押出多層フィルムメーカーの押出設備は、単軸押出機を採用していることが多いため、そのようなフィルムメーカーに対しては、粘着付与樹脂を多く含有させるためには、製造コストがアップするか、あるいは新たな設備投資が必要となり好ましくない。また、粘着付与樹脂を多量に含有する粘着樹脂層(B)を有する多層フィルムの初期剥離強度は経時変化が大きいため、安定した剥離強度を有するか否かを確認するのに多くの時間を要し、生産能率を低下させてしまう場合があった。さらに、粘着付与樹脂を多量に含む多層フィルムを食品用包装体に用いた場合、油脂性食品の疑似溶媒であるn−ヘプタンを用いた溶出試験で粘着付与樹脂の抽出量が増加する傾向にあるため、食品衛生面からはできるだけ粘着付与樹脂を混合しない方が好ましい。
【0005】
また、特許文献3には、基材の少なくとも一面に粘着樹脂層(粘着剤層)とヒートシール剤層とがこの順に形成されたヒートシール用の包装材料であって、前記粘着樹脂層と前記ヒートシール剤層の間の接着強度がヒートシール剤層とヒートシールの対象となる層の間のヒートシール強度よりも小さい包装材料が開示されている。
【0006】
具体的には、実施例として、ポリエステルと二軸延伸ポリプロピレンとからなるラミネートフィルム(厚さ50μm)基材の二軸延伸ポリプロピレン面上に、スチレン10質量%とジエン系炭化水素90質量%からなるランダム共重合体の水素添加物をTダイによる押出しラミネートにより25μmの厚さにした粘着樹脂層をラミネートし、さらにこの粘着樹脂層上に溶剤可溶型のアクリル系ヒートシールラッカーをコーティングしたヒートシール剤層を積層した包装材料が例示されている。この包装材料をタブ付の円形に切り抜き、蓋材としてポリスチレン容器にヒートシールした包装体の場合、タブをつまんで引っ張ると、粘着樹脂層とヒートシール剤層との界面で剥離が生じ、剥離した蓋を容器に被せて指等で圧着すると粘着樹脂層がフランジ部に再粘着し、再度封をすることが記載されている。
【0007】
しかしながら、上記の構成を有する包装体は、ヒートシール剤をコーティングする前段階で、粘着樹脂が外部に露出する工程が発生し、大気中に浮遊している塵、埃などが粘着樹脂に付着し、再封性が低下してしまう場合があり、さらにコーティングのためのコーターや乾燥設備などの特別な設備も必要となり、製造コストがアップするなどの問題がある。
【特許文献1】特開2003−175567号公報
【特許文献2】特開2004−75181号公報
【特許文献3】特開2005−41539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の蓋材の課題を解決するためになされたものであり、その課題は、食品衛生面に優れ、良好な易開封性と、手や指による加圧圧着のみで良好な再封性とを併有する再封機能付き多層フィルム、及びこれを用いた再封可能な包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の粘弾性特性を有するスチレン系熱可塑性エラストマーを粘着樹脂層の主成分として用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の課題は以下の再封機能付き多層フィルム、並びに該多層フィルムを用いた包装体により達成される。
【0010】
(1)表面樹脂層(A)、粘着樹脂層(B)、及びヒートシール樹脂層(C)が、(A)/(B)/(C)の順に積層されている多層フィルムであって、前記粘着樹脂層(B)が動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定される損失正接(tanδ)のピーク値が−35℃以上のスチレン系熱可塑性エラストマー(b)を主成分として構成される層であり、前記ヒートシール樹脂層(C)を被シール体のヒートシール部でヒートシールさせ、次いで該ヒートシール部から前記多層フィルムを剥離したときに、前記ヒートシール部において、前記粘着樹脂層(B)と前記ヒートシール樹脂層(C)とが層間剥離し、かつ前記粘着樹脂層(B)が前記ヒートシール樹脂層(C)と再封可能な状態で露出することを特徴とする再封機能付き多層フィルム。
(2)前記粘着樹脂層(B)の露出が、前記ヒートシール部において、前記ヒートシール樹脂層(C)の前記多層フィルムからの破断と、前記粘着樹脂層(B)と前記ヒートシール樹脂層(C)との層間剥離と、前記ヒートシール樹脂層(C)の被シール体側への移行とにより行われることを特徴とする上記(1)に記載の再封機能付き多層フィルム。
(3)前記表面樹脂層(A)が、オレフィン系樹脂、アミド系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エステル系樹脂、及びスチレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を主成分として構成されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の再封機能付き多層フィルム。
(4)前記ヒートシール樹脂層(C)が、エステル系樹脂又はアミド系樹脂を主成分として構成されることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の再封機能付き多層フィルム。
(5)前記表面樹脂層(A)が2層以上で構成され、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を主成分とする層及び/又はアミド系樹脂を主成分とする層を有することを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の再封機能付き多層フィルム。
(6)前記ヒートシール樹脂層(C)の厚みが1μm以上30μm以下であることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の再封機能付き多層フィルム。
(7)上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の再封機能付き多層フィルムを用いたことを特徴とする容器の蓋材。
(8)上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の再封機能付き多層フィルムを用いたことを特徴とする容器の底材。
(9)上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の再封機能付き多層フィルムを用いたことを特徴とする再封可能な包装体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、食品衛生面に優れ、良好な易開封性と、手や指による加圧圧着のみで良好な再封性とを併有する再封機能付き多層フィルム、並びにこれを用いた再封可能な包装体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の再封機能付き多層フィルム及び包装体(以下、それぞれ「本発明の多層フィルム」及び「本発明の包装体」という。)について詳細に説明する。
なお、本明細書において、「主成分として構成される」とは、各層を構成する樹脂の作用・効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨である。さらに、この用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、各層の構成成分全体の70質量%以上100質量%以下、好ましくは85質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは95質量%以上100質量%以下を占めることを意味する。
【0013】
〔本発明の多層フィルム〕
本発明の多層フィルムは、表面樹脂層(A)、粘着樹脂層(B)、及びヒートシール樹脂層(C)が、(A)/(B)/(C)の順に積層されている多層フィルムであって、前記粘着樹脂層(B)が動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定される損失正接(tanδ)のピーク値が−35℃以上のスチレン系熱可塑性エラストマー(b)を主成分として構成される層であり、前記ヒートシール樹脂層(C)を被シール体のヒートシール部でヒートシールさせ、次いで該ヒートシール部から前記多層フィルムを剥離したときに、前記ヒートシール部において、前記粘着樹脂層(B)と前記ヒートシール樹脂層(C)とが層間剥離し、かつ前記粘着樹脂層(B)が前記ヒートシール樹脂層(C)と再封可能な状態で露出することを特徴とする再封機能付き多層フィルムである。
【0014】
まず、本発明の多層フィルムの表面樹脂層(A)について説明する。
表面樹脂層(A)は、熱可塑性樹脂(a)を主成分として構成される層であり、剥離時に表面樹脂層(A)と粘着樹脂層(B)との間の層間剥離強度が、粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)との間の層間剥離強度よりも大きくなる層構成であれば特に制限されるものではなく、単層であっても多層であってもよい。
【0015】
表面樹脂層(A)の主成分として用いられる熱可塑性樹脂(a)は、粘着樹脂層(B)、及びヒートシール樹脂層(C)の主成分として用いられる樹脂の種類を考慮して適宜選択する必要がある。熱可塑性樹脂(a)は、溶融押出温度が概ね180℃以上300℃以下の範囲であることから、この範囲内で溶融押出可能な熱可塑性樹脂が好適に用いられる。具体的に熱可塑性樹脂(a)としては、オレフィン系樹脂(エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂等)、アミド系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、エステル系樹脂、スチレン系樹脂、カーボネート系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独あるいは2種以上の混合樹脂組成物として用いることができ、単層構成又は多層構成を形成できる。
【0016】
本発明では、成型加工性、製造コスト、透明性などを考慮すると、熱可塑性樹脂(a)としてはオレフィン系樹脂、アミド系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エステル系樹脂、及びスチレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
【0017】
オレフィン系樹脂がエチレン系樹脂である場合、エチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のエチレン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(E−GMA)、エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体(E−VA−GMA)、エチレン−無水マレイン酸共重合体(E−MAH)、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、等のエチレン系共重合体;さらにはエチレン−アクリル酸共重合体の金属中和物、エチレン−メタクリル酸共重合体の金属中和物等が挙げられる。これらは、一種のみを単独で、又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0018】
オレフィン系樹脂がプロピレン系樹脂である場合、プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィン、例えばエチレン、ブテン等との共重合体が挙げられ、共重合体としてはランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれもが使用できる。また、立体規則性については、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造、アタクチック構造、ステレオブロック構造などいずれであってもよい。これらは、一種のみを単独で、又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0019】
オレフィン系樹脂が環状オレフィン系樹脂である場合、環状オレフィン系樹脂としては、エチレンとノルボルネン類やテトラシクロドデセン類及びその誘導体などの環状オレフィンとのランダム共重合体、環状オレフィン開環(共)重合体、環状オレフィン開環(共)重合体の水素化物、及びこれらの(共)重合体のグラフト変性物などが挙げられる。ここで、エチレンと環状オレフィンとのランダム共重合体の場合には、エチレン以外のα−オレフィンを含むものや、第3成分としてブタジエン、イソプレンなどを含有するものであってもよい。これらは、一種のみを単独で、又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0020】
前記アミド系樹脂としては、まず、脂肪族ポリアミド重合体として、環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重縮合物、ジカルボン酸とジアミンとの重縮合物などが挙げられる。具体的には、6ナイロンと称されるε−カプロラクタムの単独重合体や66ナイロンと称されるポリヘキサメチレンアジパミド、あるいは、これらの共重合体である6−66ナイロン等が挙げられる。また、芳香族ポリアミド重合体として、キシリレンジアミンと炭素数が6以上12以下のα,ω脂肪族ジカルボン酸とからなるポリアミド構成単位を分子鎖中に70モル%以上含有している樹脂等が使用できる。具体的には、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンピメラミド、ポリメタキシリレンアゼラミド、ポリパラキシリレンアゼラミド、ポリパラキシリレンデカナミドなどの単独重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピメラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンセパカミド共重合体などの共重合体が挙げられる。これらは、一種のみを単独で、2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物としては、エチレン含有率が29%以上好ましくは32%以上であり、かつ47モル%以下、好ましくは44モル%以下であり、またケン化度が90%以上、好ましくは95%以上のものが好適に用いられる。エチレン含有量とケン化度が上記範囲のグレードを選択することにより、フィルムのガスバリアー性や力学強度等を良好なものとすることができる。これらは、一種のみを単独で、2種以上を混合して使用してもよい。
【0022】
前記エステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンイソフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合樹脂、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を全グリコール単量体単位中に15モル%以上50モル%以下含有する低結晶性あるいは非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン/ネオペンチルテレフタレート共重合樹脂、ポリ乳酸系樹脂に代表される脂肪族ポリエステル樹脂類などが挙げられる。
【0023】
また、前記エステル系樹脂にハードセグメントとして高融点高結晶性の芳香族ポリエステル、ソフトセグメントとして非晶性ポリエステルや非晶性ポリエーテルなどを有する熱可塑性ポリエステル系エラストマーも適宜混合してもかまわない。これらのエラストマーは、一種のみを単独で、又は2種以上を適宜混合して使用してもよい。
【0024】
前記スチレン系樹脂としては、汎用ポリスチレン(GPPS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸エステルからなるスチレン系共重合体の連続相に分散粒子としてゴム状弾性体を1質量%以上20質量%以下含有した樹脂などが挙げられる。これらは、一種のみを単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
表面樹脂層(A)は、多層フィルムにガスバリアー性、耐ピンホール性などの機能を付与するためには、表面樹脂層(A)を2層以上の層構成とし、かつエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を主成分とする層及び/又はアミド系樹脂等を主成分とする層を少なくとも1層有することが好ましい。但し、表面樹脂層(A)を多層構成とした場合には、多層を構成する各樹脂層間の層間剥離強度は、粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)との間の層間剥離強度よりも大きくなるような接着性樹脂を適宜選択し使用することも重要である。
【0026】
ここで、前記接着性樹脂としては、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などのエチレン系樹脂や、プロピレン単独重合体、及びプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体などのプロピレン系樹脂に、アクリル酸、あるいは、メタアクリル酸などの一塩基性不飽和脂肪酸、又はメチルアクリレート、メチルメタアクリレート、若しくはグリシジルメタアクリレートなどの一塩基性不飽和脂肪酸のエステル化合物、又はマレイン酸、フマル酸若しくはイタコン酸などの二塩基性脂肪酸の無水物などを化学的に結合させたオレフィン系接着性樹脂が好適に用いられる。このような接着性樹脂の具体例としては、三井化学(株)製の商品名「アドマー」や三菱化学(株)製の商品名「モディック」等を例示することができる。
【0027】
表面樹脂層(A)には、本発明の主旨を損なわない範囲でその他の成分を適宜添加しても構わない。具体的には、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤等の成分が挙げられる。表面樹脂層(A)が多層構成である場合には、特定の層にのみ添加しても、あるいは、全ての層に添加してもかまわない。
【0028】
次に、本発明の多層フィルムの粘着樹脂層(B)について説明する。
粘着樹脂層(B)は、動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定される損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が−35℃以上のスチレン系熱可塑性エラストマー(b)を主成分として含有してなる樹脂層であることが重要である。ここで、前記損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が−35℃以上にあれば、剥離時に露出した粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)を手や指による加圧接着のみで実用性のある再封止性が発現するため好ましい。この再封止性には、常温での粘弾性特性、特に、損失正接(tanδ)の値も影響しているものと推察され、常温での損失正接(tanδ)の値が0.1以上(上限値は、通常、0.6程度)であることがさらに好ましい。また、スチレン系熱可塑性エラストマー(b)の損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度の上限値は、エラストマーとしての特性から、通常、10℃以下である。さらに、本発明の多層フィルムは、冷蔵庫に代表される冷蔵設備などの低温での環境下でも使用されることがあるため、これらのことを考慮すると、損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度の好ましい範囲は、−30℃以上、より好ましくは−25℃以上であり、5℃以下、より好ましくは0℃以下の範囲である。
【0029】
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(b)としては、スチレン、あるいはα−メチルスチレンなどのスチレン同族体と共役ジエンとの共重合体又はその水素添加誘導体であることが好ましい。ここで、共役ジエン部分を構成する共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられ、これらは共重合体中に単独又は2種以上が混合された状態で含まれていてもよい。但し、この共役ジエン部分のビニル結合を主とした二重結合が残った場合の熱安定性や耐候性は極めて悪いので、これを改良するため、二重結合の80%以上、好ましくは95%以上に水素を添加したものを用いることが好ましい。
【0030】
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(b)の損失正接(tanδ)のピーク値は、主に、スチレン含有量と共役ジエン部分のビニル結合量(例えば、ブタジエンの場合は1,2結合、イソプレンの場合は1,2結合と3,4結合の結合量)に依存する。本発明においては、スチレン含有量が1質量%以上、好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、25質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下であり、共役ジエン部分のビニル結合量が40モル%以上、好ましくは50モル%以上であるスチレン系熱可塑性エラストマーが好適に用いられる。
このようなスチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、(株)クラレ製の商品名「ハイブラー7311」、旭化成ケミカルズ(株)製の商品名「タフテックH1221」、JSR(株)製の商品名「ダイナロン1320P」等を例示することができる。
【0031】
前記粘着樹脂層(B)には、本発明の主旨を損なわない範囲でその他の樹脂や成分を適宜添加しても構わない。具体的には、低結晶性あるいは非晶性のオレフィン系樹脂、軟化剤、オイル(鉱物油)、安定剤(酸化防止剤等)、流動パラフィン等が挙げられる。
【0032】
本発明の多層フィルムの粘着樹脂層(B)には、シクロペンタジエン又はその二量体からの脂環式石油樹脂やC9成分からの芳香族石油樹脂といった石油系樹脂、β−ピネンからのテルペン樹脂やテルペン−フェノール樹脂といったテルペン系樹脂、ガムロジン、ウッドロジンなどのロジン樹脂、グリセリンやペンタエリスリトールで変性したエステル化ロジン樹脂といったロジン系樹脂などの粘着付与樹脂を多量に混合しない方が好ましい。これは、通常、共押出多層フィルムメーカーの押出設備は、単軸押出機を採用している場合が多いため、現行の共押出工程にて多層フィルムを製膜する場合、粘着樹脂層の樹脂組成物として粘着付与樹脂を多量に含有する樹脂組成物を採用すると、押出量や厚み精度、あるいは、外観などの製膜の安定性を確保するために、あらかじめニ軸押出機等の混練装置で均一にコンパウンドする前工程を追加するか、該粘着樹脂層の押出設備としてニ軸押出機等を導入するなどの新たな設備投資が必要となるためである。また、粘着付与樹脂を多量に含有する粘着樹脂層の初期剥離強度は、経時変化が大きく、さらに、食品包装用として使用する場合、粘着付与樹脂の多量の混合は、油脂性食品の疑似溶媒であるn−ヘプタンを用いた溶出試験において、その抽出量が増加する傾向にあり、食品衛生面からはできるだけ混合しない方が好ましいと考えられる。
【0033】
次に、本発明のフィルムのヒートシール樹脂層(C)について説明する。
ヒートシール樹脂層(C)は、熱可塑性樹脂(c)を主成分として構成されるヒートシール可能な樹脂層である。ヒートシール樹脂層(C)は、被シール体のヒートシール部でヒートシールさせ、次いで前記ヒートシール部から多層フィルムを剥離するときに、粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)の間の層間剥離強度が、表面樹脂層(A)と粘着樹脂層(B)の間の層間剥離強度よりも小さくなるような層構成であれば特に制限されるものではなく、所望により単層構成の樹脂層であっても、多層構成の樹脂層であってもよい。
【0034】
ヒートシール樹脂層(C)の主成分として含有される熱可塑性樹脂(c)は、本発明のフィルムを包装体の蓋材や、深絞り成形加工して底材として用いる場合、被シール体である底材や蓋材のシール面の材質や表面樹脂層(A)と粘着樹脂層(B)に用いられる樹脂の種類を考慮して適切なヒートシール強度となるような樹脂を適宜選択し使用することができる。具体的に熱可塑性樹脂(c)としては、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(b)を主成分とする粘着樹脂層(B)との易開封性と再封性とのバランス、成型加工性及び透明性などを考慮すると、オレフィン系樹脂(エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂等)、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。
【0035】
本発明において、ヒートシール樹脂層(C)で好適に用いられる熱可塑性樹脂(c)としては、粘着樹脂層(B)との層間剥離の際に、外力によって粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)の層間剥離面の荒れや各層の凹凸などを少なく抑えられ、易開封性と開封−再封を繰り返した場合の再封性が良好であり、工業的に安定し、かつ比較的安価に入手できるエステル系樹脂やアミド系樹脂を用いることが好ましい。中でも成形加工性や透明性などに優れ、わずかな衝撃では層間剥離し、あるいは開封してしまうことがなく、比較的低温で適切なヒートシール強度が発現する1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を全グリコール単量体単位中に15モル%以上50モル%以下含有する低結晶性あるいは非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂や、テレフタル酸やイソフタル酸などのジカルボン酸類とヘキサメチレンジアミンやイソフォロンジアミンなどのジアミン類が反応することで得られる低結晶性あるいは非晶性ポリアミド樹脂などを好適に用いることができる。
【0036】
ここで、非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂としては、例えば、イーストマンケミカル(株)製の商品名「EASTAR PETG Copolyester6763」やSKC(株)製の商品名「SkyGreen S2008」等を例示できる。
【0037】
また、非晶性ポリアミドとしては、例えば、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製の商品名「ノバミッド X21」や三井デュポンポリケミカル(株)製の商品名「シーラーPA3426」等を例示できる。
【0038】
さらにヒートシール樹脂層(C)には、本発明の主旨を損なわない範囲でその他の成分を適宜添加しても構わない。具体的には、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0039】
本発明の多層フィルムは、該多層フィルムのヒートシール樹脂層(C)を被シール体のヒートシール部でヒートシールさせ、次いでヒートシール部から多層フィルムを剥離するときに、粘着樹脂層(B)の露出が、前記ヒートシール部において、前記ヒートシール樹脂層(C)の前記多層フィルムからの破断と、前記粘着樹脂層(B)と前記ヒートシール樹脂層(C)との層間剥離と、前記ヒートシール樹脂層(C)の被シール体側への移行により行われることから、各々の層に選定される樹脂の組み合わせとしては、粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)の間の層間剥離強度が、表面樹脂層(A)と粘着樹脂層(B)の間の層間剥離強度よりも小さくなるような構成にする必要がある。同時に、わずかな衝撃などで容易に層間が剥離し、あるいは開封してしまうことがないよう、包装体としての機能が維持できる程度の層間剥離強度を確保していることも重要である。
【0040】
これらの観点から粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)に選定される樹脂の組み合わせとしては、層間剥離強度(初期剥離強度)が1N/15mm幅以上20N/15mm幅以下の範囲となるように選定することが好ましい。ここで、前記層間剥離強度が1N/15mm幅以上であれば、わずかな衝撃により包装体が容易に開封してしまうなどの不具合が発生しにくく、また20N/15mm幅以下であれば、包装体を手で容易に開封できる特性である易開封性が良好であるため好ましい。
【0041】
本発明においては、粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)との層間剥離強度(初期剥離強度)のより好ましい範囲は、下限が3N/15mm幅以上であり、さらに好ましくは5N/15mm幅以上であり、かつ上限が15N/15mm幅以下、さらに好ましくは10N/15mm幅以下である。
【0042】
次に、開封後の再封性については、例えば、手や指による加圧圧着のみで開封と再封を計5回繰り返した後の粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)との層間剥離強度(再封剥離強度)が0.5N/15mm幅以上であることが好ましい。ここで、手や指による加圧圧着のみで再封剥離強度が0.5N/15mm幅以上、好ましくは0.75N/15mm幅以上、さらに好ましくは、1.0N/15mm幅以上(なお、再封剥離強度の上限は粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)との層間剥離強度以下であり、好ましくは10N/15mm幅以下、さらに好ましくは5.0N/15mm幅以下である。)であれば、実用的な再封性が得られるため好ましい。
【0043】
本発明において、このような条件を満たす表面樹脂層(A)と粘着樹脂層(B)及びヒートシール樹脂層(C)の好適な組み合わせとしては、上述したように表面樹脂層(A)としてオレフィン系樹脂、アミド系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、エステル系樹脂、及びスチレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を主成分として構成される層を配し、粘着樹脂層(B)として動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定される損失正接(tanδ)のピーク値が−35℃以上のスチレン系熱可塑性エラストマーを主成分として構成される層を配し、ヒートシール樹脂層(C)としては、エステル系樹脂又はアミド系樹脂を主成分として構成される層を配したものが挙げられる。
【0044】
次に、上述した各層の厚みについて説明する。
表面樹脂層(A)は、単層あるいは多層構成の樹脂層であり、通常、その厚みは1μm以上、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、かつ1000μm以下、好ましくは600μm以下、さらに好ましくは500μm以下である。ここで、表面樹脂層(A)の厚みが1μm以上であれば、ガスバリアー性や耐ピンホール性などの特性を付与する層や接着性樹脂層を配することが容易であり、またその厚みが1000μm以下であれば、ヒートシール時に熱がヒートシール樹脂層(C)に伝わりやすく被シール体のシール部と容易にヒートシールができるため好ましい。
【0045】
粘着樹脂層(B)は、通常、単層構成の樹脂層であり、その厚みは、特に制限されるものではないが、易開封性と再封性とのバランス、成形加工性、製造コストなどから、0.5μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上であって100μm以下、好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下が好適に採用される。
【0046】
ヒートシール樹脂層(C)の厚みは特に制限されるものではないが、1μm以上、好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、30μm以下、好ましくは25μm以下、さらに好ましくは15μm以下であることが望ましい。ここで、合計厚みが1μm以上であれば、ヒートシール時にヒートシール熱板による加圧等により変形し、これらの各層の機能が低下してしまうなどの不具合が防止できるため好ましく、またその厚みが30μm以下であれば、粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)を剥離させる際に、ヒートシール樹脂層(C)を容易に破断させることができ、粘着樹脂層(B)を再封可能な状態で露出することが可能になるため好ましい。
【0047】
次に、本発明の多層フィルムの製造方法について説明する。
本発明の多層フィルムの製造方法としては、特に制限されるものではないが、粘着樹脂層(B)の保護や生産性及び衛生性等に優れている共押出法を好適に用いることができる。すなわち、上述した表面樹脂層(A)、粘着樹脂層(B)及びヒートシール樹脂層(C)に用いる各樹脂組成物をそれぞれ別の押出機で加熱溶融させ、マルチマニホールド法やフィードブロック法等の公知の方法で溶融状態において(A)/(B)/(C)の順で積層した後、Tダイ・チルロール法やインフレーション法等により多層フィルムに成形することができる。ここで、印刷適性やラミネート適性を向上させるために、得られた多層フィルムの表面樹脂層(A)の最外層の表面に表面処理を施すことが好ましい。表面処理の方法としては、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理が挙げられるが、本発明においては、表面処理の効果や生産性及び製造コストの観点からコロナ処理が好適に用いられる。
【0048】
本発明の多層フィルムは、粘着樹脂層(B)が積層される面と反対側の表面樹脂層(A)上に、ドライラミネーション法や押出ラミネーション法などの公知の方法により、必要に応じて、接着性樹脂や接着剤などを介してラミネート基材を積層させ、ラミネートフィルムやラミネートシートとすることができる。ここで、ラミネート基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、2軸延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、無延伸ポリプロピレンシート、無延伸ポリエチレンテレフタレートシート、アルミニウム箔、紙、不織布等が挙げられる。本発明においては、ドライラミネーション法が好適に用いられ、その際に用いられる接着剤としては、ポリエステル−ポリウレタン系接着剤、ポリエーテル−ポリウレタン系接着剤等が例示できる。
【0049】
〔蓋材、底材及び包装体〕
本発明のフィルム自体、あるいは本発明のフィルムとラミネート基材とを積層したラミネートフィルムやラミネートシートは、それぞれ各種の包装体の蓋材や底材として用いることができる。例えば、該ラミネートフィルムを包装体(容器)の蓋材として使用した場合、この蓋材のヒートシール樹脂層(C)と、食品等の内容物が充填された包装体(容器)(被シール体)のヒートシール樹脂層とを重ね合わせてヒートシールすることにより、気密性や実用的な初期剥離強度及び再封機能を有する包装体(容器)とすることができる。この包装体(容器)は、開封後の剥離面に粘着樹脂層(B)が再封可能な状態で露出し、手や指による加圧圧着のみで再封が可能となる。また、各種の包装体(容器)の底材としては、深絞り成形などを行うことにより同様に再封機能を有する包装体(容器)を得ることが可能である。
【0050】
次に、本発明のフィルムを蓋材又は底材として用いた深絞り包装体における再封機能について説明する。
図1は、本発明のフィルムを蓋材として用いた深絞り包装体の部分断面図であり、図2は、図1で示す深絞り包装体において、蓋材の一部を底材から剥離した状態の包装体の部分断面図であり、図3は、図2で示す深絞り包装体において、蓋材と底材とを再封した状態を示す部分断面図である。また、図4は、本発明のフィルムを底材として用いた深絞り包装体の部分断面図であり、図5は、図4で示す深絞り包装体において、蓋材の一部を底材から剥離した状態の深絞り包装体の部分断面図であり、図6は、図5で示す深絞り包装体において、蓋材と底材とを再封した状態を示す部分断面図である。
【0051】
ここで、図1乃至図3における符号1は蓋材、符号2は底材(被シール体)、符号3は蓋材の表面樹脂層、符号4は蓋材の粘着樹脂層、符号5は蓋材のヒートシール樹脂層、符号6は底材の表面樹脂層、符号7は底材のヒートシール樹脂層、符号8はヒートシール部、符号9はタブ部、符号10は剥離時における粘着樹脂層4の露出部、符号11は剥離時におけるヒートシール樹脂層5の露出部である。
【0052】
また、図4乃至図6における符号41は底材、符号42は蓋材(被シール体)、符号43は底材の表面樹脂層、符号44は底材の粘着樹脂層、符号45は底材のヒートシール樹脂層、符号46は蓋材の表面樹脂層、符号47は蓋材のヒートシール樹脂層、符号48は蓋材のヒートシール部、符号49は蓋材のタブ部、符号50は剥離時における粘着樹脂層44の露出部、符号51は剥離時におけるヒートシール樹脂層45の露出部である。
【0053】
本発明のフィルムを深絞り包装体の蓋材として使用する場合、図1に示すように、蓋材1は、表面樹脂層3、粘着樹脂層4、及びヒートシール樹脂層5がこの順で構成される。蓋材1のヒートシール樹脂層5は、被シール体である底材2のヒートシール樹脂層7とヒートシールされている。つまり、蓋材1と底材2とは、ヒートシールによって形成されたヒートシール部8で接着されている。
【0054】
蓋材1に設けられたタブ部9を摘んで引っ張ると、図2に示すように、ヒートシール部8において、先ずタブ部9側のヒートシール樹脂層5が蓋材1から破断されるとともに、蓋材1における粘着樹脂層4とヒートシール樹脂層5との層間で剥離が開始される。粘着樹脂層4とヒートシール樹脂層5との剥離がタブ部9側と反対側のヒートシール部8に到達すると、蓋材1のヒートシール樹脂層5が破断される。破断された蓋材1のヒートシール樹脂層5は、被シート体である底材2側に移行し、粘着樹脂層4の露出部10とヒートシール樹脂層5の露出部11が形成される。
【0055】
再封する場合には、図3に示すように、剥離した蓋材1を底材2に被せて、表面樹脂層3を手や指で加圧圧着し、蓋材1の粘着樹脂層4の露出部10と、底材2へ移行した蓋材1のヒートシール樹脂層5の露出部11と重ね合わせることにより蓋材1と底材2とを再封することができる。
【0056】
一方、本発明のフィルムを深絞り包装体の底材として使用する場合、図4に示すように、底材41は、表面樹脂層43、粘着樹脂層44、及びヒートシール樹脂層45がこの順で積層されて構成されている。図1と同様にヒートシールによって形成されたヒートシール部48により、蓋材42と底材41とは接着している。
【0057】
蓋材42に設けたタブ部49をつまんで引っ張ると、図5に示すように、ヒートシール部48において、先ずタブ部49側のヒートシール樹脂層45が底材41から破断されるとともに、底材41における粘着樹脂層44とヒートシール樹脂層45との層間で剥離が開始される。粘着樹脂層44とヒートシール樹脂層45との剥離がタブ部49側と反対側のヒートシール部48に到達すると、底材41のヒートシール樹脂層45が破断される。破断された底材41のヒートシール樹脂層45は、被シート体である蓋材42に移行し、粘着樹脂層44の露出部50とヒートシール樹脂層45の露出部51とが形成される。
【0058】
そして、図6に示すように、再封する場合には、剥離した蓋材42を底材41に被せて、蓋材の表面樹脂層46を手や指で加圧圧着することにより、底材41の粘着樹脂層44の露出部50と蓋材42へ移行した底材41のヒートシール樹脂層45の露出部51とを重ね合わせることにより蓋材42と底材41とを再封することができる。
【0059】
本発明のフィルムによって構成される包装体は、各種容器の蓋材や底材等として用いることができ、その用途が特に限定されるものではないが、例えば、インスタントラーメン、スナック菓子、チョコレート菓子、スライスハム等の畜肉加工品、ウェットティシュ、汗取り紙、芳香剤、使い捨ておしめ等のように数個単位で包装した容器として用いたり、その都度開封して使用する化粧品や生理用品、シップ薬、救急絆創膏、のど飴等の医薬品を包装した容器として用いることができる。特に、開封後に残存する内容物が酸化劣化、吸湿や乾燥などの変敗の影響を受けやすいものを収納するための包装体として好適に使用することができる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例で本発明をさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値及び評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向と呼ぶ。
【0061】
(1)損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度
試料を縦4mm、横60mmに切り出し、粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティ計測(株)製)を用い、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、昇温速度3℃/分、チャック間25mmで横方向について、−100℃から測定し、得られたデータから損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度を求めた。
【0062】
(2)初期剥離強度
得られた深絞り包装体の底材と蓋材のヒートシール部を15mm幅の短冊状に切り出し試験片とした。この試験片を万能試験機(インテスコ(株)製)を用い、温度23℃、引張速度200mm/minの条件で180度の角度で引っ張った場合の、底材と蓋材の剥離する時の剥離強度を初期剥離強度(N/15mm幅)として測定した。
【0063】
(3)膜残り状況
得られた深絞り包装体の底材と蓋材のヒートシール部から手で剥離する場合の状況を下記の基準で目視により評価した。
○:樹脂層がきれいに破断し、膜残りやケバ立ちがない場合
×:樹脂層が破断できなかったり、破断した場合でも膜残りやケバ立ちがあったりする場合
【0064】
(4)再封剥離強度
得られた深絞り包装体のヒートシール部から開封後に指で再度蓋材と容器を加圧圧着により再封した後、開封と再封を計5回繰り返した後の剥離強度(再封剥離強度)を(2)初期剥離強度と同様の条件で測定した。また、下記の基準も併記した。
○:再封剥離強度が0.5N/15mm幅以上の場合
×:再封剥離強度が0.5N/15mm幅未満の場合
【0065】
(実施例1)
[蓋材]
表面樹脂層(A)を以下の3種類の樹脂を用いて3層構成とした。
A1:エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物((株)クラレ製、商品名「エバールE105」、以下「EVOH」と略称する。)
A2:6−66ナイロン樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製、商品名「ノバミッド2030」、以下「6−66Ny」と略称する。)
A3:オレフィン系接着性樹脂(三井化学(株)製、商品名「アドマーNF558」、以下「AD1」と略称する。)
【0066】
粘着樹脂層(B)は、スチレン系熱可塑性エラストマー((株)クラレ製、商品名「ハイブラー7311」、スチレン含量:12質量%、損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度:−18.6℃、20℃でのtanδ値:0.19、以下「TPS1」と略称する。)、ヒートシール樹脂層(C)は、非晶性ポリエステル樹脂(イーストマンケミカル(株)製、商品名「EASTAR PETG Copolyester6763」、以下「PETG」と略称する。)に滑剤としてエルカ酸アミドを1000ppm、アンチブロッキング剤として天然シリカを2000ppm添加混合した樹脂構成でそれぞれ構成した。
【0067】
上記の樹脂を(A)層用押出機(3層とも口径50mmの単軸押出機)、(B)層用押出機(口径50mmの単軸押出機)、(C)層用押出機(口径50mmの単軸押出機)を有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置の各押出機にそれぞれ供給して、押出設定温度190〜230℃ 、Tダイ設定温度235℃の条件で共押出し、(A1)/(A2)/(A3)/(B)/(C)の5層構成で、各層の平均厚さが各々10μm/20μm/10μm/20μm/5μm、全層の厚さが65μm の多層フィルム(X1)を得た。
【0068】
次いで、得られた多層フィルム(X1)の表面樹脂層(A)の最外層側に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材(ユニチカ(株)製、商品名「エンブレット PET」、厚さ16μm)をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み81μmのラミネートフィルム(X1LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
【0069】
なお、ドライラミネーション用の接着剤としては2液硬化型接着剤(主剤として大日本インキ(株)製、商品名「ディックドライLX−75A」、硬化剤として大日本インキ(株)製、商品名「ディックドライKW−40」を使用した。
【0070】
[底材]
最外層側から、EVOH、6−66Ny、オレフィン系接着性樹脂(三井化学(株)製、商品名「アドマーSF715」、以下「AD2」と略称する。)、PETGに滑剤としてエルカ酸アミドを1000ppm、アンチブロッキング剤として天然シリカを2000ppm添加混合した樹脂組成物(ヒートシール樹脂層)の順に積層させ、各層の平均厚さが各々10μm/20μm/10μm/30μm、全層の厚さが70μmの多層フィルム(Y1)を共押出法によって得た。この多層フィルム(Y1)の最外層側(EVOH面)に、総厚みが250μmの無延伸ポリエチレンテレフタレートシート(三菱化学(株)製、商品名「ノバクリアー」)をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み320μmのラミネートシート(Y1LS)を得、包装体の底材に使用した。
なお、ドライラミネーション用接着剤としてはラミネートフィルム(X1LF)を作製する場合と同様のグレードを使用した。
【0071】
[深絞り包装体]
深絞り包装機(ムルチバック社製、型番:R−530)を使用して、上記の底材(Y1LS)を無延伸ポリエチレンテレフタレートシート層が外層になるように深絞り成形することにより、縦130mm、横170mm、フランジ部幅6mmの長方形の形状の容器に加工し、ヒートシール部において、深絞りされた底材に設けられたフランジ部分に上記の蓋材(X1LF)を、ヒートシール温度:140℃、シール時間:2秒、シール圧力:4kg/cmの条件でヒートシールすることにより深絞り包装体を作製した。
この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した。
【0072】
(実施例2)
[蓋材]
実施例1において、粘着樹脂層(B)に使用する樹脂を、実施例1で使用したTPS1 80質量部と非晶性ポリオレフィン樹脂(住友化学(株)製、商品名「タフセレンT3714」、以下「非晶性PO」と略称する。)20質量部とを混合した樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にして、(A1)/(A2)/(A3)/(B)/(C)の5層構成で、各層の平均厚さが各々10μm/20μm/10μm/20μm/5μm、全層の厚さが65μmの多層フィルム(X2)を得た。次いで、実施例1と同様にして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み81μmのラミネートフィルム(X2LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
【0073】
[底材]
実施例1と同様に、ラミネートシート(Y1LS)を包装体の底材に使用した。
【0074】
[深絞り包装体]
実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した。
(実施例3)
[蓋材]
実施例1において、ヒートシール樹脂層(C)に使用する樹脂を、非晶性ポリアミド樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名「ノバミッド X21」以下「非晶性Ny」と略称する。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、(A1)/(A2)/(A3)/(B)/(C)の5層構成で、各層の平均厚さが各々10μm/20μm/10μm/20μm/5μm、全層の厚さが65μmの多層フィルム(X3)を得た。次いで、実施例1と同様にして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み81μmのラミネートフィルム(X3LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
【0075】
[底材]
最外層側から、EVOH、6−66Ny、AD1、非晶性Nyに滑剤としてエルカ酸アミドを1000ppm、アンチブロッキング剤として天然シリカを2000ppm添加混合した樹脂組成物(ヒートシール樹脂層)の順に積層させ、各層の平均厚さが各々10μm/20μm/10μm/30μm、全層の厚さが70μmの多層フィルム(Y2)を共押出法によって得た。この多層フィルム(Y2)の最外層側(EVOH面)に、総厚みが250μmの無延伸ポリエチレンテレフタレートシート(三菱化学(株)製、商品名「ノバクリアー」)をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み320μmのラミネートシート(Y2LS)を得、包装体の底材に使用した。
【0076】
[深絞り包装体]
実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した。
【0077】
(実施例4)
[蓋材]
実施例1で作成した多層フィルム(Y1)の最外層側に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材(ユニチカ(株)製、商品名「エンブレット PET」、厚さ16μm)をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み86μmのラミネートフィルム(Y1LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
【0078】
[底材]
実施例1で作成した多層フィルム(X1)の最外層側に総厚みが250μmの無延伸ポリエチレンテレフタレートシート(三菱化学(株)製、商品名「ノバクリアー」)をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み315μmのラミネートシート(X1LS)を得、包装体の底材に使用した。
【0079】
[深絞り包装体]
実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した。
【0080】
(実施例5)
[蓋材]
実施例4と同様に、ラミネートシート(Y1LF)を包装体の蓋材に使用した。
【0081】
[底材]
実施例2で作成した多層フィルム(X2)の最外層側に総厚みが250μmの無延伸ポリエチレンテレフタレートシート(三菱化学(株)製、商品名「ノバクリアー」)をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み315μmのラミネートシート(X2LS)を得、包装体の底材に使用した。
【0082】
[深絞り包装体]
実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した。
【0083】
(実施例6)
[蓋材]
実施例3で作成した多層フィルム(Y2)の最外層側に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材(ユニチカ(株)製、商品名「エンブレット PET」、厚さ16μm)をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み86μmのラミネートフィルム(Y2LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
【0084】
[底材]
実施例3で作成した多層フィルム(X3)の最外層側に総厚みが250μmの無延伸ポリエチレンテレフタレートシート(三菱化学(株)製、商品名「ノバクリアー」)をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み315μmのラミネートシート(X3LS)を得、包装体の底材に使用した。
【0085】
[深絞り包装体]
実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した
【0086】
(比較例1)
[蓋材]
実施例1において、粘着樹脂層(B)に使用する樹脂を、実施例1で使用したTPS1 60質量部と粘着付与樹脂(テルペン樹脂、ヤスハラケミカル(株)製、商品名「YSレジンPX1150」)40質量部を混合した樹脂構成に変更した以外は、実施例1と同様にして、(A1)/(A2)/(A3)/(B)/(C)の5層構成で、各層の平均厚さが各々10μm/20μm/10μm/20μm/5μm、全層の厚さが65μmの多層フィルム(X4)を得た。次いで、実施例1と同様にして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み81μmのラミネートフィルム(X4LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
【0087】
[底材]
実施例1と同様に、ラミネートシート(Y1LS)を包装体の底材に使用した。
【0088】
[深絞り包装体]
実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した
【0089】
(比較例2)
[蓋材]
実施例1において、粘着樹脂層(B)に使用する樹脂を、TPS1からスチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「タフテックH1052」、スチレン含量:20質量%、損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度:−42.2℃、20℃でのtanδ値:0.06、以下、TPS2と略称する)に変更した以外は、実施例1と同様にして、(A1)/(A2)/(A3)/(B)/(C)の5層構成で、各層の平均厚さが各々10μm/20μm/10μm/20μm/5μm、全層の厚さが65μmの多層フィルム(X5)を得た。次いで、実施例1と同様にして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み81μmのラミネートフィルム(X5LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
【0090】
[底材]
実施例1と同様に、ラミネートシート(Y1LS)を包装体の底材に使用した。
【0091】
[深絞り包装体]
実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した
【0092】
(参考例)
[蓋材]
実施例1において、(A1)/(A2)/(A3)/(B)/(C)の5層構成で、各層の平均厚さを各々10μm/20μm/10μm/20μm/40μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、全層の厚さが100μm の多層フィルム(X6)を得た。次いで、実施例1と同様にして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み116μmのラミネートフィルム(X6LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
【0093】
[底材]
実施例1と同様に、ラミネートシート(Y1LS)を包装体の底材に使用した。
【0094】
[深絞り包装体]
実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した。
【0095】
【表1】

【0096】
表1より、本発明で規定する蓋材又は底材で形成された再封可能な包装体(深絞り包装体)は、粘着樹脂露出状況、初期剥離強度、膜残り状況及び再封剥離強度のすべての特性に問題がなく、実用的であることが確認できた(実施例1〜6)。
これに対して、粘着樹脂層に多量の粘着付与樹脂を混合した場合には、単軸押出機では均一に混合ができず、安定した製膜が困難であったり(比較例1)、本発明で規定する範囲外の粘弾性特性を有するスチレン系熱可塑性エラストマーを粘着樹脂層に用いた場合には、再封剥離強度が不十分であったりした(比較例2)。
なお、ヒートシール樹脂層の厚みが厚くなると(30μmを超える場合)、ヒートシール部から手で剥離する場合に膜残りが生じた(参考例)。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、食品衛生面に優れ、良好な易開封性と、手や指による加圧圧着のみで良好な再封性とを併有するため、食品、医薬品、化粧品等の包装体用の蓋材として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の多層フィルムを蓋材に用いた包装体の部分断面図である。
【図2】図1で示す包装体において、蓋材の一部を容器から剥離した状態の包装体の部分断面図である。
【図3】図1で示す包装体において、蓋材と底材とを再封した状態を示す部分断面図である。
【図4】本発明の多層フィルムを底材に用いた包装体の部分断面図である。
【図5】図1で示す包装体において、蓋材の一部を容器から剥離した状態の包装体の部分断面図である。
【図6】図1で示す包装体において、蓋材と底材とを再封した状態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0099】
1 蓋材
2 底材
3 蓋材の表面樹脂層
4 蓋材の粘着樹脂層
5 蓋材のヒートシール樹脂層
6 底材の表面樹脂層
7 底材のヒートシール樹脂層
8 ヒートシール部
9 蓋材のタブ部
10 剥離時における粘着樹脂層の露出部
11 剥離時におけるヒートシール樹脂層の露出部
41 底材
42 蓋材
43 底材の表面樹脂層
44 底材の粘着樹脂層
45 底材のヒートシール樹脂層
46 蓋材の表面樹脂層
47 蓋材のヒートシール樹脂層
48 ヒートシール部
49 蓋材のタブ部
50 剥離時における粘着樹脂層の露出部
51 剥離時におけるヒートシール樹脂層の露出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面樹脂層(A)、粘着樹脂層(B)、及びヒートシール樹脂層(C)が、(A)/(B)/(C)の順に積層されている多層フィルムであって、前記粘着樹脂層(B)が動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定される損失正接(tanδ)のピーク値が−35℃以上のスチレン系熱可塑性エラストマー(b)を主成分として構成される層であり、前記ヒートシール樹脂層(C)を被シール体のヒートシール部でヒートシールさせ、次いで該ヒートシール部から前記多層フィルムを剥離したときに、前記ヒートシール部において、前記粘着樹脂層(B)と前記ヒートシール樹脂層(C)とが層間剥離し、かつ前記粘着樹脂層(B)が前記ヒートシール樹脂層(C)と再封可能な状態で露出することを特徴とする再封機能付き多層フィルム。
【請求項2】
前記粘着樹脂層(B)の露出が、前記ヒートシール部において、前記ヒートシール樹脂層(C)の前記多層フィルムからの破断と、前記粘着樹脂層(B)と前記ヒートシール樹脂層(C)との層間剥離と、前記ヒートシール樹脂層(C)の被シール体側への移行とにより行われることを特徴とする請求項1に記載の再封機能付き多層フィルム。
【請求項3】
前記表面樹脂層(A)が、オレフィン系樹脂、アミド系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エステル系樹脂、及びスチレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を主成分として構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の再封機能付き多層フィルム。
【請求項4】
前記ヒートシール樹脂層(C)が、エステル系樹脂又はアミド系樹脂を主成分として構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の再封機能付き多層フィルム。
【請求項5】
前記表面樹脂層(A)が2層以上で構成され、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を主成分とする層及び/又はアミド系樹脂を主成分とする層を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の再封機能付き多層フィルム。
【請求項6】
前記ヒートシール樹脂層(C)の厚みが1μm以上30μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の再封機能付き多層フィルム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の再封機能付き多層フィルムを用いたことを特徴とする容器の蓋材。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の再封機能付き多層フィルムを用いたことを特徴とする容器の底材。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれかに記載の再封機能付き多層フィルムを用いたことを特徴とする再封可能な包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−241477(P2009−241477A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92277(P2008−92277)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】