説明

再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルム

【課題】再帰反射シートとして使用した際に必要となる耐候性と視認性とを備え、透明性、色相も満足する再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】再帰反射シートの表皮材として用いられ、アクリル樹脂とアンスラキノン系赤色顔料とアンスラキノン系黄色染料とを含有する着色アクリル樹脂フィルムであって、
前記アンスラキノン系赤色顔料はアクリル樹脂100質量部に対して0.5〜1質量部配合され、前記アンスラキノン系赤色顔料と前記アンスラキノン系黄色染料との質量比(アンスラキノン系赤色顔料/アンスラキノン系黄色染料)は1/5〜10/1であり、JIS K7361−1に規定する方法で測定されたときの全光線透過率が17%以上である再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、看板、道路標識等に使用される再帰反射シートの保護や、再帰反射シートの基材に意匠性を付与する目的で設けられ、透明で、かつ着色された再帰反射シート表皮材用のアクリル樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
入射した光を光源方向に向けて反射させる再帰反射シートは、従来からよく知られており、その再帰反射性および夜間における優れた視認性を利用して種々の分野で使用されている。例えば、再帰反射シートを用いた道路標識、工事標識等は、夜間等において、走行する車両等のヘッドライト等の光源からの光を光源方向、すなわち走行する車両の方向へ向けて反射させ、標識の視認者である車両の運転者に対し優れた視認性を提供し、明確な情報伝達を可能にするという優れた特性を有している。このような道路標識、工事標識等として用いられる再帰反射シートは、視認性を良好にするために着色されており、さらに、着色された再帰反射シートには、直接文字や模様がスクリーン印刷することにより形成されている。
【0003】
着色された再帰反射シートの色の種類としては、白、黄、赤、黄赤、緑、青があり、各色について色度座標の範囲や輝度率(β)の下限値、YI値などがJIS規格、ASTM規格、DIN規格等に定められている。
上述のような着色された再帰反射シートを得る方法としては、(i)再帰反射シートの表層に印刷によって着色する方法;(ii)フィルムを製造するまでの工程の何れかで着色剤を練り込み、得られた着色フィルムを保護層として再帰反射シートの基材に積層する方法等が考えられる。これら方法のうち、再帰反射シートの反射性能および製造コストを考慮すると、(ii)の方法が好ましい。
【0004】
(ii)の方法に使用される再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムとしては、特許文献1に、XYZ表色系での色度座標(x,y)が特定の範囲にある着色アクリル樹脂フィルムが開示されている。
【特許文献1】特開2005−154720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この着色アクリル樹脂フィルムは、XYZ表色系での色度座標(x,y)を特定の範囲に維持しつつ、視認性をよくしようとすると、耐候性が悪くなるという問題がある。また、耐候性をよくするために着色剤の種類を変えると、視認性が低下してしまうという問題がある。
【0006】
よって、本発明の目的は、再帰反射シートとして使用した際に必要となる耐候性と視認性とを備え、透明性、色相も満足する再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムは、再帰反射シートの表皮材として用いられ、アクリル樹脂とアンスラキノン系赤色顔料とアンスラキノン系黄色染料とを含有する着色アクリル樹脂フィルムであって、前記アンスラキノン系赤色顔料はアクリル樹脂100質量部に対して0.5〜1質量部配合され、前記アンスラキノン系赤色顔料と前記アンスラキノン系黄色染料との質量比(アンスラキノン系赤色顔料/アンスラキノン系黄色染料)は1/5〜10/1であり、JIS K7361−1に規定する方法で測定されたときの全光線透過率が17%以上であることを特徴とする。
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムは、アンスラキノン系黄色顔料をさらに含有することが好ましい。
また、本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムは、当該再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムと、マンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、該再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルム側をJIS Z8722に規定する照明および受光の幾何学的条件a(45゜照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定したY値が、2〜12の範囲であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムによれば、再帰反射シートとして使用した際に必要となる耐候性と視認性とを備え、透明性、色相も満足する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
[再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルム]
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルム(以下、単に「着色アクリル樹脂フィルム」とも記す。)は、アクリル樹脂とアンスラキノン系赤色顔料とアンスラキノン系黄色染料とを含有する着色アクリル樹脂フィルムであって、該着色アクリル樹脂フィルムを構成するアクリル樹脂100質量部に対して、アンスラキノン系赤色顔料は0.5〜1質量部、好ましくは0.6〜0.9質量部配合され、アンスラキノン系赤色顔料とアンスラキノン系黄色染料との質量比(アンスラキノン系赤色顔料/アンスラキノン系黄色染料)は1/5〜10/1、好ましくは1/4〜5/1、より好ましくは1/3〜3/1の範囲である。
【0010】
着色アクリル樹脂フィルムにおけるアンスラキノン系赤色顔料とアンスラキノン系黄色染料の含有量が、上記範囲を満足することにより、該着色アクリル樹脂フィルムを再帰反射シートの表皮材として用いた場合、その再帰反射シートの色相は、JIS規格、ASTM規格等を満足し、特にDIN規格のXYZ表色系での色度座標(x,y)が、(0.610,0.340)、(0.638,0.312)、(0.690,0.310)および(0.660,0.340)の範囲を満足して視認性が良好となり、再帰反射シートとして必要な反射性能、透明性を満足し、かつ、屋外で曝露した際に太陽光等での色抜けによる変色が小さくなり耐候性も良好となる。
【0011】
ここで、「(0.610,0.340)、(0.638,0.312)、(0.690,0.310)および(0.660,0.340)の範囲」とは、図1に示すように、色度座標(x,y)における(0.610,0.340)、(0.638,0.312)、(0.690,0.310)、(0.660,0.340)の各座標を順に直線で結び、さらに最後の(0.660,0.340)と最初の(0.610,0.340)の各座標を直線で結ぶことによって囲まれる領域を意味する。
【0012】
着色アクリル樹脂フィルムは、さらにアンスラキノン系黄色顔料を含有することが好ましい。アンスラキノン系黄色顔料を含有することにより、得られる着色アクリル樹脂フィルムの色相、透明性がより良好になり、再帰反射シートの表皮材として使用したときの反射性能、視認性がより良好になる傾向にある。好ましいアンスラキノン系黄色顔料の含有量は、アクリル樹脂100質量部に対して0〜1質量部である。
【0013】
また、本発明の着色アクリル樹脂フィルムは、JIS K7361−1に規定する方法で測定したときの全光線透過率が17%以上であり、好ましくは18%以上である。全光線透過率がこのような範囲であると、着色アクリル樹脂フィルムを再帰反射シートの表皮材として使用したときに反射性能、視認性が良好になる。
着色アクリル樹脂フィルムの全光線透過率をこのような範囲とするためには、アンスラキノン系赤色顔料の配合量、アンスラキノン系赤色顔料とアンスラキノン系黄色染料との質量比を上述の範囲とするとともに、使用するアクリル樹脂、アンスラキノン系赤色顔料、アンスラキノン系黄色染料の種類を後に例示するものなどの中から適宜選択し、組み合わせればよい。
【0014】
また、本発明の着色アクリル樹脂フィルムは、当該着色アクリル樹脂フィルムと、マンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、該着色アクリル樹脂フィルム側をJIS Z8722に規定する照明および受光の幾何学的条件a(45゜照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のY値が、2〜12の範囲であることが好ましい。Y値がこのような範囲であると、この着色アクリル樹脂フィルムを再帰反射シートの表皮材として用いた場合、再帰反射シートの色相は、JIS規格、ASTM規格、DIN規格をより満足しやすくなる傾向にあり、道路標識などに使用した場合、視認性が良好になる傾向にある。
着色アクリル樹脂フィルムのY値をこのような範囲とするためには、アンスラキノン系赤色顔料の配合量、アンスラキノン系赤色顔料とアンスラキノン系黄色染料との質量比を上述の範囲とするとともに、使用するアクリル樹脂、アンスラキノン系赤色顔料、アンスラキノン系黄色染料の種類を後に例示するものなどの中から適宜選択し、組み合わせればよい。
なお、マンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙としては、日本色研事業(株)の標準色カード230のねずみ色を用いることができる。
【0015】
<着色剤(顔料および染料)>
着色アクリル樹脂フィルムに使用されるアンスラキノン系赤色顔料としては、CI Pigment Red 83、CI Pigment Red 177、CI Pigment Red 216等が挙げられる。これらのうち、CI Pigment Red 177が特に好ましい。CI Pigment Red 177を含有する製品としては、大日精化工業(株)製「DYMIC MBR 151 レッド(アンスラキノン系赤色顔料の含有量:50質量%)」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「MICROLEN Red A3B−MC」として工業的に入手可能である。アンスラキノン系赤色顔料は、1種単独で含まれても、2種以上含まれてもよい。
【0016】
アンスラキノン系黄色染料としては、CI Solvent Yellow 163等が挙げられる。CI Solvent Yellow 163を含有する製品としては、大日精化工業(株)製「DYMIC MBR D−05 エロー(アンスラキノン系黄色染料の含有量:91質量%)」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「ORACET Yellow GHS」として工業的に入手可能である。アンスラキノン系黄色染料は、1種単独で含まれても、2種以上含まれてもよい。
【0017】
アンスラキノン系黄色顔料としては、例えば、CI Pigment Yellow 24、CI Pigment Yellow 99、CI Pigment Yellow 108、CI Pigment Yellow 123、CI Pigment Yellow 147、CI Pigment Yellow 199等が挙げられる。これらのうち、CI Pigment Yellow 199が特に好ましい。CI Pigment Yellow 199を含有する製品としては、大日精化工業(株)製「DYMIC MBR 421 エロー(アンスラキノン系黄色願料の含有量:50質量%)」として工業的に入手可能である。アンスラキノン系黄色顔料は、1種単独で含まれても、2種以上含まれてもよい。
【0018】
なお、以上の顔料や染料をアクリル樹脂に配合するにあたっては、これら顔料や染料を含有するものであれば、他の成分をも含有する混合物の形態で配合してもよい。例えば、アンスラキノン系赤色顔料をアクリル樹脂に配合する際に、アンスラキノン系赤色顔料を含む赤色以外の顔料混合物を用いるなどしてもよい。
【0019】
また、これらの顔料や染料は、バインダーとなる樹脂に顔料や染料を高濃度で配合した、いわゆる着色剤マスターバッチの形態、分散剤と顔料や染料とを混合し、機械的に微粉末状にしたドライカラー(分散性粉末着色剤)等の形態でも配合できる。
着色剤マスターバッチとしては、ペレット状、軟らかい板状のものなどがある。また、バインダーとなる樹脂としては、着色アクリル樹脂フィルムに用いられるアクリル樹脂と同種または類似した樹脂が好ましい。
ドライカラーに含まれる好ましい分散剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられ、1種以上を使用できる。
【0020】
また、着色アクリル樹脂フィルムには、補色の目的で、ペリレン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キノフタロン系、アゾ系、ジケトピロロピロール系、ジオキサン系、フタロシアニン系等の他の着色剤を耐候性、透明性等が低下しない範囲で添加してもよい。
【0021】
<アクリル樹脂>
本発明の着色アクリル樹脂フィルムは、アクリル樹脂を主成分とし、これに上述したように顔料、染料等を添加したアクリル樹脂組成物からなるフィルムである。アクリル樹脂を主成分として用いることによって、フィルムに耐候性等の優れた特性を付与できる。
【0022】
アクリル樹脂としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレートおよびブチルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を主原料とし、必要に応じて炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸エステル、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、アクリロニトリルメタクリロニトリル等を共重合成分として用いることによって得られる単一重合体または共重合体が挙げられる。また、特公昭59−36646号公報、特公昭62−19309号公報、特公昭63−20459号公報及び特開昭63−77963号公報に記載されているような重合体を用いてもよい。
【0023】
本発明で用いられる好ましいアクリル樹脂は、ゴム含有多段重合体(I)、(III)、(IV)と、必要に応じてこれに熱可塑性重合体(II)を組み合わせたアクリル樹脂であり、より好ましくは、ゴム含有多段重合体(I)と熱可塑性重合体(II)とを組み合わせるか、ゴム含有多段重合体(III)と熱可塑性重合体(II)とを組み合わせるか、ゴム含有多段重合体(IV)と熱可塑性重合体(II)とを組み合わせたアクリル樹脂、またはゴム含有多段重合体(III)のみ、若しくはゴム含有多段重合体(IV)のみからなるアクリル樹脂である。
ゴム含有多段重合体(I)または(III)または(IV)と熱可塑性重合体(II)とを組み合わせる場合には、前者が20〜90質量部で、後者が80〜10質量部であることが好ましい(ただし、(I)+(II)=100質量部である)。
再帰反射シートは、主に道路標識等として屋外で使用されるため、耐候性、耐衝撃性の良好な表皮材を用いることが好ましい。例えば耐衝撃性を付与する方法として、ゴム成分を含有させる方法等があるが、この場合、環境温度が変化することにより、表皮材の透明性が変化し、再帰反射シートとして重要な反射性能が低下したり、再帰反射シートの色相が変化したりすることがある。上述の好ましいアクリル樹脂を用いた着色アクリル樹脂フィルムは、耐候性、耐衝撃性が良好で、透明性の温度依存性が小さいため、再帰反射シートの表皮材として好適に用いることができる。
以下、上述した好ましい形態のアクリル樹脂について具体的に説明する。
【0024】
(ゴム含有多段重合体(I))
ゴム含有多段重合体(I)は、中心から弾性重合体(I−A)、第1中間重合体(I−B)、第2中間重合体(I−C)、硬質重合体(I−D)の順に配置されたゴム含有多段重合体である。
【0025】
弾性重合体(I−A)は、炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−A1)、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−A2)、芳香族系ビニル単量体(I−A3)および多官能性単量体(I−A4)を重合して得られた、ガラス転移温度が10℃以上である重合体である。
炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−A1)の使用範囲は、得られる着色アクリル樹脂フィルムの透明性の点で、30〜99.7質量%であることが好ましい。
炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−A2)の使用範囲は、0.1〜69.8質量%であることが好ましい。
芳香族系ビニル単量体(I−A3)の使用範囲は、0.1〜25質量%であることが好ましい。
多官能性単量体(I−A4)の使用範囲は、0.1〜10質量%であることが好ましい。
また、グラフト交叉剤(I−A5)を0〜5質量%の範囲で用いてもよい。
(ただし、(I−A1)+(I−A2)+(I−A3)+(I−A4)+(I−A5)=100質量%である。)
【0026】
弾性重合体(I−A)のガラス転移温度(以下、Tgと記す)は、10℃以上であることが好ましい。Tgが10℃以上の場合、得られる着色アクリル樹脂フィルムの透明性が良好になる傾向にある。
ゴム含有多段重合体(I)(100質量%)に占める弾性重合体(I−A)の量は、得られる着色アクリル樹脂フィルムの耐衝撃性の点で、2〜35質量%であることが好ましい。
【0027】
第1中間重合体(I−B)は、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−B1)、芳香族系ビニル単量体(I−B2)、多官能性単量体(I−B3)およびグラフト交叉剤(I−B4)を重合して得られた、ガラス転移温度が0℃以下である重合体である。
炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−B1)の使用範囲は、得られる着色アクリル樹脂フィルムの耐衝撃性の点で、60〜99.7質量%であることが好ましい。
芳香族系ビニル単量体(I−B2)の使用範囲は、0.1〜39.8質量%であることが好ましい。
多官能性単量体(I−B3)の使用範囲は、0.1〜10質量%であることが好ましい。
グラフト交叉剤(I−B4)の使用範囲は、0.1〜5質量%であることが好ましい。
また、共重合可能な二重結合を有する単量体(I−B5)を0〜20質量%の範囲で用いてもよい。
(ただし、(I−B1)+(I−B2)+(I−B3)+(I−B4)+(I−B5)=100質量%である。)
【0028】
第1中間重合体(I−B)のTgは、0℃以下であることが好ましい。Tgが0℃以下の場合、得られる着色アクリル樹脂フィルムの耐衝撃性が良好になる傾向にある。
ゴム含有多段重合体(I)(100質量%)に占める第1中間重合体(I−B)の量は、得られる着色アクリル樹脂フィルムの耐衝撃性の点で、5〜60質量%であることが好ましい。
【0029】
第2中間重合体(I−C)は、炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−C1)、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−C2)、芳香族ビニル単量体(I−C3)およびグラフト交叉剤(I−C4)を重合して得られた重合体である。
炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−C1)の使用範囲は、得られる着色アクリル樹脂フィルムの透明性の点で、20〜89.8質量%であることが好ましい。
炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−C2)の使用範囲は、10〜79.8質量%であることが好ましい。
芳香族ビニル単量体(I−C3)の使用範囲は、0.1〜25質量%であることが好ましい。
グラフト交叉剤(I−C4)の使用範囲は、0.1〜5質量%であることが好ましい。
(ただし、(I−C1)+(I−C2)+(I−C3)+(I−C4)=100質量%である。)
【0030】
ゴム含有多段重合体(I)(100質量%)に占める第2中間重合体(I−C)の量は、2〜20質量%であることが好ましい。また、ゴム含有多段重合体(I)の製造中における、第2中間重合体(I−C)段階でのラテックス粒子径は、0.03〜0.2μmであることが好ましい。
【0031】
硬質重合体(I−D)は、炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−D1)、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−D2)および芳香族ビニル単量体(I−D3)を重合して得られたTgが50℃以上の重合体である。
炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−D1)の使用範囲は、得られる着色アクリル樹脂フィルムの耐熱性の点で、51〜99.8質量%であることが好ましい。
炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−D2)の使用範囲は、0.1〜48.9質量%であることが好ましい。
芳香族ビニル単量体(I−D3)の使用範囲は0.1〜25質量%であることが好ましい。
(ただし、(I−D1)+(I−D2)+(I−D3)=100質量%である。)
【0032】
硬質重合体(I−D)のTgは50℃以上であることが好ましい。Tgが50℃以上の場合、得られる着色アクリル樹脂フィルムの耐熱性が良好になる傾向にある。
ゴム含有多段重合体(I)(100質量%)に占める硬質重合体(I−D)の量は、得られる着色アクリル樹脂フィルムの耐熱性の点で、10〜80質量%であることが好ましい。
【0033】
ここで、重合体のTgは、例えば、単量体a,b,c・・・からなる共重合体の場合、以下のFox式で求められる。
1/Tg=ma/Tga+mb/Tgb+mc/Tgc・・・
Tg:共重合体のTg[K]、ma:単量体aの質量分率、Tga:単量体aから得られるホモポリマーのTg[K]、mb:単量体bの質量分率、Tgb:単量体bから得られるホモポリマーのTg[K]、mc:単量体cの質量分率、Tgc:単量体cから得られるホモポリマーのTg[K]。
【0034】
炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−A1)としては、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、例えば、ブチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、着色アクリル樹脂フィルムの透明性の点から、メチルメタクリレートが好ましい。
【0035】
炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−A2)としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、プロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、Tgの点から、ブチルアクリレートが好ましい。
【0036】
芳香族系ビニル単量体(I−A3)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、経済性の点から、スチレンが好ましい。
【0037】
多官能性単量体(I−A4)としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジメタクリレート;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン;アルキレングリコールジアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、アルキレングリコールジメタクリレートが好ましく、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートがさらに好ましい。
【0038】
グラフト交叉剤(I−A5)としては、例えば、共重合性のα,β−不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸のアリルエステル、メタアリルエステル、クロチルエステル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレートが好ましい。
【0039】
炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−B1)としては、(I−A2)で示したアルキルアクリレートが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
芳香族系ビニル単量体(I−B2)としては、(I−A3)で示した芳香族系ビニル単量体が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
多官能性単量体(I−B3)としては、(I−A4)で示した多官能性単量体が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、アルキレングリコールジメタクリレートが好ましく、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートがさらに好ましい。
グラフト交叉剤(I−B4)としては、(I−A5)で示したグラフト交叉剤が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレートが好ましい。
【0041】
共重合可能な二重結合を有する単量体(I−B5)は、上述の単量体以外で、かつ上述の単量体と共重合可能な二重結合を有する単量体である。該単量体(I−B5)としては、例えば、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル系単量体、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
第2中間重合体(I−C)および硬質重合体(I−D)を構成する単量体およびグラフト交叉剤としては、弾性重合体(I−A)および第1中間重合体(I−B)と同様のものが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
ゴム含有多段重合体(I)の最終ラテックス粒子径は、0.03〜0.2μmであることが好ましく、0.04〜0.15μmがより好ましく、0.05〜0.1μmが特に好ましい。最終ラテックス粒子径が大きくなりすぎると、着色アクリル樹脂フィルムの透明性が低下するだけでなく、温度変化により透明性が変化することがある。道路標識等、屋外で再帰反射シートの表皮材として使用される場合、外気温の変化により透明性が変化すると、反射性能の低下、色相の変化を招くおそれがある。一方、粒子径が小さくなりすぎると、耐衝撃性が低下するおそれがある。
再帰反射シートの表皮材として使用されるアクリル樹脂は、透明性が高いほうが反射性能の点で好ましく、また、道路標識等として屋外で主に使用されるため、耐衝撃性が高いほうが好ましい。
【0044】
さらに、全光線透過率および曇価の温度依存性を少なくするためには、ゴム含有多段重合体(I)において各層に占める炭素数4以下のアルキルメタクリレート単位の量が、第1中間重合体(I−B)から、第2中間重合体(I−C)、硬質重合体(I−D)に向かって単調増加し、かつ弾性重合体(I−A)に占めるアルキルメタクリレート単位の量が第1中間重合体(I−B)に占める量よりも多いことが好ましい。
【0045】
また、ゴム含有多段重合体(I)の各重合体からなる層(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)における芳香族系ビニル単量体と炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレートとの質量比(芳香族系ビニル単量体/アルキルアクリレート)が5/95〜50/50であることが好ましく、10/90〜30/70であることがさらに好ましい。該質量比が、この範囲から離れるにつれて透明性が低下し、再帰反射シートの表皮材として使用した時に反射性能が低下する傾向にある。
【0046】
ゴム含有多段重合体(I)の製造法としては、乳化重合法による逐次多段重合法が最も適した重合法である。ゴム含有多段重合体(I)の製造は、特にこれに制限されることはなく、例えば、乳化重合後、それぞれの硬質重合体の重合時に懸濁重合系に転換させる乳化懸濁重合法によっても行うことができる。
また、ゴム含有多段重合体(I)を乳化重合により製造する場合は、弾性重合体(I−A)を与える単量体混合物をあらかじめ水および界面活性剤と混合して乳化液を調製し、この乳化液を反応器に供給し重合した後、残りの各層を構成する単量体混合物をそれぞれ順に反応器に供給し、重合する方法が好ましい。
【0047】
弾性重合体(I−A)を与える単量体混合物を、あらかじめ水および界面活性剤と混合して調製した乳化液を反応器に供給し、重合させることにより、特にアセトン中に分散させた際に、その分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数がゴム含有多段重合体(I)100gあたり0〜50個であるゴム含有多段重合体を容易に得ることができる。こうして得られたゴム含有多段重合体(I)を原料に用いた着色アクリル樹脂フィルムは、フィルム中のフィッシュアイ数が少ないという特性を有し、外観が良好になるため好ましい。
【0048】
乳化液を調製する際に使用される界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、およびノニオン系の界面活性剤が挙げられる。これらのうち、アニオン系の界面活性剤が特に好ましい。アニオン系界面活性剤としては、ロジン石鹸;オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム系等のカルボン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム系等のスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩等が挙げられる。これらのうち、昨今問題となっている内分泌かく乱化学物質からの生態系保全の点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩が特に好ましい。
【0049】
上記界面活性剤の好ましい具体例としては、三洋化成工業(株)製のNC−718、東邦化学工業(株)製のフォスファノールLS−529、フォスファノールRS−610NA、フォスファノールRS−620NA、フォスファノールRS−630NA、フォスファノールRS−640NA、フォスファノールRS−650NA、フォスファノールRS−660NA、花王(株)製のラテムルP−0404、ラテムルP−0405、ラテムルP−0406、ラテムルP−0407等が挙げられる。
【0050】
乳化液を調製する方法としては、水中に単量体混合物を仕込んだ後、界面活性剤を投入する方法;水中に界面活性剤を仕込んだ後、単量体混合物を投入する方法;単量体混合物中に界面活性剤を仕込んだ後、水を投入する方法等が挙げられる。このうち、水中に単量体を仕込んだ後、界面活性剤を投入する方法、および水中に界面活性剤を仕込んだ後、単量体混合物を投入する方法が、ゴム含有多段重合体(I)を得る方法としては好ましい。
【0051】
また、ゴム含有多段重合体(I)を構成する弾性重合体(I−A)を与える単量体混合物を、水および界面活性剤と混合して調製した乳化液を調製するための混合装置としては、攪拌翼を備えた攪拌機;ホモジナイザー、ホモミキサー等の各種強制乳化装置;膜乳化装置等が挙げられる。
また、調製する乳化液としては、W/O型、O/W型のいずれの分散構造でもよく、特に水中に単量体混合物の油滴が分散したO/W型で、分散相の油滴の直径が100μm以下であることが好ましい。
【0052】
ゴム含有多段重合体(I)を構成する弾性重合体(I−A)、第1中間重合体(I−B)、第2中間重合体(I−C)、および硬質重合体(I−D)を形成する際に使用する重合開始剤としては、公知のものが使用できる。その添加方法としては、水相、単量体相のいずれか片方、または双方に添加する方法を採用できる。重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。これらのうち、レドックス系開始剤が好ましく、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が特に好ましい。
【0053】
特に、上述の弾性重合体(I−A)を与える単量体混合物を水および界面活性剤と混合して調製した乳化液を反応器に供給し、重合した後、第1中間重合体(I−B)、第2中間重合体(I−C)および硬質重合体(I−D)を与える単量体混合物をそれぞれ順に反応器に供給し、重合する方法においては、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリットを含む水溶液を重合温度まで昇温した後、調製した乳化液を反応器に供給して重合し、ついで過酸化物等の重合開始剤を含む第1中間重合体(I−B)、第2中間重合体(I−C)、および硬質重合体(I−D)を与える単量体混合物を順次反応器に供給し、重合する方法が、ゴム含有多段重合体(I)を得る方法としては最も好ましい。
なお、重合温度は用いる重合開始剤の種類および量によって異なるが、40〜120℃が好ましく、60〜95℃がより好ましい。
【0054】
(熱可塑性重合体(II))
熱可塑性重合体(II)は、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートに由来する構成単位50〜100質量%、およびこれと共重合可能な他のビニル単量体に由来する構成単位0〜50質量%からなり、重合体の還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mlに溶解し、25℃で測定)が0.1l/g以下である重合体である。
【0055】
炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレートが挙げられる。これらのうち、メチルメタクリレートが最も好ましい。
他のビニル単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、プロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等の芳香族系ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物等が挙げられる。
【0056】
熱可塑性重合体(II)の還元粘度は、0.1l/g以下である。還元粘度が0.1l/gを超えると、流動性が悪化しフィルム成形性の点で好ましくない。
熱可塑性重合体(II)を得るための重合方法は、特に限定されるものではなく、公知の懸濁重合法、乳化重合法等の各種方法が適用される。
熱可塑性重合体(II)は、三菱レイヨン(株)製ダイヤナールBRシリーズとして工業的に入手可能である。
【0057】
(ゴム含有多段重合体(III))
ゴム含有多段重合体(III)は、中心から弾性重合体(III−A)、中間重合体(III−B)、硬質重合体(III−C)の順に配置されたゴム含有多段重合体である。
ゴム含有多段重合体(III)にも、フィルム物性を損なわない範囲で、熱可塑性重合体(II)を混合してもよい。
【0058】
弾性重合体(III−A)は、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(III−A1)に由来する構成単位50〜99.9質量%、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(III−A2)に由来する構成単位0〜49.9質量%、共重合可能な二重結合を有する他の単量体(III−A3)に由来する構成単位0〜20質量%、多官能性単量体(III−A4)に由来する構成単位0〜10質量%およびグラフト交叉剤(III−A5)に由来する構成単位0.1〜10質量%からなる重合体である(ただし、(III−A1)+(III−A2)+(III−A3)+(III−A4)+(III−A5)=100質量%である。)。
【0059】
中間重合体(III−B)は、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(III−B1)に由来する構成単位9.9〜90質量%、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(III−B2)に由来する構成単位9.9〜90質量%、共重合可能な二重結合を有する他の単量体(III−B3)に由来する構成単位0〜20質量%、多官能性単量体(III−B4)に由来する構成単位0〜10質量%およびグラフト交叉剤(III−B5)に由来する構成単位0.1〜10質量%からなり、かつ弾性重合体(III−A)とは異なる組成の重合体である(ただし、(III−B1)+(III−B2)+(III−B3)+(III−B4)+(III−B5)=100質量%である。)。
【0060】
硬質重合体(III−C)は、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(III−C1)に由来する構成単位80〜100質量%、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(III−C2)に由来する構成単位0〜20質量%および共重合可能な二重結合を有する他の単量体(III−C3)に由来する構成単位0〜20質量%からなる重合体である(ただし、(III−C1)+(III−C2)+(III−C3)=100質量%である。)。
【0061】
炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(III−A1)は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。その具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、n−ブチルアクリレートが好ましい。
【0062】
炭素数1〜4のアルキルメタクリレート(III−A2)は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。その具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、メチルメタクリレートが好ましい。
【0063】
共重合可能な二重結合を有する他の単量体(III−A3)としては、例えば、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル系単量体;スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0064】
多官能性単量体(III−A4)は、必要に応じて用いることができる。多官能性単量体(III−A4)とは、同程度の共重合性の二重結合を1分子内に2個以上有する単量体と定義する。その具体例としては、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジメタクリレート;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン等が挙げられる。これらのうち、アルキレングリコールジメタクリレートが好ましく、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートが特に好ましい。また、多官能性単量体が全く作用しない場合でも、グラフト交叉剤が存在する限り、かなり安定なゴム含有多段重合体を与える。例えば、熱間強度等が厳しく要求されたりする場合など、その添加目的に応じて、多官能性単量体の添加を任意に行えばよい。
【0065】
グラフト交叉剤(III−A5)とは、異なる共重合性の二重結合を1分子内に2個以上有する単量体と定義する。その具体例としては、共重合性のα,β−不飽和カルボン酸またはジカルボン酸のアリル、メタリル、またはクロチルエステル;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらのうち、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、またはフマル酸のアクリルエステルが好ましく、メタクリル酸アリルエステルが優れた効果を奏することから特に好ましい。グラフト交叉剤(III−A5)においては、主としてそのエステルの共役不飽和結合がアリル基、メタリル基、またはクロチル基よりはるかに早く反応し、化学的に結合する。アリル基、メタリル基、またはクロチル基の実質上、かなりの部分は、次層重合体の重合中に有効に働き、隣接二層間にグラフト結合を与える。
なお、連鎖移動剤の存在下で重合してもよい。
【0066】
弾性重合体(III−A)を構成する全単量体単位100質量%中の炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(III−A1)に由来する構成単位の含有量は、ゴム含有多段重合体(III)のフィルム成形性および耐衝撃性等の物性の点から、50〜99.9質量%であり、55〜77.9質量%が好ましく、60〜69.9質量%が特に好ましい。
【0067】
弾性重合体(III−A)を構成する全単量体単位100質量%中の炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(III−A2)に由来する構成単位の含有量は、0〜49.9質量%であり、より好ましくは20質量%以上であり、最も好ましくは30質量%以上である。また、より好ましくは44.9質量%以下であり、最も好ましくは39.9質量%以下である。
【0068】
弾性重合体(III−A)を構成する全単量体単位100質量%中の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(III−A3)に由来する構成単位は、0〜20質量%であり、0〜15質量%が好ましい。
【0069】
弾性重合体(III−A)を構成する全単量体単位100質量%中の多官能性単量体(III−A4)に由来する構成単位の含有量は、0〜10質量%であり、0.1〜6質量%が好ましい。
【0070】
弾性重合体(III−A)を構成する全単量体単位100質量%中のグラフト交叉剤(III−A5)に由来する構成単位の含有量は、0.1〜10質量%であり、0.5〜2質量%が好ましい。0.1質量%以上の含有量では、得られるゴム含有多段重合体(III)を、透明性等の光学的物性を低下させずにフィルム成形することができる。また、10質量%以下の含有量では、ゴム含有多段重合体(III)に充分な柔軟性、強靭さを付与することができる。
弾性重合体(III−A)における各構成単位の含有量は、上記範囲であることが、ゴム含有多段重合体(III)を成形して得られる着色アクリル樹脂フィルムの透明性、耐衝撃性等の物性の点から好ましい。
【0071】
弾性重合体(III−A)単独のTgは、ゴム含有多段重合体(III)を成形して得られる着色アクリル樹脂フィルムの耐衝撃性の観点から、後述の中間重合体(III−B)単独のTg未満であることが好ましく、25℃未満であることがより好ましく、10℃以下であることがさらに好ましく、0℃以下であることが特に好ましい。
ゴム含有多段重合体(III)(100質量%)中の弾性重合体(III−A)の含有量は、ゴム含有多段重合体(III)を成形して得られる着色アクリル樹脂フィルムの透明性の点で、15〜50質量%が好ましく、15〜35質量%がより好ましい。この場合、該ゴム含有多段重合体(III)を再帰反射シートの表皮材として使用したときの反射性能の点で有利である。
【0072】
弾性重合体(III−A)は、単層でもよく、2層でもよい。これらのうち、2層からなるものがより好ましい。また、弾性重合体(III−A)中の2層の単量体単位の構成比は、それぞれ異なっていることが好ましい。
弾性重合体(III−A)が2層からなる場合、ゴム含有多段重合体(III)を成形して得られる着色アクリル樹脂フィルムの耐衝撃性および透明性の観点から、内側層(III−A−1)のTgは、外側層(III−A−2)のTgよりも低いほうが好ましい。具体的には、内側層(III−A−1)のTgは、耐衝撃性の観点から−30℃未満が好ましく、外側層(III−A−2)のTgは、透明性の観点から−15℃〜10℃が好ましい。
【0073】
また、透明性の観点から、弾性重合体(III−A)(100質量%)中の内側層(III−A−1)の含有量は、1〜20質量%が好ましく、外側層(III−A−2)の含有量は、80〜99質量%が好ましい。道路標識等、主に屋外で使用される再帰反射シートの表皮材として使用されるアクリル樹脂は、透明性が高い方が好ましい。
弾性重合体(III−A)が2層からなる場合の好ましいゴム含有多段重合体としては、特公昭62−19309号公報に記載の重合体等が挙げられる。
【0074】
炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(III−B1)は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。その具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレートが好ましい。
【0075】
炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(III−B2)は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。その具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、メチルメタクリレートが好ましい。
【0076】
共重合可能な二重結合を有する他の単量体(III−B3)としては、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル系単量体;スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0077】
多官能性単量体(III−B4)は、必要に応じて用いればよい。その具体例としては、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジメタクリレート;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン等が挙げられる。これらのうち、アルキレングリコールジメタクリレートが好ましく、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートが特に好ましい。多官能性単量体が全く作用しない場合でも、グラフト交叉剤が存在する限り、かなり安定なゴム含有多段重合体を与える。例えば、熱間強度等が厳しく要求されたりする場合など、その添加目的に応じて、多官能性単量体の添加を任意に行えばよい。
【0078】
グラフト交叉剤(III−B5)としては、共重合性のα,β−不飽和カルボン酸またはジカルボン酸のアリル、メタリル、またはクロチルエステル;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらのうち、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、またはフマル酸のアクリルエステルが好ましく、メタクリル酸アリルエステルが優れた効果を奏することから特に好ましい。グラフト交叉剤(III−B5)においては、主としてそのエステルの共役不飽和結合がアリル基、メタリル基、またはクロチル基よりはるかに早く反応し、化学的に結合する。アリル基、メタリル基、またはクロチル基の実質上、かなりの部分は、次層重合体の重合中に有効に働き、隣接二層間にグラフト結合を与える。
なお、連鎖移動剤の存在下で重合してもよい。
【0079】
中間重合体(III−B)を構成する全単量体単位100質量%中の炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(III−B1)に由来する構成単位の含有量は、9.9〜90質量%である。ゴム含有多段重合体(III)を成形して得られる着色アクリル樹脂フィルムの透明性の観点から、より好ましくは19.9質量%以上、最も好ましくは29.9質量%以上である。また、より好ましくは60質量%以下、最も好ましくは50質量%以下である。
【0080】
中間重合体(III−B)を構成する全単量体単位100質量%中の炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(III−B2)に由来する構成単位の含有量は、9.9〜90質量%である。ゴム含有多段重合体(III)を成形して得られる着色アクリル樹脂フィルムの透明性の観点から、より好ましくは39.9質量%以上、最も好ましくは49.9質量%以上である。また、より好ましくは80質量%以下、最も好ましくは70質量%以下である。
【0081】
中間重合体(III−B)を構成する全単量体単位100質量%中の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(III−B3)に由来する構成単位の含有量は、0〜20質量%であり、0〜15質量%が好ましい。
中間重合体(III−B)を構成する全単量体単位100質量%中の多官能性単量体(III−B4)に由来する構成単位の含有量は、0〜10質量%であり、0〜6質量%が好ましい。
中間重合体(III−B)を構成する全単量体単位100質量%中のグラフト交叉剤(III−B5)に由来する構成単位の含有量は、0.1〜10質量%であり、0.5〜2質量%が好ましい。0.1質量%以上の含有量では、得られるゴム含有多段重合体(III)を、透明性等の光学的物性を低下させずにフィルム成形することができる。また、10質量%以下の含有量では、ゴム含有多段重合体(III)に充分な柔軟性、強靭さを付与することができる。
【0082】
中間重合体(III−B)の単量体単位の組成は、弾性重合体(III−A)の単量体単位の組成と異なることが好ましい。これらの重合体の組成が異なることで、耐衝撃性等のフィルム物性及び透明性等を満足することができる。本発明でいう「異なる組成」とは、各重合体を形成するアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、共重合可能な二重結合を有する他の単量体、多官能性単量体、およびグラフト交叉剤の、種類および/または量が異なることである。
【0083】
中間重合体(III−B)単独のTgは、25〜100℃であることが好ましい。Tgが25℃以上の場合、ゴム含有多段重合体(III)を成形して得られる着色アクリル樹脂フィルムの耐熱性、耐擦傷性、透明性が良好になる。より好ましくは40℃以上、最も好ましくは50℃以上である。また、Tgが100℃以下の場合、製膜性の良好なゴム含有多段重合体(III)が得られる。より好ましくは80℃以下、最も好ましくは70℃以下である。
【0084】
また、ゴム含有多段重合体(III)(100質量%)中の中間重合体(III−B)の含有量は、5〜35質量%が好ましく、15〜20質量%がより好ましい。この範囲内であれば、中間として必要な機能、例えば透明性を発現させることができる。
【0085】
炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(III−C1)は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。その具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、メチルメタクリレートが好ましい。
【0086】
炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(III−C2)は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。その具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレートが好ましい。
【0087】
共重合可能な二重結合を有する他の単量体(III−C3)としては、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル系単量体;スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0088】
硬質重合体(III−C)を構成する全単量体単位100質量%中の炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(III−C1)に由来する構成単位の含有量は、80〜100質量%であり、より好ましくは90質量%以上、最も好ましくは93質量%以上である。また、より好ましくは99質量%以下である。
硬質重合体(III−C)を構成する全単量体単位100質量%中の炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(III−C2)に由来する構成単位の含有量は、0〜20質量%であり、より好ましくは1質量%以上である。また、より好ましくは10質量%以下、最も好ましくは7質量%以下である。
【0089】
硬質重合体(III−C)を構成する全単量体単位100質量%中の共重合可能な二重結合を有する単量体(III−C3)に由来する構成単位の含有量は、0〜20質量%であり、0〜15質量%が好ましい。
硬質重合体(III−C)の各構成単位の含有量は、上記範囲であることが、ゴム含有多段重合体(III)を成形して得られる着色アクリル樹脂フィルムのフィルム成形性、透明性の観点から好ましい。
【0090】
また、単量体((III−C1)〜(III−C3))の重合時に連鎖移動剤を使用し、硬質重合体(III−C)の分子量を調整してもよい。この連鎖移動剤は、通常、ラジカル重合に用いられるものの中から選択される。具体例としては、炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフェノール、四塩化炭素等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。連鎖移動剤の含有量は、単量体((III−C1)〜(III−C3))100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましい。より好ましくは0.2質量部以上、最も好ましくは0.4質量部以上である。
【0091】
硬質重合体(III−C)単独のTgは、60℃以上が好ましい。Tgが60℃以上の場合、ゴム含有多段重合体(III)をフィルム状に成形したときの耐擦傷性等、フィルム物性の良好な着色アクリル樹脂フィルムが得られる。より好ましくは80℃以上、最も好ましくは90℃以上である。
【0092】
また、ゴム含有多段重合体(III)(100質量%)中の硬質重合体(III−C)の含有量は、フィルム物性の点で、15〜80質量%が好ましく、45〜80質量%がより好ましく、45〜70質量%が特に好ましい。
【0093】
ゴム含有多段重合体(III)の製造法としては、ゴム含有多段重合体(I)と同様に乳化重合法による逐次多段重合法が最も適した重合法である。ゴム含有多段重合体(III)の製造は、特にこれに制限されることはなく、例えば、乳化重合後、それぞれの硬質重合体の重合時に懸濁重合系に転換させる乳化懸濁重合法によっても行うことができる。
また、ゴム含有多段重合体(III)を、ゴム含有多段重合体(I)と同様に乳化重合により製造する場合は、弾性重合体(III−A)を与える単量体混合物の一部または全量を、あらかじめ水および界面活性剤と混合して乳化液を調製し、この乳化液を反応器に供給し重合した後、残りの各層を構成する単量体混合物をそれぞれ順に反応器に供給し、重合する方法が好ましい。
【0094】
弾性重合体(III−A)を与える単量体混合物を、あらかじめ水および界面活性剤と混合して調製した乳化液を反応器に供給し、重合させることにより、特にアセトン中に分散させた際に、その分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数がゴム含有多段重合体(III)100gあたり0〜50個であるゴム含有多段重合体を容易に得ることができる。こうして得られたゴム含有多段重合体(III)を原料に用いた着色アクリル樹脂フィルムは、フィルム中のフィッシュアイ数が少ないという特性を有し、外観が良好になるため好ましい。
【0095】
乳化液を調製する際に使用される界面活性剤としては、ゴム含有多段重合体(I)で乳化液を調整する際に使用される界面活性剤と同様のものが使用できる。
また、乳化液を調製する方法も、ゴム含有多段重合体(I)と同様の方法が好ましい。
また、ゴム含有多段重合体(III)を構成する弾性重合体(III−A)を与える単量体混合物を水、および界面活性剤と混合して調製した乳化液を調製するための混合装置としては、ゴム含有多段重合体(I)を製造する際の乳化液の調製に用いられる装置が挙げられる。
また、調製する乳化液としては、W/O型、O/W型のいずれの分散構造でもよく、特に水中に単量体混合物の油滴が分散したO/W型で、分散相の油滴の直径が100μm以下であることが好ましい。
【0096】
ゴム含有多段重合体(III)を構成する弾性重合体(III−A)、中間重合体(III−B)、及び硬質重合体(III−C)を形成する際に使用する重合開始剤としては、公知のものが使用できる。その添加方法としては、水相、単量体相のいずれか片方、または双方に添加する方法を採用できる。重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。これらのうち、レドックス系開始剤が好ましく、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が特に好ましい。
【0097】
特に、上述の弾性重合体(III−A)を与える単量体混合物を水および界面活性剤と混合して調製した乳化液を反応器に供給し、重合した後、中間重合体(III−B)および硬質重合体(III−C)を与える単量体混合物をそれぞれ順に反応器に供給し、重合する方法においては、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリットを含む水溶液を重合温度まで昇温した後、調製した乳化液を反応器に供給して重合し、ついで過酸化物等の重合開始剤を含む中間重合体(III−B)および硬質重合体(III−C)を与える単量体混合物を順次反応器に供給し、重合する方法が、ゴム含有多段重合体(III)を得る方法としては最も好ましい。
なお、重合温度は用いる重合開始剤の種類や量によって異なるが、40〜120℃が好ましくは、60〜95℃がより好ましい。
【0098】
(ゴム含有多段重合体(IV))
ゴム含有多段重合体(IV)は、公知技術として知られているアルキルアクリレート、アルキルメタクリレートおよびグラフト交叉剤を重合体の構成成分とするゴム含有多段重合体である。
【0099】
さらに好ましいゴム含有多段重合体(IV)の具体例としては、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートおよび/または炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートおよびグラフト交叉剤を少なくとも重合体の構成成分としてなる第一弾性重合体(IV−A)、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートおよびグラフト交叉剤を少なくとも重合体の構成成分としてなる第二弾性重合体(IV−B)、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートおよび/または炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートおよびグラフト交叉剤を少なくとも重合体の構成成分としてなる中間重合体(IV−D)、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを少なくとも重合体の構成成分としてなる硬質重合体(IV−C)がこの順に重合されたものである。
【0100】
好ましいゴム含有多段重合体(IV)を構成する第一弾性重合体(IV−A)は、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートまたは炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(IV−A1)と、必要に応じて用いる共重合可能な二重結合を有する他の単量体(IV−A2)と、必要に応じて用いる多官能性単量体(IV−A3)と、グラフト交叉剤(IV−A4)とを構成成分としてなる重合体であって、ゴム含有多段重合体(IV)を重合する際の最初に重合されるものである。
【0101】
第一弾性重合体(IV−A)を構成する成分(IV−A1)のうち、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートは、直鎖状、分岐状のいずれでもよい。その具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中では、Tgの低いものがより好ましい。また、成分(IV−A1)のうち、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートは、直鎖状、分岐状のいずれでもよい。その具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0102】
アルキル(メタ)アクリレート(IV−A1)は、成分(IV−A1)〜(IV−A3)合計量100質量部に対し、80〜100質量部の範囲内で用いることが好ましい。また、第一弾性重合体(IV−A)において用いた種類のアルキル(メタ)アクリレートを、その後(IV−A)〜(IV−D)の各重合体が重合される際においても統一して用いるのが最も好ましい。ただし、(IV−A)〜(IV−D)の各重合体において、二種以上のアルキル(メタ)アクリレートを混合したり、別種のアクリレートを用いたりしても構わない。なお「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味するものとする。
【0103】
第一弾性重合体(IV−A)を構成する共重合可能な二重結合を有する他の単量体(IV−A2)は、必要に応じて用いればよい。その具体例としては、炭素数9以上のアルキル基を有する高級アルキルアクリレート、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート等のアクリレート単量体、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。単量体(IV−A2)は、成分(IV−A1)〜(IV−A3)合計100質量部に対し、0〜20質量部の範囲内で用いることが好ましい。
【0104】
第一弾性重合体(IV−A)を構成する多官能性単量体(IV−A3)は、必要に応じて用いればよい。その具体例としては、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジメタクリレートを用いることが好ましい。また、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼンなども使用可能である。また、多官能性単量体(IV−A3)を全く作用しない場合でも、グラフト交叉剤が存在する限りかなり安定なゴム含有多段重合体を与える。例えば、熱間強度等が厳しく要求されたりする場合など、その添加目的に応じて任意に用いればよい。多官能性単量体(IV−A3)は、成分(IV−A1)〜(IV−A3)合計100質量部に対し、0〜10質量部の範囲内で用いることが好ましい。
【0105】
第一弾性重合体(IV−A)を構成するグラフト交叉剤(IV−A4)としては、共重合性のα,β−不飽和カルボン酸またはジカルボン酸のアリル、メタリルまたはクロチルエステル等が挙げられる。特に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸またはフマル酸のアクリルエステルが好ましい。これらの中では、特にアリルメタクリレートが優れた効果を奏する。その他、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等も有効である。グラフト交叉剤(IV−A4)は、主としてそのエステルの共役不飽和結合がアリル基、メタリル基またはクロチル基よりはるかに早く反応し、化学的に結合する。
【0106】
グラフト交叉剤(IV−A4)の使用量は極めて重要であり、成分(IV−A1)〜(IV−A3)の合計量100質量部に対し0.1〜5質量部が好ましく、0.5〜2質量部がより好ましい。これら範囲の下限値は、グラフト結合の有効量の点で意義が有る。また上限値は、二段目に重合形成される第二弾性重合体(IV−B)との反応量を適度に抑え、二段の弾性体構造からなる二段架橋ゴム弾性体の弾性低下を防止する点で意義がある。
【0107】
好ましいゴム含有多段重合体(IV)100質量%中の第一弾性重合体(IV−A)の含有量は5〜35質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。また、第二弾性重合体(IV−B)の含有量よりも少ない方が好ましい。
【0108】
好ましいゴム含有多段重合体(IV)を構成する第二弾性重合体(IV−B)は、ゴム含有多段重合体(IV)にゴム弾性を与える主要な成分であり、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(IV−B1)と、必要に応じて用いる共重合可能な二重結合を有する他の単量体(IV−B2)と、必要に応じて用いる多官能性単量体(IV−B3)と、グラフト交叉剤(IV−B4)とを構成成分としてなる第二弾性重合体(IV−B)である。
【0109】
成分(IV−B1)〜(IV−B4)の好ましい具体例は、それぞれ第一弾性重合体(IV−A)の成分(IV−A1)〜(IV−A4)で挙げたものと同様である。成分(IV−B1)の使用量は80〜100質量部が好ましい。成分(IV−B2)の使用量は0〜20質量部が好ましい。成分(IV−B3)の使用量は0〜10質量部が好ましい。成分(IV−B4)の使用量は0.1〜5質量部が好ましい。これら使用量の範囲は、成分(IV−B1)〜(IV−B3)の合計100質量部を基準とする。
【0110】
第二弾性重合体(IV−B)単独のTgは、0℃以下が好ましく、−30℃以下がより好ましい。このTgが0℃以下の場合、優れた弾性を示す傾向がある。好ましいゴム含有多段重合体(IV)100質量%中の第二弾性重合体(IV−B)の含有量は10〜45質量%が好ましく、また、第一弾性重合体(IV−A)の含有量よりも多いことが好ましい。
【0111】
好ましいゴム含有多段重合体(IV)を構成する硬質重合体(IV−C)は、例えばゴム含有多段重合体(IV)を用いて成形する際の成形性、成形品の機械的性質等に関与する成分であり、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(IV−C1)と、必要に応じて用いる共重合可能な二重結合を有する他の単量体(IV−C2)とを構成成分としてなる重合体であって、ゴム含有多段重合体(IV)の最後に重合されるものである。
【0112】
成分(IV−C1)および(IV−C2)の好ましい具体例は、それぞれ第一弾性重合体(IV−A)の成分(IV−A1)および(IV−A2)で挙げたものと同様である。成分(IV−C1)の使用量は51〜100質量部が好ましい。成分(IV−C2)の使用量は0〜49質量部が好ましい。これら使用量の範囲は、成分(IV−C1)および(IV−C2)の合計100質量部を基準とする。
【0113】
硬質重合体(IV−C)単独のTgは、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。好ましいゴム含有多段重合体(IV)100質量%中の硬質重合体(IV−C)の含有量は10〜80質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。
【0114】
好ましいゴム含有多段重合体(IV)は、以上説明した第一弾性層重合体(IV−A)、第二弾性重合体(IV−B)および硬質重合体(IV−C)を基本構造体として有する。そして、第二弾性重合体(IV−B)を重合させた後、硬質重合体(IV−C)を重合させる前に、中間重合体(IV−D)を重合させる。
【0115】
中間重合体(IV−D)は、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(IV−D1)と、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(IV−D2)と、必要に応じて用いる共重合可能な二重結合を有する他の単量体(IV−D3)と、必要に応じて用いる多官能性単量体(IV−D4)と、グラフト交叉剤(IV−D5)とを重合体の構成成分とし、かつアルキルアクリレート成分量が第二弾性重合体(IV−B)から硬質重合体(IV−C)に向かって単調減少する重合体である。
ここで単調減少するとは、中間重合体(IV−D)が第二弾性重合体(IV−B)と硬質重合体(IV−C)の中間のある一点の組成を有するもの、第二弾性重合体(IV−B)から硬質重合体(IV−C)に組成が徐々に(連続的に)近付くもの、及び組成が段階的に近付くことをいい、特に、中間のある1点の組成を有するものが、ゴム含有多段重合体(IV)を成形したときの透明性が良好となるため好ましい。
【0116】
成分(IV−D1)〜(IV−D5)の好ましい具体例は、それぞれ第一弾性重合体(IV−A)の成分(IV−A1)〜(IV−A4)で挙げたものと同様である。特に、中間重合体(IV−D)に用いるグラフト交叉剤(IV−D5)は、各重合体を密に結合させ、優れた諸性質を得る為に必要な成分である。
【0117】
成分(IV−D1)の使用量は10〜90質量部が好ましい。成分(IV−D2)の使用量は10〜90質量部が好ましい。成分(IV−D3)の使用量は0〜20質量部が好ましい。成分(IV−D4)の使用量は0〜10質量部が好ましい。成分(IV−D5)の使用量は0.1〜5質量部が好ましい。これら使用量の範囲は、成分(IV−D1)〜(IV−D4)の合計100質量部を基準とする。
【0118】
好ましいゴム含有多段重合体(IV)100質量%中の中間重合体(IV−D)の含有量は、5〜35質量%が好ましい。含有量が5質量%以上であれば中間重合体として良好に機能し、35質量%以下であれば最終重合体のバランスが良好となる。
【0119】
本発明の乳化重合法により製造されるゴム含有多段重合体(IV)の平均粒子径としては、これを主成分とする成形体の機械特性、透明性を考慮すると0.08〜0.2μmの範囲が好ましい。
【0120】
またゴム含有多段重合体(IV)をアセトン中に分散させた際に、その分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数がゴム含有多段重合体100gあたり0〜50個であると、ゴム含有多段重合体(IV)をフィルム状に成形したとき外観が良好になる傾向にある。ゴム含有多段重合体をアセトン中に分散させた際に、その分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数がゴム含有多段重合体100gあたり0〜50個であるゴム含有多段重合体(IV)を、乳化重合により得る方法としては特に限定されるものではないが、例えば上述の好ましいゴム含有多段重合体(IV)を乳化重合により製造する場合は、特に第一弾性重合体(IV−A)層を与える炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートおよび/または炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート、およびグラフト交叉剤を少なくとも含む単量体混合物を、水および界面活性剤と混合して調製した乳化液を反応器に供給し重合した後、第二弾性重合体(IV−B)、中間重合体(IV−D)および硬質重合体(IV−C)を与える単量体あるいは単量体混合物をそれぞれ順に反応器に供給し重合する方法が好ましい。
【0121】
第一弾性重合体(IV−A)を与える単量体混合物を、水および界面活性剤と混合して調製した乳化液を反応器に供給し重合させることにより、特にアセトン中に分散させた際に、その分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数がゴム含有多段重合体100gあたり0〜50個であるゴム含有多段重合体(IV)を容易に得ることができる。
その際使用する単量体混合物と水との質量比としては、単量体混合物100部に対し水10部〜500部が好ましく、さらに好ましくは単量体混合物100部に対し水100部〜300部の範囲である。
【0122】
乳化液を調製する際に使用される界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤が使用できるが、特にアニオン系の界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤としては、ロジン酸石鹸、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム系等のカルボン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ヂオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム系等のスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0123】
また、乳化液を調製する方法としては、水中に単量体混合物を仕込んだ後界面活性剤を投入する方法、水中に界面活性剤を仕込んだ後単量体混合物を投入する方法、単量体混合物中に界面活性剤を仕込んだ後水を投入する方法等が挙げられる。このうち、水中に単量体混合物を仕込んだ後界面活性剤を投入する方法、および水中に界面活性剤を仕込んだ後単量体混合物を投入する方法が、ゴム含有多段重合体(IV)を得る方法として好ましい。
【0124】
また、第一弾性重合体(IV−A)を与える単量体混合物を、水および界面活性剤と混合して調製した乳化液を調製するための混合装置としては、攪拌翼を備えた攪拌機およびホモジナイザー、ホモミキサー等の各種強制乳化装置、膜乳化装置等が挙げられる。
また、調製する乳化液としては、W/O型、O/W型のいずれの分散構造でも使用することができるが、特に水中に単量体混合物の油滴が分散したO/W型で、分散相の油滴の直径が100μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは50μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。100μmを超えた場合は、得られるゴム含有多段重合体(IV)をアセトン中に分散させた際にその分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数が増える傾向にある。
【0125】
一方、好ましいゴム含有多段重合体(IV)を構成する第一弾性重合体(IV−A)、第二弾性重合体(IV−B)、中間重合体(IV−D)および硬質重合体(IV−C)を形成する際に使用する重合開始剤は公知のものが使用でき、その添加方法は水相、単量体相いずれか片方、または、双方に添加する方法を用いることができる。特に好ましい開始剤の例としては、過酸化物、アゾ系開始剤または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。この中でレドックス系開始剤がさらに好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
【0126】
特に、上述の第一弾性重合体(IV−A)を与える単量体混合物を、水および界面活性剤と混合して調製した乳化液を反応器に供給し重合した後、第二弾性重合体(IV−B)、中間重合体(IV−D)および硬質重合体(IV−C)を与える単量体あるいは単量体混合物をそれぞれ順に反応器に供給し重合する方法においては、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリットを含む水溶液を重合温度まで昇温した後、調製した乳化液を反応器に供給して重合し、次いで過酸化物等の重合開始剤を含む第二弾性重合体(IV−B)、中間重合体(IV−D)および硬質重合体(IV−C)を与える単量体混合物を順次反応器に供給し重合する方法が、好ましいゴム含有多段重合体(IV)を得る方法として最も好ましい。
なお、重合温度は用いる重合開始剤の種類や量によって異なるが、好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは、60〜95℃である。
【0127】
上述のようにしてゴム含有多段重合体(I)、(III)、(IV)を乳化重合で得るときは、連鎖移動剤、その他の重合助剤等を用いてもよい。連鎖移動剤としては、公知のものが使用でき、メルカプタン類が好ましい。
ゴム含有多段重合体(I)、(III)、(IV)は、上述の方法で製造した重合体ラテックスからゴム含有多段重合体を回収することによって製造することができる。重合体ラテックスからゴム含有多段重合体を回収する方法としては特に限定されないが、塩析または酸析凝固、または、噴霧乾燥、凍結乾燥等の方法が挙げられる。これら方法によってゴム含有多段重合体(I)、(III)、(IV)は、粉状で回収される。
なお、上記の方法で得られた粉状のゴム含有多段重合体(I)、(III)、(IV)中には、アセトン中に分散させた際にその分散液中に存在する直径55μm以上の粒子が、各々のゴム含有多段重合体100gあたり0〜50個の範囲であることが好ましい。
【0128】
<着色アクリル樹脂フィルムの製造>
本発明の着色アクリル樹脂フィルムを成形する方法としては、公知の溶液流延法、Tダイ法、インフレーション法等の溶融押出法等が挙げられる。これらのうち、経済性の点でTダイ法が特に好ましい。
着色アクリル樹脂フィルムの厚さは、フィルム物性の点で10〜500μmが好ましい。着色アクリル樹脂フィルムの厚さが10〜500μmであると、適度な剛性となるため、ラミネート性、二次加工性等が容易となり、さらに製膜性が安定してフィルムの製造が容易となる。着色アクリル樹脂フィルムの厚さは、15μm〜200μmがより好ましく、30μm〜200μmがさらに好ましい。
【0129】
着色アクリル樹脂フィルムには、必要に応じて、通常の配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、発泡剤、離型剤、帯電防止剤、艶消剤、紫外線吸収剤等を添加してもよい。基材(再帰反射シート)の保護の点では、耐候性を付与するために、紫外線吸収剤を添加することが特に好ましい。紫外線吸収剤の分子量は、300以上が好ましく、400以上が特に好ましい。分子量が300より小さな紫外線吸収剤を用いると、フィルムを製造する際に転写ロール等に揮発し、ロール汚れを発生させることがある。紫外線吸収剤としては、分子量400以上のベンゾトリアゾール系または分子量400以上のトリアジン系の紫外線吸収剤が特に好ましい。分子量400以上のベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の具体例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のチヌビン234、旭電化工業(株)製のアデカスタブLA−31が挙げられる。分子量400以上のトリアジン系の紫外線吸収剤の具体例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のチヌビン1577等が挙げられる。
【0130】
配合剤の添加方法としては、フィルムを製膜するための製膜機に、アクリル樹脂とともに供給する方法;あらかじめアクリル樹脂に配合剤を添加した混合物を各種混練機にて混練混合する方法が挙げられる。後者の方法に使用する混練機としては、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリミキサー、ロール混練機等が挙げられる。
【0131】
[再帰反射シート]
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムを表面に有する再帰反射シートは、主に、道路標識、表示板、または視認性を目的とした安全器具に使用される。
再帰反射シートの種類としては、アルミニウム蒸着を施したガラスビーズを基材に埋め込んだカプセル型再帰反射シート、プリズム加工した樹脂シートを反射体として使用したプリズム型再帰反射シート等があり、いずれのタイプにおいても本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムは、再帰反射シートの表面に表面材として積層されて使用される。
【0132】
例えば、カプセル型再帰反射シートは以下のようにして製造される。
仮支持体層にガラスビーズの上半球部分を一旦埋め込み、ビーズの下半球部分とビーズ相互の間隙にわたって一面に金属膜を蒸着してから、これに密着して熱可塑性樹脂からなる支持フィルムを塗布形成し、その面をさらに耐熱性樹脂等からなるフィルムで被覆して反対側の上記仮支持体層を剥離し、露呈したガラスビーズの上半球部の上に本発明の着色アクリル樹脂フィルムを重ねる。ついで、これを、所望の独立小区画空室を作るための凸形網目パターンを有する金型によって、耐熱性樹脂等からなるフィルム側から加熱プレスし、支持フィルムを熱溶融して着色アクリル樹脂フィルムと部分的に密着させ、上記パターンどおりの連結壁を形成して独立小区画空室を形成して、カプセル型再帰反射シートが製造される。このとき、支持フィルムと着色アクリル樹脂フィルムとの密着面積が大きいと、再帰反射シートとして重要な反射性能が損なわれる傾向がある。
【実施例】
【0133】
以下、実施例により本発明を説明する。
ここで、実施例および比較例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。また、調製例中の略号は以下のとおりである。
メチルメタクリレート:MMA
ブチルアクリレート:BA
メチルアクリレート:MA
スチレン:ST
アリルメタクリレート:AMA
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート:BD
t−ブチルハイドロパーオキサイド:tBH
クメンハイドロパーオキサイド:CHP
n−オクチルメルカプタン:n−OM
【0134】
また、実施例および比較例において、調製したゴム含有多段重合体の評価、着色アクリル樹脂フィルムの諸物性の測定は、以下の試験法により実施した。
(1)ゴム含有多段重合体の質量平均粒子径:
乳化重合にて得られたゴム含有多段重合体のポリマーラテックスを大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700を用い、動的光散乱法で測定し求めた。
(2)着色アクリル樹脂フィルムの全光線透過率:
JIS K7361−1に準拠して測定した。
(3)着色アクリル樹脂フィルムの色度座標(x,y)およびY値:
日本色研事業(株)の標準色カード230(マンセル記号がN5.5のねずみ色)と着色アクリル樹脂フィルムとを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明および受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した。
(4)白色反射シート上での着色アクリル樹脂フィルムの色度座標(x,y)およびY値:
市販のカプセルレンズ型再帰反射シート(白)(ニッカポリマ(株)製、商品名:ニッカライトULS)上に着色アクリル樹脂フィルムをのせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明および受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した。
(5)視認性:
市販のカプセルレンズ型再帰反射シート(白)(ニッカポリマ(株)製、商品名:ニッカライトULS)に着色アクリル樹脂フィルムを貼りあわせ、これから外径10cm、幅2cmのドーナツ状の再帰反射シートを切り出した。切り出した再帰反射シートを、20cm×20cmの昼白色の白紙に貼り付け、地面と垂直に設置して、再帰反射シートから約50m離れた距離に自動車を止め、その運転席から再帰反射シートを観察した。なお、切り出したドーナツ状の再帰反射シートを照明する光としては、その自動車のヘッドライトを用いた。
○:切り出したドーナツ状の円がはっきり確認できる。
×:切り出したドーナツ状の円がはっきり確認できない。
(6)耐候性:
着色アクリル樹脂フィルムを厚さ3mmのアクリル板に140℃で熱ラミネートし、その試料の着色アクリル樹脂フィルム側をサンシャインウエザーオメーター(スガ試験機(株)製)を使用して、降雨有りの条件[降雨サイクル:18分(降雨)/102分(降雨なし)]で、温度63℃、放射照度が300〜700nmについて255W/m2 の条件下に、促進暴露試験を行い、促進曝露試験2200時間後の色相の変化を目視にて評価し、色の変化がほとんどみられなかったときを○、色の変化が著しかったときを×とした。
(7)ヘーズ
JIS K7136に準拠して測定した。
【0135】
(調製例1)
ゴム含有多段重合体(I)の調製:
冷却器付き重合容器内にイオン交換水195部を投入し、70℃に昇温し、さらに、イオン交換水5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.10部、硫酸第一鉄0.0002部、EDTA0.0006部を加えて調製した混合物を一括投入した。ついで、窒素下で撹拌しながら、MMA2.3部、BA2.13部、ST0.37部、BD0.2部、CHP0.01部からなる第1の単量体混合物および乳化剤(東邦化学工業(株)製:フォスファノールRS610NA)1.3部からなる混合物を8分間かけて重合容器に滴下した後、15分間反応を継続させて弾性重合体(I−A)を得た。ここで、弾性重合体(I−A)のTgは13℃であった。
続いて、重合容器内に、BA24.54部、ST4.26部、BD1.2部、AMA0.225部からなる第2の単量体混合物をCHP0.03部とともに90分間かけて添加した後、60分間反応を継続させて架橋弾性重合体を含む第1中間重合体(I−B)を得た。ここで、第1中間重合体(I−B)のTgは−40℃であった。
続いて、重合容器内に、MMA6部、BA3.28部、ST0.72部、AMA0.15部、およびCHP0.02部からなる第3の単量体混合物を30分間かけて滴下した後、60分間反応を継続させて第2中間重合体(I−C)を形成させた。この時点でのラテックス粒子径は0.06μmであった。
ついで、重合容器内に、MMA52.25部、BA2.26部、ST0.49部、n−OM0.193部、およびt−BH0.055部からなる第4の単量体混合物を130分間かけて滴下した後、60分間反応を継続させて硬質重合体(I−D)を形成させ、ゴム含有多段重合体(I)を含有する重合体ラテックスを得た。ここで、硬質重合体(I−D)のTgは94℃であった。重合後測定した質量平均粒子径は、0.09μmであった。
得られたゴム含有多段重合体(I−1)の重合体ラテックスを、濾材にSUS製のメッシュ(平均目開き62μm)を取り付けた振動型濾過装置を用い濾過した後、酢酸カルシウム3部を含む水溶液中で塩析させ、水洗回収後、乾燥し、粉体状のゴム含有多段重合体(I)を得た。
【0136】
(調製例2)
ゴム含有多段重合体(III)の調製:
攪拌機を備えた容器に脱イオン水10.8部を仕込んだ後、MMA0.3部、n−BA4.45部、1,3−BD0.2部、AMA0.05部、CHP0.025部からなる単量体混合物を投入し、室温下にて攪拌混合した。ついで、乳化剤(東邦化学工業(株)製:フォスファノールRS610NA)1.3部を攪拌しながら上記容器に投入し、再度攪拌を20分間継続し、乳化液を調製した。
つぎに、冷却器付き重合容器内に脱イオン水139.2部を投入し、75℃に昇温し、さらに、イオン交換水5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.20部、硫酸第一鉄0.0001部、EDTA0.0003部を加えて調製した混合物を該重合容器内に一括投入した。ついで、窒素下で攪拌しながら、乳化液を8分間にわたり該重合容器に滴下した後、15分間反応を継続させ、重合を完結させて弾性重合体の内側層(III−A−1)を得た。続いて、MMA9.5部、n−BA14.25部、BD1.0部、AMA0.25部からなる単量体混合物をCHP0.016部とともに90分間にわたり該重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、弾性重合体の外側層である架橋弾性重合体(III−A−2)を形成し、弾性重合体(架橋ゴム弾性体)(III−A)を得た。ここで、内側層(III−A−1)単独のTgは−48℃、外側層(III−A−2)単独のTgは−10℃であった。
続いて、MMA5.96部、MA3.97部、AMA0.07部からなる単量体混合物をCHP0.0125部とともに45分間にわたり該重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、中間重合体(III−B)を形成させた。ここで、中間重合体(III−B)単独のTgは60℃であった。
ついで、MMA57部、MA3部、n−OM0.264部、t−BH0.075部からなる単量体混合物を140分間にわたり該重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、硬質重合体(III−C)を形成し、ゴム含有多段重合体(III)の重合体ラテックスを得た。ここで、硬質重合体(III−C)単独のTgは99℃であった。重合後測定した質量平均粒子径は0.11μmであった。
得られたゴム含有多段重合体(III)の重合体ラテックスを、調製例1と同様の方法で濾過した後、酢酸カルシウム3.5部を含む水溶液中で塩析させ、水洗回収後、乾燥し、粉体状のゴム含有多段重合体(III)を得た。
【0137】
(調製例3)
ゴム含有多段重合体(IV)の調製:
攪拌機を備えた容器に脱イオン水10.8部を仕込んだ後、MMA0.3部、n−BA4.5部、1,3−BD0.2部、AMA0.05部、CHP0.025部からなる単量体混合物を投入し、室温下にて攪拌混合した。ついで、乳化剤(東邦化学工業(株)製:フォスファノールRS610NA)1.1部を攪拌しながら上記容器に投入し、再度攪拌を20分間継続し、乳化液を調製した。
つぎに、冷却器付き重合容器内に脱イオン水139.2部を投入し、75℃に昇温し、さらに、イオン交換水5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.20部、硫酸第一鉄0.0001部、EDTA0.0003部を加えて調製した混合物を該重合容器内に一括投入した。ついで、窒素下で攪拌しながら、乳化液を8分間にわたり該重合容器に滴下した後、15分間反応を継続させ、重合を完結させて第一弾性重合体(IV−A)を得た。続いて、MMA1.5部、n−BA22.5部、BD1.0部、AMA0.25部からなる単量体混合物をCHP0.016部とともに90分間にわたり該重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、第二弾性重合体(IV−B)を形成させ、二段架橋ゴム弾性体を得た。ここで、第一弾性重合体(IV−A)単独のTg、第二弾性重合体(IV−B)単独のTgはともに−48℃であった。
続いて、MMA6.0部、BA4.0部、AMA0.075部からなる単量体混合物をCHP0.0125部とともに45分間にわたり該重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、中間重合体(IV−D)を形成させた。ここで、中間重合体(IV−D)単独のTgは20℃であった。
ついで、MMA55.2部、BA4.8部、n−OM0.192部、t−BH0.075部からなる単量体混合物を140分間にわたり該重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、硬質重合体(IV−C)を形成し、ゴム含有多段重合体(IV)の重合体ラテックスを得た。ここで、硬質重合体(IV−C)単独のTgは84℃であった。重合後測定した質量平均粒子径は0.12μmであった。
得られたゴム含有多段重合体(IV)の重合体ラテックスを、調製例1と同様の方法で濾過した後、酢酸カルシウム3.5部を含む水溶液中で塩析させ、水洗回収後、乾燥し、粉体状のゴム含有多段重合体(IV)を得た。
【0138】
[実施例1〜6、比較例4、5]
調製例1で得られたゴム含有多段重合体(I)、調製例2で得られたゴム含有多段重合体(III)、調整例3で得られたゴム含有多段重合体(IV)、熱可塑性重合体(II−1)、熱可塑性重合体(II−2)、紫外線吸収剤として(株)ADEKA製LA−31RG(商品名)、光安定剤として(株)ADEKA製LA−57(商品名)、抗酸化剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガノックス1076(商品名)、顔料、染料を表に示す配合量(質量比)でヘンシェルミキサーを用いて混合し、この混合物を230℃に加熱した脱気式押出機(池貝鉄工(株)製PCM−30)に供給し、混練してペレットを得た。
【0139】
ここで、熱可塑性重合体(II−1)としては、ダイヤナールBR−75(三菱レイヨン(株)製、還元粘度0.057l/g)を用い、熱可塑性重合体(II−2)としては、ダイヤナールBR−80(三菱レイヨン(株)製、還元粘度0.059l/g)を用いた。
顔料、染料としては、アンスラキノン系赤色顔料(CI Pigment Red 177)を50質量%含有する「大日精化工業(株)製、商品名ダイミックカラーMBR 151」、アンスラキノン系黄色染料(CI Solvent Yellow 163)を91質量%含有する「大日精化工業(株)製、商品名ダイミックカラーMBR D−05」、アンスラキノン系黄色顔料(CI Pigment Yellow 199)を50質量%含有する「大日精化工業(株)製、商品名ダイミックカラーMBR 421」、ペリレン系赤色顔料(CI Pigment Red 149)を50質量%含有する「大日精化工業(株)製、商品名ダイミックカラーMBR 155」、アンスラキノン系赤色染料(CI Disperse Red 22)を91質量%含有する「大日精化工業(株)製、商品名ダイミックカラーMBR D−09」を用いた。
【0140】
上記の方法で製造したペレットを80℃で一昼夜乾燥し、300mm幅のTダイを取り付けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)を用いてシリンダー温度200℃〜240℃、Tダイ温度250℃、冷却ロール温度80℃で75μm厚みの着色アクリル樹脂フィルムに製膜した。
得られた着色アクリル樹脂フィルムのXYZ表色系での色度座標(x,y)を図2〜3に、Y値、全光線透過率の測定結果、視認性、耐候性の評価結果等を表に示す。
【0141】
[実施例7〜9、比較例1〜3]
紫外線吸収剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製チヌビン1577を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で75μm厚みの着色アクリル樹脂フィルムを得た。
得られた着色アクリル樹脂フィルムのXYZ表色系での色度座標(x,y)を図2〜3に、Y値、全光線透過率の測定結果、視認性、耐候性の評価結果等を表に示す。
【0142】
【表1】

【0143】
【表2】

【0144】
各表中に記載の顔料および染料の配合量は、製品としての配合量である。すなわち、例えば実施例1において、「MBR 151」について「1.5質量部」と記載されているが、これは、正味の顔料量としては「0.75質量部」配合されていることを意味する。
【0145】
実施例および比較例より、つぎのことが明らかとなった。
実施例1〜9における着色アクリル樹脂フィルムを用いると、DINの規格を満足し、視認性、耐候性が良好であり、工業的利用価値が高い再帰反射シートを提供できることが示された。
【0146】
一方、比較例1、2および5の着色アクリル樹脂フィルムを用いると、得られる再帰反射シートは、耐候性は良好であるものの、透明性が低く、視認性が劣り、比較例3および4の着色アクリル樹脂フィルムを用いると、得られる再帰反射シートは、視認性は良好であるものの、耐候性に劣るものであった。
よって、これら比較例1〜5の着色アクリル樹脂フィルムを用いた再帰反射シートは、いずれも再帰反射シートとして必要となる色相、高度な視認性、耐候性が得られないため、工業的利用価値が低いことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムを使用することによって、耐候性と視認性とを備え、透明性、色相も満足する再帰反射シートを提供できる。このような再帰反射シートは、道路標識、工事標識等、様々な表示類に使用でき、工業的利用価値が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムが満足するXYZ表色系での色度座標(x,y)の範囲を示すグラフである。
【図2】実施例および比較例の着色アクリル樹脂フィルムのXYZ表色系での色度座標(x,y)を示すグラフである。
【図3】図2を拡大したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再帰反射シートの表皮材として用いられ、アクリル樹脂とアンスラキノン系赤色顔料とアンスラキノン系黄色染料とを含有する着色アクリル樹脂フィルムであって、
前記アンスラキノン系赤色顔料はアクリル樹脂100質量部に対して0.5〜1質量部配合され、前記アンスラキノン系赤色顔料と前記アンスラキノン系黄色染料との質量比(アンスラキノン系赤色顔料/アンスラキノン系黄色染料)は1/5〜10/1であり、
JIS K7361−1に規定する方法で測定されたときの全光線透過率が17%以上であることを特徴とする再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルム。
【請求項2】
アンスラキノン系黄色顔料をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムと、マンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、該再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルム側をJIS Z8722に規定する照明および受光の幾何学的条件a(45゜照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定したY値が、2〜12の範囲であることを特徴とする再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−208197(P2008−208197A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45379(P2007−45379)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】