説明

再構成された遺伝子の単クローン性を判定する方法、及びこれを利用した腫瘍性病変の鑑別方法

【課題】 腫瘍性病変の有無を鑑別するために用いられる方法、並びに当該方法を用いた腫瘍性病変の鑑別方法を提供する。
【解決手段】腫瘍性病変の鑑別方法に、下記工程
(1)ゲノムDNAを、ゲノムにおいて出現頻度が高く、上記対象とする遺伝子の再構成によって除去されない領域部位を認識する制限酵素aで切断する、
(2)上記(1)で得られたDNA断片の制限酵素切断部にリンカーを接続する、
(3)上記(2)で得られたリンカー付きDNA断片を、ゲノムにおいて出現頻度が低く、上記対象とする遺伝子の再構成によって除去されない領域部位を認識する制限酵素bで切断する、
(4)(2)で得られたリンカー付きDNA断片の下流領域にハイブリダイズするプライマー及びリンカー領域の塩基配列と相補的な塩基配列にハイブリダイズするプライマーを用いて、上記(3)で得られたDNA断片を鋳型にPCRをする、及び
(5)(4)で得られるPCR産物の単一性を測定する、
を有する、再構成された遺伝子の単クローン性の判定法を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍性病変を鑑別するための方法に関する。より詳細には、本発明は手術によって病変組織を摘出することなく低侵襲的に、また簡単に腫瘍性病変の有無を鑑別するために用いられる方法、並びに当該方法を用いた腫瘍性病変の鑑別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リンパ球が増殖する病変には、反応性リンパ節腫脹や橋本病などのように炎症性(反応性)(良性)のものと、B細胞悪性リンパ腫のように腫瘍性(悪性)のものとがあり、臨床現場では治療方法を決定するために病変がそのいずれかであるかを鑑別診断する必要がある。通常、かかる鑑別診断には、病変部の細胞を穿刺吸引して診断する「穿刺吸引細胞診」が行われることが多い。しかしながら、細胞診では病変が炎症性(良性)なのか腫瘍性(悪性)なのかを明確に判定することは困難であり、その確定診断には、手術によって病変組織を摘出して病理組織診断(手術生検)を行うか、または当該病変組織から採取したゲノムDNAを用いてサザンブロット法を行う方法が採用されている(例えば、非特許文献1及び2等参照)。しかしながら、診断の段階で、病変組織を摘出することは患者に対する精神的及び肉体的負担が大きく、低侵襲的な検査法の開発が求められている。
【0003】
悪性リンパ腫において腫瘍細胞はしばしば特定の遺伝子の再構成を起こすことが知られている(例えば、非特許文献3参照)。もっとも正常のリンパ球等も遺伝子の再構成を起こすが、この場合は再構成を起こした後のそれぞれの遺伝子配列は多種多様であって多クローン性である。それに対して上記腫瘍細胞の場合は、いずれも1つの細胞に由来しているため、遺伝子配列は単クローン性である。この事実を利用すると、病変組織に由来する遺伝子の配列が単クローン性であるかまたは多クローン性であるかを判定することにより、その病変組織が悪性リンパ腫などの腫瘍性のものか、それとも反応性リンパ節腫脹や橋本病などの炎症性(反応性)のものかといった鑑別診断が可能である。
【0004】
前述するサザンブロット法はこれを利用した識別診断であるが、その方法には10μgものゲノムDNAを必要とするため、当該方法が適応できるのは前述するように手術により病変組織を摘出した標本に限られる(例えば、非特許文献2等参照)。一方、PCR法もまたこうした識別診断に使用され、1〜2μgといった小量のゲノムDNAで解析可能であるという利点を有するものの、再構成を起こした遺伝子の上流の配列は多種多様であるため、配列を効率よく増幅させるためのプライマーを設計するのは困難であり、結果として検出感度が低下するといった欠点がある(例えば、非特許文献4等参照)。
【非特許文献1】Cleary ML, Chao J, Warnke R, Sklar J 1984 Immunoglobulin gene rearrangement as a diagnostic criterion of B-cell lymphoma. Proc Natl Acad Sci U S A 81:593-597
【非特許文献2】Matsuzuka F, Miyauchi A, Katayama S, Narabayashi I, Ikeda H, Kuma K, Sugawara M 1993 Clinical aspects of primary thyroid lymphoma: diagnosis and treatment based on our experience of 119 cases. Thyroid 3:93-99
【非特許文献3】Tupchong L, Hughes F, Harmer CL 1986 Primary lymphoma of the thyroid: clinical features, prognostic factors, and results of treatment. Int J Radiat Oncol Biol Phys 12:1813-182
【非特許文献4】Brisco MJ, Tan LW, Orsborn AM, Morley AA 1990 Development of a highly sensitive assay, based on the polymerase chain reaction, for rare B-lymphocyte clones in a polyclonal population. Br J Haematol 75:163-167
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は腫瘍性病変を、正常部位若しくは良性の炎症性病変と区別して鑑別するために用いられる方法、好ましくは当該鑑別を低侵襲的に且つ簡便に実施するために用いられる方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、この方法を利用して腫瘍性病変を鑑別する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述するように、腫瘍細胞では遺伝子が再構成を起こすことが知られている。このため、再構成を起こした遺伝子を検出することによって、腫瘍細胞と腫瘍細胞ではない細胞(非腫瘍細胞)とを区別することが可能である。しかしながら、非腫瘍細胞も再構成を起こす場合があり、再構成の有無だけを指標としては腫瘍細胞と非腫瘍細胞とを明確に区別することができない。そこで本発明者は、非腫瘍細胞は多クローン性であるのに対して腫瘍細胞は単クローン性であることに着目し、腫瘍細胞と非腫瘍細胞を区別する手段として、「再構成を起こした遺伝子の検出」に加えて、当該再構成を起こした遺伝子が単クローン性であるか否かを判定することによって、上記本発明の目的が達成できることを見いだした。
【0007】
さらに、本発明者は、当該方法をより低侵襲的に且つ簡便に行うために、小量のゲノムDNAで上記の「再構成を起こした遺伝子の検出」ができる方法を検討していたところ、腫瘍細胞において再構成を起こすことが知られている遺伝子について、再構成の際に順序が逆転する制限酵素認識部位があることを見いだした。そこでかかる関係にある制限酵素による切断部位の違いを利用することによって、小量のゲノムDNAを用いて再構成の有無を識別することができ、その結果、より低侵襲的に且つ簡便に上記方法が実施できることを確認した。
【0008】
本発明は、第1に腫瘍性病変を識別するための方法として、再構成された遺伝子の単クローン性を判定する方法を提供するものである。
【0009】
本発明が提供する「再構成された遺伝子の単クローン性を判定する方法」は、検体より調製されたゲノムDNAを対象として、2種類の制限酵素(a、b)による処理と、得られたDNA断片の制限酵素aによる切断部にリンカーを接続する処理と、当該リンカー付きDNA断片を鋳型にしてPCRを行うことを基本とするものである。具体的には、当該「再構成された遺伝子の単クローン性を判定する方法」は、下記項1及び2に記載する構成を基本とする。
項1. 下記の工程を有する、再構成された遺伝子の単クローン性を判定する方法:
(1) ゲノムDNAを、ゲノムにおいて出現頻度が高く、上記対象とする遺伝子において再構成を起こす可能性のある領域に存在しない配列を認識する制限酵素aで切断する、
(2) 上記(1)で得られたDNA断片の制限酵素切断部にリンカーを接続する、
(3) 上記(2)で得られたリンカー付きDNA断片を、ゲノムにおいて出現頻度が低く、上記対象とする遺伝子において再構成を起こす可能性のある領域に存在せず、上記制限酵素aの認識配列と上記対象とする遺伝子において再構成を起こす可能性のある領域の開始部位との間に存在する配列を認識する制限酵素bで切断する、
(4) 上記対象とする遺伝子において再構成を起こす可能性のある領域の下流領域にハイブリダイズするプライマー及びリンカー領域の塩基配列と相補的な塩基配列にハイブリダイズするプライマーを用いて、上記(3)で得られたDNA断片を鋳型にしてPCRをする、及び
(5) (4)で得られるPCR産物の単一性を測定する。
【0010】
項2. 上記(4)のPCR工程として:
(4-1) (2)で得られたリンカー付きDNA断片の下流領域にハイブリダイズするプライマー1及びリンカー領域の塩基配列と相補的な塩基配列にハイブリダイズするプライマー2を用いて、上記(3)で得られたDNA断片を鋳型にしてPCRをし、次いで
(4-2) (4-1)で得られたPCR産物を鋳型にして、当該鋳型の下流領域であって上記プライマー1がハイブリダイスする領域よりも上流領域にハイブリダイズするプライマー3、及びリンカー領域の塩基配列と相補的な塩基配列にハイブリダイズするプライマーであって上記プライマー2がハイブリダイスする領域よりも下流領域にハイブリダイズするプライマー4を用いてPCRを行う
ことを特徴とする項1記載の再構成された遺伝子の単クローン性を判定する方法。
【0011】
なお、上記の(1)工程で使用される制限酵素aは、その認識部位がゲノム配列において出現頻度が高いものであって(例えば4塩基を認識する制限酵素など)、対象とする遺伝子において再構成を起こす可能性のある領域に存在しないということを指標として、対象とする遺伝子に応じて適宜選択することができる。また、(3)工程で使用される制限酵素bは、その認識部位がゲノム配列において出現頻度が低いものであって(例えば6塩基以上の塩基を認識する制限酵素など)、対象とする遺伝子において再構成を起こす可能性のある領域に存在せず、上記制限酵素aの認識配列と対象とする遺伝子において再構成を起こす可能性のある領域の開始部位との間に存在する配列を認識するということを指標として、対象とする遺伝子に応じて適宜選択することができる。
【0012】
B型細胞性悪性リンパ腫では、イムノグロブリン重鎖(IgH)の遺伝子(以下、「IgH遺伝子」ともいう)が、J領域で上流のV領域とD領域の配列と再構成する遺伝子であることが知られている。そこで上記の対象遺伝子として、かかるIgH遺伝子を用いることができる。上記の対象遺伝子として当該IgH遺伝子を用いた場合、(1)工程で使用される制限酵素aとしてはTsp509Iを、また(3)工程で使用される制限酵素bとしてはBbrPIを挙げることができる。
【0013】
また、B型細胞性悪性リンパ腫では、イムノグロブリン軽鎖κの遺伝子(以下、「IgLκ遺伝子」ともいう)が、J領域で上流のV領域の配列と再構成する遺伝子であることが知られている。そこで上記の対象遺伝子として、かかるIgLκ遺伝子を用いることができる。当該gLκ遺伝子を上記対象遺伝子として用いた場合、(1)工程で使用される制限酵素aとしてはHpaIIまたはMspIのいずれかを、また(3)工程で使用される制限酵素bとしてはBbuI, Bst1107I, Bstz17I, EcoT22I, NcoI, NsiI, PvuII, SphI, 及びTth111Iからなる群から選択されるいずれかを挙げることができる。
【0014】
上記方法は、腫瘍性病変を鑑別するために有効に利用できることができる。具体的には、上記のゲノムDNAとして、悪性リンパ腫を疑う所見を呈する患者の当該病変部から採取された細胞から調製されたゲノムDNAを用いて、上記方法を実施することによって、当該病変部が腫瘍性病変であるか否かを鑑別することができる。
【0015】
すなわち、本発明は、第2に、上記方法を用いることによって、腫瘍性病変を、低侵襲的に且つ簡便に、正常部または良性の炎症性病変と区別して、鑑別する方法を提供するものである。当該方法には、下記の項6及び7に記載する態様のものが含まれる:
項6. 被験細胞または組織から調製されたゲノムDNAを用いて請求項3または4に記載する方法を実施し、得られた判定結果に基づいて、上記被験細胞または組織が腫瘍性のものか、または非腫瘍性のものかを鑑別する方法。
項7. ゲノムDNAとして、悪性リンパ腫を疑う所見を呈する患者の当該病変部から採取された細胞から調製されたものを用いて請求項3または4に記載する方法を実施し、得られた判定結果に基づいて、上記病変部が腫瘍性のものかまたは非腫瘍性のものかを鑑別する方法。
【0016】
以下、本発明をより詳細に説明するために、対象遺伝子としてイムノグロブリン重鎖(IgH)遺伝子及びイムノグロブリン軽鎖κ(IgLκ)遺伝子を一例として、再構成されたIgH遺伝子または(IgLκ)遺伝子の単クローン性を判定する方法について説明する。通常、リンパ球B細胞は、悪性リンパ腫(腫瘍性)及び正常細胞の別に関わらず、IgH遺伝子やIgLκ遺伝子に再構成が生じることが知られている。
【0017】
図1のAに、再構成を起こしていないIgH遺伝子(以下、「非再構成IgH遺伝子」ともいう)のJ領域の模式図と、再構成を起こしたIgH遺伝子(以下、「再構成IgH遺伝子」ともいう)の上記領域に対応する領域の模式図を示す。これからわかるように、IgH遺伝子は、J領域(J領域の特にJ1、J2及びJ3領域)でその上流に位置するV領域及びD領域と再構成を起こし(J4領域の上流にVDJ領域が形成)、それに伴って、非再構成IgH遺伝子ではJ1領域の上流域に上流からTsp509I及びBbrPIの順で位置していた制限酵素認識部位が、再構成により形成されたVDJ領域の上流域に、上流からBbrPI及びTsp509Iの順に上記と逆転して位置するようになる。
【0018】
同様に図1のBに、再構成を起こしていないIgLκ遺伝子(以下、「非再構成IgLκ遺伝子」ともいう)のJ領域の模式図と、再構成を起こしたIgLκ遺伝子(以下、「再構成IgLκ遺伝子」ともいう)の上記領域に対応する領域の模式図を示す。これからわかるように、IgLκ遺伝子は、J領域(J領域の特にJκ1及びJκ2領域)でその上流に位置するV領域と再構成を起こし(J3領域の上流にVJ領域が形成)、それに伴って、非再構成IgLκ遺伝子ではJκ1領域の上流域に、上流から制限酵素a(HpaIIまたはMspI)及び制限酵素b(BbuI, Bst1107I, Bstz17I, EcoT22I, NcoI, NsiI, PvuII, SphI, またはTth111I)の順で位置していた制限酵素認識部位が、再構成により形成されたVJ領域の上流域に、上流から制限酵素b及び制限酵素aの順に上記と逆転して位置するようになる。
【0019】
B細胞悪性リンパ腫は、単一細胞に由来するため、再構成を起こしたIgH遺伝子の塩基配列は一種類しかない。それに対して、正常Bリンパ球の集団はポリクローナルであるため、再構成を起こしたIgH遺伝子には多種類の塩基配列が存在する。よって、再構成を起こしたIgH遺伝子について、そのクロナリティーを判定することによって、対象のリンパ球B細胞が腫瘍性細胞なのか、非腫瘍性細胞なのかを鑑別することができる。すなわち、再構成を起こしたIgH遺伝子が単クローン性であれば、対象のリンパ球B細胞が腫瘍性細胞であると判断され、逆に多クローン性であれば非腫瘍性細胞であると判断される。
【0020】
再構成されたIgH遺伝子の単クローン性を判定する方法は、基本的には下記(1)〜(5)の工程によって実施することができる:
(1) ゲノムDNAを制限酵素Tsp509Iで切断する
(2) 上記(1)で得られたDNA断片のTsp509I切断部にリンカーを接続する
(3) 上記(2)で得られたリンカー付きDNA断片を制限酵素BbrPIで切断する
(4) (2)で得られたリンカー付きDNA断片の下流領域にハイブリダイズするプライマー及びリンカー領域の塩基配列と相補的な塩基配列にハイブリダイズするプライマーを用いて、上記(3)で得られたDNA断片を鋳型にPCRをする、及び
(5) (4)で得られるPCR産物の単一性を測定する。
【0021】
かかる(1)〜(5)の工程を、以下、図2及び図3を参照しながら説明する。
【0022】
(1)ゲノムDNAを制限酵素Tsp509Iで切断する:
ここでゲノムDNAは、被験者から採取した組織または細胞から常法に従って抽出調製することができる。簡便には、キアゲン社製の「QIA amp DNA Mini Kit」等の市販のDNA抽出キットをそのマニュアルに従って用いることによって調製することができる。採取する組織は特に制限されないが、例えば、腫瘍性病変が疑われる組織を好適に挙げることができる。例えば、リンパ節の腫脹は、悪性リンパ腫によるものか、それとも炎症性(反応性)の腫脹なのか判断できない場合が多い。かかる場合、腫脹部から組織または細胞を採取し、それからゲノムDNAを調製することができる。
【0023】
本発明の方法は、最低200ng、好ましくは1μgのゲノムDNAがあれば実施することができる。このため、被験者から手術によって組織を採取する必要はなく、穿刺吸引等によって病変部から採取して得られる細胞をゲノムDNAの調製材料として使用することができる。例えば、甲状腺の腫脹において、悪性リンパ腫なのか、反応性リンパ節腫脹や橋本病などの反応性疾患なのか、判断がつかない場合が多い。こうした場合でも、本発明の方法は、腫脹部を切開することなく、細い針で穿刺吸引することによって回収した細胞から、検査に必要な量のゲノムDNAが調製できる。この意味で本発明の方法は、被験者に対して精神的及び肉体的負担の少ない、低侵襲的な方法であるといえる。
【0024】
斯くして得られたゲノムDNAを、制限酵素Tsp509Iで処理する。制限はされないが、200ngのゲノムDNAに対して、5Uの制限酵素Tsp509Iを用いて65℃で1時間程度処理することによって、ゲノムDNAの制限酵素Tsp509I認識部位が切断される。図2に示すように、非再構成IgH遺伝子は、J1領域の上流域に、上流からTsp509I認識部位及びBbrPI認識部位の順に制限酵素認識部位を有しているため、制限酵素Tsp509I処理によってJ1領域の上流がBbrPI認識部位を残した状態で切断されることになる。一方、再構成IgH遺伝子は、VDJ領域の上流域に、上流からBbrPI認識部位及びTsp509I認識部位の順に制限酵素認識部位を有しているため、制限酵素Tsp509I処理によってBbrPI認識部位を含む領域が切り落とされることになる。
【0025】
(2)上記(1)で得られたDNA断片のTsp509I切断部にリンカーを接続する:
ここでリンカーとして、Tsp509I切断部に接続するオリゴヌクレオチドを任意に使用することができる。リンカーは、上記(1)で得られたDNA断片の正鎖に接続するものと逆鎖に接続するものの2種類用いられる。
【0026】
正鎖に接続させるリンカーの長さは、特に制限されないが、40〜50塩基長のものを挙げることができる。逆鎖に接続させるリンカーには、3'末端がアミノ基で修飾され5'末端はリン酸化されたオリゴヌクレオチドが用いられる。かかるリンカーを3'末端に接続させた逆鎖のオリゴヌクレオチドは、3'末端がアミノ基で修飾されているため、PCRの増幅鋳型にならず、正鎖を鋳型としたPCR産物を特異的に増幅させることが可能となる。逆鎖に接続させるリンカーの長さも、特に制限されないが、10〜20塩基長のものを挙げることができる。
【0027】
制限はされないが、正鎖に接続させるリンカーとしては、下記のTLで示されるオリゴヌクレオチドを、逆鎖に接続させるリンカーとしては、下記のTSで示されるオリゴヌクレオチドを挙げることができる。なお、TSは5'末端がリン酸化されており、3'末端がアミノ基で修飾されている。
TL; CAGGATATCGGCGACCACTAAGCGTCTACCGCTGAGATCTCCCGACCA(配列番号1)
TS; AATTTGGTCGGGAG (phosphorylated in 5'and amino modifier C7 in 3')(配列番号2)。
【0028】
斯くして、図2に示すように、非再構成IgH遺伝子に由来するDNA断片には、JI領域の上流に制限酵素BbrPI認識部位を介してリンカーが接続され、再構成IgH遺伝子に由来するDNA断片には、VDJ領域の上流に、制限酵素BbrPI認識部位が存在することなく、リンカーが接続される。
【0029】
(3)上記(2)で得られたリンカー付きDNA断片を制限酵素BbrPIで切断する:
当該工程では、上記で得られたリンカー付きDNA断片を制限酵素BbrPIで処理する。制限はされないが、上記200ngのゲノムDNAに対して、10Uの制限酵素BbrPIを用いて37℃で2時間程度処理する。
【0030】
前述するように、非再構成IgH遺伝子に由来するDNA断片は、リンカーとJI領域の間に制限酵素BbrPI認識部位が存在するため、上記制限酵素BbrPI処理によって切断される。これに対して再構成IgH遺伝子に由来するDNA断片は、制限酵素BbrPI認識部位が存在しないため、上記制限酵素BbrPI処理によって切断されることがない(図3参照)。
【0031】
(4)(2)で得られたリンカー付きDNA断片の下流領域にハイブリダイズするプライマー及びリンカー領域の塩基配列と相補的な塩基配列にハイブリダイズするプライマーを用いて、上記(3)で得られたDNA断片を鋳型にPCRをする:
当該PCR工程によれば、プライマーとしてリンカー領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドと、(2)で得られたリンカー付きDNA断片の下流領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを用いることによって、上記制限酵素BbrPI処理によって切断されることなく、(2)で得られたリンカー付きDNA断片の塩基長をそのまま有する再構成IgH遺伝子を選択的に増幅することができる。
【0032】
また、(2)で得られたリンカー付きDNA断片のうち、逆鎖は前述するように3'末端側がアミノ基が修飾しているためPCRの増幅鋳型とならず、(2)で得られたリンカー付きDNA断片のうち、正鎖を鋳型とするPCR産物が特異的に増幅される。
【0033】
(2)で得られたリンカー付きDNA断片の下流領域にハイブリダイズするプライマーとしては、特に制限されないが、図2に示すように、IgH遺伝子のJ6領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(J6I)、またはその下流域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(J6E)を例示することができる。下記にこれらプライマーの塩基配列の一例を示す。
【0034】
J6E: CCCACAGGCAGTAGCAGAAAACAA(配列番号3)
J6I: GCAGAAAACAAAGGCCCTAGAGTG(配列番号4)。
【0035】
リンカー領域にハイブリダイズするプライマーとしては、特に制限されないが、図3に示すように、リンカー(TL)の上流域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(V1)、またはリンカー(TL)の上流域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(V2)を例示することができる。下記にこれらプライマーの塩基配列の一例を示す。
V1: CAGGATATCGGCGACCACTAAGCG(配列番号5)
V2: ACTAAGCGTCTACCGCTGAGATCTCC(配列番号6)。
【0036】
なお、当該(4)のPCR工程は、図3に示すように、下記(4-1)及び(4-2)の2段階のステップで行うことが好ましい:
(4-1) 1st PCR
(2)で得られたリンカー付きDNA断片の下流領域にハイブリダイズするプライマー1及びリンカー領域の塩基配列と相補的な塩基配列にハイブリダイズするプライマー2を用いて、上記(3)で得られたDNA断片を鋳型にしてPCRをし、次いで
(4-2) 2nd PCR
(4-1)で得られたPCR産物を鋳型にして、当該鋳型の下流領域であって上記プライマー1がハイブリダイスする領域よりも上流領域にハイブリダイズするプライマー3、及びリンカー領域の塩基配列と相補的な塩基配列にハイブリダイズするプライマーであって上記プライマー2がハイブリダイスする領域よりも下流領域にハイブリダイズするプライマー4を用いてPCRを行う。
【0037】
ここで、一例として、(4-1)の1st PCRで使用されるプライマー1及び2としてそれぞれ上記のプライマーJ6E及びプライマーV1を、また(4-2)の2nd PCRで使用されるプライマー3及び4としてそれぞれ上記のプライマーJ6I及びプライマーV2を例示することができる。
【0038】
PCRの反応条件は、常法に従うことができる。詳細は後述する実施例に記載する条件を参考にすることができる。
【0039】
(5)(4)で得られるPCR産物の単一性を測定する:
上記(1)〜(4)の工程により、再構成IgH遺伝子を非再構成IgH遺伝子と区別して、選択的に増幅することができる。増幅によって得られたPCR産物の単一性の測定は、PCR産物(オリゴ・ポリヌクレオチド)の単一性を評価できる方法であれば特に制限されることなく、任意の方法を使用することができる。簡便な方法として、当業界に汎用の電気泳動法を使用してPCR産物の分子量を計測することができる。
【0040】
本工程で増幅された再構成IgH遺伝子の単一性を測定することによって、当該再構成IgH遺伝子のクロナリティーを評価することができる。すなわち、増幅された再構成IgH遺伝子が単一であれば、IgH遺伝子が同一細胞、すなわち腫瘍性細胞に由来するものであることを意味する。一方、増幅された再構成IgH遺伝子が単一でなく多様なものであれば、IgH遺伝子がポリクローナルな細胞、すなわち非腫瘍性細胞に由来するものであることを意味する。 よって上記の工程で得られる判定結果に基づいて、ゲノムDNAを採取した細胞または組織が、腫瘍性細胞(または組織)なのか、それとも非腫瘍性細胞(または組織)なのかといった、腫瘍性の有無を鑑別することができる。すなわち、上記本発明の再構成された遺伝子の単クローン性を判定する方法は、腫瘍性の鑑別に利用することができる。
【0041】
なお、再構成されたIgLκ遺伝子の単クローン性を判定する方法も、図4及び3を参照して、基本的には上記(1)〜(5)の工程によって実施することができる。なお、図4において、「制限酵素a」はHpaIIまたはMspIのいずれかを、「制限酵素b」はBbuI, Bst1107I, Bstz17I, EcoT22I, NcoI, NsiI, PvuII, SphI, 及びTth111Iからなる群から選択されるいずれかを示す。
【0042】
本発明はまた、被験細胞または組織について腫瘍性または非腫瘍性の別を鑑別する方法を提供する。当該方法は、被験細胞から調製されたゲノムDNAを用いて上記本発明の方法を実施し、そこから得られた判定結果に基づいて、上記被験細胞または組織について腫瘍性または非腫瘍性の別を鑑別することによって実施することができる。
【0043】
本発明の方法は、例えばゲノムDNAとして臓器の局所的腫大やリンパ節腫脹等が観察され、悪性リンパ腫が疑われる所見を呈する患者の当該病変部から採取された細胞や組織から調製されたものを用いて上記本発明の方法を実施し、得られた判定結果から、上記局所的腫大やリンパ節腫脹が腫瘍性のものか、それとも腫瘍性の炎症性のものなのかを鑑別するために利用することもできる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の方法によれば、悪性リンパ腫等のように、通常の細胞診では良性の反応性リンパ節腫脹との鑑別が困難な病変の判定を、小量の検体で行うことができる。かかる診断に必要な小量の検体は、穿刺吸引といった低侵襲的な方法によって採取することができるため、本発明によれば、診断のために病変組織の摘出手術を行わなくて済み、患者の精神的及び肉体的負担を軽減することができる。
【0045】
また、当発明方法によれば、腫瘍によって再構成を起こしている遺伝子の配列を検出し、また同定をすることが可能である。従って、PCRを利用して、被験者の血液や細胞・組織について、当該再構成遺伝子の存在を検出することにより、残存腫瘍の有無や再発の有無を確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下に、本発明の構成ならびに効果をより明確にするために、実施例を記載する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0047】
実施例1
本実施例では、本発明の方法を用いて、悪性リンパ腫に由来する病変と橋本病に由来する病変との鑑別判定する方法を例示する。
【0048】
B細胞性悪性リンパ腫ではイムノグロブリン重鎖(IgH)がJ領域で上流のV領域やD領域の配列と再構成を起こすことが知られている(Cleary ML, Chao J, Warnke R, Sklar J 1984 Immunoglobulin gene rearrangement as a diagnostic criterion of B-cell lymphoma. Proc Natl Acad Sci U S A 81:593-597)。正常なB細胞でも同様の再構成が起こるが、悪性リンパ腫では細胞が単クローンであるため再構成されたIgH遺伝子の配列も単クローン性である。一方、橋本病等の炎症性疾患では局在する細胞が多クローン性であるため、再構成されたIgH遺伝子の配列も多クローン性である。
【0049】
(1)DNAの調製及びPCR(図2及び3参照)
病理診断により橋本病、B細胞性悪性リンパ腫と判断された病変検体から、それぞれ小量(5mg)の組織を採取し、QIA amp DNA Mini Kit (キアゲン社製)を利用して、そのマニュアルに従ってDNAを抽出した。
【0050】
抽出したDNAのうち、200ngのゲノムDNAをまず制限酵素Tsp501I(5U、第一化学(株)製)を用いて65℃で1時間消化した。切断処理したDNAをフェノール・クロロフォルム抽出、及びエタノール沈殿によって精製した。次いで、これを3 mM Tris-HClと0.2 mM EDTAを含むLoTE緩衝液(pH 8)に溶解した。これにリンカーとなるポリヌクレオチド(TS, TL)を最終濃度0.5μMとなるように加えて、350U のT4 DNA Liagase(TAKARA社製)と10xT4 DNA ligase buffer (TAKARA社製)を含む反応液(20μl)を、4℃で16時間反応させ、DNAのTsp501I切断部位にリンカー(TS, TL)を接続した。
TS: AATTTGGTCGGGAG (phosphorylated in 5'and amino modifier C7 in 3')(配列番号1)
TL: CAGGATATCGGCGACCACTAAGCGTCTACCGCTGAGATCTCCCGACCA(配列番号2)。
【0051】
これをQIA quick PCR Purification Kit(キアゲン社製)を用いて、そのマニュアルに従って精製した。次いで得られたDNAを制限酵素 BbrPI(10U)を用いて37℃で2時間処理した。これをフェノール・クロロフォルム抽出して、エタノール沈殿で精製した後、LoTE緩衝液 50μlに溶解した。
【0052】
次いで、これを下記表1に記載する条件に基いて、2段階PCRを行い増幅した。
【0053】
【表1】

【0054】
なお、上記で使用したプライマーの塩基配列を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
上記PCRによって増幅されたPCR産物を1.5 % のアガロースゲルを用いて電気泳動を行った。検体(IgH遺伝子)が多クローン性の場合は際立った単一のバンドは存在せず、全体的なスメア像となるのに対し、単クローンの配列が存在するときは、際立ったバンドが出現する。例えば、図5の場合、レーン3〜6は橋本病患者(非腫瘍性)に由来する検体のPCR産物の電気泳動像であり、レーン7〜10は悪性リンパ腫患者に由来するPCR産物の電気泳動像である。なお、図5において、←は、再構成を起こしていない遺伝子の切れ残りに由来するPCR産物のバンドであり、これ以外にはっきりとしたバンドが一本観察された場合に、単一性(陽性)として判断する。これから分かるように、悪性リンパ腫患者に由来するPCR産物については単一のバンドが観察された。
【0057】
こうした電気泳動によって生じるバンドの違い(単一バンド、スメア)を基準として、上記各検体試料(IgH遺伝子)について単クローン性及び多クローン性の別を識別した。
【0058】
その結果、単クローン性と判断された検体(IgH遺伝子)を陽性、多クローン性と判断された検体(IgH遺伝子)を陰性として、陽性または陰性に属する検体数を纏めた結果を表3に示す。なお、表中( )内は、各疾患の検体総数に対する割合(%)を意味する。
【0059】
【表3】

【0060】
また橋本病、B細胞性悪性リンパ腫と判断された各病変検体について、従来法であるサザンブロット法(SBH)を用いて陽性(単クローン性、腫瘍性)及び陰性(多クローン性、非腫瘍性)の別を判定した。
【0061】
なお、サザンブロット法(SBH)は、Cleary MLらの方法[Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 81, 593-597 (1984)]の方法に従って、DIG DNA labeling kit及びDIG luminescent detection kit(Roche)を用いて行った。簡単には下記にようにして行った。各病変検体から10μgのDNAを抽出し、BamHI及びHindIIIで消化し、得られたDNA断片を0.8%のアガロースゲル上で電気泳動を行い、ナイロンメンブラン(Hybond-N+, Amasham Pharmacia)に転写した。これに、ジゴキゲニンで標識したJHゲノムDNAプローブ(5.4kb、Oncogene Science)を一晩ハイブリダイズさせた。その後、得られた膜を2時間室温下でブロッキング溶液に浸漬し、ブロッキング溶液を除いた後にアルカリ性ホスファターゼを結合した抗ジゴキゲニン抗体を添加した。洗浄後、CSPD(Roche)を加えることによってシグナルを検出し、次いで当該膜をX線フィルムに暴露した。
【0062】
本発明の方法で得られた結果と、サザンブロット法で得られた結果を表4に示す。
【0063】
【表4】

【0064】
表4に示すとおり非腫瘍性病変である橋本病では全例が陰性と判定された。これに対して、悪性リンパ腫では76.6%%が陽性と判定された。この陽性率は表4で示すとおり、SBHでの結果(73.3%)とほぼ同等である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】(A)(a-1)再構成を起こしていないIgH遺伝子のJ領域及びその上流域の制限酵素認識部位を示す模式図、及び(a-2)再構成を起こしたIgH遺伝子の上記J領域に対応する領域及びその上流域の制限酵素認識部位を示す模式図。(B)(b-1)再構成を起こしていないIgLκ遺伝子のJ領域及びその上流域の制限酵素認識部位を示す模式図、及び(b-2)再構成を起こしたIgLκ遺伝子の上記J領域に対応する領域及びその上流域の制限酵素認識部位を示す模式図。
【図2】(A)再構成を起こしていないIgH遺伝子のJ領域及びその上流域の制限酵素認識部位を示す模式図と制限酵素Tsp509Iで消化した後にリンカーを接続した状態を示す模式図、及び(B)再構成を起こしたIgH遺伝子の上記J領域に対応する領域及びその上流域の制限酵素認識部位を示す模式図と制限酵素Tsp509Iで消化した後にリンカーを接続した状態を示す模式図。
【図3】本発明の方法を工程順に示す模式図。
【図4】(A)再構成を起こしていないIgLκ遺伝子のJ領域及びその上流域の制限酵素認識部位を示す模式図と制限酵素aで消化した後にリンカーを接続した状態を示す模式図、及び(B)再構成を起こしたIgLκ遺伝子の上記J領域に対応する領域及びその上流域の制限酵素認識部位を示す模式図と制限酵素aで消化した後にリンカーを接続した状態を示す模式図。
【図5】橋本病患者(非腫瘍性)に由来する検体(レーン3〜6)及びの悪性リンパ腫患者に由来する検体(レーン7〜10)について、本発明の方法によって得られたPCR産物の電気泳動像である。Mはマーカーを、PBは末梢血を意味する。なお、←は、再構成を起こしていない遺伝子の切れ残りに由来するPCR産物のバンドを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を有する、再構成された遺伝子の単クローン性を判定する方法:
(1) ゲノムDNAを、ゲノムにおいて出現頻度が高く、上記対象とする遺伝子において再構成を起こす可能性のある領域に存在しない配列を認識する制限酵素aで切断する、
(2) 上記(1)で得られたDNA断片の制限酵素切断部にリンカーを接続する、
(3) 上記(2)で得られたリンカー付きDNA断片を、ゲノムにおいて出現頻度が低く、上記対象とする遺伝子において再構成を起こす可能性のある領域に存在せず、上記制限酵素aの認識配列と上記対象とする遺伝子において再構成を起こす可能性のある領域の開始部位との間に存在する配列を認識する制限酵素bで切断する、
(4) 上記対象とする遺伝子において再構成を起こす可能性のある領域の下流領域にハイブリダイズするプライマー及びリンカー領域の塩基配列と相補的な塩基配列にハイブリダイズするプライマーを用いて、上記(3)で得られたDNA断片を鋳型にしてPCRをする、及び
(5) (4)で得られるPCR産物の単一性を測定する。
【請求項2】
上記(4)のPCR工程として:
(4-1) (2)で得られたリンカー付きDNA断片の下流領域にハイブリダイズするプライマー1及びリンカー領域の塩基配列と相補的な塩基配列にハイブリダイズするプライマー2を用いて、上記(3)で得られたDNA断片を鋳型にしてPCRをし、次いで
(4-2) (4-1)で得られたPCR産物を鋳型にして、当該鋳型の下流領域であって上記プライマー1がハイブリダイスする領域よりも上流領域にハイブリダイズするプライマー3、及びリンカー領域の塩基配列と相補的な塩基配列にハイブリダイズするプライマーであって上記プライマー2がハイブリダイスする領域よりも下流領域にハイブリダイズするプライマー4を用いてPCRを行う
ことを特徴とする請求項1記載の再構成された遺伝子の単クローン性を判定する方法。
【請求項3】
上記対象とする遺伝子がイムノグロブリン重鎖(IgH)遺伝子であって、(1)工程において制限酵素aとしてTsp509I、(3)工程において制限酵素bとしてBbrPIを用いることを特徴とする、請求項1または2に記載する再構成された遺伝子の単クローン性を判定する方法。
【請求項4】
上記対象とする遺伝子がイムノグロブリン軽鎖κ遺伝子であって、(1)工程において制限酵素aとしてHpaIIまたはMspIのいずれか、(3)工程において制限酵素bとしてBbuI, Bst1107I, Bstz17I, EcoT22I, NcoI, NsiI, PvuII, SphI, 及びTth111Iからなる群から選択されるいずれかを用いることを特徴とする、請求項1または2に記載する再構成された遺伝子の単クローン性を判定する方法。
【請求項5】
ゲノムDNAが、悪性リンパ腫を疑う所見を呈する患者の当該病変部から採取された細胞から調製されるものである、請求項3または4に記載する方法。
【請求項6】
被験細胞または組織から調製されたゲノムDNAを用いて請求項3または4に記載する方法を実施し、得られた判定結果に基づいて、上記被験細胞または組織が腫瘍性のものか、または非腫瘍性のものかを鑑別する方法。
【請求項7】
ゲノムDNAとして、悪性リンパ腫を疑う所見を呈する患者の当該病変部から採取された細胞から調製されたものを用いて請求項3または4に記載する方法を実施し、得られた判定結果に基づいて、上記病変部が腫瘍性のものかまたは非腫瘍性のものかを鑑別する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−90(P2006−90A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182915(P2004−182915)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(504238840)
【Fターム(参考)】