説明

再生エネルギー型発電装置

制御信号に対応して高精度で油圧トランスミッションを制御可能な再生エネルギー型発電装置を提供する。再生エネルギー型発電装置であって、再生エネルギーによって駆動される回転シャフト18と、回転シャフトによって駆動される油圧ポンプ20と、油圧ポンプから供給される圧油によって駆動される油圧モータと、油圧モータに連結された発電機と、油圧ポンプの吐出側を油圧モータの吸込側に連通させる高圧油ライン22と、油圧ポンプの吸込側を油圧モータの吐出側に連通させる低圧油ライン23とを備え、油圧ポンプ20及び油圧モータは、それぞれ、シリンダ51およびピストン52により囲まれる複数の作動室53と、各作動室に接続される複数の第1分岐路60Aおよび該第1分岐路が集合してなり高圧油ラインに接続される第1集合路60Bを有する高圧マニホルド60と、各作動室に接続される複数の第2分岐路62Aおよび第2集合路62Bを有する低圧マニホルド62と、高圧マニホルドの第1分岐路に設けられる高圧バルブ65と、低圧マニホルドの第2分岐路に設けられる低圧バルブ66と、これらを収納するケーシング50とを含む構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ポンプ及び油圧モータを組み合わせた油圧トランスミッションを介して、ロータの回転エネルギーを発電機に伝達する再生エネルギー型発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の保全の観点から、風力を利用した風力発電装置や、潮流エネルギーを利用した潮流発電装置等の再生エネルギー型発電装置の普及が進んでいる。
【0003】
このような装置には、従来からギヤ式(機械式)のトランスミッションが多く用いられてきた。ギヤ式トランスミッションは、再生エネルギー源のエネルギー流速が入力される風力発電装置や潮流発電装置のロータのようなエネルギー抽出機構の低速回転を増速し、発電機を駆動するための高速回転に変換する。例えば、一般的な風力発電装置では、ロータの回転数は数rpm〜数十rpm程度であるのに対し、発電機の定格回転数は通常1500rpm又は1800rpmであるから、ロータと発電機との間に機械式(ギヤ式)の増速機が設けられている。すなわち、ロータの回転数は、増速機で発電機の定格回転数まで増速された後、発電機に入力される。
上記したようなギヤ式トランスミッションは、故障しやすかったり、メンテナンス及び交換、あるいは修理の費用が嵩んだりする傾向があるため、これを解消する設計および建設が課題となっていた。
【0004】
さらなる課題として、あらゆる条件下において、エネルギー抽出機構により最も効率的にエネルギーを抽出可能な再生エネルギー型発電装置を設計することが挙げられる。
このような設計を実現する最も効果的な装置として、ピッチ角が固定された状態でブレードを保持し、先端速度比がほぼ一定となるように、動作範囲の大部分にわたる風速または流速に対して比例的にブレードの回転数を変化させるものがある。費用効率が高い規模の再生エネルギー型発電装置においては、ギヤ式トランスミッションはこの比が常に固定されており、そのため複雑化し故障しやすい電力変換装置により配電網へ電力供給しなければならない。
【0005】
そこで、近年、機械式トランスミッションに替えて、可変容量型の油圧ポンプ及び油圧モータを組み合わせた油圧トランスミッションを採用した再生エネルギー型発電装置が注目を浴びている。このような発電装置では、大規模な機構においても可変容量型を実現することができる。油圧トランスミッションは、ギヤ式トランスミッションより軽量で且つロバストであり、またダイレクトドライブ式発電機の駆動機構より軽量である。その結果、発電に関わる全体コストを削減することができる。
【0006】
例えば、非特許文献1には、風力発電装置に適用される油圧トランスミッションの構成が開示されている。この油圧トランスミッションは、ロータに連結される油圧ポンプと、発電機に接続された油圧モータと、油圧ポンプ及び油圧モータの間にそれぞれ設けられた高圧マニホルド及び低圧マニホルドとを備えている。油圧ポンプ及び油圧モータはぞれぞれシリンダ及びピストンを複数有し、シリンダとピストンで囲まれる作動室(ワーキングチャンバ)の作動、非作動を連続的に変化させることで押しのけ容積を変化させるようになっている。
【0007】
関連する技術として、特許文献1には、ロータの回転により駆動される油圧ポンプと、発電機に接続された油圧モータとを組み合わせた油圧トランスミッションを用いた風力発電装置が記載されている。この風力発電装置の油圧トランスミッションでは、油圧ポンプ及び油圧モータは、高圧リザーバ及び低圧リザーバを介して互いに接続されている。これにより、ロータの回転エネルギーが、油圧トランスミッションを介して発電機に伝わるようになっている。なお、油圧ポンプは、複数組のピストン及びシリンダと、シリンダ内でピストンを周期的に摺動させるカムとで構成されている。
【0008】
また特許文献2には、ロータの回転により駆動される油圧ポンプと、発電機に接続された油圧モータと、油圧ポンプ及び油圧モータの間に設けられた作動油流路とからなる油圧トランスミッションを用いた風力発電装置が記載されている。この風力発電装置の油圧トランスミッションでは、複数組のピストン及びシリンダと、シリンダ内でピストンを周期的に摺動させるカムと、ピストンの往復運動のタイミングに合わせて開閉される高圧バルブ及び低圧バルブとで油圧ポンプが構成されている。そして、上死点近傍でピストンをラッチすることで、シリンダとピストンで囲まれる作動室を非作動状態として、油圧ポンプの押しのけ容積を変化させるようになっている。
【0009】
また可変容量型の油圧ポンプ及び油圧モータを用いたものではないが、特許文献3には、油圧ポンプから油圧モータに供給される作動油の圧力を調節して、発電機の回転数を一定に維持するようにした風力発電装置が記載されている。この風力発電装置では、油圧ポンプの吐出側が、高圧タンクとしてのタワー内部空間を介して油圧モータの吸込側と接続されており、油圧ポンプの吸込側が、タワー下部に設けた低圧タンクを介して油圧モータの吐出側と接続されている。そして、高圧タンクと油圧モータとの間には比例バルブが設けられており、この比例弁によって油圧モータに供給する作動油の圧力を調節できるようになっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】W.H.S.Rampen,et al.,“Gearlesstransmissions for large wind-turbines-The history and future of hydraulicdrives”, DEWEK Bremen, Dec. 2006
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0032959号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0040470号明細書
【特許文献3】米国特許第7436086号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記したような再生エネルギー型発電装置においては、再生エネルギー源から効率的にエネルギーを抽出し、高い発電効率を維持することが求められる。ところが、このような発電装置で用いられる再生エネルギー源には、通常、風力や潮流等の自然エネルギーが用いられるため発電に利用可能なエネルギーの変動が大きく、これにより常時、最も効率的なエネルギー抽出を行なうことは困難であった。特に、再生エネルギーは短期間での時間的不安定性が高く、効率的なエネルギー抽出を行なうためには、エネルギー変動に対応して迅速に制御することが必要とされる。
【0013】
そこで、非特許文献1及び特許文献1、2には、油圧ポンプまたは油圧モータの押しのけ容積を調節することで、エネルギー変動に対応した制御を行なうようにした構成が記載されているが、これらの文献には、制御信号に対応して精度よく押しのけ容積を調節するための具体的な構成は開示されていない。また、特許文献3に記載されるように、高圧タンクと油圧モータとの間の油圧ラインに設けた比例バルブにより作動油の圧力を調節する構成では、作動油の流量が大きい位置に比例弁が設けられるので小刻みな調整が困難であった。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、制御信号に対応して高精度で油圧トランスミッションを制御可能な再生エネルギー型発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る再生エネルギー型発電装置は、再生エネルギーから電力を生成する再生エネルギー型発電装置であって、再生エネルギーによって駆動される回転シャフトと、前記回転シャフトによって駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される圧油によって駆動される油圧モータと、前記油圧モータに連結された発電機と、前記油圧ポンプの吐出側を前記油圧モータの吸込側に連通させる高圧油ラインと、前記油圧ポンプの吸込側を前記油圧モータの吐出側に連通させる低圧油ラインとを備え、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータは、それぞれ、シリンダおよび該シリンダ内で往復するピストンにより囲まれる複数の作動室と、各作動室に接続される複数の第1分岐路および該第1分岐路が集合してなり前記高圧油ラインに接続される第1集合路を有する高圧マニホルドと、各作動室に接続される複数の第2分岐路および該第2分岐路が集合してなり前記低圧油ラインに接続される第2集合路を有する低圧マニホルドと、前記高圧マニホルドの前記第1分岐路に設けられて各第1分岐路を開閉する高圧バルブと、前記低圧マニホルドの前記第2分岐路に設けられて各第2分岐路を開閉する低圧バルブと、前記作動室、前記高圧マニホルド、前記低圧マニホルド、前記高圧バルブ及び前記低圧バルブを収納するケーシングとを含むことを特徴とする。
【0015】
この再生エネルギー型発電装置では、油圧ポンプ及び油圧モータは、複数の作動室に接続される複数の第1分岐路にそれぞれ高圧バルブを設け、複数の第2分岐路にそれぞれ低圧バルブを設ける構成としたので、油圧トランスミッションに対する制御信号に対応して、小刻みで高精度なバルブ制御が可能となる。これにより、再生エネルギーの変動に対しても高い発電効率を得ることが可能となる。
また、作動室、高圧マニホルド、低圧マニホルド、高圧バルブ及び低圧バルブを、油圧ポンプ及び油圧モータのケーシング内にそれぞれ収納するようにしたので、装置の小型化が図れる。
【0016】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの少なくとも一方は、前記ケーシングに収納され、前記シリンダが内部に設けられたシリンダブロックを有し、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記少なくとも一方の前記第1分岐路及び前記第2分岐路は、前記シリンダブロックの内部に形成されることが好ましい。
【0017】
このように、シリンダブロックの内部に、第1分岐路及び第2分岐路を形成することで、作動室からこれに対応する第1、第2集合路まで新たに配管を設置する必要がなくなり、油圧ポンプまたは油圧モータの小型化が図れる。
【0018】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記少なくとも一方の前記高圧マニホルドの第1集合路は、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記少なくとも一方の回転中心軸方向における前記ケーシングの端面を形成するエンドプレートの内部に形成されていることが好ましい。
このように、ケーシングの端面を形成するエンドプレートの内部に、高圧マニホルドの第1集合路を形成することで、高圧の作動油が漏れ出ることを防止し、液密性を向上させることができる。
【0019】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記少なくとも一方の前記シリンダブロックの内部には、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記少なくとも一方の回転中心軸方向に配列された複数のシリンダからなるシリンダ列が、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記少なくとも一方の周方向に複数列設けられており、前記複数のシリンダ列のうち隣接するシリンダ列間には、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記少なくとも一方の回転中心軸方向に延びる高圧連通路が前記シリンダブロック内に配置され、前記複数のシリンダ列のうち一列又は隣接する二列に属するシリンダの各作動室に接続される前記第1分岐路が、前記高圧連通路を介して前記第1集合路に連通されていることが好ましい。
【0020】
このように、隣接するシリンダ列間に形成された高圧連通路を介して、第1分岐路が第1集合路に接続される構成とすることで、作動油通路の構造を簡素化でき、省スペース化が図れる。
【0021】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記少なくとも一方では、前記ケーシングと前記シリンダブロックとの間の環状空間が、前記低圧マニホルドの第2集合路を形成することが好ましい。
【0022】
このように、ケーシングとシリンダブロックとの間の環状空間に、低圧マニホルドの第2集合路を形成することにより、ケーシングとシリンダブロックとの間のスペースを有効利用でき、省スペース化が図れるとともに通路構造を簡素化することができる。
【0023】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記油圧ポンプの高圧マニホルドと前記油圧モータの高圧マニホルドは、作動油の流れを絞るバルブを前記高圧油ラインに介在させずに、前記高圧油ラインを介して直接連通されており、前記油圧ポンプの低圧マニホルドと前記油圧モータの低圧マニホルドは、作動油の流れを絞るバルブを前記低圧油ラインに介在させずに、前記低圧油ラインを介して直接連通されていることが好ましい。
高圧油ライン上にバルブを配置すると、絞りによるエネルギーロスが生じて発電効率が低下してしまう。そこで、上記したように、高圧油ラインにバルブを介在させずに、油圧ポンプの高圧マニホルドと油圧モータの高圧マニホルドとを高圧油ラインで直接連通することで、エネルギーロスを生じさせず、高効率で発電を行うことが可能となる。また、高圧油ライン及び低圧油ラインにバルブを介在させない構成とすることで、油圧ポンプと油圧モータを接続する配管の簡素化が図れるとともに装置の小型化が可能となる。
【0024】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記高圧油ラインと前記低圧油ラインとを繋いで前記油圧モータをバイパスするバイパス流路と、前記バイパス流路に設けられた高圧リリーフ弁とをさらに備えることが好ましい。
【0025】
これは、例えば高圧油ライン内の圧力が高圧リリーフ弁の設定圧力まで上昇したとき、高圧リリーフ弁を開いて、バイパス流路を介して低圧油ラインに高圧油を逃すことで、高圧油ラインの圧力を適正範囲に保つことが可能となる。
【0026】
上記再生エネルギー型発電装置において、少なくとも一つのアキュムレータバルブと、前記アキュムレータバルブを介して前記高圧油ラインに接続される少なくとも一つのアキュムレータとを備え、前記アキュムレータバルブが開閉することで、前記アキュムレータが前記高圧油ラインに連通した状態と、前記アキュムレータバルブが前記高圧油ラインから切り離された状態とが切り換えられることが好ましい。
【0027】
このように、アキュムレータバルブを開閉制御することによって、アキュムレータを高圧油ラインと連通したり、切り離したりするようにしたので、油圧トランスミッションに入力された余剰エネルギーを蓄圧により蓄え、出力が不足する時に放出することができる。これによりエネルギー変動しやすい風力エネルギーであっても安定して発電を行える。
【0028】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記油圧ポンプの高圧バルブは、前記作動室の圧力が前記高圧油ラインの圧力を超えたときに開いて、前記油圧ポンプの作動室から前記高圧マニホルドを介して前記高圧油ラインに油が流れるように構成してもよい。
一方、上記再生エネルギー型発電装置において、前記油圧ポンプの低圧バルブは、前記作動室の圧力が前記低圧油ラインの圧力を下回ったときに開いて、前記低圧油ラインから前記低圧マニホルドを介して前記油圧ポンプの作動室に油が流れるように構成してもよい。
これらの構成を適宜選択的に採用することにより、複雑なバルブ制御を必要とせず、制御の単純化が図れる。
【0029】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記高圧バルブ及び前記低圧バルブの少なくとも一つは圧力により作動するチェックバルブであり、前記チェックバルブは、前記前記高圧バルブ及び前記低圧バルブの少なくとも一つの両側の圧力差によって開いて、一方向への作動油の流れを許容するように構成することが好ましい。
【0030】
このように、油圧ポンプ及び油圧モータの高圧バルブ及び低圧バルブの少なくとも一つを、圧力差によって開閉するチェックバルブとすることで、バルブの開閉に電力を不要とし、ランニングコストを削減できる。さらに、一方向への油の流れを許容するように構成することで、油が逆流することを防止できる。
【0031】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記高圧バルブ及び前記低圧バルブの少なくとも一つは電磁弁であり、ピストン運動のサイクルと位相的に関係を持たせて前記電磁弁を開閉制御して、前記作動室からの正味の油の押しのけ容積を調節するコントローラをさらに備えるようにしてもよい。
【0032】
またこのとき、前記コントローラは、前記ピストン運動のサイクルの全期間において前記低圧バルブが開いたままに維持されるアイドル状態の作動室の数を変化させて、前記サイクルごとに前記作動室から押しのけられる正味の油容積を調節するようにしてもよい。このように、アイドル状態の作動室の数を変化させて、押しのけられる正味の油容積を調節することで、押しのけ容積の段階的な制御が可能で、制御が容易となる。
【0033】
さらに、前記コントローラは、前記ピストン運動の各サイクルにおける前記低圧バルブおよび前記高圧バルブのいずれか一方の開閉タイミングを、該低圧バルブおよび該高圧バルブのいずれか一方の全てのバルブについて共通に変化させて、前記サイクルごとに前記作動室からの正味の油の押しのけ容積を調節するようにしてもよい。このように、同一種類のバルブの開閉タイミングを共通化することで、制御の安定性が向上し、またバルブの劣化度合いもほぼ一致するため、メンテナンス時期を容易に把握できるようになる。
【0034】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記高圧バルブ及び前記低圧バルブの少なくとも一つは電磁弁であり、前記電磁弁は、所定圧力まで開かないフェイスシールポペット弁であってもよい。
【0035】
またこのとき、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記高圧バルブ及び前記低圧バルブの少なくとも一つは電磁弁であり、前記ピストン運動の各サイクルにおける前記作動室からの作動油の非対称流れに起因するトルク及び流れの変動を抑えるように、前記電磁弁を開閉制御するコントローラをさらに備えることが好ましい。これにより、油の非対称流れに起因するトルク及び流れの変動を抑え、安定して運転することが可能となる。
【0036】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記油圧ポンプの各低圧バルブは、前記作動室の圧力が前記低圧油ラインを下回ったときに受動的に開くノーマルオープン式のソレノイドクローズドバルブであることが好ましい。
このように、低圧バルブは、作動室の圧力が低圧油ラインを下回ったときに受動的に開くようにすることで、バルブの励磁に必要な電力を削減できる。また、作動室の圧力が不適切に高まった場合に低圧バルブが開放するため、作動室内の異常な圧力上昇を防ぐことができる。
【0037】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記高圧油ラインの作動油の圧力を計測する圧力センサと、前記高圧油ライン及び前記低圧油ラインのいずれか一方に設けられ、前記高圧油ライン及び前記低圧油ラインのいずれか一方の作動油の温度を計測する温度センサとをさらに備えることが好ましい。例えば、これらの計測値に基づいて高圧バルブまたは低圧バルブの制御を行なうことで、適切な制御が可能となる。
【0038】
上記再生エネルギー型発電装置において、前記再生エネルギー型発電装置は、再生エネルギーとしての風から電力を生成する風力発電装置であることが好ましい。
【0039】
風力発電装置は風力エネルギーの変動が大きいが、上記再生エネルギー型発電装置の構成を採用することで、風力エネルギーの変動に応じて高精度に制御可能な装置構成とすることができるため、安定した発電が可能となる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、油圧ポンプ及び油圧モータは、複数の作動室に接続される複数の第1分岐路にそれぞれ高圧バルブを設け、複数の第2分岐路にそれぞれ低圧バルブを設ける構成としたので、油圧トランスミッションに対する制御信号に対応して、小刻みで高精度なバルブ制御が可能となる。これにより、再生エネルギーの変動に対しても高い発電効率を得ることが可能となる。
また、作動室、高圧マニホルド、低圧マニホルド、高圧バルブ及び低圧バルブを、油圧ポンプ及び油圧モータのケーシング内にそれぞれ収納するようにしたので、装置の小型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】風力発電装置の構成例を示す図である。
【図2】風力発電装置の油圧ポンプを模式的に示す図である。
【図3】風力発電装置の油圧モータを模式的に示す図である。
【図4】油圧ポンプの具体的な構成を示す断面図である。
【図5】図4におけるA−A線に沿った断面図である。
【図6】油圧ポンプのシリンダブロックを示し、図5におけるB−B線に沿った断面図である。
【図7】図4におけるC方向からシリンダブロックを視た平面図である。
【図8】油圧ポンプのエンドプレートを示し、図4におけるD−D線に沿った断面図である。
【図9】油圧モータの具体的な構成を示す断面図である。
【図10】図9におけるE−E線に沿った断面図である。
【図11】油圧モータのエンドプレートを示し、図9におけるF−F線に沿った断面図である。
【図12】油圧モータの外観斜視図である。
【図13】油圧モータの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0043】
まず、本実施形態に係る風力発電装置の全体構成について説明する。図1は、風力発電装置の構成例を示す図である。図2は風力発電装置の油圧ポンプを模式的に示す図である。図3は風力発電装置の油圧モータを模式的に示す図である。
なお、ここでは、風力発電装置の一例としていわゆる3枚プロペラ型のものを説明するが、本発明は、この例に限定されず、種々の形式の風力発電装置に適用できる。
【0044】
図1に示すように、風力発電装置100は、主として、風を受けて回転するロータ10と、ロータ10の回転を増速する油圧トランスミッション11と、電力を発生させる発電機12と、ナセル14と、ナセル14を支持するタワー15とを備える。
【0045】
ロータ10は、ブレード16が取り付けられたハブ17に回転シャフト18(「油圧ポンプの回転軸」に相当)18が連結された構成を有する。すなわち、3枚のブレード16がハブ17を中心として放射状に延びており、それぞれのブレード16が、回転シャフト18と連結されたハブ17に取り付けられている。これにより、ブレード16が受けた風の力によってロータ10全体が回転し、回転シャフト18を介して油圧トランスミッション11に回転が入力される。なお、ハブ17内には、ブレード16のピッチ角を変化させるピッチ駆動機構が収納されていてもよい。
【0046】
油圧トランスミッション11は、回転シャフト18に従動して駆動する容量可変型の油圧ポンプ20と、クランクシャフト13を介して発電機12に接続された容量可変型の油圧モータ21と、油圧ポンプ20と油圧モータ21との間に設けられた高圧油ライン22及び低圧油ライン23とで構成される。高圧油ライン22は、油圧ポンプ20の吐出側を油圧モータ21の吸込側に接続しており、低圧油ライン23は、油圧モータ21の吐出側を油圧ポンプ20の吸込側に接続している。これにより、回転シャフト18の回転に伴って油圧ポンプ20が駆動されると、高圧油ライン22と低圧油ライン23との間に差圧が発生し、この差圧によって油圧モータ21が駆動される。また、油圧トランスミッション11は、回転シャフト18の回転数に応じて増速比(油圧ポンプ20と油圧モータ21との押しのけ容積比)を調節して、油圧モータ21の回転数を一定に維持するようになっている。なお、油圧トランスミッション11の構成は後述する。
【0047】
発電機12は、油圧トランスミッション11の油圧モータ21に接続されており、公知の同期発電機又は誘導発電機を用いることができる。発電機12は、油圧モータ21から略一定の回転数のトルクが入力され、略一定の周波数の交流電流を発生するようになっている。
【0048】
ナセル14は、ロータ10のハブ17を回転自在に支持するとともに、その内部に油圧トランスミッション11や発電機12等の各種機器を収納している。なお、ナセル14をタワー15に回転自在に支持し、ヨーモータ(不図示)を用いて、風向きに応じてナセル14を旋回させるようにしてもよい。
【0049】
また、風力発電装置100には、回転シャフト18の回転数を計測する回転数計40と、高圧油ライン22内の圧力を計測する第1圧力計41と、高圧油ライン22の作動油の温度を計測する温度センサ39とが設けられている。回転数計40及び第1圧力計41の計測結果は、コントローラ1に送られて、油圧ポンプ20及び油圧モータ22の制御に用いられる。
コントローラ1は、風力発電装置100の各部を制御するものである。このコントローラ1には、回転数計40の回転数信号、第1圧力計41の高圧油圧力信号、温度センサ39の作動油温度信号、後述するアキュムレータの圧力信号、油圧ポンプ20の回転数信号、油圧モータ21の回転数信号等が入力される。そして、これらのうち一または複数の入力信号に基づいて、高圧バルブ65,85、低圧バルブ66,86、アキュムレータバルブ31,32、高圧リリーフ弁37、低圧リリーフ弁47のいずれかを制御するようにしてもよい。なお、コントローラ1は複数の制御部からなり、各制御部はナセル14の内部又は外部の異なる場所に存在し、分散型の制御システムを構築していてもよい。また、コントローラ1及びこれを構成する各制御部の一つ以上の機能が一つの演算処理装置に組み込まれていてもよい。
【0050】
また、高圧油ライン22には、アキュムレータバルブ31、32を介してアキュムレータ33、34が接続されている。アキュムレータ33、34は、例えば、変形可能な袋(ブラダ)により気体と作動油とが隔てられたブラダ式又はピストン式のものを用いることができる。アキュムレータ33、34では、蓄圧時に、高圧の作動油がアキュムレータ33、34内に流入し、ブラダが変形又はピストンが押されて気体が圧縮される。一方、圧力解放時には、圧縮された気体が膨張して又は外部から高圧気体を追加してブラダ又はピストンを押し、作動油がアキュムレータ33、34から押し出される。
【0051】
アキュムレータバルブ31、32とアキュムレータ33、34との間には第2圧力計(図示略)が設けられている。この第2圧力計は、アキュムレータ33、34内の作動油の圧力を計測する。
【0052】
第1圧力計41及び第2圧力計の検出結果は、コントローラ1に送られ、アキュムレータバルブ31、32の開閉制御に用いられる。コントローラ1は、第1圧力計41及び第2圧力計の検出結果に基づいて、アキュムレータバルブ31、32の開閉制御を行うことが好ましい。このように、アキュムレータバルブ31、32を開閉制御することによって、アキュムレータ33、34を高圧油ライン22と連通したり、切り離したりするようにしたので、油圧トランスミッション11に入力された余剰エネルギーを蓄圧により蓄え、出力が不足する時に放出することができる。これによりエネルギー変動しやすい風力エネルギーであっても安定して発電を行える。
【0053】
高圧油ライン22と低圧油ライン23との間には、油圧モータ21をバイパスするバイパス流路36が設けられている。そして、バイパス流路36には、高圧油ライン22の作動油の圧力を設定圧力以下に保持する高圧リリーフ弁37が設けられている。これにより、高圧油ライン22内の圧力が高圧リリーフ弁37の設定圧力まで上昇すれば、高圧リリーフ弁37が自動的に開いて、バイパス流路36を介して低圧油ライン23に高圧油を逃すことができる。
【0054】
また、油圧トランスミッション11には、オイルタンク42、補充ライン43、ブーストポンプ44、オイルフィルタ45、返送ライン46、低圧リリーフ弁47が設けられている。
油圧モータ22からの戻り流れの全部又は一部がこれらのユニットの一つ以上を通過するようにしてもよい。
【0055】
油圧ポンプ20は、図2に示すように、シリンダ51及びピストン52により形成される複数の作動室53と、ピストン52に係合するカム曲面を有するカム58と、各作動室53と高圧油ライン22とを接続する高圧マニホルド60と、各作動室53と低圧油ライン23とを接続する低圧マニホルド62と、各作動室53に対して設けられる高圧バルブ65および低圧バルブ66とにより構成される。
【0056】
シリンダ51は、後述するシリンダブロックに設けられた円筒である。シリンダ51の内部には、シリンダ51とピストン52とに囲まれる作動室53が形成されている。
【0057】
ピストン52は、カム58のカム曲線に合わせてピストン52をスムーズに作動させる観点から、シリンダ51内を摺動するピストン本体部52Aと、該ピストン本体部52Aに取り付けられ、カム58のカム曲面に係合するピストンローラー又はピストンシューとで構成することが好ましい。ここで、「ピストンローラー」は、カム58のカム曲面に当接して回転する部材であり、「ピストンシュー」とは、カム58のカム曲面に当接して摺動する部材である。
なお図2には、ピストン52がピストン本体部52Aとピストンローラー52Bとからなる例を示した。
【0058】
カム58は、カム取付台59を介して、回転シャフト18の外周面に取り付けられている。カム58は、回転シャフト18が一回転する間に、油圧ポンプ20の各ピストン52を何度も上下動させて油圧ポンプ20のトルクを大きくする観点から、複数の凹部58A及び凸部58Bが回転シャフト18の周りに交互に並んだ波状のカム曲面を有するリングカムであることが好ましい。
なお、カム58のカム取付台59への固定は、ボルト、キー、ピン等の任意の固定部材57を用いて行われる。
【0059】
高圧マニホルド60は、各作動室53に接続される複数の第1分岐路60Aと、複数の第1分岐路60Aが集合してなり、高圧油ライン22に接続される第1集合路60Bとを有する。
低圧マニホルド62は、各作動室53に接続される複数の第2分岐路62Aと、複数の第2分岐路62Aが集合してなり、低圧油ライン23に接続される第2集合路62Bとを有する。
【0060】
高圧バルブ65は、高圧マニホルド60の第1分岐路60Aに設けられる。一方、低圧バルブ66は、低圧マニホルド62の第1分岐路62Aに設けられる。これら高圧バルブ65及び低圧バルブ66を開閉することで、各作動室53と高圧油ライン22及び低圧油ライン23との連通状態を切り替えることができる。なお、高圧バルブ65及び低圧バルブ66の開閉は、ピストン52の上下動の周期にタイミングを合わせて行われる。
【0061】
また、高圧バルブ65は、作動室53の圧力が高圧油ライン22の圧力を超えたときに開いて、油圧ポンプ20の作動室53から高圧マニホルド60を介して高圧油ライン22に油が流れるように構成することが好ましい。さらに、低圧バルブ66は、作動室53の圧力が低圧油ライン23の圧力を下回ったときに開いて、低圧油ライン23から低圧マニホルド62を介して油圧ポンプ20の作動室53に油が流れるように構成することが好ましい。これにより、複雑なバルブ制御を必要とせず、制御の単純化が図れる。
さらにまた、低圧バルブ66は、作動室53の圧力が低圧油ライン23を下回ったときに受動的に開くノーマルオープン式のソレノイドクローズドバルブであることが好ましい。このように、低圧バルブ66は、作動室53の圧力が低圧油ライン23を下回ったときに受動的に開くようにすることで、バルブの励磁に必要な電力を削減できる。また、作動室53の圧力が不適切に高まった場合に低圧バルブ66が開放するため、作動室53内の異常な圧力上昇を防ぐことができる。
【0062】
油圧ポンプ20では、回転シャフト18とともにカム58が回転すると、ピストン52のピストン本体部52Aが周期的に上下動し、ピストン52が下死点から上死点に向かうポンプ工程と、ピストン52が上死点から下死点に向かう吸入工程とが繰り返される。ポンプ工程では、高圧バルブ65が開かれ、低圧バルブ66が閉じられることで、作動室53内の高圧油が、高圧マニホルド60の第1分岐路60A、第1集合路60Bを順に通って高圧油ライン22に送られる。一方、吸入工程では、高圧バルブ65が閉じられ、低圧バルブ66が開かれることで、低圧油ライン23から低圧マニホルド62の第2集合路62B、第2分岐路62Aを順に通って作動室53に低圧油が供給される。
これにより、回転シャフト18の回転に伴って油圧ポンプ20が駆動されると、高圧油ライン22と低圧油ライン23との間に差圧が発生するようになっている。
【0063】
油圧モータ21は、図3に示すように、シリンダ71及びピストン72により形成される複数の作動室73と、ピストン72に係合するカム曲面を有するカム78と、各作動室73と高圧油ライン22とを接続する高圧マニホルド80と、各作動室73と低圧油ライン23とを接続する低圧マニホルド82と、各作動室73に対して設けられた高圧バルブ85および低圧バルブ86とにより構成される。
【0064】
シリンダ71は、後述するシリンダブロックに設けられた円筒である。シリンダ71の内部には、シリンダ71とピストン72とに囲まれる作動室73が形成されている。
【0065】
ピストン72は、ピストン72の上下動をカム78の回転運動にスムーズに変換する観点から、シリンダ71内を摺動するピストン本体部72Aと、該ピストン本体部72Aに取り付けられ、カム78のカム曲面に係合するピストンローラー又はピストンシュー72Cとで構成することが好ましい。ここで、「ピストンローラー」は、カム78のカム曲面に当接して回転する部材であり、「ピストンシュー」とは、カム78のカム曲面に当接して摺動する部材である。
【0066】
カム78は、発電機12に接続されるクランクシャフト13の軸中心Oから偏心して設けられた偏心カムである。ピストン72が上下動を一回行う間に、カム78及びカム78が取り付けられたクランクシャフト13は一回転するようになっている。
【0067】
高圧マニホルド80は、各作動室73に接続される複数の第1分岐路80Aと、複数の第1分岐路80Aが集合してなり、高圧油ライン22に接続される第1集合路80Bとを有する。
低圧マニホルド82は、各作動室73に接続される複数の第2分岐路82Aと、複数の第2分岐路82Aが集合してなり、低圧油ライン23に接続される第2集合路82Bとを有する。
【0068】
高圧バルブ85は、高圧マニホルド80の第1分岐路80Aに設けられる。一方、低圧バルブ86は、低圧マニホルド82の第1分岐路82Aに設けられる。これら高圧バルブ85及び低圧バルブ86を開閉することで、各作動室73と高圧油ライン22及び低圧油ライン23との連通状態を切り替えることができる。なお、高圧バルブ85及び低圧バルブ86の開閉は、ピストン72の上下動の周期にタイミングを合わせて行われる。
【0069】
油圧モータ21では、高圧油ライン22と低圧油ライン23との差圧を利用してピストン72を上下動させて、ピストン72が上死点から下死点に向かうモータ工程と、ピストン72が下死点から上死点に向かう排出工程とが繰り返される。モータ工程では、高圧バルブ85が開かれ、低圧バルブ86が閉じられることで、高圧油ライン22から高圧マニホルド80の第1集合路80B、第1分岐路80Aを順に通って、作動室73に高圧油が供給される。一方、排出工程では、高圧バルブ85が閉じられ、低圧バルブ86が開かれることで、作動室73内の作動油が、低圧マニホルド82の第1分岐路82A、第1集合路82Bを順に通って、低圧油ライン23に排出される。
これにより、モータ工程で作動室73に流入した高圧油がピストン72を下死点に向けて押し下げると、カム78とともにクランクシャフト13が回転するようになっている。
【0070】
また、上記した油圧トランスミッション11において、油圧ポンプ20及び油圧モータ21の高圧バルブ65,85及び低圧バルブ66,86の少なくとも一つは圧力により作動するチェックバルブであり、チェックバルブは、高圧バルブ65,85及び低圧バルブ66,86の少なくとも一つの両側の圧力差によって開いて、一方向への作動油の流れを許容するように構成することが好ましい。このように、油圧ポンプ20及び油圧モータ21の高圧バルブ65,85及び低圧バルブ66,86の少なくとも一つを、圧力差によって開閉するチェックバルブとすることで、バルブの開閉に電力を不要とし、ランニングコストを削減できる。さらに、一方向への作動油の流れを許容するように構成することで、油が逆流することを防止できる。
【0071】
さらに、油圧ポンプ20及び油圧モータ21の高圧バルブ65,85及び低圧バルブ66,86の少なくとも一つは電磁弁であり、コントローラ1によって、ピストン運動のサイクルと位相的に関係を持たせて電磁弁を開閉制御して、作動室53,73からの正味の油の押しのけ容積を調節してもよい。
またこのとき、コントローラ1は、ピストン運動のサイクルの全期間において低圧バルブ66,86が開いたままに維持されるアイドル状態の作動室53,73の数を変化させて、サイクルごとに作動室53,73から押しのけられる正味の油容積を調節するようにしてもよい。このように、アイドル状態の作動室53,73の数を変化させて、押しのけられる正味の油容積を調節することで、押しのけ容積の段階的な制御が可能で、制御が容易となる。
【0072】
さらに、コントローラ1は、ピストン運動の各サイクルにおける低圧バルブ66,86および高圧バルブ65,85のいずれか一方の開閉タイミングを、該低圧バルブ66,86および該高圧バルブ65,85のいずれか一方の全てのバルブについて共通に変化させて、サイクルごとに作動室53,73からの正味の油の押しのけ容積を調節するようにしてもよい。このように、同一種類のバルブの開閉タイミングを共通化することで、制御の安定性が向上し、またバルブの劣化度合いもほぼ一致するため、メンテナンス時期を容易に把握できるようになる。
【0073】
また、油圧ポンプ20及び油圧モータ21の高圧バルブ65,85及び低圧バルブ66,86の少なくとも一つは電磁弁であり、電磁弁は、所定圧力まで開かないフェイスシールポペット弁であってもよい。
さらにまた、油圧ポンプ20及び油圧モータ21の高圧バルブ65,85及び低圧バルブ66,86の少なくとも一つは電磁弁であり、コントローラ1によって、ピストン運動の各サイクルにおける作動室53,73からの作動油の非対称流れに起因するトルク及び流れの変動を抑えるように、電磁弁を開閉制御することが好ましい。これにより、油の非対称流れに起因するトルク及び流れの変動を抑え、安定して運転することが可能となる。
【0074】
次に、本実施形態に係る風力発電装置100の油圧トランスミッション11の具体的な構造について説明する。
【0075】
[油圧ポンプの装置構成]
図4〜図8に、油圧ポンプの具体的な装置構成を示す。図4は、油圧ポンプの具体的な構成を示す断面図で、図5は、図4におけるA−A線に沿った断面図で、図6は、油圧ポンプのシリンダブロックを示し、図5におけるB−B線に沿った断面図で、図7は、図4におけるC方向からシリンダブロックを視た平面図で、図8は、油圧ポンプのエンドプレートを示し、図4におけるD−D線に沿った断面図である。
【0076】
油圧ポンプ20は、図4及び図5に示すように、回転シャフト18に取り付けられている。具体的には、回転シャフト18の外周にカム取付台59が固定され、このカム取付台59上にカム58が取り付けられている。なお、図4に示す例では、油圧ポンプ20は、回転シャフト18を回転自在にナセル側に支持する主軸軸受19A,19Bの間に設けられている。
【0077】
カム取付台59の外周には、ポンプケーシング50がポンプ軸受55を介して固定されている。ポンプケーシング50は、シリンダ51、ピストン52、高圧マニホルド60、低圧マニホルド62、高圧バルブ65(図6参照)、低圧バルブ66及びカム58の各部を覆うとともに、作動油の外部への漏洩を防止している。なお、ポンプケーシング50は、回転シャフト18の軸方向に配置された一対のエンドプレート50A及び50Bと、該一対のエンドプレート50A及び50Bの間に設けられる円筒ケース50Cとで構成される。
【0078】
油圧ポンプ20は、少なくとも一つのシリンダ51を有するシリンダブロック54と、該シリンダブロック54の各シリンダ51に対して設けられるピストン52と、高圧マニホルド60及び低圧マニホルド62と、高圧バルブ65及び低圧バルブ66とを一つのモジュールとして、該モジュールを複数セット含んでいてもよい。
【0079】
各シリンダブロック54は、図6に示すように、回転シャフト18の回転中心軸方向または周方向に延在する部材である。
回転中心軸方向に延在する場合、各シリンダブロック54は、図7に示すように、回転中心軸方向に配列された複数のシリンダ51−1,51−2,51−3,51−4からなるシリンダ列56を少なくとも一列有する。このシリンダブロック54には、各シリンダ51について一組のピストン52、高圧バルブ65及び低圧バルブ66(図6参照)が設けられている。
【0080】
油圧ポンプ20は、図5に示すように、断面円弧状のシリンダブロック54と、該シリンダブロック54の各シリンダ51に対して設けられるピストン52、高圧バルブ65及び低圧バルブ66とからなるモジュールが、回転シャフト18の周方向に複数セット配置されている。
【0081】
また、シリンダブロック54には、複数のシリンダ列56が回転シャフト18の周方向に配列されている。このシリンダブロック54の内部には、各シリンダ51から回転中心軸の周方向に複数の第1分岐路60Aが形成されている。さらにシリンダブロック54の内部には、図7に示すように、隣接するシリンダ列56間に、回転軸方向に延びる高圧連通路60Cが形成されている。この高圧連通路60Cには、同一列に配置された複数の第1分岐路60Aが、高圧バルブ65を介して接続されている。このとき、隣接する二列のシリンダ列56に属するシリンダ51の各作動室53に接続される複数の第1分岐路60Aが、高圧連通路60Cに接続されていてもよい。
高圧連通路60Cはエンドプレート50Bまで延在し、図8に示すように、エンドプレート50B内に形成された第1集合路60Bに接続されている。なお、エンドプレート50B内には、高圧連通路60Cの開口が回転中心軸の周方向に複数設けられ、これらの開口が第1集合路60Bに連通している。第1集合路60Bは回転中心軸の周方向に沿って環状に形成されており、一または複数の高圧ライン22に接続されている。なお、図には第1集合路60Bが円環状に形成されている例を示したが、これに限定されるものではなく、方形環状等であってもよい。
【0082】
このように、ポンプケーシング50の端面を形成するエンドプレート50Bの内部に、高圧マニホルド60の第1集合路60Bを形成することで、高圧の作動油が漏れることを防止し、液密性を向上させることができる。
また、隣接するシリンダ列間に形成された高圧連通路60Cを介して、第1分岐路60Aが第1集合路60Bに接続される構成とすることで、作動油通路の構造を簡素化でき、省スペース化が図れる。
【0083】
なお、上記記述では高圧連通路60Cを介して第1分岐路60Aと第1集合路60Bとが接続される構成を説明したが、この構成に限定されるものではなく、第1分岐路60Aと第1集合路60Bとが直接接続されていてもよいことは勿論である。また、上記記述では断面円弧状のシリンダブロック54を、回転中心軸の周方向に複数配置した構成を説明したが、これに限定されるものではなく、断面環状のシリンダブロックを回転中心軸方向に複数配置してもよい。
【0084】
上記構成によって、作動室53から押し出された高圧油は、高圧マニホルド60の第1分岐路60A、第1集合路60Bを順に通った後、エンドプレート50Bに接続された高圧油ライン22に流入する。
一方、低圧マニホルド62は、図4〜図6に示すように、シリンダブロック54よりも回転シャフト18の半径方向外方、かつ、ポンプケーシング50の内側に設けられている。この低圧マニホルド62は、作動室53から回転シャフト18の半径方向外側に延在する第2分岐路62Aと、シリンダブロック54の外周面とポンプケーシング50との間に形成される第2集合路62Bと有している。
第2分岐路62Aには、低圧バルブ66が配置されている。第2集合路62Bは、複数のシリンダ51のために共通の第2集合路62Bとして設けられており、油圧ポンプ20の上部に接続された低圧油ライン23と連通している。これにより、低圧油ライン23の低圧油は、低圧マニホルド62の第2集合路62B、第2分岐路62Aの順に通って、低圧バルブ66を介して各作動室53に供給される。
【0085】
上記したように、シリンダブロック54の内部に、第1分岐60A及び第2分岐路62Aを形成することで、作動室53からこれに対応する第1、第2集合路60B,62Bまで新たに配管を設置する必要がなくなり、油圧ポンプ20の小型化が図れる。
また、ポンプケーシング50とシリンダブロック54との間の環状空間に、低圧マニホルド62の第2集合路62Bを形成することにより、ケーシング50とシリンダブロック54との間のスペースを有効利用でき、省スペース化が図れるとともに通路構造を簡素化することができる。
【0086】
[油圧モータの装置構成]
図9〜図12に、油圧モータの具体的な装置構成を示す。図9は、油圧モータの具体的な構成を示す断面図で、図10は、図9におけるE−E線に沿った断面図で、図11は、油圧モータのエンドプレートを示し、図9におけるF−F線に沿った断面図で、図12は、油圧モータの外観斜視図である。
【0087】
図9及び図10に示すように、油圧モータ21のカム78は、発電機12に接続されるクランクシャフト13に、シャフト連結部75を介して連結されている。カム78は、回転軸中心Oから偏心して設けられた偏心カムである。
カム78の両端に連結されるシャフト連結部75及びカム端部77には、カム軸受76A,76Bを介してモータケーシング70が固定されている。モータケーシング70は、シリンダ71、ピストン72、高圧マニホルド80、低圧マニホルド82、高圧バルブ85、低圧バルブ86及びカム78の各部を覆うとともに、作動油の外部への漏洩を防止している。なお、モータケーシング70は、クランクシャフト13の軸方向に配置された一対のエンドプレート70A及び70Bと、該一対のエンドプレート70A及び70Bの間に設けられる円筒ケース70Cとで構成される(図12参照)。
【0088】
油圧モータ21には、カム78の周りに環状に連続したシリンダブロック74が設けられている。シリンダブロック74は、少なくとも一つのシリンダ71を有し、各シリンダ71に対して一組のピストン72、高圧バルブ85及び低圧バルブ86が設けられる。なお、図10に示す例では、ピストン72は、シリンダ71内を摺動するピストン本体部72Aと該ピストン本体部72Aに取り付けられ、カム78のカム曲面に係合するピストンシュー72Cとで構成されている。
【0089】
油圧モータ21は、カム78のカム曲面の一部を覆うシリンダブロック74と、該シリンダブロック74の各シリンダ71に設けられるピストン72、高圧バルブ85及び低圧バルブ86とを一つのモジュールとして、該モジュールをクランクシャフト13の周方向に複数セット配置してもよい。
また、クランクシャフト13の中心軸Oの周りに環状に連続したシリンダブロック74及びこれに付属する部品群(ピストン72、高圧バルブ85及び低圧バルブ86)を一つのモジュールとしてもよい。
【0090】
各シリンダブロック74は、カム78の回転軸方向または円周方向に延在する部材である。
軸方向に延在する場合、上述した図7に示す油圧ポンプ20の構成と同様に、各シリンダブロック74は、カム78の軸方向に配列された複数のシリンダ71からなるシリンダ列を少なくとも一列有する。このシリンダブロック74には、各シリンダ71について一組のピストン72、高圧バルブ85び低圧バルブ86が設けられている。
油圧モータ21は、断面円弧状のシリンダブロック74と、該シリンダブロック74の各シリンダ71に対して設けられるピストン72、高圧バルブ85及び低圧バルブ86とからなるモジュールが、カム78の周方向に複数セット配置されていてもよい。
【0091】
またシリンダブロック74には、複数のシリンダ列がカム78の周方向に配列されている。このシリンダブロック74の内部には、各シリンダ71からカム78の周方向に沿って複数の第1分岐路80Aが形成されている。さらにシリンダブロック74の内部には、上述した図7に示す油圧ポンプ20の構成と同様に、隣接するシリンダ列間に、回転軸方向に延びる高圧連通路80Cが形成されていてもよい。この高圧連通路80Cには、同一列に配置された複数の第1分岐路80Aが、高圧バルブ85を介して接続されている。このとき、隣接する二列のシリンダ列に属するシリンダ71の各作動室73に接続される複数の第1分岐路80Aが、高圧連通路80Cに接続されていてもよい。
【0092】
高圧連通路80Cはエンドプレート70Bまで延在し、図11に示すように、エンドプレート70B内に形成された第1集合路80Bに接続されている。なお、エンドプレート70B内には、高圧連通路80Cの開口が回転中心軸の周方向に複数設けられ、これらの開口が第1集合路80Bに連通している。第1集合路80Bは回転中心軸の周方向に沿って環状に形成されており、一または複数の高圧ライン22に接続されている。なお、図には第1集合路80Bが方形環状に形成されている例を示したが、これに限定されるものではなく、円環状等であってもよい。
【0093】
このように、モータケーシング70の端面を形成するエンドプレート70Bの内部に、高圧マニホルド80の第1集合路80Bを形成することで、高圧の作動油が漏れることを防止し、液密性を向上させることができる。
また、隣接するシリンダ列間に形成された高圧連通路80Cを介して、第1分岐路80Aが第1集合路80Bに接続される構成とすることで、作動油通路の構造を簡素化でき、省スペース化が図れる。
なお、上記記述では高圧連通路80Cを介して第1分岐路80Aと第1集合路80Bとが接続される構成を説明したが、この構成に限定されるものではなく、第1分岐路80Aと第1集合路80Bとが直接接続されていてもよいことは勿論である。
また、図には、1個の油圧モータ21のみを含む油圧トランスミッション11を示したが、複数の油圧モータ21を設けて、それぞれの油圧モータ21を油圧ポンプ20と高圧油ライン22及び低圧油ライン23で接続してもよい。
【0094】
上記構成によって、油圧ポンプ20から供給される高圧油は、油圧モータ21のエンドプレート70Bに接続された高圧油ライン22から、高圧マニホルド80の第1集合路80B、第1分岐路80Aを順に通って作動室73に流入する。
一方、低圧マニホルド82は、シリンダブロック74よりもカム78の半径方向外方、かつ、モータケーシング70の内側に設けられている。この低圧マニホルド82は、作動室73からカム78の半径方向外側に延在する第2分岐路82Aと、シリンダブロック74の外周面とモータケーシング70との間に形成される第2集合路82Bと有している。
第2分岐路82Aには、低圧バルブ76が配置されている。第2集合路82Bは、複数のシリンダ71のために共通の第2集合路82Bとして設けられており、油圧モータ21の上部に接続された低圧油ライン23と連通している。これにより、作動室73から排出される低圧油は、低圧バルブ86を介して低圧マニホルド82の第2分岐路82A、第2集合路82Bの順に通って、低圧油ライン23に流入する。
【0095】
上記したように、シリンダブロック74の内部に、第1分岐80A及び第2分岐路82Aの少なくとも一方を形成することで、作動室73からこれに対応する第1、第2集合路80B,82Bまで新たに配管を設置する必要がなくなり、油圧モータ21の小型化が図れる。
また、モータケーシング70とシリンダブロック74との間の環状空間に、低圧マニホルド82の第2集合路82Bを形成することにより、ケーシング70とシリンダブロック74との間のスペースを有効利用でき、省スペース化が図れるとともに通路構造を簡素化することができる。
【0096】
ここで、図13に、上記した油圧モータの変形例を示す。なお、図13において、上記した油圧モータ21と同一部材には同一符号を付している。
図13に示す油圧モータ21’は2連モータであり、シリンダ71、ピストン72、高圧マニホルド80、低圧マニホルド82、高圧バルブ85(図10参照)、及び低圧バルブ86をそれぞれ含む2つのモータユニット21A、21Bが、エンドプレート70B’を介して連結された構成を有する。これらのモータユニット21A、21Bは、ケーシング70’に収納されている。ケーシング70’は、油圧モータ21’の回転中心軸方向の両端に設けられたエンドプレート70A'−1,70A'−2と、これらの間に配置されるエンドプレート70B’と、エンドプレート70A'−1または70A'−2とエンドプレート70B’との間に配置される円筒ケース70C'−1または70C'−2とから構成される。これらのモータユニット21A、21Bは、エンドプレート70B’を貫通する共通のカム78’を有している。また、高圧マニホルド80の第1集合路80Bをエンドプレート70B’に設けて、第1集合路80Bを2つのモータユニット21A、21Bで共通化してもよい。このように、共通化した第1集合路80Bを設けることにより、配管構成を簡素化することが可能となる。
【0097】
以上説明したように、上述の実施形態では、油圧ポンプ20及び油圧モータ21は、複数の作動室53,73に接続される複数の第1分岐路60A,80Aにそれぞれ高圧バルブ65,85を設け、複数の第2分岐路62A,82Aにそれぞれ低圧バルブ66,86を設ける構成としたので、油圧トランスミッション11に対する制御信号に対応して、小刻みで高精度なバルブ制御が可能となる。これにより、再生エネルギーの変動に対しても高い発電効率を得ることが可能となる。
また、作動室53,73、高圧マニホルド60,80、低圧マニホルド62,82、高圧バルブ65,85及び低圧バルブ66,86を、油圧ポンプ20及び油圧モータ21のケーシング50、70内にそれぞれ収納することようにしたので、装置の小型化が図れる。
特に、高圧油ライン22にバルブを介在させずに、油圧ポンプ20の高圧マニホルド60と油圧モータ21の高圧マニホルド80とを高圧油ライン22で直接連通することで、エネルギーロスを生じさせず、高効率で発電を行うことが可能となる。さらに、高圧油ライン22及び低圧油ライン23にバルブを介在させない構成とすることで、油圧ポンプ20と油圧モータ21を接続する配管の簡素化が図れるとともに装置の小型化が可能となる。
【0098】
以上、本実施形態の一例について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
【0099】
例えば、上述の実施形態では、本発明を風力発電装置に適用した例について説明したが、本発明は潮流発電装置に適用してもよい。ここでいう「潮流発電装置」は、海、川または湖等に設置され、潮流のエネルギーを利用して発電を行う装置であり、ロータ10が風ではなく潮流を受けて回転する点を除けば上述の風力発電装置100と基本的な構成は共通する。風力発電装置100と共通する構成要素について同一の符号を用いて説明すれば、潮流発電装置は、潮流を受けて回転するロータ10と、ロータ10の回転を増速する油圧トランスミッション11と、電力を発生させる発電機12とを備える。
【0100】
ここで、潮流発電装置の油圧トランスミッション11は、上述のとおり、複数の作動室53,73に接続される複数の第1分岐路60A,80Aにそれぞれ高圧バルブ65,85を設け、複数の第2分岐路62A,82Aにそれぞれ低圧バルブ66,86を設けることで、小刻みで高精度なバルブ制御が可能となり、再生エネルギーの変動に対しても高い発電効率を得ることが可能となる。
また、作動室53,73、高圧マニホルド60,80、低圧マニホルド62,82、高圧バルブ65,85及び低圧バルブ66,86を、油圧ポンプ20及び油圧モータ21のケーシング50、70内にそれぞれ収納することで、装置の小型化が図れる。
【符号の説明】
【0101】
1 コントローラ
10 ロータ
11 油圧トランスミッション
12 発電機
13 クランクシャフト
18 回転シャフト
20 油圧ポンプ
21 油圧モータ
22 高圧油ライン
23 低圧油ライン
31,32 アキュムレータバルブ
33,34 アキュムレータ
36 バイパス流路
37 高圧リリーフ弁
39 第2圧力計
40 回転数計
41 第1圧力計
50 ポンプケーシング
50A,50B,70A,70B エンドプレート
50C,70C 円筒ケース
51,71 シリンダ
52,72 ピストン
53,73 作動室
58,78 カム
60,80 高圧マニホルド
60A,80A 第1分岐路
60B,80B 第1集合路
62A,82A 第2分岐路
62B,82B 第2集合路
65,85 高圧バルブ
66,86 低圧バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生エネルギーから電力を生成する再生エネルギー型発電装置であって、
再生エネルギーによって駆動される回転シャフトと、
前記回転シャフトによって駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給される圧油によって駆動される油圧モータと、
前記油圧モータに連結された発電機と、
前記油圧ポンプの吐出側を前記油圧モータの吸込側に連通させる高圧油ラインと、
前記油圧ポンプの吸込側を前記油圧モータの吐出側に連通させる低圧油ラインとを備え、
前記油圧ポンプ及び前記油圧モータは、それぞれ、シリンダおよび該シリンダ内で往復するピストンにより囲まれる複数の作動室と、各作動室に接続される複数の第1分岐路および該第1分岐路が集合してなり前記高圧油ラインに接続される第1集合路を有する高圧マニホルドと、各作動室に接続される複数の第2分岐路および該第2分岐路が集合してなり前記低圧油ラインに接続される第2集合路を有する低圧マニホルドと、前記高圧マニホルドの前記第1分岐路に設けられて各第1分岐路を開閉する高圧バルブと、前記低圧マニホルドの前記第2分岐路に設けられて各第2分岐路を開閉する低圧バルブと、前記作動室、前記高圧マニホルド、前記低圧マニホルド、前記高圧バルブ及び前記低圧バルブを収納するケーシングとを含むことを特徴とする再生エネルギー型発電装置。
【請求項2】
前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの少なくとも一方は、前記ケーシングに収納され、前記シリンダが内部に設けられたシリンダブロックを有し、
前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記少なくとも一方の前記第1分岐路及び前記第2分岐路は、前記シリンダブロックの内部に形成されることを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項3】
前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記少なくとも一方の前記高圧マニホルドの第1集合路は、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記少なくとも一方の回転中心軸方向における前記ケーシングの端面を形成するエンドプレートの内部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項4】
前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記少なくとも一方の前記シリンダブロックの内部には、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記少なくとも一方の回転中心軸方向に配列された複数のシリンダからなるシリンダ列が、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記少なくとも一方の周方向に複数列設けられており、
前記複数のシリンダ列のうち隣接するシリンダ列間には、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記少なくとも一方の回転中心軸方向に延びる高圧連通路が前記シリンダブロック内に配置され、
前記複数のシリンダ列のうち一列又は隣接する二列に属するシリンダの各作動室に接続される前記第1分岐路が、前記高圧連通路を介して前記第1集合路に連通されていることを特徴とする請求項2に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項5】
前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記少なくとも一方では、前記ケーシングと前記シリンダブロックとの間の環状空間が、前記低圧マニホルドの第2集合路を形成することを特徴とする請求項2に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項6】
前記油圧ポンプの高圧マニホルドと前記油圧モータの高圧マニホルドは、油の流れを絞るバルブを前記高圧油ラインに介在させずに、前記高圧油ラインを介して直接連通されており、
前記油圧ポンプの低圧マニホルドと前記油圧モータの低圧マニホルドは、油の流れを絞るバルブを前記低圧油ラインに介在させずに、前記低圧油ラインを介して直接連通されていることを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項7】
前記高圧油ラインと前記低圧油ラインとを繋いで前記油圧モータをバイパスするバイパス流路と、
前記バイパス流路に設けられた高圧リリーフ弁とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項8】
少なくとも一つのアキュムレータバルブと、
前記アキュムレータバルブを介して前記高圧油ラインに接続される少なくとも一つのアキュムレータとを備え、
前記アキュムレータバルブが開閉することで、前記アキュムレータが前記高圧油ラインに連通した状態と、前記アキュムレータバルブが前記高圧油ラインから切り離された状態とが切り換えられることを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項9】
前記油圧ポンプの高圧バルブは、前記作動室の圧力が前記高圧油ラインの圧力を超えたときに開いて、前記油圧ポンプの作動室から前記高圧マニホルドを介して前記高圧油ラインに油が流れることを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項10】
前記油圧ポンプの低圧バルブは、前記作動室の圧力が前記低圧油ラインの圧力を下回ったときに開いて、前記低圧油ラインから前記低圧マニホルドを介して前記油圧ポンプの作動室に油が流れることを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項11】
前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記高圧バルブ及び前記低圧バルブの少なくとも一つは圧力により作動するチェックバルブであり、
前記チェックバルブは、前記前記高圧バルブ及び前記低圧バルブの少なくとも一つの両側の圧力差によって開いて、一方向への作動油の流れを許容することを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項12】
前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記高圧バルブ及び前記低圧バルブの少なくとも一つは電磁弁であり、
ピストン運動のサイクルと位相的に関係を持たせて前記電磁弁を開閉制御して、前記作動室からの正味の油の押しのけ容積を調節するコントローラをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項13】
前記コントローラは、前記ピストン運動のサイクルの全期間において前記低圧バルブが開いたままに維持されるアイドル状態の作動室の数を変化させて、前記サイクルごとに前記作動室から押しのけられる正味の油容積を調節することを特徴とする請求項12に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項14】
前記コントローラは、前記ピストン運動の各サイクルにおける前記低圧バルブおよび前記高圧バルブのいずれか一方の開閉タイミングを、該低圧バルブおよび該高圧バルブのいずれか一方の全てのバルブについて共通に変化させて、前記サイクルごとに前記作動室からの正味の油の押しのけ容積を調節することを特徴とする請求項12に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項15】
前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記高圧バルブ及び前記低圧バルブの少なくとも一つは電磁弁であり、
前記電磁弁は、所定圧力まで開かないフェイスシールポペット弁であることを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項16】
前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの前記高圧バルブ及び前記低圧バルブの少なくとも一つは電磁弁であり、
前記ピストン運動の各サイクルにおける前記作動室からの油の非対称流れに起因するトルク及び流れの変動を抑えるように、前記電磁弁を開閉制御するコントローラをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項17】
前記油圧ポンプの各低圧バルブは、前記作動室の圧力が前記低圧油ラインを下回ったときに受動的に開くノーマルオープン式のソレノイドクローズドバルブであることを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項18】
前記高圧油ラインの作動油の圧力を計測する圧力センサと、
前記高圧油ライン及び前記低圧油ラインのいずれか一方に設けられ、前記高圧油ライン及び前記低圧油ラインのいずれか一方の作動油の温度を計測する温度センサとをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項19】
前記再生エネルギー型発電装置は、再生エネルギーとしての風から電力を生成する風力発電装置であることを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−501901(P2013−501901A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524406(P2012−524406)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【国際出願番号】PCT/JP2011/003002
【国際公開番号】WO2011/148653
【国際公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】