説明

再生ゴムの製造方法

【課題】ラテックス系ゴム部材を含む原料ゴムから再生ゴムを得る場合でも、充填材の舞い上がりを抑制することができるとともに、原料ゴムの脱硫をスムーズに進行させることのできる再生ゴムの製造方法を提供すること。
【解決手段】手袋および医療衛生用薄物品等といった天然ゴムラテックス系のゴム部材を含む原料ゴムから再生ゴムを得るにあたって、まず、ラテックス系ゴム部材21から付着水分を除去する水分除去工程ST1を行ない、原料ゴムを乾燥した状態で再生油と混合、破砕してゴム破片とする混合・破砕工程ST2と、ゴム破片を脱硫させる脱硫工程ST3と、ゴム破片を充填材と混練りする混練り工程ST4と行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料ゴムから再生ゴムを得る再生ゴムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原料ゴムから再生ゴムを製造するには、従来、図3に示すように、混合・破砕工程ST101において、原料ゴムをロールで破砕したものをミキサーによって再生油201や充填材等の副原料202とともに混合・破砕した後、受け皿に移し、脱硫工程ST102において、蒸気釜内で脱硫する方法が採用されている。かかる方法は、一般にPAN法として広く知られている(例えば、特許文献1〜3、非特許文献1参照)。
【0003】
なお、脱硫した後の粒状の再生ゴムについては、リファイナーロールにより磨り潰すリファイニング工程ST103、ストレーナーにより異物を除去するストレーニング工程ST104、およびリファイナーロールによりシート状に加工するシーティング工程ST105を行なった後、巻き取り工程ST106において巻き取られる。
【0004】
このような再生ゴムの製造方法において、混合・破砕工程ST101を行なう際、原料ゴムに再生油と充填材とを均一に混合すると、脱硫反応をスムーズに進行させることができる。また、原料ゴムに水分が付着している場合、再生油と水分が充填材に吸着されるので、脱硫反応が十分に行なわれない傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3982783号公報(段落0002)
【特許文献2】特許第3272623号公報(段落0003)
【特許文献3】特許第4062698号公報(段落0003)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本ゴム協会編「再生ゴム」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここに本発明者は、天然ゴムラテックスを原料とするラテックス系ゴム部材を含む原料ゴムから再生ゴムを製造することを提案するものである。また、本発明者は、ラテックス系ゴム部材として、手袋および医療衛生用薄物品等といった伸びの大きい部材も新たな原料ゴムとして利用可能な再生ゴムの製造方法を提案するものである。
【0008】
しかしながら、図3を参照して説明した方法のように、混合・破砕工程ST101において充填材を添加すると、混合・破砕工程ST101を行なった原料ゴムをミキサーから受け皿に移す際や、蒸気釜から出した脱硫ゴムを受け皿から出す際に充填材が大量の粉塵として舞い上がってしまい、作業環境を悪化させるという問題点がある。それ故、ミキサー周辺や蒸気釜の周辺に集塵装置203、204を設ける必要があるが、集塵装置203、204を設けても、発生する集塵量が多いため、作業環境を良好な状態に維持することは困難である。
【0009】
さらに、ラテックス系ゴム部材を原料ゴムとして用いると、ラテックス系ゴム部材は、伸びが大きく、充填材とともにミキサーに投入してもラテックス系ゴム部材を細かく破砕することができない。また、ラテックス系ゴム部材は、ミキサー内で羽根に絡まってしまい、再生油がラテックス系ゴム部材全体に行き渡らず、脱硫をスムーズに行なうことができないという問題点がある。その結果、再生ゴムをリファイニング工程ST103においてリファイナーロールに仕掛けた際、再生ゴムの粘つきが大きく、ゴムがロールに貼り付いて落下してこないことになる。
【0010】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ラテックス系ゴム部材を含む原料ゴムから再生ゴムを得る場合でも、充填材の舞い上がりを抑制することができるとともに、原料ゴムの脱硫をスムーズに進行させることのできる再生ゴムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、天然ゴムラテックスを原料とするラテックス系ゴム部材を含む原料ゴムから再生ゴムを得る再生ゴムの製造方法であって、前記原料ゴムを乾燥した状態で再生油と混合、破砕してゴム破片とする混合・破砕工程と、前記ゴム破片を脱硫させる脱硫工程と、前記脱硫工程を行なった前記ゴム破片を充填材と混練りする混練り工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明では、混合・破砕工程の前に充填材を添加せず、脱硫後の混練り工程で充填材を添加するため、混合・破砕工程から脱硫工程に移行する際、充填材が粉塵として舞い上がることがない。また、充填材は、混練り工程で添加するが、混練機内であれば、充填材が再生ゴム中に分散するので、充填材が粉塵として舞い上がらない。また、混合・破砕工程では、原料ゴムを乾燥させた状態で再生油と混合、破砕するため、混合・破砕工程を行なう際、原料ゴムを充填材とともに混合・破砕しなくても滑りが発生せず、ラテックス系ゴム部材を細かく破砕することができる。このため、再生油を原料ゴム(ゴム破片)の全体に均一に付着させることができる。また、脱硫工程では、脱硫に関与しない充填材が存在しない。さらに、脱硫工程では、水分が存在しないため、水分を蒸発させるエネルギーが必要ない分、脱硫温度を所定の温度に保持することができる。従って、脱硫をスムーズに進行させることができる。それ故、脱硫工程後、再生ゴムの粘つきが小さいので、再生ゴムをリファイナーロールに仕掛けた際、再生ゴムがロールに貼り付かず、スムーズに落下してくるという利点がある。
【0013】
本発明において、前記混合・破砕工程では、加圧ニーダーを用いることが好ましい。ラテックス系ゴム部材を含む原料ゴムについては、ロールやミキサーでは粉砕しにくいが、加圧ニーダーによれば、2本の回転ブレードを備えているので、ラテックス系ゴム部材を含む原料ゴムであっても細かく粉砕することができる。
【0014】
本発明において、前記混合・破砕工程の前に、前記ラテックス系ゴム部材から付着水分を除去する水分除去工程を行ない、前記ラテックス系ゴム部材を乾燥状態とすることが好ましい。原料ゴムに用いるラテックス系ゴム部材は濡れた状態で回収されることが多いが、本発明では、ラテックス系ゴム部材から付着水分を除去する水分除去工程を行なう。このため、原料ゴムに滑りが発生しにくいので、原料ゴムを充填材と混合せずに混合・破砕工程を行なっても、原料ゴムを細かく破砕することができる。このため、原料ゴム(ゴム破片)の脱硫をスムーズに行なうことができる。
【0015】
本発明は、前記原料ゴムが、前記ラテックス系ゴム部材として、手袋および医療衛生用薄物品のうちの少なくとも1つを含んでいる場合に適用すると効果が大きい。ラテックス系ゴム部材は伸びが大きいという性質を有するうえに、手袋や、コンドームなどの医療衛生用薄物品等に加工されると、特に伸びが大きく、破砕しにくくなる。しかるに本発明では、混合・破砕工程において、ラテックス系ゴム部材を含む原料ゴムを乾燥した状態で再生油と混合、破砕するため、原料ゴムが、伸びやすい形態のラテックス系ゴム部材を含んでいる場合でも、原料ゴムを細かく破砕することができる。
【0016】
本発明において、前記原料ゴムは、前記ラテックス系ゴム部材以外に、糸ゴムおよび輪ゴムのうちの少なくとも1つを含んでいる構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ラテックス系ゴム部材を含む原料ゴムから再生ゴムを製造するにあたって、混合・破砕工程の前に充填材を添加せず、脱硫後の混練り工程で充填材を添加するため、混合・破砕工程から脱硫工程に移行する際、充填材が粉塵として舞い上がることがない。また、充填材は、混練り工程で添加するが、混練機内であれば、充填材が再生ゴム中に分散するので、充填材が粉塵として舞い上がらない。また、混合・破砕工程では、原料ゴムを乾燥させた状態で再生油と混合、破砕するため、ラテックス系ゴム部材を細かく破砕することができる。このため、再生油を原料ゴム(ゴム破片)の全体に均一に付着させることができる。また、脱硫工程では、脱硫に関与しない充填材が存在しない。さらに、脱硫工程では、水分が存在しないため、水分を蒸発させるエネルギーが必要ない分、脱硫温度を所定の温度に保持することができる。従って、脱硫をスムーズに進行させることができる。それ故、脱硫工程後、再生ゴムの粘つきが小さいので、再生ゴムをリファイナーロールに仕掛けた際、再生ゴムがロールに貼り付かず、スムーズに落下してくるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係る再生ゴムの製造方法を示す工程断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る再生ゴムの製造方法を示す工程断面図である。
【図3】従来の再生ゴムの製造方法を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る再生ゴムの製造方法を示す工程図である。本形態では、原料ゴムから再生ゴムを製造するにあたって、天然ゴムラテックスを原料とするラテックス系ゴム部材を新たな原料ゴムとして用い、しかも、ラテックス系ゴム部材として、手袋や、コンドーム等の医療衛生用薄物品の製造工程で発生した不具合品を回収したもの等を新たな原料ゴム材料として用いる。ラテックス系ゴム部材は伸びが大きいうえに、手袋や医療衛生用薄物品に加工されると、薄い分、伸びやすいので、破砕しにくく、従来は原料ゴムとして利用されていない。
【0021】
そこで、本発明を適用した再生ゴムの製造方法では、図1に示す方法を採用して、ラテックス系ゴム部材を原料ゴムとして用いる場合でも、再生ゴムを効率よく製造するとともに、製造工程において充填材が粉塵として舞い上がることを抑制する。
【0022】
本形態では、図1に示すように、ラテックス系ゴム部材21は濡れた状態で回収されることが多いので、まず、水分除去工程ST1において、乾燥機でラテックス系ゴム部材21を乾燥させ、ラテックス系ゴム部材21から付着水分を除去する。
【0023】
次に、混合・破砕工程ST2において、原料ゴム(ラテックス系ゴム部材21)を乾燥した状態で再生油23と混合、破砕してゴム破片とする。再生油23は、パラフィン系プロセスオイルやナフテン系プロセスオイルであり、ゴム材料を膨潤させ、次に行なう脱硫をスムーズに行なわせる機能を担う。かかる混合・破砕工程ST2を行なう際、本形態では、2本の回転ブレードを備えた加圧ニーダーを用いる。
【0024】
次に、混合・破砕工程ST2で得たゴム破片を受け皿に移した後、受け皿に載せた原料ゴムのゴム破片を蒸気釜に入れ、脱硫工程ST3を行なう。その結果、ゴム破片では、架橋が切断される。その際、ゴム破片は、再生油23によって膨潤し、架橋結合が切断されているので、脱硫が短時間のうちに済む。
【0025】
次に、脱硫後のゴム破片を蒸気釜から出して受け皿から混練り用の加圧ニーダーに投入する。その際、充填材等の副原料24も加えて、混練り用の加圧ニーダーにより混練り工程ST4を行なう。その結果、再生ゴムが得られる。
【0026】
このようにして、混練り工程ST4を行なって得た再生ゴムについては、リファイナーロールにより磨り潰すリファイニング工程ST5、ストレーナーにより異物を除去するストレーニング工程ST6、およびリファイナーロールによりシート状に加工するシーティング工程ST7を行なった後、巻き取り装置によって巻き取られる(巻き取り工程ST8)。
【0027】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本発明を適用した再生ゴムの製造方法では、混合・破砕工程ST2の前に充填材を添加せず、脱硫後の混練り工程ST4で充填材を添加する。このため、混合・破砕工程ST2から脱硫工程ST3に移行する際、充填材が大量の粉塵として舞い上がることがない。また、充填材は、混練り工程ST4で添加するが、混練機内であれば、充填材が再生ゴム中に分散するので、充填材が粉塵として舞い上がらない。
【0028】
また、本形態において、混合・破砕工程ST2の前に、ラテックス系ゴム部材21から付着水分を除去する水分除去工程ST1を行ない、混合・破砕工程ST2では、原料ゴム(ラテックス系ゴム部材21)を乾燥した状態で再生油と混合、破砕する。すなわち、本形態では、混合・破砕工程ST2の際に原料ゴムを充填材と混合しない代わりに、混合・破砕工程ST2の前に、ラテックス系ゴム部材21から付着水分を除去する水分除去工程ST1を行ない、原料ゴムを乾燥状態とする。このため、原料ゴムを充填材と混合せずに混合・破砕工程ST2を行なっても、滑りが発生しにくいので、原料ゴムを細かく破砕することができる。従って、再生油がゴム破片全体に均一に付着する。また、脱硫工程ST3では、脱硫に関与しない充填材が存在しない。さらに、脱硫工程ST3では、水分が存在しないため、水分を蒸発させるエネルギーが必要ない分、脱硫温度を所定の温度に保持することができる。それ故、脱硫をスムーズに進行させることができる。よって、脱硫工程ST3の後は、再生ゴムの粘つきが小さいので、リファイニング工程ST5において再生ゴムをリファイナーロールに仕掛けた際、再生ゴムがロールに貼り付かず、ファイナーロールからスムーズに落下してくる。それ故、リファイニング工程ST5をスムーズに行なうことができる。
【0029】
しかも、混合・破砕工程ST2では加圧ニーダーを用いるため、ラテックス系ゴム部材21を含む原料ゴムであっても細かく粉砕することができる。すなわち、ラテックス系ゴム部材21はそれ自身が伸びやすいうえに、手袋や医療衛生用薄物品等の薄物に加工されるとさらに伸びやすくて破砕されにくいが、本形態では、混合・破砕工程ST2に加圧ニーダーを用いるため、ラテックス系ゴム部材21を含む原料ゴムであっても2軸の回転ブレードによって細かく粉砕することができる。
【0030】
[実施の形態2]
図2は、本発明の実施の形態2に係る再生ゴムの製造方法を示す工程図である。なお、本形態の製造方法は、原料ゴムとして、ラテックス系ゴム部材に加えて、糸ゴムや輪ゴムといった従来材料を用いる点以外は、実施の形態1と同様であるため、以下の説明では、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの詳細な説明を省略する。
【0031】
図2は、本発明の実施の形態1に係る再生ゴムの製造方法を示す工程図である。本形態では、原料ゴムから再生ゴムを製造するにあたって、天然ゴムラテックスを原料とするラテックス系ゴム部材21(新材料)と、糸ゴムや輪ゴム22等の従来材料も原料ゴムとして用いる。ラテックス系ゴム部材21は、実施の形態1と同様、手袋や、コンドーム等の医療衛生用薄物品である。
【0032】
本形態では、図2に示すように、ラテックス系ゴム部材21は濡れた状態で回収されることが多いので、まず、水分除去工程ST1において、乾燥機でラテックス系ゴム部材21を乾燥させ、ラテックス系ゴム部材21から付着水分を除去する。
【0033】
一方、糸ゴムや輪ゴム22等の従来材料については、クラッカーロール等を用いて粗粉砕する粗粉砕工程ST11を行なった後、グラインダーロール等を用いて微粉砕する微粉砕工程ST12を行なう。
【0034】
このような粉砕処理を行なった糸ゴムや輪ゴム22等の従来材料と、水分除去工程ST1を行なったラテックス系ゴム部材21(新材料)とを原料ゴムとし、混合・破砕工程ST2において、原料ゴムを再生油23と混合、破砕してゴム破片とする。かかる微粉砕工程ST12を行なう際、本形態でも、実施の形態1と同様、加圧ニーダーを用いる。
【0035】
次に、実施の形態1と同様、混合・破砕工程ST2で得たゴム破片を受け皿に移した後、受け皿に載せた原料ゴムのゴム破片を蒸気釜に入れ、脱硫工程ST3を行なう。
【0036】
次に、脱硫後のゴム破片を蒸気釜から出して受け皿から混練り用の加圧ニーダーに投入する。その際、充填材等の副原料24も加えて、加圧ニーダーにより混練り工程ST4を行なう。その結果、再生ゴムが得られる。
【0037】
このようにして、混練り工程ST4を行なって得た再生ゴムについては、リファイナーロールにより磨り潰すリファイニング工程ST5、ストレーナーにより異物を除去するストレーニング工程ST6、およびリファイナーロールによりシート状に加工するシーティング工程ST7を行なった後、巻き取り装置によって巻き取られる(巻き取り工程ST8)。
【0038】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態でも、実施の形態1と同様、混合・破砕工程ST2の前に充填材を添加せず、脱硫後の混練り工程ST4で充填材を添加する。このため、充填材が大量の粉塵として舞い上がることがない。また、本形態においては、乾燥した原料ゴムに対して混合・破砕工程ST2を加圧ニーダーを用いて行ない、その後、脱硫工程ST3を行なう。このため、脱硫をスムーズに進行させることができるなど、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0039】
[その他の実施の形態]
上記実施の形態1、2では、ラテックス系ゴム部材21に対して水分除去工程ST1を行なったが、ラテックス系ゴム部材21が乾燥している場合には、水分除去工程ST1を省略してもよい。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
次に、本発明の実施例に係る再生ゴムの製造方法を説明する。以下に説明する実施例のうち、実施例1は、図1を参照して説明した方法であり、表1に示すように、原料ゴムとして、手袋や医療衛生用薄物品等に加工されたラテックス系ゴム部材(新材料)を用いる。また、ラテックス系ゴム部材は、濡れた状態で回収されることが多いので、水分除去工程ST1を行ない、ラテックス系ゴム部材を乾燥させた後、混合・破砕工程ST2を行なう。混合・破砕工程ST2では、充填材を添加せず、混練り工程ST4で、原料ゴム100部に対して、重炭や酸化チタン等の充填材を53部添加する。なお、混合・破砕工程ST2では、原料ゴム100部に対して、プロセス油等の再生油を1.3部添加する。脱硫工程ST3の時間は2時間である。
【0041】
【表1】

【0042】
その結果、表1に示すように、粉塵は発生せず、作業環境は良好に保たれた。また、リファイニング工程ST5においてリファイナーロールへの粘り付きは発生せず、リファイニング工程ST5をスムーズに行なうことができた。
【0043】
また、製造された再生ゴムは、以下の物性値
引張強さ=6.0Mpa/cm2
伸び=495%
比重=1.32
生産時のムーニー粘度=20
を示しており、良好な結果であった。
【0044】
(実施例2)
実施例2は、図2を参照して説明した方法であり、表1に示すように、原料ゴムとして、手袋や医療衛生用薄物品等に加工されたラテックス系ゴム部材(新材料)50部と、糸ゴムや輪ゴム等の従来材料50部とを用いる。実施例2でも、ラテックス系ゴム部材は、濡れた状態で回収されることが多いので、実施例1と同様、水分除去工程ST1を行ない、ラテックス系ゴム部材を乾燥させた後、糸ゴムや輪ゴム等の従来材料ともに、混合・破砕工程ST2を行なう。混合・破砕工程ST2では、充填材を添加せず、混練り工程ST4で、原料ゴム100部に対して、重炭や酸化チタン等の充填材を38部添加する。なお、混合・破砕工程ST2では、原料ゴム100部に対して、プロセス油等の再生油を4.8部添加する。脱硫工程ST3の時間は2.5時間である。
【0045】
その結果、表1に示すように、粉塵は発生せず、作業環境は良好に保たれた。また、リファイニング工程ST5においてリファイナーロールへの粘り付きは発生せず、リファイニング工程ST5をスムーズに行なうことができた。
【0046】
また、製造された再生ゴムは、以下の物性値
引張強さ=8.2Mpa/cm2
伸び=503%
比重=1.31
生産時のムーニー粘度=21
を示しており、良好な結果であった。
【0047】
(比較例)
本発明の比較例は、図3を参照して説明した従来方法であり、表1に示すように、原料ゴムとして、手袋や医療衛生用薄物品等に加工されたラテックス系ゴム部材(新材料)を用いる。本例では、乾燥状態のラテックス系ゴム部材に対して混合・破砕工程ST101を行なう。また、本発明の比較例では、混合・破砕工程ST101において、原料ゴム100部に対して、重炭や酸化チタン等の充填材を53部添加し、プロセス油等の再生油を1.3部添加する。脱硫工程ST102の時間は2時間である。
【0048】
その結果、表1に示すように、粉塵が発生し、作業環境の劣化が発生した。また、リファイニング工程ST103においてリファイナーロールへの粘り付きが発生した。このため、リファイナーロールから再生ゴムを回収することができなかった。
【0049】
(参考例)
次に、本発明に対する参考例に係る再生ゴムの製造方法を説明する。参考例は、図1を参照して説明した方法において、濡れた状態のラテックス系ゴム部材に対して、混合・破砕工程ST101を行なう。混合・破砕工程ST2では、実施例1と同様、充填材を添加せず、混練り工程ST4で、原料ゴム100部に対して、重炭や酸化チタン等の充填材を53部添加する。なお、混合・破砕工程ST2では、原料ゴム100部に対して、プロセス油等の再生油を1.3部添加する。脱硫工程ST3の時間は2時間である。
【0050】
その結果、表1に示すように、粉塵は発生せず、作業環境は良好に保たれた。但し、リファイニング工程ST5においてリファイナーロールへの粘り付きが発生し、リファイニング工程ST5に多大な時間を費やした。
【0051】
また、製造された再生ゴムは、以下の物性値
引張強さ=11.8Mpa/cm2
伸び=540%
比重=1.34
生産時のムーニー粘度=18
であった。
【符号の説明】
【0052】
ST1 水分除去工程
ST2 混合・破砕工程
ST3 脱硫工程
ST4 混練り工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムラテックスを原料とするラテックス系ゴム部材を含む原料ゴムから再生ゴムを得る再生ゴムの製造方法であって、
前記原料ゴムを乾燥した状態で再生油と混合、破砕してゴム破片とする混合・破砕工程と、
前記ゴム破片を脱硫させる脱硫工程と、
前記脱硫工程を行なった前記ゴム破片を充填材と混練りする混練り工程と、
を有することを特徴とする再生ゴムの製造方法。
【請求項2】
前記混合・破砕工程では、加圧ニーダーを用いることを特徴とする請求項1に記載の再生ゴムの製造方法。
【請求項3】
前記混合・破砕工程の前に、前記ラテックス系ゴム部材から付着水分を除去する水分除去工程を行ない、前記ラテックス系ゴム部材を乾燥状態とすることを特徴とする請求項1または2に記載の再生ゴムの製造方法。
【請求項4】
前記原料ゴムは、前記ラテックス系ゴム部材として、手袋および医療衛生用薄物品のうちの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の再生ゴムの製造方法。
【請求項5】
前記原料ゴムは、前記ラテックス系ゴム部材以外に、糸ゴムおよび輪ゴムのうちの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項4に記載の再生ゴムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−122004(P2011−122004A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278394(P2009−278394)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(595000966)株式会社ダイオー (1)
【出願人】(598124249)エア・ウォーター・マッハ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】