説明

再生フィッシャー・トロプシュ合成触媒の製造方法及び炭化水素の製造方法

【課題】 FT合成反応に使用され活性が低下したFT合成触媒を簡易な方法により再度使用可能な水準まで再生する再生FT合成触媒の製造方法を提供すること。
【解決手段】 フィッシャー・トロプシュ合成反応に使用した使用済み触媒を再生して得られる再生フィッシャー・トロプシュ合成触媒の製造方法であって、窒素吸着法による平均細孔径が4〜25nmであるシリカを含む担体にコバルト及び/又はルテニウムが担持され、初期一酸化炭素転化率で表される活性が、相当する未使用の触媒の当該活性を基準として40〜95%である上記使用済み触媒を、大気圧〜5MPaの圧力、150〜350℃の温度にて、1〜30体積%の水蒸気及び不活性ガスを含む混合ガスに接触させるスチーミング工程を備えることを特徴とする再生フィッシャー・トロプシュ合成触媒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生フィッシャー・トロプシュ合成触媒の製造方法、及び該製造方法により製造された触媒を用いる炭化水素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンや軽油のような液体燃料に含まれる硫黄分等の環境負荷物質に対する規制が急速に厳しくなってきている。そのため、硫黄分や芳香族炭化水素の含有量が低い環境にやさしいクリーンな液体燃料の製造が不可欠となっている。このようなクリーン燃料の製造方法の一つとして、一酸化炭素を水素で還元する、いわゆるフィッシャー・トロプシュ合成法(以下、「FT合成法」ということもある。)が挙げられる。FT合成法により、パラフィン炭化水素に富み、かつ硫黄分を含まない液体燃料基材を製造することができると共に、ワックスも製造することができる。そして、このワックスは水素化分解により中間留分(灯油や軽油などの燃料基材)へと変換することができる。
【0003】
フィッシャー・トロプシュ合成反応(以下、「FT合成反応」ということもある。)に使用される触媒であるフィッシャー・トロプシュ合成触媒(以下、「FT合成触媒」ということもある。)は、一般にシリカやアルミナなどの担体上に、鉄、コバルト、ルテニウムなどの活性金属を担持した触媒である(例えば特許文献1を参照)。また、FT合成触媒においては、上記活性金属に加えて第2の金属を使用することにより、触媒性能が向上することが報告されている(例えば特許文献2を参照)。第2の金属としては、ナトリウム、マグネシウム、リチウム、ジルコニウム、ハフニウムなどが挙げられ、一酸化炭素の転化率向上またはワックス生成量の指標となる連鎖成長確率の増加など、目的に応じて適宜使用されている。FT合成触媒の実際の使用に際しては、触媒の活性低下を最小限に留める観点からも、上記第2の金属の組み合わせ使用が検討されている。
【0004】
実用のFT合成触媒に要求される性能としては、触媒活性、生成物選択性、触媒寿命が主に挙げられる。このうち触媒寿命を短くする触媒劣化要因については、反応中の炭素質析出(例えば非特許文献1を参照)、活性金属の酸化劣化(例えば非特許文献2を参照)、活性金属と担体との化合物生成(例えば非特許文献3を参照)など研究例が多数ある。その一方で、一旦劣化した触媒そのものの活性を復活させることは依然として困難であり、新触媒を装置に追加投入することで活性劣化分を補填せざるを得ないのが現状である。この方法では、高価な触媒の追加投入が必要になるためコストアップとなるだけでなく、結果的に廃棄物となる使用済み触媒の量が増えることも問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−227847号公報
【特許文献2】特開昭59−102440号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Appl. Catal. A:Gen., 354(2009)102−110.
【非特許文献2】Catal. Today., 58(2000)321−334.
【非特許文献3】J. Catal., 217(2003)127−140.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のような状況から、FT合成反応に使用され活性が低下したFT合成触媒を、再度使用可能な水準まで再生する、簡易な方法の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の問題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、劣化したFT合成触媒を特定の条件下に水蒸気にて処理することにより、活性を回復させることができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、フィッシャー・トロプシュ合成反応に使用した使用済み触媒を再生して得られる再生フィッシャー・トロプシュ合成触媒の製造方法であって、窒素吸着法による平均細孔径が4〜25nmであるシリカを含む担体にコバルト及び/又はルテニウムが担持され、初期一酸化炭素転化率で表される活性が、相当する未使用の触媒の当該活性を基準として40〜95%である上記使用済み触媒を、大気圧〜5MPaの圧力、150〜350℃の温度にて、1〜30体積%の水蒸気及び不活性ガスを含む混合ガスに接触させるスチーミング工程を備えることを特徴とする再生フィッシャー・トロプシュ合成触媒の製造方法を提供する。
【0010】
本発明の再生フィッシャー・トロプシュ合成触媒の製造方法は、上記スチーミング工程を経て得られた触媒を、分子状水素又は一酸化炭素を含む気体中で還元する還元工程を更に備えることが好ましい。
【0011】
また、上記シリカを含む担体が、更に触媒の質量を基準として1〜10質量%の酸化ジルコニウムを含むことが好ましい。
【0012】
また、上記スチーミング工程を含む再生フィッシャー・トロプシュ合成触媒を製造するための全工程を、フィッシャー・トロプシュ合成反応装置と接続された再生装置内において実施することが好ましい。
【0013】
更に、本発明は、上記の方法により製造された再生フィッシャー・トロプシュ合成触媒の存在下に、一酸化炭素及び分子状水素を含む原料をフィッシャー・トロプシュ合成反応に供することを特徴とする炭化水素の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、FT合成反応に使用され活性が低下したFT合成触媒を簡易な方法により再度使用可能な水準まで再生する再生FT合成触媒の製造方法、及び該方法により製造された再生FT合成触媒を使用する炭化水素の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、好ましい実施形態に沿って詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明の再生FT合成触媒の製造方法において使用する使用済みFT合成触媒について、未使用の段階の当該触媒の製造方法を述べることにより説明する。
【0017】
上記触媒を構成する担体は、シリカを含むものである。シリカを含む担体としては、シリカの他に、少量のアルミナ、チタニア、マグネシアなどの多孔性無機酸化物や、ナトリウム、マグネシウム、リチウム、ジルコニウム、ハフニウム等の金属成分を含むシリカを挙げることができる。
【0018】
上記シリカを含む担体の性状に特に制限はないが、窒素吸着法で測定される比表面積が50〜800m/gであることが好ましく、150〜500m/gであることがより好ましい。比表面積が50m/g未満である場合は、活性金属が凝集して触媒が低活性となるため好ましくない。一方で、比表面積が800m/gより大きい場合は、コーキングによる触媒活性低下速度が大きくなるため好ましくない。
【0019】
また、本発明におけるシリカを含む担体の窒素吸着法による平均細孔径は、4〜25nmであり、8〜22nmであることが好ましい。平均細孔径が4nmより小さい場合は、活性金属が担体細孔外に過度に凝集するため、初期の段階から活性が低下する傾向があるため好ましくない。一方、平均細孔径が25nmより大きな場合も、比表面積が低いことから所定量の活性金属を十分分散した状態で担持することが困難である。
【0020】
担体の形状については、特に制限はないが、実用性を考慮すると、一般に石油精製や石油化学の実装置で使用されている球状、円柱状および三つ葉型・四葉型などの断面をもつ異形円柱状などの形状が好ましい。また、その粒子径についても特に制限はないが、実用性から1μm〜10mmであることが好ましい。なお、FT合成反応に好ましく用いられるスラリー床反応装置を使用してFT合成反応を行う場合には、触媒粒子の流動性を確保する観点から、担体の形状は球状が好ましく、その粒子径は10〜300μm程度が好ましく、30〜150μm程度がより好ましい。
【0021】
上記シリカを含む担体は、活性の向上及び使用中の経時的な活性の低下の抑制の観点から、更にジルコニウムを含むことが好ましい。ジルコニウムの含有量は、触媒の質量を基準として、酸化ジルコニウムとして1〜10質量%であることが好ましく、2〜8質量%であることがより好ましい。上記含有量が1質量%未満である場合には、ジルコニウムを含むことによる上記効果を発揮しにくい傾向にあり、また、10質量%を超える場合には、担体の細孔容積が低下する傾向にあるため好ましくない。なお、ジルコニウムの担持方法としては特に制限はなく、Incipient Wetness法に代表される含浸法を用いることができる。担持に使用するジルコニウム化合物としては、硫酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、炭酸ジルコニールアンモニウム、三塩化ジルコニウムなどを用いることができ、炭酸ジルコニールアンモニウムおよび酢酸ジルコニールがより好ましい。
【0022】
ジルコニウム化合物の担持後、含浸溶液と担体(ジルコニウム化合物を担持したシリカ)とを分離し、その後、担体を乾燥する。乾燥方法は特に制限されるものではなく、例えば、空気中での加熱乾燥や減圧下での脱気乾燥を挙げることができる。乾燥は、通常、温度100〜200℃、好ましくは110〜130℃で、2〜24時間、好ましくは5〜12時間行う。
【0023】
乾燥後、ジルコニウム化合物が担持された担体を焼成し、ジルコニウム化合物を酸化物へと変換する。焼成の条件は特に制限されるものではないが、通常、空気雰囲気下に340〜600℃、好ましくは400〜450℃で、1〜5時間行うことができる。以上のようにして、酸化ジルコニウムが担持されたシリカ担体が得られる。
【0024】
次に、上記のようにして得られた担体に活性金属を含む化合物を担持する。活性金属としては、コバルト及び/又はルテニウムが一酸化炭素転換活性、生成物選択性の観点から好ましい。
【0025】
コバルトル及び/又はルテニウムを担持する際に使用するこれら金属元素を含む化合物としては特に限定されることはなく、これら金属の鉱酸あるいは有機酸の塩又は錯体を使用することができる。例えば、コバルト化合物としては、硝酸コバルト、塩化コバルト、蟻酸コバルト、酢酸コバルト、プロピオン酸コバルト、コバルトアセチルアセトナートなどを挙げることができる。ルテニウム化合物としては、塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム、テトラオキソルテニウム酸塩等が挙げられる。
【0026】
コバルト及び/又はルテニウム化合物の担持量に特に制限はないが、一般には触媒の質量を基準として、金属原子として3〜50質量%、好ましくは10〜30質量%である。担持量が3質量%未満の場合には活性が不十分となる傾向にあり、50質量%を超える場合には、活性金属の凝集が起こり、活性が低下する傾向にある。
【0027】
活性金属化合物の担持方法としては特に制限はなく、Incipient Wetness法に代表される含浸法を用いることができる。
【0028】
活性金属化合物を担持した後、通常、温度100〜200℃、好ましくは110〜130℃で、2〜24時間、好ましくは5〜10時間乾燥し、次いで、空気雰囲気下に340〜600℃、好ましくは400〜450℃で、1〜5時間焼成を行い、活性金属化合物を酸化物へと変換することによりFT合成触媒が得られる。
【0029】
上記FT合成触媒は、FT合成反応に対する十分な活性を付与するために、一般的には分子状水素を含む雰囲気下に還元を行ない、活性金属を酸化物から金属へと変換することにより活性化した後、FT合成反応に供することが一般的である。
【0030】
なお、上記触媒の活性化が、FT合成法により炭化水素を製造する設備あるいはそれに付属する設備において行なわれる場合は、活性化された触媒はそのままFT合成反応に供される。一方、例えば炭化水素の製造設備と離れた触媒製造設備において上記活性化が行われる場合には、移送時等における空気との接触により触媒が失活することを防止するために、安定化処理が施されてから出荷されることが一般的である。この安定化処理としては、活性化された触媒の外表面をワックス等により被覆して、空気との接触を遮断する方法、あるいは、活性化された触媒の外表面を軽度に酸化して酸化皮膜を形成し、空気との接触によるそれ以上の酸化を防止する方法などが挙げられる。この活性化され、安定化処理を施された触媒はそのままFT合成反応に供することができる。
【0031】
以上のようにして得られる活性化されたFT合成触媒を用いて、FT合成反応により炭化水素が製造される。この炭化水素の製造方法については、後に詳述する再生FT合成触媒を用いた場合と、使用する触媒が再生触媒であるか未使用の触媒であるかの点のみでの相違であるので、重複を避ける観点から説明を割愛する。
【0032】
FT合成反応に供された上記触媒は、反応時間の経過とともにその活性が低下する傾向にある。活性が未使用の触媒に比較して特定の範囲まで低下した触媒が、本実施形態の再生FT合成触媒の製造方法に係る使用済みFT合成触媒となる。
【0033】
再生を行なうための装置及び再生の形態には種々のものがある。FT合成反応を停止し、使用済みFT合成触媒を上記反応装置内に収容したままの状態で再生を行なってもよい。あるいは、FT合成反応装置内の使用済みFT合成触媒をFT合成反応装置に接続された再生装置に移送し、該装置内にて再生を行なってもよい。この際、FT合成反応装置内の触媒の全てを移送して再生してもよいし、その一部を移送して再生してもよい。また、FT合成反応装置から抜き出した使用済みFT合成触媒を、同装置とは独立した再生装置に移送し、再生を行なってもよい。この場合、抜き出された使用済みFT合成触媒は空気に接触させないことが好ましい。抜き出した使用済みFT合成触媒の空気との接触を遮断する観点からは、FT合成反応装置に接続された再生装置に移送して再生を行なうことが好ましい。
【0034】
使用済みFT合成触媒のうち、本発明の適用に適した触媒は、初期一酸化炭素転化率で表される活性が、相当する未使用の触媒の当該活性を基準として40〜95%、好ましくは50〜90%である使用済みFT合成触媒である。なお、ここで、初期一酸化炭素転化率とは、所定の反応条件において実施されるFT合成反応における一酸化炭素の反応開始から2.5時間経過した時に得られた一酸化炭素転化率をいう。また、基準とする「相当する未使用の触媒の当該活性」とは、相当する未使用の触媒(FT合成反応に使用される前のFT合成触媒)について、上記使用済みFT合成触媒について行なったものと同一条件でのFT合成反応における初期一酸化炭素転化率をいう。また、以後、〔使用済みFT合成触媒の初期一酸化炭素転化率/相当する未使用の触媒の初期一酸化炭素転化率〕(%)を「活性保持率」と呼ぶこととする。
【0035】
活性保持率が95%を超える使用済みFT合成触媒については、再生することなく継続して使用可能な活性を未だ有しており、また、再生による活性向上の幅も限られていることから、再生の対象としないことが合理的である。一方、活性保持率が40%未満である使用済みFT合成触媒については、その活性低下がコーク堆積、活性金属原子−担体間での複合酸化物の形成など、複数の要因による可能性が高いため、本発明の方法が効果を奏して、再使用に供することができる程度に活性を回復させることが困難な傾向にある。
【0036】
FT合成反応装置から抜き出された使用済みFT合成触媒には、FT合成反応の生成物である炭化水素化合物が付着している。この炭化水素化合物はワックス分を含むため、常温では固体である。この使用済みFT合成触媒を本発明の再生FT合成触媒の製造方法に供して活性を十分に回復させるためには、まず触媒に付着した炭化水素化合物の除去、すなわち脱油を施すことが好ましい。
【0037】
脱油工程としては、付着した炭化水素化合物を含む触媒を、硫黄化合物、窒素化合物、塩素化合物、アルカリ金属化合物等を含まないパラフィンを主成分とする炭化水素油により洗浄する方法が挙げられる。具体的には、沸点約400℃以下のFT合成法の生成油もしくは類似した構造を持つノルマルパラフィン類が、同工程での洗浄油として用いられる。洗浄時の温度、圧力は任意に決定されるが、上記炭化水素油をその沸点近くの温度まで加熱し、洗浄を行なうとより洗浄の効果は大きい。脱油工程に使用する装置としては、オートクレーブ型容器、流通式反応器型容器などを用いることができる。脱油工程においては、脱油前の触媒に含まれる油分(炭素分質量換算)の70質量%以上が除去されることが好ましい。この除去率が70質量%を下回る場合は、スチーミング工程における水蒸気の触媒担体中の細孔内分散が十分でなく、活性の回復が十分とならない傾向にある。
【0038】
本実施形態に係るスチーミング工程においては、水蒸気及び不活性ガスを含む混合気体に、上記脱油工程を経た使用済みFT合成触媒を接触させる。上記混合気体中の水蒸気濃度は1〜30体積%であり、好ましくは5〜20体積%である。上記水蒸気濃度が1体積%未満の場合は、十分な活性回復の効果が得られない傾向となる。一方、水蒸気濃度が30体積%を超える場合は、活性金属の過剰な凝集及びシリカを含む担体の構造崩壊を生じる傾向となるため、好ましくない。上記不活性ガスとしては窒素ガス等が挙げられる。上記混合気体中には、更に分子状水素又は一酸化炭素を含んでもよい。但し、分子状水素と一酸化炭素の両方を含むことは、FT合成反応が生起され、反応熱による温度上昇の懸念があることから好ましくない。
【0039】
上記スチーミング工程における温度は、150〜350℃であり、好ましくは170〜250℃である。上記温度が150℃を下回る場合、活性回復の効果が得られにくい傾向にある。一方、上記温度が350℃を超える場合には、スチーミングに伴う酸化作用により活性金属原子の酸化が進行し、一酸化炭素転換に対する不活性種が生成するために好ましくない。
【0040】
上記スチーミング工程における圧力は、大気圧〜5MPaであり、大気圧〜3MPaが好ましい。圧力が5MPaを超える場合、活性回復の効果に比較してシリカを含む担体構造の崩壊の好ましくない影響が勝ることから好ましくない。
【0041】
上記スチーミング工程における時間は、温度、使用する装置等の影響が大きく一概には規定されないが、0.1〜10時間程度が選択される。
【0042】
FT合成反応においては、分子状水素と一酸化炭素との反応から、炭化水素と同時に副生成物として水が多量に生成し、FT合成反応装置内には常に水蒸気が存在する。したがって、FT合成触媒は反応中常に水蒸気に晒されていることとなる。このような履歴を受けて活性が低下した使用済みFT合成触媒に、上述のようなスチーミング工程を施すことによってその活性が回復することは、全く予想外のことであった。
【0043】
以上のようにして、本実施形態に係る再生FT合成触媒を得ることができる。この再生FT合成触媒は、このままFT合成反応に供することもできる。
【0044】
一方、本実施形態においては、スチーミング工程を経て得られた触媒に、分子状水素又は一酸化炭素を含む気体中で還元する還元工程を更に施して再生FT合成触媒を製造してもよい。スチーミング工程を経て得られた触媒においては、スチーミングによる弱い酸化作用により、活性金属原子の一部が金属から酸化物へと酸化されている傾向にある。当該触媒をFT合成反応に供すると、この酸化物となった活性金属原子の少なくとも一部は、同反応の原料である分子状水素及び一酸化炭素の作用により、同反応中に還元されて金属となる。しかし、FT合成反応開始初期から、より高い活性金属原子の還元度(金属状態の活性金属原子/全活性金属原子(モル%))を確保し、より高い活性を発現させようとする場合には、上記還元工程を更に施すことが有効である。
【0045】
上記還元工程における雰囲気である分子状水素又は一酸化炭素を含む気体は特に限定されないが、水素ガス、水素ガスと窒素ガス等の不活性ガスとの混合気体、一酸化炭素及び一酸化炭素と窒素ガス等の不活性ガスとの混合気体などが挙げられる。上記気体が分子状水素を含まず、一酸化炭素を含むものである場合には、分子状水素による還元の場合に副生し、活性金属原子の還元を阻害すると推測される水の生成がないことから、より高い活性金属原子の還元度が得られる傾向にある。なお、上記気体が分子状水素と一酸化炭素とを共に含むものであると、還元工程においてFT合成反応が生起され、反応熱による温度上昇等の懸念があることから、好ましくない。但し、それぞれの成分が微量混入したものである場合には許容される。
【0046】
上記還元工程において、雰囲気として分子状水素を含む気体を用いる場合には、還元温度は250〜500℃であることが好ましく、350〜450℃であることがより好ましい。還元温度が250℃よりも低い場合には、活性金属原子の還元度を高める効果が十分に得られない傾向にある。一方、還元温度が500℃を超える場合には、活性金属の凝集が過剰に進行するため活性が低下する傾向にある。
【0047】
上記還元工程において、雰囲気として一酸化炭素を含む気体を用いる場合には、還元温度は200〜400℃であることが好ましく、250〜350℃であることがより好ましい。上記温度が200℃よりも低い場合には、活性金属原子の十分な還元度が得られ難い傾向にある。一方、400℃を超える場合には、一酸化炭素からカーボンナノチューブを代表とするカーボンを生成しやすい傾向にある。
【0048】
上記還元工程において、雰囲気の圧力は特に制限されないが、一般に大気圧〜5MPa程度である。また、還元時間は還元温度、使用する装置等に大きく依存することから一概に規定することは困難であるが、一般的に0.5〜30時間程度である。
【0049】
以上のようにして、本実施形態に係る再生FT合成触媒が得られる。なお、上述の未使用のFT合成触媒についての説明において述べたものと同様に、再生FT合成触媒においても、活性化状態にある触媒について空気との接触を伴う移送等を行う必要がある場合には、未使用の触媒に対するものと同様の安定化処理を施した上で、移送等を行うことが好ましい。なお、以後、〔再生FT合成触媒の初期一酸化炭素転化率/相当する未使用の触媒の初期一酸化炭素転化率〕(%)を「活性回復率」と呼ぶこととする。
【0050】
次に、本実施形態に係る再生FT合成触媒を用いて、一酸化炭素と水素ガスとを原料として、FT合成反応により炭化水素を製造する方法について説明する。上記炭化水素の製造方法としては特に限定されず、公知の方法を採用することができる。反応装置としては、固定床反応装置又はスラリー床反応装置が好ましい。また、原料である一酸化炭素の転化率を50%以上とする条件下に反応が行われることが好ましく、70〜90%の範囲で行われることが更に好ましい。なお、触媒として再生された触媒を使用すること以外は、未使用の触媒を使用する場合と、基本的に相違はない。
【0051】
以下、スラリー床型の反応装置を使用した例に沿って、本実施形態に係るFT合成触媒を用いた炭化水素の製造方法について説明する。
【0052】
反応装置としては、例えば気泡塔型流動床反応装置が使用できる。気泡塔型流動床反応装置内には、反応温度において液状である炭化水素(通常は同反応装置で製造されるFT合成炭化水素)に、本実施形態に係る再生FT合成触媒を懸濁させたスラリーが収容されており、ここへ反応塔下部より一酸化炭素ガス及び水素ガスの混合ガス(一般的には天然ガス等の炭化水素のリフォーミングにより得られる合成ガス)が導入される。上記混合ガスは反応塔内を気泡となって上昇する間に上記炭化水素中に溶解し、触媒と接触することにより炭化水素が生成する。また、上記混合ガスの気泡の上昇によりスラリーが攪拌され、流動状態が保たれる。上記反応塔内には反応熱を除去するための冷却媒体が内部を流通する冷却管が設置されており、熱交換により反応熱が除去される。
【0053】
FT合成反応の反応温度は、目標とする一酸化炭素転化率により定めることができるが、150〜300℃であることが好ましく、170〜250℃であることがより好ましい。
【0054】
反応圧力は0.5〜5.0MPaであることが好ましく、2.0〜4.0MPaであることがより好ましい。反応圧力が0.5MPa未満である場合は、一酸化炭素転化率が50%以上になりにくい傾向があり、5.0MPaを超えると、局所的な発熱を生じやすくなる傾向にあるので好ましくない。
【0055】
原料ガス中の分子状水素/一酸化炭素の比率(モル比)は0.5〜4.0であることが好ましく、1.0〜2.5であることがより好ましい。上記モル比が0.5未満の場合には反応温度が高くなり触媒が失活する傾向にあり、4.0を超える場合には、望ましくない副生成物であるメタンの生成量が増加する傾向にある。
【0056】
原料ガスのガス空間速度は500〜5000h−1であることが好ましく、1000〜2500h−1であることがより好ましい。ガス空間速度が500h−1未満の場合には、同一触媒量に対する生産性が低く、5000h−1を超える場合には、一酸化炭素の転化率が50%以上になり難いため好ましくない。
【0057】
本実施形態に係る再生FT合成触媒は高い活性回復率を有している。また、上記再生FT合成触媒は高い連鎖成長確率(α)を有しており、この触媒を用いることにより、高い収率にてワックス留分、中間留分(灯軽油留分)、ナフサ留分に相当するノルマルパラフィンを主成分とする炭化水素、及び少量のガス状の炭化水素を得ることができる。特にワックス留分及び中間留分に富む炭化水素を高い収率で得ることができる。
【0058】
本発明は上記好ましい実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、適宜変更を加えることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が92.3%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径11.2nm、ZrO担持量8.5質量%(触媒の質量基準))25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素ガス=9.8/90.2の混合気体流通下、全圧1.5MPa、200℃で1時間スチーミングを行った(スチーミング工程)。続いて、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った(還元工程)。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0061】
<FT合成反応評価>
上記により得られた再生FT合成触媒5gを、窒素ガス雰囲気下にてセタン30mlと共に内容積100mlのオートクレーブに移し、FT合成反応を行った。水素ガス/一酸化炭素が2/1(モル比)の混合ガスを原料とし、W(触媒質量)/F(合成ガス流量)=3g・h/mol、温度230℃、圧力2.3MPa、攪拌速度800rpmにおいて反応を開始した。反応部出口のガス組成をガスクロマトグラフィー法により経時的に分析し、この分析データから前述の初期一酸化炭素転化率を算出した。また、生成物の分析から、連鎖成長確率αを常法により求めた。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行ない、初期一酸化炭素転化率を同様に求めた。そして、前述の定義に従って、使用済みFT合成触媒の活性保持率、及び再生FT合成触媒の活性回復率を算出した。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例2)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が50.1質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径12.4nm、ZrO担持量7.9質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素ガス=11.2/88.8の混合気体流通下、全圧1.6MPa、200℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0063】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率、及び再生FT合成触媒を使用した場合の連鎖成長確率αを算出した。結果を表1に示す。
【0064】
(実施例3)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が78.4質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径20.4nm、ZrO担持量6.6質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=9.4/90.6の混合ガス流通下、全圧0.5MPa、200℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0065】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率、及び再生FT合成触媒を使用した場合の連鎖成長確率αを算出した。結果を表1に示す。
【0066】
(実施例4)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が77.2質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径8.9nm、ZrO担持量7.1質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=8.2/91.8の混合ガス流通下、全圧0.5MPa、200℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0067】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率、及び再生FT合成触媒を使用した場合の連鎖成長確率αを算出した。結果を表1に示す。
【0068】
(実施例5)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が71.2質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径18.4nm、ZrO担持量9.4質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=6.5/93.5の混合ガス流通下、全圧1.6MPa、200℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0069】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率、及び再生FT合成触媒を使用した場合の連鎖成長確率αを算出した。結果を表1に示す。
【0070】
(実施例6)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が71.1質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径17.6nm、ZrO担持量2.6質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=7.4/92.6の混合ガス流通下、全圧1.6MPa、200℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0071】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率、及び再生FT合成触媒を使用した場合の連鎖成長確率αを算出した。結果を表1に示す。
【0072】
(実施例7)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が76.6質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径14.3nm、ZrO担持量7.1質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=27.1/72.9の混合ガス流通下、全圧2.3MPa、200℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0073】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率、及び再生FT合成触媒を使用した場合の連鎖成長確率αを算出した。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例8)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が74.5質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径15.2nm、ZrO担持量6.6質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=4.4/95.6の混合ガス流通下、全圧2.2MPa、200℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0075】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率、及び再生FT合成触媒を使用した場合の連鎖成長確率αを算出した。結果を表1に示す。
【0076】
(実施例9)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が72.3質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径10.2nm、ZrO担持量2.3質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=10.5/89.5の混合ガス流通下、全圧2.5MPa、200℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0077】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率、及び再生FT合成触媒を使用した場合の連鎖成長確率αを算出した。結果を表1に示す。
【0078】
(実施例10)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が72.8質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径10.9nm、ZrO担持量3.8質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=11.4/88.6の混合ガス流通下、全圧0.1MPa、200℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0079】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率、及び再生FT合成触媒を使用した場合の連鎖成長確率αを算出した。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例11)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が76.4質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径16.4nm、ZrO担持量5.1質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=8.8/91.2の混合ガス流通下、全圧2.2MPa、200℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0081】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率、及び再生FT合成触媒を使用した場合の連鎖成長確率αを算出した。結果を表1に示す。
【0082】
(実施例12)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が77.4質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径16.9nm、ZrO担持量4.7質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=7.6/92.4の混合ガス流通下、全圧2.1MPa、200℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0083】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率、及び再生FT合成触媒を使用した場合の連鎖成長確率αを算出した。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例13)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が76.4質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径18.4nm、ZrO担持量13.2質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=8.8/91.2の混合ガス流通下、全圧1.6MPa、200℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0085】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率、及び再生FT合成触媒を使用した場合の連鎖成長確率αを算出した。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例14)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が77.1質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径17.6nm、ZrO担持量0.7質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=7.6/92.4の混合ガス流通下、全圧1.6MPa、200℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0087】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率、及び再生FT合成触媒を使用した場合の連鎖成長確率αを算出した。結果を表1に示す。
【0088】
(比較例1)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が35.8質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径12.4nm、ZrO担持量8.2質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=11.2/88.8の混合ガス流通下、全圧1.6MPa、210℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0089】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率を算出した。結果を表1に示す。
【0090】
(比較例2)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が75.3質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径14.3nm、ZrO担持量7.1質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=41/59の混合ガス流通下、全圧2.3MPa、200℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0091】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率を算出した。結果を表1に示す。
【0092】
(比較例3)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が74.1質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径15.2nm、ZrO2担持量6.6質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=0.4/99.6の混合ガス流通下、全圧2.2MPa、200℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0093】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率を算出した。結果を表1に示す。
【0094】
(比較例4)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が70.2質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径10.9nm、ZrO2担持量3.8質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=11.4/88.6の混合ガス流通下、全圧5.5MPa、200℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0095】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率を算出した。結果を表1に示す。
【0096】
(比較例5)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が75.2質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径12.3nm、ZrO担持量6.3質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=4.4/95.6の混合ガス流通下、全圧2.2MPa、362℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0097】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率を算出した。結果を表1に示す。
【0098】
(比較例6)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が75.2質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径14.3nm、ZrO担持量5.4質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=4.4/95.6の混合ガス流通下、全圧2.1MPa、121℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0099】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率を算出した。結果を表1に示す。
【0100】
(比較例7)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が75.3質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径27.2nm、ZrO担持量6.6質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=9.4/90.6の混合ガス流通下、全圧0.5MPa、200℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0101】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率を算出した。結果を表1に示す。
【0102】
(比較例8)
<再生FT合成触媒の調製>
後述の方法で測定した活性保持率が74.2質量%である、FT合成反応に使用済みであり、脱油された粉体状Co/SiO−ZrO触媒(平均細孔径3.3nm、ZrO担持量7.1質量%)25gを、固定床流通式反応装置に充填し、体積比で水蒸気/窒素=8.2/91.8の混合ガス流通下、全圧0.5MPa、200℃で1時間スチーミングを行った。次に、同反応装置内にて、水素気流下、400℃で3時間還元を行った。これにより、再生FT合成触媒を得た。
【0103】
<FT合成反応評価>
触媒として上記により得られた再生FT合成触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作にてFT合成反応を行なった。また、別途、相当する使用済みFT合成触媒及び相当する未使用の触媒を用いて、上記と同様の方法でFT合成反応を行なった。そして、実施例1と同様に、使用済みFT合成触媒の活性保持率、再生FT合成触媒の活性回復率を算出した。結果を表1に示す。
【0104】
【表1】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィッシャー・トロプシュ合成反応に使用した使用済み触媒を再生して得られる再生フィッシャー・トロプシュ合成触媒の製造方法であって、
窒素吸着法による平均細孔径が4〜25nmであるシリカを含む担体にコバルト及び/又はルテニウムが担持され、初期一酸化炭素転化率で表される活性が、相当する未使用の触媒の当該活性を基準として40〜95%である前記使用済み触媒を、大気圧〜5MPaの圧力、150〜350℃の温度にて、1〜30体積%の水蒸気及び不活性ガスを含む混合ガスに接触させるスチーミング工程を備えることを特徴とする再生フィッシャー・トロプシュ合成触媒の製造方法。
【請求項2】
前記スチーミング工程を経て得られた触媒を、分子状水素又は一酸化炭素を含む気体中で還元する還元工程を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の再生フィッシャー・トロプシュ合成触媒の製造方法。
【請求項3】
前記シリカを含む担体が、更に触媒の質量を基準として1〜10質量%の酸化ジルコニウムを含むこと特徴とする請求項1又は2に記載の再生フィッシャー・トロプシュ合成触媒の製造方法。
【請求項4】
前記スチーミング工程を含む再生フィッシャー・トロプシュ合成触媒を製造するための全工程を、フィッシャー・トロプシュ合成反応装置と接続された再生装置内において実施することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の再生フィッシャー・トロプシュ合成触媒の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法により製造された再生フィッシャー・トロプシュ合成触媒の存在下に、一酸化炭素及び分子状水素を含む原料をフィッシャー・トロプシュ合成反応に供することを特徴とする炭化水素の製造方法。


【公開番号】特開2011−183282(P2011−183282A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49633(P2010−49633)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】