説明

再生合成木材及び合成木材の再生方法

【課題】再生合成木材及び合成木材の再生方法において、従来再使用が不可能であった合成木材を再生利用することができて、優れた切削性と再生利用性とを有し、モックアップモデル、マスターモデル、検査ゲージ用モデル等の製作に適すること。
【解決手段】再生合成木材1の製造方法(合成木材の再生方法)は、合成木材の切断端材・切削屑2を粗粉砕する粗粉砕工程(S10)と、微粉砕機で微粉砕して平均粒子径120μmの微粉体3とする微粉砕工程(S11)と、微粉体3の100重量部を20重量部の有機合成樹脂バインダーと混合する混合工程(S12,S13)と、常温で200kg/cm2 の圧力を掛けてプレス成形して粉体ブロックとする常温プレス成形工程(S14)と、粉体ブロックを静置して未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去する養生工程(S15)、または高周波加熱工程(S16)を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる合成木材(ケミカルウッド)の再生利用を可能にした再生合成木材及び合成木材の再生方法に関するものであり、特に、優れた切削性と再生利用性とを有しており、モックアップモデル、マスターモデル、検査ゲージ用モデル等の製作に適した再生合成木材及び合成木材の再生方法に関するものである。なお、本明細書・特許請求の範囲・図面及び要約書において「合成木材」とは、従来のモデル用切削材料、すなわち無機材料系ブロック素材や発泡ポリウレタン素材等を総称した材料を示すものとする。
【背景技術】
【0002】
モックアップモデル用材料、マスターモデル用材料、検査ゲージ用モデル用材料等の模型素材用ブロックは、切削加工によって所望の形状を付与されて、モデルや検査ゲージとして使用される。近年、木型職人の減少、コンピュータ技術の飛躍的進歩、モデル製作の短納期化の要請等に伴って、NC(数値制御)マシンによる切削加工でモデルや検査ゲージを製作する技術が主流となっている。
【0003】
従来、このような切削加工の素材となるモデル製作用ブロックとしては、炭酸カルシウム等の無機材料を有機合成樹脂からなるバインダーを用いてブロックに成形した無機材料系ブロック素材や、発泡ポリウレタン素材が用いられてきた。このような発泡ポリウレタン素材の具体例として、特許文献1において、発泡ポリウレタン成形品の製造法の特許発明が開示されている。
【0004】
この特許文献1においては、ポリオール混合物と芳香族ポリイソシアネート成分と脱水剤とを混合して、発泡剤を用いることなくメカニカルフロス法によって発泡させることを特徴とする発泡ポリウレタン成形品の製造法について開示がされている。これによって、密度分布の偏りが少なく、軽量で、切削加工時の粉塵発生量が少なく、耐熱性の良好なモデル用切削材料に適した発泡ポリウレタン成形品が得られるとしている。
【特許文献1】特許第2618804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の無機材料系ブロック素材や特許文献1に記載の発泡ポリウレタン成形品等の合成木材においては、切削加工によって形成するモデルの大きさに合わせて、予め平板形状に成形されている合成木材を削り代を残して切断して貼り合わせ、切削加工を実施している。このため、切断の際に生じる切断端材及び切削加工によって生じる切削屑が、重量にして元の合成木材の30%〜50%もの量になる。しかし、合成木材は硬化した有機合成樹脂を大量に含有するため再使用することができず、廃棄処分するしかないため環境負荷物質となり、廃棄するには高熱焼却処理が必要で廃棄処理にも高額なコストがかかるという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる問題点を解決すべくなされたものであって、従来再使用が不可能であった合成木材を再生利用することができて、優れた切削性と再生利用性とを有し、モックアップモデル、マスターモデル、検査ゲージ用モデル等の製作に適した再生合成木材及び合成木材の再生方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る再生合成木材は、合成木材の切断端材及び/または合成木材の切削屑を微粉砕して平均粒子径が50μm〜300μmの範囲内、より好ましくは70μm〜150μmの範囲内の微粉体とし、該微粉体100重量部に対して5重量部〜35重量部の範囲内、より好ましくは10重量部〜30重量部の範囲内の有機合成樹脂バインダーを混合して、常温で100kg/cm2 〜500kg/cm2 の範囲内、より好ましくは150kg/cm2 〜300kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形した後に、静置して内部の未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去してなるものである。
【0008】
ここで、微粉体の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックによって測定した値であって、平均粒子径が50μm〜300μmの範囲内、より好ましくは70μm〜150μmの範囲内であり、かつ、粒子径250μmを超える微粉体が10重量%以下であり、粒子径100μm未満の微粉体が30重量%以下であることが好ましい。また、有機合成樹脂バインダーとしては、ポリオール系樹脂、イソシアネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ウレタンプレポリマー等を用いることができる。
【0009】
請求項2に係る再生合成木材は、請求項1の構成において、前記有機合成樹脂バインダーはポリオール系樹脂及びイソシアネート系樹脂であるものである。ここで、ポリオール系樹脂としてはポリオキシエチレングリセルエーテル、ポリオキシプロピレングリセルエーテル、ポリオキシブチレングリセルエーテル、等があり、イソシアネート系樹脂としてはポリエチレンポリフェニールポリイソシアネート、等がある。
【0010】
請求項3に係る再生合成木材は、請求項1または請求項2の構成において、静置して内部の未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去する代わりに、内部温度が40℃〜80℃の範囲内、より好ましくは40℃〜60℃の範囲内になるように高周波加熱して、内部の未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去してなるものである。
【0011】
請求項4に係る合成木材の再生方法は、合成木材の切断端材及び/または合成木材の切削屑を粗粉砕機で粗粉砕して平均粒子径が0.5mm〜5mmの範囲内の粗粉体とする粗粉砕工程と、前記粗粉体を微粉砕機で微粉砕して平均粒子径が50μm〜300μmの範囲内の微粉体とする微粉砕工程と、前記微粉体100重量部を3重量部〜30重量部の範囲内の有機合成樹脂バインダーと混合して表面コーティング微粉体とする混合工程と、前記表面コーティング微粉体を常温で100kg/cm2 〜500kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形して粉体ブロックとする常温プレス成形工程と、前記粉体ブロックを静置して内部の未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去する養生工程と、を具備するものである。
【0012】
ここで、粗粉体及び微粉体の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックによって測定した値であって、微粉体の平均粒子径が50μm〜300μmの範囲内、より好ましくは70μm〜150μmの範囲内であり、かつ、粒子径250μmを超える微粉体が10重量%以下であり、粒子径100μm未満の微粉体が30重量%以下であることが好ましい。
【0013】
また、有機合成樹脂バインダーとしては、ポリオール系樹脂、イソシアネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ウレタンプレポリマー等を用いることができる。更に、「粗粉砕機」としては通常の木材粉砕機等を使用することができ、「微粉砕機」としては、例えば、河本鉄工(株)製のミクロンコロイドミル等を使用することができる。
【0014】
請求項5に係る合成木材の再生方法は、請求項4の構成において、前記養生工程の代わりに、前記粉体ブロックを内部温度が40℃〜80℃の範囲内、より好ましくは40℃〜60℃の範囲内になるように高周波加熱して、内部の未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去する高周波加熱工程を具備するものである。
【0015】
請求項6に係る合成木材の再生方法は、請求項4または請求項5の構成において、前記混合工程は、前記微粉体100重量部を3重量部〜30重量部の範囲内のポリオール系樹脂と混合して第1の混合微粉体とする工程と、前記微粉体100重量部を3重量部〜30重量部の範囲内のイソシアネート系樹脂と混合して第2の混合微粉体とする工程と、前記第1の混合微粉体と前記第2の混合微粉体とを重量比1.5:1〜1:1.5の範囲内で混合する工程とを含有するものである。
【0016】
ここで、ポリオール系樹脂としてはポリオキシエチレングリセルエーテル、ポリオキシプロピレングリセルエーテル、ポリオキシブチレングリセルエーテル、等があり、イソシアネート系樹脂としてはポリエチレンポリフェニールポリイソシアネート、等がある。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る再生合成木材は、合成木材の切断端材及び/または合成木材の切削屑を微粉砕して平均粒子径が50μm〜300μmの範囲内の微粉体とし、微粉体100重量部に対して5重量部〜35重量部の範囲内の有機合成樹脂バインダーを混合して、常温で100kg/cm2 〜500kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形した後に、静置して内部の未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去してなる。
【0018】
合成木材の切断端材及び/または合成木材の切削屑を微粉砕して平均粒子径が50μm〜300μmの範囲内の微粉体とすることによって、合成木材が球状の微粒子となって、充填性が大幅に向上する。そして、この微粉体100重量部に対して、5重量部〜35重量部の範囲内の有機合成樹脂バインダーを均一に混合することによって、球状の微粒子の表面を有機合成樹脂バインダーが均一に覆った状態となる。したがって、この状態で金型に充填して100kg/cm2 〜500kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けることによって、微粉体同士に強固な結合が生じて、緻密で高強度の成形体を得ることができる。
【0019】
また、常温プレスによって成形できることから、外部からの均一な加熱が不要であるため、極めて厚い成形体を成形することができ、500mmt までの厚さの再生合成木材ブロックを成形することが可能である。更に、加熱機構が不要であることから、プレス成形機及び金型の構造が簡単になるという作用効果が得られ、その結果、1000mm×2000mm程度の広い面積を有する再生合成木材ブロックを成形することも可能となる。
【0020】
なお、微粉砕して平均粒子径50μm〜300μmの範囲内の微粉体とするためには、周速50m/秒〜80m/秒の範囲内の微粉砕機を用いるのが好ましい。このような微粉砕機としては、例えば河本鉄工(株)製のミクロンコロイドミル等がある。また、微粉体100重量部に対して、5重量部〜35重量部の範囲内の有機合成樹脂バインダーを均一に混合するためには、周速20m/秒〜30m/秒の範囲内の高速攪拌分散機を用いるのが好ましい。このような高速攪拌分散機としては、例えばホソカワミクロン(株)製の横型タービライザー等がある。
【0021】
こうして成形した再生合成木材は、有機合成樹脂バインダーの量が体積として再生合成木材の0.1vol%〜数vol%と非常に少ないため、高圧でプレス成形しても成形体が金型のキャビティ面に付着せず、金型に離型剤を塗布しなくても簡単に離型することができる。これによって、プレス成形がより効率良くできるとともに、成形体に離型剤が付着していないため塗料の付着性が良好であり、モデルとして表面を色分けする場合にも塗装が容易であり、ブロック同士を接着する場合の接着性も良好である。
【0022】
しかも、100kg/cm2 〜500kg/cm2 の範囲内の高圧力を掛けて成形しているため、微粉体が極めて高密度に充填されて、元の合成木材と同等の緻密で比重が大きい再生合成木材となる。これによって、適度な硬さと緻密な構造を有するため、切り立った部分も鋭い角を残して切削することができ、モデルの微小部分についても精密な切削加工が可能となる。また、体積としては殆ど元の合成木材の微粉体のみからなる再生合成木材であるため、切削端材や切削屑を更に再生合成木材の原料として再利用することができ、環境負荷物質とはならない。
【0023】
ここで、平均粒子径が70μm〜150μmの範囲内の微粉体とすることによって、より充填性が向上するため、より好ましい。また、微粉体100重量部に対して10重量部〜30重量部の範囲内の有機合成樹脂バインダーを混合することによって、球状の微粒子の表面を有機合成樹脂バインダーが過不足なくより均一に覆った状態となるため、より好ましい。更に、150kg/cm2 〜300kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形することによって、微粉体同士により強固な結合が生じて、より確実に緻密で高強度の成形体を得ることができるため、より好ましい。
【0024】
このようにして、従来再使用が不可能であった合成木材を再生利用することができて、優れた切削性と再生利用性とを有し、モックアップモデル、マスターモデル、検査ゲージ用モデル等の製作に適した再生合成木材となる。
【0025】
請求項2に係る再生合成木材は、請求項1に係る再生合成木材の原料のうち、有機合成樹脂バインダーとしてポリオール系樹脂及びイソシアネート系樹脂を用いているから、請求項1に記載の効果に加えて、ポリオール系樹脂とイソシアネート系樹脂とは常温で反応して強固な結合を形成し、またイソシアネート系樹脂は、微粉体の表面の水酸基(−OH)と反応して強固な結合を形成する。したがって、有機合成樹脂バインダーとして、ポリオール系樹脂及びイソシアネート系樹脂を用いることにより、常温におけるプレス成形によって、元の合成木材と同等の切削性と強度と寸法安定性とを有する再生合成木材を得ることができる。
【0026】
請求項3に係る再生合成木材は、静置して内部の未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去する代わりに、内部温度が40℃〜80℃の範囲内になるように高周波加熱して、内部の未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去してなる。
【0027】
静置して内部の未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去するには、成形体のひび割れを防ぐために、加熱せずに恒温・恒湿環境で8時間〜10時間を要するが、高周波加熱によって内部温度が40℃〜80℃の範囲内になるように加熱すれば、僅か数分間で内部の未反応部分が完全反応するとともに残留応力が除去されて、安定した状態になる。これによって、製造時間が短縮されて再生合成木材を低コスト化することができる。なお、内部温度が40℃〜60℃の範囲内になるように高周波加熱することによって、より穏やかに未反応部分が完全反応するとともに残留応力が除去されるため、より好ましい。
【0028】
請求項4に係る合成木材の再生方法は、合成木材の切断端材及び/または合成木材の切削屑を粗粉砕機で粗粉砕して平均粒子径が0.5mm〜5mmの範囲内の粗粉体とする粗粉砕工程と、粗粉体を微粉砕機で微粉砕して平均粒子径が50μm〜300μmの範囲内の微粉体とする微粉砕工程と、微粉体100重量部を5重量部〜35重量部の範囲内の有機合成樹脂バインダーと混合して表面コーティング微粉体とする混合工程と、表面コーティング微粉体を常温で100kg/cm2 〜500kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形して粉体ブロックとする常温プレス成形工程と、粉体ブロックを静置して内部の未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去する養生工程とを具備する。
【0029】
粗粉砕工程において、合成木材の切断端材・切削屑を平均粒子径が0.5mm〜5mmの範囲内の粗粉体とすることによって、次の微粉砕工程が容易になる。ここで、平均粒子径が0.5mm〜5mmの範囲内の粗粉体とする粉砕機としては、通常の木材粉砕機等を使用することができる。次の微粉砕工程において、平均粒子径50μm〜300μmの範囲内の微粉体とする粉砕機としては、周速50m/秒〜80m/秒の範囲内の微粉砕機を用いるのが好ましい。このような微粉砕機としては、例えば河本鉄工(株)製のミクロンコロイドミル等がある。
【0030】
このように微粉砕して、平均粒子径50μm〜300μmの範囲内の微粉体とすることによって、合成木材が球状の微粒子になって、充填性が大幅に向上する。ここで、平均粒子径50μm〜150μmの範囲内の微粉体とすることによって、小径粒子と大径粒子の取合せによって充填性がより向上するため、より好ましい。なお、微粉体の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックによって測定した値であって、平均粒子径が50μm〜300μmの範囲内であり、かつ、粒子径250μmを超える微粉体が10重量%以下であり、粒子径100μm未満の微粉体が30重量%以下であることが好ましい。
【0031】
続いて、混合工程において、この微粉体100重量部に対して、5重量部〜35重量部の範囲内の有機合成樹脂バインダーを均一に混合することによって、球状の微粒子の表面を有機合成樹脂バインダーが均一に覆って、表面コーティング微粉体となる。ここで、微粉体100重量部に対して10重量部〜30重量部の範囲内の有機合成樹脂バインダーを混合することが、製品としての再生合成木材の特性をより確実に得ることができるため、より好ましい。
【0032】
このような表面コーティング微粉体を、常温プレス成形工程において、金型に充填して、100kg/cm2 〜500kg/cm2 の範囲内、より好ましくは150kg/cm2 〜300kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けることによって、表面コーティング微粉体同士に強固な結合が生じて、緻密で高強度の成形体を得ることができる。
【0033】
また、常温プレスによって成形できることから、外部からの均一な加熱が不要であるため、極めて厚い成形体を成形することができ、500mmt までの厚さの再生合成木材ブロックを成形することが可能である。更に、加熱機構が不要であることから、プレス成形機及び金型の構造が簡単になるという作用効果が得られ、その結果、1000mm×2000mm程度の広い面積を有する再生合成木材ブロックを成形することも可能となる。
【0034】
こうして得られた成形体を、養生工程において、静置して内部の未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去することによって、元の合成木材と同等の切削性と強度と寸法安定性とを有する再生合成木材となる。また、有機合成樹脂バインダーの量が体積として成形体の0.1vol%〜数vol%と非常に少ないため、高圧でプレス成形しても成形体が金型のキャビティ面に付着せず、金型に離型剤を塗布しなくても簡単に離型することができる。これによって、常温プレス成形工程がより効率良く実施できるとともに、成形体に離型剤が付着していないため塗料の付着性が良好であり、モデルとして表面を色分けする場合にも塗装が容易で、ブロック同士を接着する場合の接着性も良好である。
【0035】
しかも、100kg/cm2 〜500kg/cm2 の範囲内、より好ましくは150kg/cm2 〜300kg/cm2 の範囲内の高圧力を掛けて成形しているため、微粉体が極めて高密度に充填されて、元の合成木材と同等の緻密で比重が大きい再生合成木材となる。これによって、適度な硬さと緻密な構造を有するため、切り立った部分も鋭い角を残して切削することができ、モデルの微小部分についても精密な切削加工が可能となる。また、体積としては殆ど元の合成木材の微粉体のみからなる再生合成木材であるため、切削端材や切削屑を更に再生合成木材の原料として再利用することができ、環境負荷物質とはならない。
【0036】
このようにして、従来再使用が不可能であった合成木材を再生利用することができて、優れた切削性と再生利用性とを有し、モックアップモデル、マスターモデル、検査ゲージ用モデル等の製作に適した合成木材の再生方法となる。
【0037】
請求項5に係る合成木材の再生方法においては、養生工程の代わりに、粉体ブロックを内部温度が40℃〜80℃の範囲内になるように高周波加熱して、内部の未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去する高周波加熱工程を具備する。
【0038】
静置して内部の未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去するには、成形体のひび割れを防ぐために、加熱せずに恒温・恒湿環境で8時間〜10時間を要するが、高周波加熱工程で内部温度が40℃〜80℃の範囲内になるように加熱すれば、僅か数分間で内部の未反応部分が完全反応するとともに残留応力が除去されて、安定した状態になる。これによって、工程時間が短縮されて、低コスト化で実施できる合成木材の再生方法となる。なお、高周波加熱工程において、内部温度が40℃〜60℃の範囲内になるように高周波加熱することによって、より穏やかに未反応部分が完全反応するとともに残留応力が除去されるため、より好ましい。
【0039】
請求項6に係る合成木材の再生方法においては、混合工程が、微粉体100重量部を5重量部〜35重量部の範囲内のポリオール系樹脂と混合して第1の混合微粉体とする工程と、微粉体100重量部を5重量部〜35重量部の範囲内のイソシアネート系樹脂と混合して第2の混合微粉体とする工程と、第1の混合微粉体と第2の混合微粉体とを重量比1.5:1〜1:1.5の範囲内で混合する工程とを含有する。
【0040】
ここで、微粉体100重量部を10重量部〜30重量部の範囲内のポリオール系樹脂と混合して第1の混合微粉体とし、微粉体100重量部を10重量部〜30重量部の範囲内のイソシアネート系樹脂と混合して第2の混合微粉体とするのが、製品としての再生合成木材の特性をより確実に得ることができるため、より好ましい。
【0041】
このように、まず、微粉体をポリオール系樹脂と混合した第1の混合微粉体と、微粉体をイソシアネート系樹脂と混合した第2の混合微粉体とを別々に製造すれば、第1の混合微粉体と第2の混合微粉体とを混合する前の段階においては、長期間保存することができ、常温プレス成形工程を実施する際に、必要な量だけを混合すれば良いため、非常に効率的かつ経済的な合成木材の再生方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態に係る再生合成木材及び合成木材の再生方法について、図1及び図2を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る再生合成木材の製造方法及び合成木材の再生方法を示すフローチャートである。図2(a)は本発明の実施の形態に係る再生合成木材を切削加工して製作したデザイン確認用モデルの斜視図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【0043】
まず、本実施の形態に係る再生合成木材の製造方法及び合成木材の再生方法について、図1を参照して説明する。図1に示されるように、最初に、合成木材の切断端材・切削屑2を、粗粉砕機によって平均粒子径が0.5mm〜5mmの範囲内の粗粉体とする粗粉砕工程を実施した(ステップS10)。ここで、切断端材及び切削屑2を使用した元の合成木材は、三洋化成工業(株)製のケミカルウッド「サンモジュールTW材」である。また、粗粉砕機としては、通常に使用される木材破砕機を使用した。
【0044】
次に、微粉砕工程において、この粗粉体を微粉砕機で微粉砕して微粉体3とした(ステップS11)。ここで、微粉砕機としては、河本鉄工(株)製のミクロンコロイドミルを使用して、粉砕タービン羽の周速を50m/秒〜80m/秒として、微粉砕を行った。得られた微粉体3の平均粒子径を、日機装(株)製のレーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックで測定したところ、平均粒子径は120μmであった。
【0045】
次に、混合工程の前半を実施した(ステップS12)。すなわち、微粉体3の100重量部に対して20重量部のポリオール系樹脂を添加して、ホソカワミクロン(株)製の混合機(TCX−8)で均一に混合して第1の混合微粉体4を製造し、別途、微粉体3の100重量部に対して20重量部のイソシアネート系樹脂を添加して、ホソカワミクロン(株)製の混合機(TCX−8)で均一に混合して第2の混合微粉体5を製造した。
【0046】
ここで、ポリオール系樹脂としては、ポリオキシプロピレングリセルエーテルである三洋化成工業(株)製の「サンニックスGP−400」を使用した。また、イソシアネート系樹脂としては、ポリエチレンポリフェニールポリイソシアネートであるBASE INOAC ポリウレタン(株)製の「ルプラネートM−20S」を使用した。
【0047】
こうして製造した第1の混合微粉体4及び第2の混合微粉体5は、別々に保管すれば、室温で長期間の保存に耐えるため、プレス成形するたびに必要な量だけを使用することによって、効率的かつ経済的な再生合成木材の製造が可能となる。すなわち、混合工程の後半として、第1の混合微粉体4と第2の混合微粉体5とが、重量比で1:1の割合で配合され、混合機によって混合された(ステップS13)。ここで、混合機としては、高速攪拌分散機であるホソカワミクロン(株)製の横型タービライザーを使用した。
【0048】
混合された第1の混合微粉体4と第2の混合微粉体5は、常温プレス成形工程において、プレス成形機の金型の中に充填されて、常温で200kg/cm2 の圧力を掛けてプレス成形されて、粉体ブロックとなる(ステップS14)。本実施の形態においては、260mm×260mm×50mmt の大きさの粉体ブロックを成形したが、常温プレスであり外部からの均一な加熱が不要であるため、500mmt までの厚さの粉体ブロックを成形することが可能である。
【0049】
また、上下の金型のキャビティ表面に微細孔を設けて、フィルターを介して真空ポンプで吸引できる装置を設けることによって、金型に第1の混合微粉体4と第2の混合微粉体5を混合したものを充填する際や、プレス成形する際に、金型内の余分な空気や発生するガスを除去できるため、より安定した密度と強度を有する粉体ブロックを成形することができるので、より好ましい。
【0050】
こうして得られた粉体ブロックを金型から離型した後、養生工程において、恒温・恒湿環境に約10時間静置して、内部の未反応部分を完全反応させるとともに、残留応力を除去した(ステップS15)。これによって、後述するように元の合成木材と同等の切削性と強度と寸法安定性とを有する、再生合成木材1を得ることができた。
【0051】
ここで、ステップS15の養生工程の代わりに、得られた粉体ブロックを金型から離型した後、高周波加熱工程において、高周波加熱によって内部温度が40℃〜80℃の範囲内、より好ましくは40℃〜60℃の範囲内になるように加熱することによって、僅か数分間で内部の未反応部分が完全反応するとともに残留応力が除去されて、安定した状態になる(ステップS16)。これによって、製造時間が短縮されて、再生合成木材1をより低コストで製造することができる。
【0052】
次に、こうして製造された本実施の形態に係る再生合成木材1の諸特性について、検証した。具体的には、本実施の形態に係る再生合成木材1と、本実施の形態に係る合成木材の再生方法において使用された元の合成木材である、三洋化成工業(株)製のケミカルウッド「サンモジュールTW材」とについて、硬さ・熱線膨張係数・熱変形温度・曲げ強さの4点について、それぞれ同じ方法で測定して比較した。測定結果を、表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1に示されるように、硬さ(シェア硬度)については、元の合成木材も再生合成木材1も、ともに64Dで同じであり、線膨張係数については元の合成木材が48×10-6/℃であるのに対して、再生合成木材1が40×10-6/℃であり、元の合成木材よりも線膨張係数が小さく、熱特性としては却って向上している。これは、微粉砕工程において微粉砕した効果であると推定される。
【0055】
また、表1に示されるように、熱変形温度も元の合成木材が82℃であるのに対して再生合成木材1が80℃とほぼ同等であり、曲げ強さは元の合成木材が25.0MPaであるのに対して、再生合成木材1が20.0MPaであり、曲げ強さについては再生合成木材1がやや劣っているが、この点についても有機合成樹脂バインダーの添加量・プレス圧力・養生時間を更に最適化することによって、同等の値が得られるものと考えられる。このように、本実施の形態に係る合成木材の再生方法においては、元の合成木材とほぼ同等の機械的特性及び熱特性を有する再生合成木材1が得られることが分かる。
【0056】
次に、こうして製造された本実施の形態に係る再生合成木材1の切削加工性について、図2を参照して説明する。上述したように、本実施の形態においては、260mm×260mm×50mmt の大きさの再生合成木材1を製造したが、この再生合成木材1をNC(数値制御)切削機で切削加工することによって、図2(a)に示されるようなデザイン確認用モデル6を製作した。
【0057】
この切削加工によって発生した切削屑は、回収して、上述した再生方法による再生合成木材1の原料として再利用することができる。また、製作したデザイン確認用モデル6についても、不要となった場合には、粉砕して、上述した再生方法による再生合成木材1の原料として再利用することができる。
【0058】
そして、図2(b)の断面図に示されるように、本実施の形態に係る再生合成木材1を切削加工して製作したデザイン確認用モデル6においては、切り立った部分の角7も丸みを帯びた部分の角8も、NC切削機のプログラム通りに忠実に再現されている。このように、本実施の形態に係る再生合成木材1においては、モデルの微小部分についての精密な切削加工ができる。したがって、モックアップモデル、マスターモデル、デザイン確認用モデル、検査ゲージ用モデル等の製作に適しており、特に、精度が要求される検査ゲージ用モデルや、試作プレス用型、真空成形用型等の製作に適したものとなる。
【0059】
このようにして、本実施の形態に係る再生合成木材及び合成木材の再生方法においては、従来再使用が不可能であった合成木材を再生利用することができて、優れた切削性と再生利用性とを有し、モックアップモデル、マスターモデル、検査ゲージ用モデル等の製作に適した再生合成木材1を得ることができる。
【0060】
本実施の形態においては、元の合成木材として三洋化成工業(株)製のケミカルウッド「サンモジュールTW材」を用いた場合について説明したが、元の合成木材としては、その他のモデル用切削材料、すなわち無機材料系ブロック素材や発泡ポリウレタン素材等を用いることもできる。
【0061】
また、本実施の形態においては、「有機合成樹脂バインダー」としてポリオール系樹脂及びイソシアネート系樹脂を用いた場合について説明したが、これに限られるものではなく、他の有機合成樹脂バインダーをも用いることができる。更に、ポリオール系樹脂としてポリオキシプロピレングリセルエーテルを、イソシアネート系樹脂としてポリエチレンポリフェニールポリイソシアネートを用いた場合について説明したが、これらに限られるものではない。
【0062】
更に、本実施の形態においては、微粉体の平均粒子径を120μm、ポリオール系樹脂及びイソシアネート系樹脂の配合量を微粉体100重量部に対して各20重量部、プレス成形圧力を200kg/cm2 としたが、これに限られるものではなく、平均粒子径が50μm〜300μmの範囲内の微粉体、微粉体100重量部に対して5重量部〜35重量部の範囲内の有機合成樹脂バインダー、常温で100kg/cm2 〜500kg/cm2 の範囲内の圧力、という条件が満たされれば良い。
【0063】
本発明を実施するに際しては、再生合成木材のその他の部分の構成、組成、配合、成分、形状、数量、材質、大きさ、製造方法等についても、合成木材の再生方法のその他の工程についても、本実施の形態に限定されるものではない。なお、本発明の実施の形態で挙げている数値は、臨界値を示すものではなく、実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る再生合成木材の製造方法及び合成木材の再生方法を示すフローチャートである。
【図2】図2(a)は本発明の実施の形態に係る再生合成木材を切削加工して製作したデザイン確認用モデルの斜視図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 再生合成木材
2 合成木材の切断端材・切削屑
3 微粉体
4 第1の混合微粉体
5 第2の混合微粉体
6 デザイン確認用モデル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成木材の切断端材及び/または合成木材の切削屑を微粉砕して平均粒子径が50μm〜300μmの範囲内の微粉体とし、該微粉体100重量部に対して5重量部〜35重量部の範囲内の有機合成樹脂バインダーを混合して、常温で100kg/cm2 〜500kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形した後に、静置して内部の未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去してなることを特徴とする再生合成木材。
【請求項2】
前記有機合成樹脂バインダーはポリオール系樹脂及びイソシアネート系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の再生合成木材。
【請求項3】
静置して内部の未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去する代わりに、内部温度が40℃〜80℃の範囲内になるように高周波加熱して、内部の未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の再生合成木材。
【請求項4】
合成木材の切断端材及び/または合成木材の切削屑を粗粉砕機で粗粉砕して平均粒子径が0.5mm〜5mmの範囲内の粗粉体とする粗粉砕工程と、
前記粗粉体を微粉砕機で微粉砕して平均粒子径が50μm〜300μmの範囲内の微粉体とする微粉砕工程と、
前記微粉体100重量部を5重量部〜35重量部の範囲内の有機合成樹脂バインダーと混合して表面コーティング微粉体とする混合工程と、
前記表面コーティング微粉体を常温で100kg/cm2 〜500kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形して粉体ブロックとする常温プレス成形工程と、
前記粉体ブロックを静置して内部の未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去する養生工程と、
を具備することを特徴とする合成木材の再生方法。
【請求項5】
前記養生工程の代わりに、前記粉体ブロックを内部温度が40℃〜80℃の範囲内になるように高周波加熱して、内部の未反応部分を完全反応させるとともに残留応力を除去する高周波加熱工程を具備することを特徴とする請求項4に記載の合成木材の再生方法。
【請求項6】
前記混合工程は、前記微粉体100重量部を5重量部〜35重量部の範囲内のポリオール系樹脂と混合して第1の混合微粉体とする工程と、前記微粉体100重量部を5重量部〜35重量部の範囲内のイソシアネート系樹脂と混合して第2の混合微粉体とする工程と、前記第1の混合微粉体と前記第2の混合微粉体とを重量比1.5:1〜1:1.5の範囲内で混合する工程とを含有することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の合成木材の再生方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−23394(P2010−23394A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189568(P2008−189568)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(398012801)株式会社ネイブ (26)
【Fターム(参考)】