説明

再生装置、プログラム、再生方法

【課題】下位互換を意図した基本データしか、デコードできないような符号化方式のオーディオストリームが、管理テーブルに記述されていたとしても、なるべくサラウンド出力が可能なように、ストリーム選択を行う再生装置を提供する。
【解決手段】Procedure実行部42は、チャネル属性がサラウンドになっていて、尚つサラウンド出力の能力が再生装置に存在するオーディオストリームを選択する。オーディオストリームの符号化方式がDTS-HD、DD/DD+であり、オーディオフレームが、基本データと、拡張データとから構成されている場合、サラウンド出力の能力があるか否かの判定は、拡張データに対する処理能力が、再生装置に存在するか否かの判定でなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サラウンドオーディオの自動選択技術の技術分野に属する発明である。
【背景技術】
【0002】
サラウンドオーディオの自動選択技術とは、ビデオストリームと同期再生が可能なオーディオストリームが、記録媒体の管理テーブルにおいて複数記録されている場合、これら複数のオーディオストリームのうち、サラウンドの属性をものを自動的に選択する技術である。近年の映画作品は、音響面を重視しており、ステレオの音声の他に、サラウンドの音声を具備し、これの再生を可能にしていることが多い。そのようにサラウンドのオーディオストリームが存在しており、またこれを再生する技術が再生装置に存在する場合、そのようなサラウンド音声のオーディオストリームを自動的に選択する技術が望まれている。オーディオストリームの選択技術に関しては、以下の特許文献に記載された先行技術が存在する。
【特許文献1】特開2000ー228656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
サラウンド音声の自動選択技術を実現するには、オーディオストリームにサラウンド属性があり、また再生装置側にサラウンドのオーディオストリームをデコードする技術があることが必要とされる。
ところが近年は、オーディオの符号化方式の多様化が進み、その中には、DTS-HD、DD/DD+のように、オーディオストリームのオーディオフレームを、下位互換のための基本データと、拡張データとから構成しているものがある。基本データ、拡張データという二面構造をもっているので、かかる符号化方式のオーディオストリームは、基本データのみがデコードされる場合と、拡張データがデコードされる場合とがある。オーディオストリームの管理テーブルに、5.1ch、7.1chといったサラウンドのチャネル数が記述されていたとしても、それらのチャンネル数で再生がなされるのは、オーディオフレームにおける拡張データをデコードしたときであり、下位互換のための基本データをデコードしただけでは、そのようなチャンネル数での再生はなされないことがある。
【0004】
しかし、下位互換を意図した基本データしか、デコードできないような符号化方式のオーディオストリームが、管理テーブルに記述されていると、たとえ、サラウンド音声の再生が可能な符号化方式のオーディオストリームが、他に存在していたとしても、従来の再生装置は、下位互換のための基本データしか、デコードできないような符号化方式のオーディオストリームを、みすみす選択してしまうことがある。このような誤った選択は、オーサリング担当者が、管理テーブルにおいて、前者の符号化方式のオーディオストリームの優先順位を、後者の符号化方式のオーディオストリームの優先順位より高く規定しているような場合に多くあらわれる。かかる場合、記録媒体側に、サラウンド再生可能な符号化方式のオーディオストリームが存在したとしても、ユーザは、ステレオ音声で映画作品を視聴せざるを得ない結果になる。
【0005】
もっとも、全ての符号化方式において、拡張データをデコードできるように、再生装置の仕様を規定しておけば、かかる問題は生じないと考えられるが、今日、オーディオの符号化方式は多様になっており、これらの全ての符号化方式において、拡張データのデコードを行いサラウンド音声を出力できるようにするのは、再生装置の低価格化を妨げる結果になる。
【0006】
本発明の目的は、下位互換を意図した基本データしか、デコードできないような符号化方式のオーディオストリームが、記録媒体の管理テーブルに記述されていたとしても、なるべくサラウンド出力が可能なように、オーディオストリームの選択を行う再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明にかかる再生装置は、再生装置であって、再生すべき複数オーディオストリームのそれぞれが、複数の条件のうち、どれを満たすかを判定して、満たすと判定された条件の組合せに応じてオーディオストリームを選ぶ選択手段と、選択されたオーディオストリームを再生する再生手段とを備え、前記複数の条件のうち所定の1つは、オーディオストリームのチャネル属性がサラウンドになっていて、尚且つ、オーディオストリームのサラウンド出力を処理できることであり、オーディオストリームのオーディオフレームは、基本データと、拡張データとから構成され、拡張データのサラウンド出力を、処理できるかどうかの判定は、拡張データをデコードする能力が、当該再生装置に存在するか否か、又は、当該再生装置に接続されている機器に存在するか否かを判定する判定処理を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
基本データと、拡張データとからなるオーディオフレームをもつ符号化方式のオーディオストリームについては、拡張データに対する処理能力が存在するか否かを判定することで、選択条件を具備しているかどうかを判定するので、拡張データに対する処理能力がないような符号化方式のオーディオストリームについては、選択から除外することができる。これにより、拡張データの処理が可能となるオーディオストリームの中から、再生すべきオーディオストリームが選ばれるので、記録媒体側に、サラウンド再生可能な符号化方式が存在し、また、サラウンド出力の能力が再生装置側に存在している場合、サラウンド再生を行える可能性を高めることができる。
【0009】
サラウンド出力を行う能力があるかどうかの手順を一部改良するだけで、基本データ、拡張データからなるオーディオフレームをもつサラウンドオーディオストリームを選択対象に加えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1実施形態)
以降、本発明に係る再生装置の実施形態について説明する。先ず始めに、本発明に係る再生装置の実施行為のうち、使用行為についての形態を説明する。図1は、本発明に係る再生装置の、使用行為についての形態を示す図である。図1において、本発明に係る再生装置は、再生装置300である。この再生装置300は、テレビ400、AVアンプ500、スピーカ600から構成されるホームシアターシステムで使用される。
【0011】
以降、BD-ROM100、ローカルストレージ200、再生装置300について説明を行う。
BD-ROM100は、映画作品が記録された記録媒体である。
ローカルストレージ200は、再生装置に組み込まれ、映画配給者のサーバから配信されたコンテンツの受け皿として利用されるハードディスク、又は、SDメモリカードである。
【0012】
再生装置300は、ネット対応型のデジタル家電機器であり、BD-ROM100を再生する機能をもつ。また、映画配給者のサーバから、ネットを通じてダウンロードしたコンテンツを、BD-ROM100に記録されたコンテンツと組み合わせて、BD-ROM100の拡張を図る能力をもつ。BD-ROM100の記録内容に、ローカルストレージ200の記録内容を組み合わせて、BD-ROM100に記録されていないデータを、恰も、記録されているように扱う技術を“バーチャルファイルシステム”という。
【0013】
テレビ400、AVアンプ500、スピーカ600は、再生装置300の再生出力の受け手側になる機器である。このように再生出力の受け手側になる機器を“レシーバ−”という。 以上が、本発明に係る再生装置の使用行為の形態である。
続いて、BD-ROM100の内部構成を説明する。図2は、BD-ROMにおけるファイル・ディレクトリ構成を示す図である。本図においてBD-ROMには、Rootディレクトリの下に、BDMVディレクトリがある。
【0014】
<BD-ROMの概要>
図2は、BD-ROMの内部構成を示す図である。本図の第4段目にBD-ROMを示し、第3段目にBD-ROM上のトラックを示す。本図のトラックは、BD-ROMの内周から外周にかけて螺旋状に形成されているトラックを、横方向に引き伸ばして描画している。このトラックは、リードイン領域と、ボリューム領域と、リードアウト領域とからなる。本図のボリューム領域は、物理層、ファイルシステム層、応用層というレイヤモデルをもつ。ディレクトリ構造を用いてBD-ROMの応用層フォーマット(アプリケーションフォーマット)を表現すると、図中の第1段目のようになる。この第1段目においてBD-ROMには、Rootディレクトリの下に、BDMVディレクトリがある。
【0015】
このBDMVディレクトリの配下には、PLAYLISTディレクトリ、CLIPINFディレクトリ、STREAMディレクトリと呼ばれる3つのサブディレクトリが存在する。
PLAYLISTディレクトリには、拡張子mplsが付与されたファイル(00001.mpls)がある。
CLIPINFディレクトリには、拡張子clpiが付与されたファイル(00001.clpi)がある。
STREAMディレクトリには、拡張子m2tsが付与されたファイル(00001.m2ts)がある。
【0016】
以上のディレクトリ構造により、互いに異なる種別の複数ファイルが、BD-ROM上に配置されていることがわかる。
<BD-ROMの構成その1.AVClip>
先ず初めに、拡張子.m2tsが付与されたファイルについて説明する。図3は、拡張子.m2tsが付与されたファイルがどのように構成されているかを模式的に示す図である。拡張子.m2tsが付与されたファイル(00001.m2ts)は、AVClipを格納している。AVClipはMPEG2-TransportStream形式のデジタルストリームである。このデジタルストリームは、デジタル化された映像、デジタル化された音声を(上1段目)、PESパケットからなるエレメンタリストリームに変換し(上2段目)、更にTSパケットに変換して(上3段目)、同じく字幕系のプレゼンテーショングラフィクスストリーム(PresentatiionGraphics(PG)ストリーム)及び対話系のインタラクティブグラフィクスストリーム(Interactive Graphics(IG)ストリーム)を(下1、下2段目)、更にTSパケットに変換して(下3段目)、これらを多重化することで構成される。
【0017】
PGストリームとは、動画の再生進行に伴った字幕表示を実現するエレメンタリストリームであり、IGストリームは、動画の再生進行に伴ったGUIを実現するエレメンタリストリームである。
ここでAVClipを構成するPESパケットは、1つ以上の“STC_Seuence”を構成する。“STC_Seuence”とは、PESパケットの配列であって、そのPTS、DTSが参照しているSystemTime Clock(STC)の値に、STC不連続点(system time-base discontinuity)が存在しないものをいう。STC不連続点がないことがSTC_Seuenceの要件であるので、1つのSTC_Seuenceを構成するPESパケット列のうち、STC不連続点の直後に位置するPESパケットであって、PCR(ProgramClock Reference)を包含したものから、次のSTC不連続点の直前までが1つのSTC_Seuenceになる。
【0018】
続いて、以上のように構成されたAVClipが、BD-ROMにどのように書き込まれるかを説明する。図4は、AVClipを構成するTSパケットがどのような過程を経てBD-ROMに書き込まれるかを示す。本図の第1段目にAVClipを構成するTSパケットを示す。
AVClipを構成する188バイトのTSパケットは、第2段目に示すように4バイトのTS_extra_header(図中のハッチング部)、が付されて、192バイト長のSourceパケットになる。このTS_extra_headerは、Arrival_Time_Stampを含む。
【0019】
AVClipを構成するSourceパケットは、第3段目におけるAVClipにおいて、1つ以上の“ATC_Seuence”を構成する。“ATC_Seuence”とは、Sourceパケットの配列であって、そのArrival_Time_Stampが参照しているArrival_Time_Clockに、不連続点(noarrival time-base discontinutiy)が存在しないものをいう。いいかえれば、そのArrival_Time_Stampが参照しているArrival_Time_Clockに、連続性が存在するSourceパケット列を“ATC_Seuence”という。
【0020】
かかるATC_SeuenceがAVClipになり、xxxxx.m2tsというファイル名でBD-ROMに記録される。
かかるAVClipは、通常のコンピュータファイル同様、複数のファイルエクステントに分割され、BD-ROM上の領域に記録される。第4段目はAVClipがどのようにBD-ROMに記録されるかを模式的に示す。この第4段目においてファイルを構成する各ファイルエクステントは、予め定められたSexetent以上のデータ長を有する。
【0021】
AVClipを複数のエクステントに分割して記録する場合の、エクステント一個当たりの最小データ長Sexetenを検討する。
ここでBD-ROMにおいて光ピックアップのジャンプに要する時間は、
Tjump=Taccess+Toverhead
で与えられる。
【0022】

Taccessは、ジャンプ距離に応じて与えられる時間(m秒)であり、

ジャンプ距離(論理ブロック数)が0〜5000であるなら179m秒、
ジャンプ距離(論理ブロック数)が5001〜10,000であるなら210m秒、
ジャンプ距離(論理ブロック数)が10,001〜20,000であるなら270m秒、
ジャンプ距離がハーフストロークであるなら990m秒、
ジャンプ距離がフルストロークであるなら1220m秒になる。
【0023】

BD-ROMから読み出されたTSパケットは、リードバッファと呼ばれるバッファに格納された上、デコーダに出力されるが、リードバッファへの入力が、Rudというビットレートで行われ、ECCブロックにおけるセクタ数をSeccとした場合、
Toverheadは、

Toverhead≦(2×Secc×8)/Rud=20m秒
という計算で与えられる。
【0024】

BD-ROMから読み出されたTSパケットは、Sourceパケットの状態でリードバッファに格納された上、TS_Recording_rateという転送レートで、デコーダに供給される。
TS_Recording_rateという転送レートでの、デコーダへのTSパケット供給が跡絶えさせないなめには、Tjumpの間、リードバッファからデコーダへのTSパケット出力が継続している必要がある。ここでリードバッファからの出力は、TSパケットではなく、Sourceパケットの状態でなされるので、TSパケットのSourceパケットとのサイズ比を192/188とした場合、Tjumpの間、(192/188×TS_Recording_rate)という転送レートにより、リードバッファからのSourceパケット出力が継続している必要がある。
【0025】

従って、リードバッファが、アンダーフローしないためのバッファ蓄積量は、
Boccupied≧(Tjump/1000×8)×((192/188)×TS_Recording_rate)
となる。

リードバッファへの入力レートはRud、リードバッファからの出力レートはTS_Recording_rate×(192/188)であるので、リードバッファへの蓄積レートは、入力レート−出力レートの計算で与えられ、(Rud−TS_Recording_rate×(192/188))になる。
【0026】
このBoccupiedを、リードバッファに蓄積するのに要する時間Txは、

Tx=Boccupied/(Rud−TS_Recording_rate×(192/188))
になる。

BD-ROMからの読み出しには、この時間TxにおいてRudでのTSパケット入力を継続する必要があるので、AVClipを複数のエクステントに分割して記録する場合の、エクステント一個当たりの最小データ長Sexetentは、

Sexetent=Rud×Tx
=Rud×Boccupied/(Rud−TS_Recording_rate×(192/188))
≧Rud×(Tjump/1000×8)×((192/188)×TS_Recording_rate)
/(Rud−TS_Recording_rate×(192/188))

≧(Rud×Tjump/1000×8)×
×TS_Recording_rate×192/(Rud×188−TS_Recording_rate×192)
になる。
【0027】
よって
Sexetent≧
(Tjump×Rud/1000×8)×
(TS_Recording_rate×192/(Rud×188−TS_Recording_rate×192))

になる。
【0028】

AVClipを構成する各ファイルエクステントは、こうして算出されたSextent以上のデータ長をもつことにより、AVClipを構成する各ファイルエクステントが、BD-ROM上において離散的に位置されたとしても、再生時においてデコーダへのTSパケット供給が途絶えさせることなく、連続的に読み出されることになる。
【0029】
図5は、BD-ROMの物理単位と、1つのファイルエクステントを構成するSourceパケットとの対応関係を示す図である。第2段目に示すように、BD-ROM上には複数セクタが形成されている。ファイルエクステントを構成するSourceパケットは、第1段目に示すように、32個毎にグループ化されて、連続する3つのセクタに書き込まれる。32個のSourceパケットからなるグループは、6144バイト(=32×192)であり、これは3個のセクタサイズ6144バイト(=2048×3)と一致する。3個のセクタに収められた32個のSourceパケットを“AlignedUnit”といい、BD-ROMへの書き込みにあたっては、Aligned Unit単位で暗号化がなされる。
【0030】
第3段目においてセクタは、32個単位で誤り訂正符号が付され、ECCブロックを構成する。再生装置はAligned Unitの単位でBD-ROMをアクセスする限り、32個の完結したSourceパケットを得ることができる。以上がBD-ROMに対するAVClipの書き込みのプロセスである。

<オーディオストリームの種類>
次に、AVClipに多重化されているオーディオストリーム(Primaryオーディオストリーム)について説明する。
【0031】
Primaryオーディオストリームとは、いわゆる主音声となるオーディオストリームである。これに対し、いわゆる副音声となるオーディオストリームを『Secondaryオーディオストリームという。Primaryオーディオストリームとなる主音声が、映画作品本編の台詞やBGMであり、Secondaryオーディオストリームとなる副音声が、映画監督のコメンタリ音声である場合、かかる映画作品本編の台詞やBGMは、コメンタリ音声とがミキシングされた上で出力されることになる。
【0032】
Secondaryオーディオストリームは、ローカルストレージ200にのみ記録され再生に供されるが、BD-ROMには記録されない。Primaryオーディオストリームは、BD-ROMに置かれていても、ローカルストレージ200に置かれていてもよい。またPrimaryオーディオストリームの符号化方式は、Secondaryオーディオストリームの符号化方式と異なっていてもよい。
【0033】

BD-ROM規格では、DTS-HD、DD/DD+やDD/MLPといった拡張フォーマットを有するオーディオストリームを扱っており、AVClipには、かかるオーディオストリームがPrimaryオーディオストリームとして多重化されている。
以降、これらのオーディオストリームのフォーマットについて説明する。近年、より高い圧縮率で、高音質な符号化方式が続々と登場している。このような新しい符号化方式に対応した新しいデータフォーマットのオーディオストリームを規定される場合、全く新しいデータフォーマットを作り直す場合と、従来のデータフォーマットを拡張する場合がある。
【0034】
全く新しいデータフォーマットの場合、そのオーディオストリームが規定されてから以降に発売される再生装置300にデコーダが搭載されていれば、そのオーディオストリームは再生可能であるが、それ以前に発売された再生装置300にはデコーダが載っておらず、そのオーディオストリームを再生することはできない。そこで考えられたのが、拡張フォーマットである。
【0035】
図6は、オーディオストリームの拡張フォーマットを示す図である。拡張フォーマットを有するオーディオストリームでは、オーディオフレームが図6に示すように、従来のデータフォーマットに従った部分(基本データ)と拡張した部分(拡張データ)に分けられており、古い再生装置に搭載された従来のデコーダでは従来部分のデータのみ再生可能であり、新しい再生装置に搭載された拡張部分も再生可能なデコーダでは、従来部分に加えて拡張部分も再生できる。これにより、下位互換性を保ったまま拡張部分を付け加えられるという効果が得られる。
【0036】
拡張データが基本データに対する差分である場合、基本データのみデコードして再生すると48kHz/2chのオーディオストリームだが、拡張データを基本データと合わせてデコードすると、192kHz/5.1chのオーディオストリームを再生させることができる。
以降、DTS-HD、DD/DD+やDD/MLPといったオーディオストリームのオーディオフレームの構造についての説明する。図7の第1段目は、基本データと、拡張データとからなるオーディオフレームを示し、第2段目〜第4段目は、DTS-HD、DD/DD+やDD/MLPにおけるオーディオフレームを示す。
【0037】
まずDTS-HDオーディオストリームについて説明する。DTS-HDオーディオストリームは、DTSオーディオストリームの拡張規格である。図7の第2段目に示すように、DTS-HDオーディオストリームのオーディオフレームは、CoreSubstreamとExtension Substreamに分類される。Core SubstreamはDTSオーディオストリームと同等であり、1.5Mbpsの帯域でも伝送させることができる。従ってS/PIDFでもこのCoreSubstreamを伝送させることができる。それに対して、Extension Substreamは、DTS-HDにおける拡張部分であり、DTS-HDに対応したデコーダでないと再生ができない。
【0038】
DTS-HDのCore Substreamは、48kHz/2chのオーディオデータを格納している。
Extension Substreamは、DTS-ES,DTS-96/24,DTS-HDを有している。DTS-ESは、5.1chに1チャネルを足した6.1Ch,48KHzであり、DTS-96/24は、5.1Ch,96KHzである。DTS-HDは、192kHz/6chロスレスのオーディオデータを格納することができる。
DTS-HDの場合は、拡張データは基本データとの差分であり、拡張データも含めたオーディオストリームのチャンネル数が、基本データのチャンネル数より減ることはない。
【0039】
続いてDD/DD+オーディオストリームについて説明する。DD/DD+オーディオストリームとは、BD-ROMのために新たに定義されているオーディオストリームである。図7の第3段目に示すように、DD/DD+オーディオストリームのオーディオフレームは、基本データとなるIndependentSubstream(DD(AC-3))、拡張データとなるDependent Substream(DD+)から構成される。DD/DD+の場合は、拡張データは基本データとの差分である場合と、拡張データが独立しており基本データを置き換える場合とがある。後者の場合、DependentSubStreamは、Independent SubStreamにおける5.1ch(L/R/C/LS/RS/LFE)の音声成分のうち、LS/RSの代わりになる4ch(LS/RS/LR/RR)の音声成分を構成する。IndependentDependent SubStreamは、Independent SubStreamにおける5.1ch(L/R/C/LS/RS/LFE)の音声成分のうち、LS/RSの代わりになる4ch(LS/RS/LR/RR)の音声成分を構成する。IndependentSubStreamにおけるLS/RSの音声成分を、DependentSubStreamにおけるLS/RS/LR/RRの音声成分に置き換えることで、再生装置300は7.1ch(L/R/C/LS/RS/LR/RR/LFE)の音声再生を実現することができる。また、DependentSubStreamには、6chの音声成分を構成するものがあり、この6chの音声成分を上述した7.1chに追加することで、再生装置は、13.1chの音声再生を実現することもできる。
【0040】
続いてDD/MLPについて説明する。DD/MLPとは、BD-ROMのために新たに定義されているオーディオストリームである。
DD/MLPでは、DDと、MLPとは、1つのPrimaryオーディオストリームに多重化されているものの、このPrimaryオーディオストリームの再生時間軸において、DDのオーディオフレームが出現する頻度と、MLPのオーディオフレームが出現する頻度とは大きく異なり、DD(AC-3)、DTSーHDのように、基本データのオーディオフレームと、拡張データのオーディオフレームとが一体構成されている訳ではない。但し、以降の説明の便宜を図るため、図7の第3段目に示すようにPrimaryオーディオストリームに多重化されている2本のストリーム(DD形式のストリーム1、MLP形式のストリーム2)において、DD形式のストリーム1のオーディオフレームを基本データとして扱い、MLP形式のストリーム2のオーディオフレームを拡張データとして扱うものとする。
【0041】
DD/DD+とDD/MLPに関しては、基本データとしてDD(AC-3)を用いており、DD/DD+及びDD/MLPのうち、どちらかの方式のオーディオストリームのDD部分を基本データとしてデコードすることができれば、他方の方式のオーディオストリームのDD部分をデコードすることができることは明らかである。
データフォーマット拡張の仕組みを使うことにより、新しいデータフォーマットに対応したデコーダでは、より高音質・多チャンネルで楽しめるが、従来のデコーダを搭載した再生装置300では、従来のオーディオフォーマットで再生できる範囲のみを再生するといったことが可能となる。これは、全く新しいフォーマットを作って従来の再生装置300では再生できない場合に比べて、下位互換性を保つことができるため、オーディオストリームを作る側としては従来の再生環境である再生装置300も利用でき、有効である。
【0042】
以上でPrimaryオーディオストリームについての説明を終える。
<BD-ROMの構成その2.Clip情報>
続いて拡張子.clpiが付与されたファイルについて説明する。拡張子.clpiが付与されたファイル(00001.clpi,00002.clpi,00003.clpi・・・・・)は、Clip情報を格納している。Clip情報は、個々のAVClipについての管理情報である。図8は、Clip情報の内部構成を示す図である。本図の左側に示すようにClip情報は、

i)AVClipについての情報を格納した『ClipInfo()』、
ii)ATC Sequence,STC Sequenceに関する情報を格納した『Sequence Info()』
iii)Program Sequenceに関する情報を格納した『Program Info()』
iv)『Characteristic Point Info(CPI())』からなる。
【0043】
Sequence Infoは、AVClipに含まれる、1つ以上のSTC-Sequence、ATC-Sequenceについての情報である。これらの情報を設けておくことの意義は、STC、ATCの不連続点を、予め再生装置に通知するためである。つまりかかる不連続点が存在すると、AVClip内において同じ値のPTS,ATSが出現する可能性があり、再生時に不都合が生じる。STC,ATCが連続しているのは、トランスポートストリームのうち、どこからどこまでであるかを示すため、SequenceInfoは設けられている。
【0044】
Program Infoとは、Program内容が一定である区間(Program Sequence)を示す情報である。Programとは、同期再生のための時間軸を共有し合うエレメンタリーストリーム同士の集まりである。ProgramSequence情報を設けておくことの意義は、Program内容の変化点を、予め再生装置に通知するためである。ここでのProgram内容の変化点とは、ビデオストリームのPIDが変化したり、ビデオストリームの種類がSDTVからHDTVに変化している点等をいう。
【0045】

続いてCharacteristic Point Infoについて説明する。図中の引き出し線cu2は、CPIの構成をクローズアップしている。引き出し線cu2に示すように、CPIは、Ne個のEP_map_for_one_stream_PID(EP_map_for_one_stream_PID(0)〜EP_map_for_one_stream_PID(Ne-1))からなる。これらEP_map_for_one_stream_PIDは、AVClipに属する個々のエレメンタリストリームについてのEP_mapである。EP_mapは、1つのエレメンタリストリーム上において、アップデートが存在するエントリー位置のパケット番号(SPN_EP_start)を、エントリー時刻(PTS_EP_start)と対応づけて示す情報である。図中の引き出し線cu3は、EP_map_for_one_stream_PIDの内部構成をクローズアップしている。
【0046】
これによると、EP_map_for_one_stream_PIDは、Nc個のEP_High(EP_High(0)〜EP_High(Nc-1))と、Nf個のEP_Low(EP_Low(0)〜EP_Low(Nf-1))とからなることがわかる。ここでEP_Highは、AccessUnit(Non-IDR Iピクチャ、IDRピクチャ)のSPN_EP_start及びPTS_EP_startの上位ビットを表す役割をもち、EP_Lowは、AccessUnit(Non-IDR Iピクチャ、IDRピクチャ)のSPN_EP_start及びPTS_EP_startの下位ビットを示す役割をもつ。
【0047】
図中の引き出し線cu4は、EP_Highの内部構成をクローズアップしている。この引き出し線に示すように、EP_High(i)は、EP_Lowに対する参照値である『ref_to_EP_Low_id[i]』と、AccessUnit(Non-IDR Iピクチャ、IDRピクチャ)のPTSの上位ビットを示す『PTS_EP_High[i]』と、Access Unit(Non-IDR Iピクチャ、IDRピクチャ)のSPNの上位ビットを示す『SPN_EP_High[i]』とからなる。ここでiとは、任意のEP_Highを識別するための識別子である。
【0048】
図中の引き出し線cu5は、EP_Lowの構成をクローズアップしている。引き出し線cu5に示すように、EP_Lowは、対応するAccess UnitがIDRピクチャか否かを示す『is_angle_change_point(EP_Low_id)』と、対応するAccessUnitのサイズを示す『I_end_position_offset(EP_Low_id)』と、対応するAccess Unit(Non-IDR Iピクチャ、IDRピクチャ)のPTSの下位ビットを示す『PTS_EP_Low(EP_Low_id)』と、対応するAccessUnit(Non-IDR Iピクチャ、IDRピクチャ)のSPNの下位ビットを示す『SPN_EP_Low(EP_Low_id)』とからなる。ここでEP_Low_idとは、任意のEP_Lowを識別するための識別子である。
【0049】

<Clip情報の説明その2.EP_map>
以下、具体例を通じて、EP_mapについて説明する。図9は、映画のビデオストリームに対するEP_map設定を示す図である。第1段目は、表示順序に配置された複数のピクチャ(MPEG4-AVCに規定されたIDRピクチャ、Iピクチャ、Bピクチャ、Pピクチャ)を示し、第2段目は、そのピクチャにおける時間軸を示す。第4段目は、BD-ROM上のTSパケット列を示し、第3段目は、EP_mapの設定を示す。
【0050】
第2段目の時間軸において、時点t1〜t7に、Access UnitとなるIDRピクチャ及びIピクチャが存在するものとする。そしてこれらのt1〜t7の時間間隔が、1秒程度であるとすると、映画に用いられるビデオストリームにおけるEP_mapは、t1〜t7をエントリー時刻(PTS_EP_start)として示し、これに対応づけてエントリー位置(SPN_EP_start)を示すよう、設定される。
【0051】

<PlayList情報>
続いて、PlayList情報について説明する。拡張子“mpls”が付与されたファイル(00001.mpls)は、PlayList(PL)情報を格納したファイルである。
図10は、PlayList情報のデータ構造を示す図であり、本図において、引き出し線mp1に示すようにPlayList情報は、MainPathを定義するMainPath情報(MainPath())と、チャプターを定義するPlayListMark情報(PlayListMark())とからなる。
【0052】
<PlayList情報の説明その1.MainPath情報>
先ずMainPathについて説明する。MainPathは、主映像たるビデオストリームやオーディオストリームに対して定義される再生経路である。
MainPathは、矢印mp1で示すように複数のPlayItem情報#1・・・・#mから定義される。PlayItem情報は、MainPathを構成する1つ以上の論理的な再生区間を定義する。PlayItem情報の構成は、引き出し線hs1によりクローズアップされている。この引き出し線に示すようにPlayItem情報は、再生区間のIN点及びOut点が属するAVClipの再生区間情報のファイル名を示す『Clip_Information_file_name』と、AVClipの符号化方式を示す『Clip_codec_identifier』と、PlayItemがマルチアングルを構成するか否かを示す『is_multi_angle』と、このPlayItemと、その1つ前のPlayItemとの接続を、シームレスに行うか否かを示す『connection_condition』と、このPlayItemが対象としているSTC_Sequenceを一意に示す『ref_to_STC_id[0]』と、再生区間の始点を示す時間情報『In_time』と、再生区間の終点を示す時間情報『Out_time』と、このPlayItemにおいてマスクすべきユーザオペレーションがどれであるかを示す『UO_mask_table』と、このPlayItemの途中へのランダムアクセスを寄許可するか否かを示す『PlayItem_random_access_flag』と、このPlayItemの再生終了後、最後のピクチャの静止表示を継続するか否かを示す『Still_mode』と、『STN_table』とから構成される。このうち、再生経路を構成するのは、再生区間の始点を示す時間情報『In_time』、再生区間の終点を示す時間情報『Out_time』の組みであり、再生経路情報とは、この『In_time』及び『Out_time』の組みから構成される。
【0053】
図11は、AVClipと、PlayList情報との関係を示す図である。第1段目は、PlayList情報がもつ時間軸を示す。第2段目から第5段目は、EP_mapにて参照されているビデオストリームを示す。
PlayList情報は、PlayItem情報#1,#2という2つのPlayItem情報を含んでおり、これらPlayItem情報#1,#2のIn_time,Out_timeにより、2つの再生区間が定義されることになる。これらの再生区間を配列させると、AVClip時間軸とは異なる時間軸が定義されることになる。これが第1段目に示すPlayItem時間軸である。このように、PlayItem情報の定義により、AVClipとは異なる時間軸の定義が可能になる。
【0054】

<STN_table>
このプレイリスト情報において特徴的であるのは、STN_Tableである。
STN_tableは、Play ItemのClip_Information_file_nameで指定されているAVClipに多重化された複数エレメンタリストリームのうち、再生可能なものを示すテーブルである。具体的にいうとSTN_tableは、複数エレメンタリストリームのそれぞれについてのentryを、attributeと対応付けることで構成される。
【0055】
図12は、STN_tableの内部構成を示す図である。本図に示すようにSTN_tableは、STN_tableにおけるStream_entryと、Stream_attributeとの組み(entry-attribute)を複数含み、これらentry−attributeの組みの個数(number_of_video_stream_entries,number_of_audio_stream_entries,number_of_PG_stream_entries,number_of_IG_stream_entries)を示すデータ構造になっている。
【0056】
entry-attributeの組みは、図中の括弧記号”{”に示すように、Play Itemにおいて再生可能なビデオストリーム、Primaryオーディオストリーム、PGストリーム、IGストリームのそれぞれに対応している。
entry−attributeの詳細について説明する。
図13(a)は、ビデオストリームに対応したStream_attributeを示す図である。
【0057】
ビデオストリームにおけるStream_attributeは、ビデオストリームの表示方式を示す『Video_format』と、ビデオストリームの表示レートを示す『frame_rate』等を含む。
図13(b)は、Primaryオーディオストリームに対応したStream_attributeを示す図である。
PrimaryオーディオストリームにおけるStream_attributeは、オーディオストリームの符号化方式を示す『stream_coding_type』と、対応するオーディオストリームのチャネル構成を示し、マルチチャネル出力の可否を示す『audio_presentation_type』と、対応するオーディオストリームのサンプリング周波数を示す対応する『Sampling_frequency』と、オーディオストリームの言語属性を示す『audio_languagecode』からなる。
【0058】
図13(c)は、Stream_entryを示す図である。本図に示すようにStream_entryは、多重分離に用いられるPIDを示す『ref_to_stream_PID_of_mainClip』を含む。

以上が記録媒体についての説明である。続いて本発明に係る再生装置について説明する。
【0059】
図14は、本発明に係る再生装置の内部構成を示す図である。本発明に係る再生装置は、本図に示す内部に基づき、工業的に生産される。本発明に係る再生装置は、主としてシステムLSIと、ドライブ装置というパーツからなり、これらのパーツを装置のキャビネット及び基板に実装することで工業的に生産することができる。システムLSIは、再生装置の機能を果たす様々な処理部を集積した集積回路である。こうして生産される再生装置は、BD-ROMドライブ1、リードバッファ2、デマルチプレクサ3、ビデオデコーダ4、ビデオプレーン5、バッファ6、オーディオデコーダ7、スィッチ10、InteractiveGraphicsデコーダ11、Interactive Graphicsプレーン12、Presentation Graphicsデコーダ13、PresentationGraphicsプレーン14、合成部17、STC生成部18、ATC生成部19、ローカルストレージ200、メモリ21、コントローラ22、PSRセット23、変換部24、通信部25、操作受付部26、HDMI送受信部27、S/PDIF28から構成される。
【0060】
BD-ROMドライブ1は、BD-ROMのローディング/イジェクトを行い、BD-ROMに対するアクセスを実行する。
リードバッファ2は、FIFOメモリであり、BD-ROMから読み出されたTSパケットが先入れ先出し式に格納される。
デマルチプレクサ3は、リードバッファ2に読み出されたTSパケットのうち、0x1011,0x1100〜0x111F,0x1200〜0x121F,0x1400〜141FのPIDをもつものを、リードバッファ2に取り込み、これらのPIDをもつTSパケットのうち、変換部24から通知されたPID参照値をもつものを、ビデオデコーダ4、InteractiveGraphicsデコーダ11、Presentation Graphicsデコーダ13に出力する。
【0061】
ビデオデコーダ4は、デマルチプレクサ3から出力された複数PESパケットを復号して非圧縮形式のピクチャを得てビデオプレーン5に書き込む。
ビデオプレーン5は、非圧縮形式のピクチャを格納しておくためのプレーンである。プレーンとは、再生装置において一画面分の画素データを格納しておくためのメモリ領域である。ビデオプレーン5における解像度は1920×1080であり、このビデオプレーン5に格納されたピクチャデータは、16ビットのYUV値で表現された画素データにより構成される。
【0062】
バッファ6は、デマルチプレクサ3から出力されたTSパケットを、先入れ先だし式に格納して、オーディオデコーダ7に供する。
オーディオデコーダ7は、バッファ6に格納されたTSパケットをPESパケットに変換して、このPESパケットに対しデコード処理を行い、非圧縮状態のLPCM状態のオーディオデータを得て出力する。これによりPrimaryオーディオストリームにおけるデジタル出力がなされる。
【0063】
スイッチ10は、デマルチプレクサ3により多重分離がなされた、Primaryオーディオストリームを構成するTSパケットを、オーディオデコーダ7に供給するか、オーディオデコーダ7に供給せずそのまま他の機器に出力するか切り換えるスイッチである。Primaryオーディオストリームを構成するTSパケットを、オーディオデコーダ7に供給せずそのまま他の機器に出力することを“パススルー出力”という。また、このパススルー出力にて、転送される圧縮符号化された状態のままのPrimaryオーディオストリームを、“ビットストリーム”という。
【0064】
Interactive (IG)デコーダ11は、BD-ROM又はローカルストレージ200から読み出されたIGストリームをデコードして、非圧縮グラフィクスをIGプレーン12に書き込む。
Interactive Graphics(IG)プレーン12は、IGデコーダ11によるデコードで得られた非圧縮グラフィクスが書き込まれる。
Presentation(PG)デコーダ13は、BD-ROM又はローカルストレージ200から読み出されたPGストリームをデコードして、非圧縮グラフィクスをPresentationGraphicsプレーン14に書き込む。Presentationデコーダ13によるデコードにより、字幕が画面上に現れることになる。
【0065】
Presentation Graphics(PG)プレーン14は、一画面分の領域をもったメモリであり、一画面分の非圧縮グラフィクスを格納することができる。
合成部17は、Interactive Graphicsプレーン12の格納内容と、Presentation Graphicsプレーン14の格納内容と、ビデオプレーン5の格納内容とを合成した合成画像を得る。
【0066】
STC生成部18は、System Time Clock(STC)を生成する。そしてSTC_Seuenceの切り換わり時において、それまでのSTC_SeuenceにおけるSTC値(STC1)に、STC_deltaと呼ばれるオフセット値を加算することにより、新しいSTC_SeuenceのSTC値(STC2)を求めて、それまでのSTC_SeuenceにおけるSTC値(STC1)と、新しいSTC_SeuenceのSTC値(STC2)とを連続した値にする。
【0067】
先行STC_Seuenceにおいて最後に再生されるピクチャの表示開始時刻をPTS1(1stEND)、ピクチャの表示期間をTppとし、後続STC_Seuenceにおいて最初に表示されるピクチャの開始時刻をPTS2(2ndSTART)とした場合、STC_deltaは

STC_delta=PTS1(1stEND)+Tpp−PTS2(2ndSTART)

として表現される。以上のようにSTC_deltaを求め、これが足し合わされたクロックの計数値を各デコーダに出力する。これにより各デコーダは、2つのSTC_Seuenceにあたるストリームを途切れなく再生してゆくことができる。以上により、1つのAVClipの中に、2以上のSTC_Seuenceが存在したとしても、また、連続して再生されるべき2以上のAVClipのそれぞれが、異なるSTC_Seuenceをもっていたとしても、これらのSTC_Seuence間のデコード処理を、シームレスに実行することができる。
【0068】

ATC生成部19は、Arrival Time Clock(ATC)を生成する。そしてATC_Seuenceの切り換わり時において、それまでのATC_SeuenceにおけるATC値(ATC1)に、ATC_deltaと呼ばれるオフセット値を加算することにより、それまでのATC_SeuenceにおけるATC値(ATC1)と、新しいATC_SeuenceのATC値(ATC2)とを連続した値にする。この加算により、ATC2=ATC1+ATC_deltaになる。ATC_deltaとは、これまで読み出されているトランスポートストリーム(TS1)の最後のTSパケットの入力時点T1から、新たに読み出されたトランスポートストリーム(TS2)の最初のTSパケットの入力時点T2までのオフセット値をいい、“ATC_delta≧N1/TS_recording_rate”という計算式で与えられる。ここで入力時点T2は、TS2の最初のTSパケットの入力時点を、TS1の時間軸上に投影した時点を意味する。またN1は、TS1の最後のビデオPESパケットに後続する、TSパケットのパケット数である。BD-ROMにおいてかかるATC_deltaは、Clip情報に記述されるので、これを用いることにより、ATC_deltaを計算することができる。以上の計算により、これまでのATC_SeuenceがもっているATC値(ATC1)と、新たなATC_SeuenceがもっているATC値(ATC2)とを、連続した値にすることができる。ATC_deltaが足し合わされたクロックの計数値をデマルチプレクサ3に出力することで、シームレスなバッファ制御を実現することができる。
【0069】

バッファリングの連続性をみたすには、他に以下の1),2)を満たす必要がある。

1) STC2(2ndSTART)>STC2(1stEND)をみたすこと、
ここでSTC2(1stEND)は、STC1(1stEND)を、STC2の時間軸に投影した値であり、STC2(1stEND)=STC1(1stEND)-STC_deltaという計算式で与えられる。
【0070】

2) TS1からのTSパケットの取り出しと、TS2からのTSパケットの取り出しとが、同じ時間軸に投影されたSTC1と、STC2とにより定義され、バッファのアンダーフローや、オーバーフローをもたらさないこと。
メモリ21は、カレントのPL情報やカレントのClip情報を格納しておくためのメモリである。カレントPL情報とは、BD-ROMに記録されている複数プレイリスト情報のうち、現在処理対象になっているものをいう。カレントClip情報とは、BD-ROMに記録されている複数Clip情報のうち、現在処理対象になっているものをいう。
【0071】
コントローラ22は、プレイリスト再生(カレントPL情報に従った再生制御のことである)を実行することで、BD-ROMの再生制御を実現する。
PSRセット23は、再生装置に内蔵されるレジスタであり、64個のPlayer Setting/Status Register(PSR)と、4096個のGeneralPurpose Register(GPR)とからなる。Player Setting/Status Registerの設定値(PSR)のうち、PSR4〜PSR8は、現在の再生時点を表現するのに用いられる。
【0072】
変換部24は、PSRセット23に格納されているPrimaryオーディオストリーム、Secondaryオーディオストリームのストリーム番号を、STN_Tableに基づき、PIDの参照値に変換して、PIDの参照値をデマルチプレクサ3に出力する。
通信部25は、再生装置300における通信機能を実現するものであり、webサイトとのTCPコネクション、FTPコネクション等を確立する。かかるコネクション確立によりwebサイトからのダウンロードをJava(登録商標)アプリケーションに行わせる。
【0073】
操作受付部26は、リモコンに対してなされた操作をユーザから受け付け、そうした操作を示すUser Operation情報をコントローラ22に通知する。
HDMI送受信部27は、HDMIを介して接続された他の機器から、その機器に関する情報を受信とすると共に、ビデオデコーダ4のデコードにより得られたデジタル非圧縮のビデオを、LPCMのオーディオデータと共に、HDMIを介して接続された他の機器に送信する。
【0074】
以上が、本実施形態に係る再生装置のハードウェア構成である。続いて本実施形態に係る再生装置のソフトウェア構成について説明する。
図14に示したコントローラ22を、機能的に表現すると、図15のようになる。図15は、再生装置300を機能的に表現した図であり、本図に示すようにコントローラ22は、プレイリスト処理部41、Procedure実行部42、PSR設定部43から構成される。
【0075】
これらの構成要素の処理は、PSRセット23におけるPSR1に基づく。以降、PSR1について説明する。
<PSR1>
PSR1は、Primaryオーディオストリームのストリーム番号を格納している。このストリーム番号は、カレントPlay ItemのSTN_tableにentryが記述されている複数Primaryオーディオストリームのうち、1つを特定するものである。PSR1の設定値が変化すれば、再生装置はこの変化後のPrimaryオーディオストリームを再生する。PSR1は初期値として0xFFが設定されており、再生装置により1〜32の値に設定されうる。この0xFFは、不定値であり、Primaryオーディオストリームが存在しない旨、又は、Primaryオーディオストリームが選択されてない旨を示す。1〜32の設定値は、Primaryオーディオストリームのストリーム番号として解釈される。
【0076】
以上が、PSRセット23についての説明である。
以降、プレイリスト処理部41〜PSR設定部43についての説明を開始する。
<機能構成の詳細その1.プレイリスト処理部41>
プレイリスト処理部41は、PL再生を実現するものであり、PlayItem情報のIn_timeにあたる位置から、Out_timeにあたる位置までビデオストリーム及びPrimaryオーディオストリームを再生する。
【0077】
<機能構成の詳細その2.Procedure実行部42>
Procedure実行部42は、あるPlayItem情報から別のPlayItem情報への切り換わりが生じた場合、又はストリーム番号を切り換える旨の操作がユーザによりなされた場合、所定のストリーム選択プロシージャを実行して、PSR1に新たなストリーム番号を書き込む。再生装置は、PSR1に書き込まれたストリーム番号に応じて、Primaryオーディオストリームを再生するので、かかるPSR1の設定を通じて、Primaryオーディオストリームが選択されることになる。
【0078】
PlayItem情報の切り換わり時に、ストリーム選択プロシージャを実行するのは、STN_TableはPlayItem情報毎に存在するので、あるPlayItem情報においては再生可能であったPrimaryオーディオストリームが、別のPlayItem情報において再生不可能になることが往々に有り得るからである。
また、ユーザ操作の際、ストリーム選択プロシージャを実行するのは、ユーザ操作にてPSR1に格納されるストリーム番号が、常に正しいとは限らず、不正なストリーム番号が書き込まれようとした際のリカバリーが必要になるからである。
【0079】
このProcedure実行部42により、PSR1は、図16(a)に示すような状態遷移をなす。図16(a)は、PSR1の設定値が取り得る状態遷移を示す図である。本図においてValidとは、PSR1の値が、PlayItemのSTN_tableに記述されたentry数以下の番号になっていて、尚且つ、デコード可能であることを意味する。
Invalidとは、PSR1の値が、0であるか、又は、Play ItemのSTN_tableに記述されたentry数を上回る番号になっていることを意味する。また、PlayItemのSTN_tableに記述されたentry数が1〜32の値であったとしても、デコードできない場合がある。
【0080】
図16(a)における破線枠は、状態遷移時にあたってPSRの値を決定する手順を模式的に示す。PSRの設定処理手順には、『Procedure whenplayback condition is changed』、『Procedure when stream change is requested』がある。
Procedure when playback condition is changedは、何等かの事象が再生装置に生じたため、再生装置の状態が変化した際に実行すべき処理手順を示す。
【0081】
Procedure when Stream change is requestedは、ユーザが何等かの切り換え(図16(a)においてstream)を要求した際、実行すべき処理手順を示す。
これら破線枠に示されるProcedure when playback condition is changed、Procedure when streamchange is requestedが、本発明の主眼となるストリームの選択手順であり、後でフローチャートを交えて詳細に説明する。
【0082】
図16(a)における矢印は、PSRが取り得る状態間の状態遷移を象徴的に示す。
状態遷移を意味する矢印に添えられた注釈は、各状態遷移のトリガとなるべき事象を意味する。つまり本図では、”Load Disc”、”Change aStream”,”Start PlayList playback”,”Cross a PlayItem boundary”,”TerminatePlayList playback”というような事象が発生した際、PSR1の状態遷移がなされることになる。これらの記法を理解して図16(a)を参照すれば、Invalid→Invalidの状態遷移時、Valid→Invalidの状態遷移時には、上述した処理手順は実行されていないことがわかる。これに対しInvalid→Valid間の状態遷移、Valid→Valid間の状態遷移は何れも破線枠を経由している。つまりPSR1をValidに設定するにあたって、上述したProcedurewhen playback condition is changed、Procedure when stream change is requestedによりPSR1は設定されるのである。
【0083】
以降、状態遷移のトリガとなるべき事象について説明する。
『Load Disc』とは、再生装置にBD-ROMがローディングされたとの事象を意味する。PSR1は、かかるローディング時において、一旦不定値(0xFF)に設定されるのである。
『Start PlayList playback』とは、PLに基づく再生処理が開始したとの事象を意味する。かかる事象が発生時において、Procedurewhen playback condition is changedが実行され、PSR1はValidに設定されることがわかる。
【0084】
『Terminate PlayList playback』とは、PLに基づく再生処理を終了したとの事象を意味する。かかる事象の発生時では、Procedurewhen playback condition is changedは実行されず、Invalidに移行していることがわかる。
『ChangeXXX』とは、ユーザによるXXX(本図ではStream)の切り換え要求がなされたとの事象を意味する。PSR1がInvalidである場合に、かかる事象が発生すれば(図中のcj1)、PSR1はその要求通りの値に設定される。こうして設定された値がたとえ有効なストリーム番号を示していたとしても、このPSR1の設定値はInvalidな値として取り扱われる。即ち、事象”ChangeXXX”による状態遷移では、InvalidであるPSRが、Validに変えることはない。
【0085】
一方、PSR1がValidである場合に、かかる事象Change a Streamが発生すれば(図中のcj2)、Procedure when streamchange is requestedが実行されて、新たな値がPSR1に設定される。ここでProcedure when stream change isrequestedの実行により設定される値は、ユーザが希望した値にならない場合も有り得る。何故なら、Procedure when stream changeis requestedは、無効な値を排除する機能を有しているからである。PSR1がValidにおいて、Change a streamが発生した場合、ValidからInvalidに状態遷移することは有り得ない。PSR1がInvalidにならないよう、Procedurewhen stream change is requested側で保証するからである。
【0086】
『Cross a PlayItem boundary』とは、あるPlay Itemの境界通過という事象を意味する。ここでPlay Itemの境界とは、連続する2つのPlayItemのうち、先行する側の終端、後続する側の先端の狭間を意味する。PSR1がValidである場合において、かかる事象が発生すれば、Procedurewhen playback condition is changedが実行されることがわかる。そして、Procedure when playbackcondition is changedの実行後、PSR1の状態はValidに戻るか、Invalidに移行することが分かる。STN_tableはPlayItem毎に存在しており、Play Itemが変われば、再生可能なエレメンタリストリームも変わってしまう。Play Itemの再生開始毎に、Procedurewhen playback condition is changeを実行してPlay Item毎に最適な設定値をPSR1に設定するというのが、この状態遷移の趣旨である。
【0087】
この状態遷移においてProcedure when playback condition is changedは、図16(b)のようになる。図16(b)は、Procedurewhen playback condition is changedの処理手順を示す図である。本処理手順は、ステップS1、ステップS2という2つの判定ステップの組合せで、PSR1の設定を行うものである。
ステップS1は、STN_tableにおけるentry数が0であるか否かの判定であり、もし0であればPSR1の値を維持する(ステップS3)。
【0088】
ステップS2は、STN_tableにおけるentry数は0ではない場合に、PSR1よりSTN_tableのentry数が多く、尚且つ、条件(A)が真であるかを判定するものである。条件(A)とは、PSR1で特定されるPrimaryオーディオストリームを再生する能力が再生装置に存在することである。もしステップS2がYesであればPSR1を維持する(ステップS4)。もしPSR1の値がentry数より大きいか、或は条件(A)を満たさない場合は、PSR1を再設定する(ステップS5)。
【0089】
図17は、ステップS5の詳細な処理手順に示したフローチャートである。
ステップS6、ステップS7は、全てのPrimaryオーディオストリームについてステップS8を繰り返すループ処理を形成している。このループ処理において、処理対象となる個々のPrimaryオーディオストリームを、Primaryオーディオストリームiという。ステップS8は、Primaryオーディオストリームiが3つの条件条件(a)(b)(c)を満たすかのチェックを行う。
【0090】
条件(a)とは、Primaryオーディオストリームiを再生する能力が再生装置に存在することであり、これを満たすか否かの判定は、PSR15と、Primaryオーディオストリームiのstream_coding_typeとの比較でなされる。
条件(b)とは、Primaryオーディオストリームiの言語属性が再生装置の言語設定と同じであることであり、これを満たすか否かの判定は、STN_tableに記述されたPrimaryオーディオストリームiのAudio_language_codeがPSR16の設定値と同じであるか否かの比較でなされる。
【0091】
条件(c)とは、Primaryオーディオストリームiのチャネル属性がサラウンドであり、これを再生する能力が再生装置に存在することである。これを満たすか否かの判定は、PSR15と,AudioStreamのaudio_presentation_type、stream_coding_typeとの比較でなされる。
これらの複数の条件のうち、「Primaryオーディオストリームiがどれとどれを満たすか」、また「何個の条件を満たすか」という、満たすべき条件のパターンにより、本フローチャートは、Primaryオーディオストリームに優先順位を付与する。
【0092】
以上の処理をPrimaryオーディオストリームの全てについて繰り返されれば、ステップS9〜ステップS13の処理を行う。ステップS9は、(a)を満たすPrimaryオーディオストリームが存在しないかどうかの判定である。もし、存在しなければ、不定値(0xFF)をPSR1に設定する(ステップS14)。
ステップS10は、条件(a)(b)(c)の全てを満たすPrimaryオーディオストリームが存在するかどうかの判定である。もし存在すれば、条件(a)(b)(c)を満たすPrimaryオーディオストリームの番号をPSR1に設定する(ステップS15)。
【0093】
ここで問題になるのが、条件(a)(b)(c)を満たすPrimaryオーディオストリームが複数存在する場合である。条件(a)〜条件(c)が全てみたされるので、同じ優先順位になってしまうので優劣を決めることができない。この場合ステップS15では、STN_tableにおけるentryの順序に応じて、各ストリームにおける順位が定める。即ち、コーディック−言語属性−チャネル属性が同じPrimaryオーディオストリームについては、STN_tableにおけるentryの順位を参照することで、最も優先順位が高いPrimaryオーディオストリームが選ばれることになる。
【0094】
STN_tableにおける記述順序を変えることで、オーサリング担当者は再生時においてどのストリームを優先的に再生させ、どのストリームを後回しにするかという選択制御をオーサリング時に規定することができる。
ステップS11は、条件(a)(b)(c)の全てを満たすPrimaryオーディオストリームが存在しない場合、条件(a)(b)を満たすPrimaryオーディオストリームが存在するかどうかの判定である。もし存在すれば、条件(a)(b)を満たすPrimaryオーディオストリームのうち、STN_tableにおけるエントリー順位が最も高いものをPSR1に設定する(ステップS16)。
【0095】
ステップS12は、条件(a)(b)(c)の全てを満たすPrimaryオーディオストリーム、又は、条件(a)(b)を満たすPrimaryオーディオストリームが存在しない場合に、条件(a)(c)を満たすPrimaryオーディオストリームが存在するかどうかの判定である。もし存在すれば、条件(a)(c)を満たすPrimaryオーディオストリームのうち、STN_tableにおけるエントリー順位が最も高いものをPSR1に設定する(ステップS17)。
【0096】
ステップS13は、条件(a)(b)(c)の全て、条件(a)(b)、条件(a)(c)を満たすPrimaryオーディオストリームが存在しない場合に、(a)を満たすPrimaryオーディオストリームが存在するかどうかの判定である。もし存在すれば、(a)を満たすPrimaryオーディオストリームのうち、STN_tableにおけるエントリー順位が最も高いものをPSR1に設定する(ステップS18)。
【0097】
以上がProcedure when playback condition is changedである。続いてProcedure when streamchange is requestedについて説明する。図18は、ストリーム変化時におけるPSR1の設定手順を示すフローチャートである。本フローチャートと、図16(b)との違いは、図16(b)におけるPSR1の表記がXに置き換えられている点である。このXは、操作受付部26から出力されたUserOperation情報に基づく値である。
【0098】
本フローチャートにおけるステップS19は、XよりSTN_tableのentry数が多く、尚且つ、条件(A)が真であるかを判定するものである。条件(A)とは、PSR1で特定されるPrimaryオーディオストリームを再生する能力が再生装置に存在することであり、PSR15と、PrimaryオーディオストリームのStream_codeig_typeの比較で判定される。もしXがこの条件を満たすなら、PSR1にXを設定する(ステップS21)。
【0099】
もしXがentry数より大きいか、或は条件(A)を満たさない場合は、Xが、0xFFであるか否かを判定する。もしOxFFでなければ、ユーザが選択を意図するPrimaryオーディオストリームの番号は無効であると考えられるので、ユーザ操作に基づく値Xを無視し、PSR1の設定値を維持する(ステップS23)。
もしPSR1の設定値が0xFFであるなら、PSR1を設定する(ステップS24)。このステップS24の処理手順は、図17に示した処理手順と同一である(図17のうち、ステップS9の判定はProcedurewhen stream change is requestedでは必要ではない。何故ならProcedure when stream change isrequestedでは、条件条件(a)(b)(c)を満たすPrimaryオーディオストリームが1つも存在しない場合、ユーザが設定した値XをPSR1に設定せず、PSR1の設定値を維持するからである。)。
【0100】
<PSR1設定の具体例>
以降具体例を交えながら、本フローチャートの処理について説明する。
この具体例で想定している再生装置は、図19(a)に示す通りであり、DTS-HD形式のオーディオストリームをデコードする能力は持っていないが、LPCMのデコード能力や、DD/DD+をデコードする能力は具備している。そして日本語音声を示すよう、言語設定がなされているものとする。
【0101】
かかる再生装置に対し、図19(b)に示すオーディオストリーム、STN_tableが記録されたBD-ROMがローディングされたとする。このSTN_tableには、図19(c)に示すように6つのオーディオストリームのentryが記述されている。
かかる記述内容のSTN_tableが処理対象であると、図17のステップS8において各オーディオストリームが、条件(a)、条件(b)、条件(c)を具備しているかどうかのチェックがなされる。ここで1つ目のオーディオストリーム(1)は、3つの条件のうち、条件(a)しか満たさない。2つ目のオーディオストリーム(2)は、3つの条件のうち、条件(a)、条件(c)を満たす。
【0102】
STN_tableにentryが示されている全てのオーディオストリームに対し、上述したチェックがなされれば、5つ目のオーディオストリームが条件(a)〜条件(c)の全てを満たし、4つ目のオーディオストリームは条件(a)、条件(b)を、2つ目のオーディオストリームは条件条件(a)(c)を、1つ目のオーディオストリームは条件(a)のみを満たしていることが判明する。これら以外のオーディオストリームは条件(a)を欠くので処理対象にならない。
【0103】
各オーディオストリームについての条件具備が明らかになったので、条件(a)〜条件(c)の全てを満たす5つ目のオーディオストリームに最高順位を付与する。このように最高順位が付加されたため、オーディオストリーム5が選択されてビデオストリームと共に再生されることになる。
以上の説明により、条件(a)、条件(b)、条件(c)の全てを満たすストリームが選択されることが明らかになった。
【0104】
条件(a)、条件(c)を満たすか否かの判定にあたって、判定資料となるは、PSR15である。以下、このPSR15について説明する。
DTS-HD、DD/DD+は、基本データと、拡張データとからなり、基本データがデコードされる場合と、拡張データがデコードされる場合とがある。STN_tableにおける「audio_presentation_type」に、5.1ch、7.1chといったサラウンドのチャネル数が記述されており、STN_tableにおける「sampling_frenquency」に、96kHz,192kHzといった周波数が記述されていたとしても、それらのチャンネル数、サンプリング周波数で再生がなされるのは、オーディオフレームにおける拡張データをデコードしたときであり、下位互換のための基本データをデコードしただけでは、そのようなチャンネル数、サンプリング周波数での再生はなされないことがある。
【0105】
従って、下位互換を意図した基本データしか、デコードできないような符号化方式のオーディオストリームが、STN_tableに記述されている場合、そのような符号化方式のオーディオストリームを、Procedure実行部42に選択させないようにせねばならない。そこで、本実施形態では、基本データ、拡張データといったオーディオフレーム構造を有する符号化方式について、条件(a)、条件(c)を満たすための判定に厳格を期すべく、PSR15の内容をより詳細に規定している。
【0106】
具体的にいうと、PSR15は、符号化方式毎の処理能力の有無を、次の3つの要素を3つのパラメータ(パラメータ1、パラメータ2、パラメータ3)を用いて表現している。
デコード能力(パラメータ1):
再生装置300でデコードする場合は、搭載されているデコーダのデコード能力
ビットストリームを伝送する場合は、レシーバのデコード能力
伝送路の能力(パラメータ2):
接続されているオーディオ出力の伝送能力
スピーカー構成(パラメータ3):
サラウンドを再生できる可能性
図20は、パラメータ1〜パラメータ3が、どのように定まるかを模式的に示す図である。本図における第1段目は、再生装置300、AVアンプ500、スピーカ600を示し、第3段目は、PSR15における各符号化方式(CODEC=LPCM,DTS-HD,DD/DD+,DD/MLP)毎に定められたパラメータ1、パラメータ2、パラメータ3を示す図である。第1段目ー第3段目間の第2段目は、これら第3段目におけるパラメータ1〜パラメータ3が、再生装置300、AVアンプ500、スピーカ600のうち、何れの特性から定まるかを示す。
【0107】
本図に示すように、パラメータ1は、再生装置300内のデコーダの特性と、AVアンプ500内のデコーダの特性との論理和から定まり、パラメータ2は、再生装置300及びAVアンプ500間の伝送路の特性から定まり、パラメータ3は、スピーカ600の特性から定まる。再生装置300、AVアンプ500からなるシステムでは、再生装置単体の能力だけみていたのでは、条件(a)、条件(c)を具備しているがどうかの判定が充分ではない可能性がある。条件(a)、条件(c)を満たすかの判定に完全を期するため、PSR15に、3つのパラメータを格納している。
【0108】
<デコード能力>
デコード能力を示すパラメータ1は、再生装置のデコード能力を示す場合と、レシーバのデコード能力を示す場合とがある。前者のように、再生装置側のデコード能力が示されるのは、再生装置300でデコードした後にアナログ出力、あるいは、LPCMとしてデジタル出力する場合である。
【0109】
後者のようにレシーバ側のデコード能力を示すのは、再生装置300がパススルー出力を行う場合である。
HDMIについては、現在のところLPCMしか伝送できないが、今後は拡張されてDTS-HDやDD/DD+、DD/MLPがビットストリームのまま伝送できるようになる可能性が高い。DTS-HDやDD/DD+、DD/MLPがビットストリームのまま伝送できるように拡張されたとしても、LPCMでも伝送可能である。再生装置300でデコードしてLPCMとして伝送するか、デコードせずにビットストリームとして伝送するかにより、パラメータ1として設定するデコード能力が、再生装置300のデコード能力とレシーバのデコード能力のどちらに従って設定されるかが切り替わる。HDMIの場合は、接続時に再生装置300とレシーバが通信を行い、レシーバ側のデコード能力を再生装置300側に通知することができるため、接続先により動的に変えることも可能である。
【0110】
S/PDIFの場合は、接続先のデコード能力をユーザーが再生装置300に事前に設定しておけばよい。自動判定はできないが、再生装置300とアンプやスピーカの接続は、再生の度に変わるわけではないので、初期設定として適切に設定すればよい。以上がデコード能力についての設定である。
<伝送能力>
伝送能力がパラメータ2としてPSRに規定されているその理由は、以下の通りである。
【0111】
以降、アナログ出力する場合と、デジタル出力する場合とで場合を分けて考える。
1)アナログ出力の場合
オーディオストリームを再生装置300側でデコードしてアナログ出力する場合は、その再生装置300に搭載されているデコーダが何チャンネルまでデコードできるかというデコード能力(1)と、その再生装置300が何チャンネルまでアナログ出力できるかという内部の回路の問題(2)、あるいは、出力端子の構成により、その再生装置300がステレオ出力までしかできないのか、サラウンド音声を出力できるのか(3)が決まる。
【0112】
2}デジタル出力の場合
ディジタル出力の場合、伝送できるか否かは、ディジタル出力を伝送する伝送路のフォーマットの影響を大きく受ける。上述したようなS/PDIFでは、ディジタルオーディオデータを圧縮しないLPCMデータの場合は、1サンプルあたり16ビット、2チャンネル、48kHzまでの音声しか出力できず、圧縮オーディオの場合は、DTSの場合、DTSオーディオストリームか、DTS-HDオーディオストリームのCoreSubstreamしか出力できない。同様にDD/DD+やDD/MLPの場合、DD(AC-3)のみか、DD/DD+やDD/MLPのDD部分しかS/PDIFで規定された伝送路上にデータを送り出すことができない。これは主に伝送路上の転送速度を制限するために規定された、規格上の制限である。
【0113】
図21(a)(b)は、再生装置300、AVアンプ500間の伝送路における規格上の制限が、どのような弊害をもたらすかを示す図である。再生装置300はデコードを行わず圧縮されたディジタルオーディオストリームを出力しようとしても、図21(a)に示すようにオーディオストリームを構成する基本データ(48kHz、2ch)、拡張データ(92kHz、5.1ch)のうち、伝送路の制限により基本データしか送ることができなければ、たとえレシーバ側のデコーダが拡張データ(192kHz、5.1ch)も含めて再生できるデコーダを搭載していたとしても、拡張データを受け取ることはできず、最終的なスピーカーの出力では基本データのオーディオストリームしか出力できない。DTS-HDを例にとって説明すると、たとえ再生装置300にDTS-HDオーディオストリームの拡張部分であるExtensionSubstreamをデコードする能力があったとしても、再生装置300でデコードせずにS/PDIFで圧縮したままのデータであるディジタルオーディオストリームを出力する場合、伝送路の規格上の制限としてCoreSubstreamしか出力できない。出力先にあたるレシーバ(図中のアンプ)がたとえDTS-HDオーディオストリームをデコードできたとしても、ExtensionSubstream部分を受け取ることはできず、最終的なスピーカーの出力には、Core Substreamに含まれるオーディオデータしか出力できない。
【0114】
また図21(b)に示すように、たとえ再生装置300搭載のデコーダが例えば192kHz、5.1chのオーディオデータを全てデコードできたとしても、伝送路の制限により、ダウンサンプリングやダウンミックスすることにより、周波数やチャンネル数を減らして、ストリームの帯域を減らさなければ伝送できないケースもある。LPCMを例にとって説明すると、たとえ再生装置300が192kHz/24ビット/6チャンネルの高音質LPCMオーディオストリームがデコードできたとしても、S/PDIFで出力する際には、48kHz/16ビット/2chに、ダウンサンプリング、ダウンミックス、および、1サンプルあたりのビット数を16ビットに落とさなければ伝送することができず、高音質/多チャンネルをレシーバ側に伝送することができないことになる。
【0115】
図22は、現在ディジタルAV再生装置300の出力方法として広く使われている、アナログ出力、S/PDIF、HDMIについて、BD-ROMで使われているLPCM、DTS-HD、AC-3、DD/DD+、DD/MLPが出力可能かどうかを表形式で示した図である。
S/PDIFは、LPCMなら192kHz/16bit/2chまでを伝送することができ、DTS-HDなら伝送を行うことができる。DD(AC-3)でも伝送を行うことができ、DD/DD+ならDD部分、DD/MLPもDD部分なら伝送することができる。
【0116】
HDMIは、LPCMなら192kHz/24bit/8chまでを伝送することができ、DTS-HDなら、LPCMに伸長した後、伝送することができる。DD(AC-3)、DD/DD+、DD/MLPも同様であり、LPCMに伸長した後、伝送することができる。今後は拡張されてDTS-HDやDD/DD+、DD/MLPがビットストリームのまま(圧縮されたまま)伝送できるようになる可能性が高い。
アナログ出力の場合は、再生装置300の内部の回路構成や、スピーカーを接続するための端子の構成に依存する。
【0117】
このように伝送路能力は、オーディオストリームを、そのまま再生できるかどうかに大きく影響するので、伝送路能力が、PSR15のパラメータの1つに規定されている。
<スピーカ構成>
スピーカー構成が、PSRにおいてパラメータとして規定されている理由は、以下の通りである。たとえ、サラウンド音声をデコードできて、サラウンド音声を伝送できたとしても、最終的にスピーカーが2つしかなければステレオ出力になる。この場合、デコーダが2チャンネルしかデコードできない、あるいは、伝送路が2チャンネルしか伝送できない場合と、結果的には変わらない。そのため、スピーカー構成もPrimaryオーディオストリーム選択プロシージャに影響を及ぼす1つの要素になる。
【0118】
以下の説明では、スピーカー構成はステレオとサラウンドを区別しているのみである。これは現在のところ通常のディスプレイにはスピーカーが2つついている、つまり、ステレオの出力が多いため、ホームシアターシステムなら、5.1chなどのスピーカー構成を持っている場合と区別できれば十分だからである。
以上が、3つのパラメータについての説明である。以降、これら3つのパラメータが、各符号化方式において、どのように規定されるかについて説明する。
【0119】
図23(a)は、LPCMに対するパラメータを示す図である。LPCMのためのパラメータは、本図に示すようにデコード能力を示すパラメータ1、伝送路能力を示すパラメータ2、スピーカ構成を示すパラメータ3からなる。
図23(b)は、パラメータ1〜パラメータ3と、その規定内容とを表形式で表す図である。この表は、規定内容欄と、その右側の備考欄からなる。この表の見方としては、かかる符号化方式のパラメータ1、パラメータ2、パラメータ3は、本来備考欄のように規定すべきであったが、BD-ROM再生装置への実装を考慮して、規定内容欄のように、規定したという考察の経緯を示す。
【0120】
LPCMのパラメータ1は、「48/96kHzのみデコード可能か、また、48/96/192kHzのLPCMまでデコード可能であるか」を示す。その理由は、以下の通りである。本来、デコード能力に関しては、何kHz/何ビット/何チャンネルまでのLPCMをデコード可能かを示す必要がある(備考欄参照)。LPCMの場合デコード自体は非常に簡単な仕組みであるが、オーディオデータに圧縮がかかっていないため、データ量が多く、非常に多くの帯域や処理のために大きなメモリが必要になる場合がある。そのため、廉価な再生装置では高ビットレートのLPCMを処理できない可能性があるため、何kHz/何ビット/何チャンネルまでというオーディオとして意味のある表現として、処理できる最大ビットレートを制限する。
【0121】
BD-ROMでは、48/96/192kHzのLPCMが使われるが、48/96kHzはデコード必須であるためこれを区別する必要はない。そのため、192kHzのLPCMをデコードできる、再生装置300内部に十分な帯域およびメモリ容量を確保しているか否かを区別できればよい。かかる理由により、パラメータ1は、上述したように設定されている
LPCMのパラメータ2は、伝送できるチャンネル数が、2チャンネルまでか、又は、3チャンネル以上かを示す。その理由は、以下の通りである。伝送路の能力に関しては、何kHz/何ビット/何チャンネルまでのLPCMを外部に伝送可能かを示す必要がある。先にも述べたように、S/PDIFのようなディジタルインターフェイスの場合、チャンネル数などに制限があるためである。だが、実際は、周波数やビット数は影響を及ぼさないため、BD-ROM再生装置のPSR15は、上述したように設定されている。
【0122】
LPCMのパラメータ3は、サラウンド出力が可能かを示す。
以上がLPCMについての3つのパラメータについての説明である。
続いて、DTS-HDにおける3つのパラメータについて説明する。
図24(a)は、DTS-HDにするパラメータを示す図である。DTS-HDに対するパラメータは、本図に示すようにデコード能力を示すパラメータ1、伝送路能力を示すパラメータ2、スピーカ構成を示すパラメータ3からなる。
【0123】
図24(b)は、パラメータ1〜パラメータ3と、その規定内容とを表形式で表す図である。この表は、規定内容の欄と、その右側の備考欄からなる。この表の見方としては、かかる符号化方式のパラメータ1、パラメータ2、パラメータ3は、本来備考欄のように規定すべきであったが、BD-ROM再生装置への実装を考慮して、規定内容欄のように、規定したという考察の経緯を示す。
【0124】
DTS-HDのパラメータ1は、DTS-HDのCore Substreamのデコードのみ可能であるか、Extension Substreamも含めてデコード可能であるかを示す。その理由は、以下の通りである。デコード能力に関しては、DTSオーディオストリームをデコード可能であるか、DTS-HDオーディオストリームの場合は、CoreSubstreamのみデコード可能であるか、Extension Substreamも含めてデコード可能であるかを示す必要がある(備考欄参照)。また、たとえExtensionSubstreamをデコードできたとしてもロスレスデータは帯域が大きくなるためデコードできない可能性がある。そのため、ロスレスデータをデコードできるか否かも示す必要がある。ただし、CoreSubstreamのデコードは必須であるため区別する必要はなく、Extension Substreamをデコードできる場合は常にロスレスデータもデコードできるため、DTS-HDのパラメータ1としては、上述したような内容を示していれよい。かかる事情により、パラメータ1は規定されている。
【0125】
DTS-HDのパラメータ2は、Core Substreamのみ伝送可能か、Extension Substreamも含めて伝送可能かを示す必要がある。
DTS-HDのパラメータ3は、スピーカー構成としてサラウンド出力が可能かを示す。
以上が、DTS-HDにおけるパラメータ1、パラメータ2、パラメータ3についての説明である。続いて、DD/DD+における3つのパラメータについて説明する。
【0126】
図25(a)は、DD/DD+に対するパラメータを示す図である。DD/DD+に対するパラメータは、本図に示すようにデコード能力を示すパラメータ1、伝送路能力を示すパラメータ2、スピーカ構成を示すパラメータ3からなる。
図25(b)は、パラメータ1〜パラメータ3と、その規定内容とを表形式で表す図である。この表は、規定内容欄と、その右側の備考欄からなる。この表の見方としては、かかる符号化方式のパラメータ1、パラメータ2、パラメータ3は、本来備考欄のように規定すべきであったが、BD-ROM再生装置への実装を考慮して、規定内容の欄のように、規定したという考察の経緯を示す。
【0127】
DD/DD+のパラメータ1は、基本データにあたるDD部分のみをデコード可能であるか、従属部分であるDD+も含めてデコード可能であるかを示す。その理由は、以下の通りである。BD-ROMでは、DD(AC-3)のデコードは必須であるため区別する必要はなく、DD/DD+のDD部分をデコードできるか、DD+部分を含めてデコードできるか否かを区別できればよい。このような事情から、パラメータ1は、規定されている。
【0128】
DD/DD+のパラメータ2は、伝送路の能力として、DD/DD+のDD部分のみ伝送可能か、DD+部分も伝送可能かを示す。
DD/DD+のパラメータ3は、スピーカー構成として、サラウンド出力が可能かを示す。
以上が、DD/DD+についての説明である。
続いて、DD/MLPにおける3つのパラメータについて説明する。
【0129】
図26(a)は、DD/MLPにおけるパラメータを示す図である。DD/MLPのためのパラメータは、本図に示すようにデコード能力を示すパラメータ1、伝送路能力を示すパラメータ2、スピーカ構成を示すパラメータ3からなる。
図26(b)は、パラメータ1〜パラメータ3と、その規定内容とを表形式で表す図である。この表は、規定内容欄と、その右側の備考欄からなる。この表の見方としては、かかる符号化方式のパラメータ1、パラメータ2、パラメータ3は、本来備考欄のように規定すべきであったが、BD-ROM再生装置への実装を考慮して、規定内容欄のように、規定したという考察の経緯を示す。
【0130】
DD/MLPのパラメータ1は、基本データにあたるDD部分のみをデコード可能であるか、DD/MLPのMLP部分を含めてデコードできるかを示す。その理由は、以下の通りである。デコード能力として、DD(AC-3)オーディオストリームをデコード可能であるか、DD/MLPオーディオストリームの場合、基本データにあたるDD部分のみをデコード可能であるか、従属部分であるMLPも含めてデコード可能であるかを示す必要があ(備考欄参照)。しかしBD-ROMでは、DD(AC-3)のデコードは必須であるため区別する必要はないので、上述したように、規定されている。
【0131】
DD/MLPのパラメータ2は、伝送路の能力として、DD/MLPのDD部分のみ伝送可能か、MLP部分も伝送可能かを示す。
DD/MLPのパラメータ3は、スピーカー構成に関しては、サラウンド出力が可能かを示す。
以上が、DD/MLPについての説明である。
【0132】
DD/DD+,DD/MLPのストリームは完全に独立したストリームというわけではなく、多少の関連性を持っているため、2つのPSR15で表現するのではなく、図27に示すように、1つにまとめて表現することも可能である。
図27(a)は、 DD+,DD/MLPにおけるパラメータを示す図である。本図におけるパラメータは、DD/DD+のデコード能力を示すパラメータ1a、DD/MLPのデコード能力を示すパラメータ1b、DD/DD+及びDD/MLPの伝送路能力を示すパラメータ2、DD/DD+及びDD/MLPのスピーカ構成を示すパラメータ3からなる。
【0133】
図27(b)は、パラメータ1a,b〜パラメータ3と、その規定内容とを表形式で表す図である。この表における規定内容欄におけるパラメータ1は、図25(b)、図26(b)の内容をまとめて表していることがわかる。
Procedure実行部42は、Primaryオーディオストリームを選択の対象にするにあたって、PSRセット23における符号化方式毎のパラメータ1〜パラメータ3からなるパラメータ群のうち、そのPrimaryオーディオストリームの符号化方式に対応するものを特定して、特定したパラメータ群の設定値が、所定の値になっているかどうかをチェックすることにより、条件(a)、条件(b)、条件(c)が満たされているか否かを判定する。
【0134】
以上で、PSR15についての説明を終える。本実施形態の最後に、PSR設定部43について説明する。
PSR設定部43は、ユーザからの操作に従って、PSR15にパラメータ1〜パラメータ3を設定する処理を行う。かかる設定にあたって、PSR設定部43は、セットアップメニューを表示して、このセットアップメニューを介して、再生装置300に接続されている機器のデコード能力や、再生装置300と、その機器との間の伝送路能力、再生装置300が存在するホームシアターシステムにおけるスピーカ構成を受け付け、そうして受け付けたデコード能力、伝送路能力、スピーカ構成から、PSR15におけるパラメータ1〜パラメータ3を設定する。再生装置300が、HDMIを介して機器と接続されているような場合、HDMIにおけるデータの送受信により、接続先機器のデコード能力やスピーカ構成を取得してもよい。
【0135】
以上のように本実施形態によれば、基本データと、拡張データとからなるオーディオフレームをもつ符号化方式のオーディオストリームについては、拡張データに対する処理能力が存在するか否かを判定することで、条件(a)を具備しているかどうかを判定するので、拡張データに対する処理能力がないような符号化方式については、選択から除外することができる。これにより、拡張データの処理が可能となるオーディオストリームの中から、再生すべきオーディオストリームが選ばれるので、記録媒体側に、サラウンド再生可能な符号化方式が存在し、また、サラウンド出力の能力が再生装置側に存在している場合、サラウンド再生を行える可能性を高めることができる。
【0136】
条件(a)、条件(c)を満たすかどうかの判断にあたっての判定資料が、PSR15に厳密に規定されているので、かかるPSR15を参照することにより、再生装置がデジタル出力を行う場合や、レシーバ機器側でデコードを行うようなシステムにおける、条件(a)、条件(c)の具備判定を好適に行うことができる。そのため、システムに再生装置が用いられるにあたって、最適なPrimaryオーディオストリームをデコードすることができる。
【0137】
(第2実施形態)
オーディオストリームを再生するための再生装置300のデコーダ能力、伝送路の能力、スピーカー構成(サラウンド出力能力)を細かく表現するためには、これまで述べた情報をPSR15内に表現しなくてはならない。
だが、第1実施形態で述べたPrimaryオーディオストリームの選択プロシージャにおいて、適切なオーディオストリームを選択するためにパラメータを参照するだけであるなら、これまで述べた各要素を最適化して、Primaryオーディオストリームの選択プロシージャに合わせた情報を提供することも可能である。
【0138】
第1実施形態に示した4つの条件のうち、条件(a)は必須条件であり、そのオーディオストリームを再生できない、最終的に音として出力できないのであれば、そのストリームを選択してはならない。条件(a)は、デコード能力と伝送路の能力を参照すれば判定することができる。
条件(c)について複雑なケースとしては、基本データだけ再生するとステレオの音声だが、拡張データも加えるとサラウンド音声になるようなケースである。たとえば、DTS-HDでは、CoreSubstreamとして48kHz/2chのオーディオデータを、Extension Substreamでは192kHz/6chロスレスのオーディオデータを格納することができ、このような場合に前述のようなケースが発生する。つまり、基本データしかデコードできない再生装置300でのPrimaryオーディオストリームの選択プロシージャでは、対象ストリームをステレオとして扱うが、拡張データもデコードできる再生装置300では同じオーディオストリームをサラウンドとして扱うことになる。この区別も付けられるようにする必要がある。従って条件(c)を満たすかどうかの判定は、スピーカー構成(サラウンド出力能力)、さらにLPCMの場合は伝送路の能力を加味せねばならない。
【0139】
以下、オーディオストリームの種類ごとに、PSR15の内容を、Primaryオーディオストリームの選択プロシージャに合わせて最適化する例を説明する。
図28は、LPCMにおけるパラメータ1〜パラメータ2が、どのように定まるかを模式的に示す図である。本図における第1段目は、再生装置300、AVアンプ500、スピーカ600を示し、第3段目は、PSR15における各符号化方式毎に定められたパラメータ1、パラメータ2を示す図である。第1段目ー第3段目間の第2段目は、これら第3段目におけるパラメータ1〜パラメータ2が、再生装置300、AVアンプ500、スピーカ600のうち、何れの特性から定まるかを示す。
【0140】
本図に示すように、パラメータ1は、再生装置300内のデコーダの特性と、AVアンプ500内のデコーダの特性との論理和から定まり、パラメータ2は、再生装置300及びAVアンプ500間の伝送路の特性と、スピーカ600の特性との論理積から定まる
図29は、LPCMオーディオストリームに対するパラメータの一例である。図29(a)は、条件(a)を判定するために参照する再生能力(パラメータ1)と、条件(c)を判定するために参照するサラウンド出力能力(パラメータ2)から構成される。
【0141】
LPCMの場合、再生装置300内部で処理することさえできれば、何らかの音として出力することが可能なためであり、再生能力とはデコード能力に等しい。
図29(b)は、伝送路能力と、スピーカ構成との組合せにより、パラメータ2がどのように規定されるかを示す。本図に示すように伝送路能力が、“8チャネルまで伝送可能”であり、スピーカ構成が、スピーカーが3つ以上、あるいは、仮想サラウンドを実現できる場合にのみ、パラメータ2は、“サラウンド出力能力有り”に設定される。これ以外、つまり、伝送路能力が、2チャネルのみ伝送可能である場合、又は、スピーカ構成が2つ以下の場合は、パラメータ2は、サラウンド出力能力無しに設定される。このように規定した理由は、以下の通りである。たとえ伝送路がマルチチャンネルを伝送することができても、最終出力であるスピーカーが2つしかなければ、そのうち2本しか出力できない。その場合、サラウンド出力能力はないことになる。また、たとえスピーカーが複数個用意されていたとしても、伝送路が2チャンネルしか伝送することができなければ、サラウンド出力はできない。CDの音声を伝送するために作られたS/PDIFは、LPCMを2チャンネルまでしかできず、これを利用するような場合は、サラウンド出力能力はないことになる。サラウンド出力能力があるというのは、伝送路がマルチチャンネルを伝送できて、スピーカーがサラウンドに対応している、あるいは、仮想サラウンドを実現できる場合である。このような事情から、パラメータ1、パラメータ2を上述したように規定している。
【0142】
図30は、LPCMにおけるパラメータ1〜パラメータ2の、別の設定の仕方を模式的に示す図である。本図における第1段目は、再生装置300、AVアンプ500、スピーカ600を示し、第3段目は、PSR15における各符号化方式毎に定められたパラメータ1、パラメータ2を示す図である。第1段目ー第3段目間の第2段目は、これら第3段目におけるパラメータ1〜パラメータ2が、再生装置300、AVアンプ500、スピーカ600のうち、何れの特性から定まるかを示す。
【0143】
本図に示すように、パラメータ1は、再生装置300内のデコーダの特性と、伝送路の特性との論理積、又は、AVアンプ500内のデコーダの特性と、伝送路の特性との論理積から定まり、パラメータ2は、再生装置300及びAVアンプ500間の伝送路の特性と、スピーカ600の特性との論理積から定まる。
図31(a)は、条件(a)を判定するために参照する再生能力(パラメータ1)と、条件(c)を判定するために参照するサラウンド出力能力(パラメータ2)とから、LPCMに対するcapabilityを規定する一例を示す。
【0144】
図31(b)は、デコード能力と、伝送路能力との組合せにより、パラメータ1がどのように規定されるかを示す。本図におけるデコード能力の分類は、“48kHz/96kHzのLPCMをデコードできるか”、それに加えて、“192kHzのLPCMをデコードできるか”である。
本図における伝送能力の分類は、“S/PDIFを閾値として48kHzまで伝送できるか”、“192kHzまで伝送できるか”である。
【0145】
96kHzまでデコード可能だとしても、伝送路が48kHzまでしか対応していない場合、96kHzのLPCMは48kHzにダウンサンプリングして伝送する必要がある。音質は落ちるが、オーディオを出力することはできる。パラメータ1に、96kHzの場合もダウンサンプリングすれば伝送可能なので、この状態を再生可能と設定してもよいし、48kHzのみ再生可能、96kHzは再生不可能と設定してもよい。BD-ROMでは、この状態を再生可能と設定するため、以後の説明では、そちらに基づいて説明する。
【0146】
ただし、パラメータ1を上記のように設定すると、再生能力はデコード能力と等しくなり、結果として図29の例と等しくなる。
図32は、DTS/DTS-HD,DD/DD+,DD/MLPにおけるパラメータ1〜パラメータ2をどのように定めるかを模式的に示す図である。本図における第1段目は、再生装置300、AVアンプ500、スピーカ600を示し、第3段目は、PSR15における各符号化方式毎に定められたパラメータ1、パラメータ2を示す図である。第1段目ー第3段目間の第2段目は、これら第3段目におけるパラメータ1〜パラメータ2が、再生装置300、AVアンプ500、スピーカ600のうち、何れの特性から定まるかを示す。
【0147】
本図に示すように、パラメータ1は、再生装置300内のデコーダの特性と、伝送路の特性との論理積、又は、AVアンプ500内のデコーダの特性と、伝送路の特性との論理積から定まり、パラメータ2は、スピーカ600の構成から定まる。
図33(a)は、条件(a)を判定するために参照する再生能力(パラメータ1)と、条件(c)を判定するために参照するサラウンド出力能力(パラメータ2)とを示す。図33(a)に示すように、再生能力を表すパラメータ1は、デコード能力と伝送路能力の関係から決まる。サラウンド出力能力は、スピーカー構成と等価である。
【0148】
図33(b)は、デコード能力と、伝送路能力との組合せにより、パラメータ1がどのように規定されるかを示す。本図におけるデコード能力の分類は、“DTS及びDTS-HDのCoreSubstreamをデコードできるか”、それに加えて、“DTS-HDのExtension Substreamをデコードできるか”である。
伝送路能力の分類は、“DTSストリーム及びCore Substreamのみ伝送可能であるか”、それに加えて、“Extension Substreamも伝送可能であるか”である。
【0149】
図33(b)に示すように、デコード能力がなければ、そもそも再生能力はない。デコーダにDTSオーディオストリームおよび、DTS-HDオーディオストリームのCoreSubstreamしかデコードする能力がなければ、たとえ伝送路にExtension Substreamを伝送する能力があったとしても、DTSオーディオストリームおよびDTS-HDオーディオストリームのCoreSubstreamの再生能力しかない。
【0150】
デコーダにExtension Substreamもデコードする能力があったとしても、伝送路にExtension Substreamを伝送する能力がなければ、DTSオーディオストリームおよびDTS-HDオーディオストリームのCoreSubstreamの再生能力しかない。つまり、DTS-HDオーディオストリームを再生可能とパラメータ1に設定するためには、DTS-HDのExtensionSubstreamもデコードできるデコード能力と、Extension Substreamも含めて伝送できる伝送能力がそろっている必要がある。
【0151】
図34(a)は、条件(a)を判定するために参照する再生能力(パラメータ1)と、条件(c)を判定するために参照するサラウンド出力能力(パラメータ2)から、DD(AC-3)およびDD/DD+に対するcapabilityを規定する一例を示す。図34(a)に示すように、再生能力を表すパラメータ1は、デコード能力と伝送路能力の関係から決まる。サラウンド出力能力は、スピーカー構成と等価である。
【0152】
図34(b)は、デコード能力と、伝送路能力との組合せにより、パラメータ1がどのように規定されるかを示す。本図におけるデコード能力の分類は、“デコード不可”、“DDおよびDD/DD+のDD部分をデコードできるか”、それに加えて、“DDおよびDD/DD+のDD+部分をデコードできるか”である。
伝送路能力の分類は、“DDおよびDD/DD+のDD部分を伝送できるか”、それに加えて、“DDおよびDD/DD+のDD+部分を伝送できるか”である。
【0153】
デコード能力が“デコード不可”に設定されている場合、そもそも再生能力はない。
デコード能力が、“DDオーディオストリームおよび、DD/DD+オーディオストリームのDD部分のみ”である場合、たとえ伝送路にDD+も含めて伝送する能力があったとしても、DDオーディオストリームおよびDD/DD+オーディオストリームのDD部分の再生能力しかない。
デコード能力が“DD/DD+のDD+部分”である場合、DD/DD+をデコードする能力があったとしても、伝送路にDD/DD+のDD+部分を伝送する能力がなければ、DDオーディオストリームおよびDD/DD+オーディオストリームのDD部分の再生能力しかない。つまり、DD/DD+オーディオストリームを再生可能とパラメータ1に設定するためには、DD/DD+のDD+部分もデコードできるデコード能力と、DD/DD+のDD+部分も含めて伝送できる伝送能力がそろっている必要がある。
【0154】
図35は、条件(a)を判定するために参照する再生能力(パラメータ1)と、条件(c)を判定するために参照するサラウンド出力能力(パラメータ2)から、DD(AC-3)およびDD/MLPに対するcapabilityを規定する一例を示す。図35(a)に示すように、再生能力を表すパラメータ1は、デコード能力と伝送路能力の関係から決まる。サラウンド出力能力は、スピーカー構成と等価である。
【0155】
図35(b)は、デコード能力と、伝送路能力との組合せにより、パラメータ1がどのように規定されるかを示す。本図におけるデコード能力の分類は、“デコード不可”、“DDおよびDD/MLPのDD部分をデコードできるか”、それに加えて、“DDおよびDD/MLPのMLP部分をデコードできるか”である。
伝送路能力の分類は、“DDおよびDD/MLPのDD部分を伝送できるか”、それに加えて、“DDおよびDD/MLPのMLP部分を伝送できるか”である。
【0156】
デコード能力が“デコード不可”であれば、そもそも再生能力はない。
デコード能力が“DDオーディオストリームおよび、DD/MLPオーディオストリームのDD部分のみ”である場合、たとえ伝送路にMLPも含めて伝送する能力があったとしても、DDオーディオストリームおよびDD/MLPオーディオストリームのDD部分の再生能力しかない。
デコード能力が“デコーダにDD/MLPのMLP部分もデコード可”である場合でも、伝送路にDD/MLPのMLP部分を伝送する能力がなければ、DDオーディオストリームおよびDD/MLPオーディオストリームのDD部分の再生能力しかない。つまり、DD/MLPオーディオストリームを再生可能とパラメータ1に設定するためには、DD/MLPのMLP部分もデコードできるデコード能力と、DD/MLPのMLP部分も含めて伝送できる伝送能力がそろっている必要がある。
【0157】

これまで説明したPSR15を用いることにより、Primaryオーディオストリームの選択プロシージャにおいて、条件(a)と条件(c)をより細かく判定することができる。
条件(a)に関わる再生能力の判定について説明する。
対象となるオーディオストリームと、PSR15に設定されている再生能力を比較して、対象となるオーディオストリームを音として出力することが可能ならば、条件(a)を満たすと判定結果を下し、音として出力できなければ判定は条件(a)は満たさないと判定すべきである。
【0158】
本実施形態におけるProcedure実行部42は、Primaryオーディオストリームを選択の対象にするにあたって、PSRセット23における符号化方式毎のパラメータ1〜パラメータ2からなるパラメータ群のうち、そのPrimaryオーディオストリームの符号化方式に対応するものを特定して、特定したパラメータ群の設定値が、所定の値になっているかどうかをチェックすることにより、条件(a)、条件(c)が満たされているか否かを判定する。
【0159】
図36は、LPCMの再生能力が存在するか否かの判定のための処理手順を示すフローチャートである。
図36においてまず、オーディオストリームの周波数は192kHzであるか否かを判定する(ステップS181)。
もしステップS181でNoであれば、再生能力有りと判定結果を下す(ステップS182)。
【0160】
ステップS181でYesと判定された場合、デコーダは、192KHzをデコードできるか否かを判定する(ステップS183)。かかる判定を行う理由は、以下の通りである。LPCMの場合、BD-ROMでは、48kHz及び96kHzのLPCMオーディオストリームは必ず再生されなければならないと規定されている。そのため、対象となるオーディオストリームが192kHzのLPCMオーディオストリームである場合、再生しようとする再生装置300が192kHzのLPCMをデコードする能力があるかをが、判定の基準とせねばならない。ステップS183においてYesと判定された場合、再生能力を具備していることになり、ステップS183においてNoと判定された場合、再生能力を具備していないことになる。
【0161】
以上の判定には、伝送路の能力も関わってくるが、S/PDIFのように48kHz/2ch/16bitまでしか伝送できない伝送路で、96kHz/8ch/24bitのLPCMを再生する場合、ダウンサンプリング、ダウンミックス、サンプルあたりのビット数を減らすことにより、伝送できるレベルに音質を下げて伝送路に送り出す。音質やチャンネル数は下がるが、BD-ROMではこのような場合、再生能力有りと判定される。
【0162】
DTS、DD(AC-3)の場合、BD-ROMでは必ず再生されなければならないと規定されており、想定される伝送路では必ず伝送できるため、条件(a)は満たすと判定される。
DTS-HDの場合、たとえデコーダがCore Substreamしかデコードできなかったとしても、あるいは、伝送路がCore Substreamしか伝送できなかったとしても、対象となるオーディオストリームのうちCoreSubstream部分は音として出力することが可能である。BD-ROMではこのような場合、条件(a)は満たすと判定される。
【0163】
DD/DD+の場合、たとえデコーダがDD/DD+のDD部分しかデコードできなかったとしても、あるいは、伝送路がDD/DD+のDD部分しか伝送できなかったとしても、対象となるオーディオストリームのうちDD/DD+のDD部分は音として出力することが可能である。BD-ROMではこのような場合、条件(a)は満たすと判定される。
DD/MLPの場合、たとえデコーダがDD/MLPのDD部分しかデコードできなかったとしても、あるいは、伝送路がDD/MLPのDD部分しか伝送できなかったとしても、対象となるオーディオストリームのうちDD/MLPのDD部分は音として出力することが可能である。BD-ROMではこのような場合、条件(a)は満たすと判定される。
【0164】
(オーディオストリームのサラウンド出力判定)
条件(c)に関わるサラウンド出力の判定について説明する。
対象となるオーディオストリームと、PSR15に設定されているサラウンド出力能力を比較して、対象となるオーディオストリームをサラウンド音声として出力することが可能ならば、サラウンド出力能力有りと判定と判定結果を下し、サラウンドとして出力できなければサラウンド出力能力無しと判定結果を下す。失敗した場合は、そのオーディオストリームに対して、優先度を設定しないようにする。
【0165】
図37は、LPCMオーディオストリームのサラウンド出力能力が再生装置に存在するか否かの判定手順を示すフローチャートである。本フローチャートでは、オーディオストリーム自体がサラウンドであるか(ステップS201)、デコーダがサラウンド音声をデコードできるか(ステップS202)、伝送路がサラウンドを伝送できるか(ステップS203)、スピーカー構成がサラウンド出力に対応しているか(ステップS204)を判定する。これらステップS201〜ステップS204が全てYesである場合のみ、サラウンド出力能力有りと判定結果を下す。(ステップS205)。何れかのステップがNoなら、サラウンド出力能力無しと判定する(ステップS206)。
【0166】
図38は、DTSおよびDD(AC-3)のサラウンド出力能力が再生装置に存在するか否かの判定手順を示すフローチャートである。本フローチャートでは、オーディオストリーム自体がサラウンドであるか(ステップS211)、デコーダがサラウンド音声をデコードできるか(ステップS212)、伝送路がサラウンドを伝送できるか(ステップS213)、スピーカー構成がサラウンド出力に対応しているか(ステップS214)を判定する。これらステップS211〜ステップS214が全てYesである場合のみ、サラウンド出力能力有りと判定結果を下す。(ステップS215)。何れかのステップがNoなら、サラウンド出力能力無しと判定する(ステップS216)。
【0167】
図39は、DTS-HDのサラウンド出力能力が再生装置に存在するか否かの判定手順を示すフローチャートである。本フローチャートでは、Core Substreamがサラウンドであるか、ExtensionSubstreamもサラウンドであるかの判定を行い(ステップS221)、もし両方がサラウンドであるなら、スピーカー構成がサラウンド出力に対応しているか否かを判定する(ステップS222)。もし対応している場合、サラウンド出力能力有りと判定であると判定する(ステップS223)。
【0168】
ステップS221においてNoと判定されれば、Core Substreamがステレオであり、Extension Substreamを加えてサラウンドになるか否かを判定する(ステップS224)。
Extension Substreamを加えてもステレオであれば、サラウンド出力能力はないと判定する(ステップS227)。Core Substreamがサラウンドであり、ExtensionSubstreamを加えてもサラウンドであれば、デコーダがExtension Substreamをデコードできるか(ステップS225)、伝送路がExtensionSubstreamを伝送できるかを判定する(ステップS226)。デコーダがExtension Substreamもデコードでき、さらに、伝送路がExtensionSubstreamを伝送できる場合は、スピーカー構成がサラウンド出力に対応しているかの判定(ステップS222)を経た上で、サラウンド出力能力有りと判定結果を下す(ステップS223)。
【0169】
ステップS224〜ステップS226のどれかでNoになった場合は、サラウンド出力能力無しと判定結果を下す。
図40は、DD/DD+のサラウンド出力能力が再生装置に存在するか否かの判定手順を示すフローチャートである。まず、DD/DD+のDD部分がサラウンドであり、DD/DD+のDD+部分を加える、或は、DD+部分で置き換えてもサラウンドであるか否かを判定する(ステップS231)。もしYesであるなら、スピーカー構成がサラウンド出力に対応しているか否かを判定する(ステップS232)。もしサラウンド出力に対応している場合、サラウンド出力能力有りとの判定結果を下す(ステップS233)。
【0170】
DD/DD+のDD部分がステレオであるなら(ステップS231でNo)、DD/DD+のDD部分がステレオであり、DD/DD+のDD+部分を加える、或は、DD+部分で置き換えればサラウンドになるか否かを判定する(ステップS234)。置き換え可能であれば、デコーダがDD/DD+のDD+部分もデコードできるか(ステップS235)、及び、伝送路がDD/DD+のDD+部分を伝送できるか否かを判定する(ステップS236)。これらステップS234〜ステップS236が何れもYesである場合は、スピーカー構成がサラウンド出力に対応しているかか否かの判定を経て(ステップS232)、サラウンド出力能力有りと判定結果を下す(ステップS233)。デコーダがDD/DD+のDD部分しかデコードできない、あるいは、伝送路がDD/DD+のDD部分しか伝送できない場合は、対象となるオーディオストリームはステレオであり、サラウンドとしては出力できないと判定される(ステップS237)。
【0171】
DD/DD+の場合は、拡張データは基本データとの差分である場合と、独立しており基本データを置き換える場合がある。後者の場合、DD/DD+のDD部分がサラウンドであり、このDD部分をDD+部分で置き換えるとステレオのオーディオストリームになることもある。
デコーダがDD/DD+のDD部分しかデコードできない場合(ステップS235でNo)、あるいは、伝送路がDD/DD+のDD部分しか伝送できない場合(ステップS236でNo)、サラウンド出力能力無しと判定結果を下す(ステップS237)。
【0172】
デコーダがDD/DD+のDD+部分もデコードでき(ステップS235でYes)、伝送路がDD/DD+のDD+部分を伝送できる場合(ステップS236でYes)、サラウンドとしてもステレオとしても出力できる。サラウンド出力能力を優先するならば、サラウンドのオーディオストリームとして扱う。そのためスピーカー構成がサラウンド出力に対応している場合(ステップS232でYes)、サラウンド出力能力有りと判定結果を下す(ステップS233)。サラウンド出力を優先しない場合、拡張データをステレオとして出力するため、サラウンド出力能力無しと判定結果を下す(ステップS237)。
【0173】
図41は、DD/MLPのサラウンド出力能力が再生装置に存在するか否かの判定手順を示すフローチャートである。DD/MLPのDD部分がサラウンドであり、MLP部分もサラウンドであるか否かを判定する(ステップS241)。DD/MLPのDD部分がサラウンドであり、DD/MLPのMLP部分を加えるか、或は、MLP部分で置き換えてもサラウンドであれば、ステップS241はYesになり、スピーカー構成がサラウンド出力に対応しているかか否かを判定する(ステップS242)。もしサラウンド出力に対応するなら、サラウンド出力能力有りと判定結果を下す。
【0174】
ステップS241がNoである場合、DD/MLPのDD部分がステレオであり、DD/MLPのMLP部分を加える、或は、MLP部分で置き換えるとサラウンドのオーディオストリームになるか否かを判定する(ステップS245)。Yesであれば、デコーダがDD/MLPのMLP部分もデコードできるか否か(ステップS246)、さらに、伝送路がDD/MLPのMLP部分を伝送できるか否かを判定する(ステップS247)。これらの判定がYesである場合、スピーカー構成がサラウンド出力に対応しているかの判定を経て(ステップS242)、サラウンド出力能力有りと判定結果を下す(ステップS243)。
【0175】
デコーダがDD/MLPのDD部分しかデコードできない(ステップS246でNo)、あるいは、伝送路がDD/MLPのDD部分しか伝送できない場合(ステップS247でNo)、対象となるオーディオストリームはステレオであり、サラウンド出力能力無しと判定結果を下す(ステップS248)。
DD/MLPのDD部分がステレオであり、DD/MLPのMLP部分を加える、或は、MLP部分で置き換えてもステレオであれば(ステップS245でNo)、サラウンド出力能力無しと判定結果を下す(ステップS248)。
【0176】
DD/MLPの場合は、拡張データは基本データとの差分である場合と、独立しており基本データを置き換える場合がある。後者において、デコーダがDD/MLPのDD部分しかデコードできない(ステップS246でNo)、あるいは、伝送路がDD/MLPのDD部分しか伝送できない場合(ステップS247でNo)、DD部分がサラウンドであり、スピーカー構成がサラウンド出力に対応していること(ステップS242でYes)を要件にして、サラウンド出力能力有りと判定結果を下してもよい。
【0177】
デコーダがDD/MLPのMLP部分もデコードでき(ステップS246でYes)、尚且つ、伝送路がDD/MLPのMLP部分を伝送できる場合(ステップS247Yesで)、サラウンドとしてもステレオとしても出力できる。サラウンド出力能力を優先するならば、サラウンドのオーディオストリームとして扱う。そのためスピーカー構成がサラウンド出力に対応している場合(ステップS242でYes)、サラウンド出力能力有りと判定結果を下す(ステップS243)。サラウンド出力を優先しない場合、拡張データをステレオとして出力するため、サラウンド出力能力無しと判定結果を下す(ステップS248)。
【0178】
以上で、Procedure実行部42についての説明を終える。続いて、第2実施形態にかかるPSR設定部43について説明する。
PSR設定部43は、セットアップメニューを表示して、このセットアップメニューを介して、再生装置300に接続されている機器のデコード能力や、再生装置300と、その機器との間の伝送路能力、再生装置300が存在するホームシアターシステムにおけるスピーカ構成を受け付け、そうして受け付けたデコード能力、伝送路能力、スピーカ構成から、符号化方式毎のパラメータ1、パラメータ2を導出する。この導出は、図28、図30、図32に示した通りである。そうして得られた符号化方式毎のパラメータ1、パラメータ2を、PSR15に設定する。
【0179】
以上のように本実施形態によれば、条件(a)、条件(c)を満たすかどうかの判断にあたっての判定資料が、最適な形にされてPSR15に存在するので、かかるPSR15を参照することにより、再生装置がデジタル出力を行う場合や、レシーバ側でデコードを行うようなシステムにおける、条件(a)、条件(c)の具備判定を好適に行うことができる。そのため、システムに再生装置が用いられるにあたって、最適なPrimaryオーディオストリームを送信することができる。
【0180】
(第3実施形態)
第3実施形態は、パラメータの規定を第2実施形態より更に、最適化する実施形態である。どのように最適化するかというと、

基本データにおいて
0)デコード能力がないか(incapable)、
1)デコード能力があるか(stereo capable)、、
2)デコード能力+サラウンド出力能力があるか(Surround capable)を符号化方式毎に表すようにし、

これとは別に、拡張データにおいて

0)デコード能力がないか(incapable)、
1)デコード能力があるか(stereo capable)、、
2)デコード能力+サラウンド出力能力があるか(Surround capable)を符号化方式毎に表すようにしている。
【0181】
図42は、第3実施形態におけるDTS-HD、DD/DD+、DD/MLPの基本データ、拡張データ毎のCapabilityが、どのように定まるかを模式的に示す図である。本図における第1段目は、再生装置300、AVアンプ500、スピーカ600を示す。第3段目は、PSR15における各符号化方式の基本データ、拡張データ毎に定められたCapabilityを表形式で示す。この第3段目の表の縦欄は、DTS-HDの基本データのCapability、DTS-HDの拡張データのCapability、DD/DD+の基本データのCapability、DD/DD+の拡張データのCapability、DD/MLPの基本データのCapability、DD/MLPの拡張データのCapabilityを示す。図42における第3段目の横欄は、Capabilityのレベルを示す。つまりデコード能力無し(incapable)、ステレオまでのデコード能力有り(stereocapable)、サラウンドまでのデコード能力有り(surround capable)といった、Capabilityの3段階のレベルが示されている。
【0182】
第3段目における表の○は、各符号化方式の基本データ、拡張データ毎のCapabilityが、incapable、stereo capable、surroundcapableという3段階のレベルのうち、どれに設定されているかを示す。ここでは、DTS-HDの基本データのCapabilityはstereo capable、DTS-HDの拡張データのCapabilityはsurroundcapable、DD/DD+の基本データのCapabilityはstereo capable、DD/DD+の拡張データのCapabilityはsurroundcapable、DD/MLPの基本データのCapabilityはstereo capable、DD/MLPの拡張データのCapabilityはincapableにそれぞれ設定されていることがわかる。以上のように、第3実施形態のPSR15は、各符号化方式の基本データ、拡張データのそれぞれが、stereocapableであるか、surround capableであるか、incapableであるかが個別具体的に示されている。
【0183】
第1段目−第3段目間の第2段目は、これら第3段目における各符号化方式の基本データ、拡張データ毎に定められたCapabilityが、再生装置300、AVアンプ500、スピーカ600の特性から、どのように定まるかを示す。
本図の第2段目に示すように、各符号化方式の基本データ、拡張データ毎に定められたCapabilityは、再生装置300内のデコーダの特性と、AVアンプ500内のデコーダの特性との論理和(図中のOR)、再生装置300及びAVアンプ500間の伝送路と、スピーカ600の特性との論理積(図中のAND1)、及び、当該論理和と当該論理積との論理積(図中のAND2)に基づく。これらの特性との関連について述べると、再生装置300内のデコーダ、AVアンプ500内のデコーダのどちらかの特性が、“ステレオ音声のデコード能力有り”である場合、各符号化方式の基本データ、拡張データ毎に定められたCapabilityは、stereocapableを示す。
【0184】
また、再生装置300内のデコーダの特性と、AVアンプ500内のデコーダの特性とのどちらかが、“サラウンド音声のデコード能力有り”であり、尚且つ、再生装置300及びAVアンプ500間の伝送路の特性と、スピーカ600の特性とが、何れも“サラウンド出力能力有り”である場合、各符号化方式の基本データ、拡張データ毎に定められたCapabilityは、Surroundcapableを示す。再生装置300内のデコーダ、AVアンプ500内のデコーダのどちらの特性も、ステレオ音声のデコード能力なしである場合、Capabilityは、incapableになる。
【0185】
図43は、基本データのcapability、拡張データのcapabilityが、存在するかか否かを、符号化方式毎に示すよう、設定されたPSR15を示す図である。
PSR15のビットb0からビットb3までは、LPCM形式のオーディオストリームをデコードして再生する能力が再生装置に存在するか否かを示す。この4ビットが0001bなら、ステレオ属性をもつ48/96KHzのLPCMオーディオストリームを再生する能力が、再生装置に存在することを示す。この4ビットが0010bなら、サラウンド属性をもつ48/96KHzのLPCMオーディオストリームを再生する能力が、再生装置に存在することを示す。この4ビットが0101bなら、ステレオ属性をもつ全ての周波数のLPCMオーディオストリームを再生する能力が、再生装置に存在することを示す。この4ビットが0110bなら、サラウンド属性をもつ全ての周波数のLPCMオーディオストリームを再生する能力が、再生装置に存在することを示す。
【0186】
PSR15のビットb4からビットb7までは、DD/DD+形式のオーディオストリームをデコードして再生する能力が再生装置に存在するか否かを示す。この4ビットの下位2ビットが01bなら、DD/DD+オーディオストリームの基本データ(independentsubstream)がステレオ属性をもっている場合、これを再生する能力が、再生装置に存在することを示す。この4ビットの下位2ビットが10bなら、DD/DD+オーディオストリームの基本データ(independentsubstream)がサラウンド属性をもっている場合、これを再生する能力が、再生装置に存在することを示す。
【0187】
この4ビットの上位2ビットが01bなら、DD/DD+オーディオストリームの拡張データ(Dependent substreamがステレオ属性をもっている場合、これを再生する能力が、再生装置に存在することを示す。この4ビットの上位2ビットが10bなら、DD/DD+オーディオストリームの拡張データ(Dependentsubstream)がサラウンド属性をもっている場合、これを再生する能力が、再生装置に存在することを示す。
【0188】
上位2ビットが00であるなら、これを再生する能力が再生装置に存在しないことを示す。
PSR15のビットb8からビットb11までは、DTS-HD形式のオーディオストリームをデコードして再生する能力が再生装置に存在するか否かを示す。この4ビットの下位2ビットが01bなら、DTS-HDオーディオストリームの基本データ(Coresubstream)がステレオ属性をもっている場合、これを再生する能力が、再生装置に存在することを示す。この4ビットの下位2ビットが10bなら、DTS-HDオーディオストリームの基本データ(Coresubstream)がサラウンド属性をもっている場合、これを再生する能力が、再生装置に存在することを示す。
【0189】
この4ビットの上位2ビットが01bなら、DTS-HDオーディオストリームの拡張データ(Extension substreamがステレオ属性をもっている場合、これを再生する能力が、再生装置に存在することを示す。この4ビットの上位2ビットが10bなら、DTS-HDオーディオストリームの拡張データ(Extensionsubstream)がサラウンド属性をもっている場合、これを再生する能力が、再生装置に存在することを示す。
【0190】
上位2ビットが00であるなら、Extension substreamを再生する能力が再生装置に存在しないことを示す。
PSR15のビットb12からビットb15までは、DD/MLP形式のオーディオストリームをデコードして再生する能力が再生装置に存在するか否かを示す。この4ビットの下位2ビットが01bなら、DD/MLPオーディオストリームの基本データ(AC-3)がステレオ属性をもっている場合、これを再生する能力が、再生装置に存在することを示す。この4ビットの下位2ビットが10bなら、DD/MLPオーディオストリームの基本データ(AC-3)がサラウンド属性をもっている場合、これを再生する能力が、再生装置に存在することを示す。
【0191】
この4ビットの上位2ビットが01bなら、DD/MLPオーディオストリームの拡張データ(MLP audio)がステレオ属性をもっている場合、これを再生する能力が、再生装置に存在することを示す。この4ビットの上位2ビットが10bなら、DD/DD+オーディオストリームの拡張データ(MLPaudio)がサラウンド属性をもっている場合、これを再生する能力が、再生装置に存在することを示す。
【0192】
上位2ビットが00であるなら、これを再生する能力が再生装置に存在しないことを示す。
以上が本実施形態にかかるPSR15の説明である。続いて、本実施形態にかかるProcedure実行部42の処理手順について説明する。
続いて、第2実施形態にかかるProcedure実行部42の処理手順について説明する。本実施形態では、PSR15が、図43のように規定されたので、条件(a)が満たされているか否か、条件(c)が満たされているか否かの判定は、下記の手順に従う。
【0193】
まず始めに、条件(a)を満たすか否かの、Procedure実行部42による判定について説明する。Procedure実行部42は、PSR15に存在する、各符号化方式の基本データ、拡張データ毎のCapabilityのうち、対象となるPrimaryオーディオストリームの符号化方式に対応するものを参照して、その符号化方式のうち、基本データの、拡張データのどちらかが、stereocapable又はsurround capableを示しているなら、再生装置は、対象となるPrimaryオーディオストリームをデコードする能力をもっており、条件(a)は満たされていると判定する。対応する符号化方式のうち、基本データの、拡張データのどちらもが、incapableを示しているなら、再生装置は、対象となるPrimaryオーディオストリームをデコードする能力をもっておらず、条件(a)は満たされていないと判定する。以上が、条件(a)に対する判定である。
【0194】
次に、条件(c)を満たすか否かのProcedure実行部42による判定について説明する。Procedure実行部42は、Primaryオーディオストリームを選択の対象にするにあたって、PSRセット23における符号化方式毎の(DD/DD+capability,DTS-HDcapability,DD/MLPcapability)のうち、そのPrimaryオーディオストリームの符号化方式に対応するものを特定する。そして特定した符号化方式における、基本データに対応するビット及び拡張データに対応するビットのうち、拡張データに対応するビット(DependentSubstream,Extensionsubstream MLP Audio)の設定値が、所定の値になっているかどうかをチェックする。これにより、条件(c)が満たされているか否かを判定する。
【0195】
図44は、DTS-HDのサラウンド出力能力が再生装置に存在するか否かの判定手順を示すフローチャートである。本フローチャートでは、Core Substreamがサラウンドであるか、ExtensionSubstreamもサラウンドであるかの判定を行い(ステップS321)、もし両方がサラウンドであるなら、サラウンド出力能力有りと判定であると判定する(ステップS323)。
【0196】
ステップS321においてNoと判定されれば、Core Substreamがステレオであり、Extension Substreamを加えてサラウンドになるか否かを判定する(ステップS324)。ExtensionSubstreamを加えてもステレオであれば、サラウンド出力能力なしと判定する(ステップS327)。Core Substreamがステレオであり、ExtensionSubstreamを加えてサラウンドになれば、PSR15のb11〜b10は、サラウンド出力能力:10bを示すかか否かを判定する(ステップS325)。
【0197】
ステップS324〜ステップS325のどれかでNoになった場合は、サラウンド出力能力無しと判定結果を下す(ステップS327)。ステップS324〜ステップS325の両方がYesになった場合は、サラウンド出力能力ありと判定結果を下す(ステップS323)。
図45は、DD/DD+のサラウンド出力能力が再生装置に存在するか否かの判定手順を示すフローチャートである。まず、DD/DD+のDD部分がサラウンドであり、DD/DD+のDD+部分を加える、或は、DD+部分で置き換えてもサラウンドであるか否かを判定する(ステップS331)。もしYesであるなら、サラウンド出力能力ありと判定結果を下す(ステップS333)。
【0198】
DD/DD+のDD部分がステレオであるなら(ステップS331でNo)、DD/DD+のDD部分がステレオであり、DD/DD+のDD+部分を加える、或は、DD+部分で置き換えればサラウンドになるか否かを判定する(ステップS334)。ステップS334がYesであるなら、PSR15のb6,b7が10b:サラウンド出力能力を示すか否かを判定する(ステップS335)。
これらステップS334〜ステップS335が何れもYesである場合は、サラウンド出力能力有りと判定結果を下す(ステップS333)。デコーダがDD/DD+のDD部分しかデコードできない、あるいは、伝送路がDD/DD+のDD部分しか伝送できない場合は、対象となるオーディオストリームはステレオであり、サラウンド出力能力無しと判定される(ステップS337)。
【0199】
図46は、DD/MLPのサラウンド出力能力が再生装置に存在するか否かの判定手順を示すフローチャートである。DD/MLPのDD部分がサラウンドであり、MLP部分もサラウンドであるか否かを判定する(ステップS341)。DD/MLPのDD部分がサラウンドであり、DD/MLPのMLP部分を加えるか、或は、MLP部分で置き換えてもサラウンドであれば、ステップS341はYesになり、サラウンド出力能力有りと判定結果を下す(ステップS343)。
【0200】
ステップS341がNoである場合、DD/MLPのDD部分がステレオであり、DD/MLPのMLP部分を加える、或は、MLP部分で置き換えるとサラウンドのオーディオストリームになるか否かを判定する(ステップS345)。Yesであれば、PSR15のb14〜b15が10b:サラウンド出力能力有りを示すか否かを判定する(ステップS346)。これらの判定が両方ともYesである場合、サラウンド出力能力有りと判定結果を下す(ステップS343)。どちらかがNoである場合、サラウンド出力能力無しと判定結果を下す(ステップS348)。
【0201】
以上で、本実施形態におけるProcedure実行部42についての説明を終える。続いて、第3実施形態にかかるPSR設定部43について説明する。
PSR設定部43は、セットアップメニューを表示して、このセットアップメニューを介して、再生装置300におけるデコード能力、再生装置300に接続されている機器のデコード能力や、再生装置300と、その機器との間の伝送路能力、再生装置300が存在するホームシアターシステムにおけるスピーカ構成を受け付ける。そうして受け付けたデコード能力、伝送路能力、スピーカ構成から、各符号化方式の、基本データ毎、拡張データ毎のcapabilityを、設定する。
【0202】
セットアップメニューを介した操作を行うユーザが、メーカにおける技術者である場合、かかる技術者は、自社の再生装置300における、符号化方式毎のデコード能力を、セットアップメニューに対して入力する。かかる入力に基づき、PSR設定部43は、各符号化方式の、基本データ毎、拡張データ毎のcapabilityを、設定する。
セットアップメニューを介した操作を行うユーザが、最終消費者である場合、かかる最終消費者は、再生装置300に接続されている機器のデコード能力や、再生装置300と、その機器との間の伝送路能力、再生装置300が存在するホームシアターシステムにおけるスピーカ構成をセットアップメニューに対して入力する。かかる入力に基づき、PSR設定部43は、メーカーの技術者により設定された各符号化方式における基本データ毎、拡張データ毎のcapabilityを、再設定することができる。
【0203】
その他、システムに再生装置が設置された際、システムの環境に応じて、基本データ、拡張データ毎のパラメータを定めて、PSR15に設定しておく。
以上のように本実施形態によれば、拡張フォーマットを有するPrimaryオーディオストリームが条件(a)、条件(c)を満たすか否かを判定するにあたって、条件(a)を満たすかどうかは、基本データのデコード能力が存在するか否かを判定すればよく、条件(c)を満たすかどうかは、拡張データのデコード能力と、サラウンド出力能力とが存在するか否かを判定すればよいので、条件(c)の判定手順の詳細を変えることで、拡張フォーマットを有するようなPrimaryオーディオストリームをも、Primaryオーディオストリーム選択プロシージャの対象に加えることができる。DTS,AC-3の存在のみを想定していたようなPrimaryオーディオストリーム選択プロシージャに対して、僅かな変更を加えることにより、拡張フォーマットを有するようなPrimaryオーディオストリームを対象にするようなPrimaryオーディオストリーム選択プロシージャを再生装置に実装することができる。
【0204】
(第4実施形態)
第4実施形態は、PSR15の動的変更に関する実施形態である。
これまでの説明においては、PSR15は再生装置300に搭載されているデコーダ、再生装置300に接続されている伝送路の状態によって、静的にパラメータが設定されており、ストリームの再生中はPSR15が変更されない場合を想定してる。デコーダや伝送路の能力は独立事象であり、常に同じ状態と想定しているためである。
【0205】
しかしHDMIの場合はビデオの属性によって、伝送路の能力が変化する。たとえば、20x1080/59.94HzのHDビデオを伝送している状態では、192kHz/8chのLPCMを伝送することができるが、720x480/29.97HzのSDビデオを伝送している状態では、48kHz/8ch、192kHz/2chまでのLPCMしか伝送することができない。このように、何らかの状態により伝送能力やデコーダ能力が変化する場合は、PSR15の値もそれにあわせて動的に変更する必要がある。
【0206】
HDMIの場合は、接続時およびビデオの属性が変化する際に、再生装置300とレシーバが通信を行い、レシーバ側のデコード能力を再生装置300側に通知することができるため、再生装置300側がHDMIのオーディオの伝送能力を知ることができ、ビデオにあわせてPSR15を動的に変えることも可能である。
また、HDMIにおいて、SDビデオを伝送中のため、オーディオの帯域が足りない場合は、伝送速度をn倍して帯域を上げることも可能である。先ほどの例だと、4倍すると192kHz/8chのLPCMを伝送可能になるため、HDと同じ帯域を使うことができる。再生装置300はPSR15を動的に変更しなくてもよいように、HDMIの伝送速度の方を調整することも可能である。
【0207】
(備考)
以上、本願の出願時点において、出願人が知り得る最良の実施形態について説明したが、 以下に示す技術的トピックについては、更なる改良や変更実施を加えることができる。各実施形態に示した通り実施するか、これらの改良・変更を施すか否かは、何れも任意的であり、実施する者の意思によることは留意されたい。
【0208】
(判定の詳細)
符号化方式がDTS-HDである場合、Core Substreamしかデコードできない場合、あるいは伝送できない場合は、Procedure実行部42は、再生不可能と判定してもよい。また、DD/DD+あるいはDD/MLPのDD部分しかデコードできない場合、あるいは伝送できない場合は、Procedure実行部42は、再生不可能と判定してもよい。
【0209】
(サラウンド出力能力の判定)
図36のステップS181において、ダウンサンプリングやダウンミックスしなければ出力できない場合、サラウンド出力能力を“無し”としてもよい。
(LPCMにおけるデコード能力)
S/PDIFのように、伝送路の帯域の制限上、LPCMをダウンサンプリングやダウンミックスする必要が可能性としてある場合、再生装置300はLPCMのデコード能力とともにダウンサンプリング・ダウンミックスなどの能力を備えていてはじめて、LPCMのデコード能力ありと判定することが望ましい。
【0210】
(スピーカ構成)
第1実施形態では、ステレオとサラウンドを区別することにしたが、将来において、より細かなスピーカ構成を表現する必要がある場合は、ステレオとサラウンドを区別するだけではなく、出力できるチャンネル数を表したり、スピーカー配置のパターンを列挙してそれぞれのパターンを表してもよい。また、オーディオストリームに頭部伝達関数などの係数を作用させることにより、仮想的に音場を定位させ、たとえスピーカーが2つしかなくてもサラウンドに聞かせる技術を利用する場合、スピーカーが2つであってもシステムパラメータにはサラウンドと設定しておいてもよい。
【0211】
(STN_table)
本実施形態ではSTN_tableに登録されているストリームが必ず存在することを前提としている。そのためPlayItem情報が参照するストリームの存在をチェックするステップは存在しない。BD-ROMとローカルストレージ200とを組み合せたバーチャルファイルシステムを構築する場合、PlayItemはストリームを参照しているが、実際にはそのストリームはダウロードされていない、または、存在しない場合があり得る。そのため、STN_tableなどから参照するストリームが実際にBD-ROM、あるいは、ローカルストレージ200に存在することを確認するステップを条件(a)と同等の優先順位で設定してもよい。このような方法をとると、存在しないストリームを誤って選択してしまう危険性が無くなる。
【0212】
(制御手順の実現)
各実施形態においてフローチャートを引用して説明した制御手順や、機能的な構成要素による制御手順は、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されていることから、自然法則を利用した技術的思想の創作といえ、“プログラムの発明”としての成立要件を満たす。
【0213】
・本発明に係るプログラムの生産形態
本発明に係るプログラムは、コンピュータが実行することができる実行形式のプログラム(オブジェクトプログラム)であり、各実施形態に示したフローチャートの各ステップや、機能的構成要素の個々の手順を、コンピュータに実行させるような1つ以上のプログラムコードから構成される。ここでプログラムコードは、プロセッサのネィティブコード、JAVA(登録商標)バイトコードというように、様々な種類がある。またプログラムコードによる各ステップの実現には、様々な態様がある。外部関数を利用して、各ステップを実現することができる場合、この外部関数をコールするコール文が、プログラムコードになる。また、1つのステップを実現するようなプログラムコードが、別々のオブジェクトプログラムに帰属することもある。命令種が制限されているRISCプロセッサでは、算術演算命令や論理演算命令、分岐命令等を組合せることで、フローチャートの各ステップが実現されることもある。
【0214】
本発明にかかるプログラムは、以下のようにして作ることができる。先ず初めに、ソフトウェア開発者は、プログラミング言語を用いて、各フローチャートや、機能的な構成要素を実現するようなソースプログラムを記述する。この記述にあたって、ソフトウェア開発者は、プログラミング言語の構文に従い、クラス構造体や変数、配列変数、外部関数のコールを用いて、各フローチャートや、機能的な構成要素を具現するソースプログラムを記述する。
【0215】
記述されたソースプログラムは、ファイルとしてコンパイラに与えられる。コンパイラは、これらのソースプログラムを翻訳してオブジェクトプログラムを生成する。
コンパイラによる翻訳は、構文解析、最適化、資源割付、コード生成といった過程からなる。構文解析では、ソースプログラムの字句解析、構文解析および意味解析を行い、ソースプログラムを中間プログラムに変換する。最適化では、中間プログラムに対して、基本ブロック化、制御フロー解析、データフロー解析という作業を行う。資源割付では、ターゲットとなるプロセッサの命令セットへの適合を図るため、中間プログラム中の変数をターゲットとなるプロセッサのプロセッサが有しているレジスタまたはメモリに割り付ける。コード生成では、中間プログラム内の各中間命令を、プログラムコードに変換し、オブジェクトプログラムを得る。
【0216】
オブジェクトプログラムが生成されるとプログラマはこれらに対してリンカを起動する。リンカはこれらのオブジェクトプログラムや、関連するライブラリプログラムをメモリ空間に割り当て、これらを1つに結合して、ロードモジュールを生成する。こうして生成されるロードモジュールは、コンピュータによる読み取りを前提にしたものであり、各フローチャートに示した処理手順や機能的な構成要素の処理手順を、コンピュータに実行させるものである。以上の処理を経て、本発明に係るプログラムを作ることができる。
【0217】
・本発明に係るプログラムの使用形態
本発明に係るプログラムは、以下のようにして使用することができる。
(i)組込プログラムとしての使用
本発明に係るプログラムを組込プログラムとして使用する場合、プログラムにあたるロードモジュールを、基本入出力プログラム(BIOS)や、様々なミドルウェア(オペレーションシステム)と共に、命令ROMに書き込む。こうした命令ROMを、制御部に組み込み、CPUに実行させることにより、本発明に係るプログラムを、再生装置300の制御プログラムとして使用することができる。
【0218】
(ii)アプリケーションとしての使用
再生装置300が、ハードディスク内蔵モデルである場合は、基本入出力プログラム(BIOS)が命令ROMに組み込まれており、様々なミドルウェア(オペレーションシステム)が、ハードディスクにプレインストールされている。また、ハードディスクから、システムを起動するためのブートROMが、再生装置300に設けられている。
【0219】
この場合、ロードモジュールのみを、過搬型の記録媒体やネットワークを通じて、再生装置300に供給し、1つのアプリケーションとしてハードディスクにインストールする。そうすると、再生装置300は、ブートROMによるブートストラップを行い、オペレーションシステムを起動した上で、1つのアプリケーションとして、当該アプリケーションをCPUに実行させ、本発明に係るプログラムを使用する。
【0220】
ハードディスクモデルの再生装置300では、本発明のプログラムを1つのアプリケーションとして使用しうるので、本発明に係るプログラムを単体で譲渡したり、貸与したり、ネットワークを通じて供給することができる。
(コントローラ22)
各実施形態に示したコントローラ22は、一個のシステムLSIとして実現することができる。
【0221】
システムLSIとは、高密度基板上にベアチップを実装し、パッケージングしたものをいう。複数個のベアチップを高密度基板上に実装し、パッケージングすることにより、あたかも1つのLSIのような外形構造を複数個のベアチップに持たせたものも、システムLSIに含まれる(このようなシステムLSIは、マルチチップモジュールと呼ばれる。)。
ここでパッケージの種別に着目するとシステムLSIには、QFP(クッド フラッド アレイ)、PGA(ピン グリッド アレイ)という種別がある。QFPは、パッケージの四側面にピンが取り付けられたシステムLSIである。PGAは、底面全体に、多くのピンが取り付けられたシステムLSIである。
【0222】
これらのピンは、他の回路とのインターフェイスとしての役割を担っている。システムLSIにおけるピンには、こうしたインターフェイスの役割が存在するので、システムLSIにおけるこれらのピンに、他の回路を接続することにより、システムLSIは、再生装置300の中核としての役割を果たす。
システムLSIにパッケージングされるベアチップは、“フロントエンド部”、“バックエンド部”、“デジタル処理部”からなる。“フロントエンド部”は、アナログ信号を、デジタル化する部分であり、“バックエンド部”はデジタル処理の結果、得られたデータを、アナログ化して出力する部分である。
【0223】
各実施形態において内部構成図として示した各構成要素は、このデジタル処理部内に実装される。
先に“組込プログラムとしての使用”で述べたように、命令ROMには、プログラムにあたるロードモジュールや、基本入出力プログラム(BIOS)、様々なミドルウェア(オペレーションシステム)が書き込まれる。本実施形態において、特に創作したのは、このプログラムにあたるロードモジュールの部分なので、プログラムにあたるロードモジュールを格納した命令ROMを、ベアチップとしてパッケージングすることにより、本発明に係るシステムLSIは生産することができる。
【0224】
具体的な実装については、SoC実装やSiP実装を用いることができ望ましい。SoC(System on chip)実装とは、1チップ上に複数の回路を焼き付ける技術である。SiP(Systemin Package)実装とは、複数チップを樹脂等で1パッケージにする技術である。以上の過程を経て、本発明に係るシステムLSIは、各実施形態に示した再生装置300の内部構成図を基に作ることができる。
【0225】
尚、上述のようにして生成される集積回路は、集積度の違いにより、IC、LSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
さらに、各記録読出装置の構成要素の一部又は全てを1つのチップとして構成してもよい。集積回路化は、上述したSoC実装,SiP実装に限るものではなく、専用回路又は汎用プロセスで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(FieldProgrammable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なシリコンフィギュラブル・プロセッサを利用することが考えられる。更には、半導体技術の進歩又は派生する技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積回路化を行っても良い。例えば、バイオ技術の適応などが可能性としてありうる。
【産業上の利用可能性】
【0226】
本発明に係る再生装置は、上記実施形態に内部構成が開示されており、この内部構成に基づき量産することが明らかなので、資質において工業上利用することができる。このことから本発明に係る再生装置は、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0227】
【図1】本発明に係る再生装置の、使用行為についての形態を示す図である。
【図2】BD-ROMの内部構成を示す図である。
【図3】拡張子.m2tsが付与されたファイルがどのように構成されているかを模式的に示す図である。
【図4】AVClipを構成するTSパケットがどのような過程を経てBD-ROMに書き込まれるかを示す。
【図5】BD-ROMの物理単位と、1つのファイルエクステントを構成するSourceパケットとの対応関係を示す図である。
【図6】オーディオストリームの拡張フォーマットを示す図である。
【図7】DTS-HD、DD/DD+やDD/MLPといったオーディオストリームのオーディオフレームの構造を示す図である。
【図8】Clip情報の内部構成を示す図である。
【図9】映画のビデオストリームに対するEP_map設定を示す図である。
【図10】PlayList情報のデータ構造を示す図である。
【図11】AVClipと、PlayList情報との関係を示す図である。
【図12】STN_tableの内部構成を示す図である。
【図13】(a)ビデオストリームに対応したStream_attributeを示す図である。 (b)Primaryオーディオストリームに対応したStream_attributeを示す図である。 (c)Stream_entryを示す図である。
【図14】本発明に係る再生装置の内部構成を示す図である。
【図15】コントローラ22を機能的に表現した図である。
【図16】(a)PSR1の設定値が取り得る状態遷移を示す図である。 (b)PSR1のProcedure when playback condition is changedの処理手順を示す図である。
【図17】ステップS5の詳細な処理手順に示したフローチャートである。
【図18】ストリーム変化時におけるPSR1の設定手順を示すフローチャートである。
【図19】(a)〜(c)Procedure when playback condition is changedによるオーディオストリーム選択の具体例を示す図である。
【図20】パラメータ1〜パラメータ3が、どのように定まるかを模式的に示す図である。
【図21】(a)(b)再生装置300、AVアンプ500間の伝送路における規格上の制限が、どのような弊害をもたらすかを示す図である。
【図22】現在ディジタルAV再生装置300の出力方法として広く使われている、アナログ出力、S/PDIF、HDMIについて、BD-ROMで使われているLPCM、DTS-HD、AC-3、DD/DD+、DD/MLPが出力可能かどうかを表形式で示した図である。
【図23】(a)LPCMに対するパラメータを示す図である。 (b)パラメータ1〜パラメータ3と、その規定内容とを表形式で表す図である。
【図24】(a)DTS-HDにするパラメータを示す図である。 (b)パラメータ1〜パラメータ3と、その規定内容とを表形式で表す図である。
【図25】(a)DD/DD+に対するパラメータを示す図である。 (b)パラメータ1〜パラメータ3と、その規定内容とを表形式で表す図である。
【図26】(a)DD/MLPにおけるパラメータを示す図である。 (b)パラメータ1〜パラメータ3と、その規定内容とを表形式で表す図である。
【図27】(a) DD+,DD/MLPにおけるパラメータを示す図である。 (b)パラメータ1a,b〜パラメータ3と、その規定内容とを表形式で表す図である。
【図28】LPCMにおけるパラメータ1〜パラメータ3が、どのように定まるかを模式的に示す図である。
【図29】(a)条件(a)を判定するために参照する再生能力(パラメータ1)と、条件(c)を判定するために参照するサラウンド出力能力(パラメータ2)とを示す図である。 (b)伝送路能力と、スピーカ構成との組合せにより、パラメータ2がどのように規定されるかを示す図である。
【図30】LPCMにおけるパラメータ1〜パラメータ2の、別の設定の仕方を模式的に示す図である
【図31】(a)条件(a)を判定するために参照する再生能力(パラメータ1)と、条件(c)を判定するために参照するサラウンド出力能力(パラメータ2)とから、LPCMに対するcapabilityを規定する一例を示す。 (b)デコード能力と、伝送路能力との組合せにより、パラメータ1がどのように規定されるかを示す。
【図32】DTS/DTS-HD,DD/DD+,DD/MLPにおけるパラメータ1〜パラメータ2をどのように定めるかを模式的に示す図である。
【図33】(a)再生能力を表すパラメータ1が、デコード能力と伝送路能力との関係から決まることを示す図である。 (b)パラメータ1がどのように規定されるかを示す図である。
【図34】(a)条件(a)を判定するために参照する再生能力(パラメータ1)と、条件(c)を判定するために参照するサラウンド出力能力(パラメータ2)から、DD(AC-3)およびDD/DD+に対するcapabilityを規定する一例を示す。 (b)パラメータ1がどのように規定されるかを示す。
【図35】(a)再生能力を表すパラメータ1は、デコード能力と伝送路能力の関係から決まることを示す図である。 (b)パラメータ1がどのように規定されるかを示す図である。
【図36】LPCMの再生能力が存在するか否かの判定のための処理手順を示すフローチャートである。
【図37】LPCMオーディオストリームのサラウンド出力能力が再生装置に存在するか否かの判定手順を示すフローチャートである。
【図38】DTSおよびDD(AC-3)のサラウンド出力能力が再生装置に存在するか否かの判定手順を示すフローチャートである。
【図39】DTS-HDのサラウンド出力能力が再生装置に存在するか否かの判定手順を示すフローチャートである。
【図40】DD/DD+のサラウンド出力能力が再生装置に存在するか否かの判定手順を示すフローチャートである。
【図41】DD/MLPのサラウンド出力能力が再生装置に存在するか否かの判定手順を示すフローチャートである。
【図42】第3実施形態におけるDTS-HD、DD/DD+、DD/MLPの基本データ、拡張データ毎のCapabilityが、どのように定まるかを模式的に示す図である。
【図43】PSRセット23におけるPSR15の内部構成を示す図である。
【図44】DTS-HDのサラウンド出力能力が再生装置に存在するか否かの判定手順を示すフローチャートである
【図45】DD/DD+のサラウンド出力能力が再生装置に存在するか否かの判定手順を示すフローチャートである
【図46】DD/MLPのサラウンド出力能力が再生装置に存在するか否かの判定手順を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生装置であって、再生すべき複数オーディオストリームのそれぞれが、複数の条件のうち、どれを満たすかを判定して、満たすと判定された条件の組合せに応じてオーディオストリームを選ぶ選択手段と、選択されたオーディオストリームを再生する再生手段とを備え、
前記複数の条件のうち所定の1つは、オーディオストリームのチャネル属性がサラウンドになっていて、尚且つ、オーディオストリームのサラウンド出力を処理できることであり、
オーディオストリームのオーディオフレームは、基本データと、拡張データとから構成され、
拡張データのサラウンド出力を、処理できるかどうかの判定は、
拡張データをデコードする能力が、当該再生装置に存在するか否か、又は、当該再生装置に接続されている機器に存在するか否かを判定する判定処理を含む
ことを特徴とする再生装置。
【請求項2】
拡張データのサラウンド出力を、処理できるかどうかの判定は、
圧縮状態にある拡張データ、又は、拡張データをデコードすることで得られた非圧縮のデジタルデータを、接続相手の機器に伝送することができるか否かの判定を含む
ことを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項3】
拡張データのサラウンド出力を、処理できるかどうかの判定は、
接続相手の機器におけるスピーカが、サラウンド音声に対応しているか否かの判定を含む
ことを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項4】
前記再生装置は、セッティングレジスタを備え、
前記セッティングレジスタは、複数の符号化方式の基本データに対応した第1のフラグ群と、複数の符号化方式の拡張データに対応した第2のフラグ群とを含み、
第1のフラグ群は、基本データのサラウンド出力を処理できるか否かを符号化方式毎に示す複数のフラグによって構成されており、
第2のフラグ群は、拡張データのサラウンド出力を処理できるか否かを符号化方式毎に示す複数のフラグによって構成されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の再生装置
【請求項5】
オーディオストリームの符号化方式には、DD/DD+、DTS-HD、DD/MLPがあり、
DD/DD+の基本データは、インデペンドサブストリームであり、DD/DD+の拡張データは、デペンドサブストリームであり、
DTS-HDの基本データは、コアサブストリームであり、DTS-HDの拡張データは、エクステンションサブストリームであり、
DD/MLPの基本データは、DD(AC-3)データであり、DD/MLPの拡張データは、MLPオーディオである
ことを特徴とする請求項4記載の再生装置
【請求項6】
拡張データの出力能力には、
拡張データをデコードして、サラウンド音声として出力することができる第1のレベル、
拡張データをデコードして、ステレオ音声として出力することができる第2のレベル、
ステレオ音声としての出力も不可能な第3のレベルがあり、
拡張データのサラウンド出力を処理できるか否かの判定は、第2フラグ群における複数のフラグのうち、拡張データを含むオーディオストリームの符号化方式に対応するものの設定値が第1のレベルを示す値になっているかどうかをチェックする処理を含む、ことを特徴とする請求項5記載の再生装置
ことを特徴とする請求項記載の再生装置。
【請求項7】
プログラムであって、
再生すべき複数オーディオストリームのそれぞれが、複数の条件のうち、どれを満たすかを判定して、満たすと判定された条件の組合せに応じてオーディオストリームを選ぶ選択ステップと、
選択されたオーディオストリームを再生する再生ステップとをコンピュータに実行させ、
前記複数の条件のうち所定の1つは、オーディオストリームのチャネル属性がサラウンドになっていて、尚且つ、オーディオストリームのサラウンド出力を処理できることであり、
オーディオストリームのオーディオフレームは、基本データと、拡張データとから構成され、
拡張データのサラウンド出力を、処理できるかどうかの判定は、
拡張データをデコードする能力が、当該再生装置に存在するか否か、又は、当該再生装置に接続されている機器に存在するか否かを判定する判定処理を含む
ことを特徴とするプログラム。
【請求項8】
再生方法であって、
再生すべき複数オーディオストリームのそれぞれが、複数の条件のうち、どれを満たすかを判定して、満たすと判定された条件の組合せに応じてオーディオストリームを選ぶ選択ステップと、
選択されたオーディオストリームを再生する再生ステップとを有し、
前記複数の条件のうち所定の1つは、オーディオストリームのチャネル属性がサラウンドになっていて、尚且つ、オーディオストリームのサラウンド出力を処理できることであり、
オーディオストリームのオーディオフレームは、基本データと、拡張データとから構成され、
拡張データのサラウンド出力を、処理できるかどうかの判定は、
拡張データをデコードする能力が、当該再生装置に存在するか否か、又は、当該再生装置に接続されている機器に存在するか否かを判定する判定処理を含む
ことを特徴とする再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【公開番号】特開2009−163868(P2009−163868A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39533(P2009−39533)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【分割の表示】特願2006−523044(P2006−523044)の分割
【原出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】