説明

再生装置と再生装置の供給方法

【課題】ハードディスクドライブの動作立上がりとバッテリの長寿命を同時に可能とする再生装置と再生装置の供給方法を提供する。
【解決手段】 磁気ディスクCに情報を記録する記録部と、磁気ディスクを回転させるモータと、記録領域に情報を記録する不揮発性メモリBと、情報を画面表示する表示部と、情報を受けて再生処理を行なう再生部と、操作部からの操作信号を受けてから所定時間はモータの速度を段階的に増加し、不揮発性メモリが格納している情報を表示部又は再生部に供給し、所定時間を経過した後はモータの速度を一定速度で回転させるべく制御する制御部をもつ再生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハードディスクドライブ等を用いた再生装置と再生装置における情報の供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、デジタル技術の発達に伴い、音楽ソースをデジタルファイルで管理して再生する再生装置が開発され普及している。このような携帯型のハードディスクドライブ(hard disc driver:HDD)内蔵の再生装置は、内蔵電池を使用して再生しているため、端末の電池の容量によって動作時間が決まってくる。
【0003】
HDDを使用した音楽プレーヤにおいては端末内のメモリに必要なデータを蓄積し、データ転送時のときだけHDDの電源を入れることで、端末動作時間を延ばすようなシステムとなっている。しかし、電池使用範囲の閾値を電池使用可能範囲より高めに設定しておかないと、データ転送するためにHDDの電源を入れたとき、立ち上げ時に急激な電流増加による電圧低下が発生し、端末の電源が落ちてしまう。
【0004】
特許文献1は、磁気ディスク再生装置であって、起動時の供給電流を抑制することで、全体として効率のよいモータ駆動を可能にする再生装置が開示されている。
【特許文献1】特開平05−282770号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の従来技術は、起動時の供給電流を適宜抑制するため、電源スイッチを投入した直後等は磁気ディスクが直ぐには使用できないため、磁気ディスクからの音楽データやディスプレイ用の画像データが直ぐには供給できない。従って、電源スイッチをオンにしてもすぐ音楽が再生できなかったり、操作ディスプレイの画像が直ちに表示されず、数秒の待ち時間が発生する等の問題がある。
【0006】
本発明は、ハードディスクドライブの動作立上がりとバッテリの長寿命を同時に可能とする再生装置と再生装置の供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る課題を解決するための手段の一実施形態として、
磁気ディスク(C:20)に情報を記録する記録部(20,21,22)と、
前記磁気ディスクを回転させるモータ(21)と、
記録領域に情報を記録する不揮発性メモリ(B:19)と、
前記情報を画面表示する表示部(11)と、
前記情報を受けて再生処理を行なう再生部(25)と、
操作部(13)からの操作信号を受けてから所定時間(T1)は前記モータ(21)の速度を段階的に増加し、前記不揮発性メモリが格納している情報を前記表示部又は再生部に供給し、前記所定時間を経過した後は前記モータの速度を一定速度で回転させるべく制御する制御部(13,24)と、を具備することを特徴とする再生装置。
【発明の効果】
【0008】
ハードディスクドライブ等をもった再生装置において、ハードディスクの動作立上がりとバッテリの長寿命を同時に可能とする再生装置と再生装置の供給方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
<本発明の一実施形態である再生装置>
(構成)
初めに、本発明の一実施形態である再生装置の構成及び動作を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る再生装置の構成の一例を示すブロック図、図2は、本発明の一実施形態に係る再生装置の外観の一例を示す外観図である。本発明の一実施形態である再生装置の一例は、図1に示すように、音声ファイル(更に動画ファイル等)を復号して再生することができるHDDプレーヤ1であって、主にHDD(hard disc driver)部16と、端末ホスト部14で構成されている。
【0011】
すなわち、再生装置1は、図1及び図2に示すように、液晶ディスプレイ等により操作画面や曲情報を表示するための表示部11と、全体の動作を制御する制御部12と、図示しない電源スイッチや各種操作スイッチ、選曲のためのジョグダイヤル等をもつ操作部13と、端末ホスト14に含まれMPEGデコーダ等を用いてMP3ファイル等の音声ファイル等を再生する再生部25と、端末ホスト14に含まれ音声ファイルや動画ファイル、画像情報、各種管理情報等を格納する揮発性メモリ15とを有している。更に、再生装置1は、磁気ディスクをドライブするHDD16と、拡張処理等を行なうHDD用ワークメモリ17と、HDDの検索制御等を行なうHDD用コントローラ18と、HDDメディア20からの音声ファイル、動画ファイル等を格納する大容量不揮発性メモリ19と、各種デジタルデータを格納する磁気ディスクであるHDDメディア20と、磁気ディスクを所定速度で回転させるHDDモータ21と、HDDモータ21を駆動させる駆動電流を供給するHDDモータドライバ22と、少なくともHDD部16に電源電位を供給するバッテリ部23と、特にバッテリ部23からの電源電位をHDD部16に供給するためのスイッチ部24を有している。
【0012】
(基本動作)
上述した再生装置1は、以下に示すような基本動作によって音声ファイル等を再生する。すなわち、ユーザの操作部13の電源スイッチ及び選曲や再生の操作に応じて、制御部12の制御下の元、現在の管理情報が指定するアドレスに応じて、HDD部16に含まれるHDDメディア20が格納する(一例として)MP3ファイル等の音声ファイルや画像情報を内蔵揮発性メモリ15等に転送する。
【0013】
すなわち、一例として、HDD部16から端末ホストの揮発性メモリ15等へデータ転送する際に、揮発性メモリ15にデータ転送し、転送完了したときにHDDの電源を停止するための停止コマンドと次にHDDを起動したときに必要なデータとを、制御部12からHDD部16内のHDD用コントローラ18に通知する。
【0014】
その通知を受けたHDD側のコントローラ18は次の転送に必要なデータを内部にある不揮発性メモリ19に転送し、転送終了後にHDDメディアCを停止状態へと移行させる。更に、スイッチ24を用いて端末ホスト14からHDD部16の電源供給を一時停止する。
【0015】
更に、制御部12は、揮発性メモリ15等に格納した音声情報(動画情報、静止画情報等)を取り出して拡張処理を行い、再生部25によりMPEGデコーダ機能等を用いて復調処理を行なって再生した音声信号を図示しない外部端子に出力する。
【0016】
更に、制御部12は、ユーザの操作部13による再生操作に応じた操作信号に従って、揮発性メモリ15等のデータがなくなる前にHDD部16の電源を再び投入し、HDD部16にデータ転送の要求を行なって、以降のデータ転送処理及び再生処理を続行する。
【0017】
<HDD起動時に電圧低下を回避するデータ読取処理>
・図5のフローチャートによるデータ読取処理
次に、上述した再生装置においてHDD起動時に電圧低下を回避したデータ読取処理の一例をフローチャートを用いて詳細に説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る再生装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。図4は、段階的な速度制御を行なわない場合の再生装置の電圧値、電流値の変化の一例を示すグラフである。図5及び図6は、本発明の一実施形態に係る再生装置のデータ読取処理の一例を示すフローチャートである。
【0018】
なお、以下の図5及び図6のフローチャートの各ステップは、回路ブロックに置き換えることができ、従って、各フローチャートのステップは、全てブロックに定義しなおすことが可能である。
【0019】
初めに、再生装置1において、制御部12の制御下において、ユーザの操作部13の図示しない電源スイッチがオンされたか又はデータ転送が必要かどうかが検出される(ステップS11)。すなわち、電源スイッチのオンだけではなく、上述したように必要なデータ転送後、HDDメディア20が停止していたが、ユーザが再生スイッチを押下したか、揮発性メモリ15に格納した音声ファイルが不足した場合により、データ転送が必要となったかどうかが判断される。
【0020】
制御部12は、電源スイッチのオン、又は、揮発性メモリ15に格納した音声ファイルの不足等によるデータ転送の必要を検出して、図3に示すように、所定時間T1の間は、ドライバ22の駆動電流を調節することでモータ21への駆動電流を段階的に上昇させる(ステップS12)。
【0021】
これにより、図4に示すような時刻tαでの急激な消費電流Iの増加に基づく電源電圧Vの低下を回避するものである。なお、図4の場合は、電源電圧Vの急激な低下により電圧閾値値Vαを越えて電源電圧が低下してしまったために、バッテリ部23は消耗されたと判断されて動作停止してしまう。
【0022】
本発明の一実施形態であるHDD起動時に電圧低下を回避するデータ読取処理は、このような不具合を回避するもので、制御部12の働きによりモータ21への駆動電流を段階的に上昇させることで、急激なバッテリ部23の電源電圧の低下を回避してハードディスクドライブの動作立上がりとバッテリの長寿命を同時に可能としている。
【0023】
次に、制御部12の制御により、期間T1の間は、不揮発性メモリB19から揮発性メモリA15へのデータ(音声ファイル、動画ファイル、静止画情報、管理情報等)の転送処理が行なわれる(ステップS14)。そして、制御部12の制御下において、揮発性メモリA15のデータを拡張処理し、表示部11や再生部25へデータ(音声ファイル、動画ファイル、静止画情報、管理情報等)が供給される(ステップS15)。
【0024】
これにより、例えば、表示部11では、電源投入直後でHDDメディア20が十分な回転速度で回転していない場合でも、不揮発性メモリB19から供給された静止画情報等により直ちにメニュー画面等を表示することができる。
【0025】
更に、ステップS13において、所定時間Tが経過すると、HDDメディア20から各データが供給することができるようになる。これにより、制御部12の制御下において、HDDメディア20から揮発性メモリA15へデータを供給する(ステップS16)。更に、揮発性メモリA15のデータを拡張して、表示部11及び又は再生部25へ供給する(ステップS17)。その後、必要に応じて、HDDメディア20から、不揮発性メモリB19へデータを供給する(ステップS18)。その後、HDD部16は、設定時間の経過等の条件に応じて電源がオフされる(ステップS19)。
【0026】
なお、図5及び次の図6のフローチャートは常時反復されるサブルーティンであり、HDDメディア20の起動が必要であるかどうかが制御部12により監視されて動作する。
【0027】
このように、HDDメディアC20の回転速度を段階的に上げることで、HDD起動時の急激な電源電圧低下を回避し、ハードディスクドライブの動作立上がりとバッテリの長寿命を同時に可能とする再生装置を実現するものである。
【0028】
・図6のフローチャートによるデータ読取処理
更に、上記のデータ読取処理は、常時行なうのではなく、バッテリ部23の電源電位が所定値以下である場合に限り行なうことも好適である。図6のフローチャートと図5のフローチャートと共通している処理はその説明を省略し、異なる部分のみを以下に説明する。
【0029】
すなわち、ステップS21において、バッテリ部23の電源電位が所定値以下である場合に限り、ステップS12以降の処理を行なうこととする。ステップS21において、バッテリ部23の電源電位が十分な値を持っていれば、HDDメディアC20の回転速度を直ちに100%の値となるべく、100%の駆動電流をドライバ22からモータ21に供給する(ステップS22)。その後、ステップS16以降の処理を行なうことで、HDDメディアから必要なデータを、揮発性メモリA15等を経由して表示部11や再生部25に供給することができる。これにより、バッテリ部23の電源電位が十分な値の場合は、不揮発性メモリB19に必要なデータが格納されていない場合でも、確実な表示処理や再生処理が可能となるものである。
【0030】
以上記載した様々な実施形態により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る再生装置の構成の一例を示すブロック図。
【図2】本発明の一実施形態に係る再生装置の外観の一例を示す外観図。
【図3】本発明の一実施形態に係る再生装置の動作の一例を示すタイミングチャート。
【図4】段階的な速度制御を行なわない場合の再生装置の電圧値、電流値の変化の一例を示すグラフ。
【図5】本発明の一実施形態に係る再生装置のデータ読取処理の一例を示すフローチャート。
【図6】本発明の一実施形態に係る再生装置のデータ読取処理の一例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0032】
1…HDDプレーヤ、11…表示部、12…制御部、13…操作部、14…端末ホスト、15…内蔵揮発性メモリ、16…HDD、17…HDD用ワークメモリ、18…HDD用コントローラ、19…大容量不揮発性メモリ、20…HDDメディア、21…HDDモータ、22…HDDモータドライバ、23…バッテリ部、24…スイッチ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスクに情報を記録する記録部と、
前記磁気ディスクを回転させるモータと、
記録領域に情報を記録する不揮発性メモリと、
前記情報を画面表示する表示部と、
前記情報を受けて再生処理を行なう再生部と、
操作部からの操作信号を受けてから所定時間は前記モータの速度を段階的に増加し、前記不揮発性メモリが格納している情報を前記表示部又は再生部に供給し、前記所定時間を経過した後は前記モータの速度を一定速度で回転させるべく制御する制御部と、
を具備することを特徴とする再生装置。
【請求項2】
揮発性メモリを更に有しており、前記不揮発性メモリに格納された情報を前記揮発性メモリに複写し更に前記揮発性メモリから前記再生部に供給するべく、前記制御部で制御することを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記モータに電源電圧を供給する電源部の電源電位が所定以下であるときだけ、前記操作部からの操作信号を受けてから所定時間は前記モータの速度を段階的に増加することを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項4】
磁気ディスクに情報を記録する記録部と、前記磁気ディスクを回転させるモータと、記録領域に情報を記録する不揮発性メモリと、前記情報を画面表示する表示部と、前記情報を受けて再生処理を行なう再生部を具備する再生装置の供給方法であって、
操作部からの操作信号を受けてから所定時間は前記モータの速度を段階的に増加し、前記不揮発性メモリが格納している情報を前記表示部又は再生部に供給し、前記所定時間を経過した後は前記モータの速度を一定速度で回転させるべく制御することを特徴とする再生装置の供給方法。
【請求項5】
揮発性メモリを用いて、前記不揮発性メモリに格納された情報を前記揮発性メモリに複写し更に前記揮発性メモリから前記再生部に供給することを特徴とする請求項4記載の再生装置の供給方法。
【請求項6】
前記モータに電源電圧を供給する電源部の電源電位が所定以下であるときだけ、前記操作部からの操作信号を受けてから所定時間は前記モータの速度を段階的に増加することを特徴とする請求項4記載の再生装置の供給方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−108302(P2008−108302A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287970(P2006−287970)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】