説明

冠雪防止装置

【課題】カバー体への冠雪を安定して防止する冠雪防止装置を提供する。
【解決手段】対象(11)を覆うカバー体(21)と、カバー体(21)に取り付けられたヒーター(22)と、カバー体(21)に取り付けられると共にヒーター(22)に電力を供給する太陽電池パネル(23A、23B、23E、23F)を有し、太陽電池パネル(23A、23B、23E、23F)の受光面(23c)は雪面に向いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、積雪地域の鉄道や道路の高架橋、鉄道架線支柱への冠雪を防止する冠雪防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積雪地域における高架橋や鉄道架線支柱に冠雪防止対策が採られている。冠雪防止対策の1つとして、高架橋や鉄道架線支柱の上にカバー体としての四角錘等の形状のコーンが敷設されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、コーンへの着雪は大きな冠雪を発生させる。そして、この冠雪が落下すると、鉄道車両の走行に問題を起こす可能性がある。
【0004】
そこで、本発明の目的は、カバー体への冠雪を安定して防止する冠雪防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、符号を付して本発明の特徴を説明する。なお、符号は参照のためであり、本発明を実施形態に限定するものでない。
【0006】
本発明の特徴に係わる冠雪防止装置(20、20A)は、対象(11)を覆うカバー体(21)と、カバー体(21)に取り付けられたヒーター(22)と、カバー体(21)に取り付けられると共にヒーター(22)に電力を供給する太陽電池パネル(23A、23B、23E、23F)を有し、太陽電池パネル(23A、23B、23E、23F)の受光面(23c)は雪面に向いている。
【0007】
以上の特徴にあって、太陽電池パネル(23A、23B)はカバー体(21)によって覆われる。
【0008】
太陽電池パネル(23A、23B)はカバー体(21)に回転可能に取り付けられる。
【0009】
前記対象は鉄道架線支柱(11)又は高架橋である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の特徴によれば、降雪中に太陽電池パネルの受光面に着雪しない。降雪後に太陽電池パネルが雪面で反射した太陽光により発電し、ヒーターが発熱する。この熱により、カバー体の表面に水膜を発生させ、カバー体上の着雪を速やかに落とし、また、冠雪除去の作業を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係わる鉄道架線装置を示す概要図である。
【図2】図1に示す冠雪防止装置を示す斜視図である。
【図3】第2の実施形態に係わる冠雪防止装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の実施形態
以下、図面を参照して実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、鉄道架線装置1は、地面から地上へ延びる鉄道架線支柱11と、鉄道架線支柱11に支持された架線12と、鉄道架線支柱11の頂端11aに取り付けられた冠雪防止装置20を有する。
【0014】
架線12は、吊架線12aと、吊架線12aに吊り下げられたトロリ線12bと、吊架線12aとトロリ線とを接続するハンガー12cと、を有する。
【0015】
図2に示すように、冠雪防止装置20は、カバー体21と、カバー体21に取り付けられたヒーター22と、カバー体21の下端に取り付けられた太陽電池パネル群23を有する。
【0016】
図2に示すように、四角錘のカバー体21は、頂点21vから4方向に延びる三角形の側面部21a、21b、21c、21dを有する。
【0017】
ヒーター22は、側面部21a、21b、21c、21dにそれぞれ取り付けられた発熱体22A、22B、22C、22Dを有する。発熱体22A−22Dは、例えば、鉄−クロム−アルミ系、ニッケルークロム系の金属発熱体等の抵抗発熱体を用いる。ヒーター22は、抵抗加熱の他、誘電加熱、マイクロ波加熱、誘導加熱を利用してもよい。
【0018】
太陽電池パネル群23は、例えば、2枚の太陽電池パネル23A、23Bを有する。各太陽電池パネル23A、23Bは、受光面23cに、例えば、シリコン系多結晶、シリコン系単結晶、薄膜シリコン系、化合物系の複数の太陽電池23dを有する。太陽電池パネル23A、23Bは、それぞれ、側面部21a、21bの底辺に取り付けられる。太陽電池パネル23A、23Bは、側面部21a、21bに対してカバー体21の内側へ傾け、カバー体21によって覆われる。太陽電池パネル23A、23Bの各受光面23cは雪面からの反射した太陽光を受けるために雪面に向くように下向きに設定される。太陽電池パネル23A、23Bは、雪面に対して適切な角度を設定するために、ヒンジを用いてカバー体21に対して回転可能である。
【0019】
次に、図1、2を用いて冠雪防止装置20の使用方法を説明する。
【0020】
図1に示すように、先ず、鉄道架線支柱11の頂端11aを覆うように鉄道架線支柱11にカバー体21を取り付ける。太陽電池パネル23A、23Bの姿勢を調整する。すなわち、太陽電池パネル23A、23Bの各受光面23cが雪面へ向くように下向きに設定する。
【0021】
鉄道架線装置1の周辺に雪が降り、地面G1に雪が積もる。このとき、カバー体21上に雪が積もり、カバー体21は鉄道架線支柱11の頂端11aに対する積雪を防止する。ここで、太陽電池パネル23A、23Bはカバー体21によって覆われ、下向きに設定されているので、太陽電池パネル23A、23Bの受光面23cに対する着雪は防止される。
【0022】
天候が「雪」から「晴れ」に変化すると、太陽光L1が雪面S1に反射され、反射した太陽光L2は冠雪防止装置20へ進行する。太陽光L2は各太陽電池パネル23A、23Bの受光面23cに当たり、各太陽電池23dは発電する。このとき、新雪のアルベド(太陽光の反射率)は95%を超えるため、融雪に必要な発電量が得られる。
【0023】
発生した電力はヒーター22の発熱体22A−22Dへ供給される。発熱体22A−22Dは熱を発生し、カバー体21の表面を温めてカバー体21と着雪の間に界面に水膜を発生させる。これにより、カバー体21に着雪量が大きくならないうちに、落雪させることができる。
【0024】
以上の冠雪防止装置20によれば、太陽電池パネル23A、23Bの受光面23cに着雪せず、太陽電池23dの機能を阻害しない。これにより、天候回復後、太陽電池パネル23A、23Bは、雪面から反射した太陽光L2によって発電し、ヒーター22でカバー体21上の着雪を落下させることができる。したがって、降雪後に、カバー体21上の着雪を速やかに落とすことができ、また、冠雪除去の作業を減らすことができる。
【0025】
第2の実施形態
冠雪防止装置20Aは、側面部21a、21bの底辺からそれぞれ外側へ延びる太陽電池パネル23E、23Fを有する。
【0026】
太陽電池パネル23E、23Fは、下へ向いた受光面23cを有する。太陽電池パネル23E、23Fは、受光面23cに複数の太陽電池23dを有する。
【0027】
この実施形態によれば、太陽電池パネル23E、23Fの受光面23cへの着雪を妨げるので、太陽電池23dは雪面からの反射した太陽光によって電力を発生することができる。
【0028】
なお、本発明は本実施形態に限定されず、また、各実施形態は発明の趣旨を変更しない範囲で変更、修正可能である。なお、冠雪防止装置の設置対象は、鉄道架線支柱のみならず、高架橋でもよい。また、太陽電池は、夜間にバッテリーを用いて発電させてもよい。また、家屋の屋根に設置している通常の太陽電池パネルと組み合わせることにより、冬期間でも降雪による発電量の減少を防止してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 鉄道架線装置
11 鉄道架線支柱
12 架線
20 冠雪防止装置
21 カバー体
22 ヒーター
23 太陽電池パネル群
23c 受光面
23d 太陽電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象を覆うカバー体と、
カバー体に取り付けられたヒーターと、
カバー体に取り付けられると共にヒーターに電力を供給する太陽電池パネルを有し、
太陽電池パネルの受光面は雪面に向いている、
冠雪防止装置。
【請求項2】
太陽電池パネルはカバー体によって覆われる、
請求項1に記載の冠雪防止装置。
【請求項3】
前記太陽電池パネルは前記カバー体に回転可能に取り付けられる、
請求項1又は2に記載の冠雪防止装置。
【請求項4】
前記対象は鉄道架線支柱又は高架橋である、
請求項1乃至3の何れか1つに記載の冠雪防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−44133(P2013−44133A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181895(P2011−181895)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】