説明

冷凍システムの制御装置

【課題】各利用側ユニットの温調判定を的確に行って熱源側ユニットの制御値を的確に調整し、環境条件に応じた冷凍システムの制御をより適切に行う。
【解決手段】コントローラ10は、環境条件別に冷凍機11の制御値を登録する環境条件セルを有するデータベース15と、温調状態の悪化が許容される特定の低温ショーケースを登録する手段を備え、現在の低温ショーケースの温調状態に応じ適した制御値を冷凍機に出力し、該制御値を現在の環境条件に合致する環境条件セルに登録、変更してデータベースを構築すると共に、特定の低温ショーケースの温調状態の判定のみが不良である場合、該低温ショーケースの温調状態の良否に関する判定条件を甘くする方向で変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスーパーマーケットなどに設置される複数台の低温ショーケースや空気調和機の室内ユニットなどの利用側ユニットと各利用側ユニットに冷媒を供給する冷凍機や室外ユニットなどの熱源側ユニットから構成される冷凍システムの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より冷凍・冷蔵ショーケースなどの低温ショーケースは、スーパーマーケットなどの店内に複数台設置され、食品を冷凍若しくは冷蔵しながら陳列販売することに供されている。この場合、各低温ショーケースの蒸発器には店外(機械室など)に設置された冷凍機から冷媒が循環供給されるものであった。この際、店舗によっては低温ショーケースと冷凍機とで異なるメーカーの製品が使用され、冷凍システムの冷媒回路が構成される場合もある。
【0003】
一方、近年では係るスーパーマーケットなどの店舗においても、環境問題への取り組みやエネルギーコストの削減の観点から、冷凍システムにおける消費電力を削減する対策が重視されている。係る消費電力の削減のためには、低温ショーケースや冷凍機そのものの運転効率を改善することも重要であるが、低温ショーケースと冷凍機を含めた冷凍システム全体として各機器の連携の上に消費電力の削減を図ることも可能である。
【0004】
そこで、近年では店内温度、店外温度及び時間帯から成る環境条件別の複数の登録箇所を有するデータベースを設け、冷凍機を停止する低圧側圧力設定値に関する制御データを、環境条件毎に登録箇所に学習保存していくことでデータベースを構築していき、現在の環境条件に合致した登録箇所の制御データとそのときの低温ショーケースの冷却状態の良否判定結果データを参照することにより、制御データをそのまま、或いは、補正して使用する制御装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
係る制御装置によれば、運転環境の推移を予測して、それに迅速に追従したきめ細かい制御が可能となるというものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4183451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、複数台の低温ショーケースが接続されている場合、大半の低温ショーケースの冷却状態が良好であるにもかかわらず、一部の低温ショーケースのみの冷却状態が不良となる場合がある。冷却状態の悪い低温ショーケースとしては、設置施設の出入口付近に設けられる低温ショーケースや、複数台低温ショーケースが並設された際のコーナー部に位置する低温ショーケースがある。これらショーケースは、外乱の影響を大きく受けるため、設定温度にまで到達しない状況となる場合がある。また、これ以外にも、陳列室内への商品の陳列方法によっては、冷気エアーカーテンの吹出口や吸込口が塞がれてしまった場合にも、冷却状態が悪化する。
【0008】
このような低温ショーケースには、予め温度管理を厳密に行う必要性が低い商品、例えば飲料などが陳列されている場合が多く、設定温度に到達しない高めの状態で安定的に推移している場合には、大きな問題とされない。
【0009】
しかしながら、上記従来技術では、係る場合においてまで全ての低温ショーケースの冷却状態が良判定でなければ、冷凍機を停止する低圧側圧力設定値に関する制御データを冷凍機の消費電力を削減する方向に補正することができない。そのため、大半の低温ショーケースの冷却状態が良好であるにもかかわらず、厳密な温度制御が要求されていない一部の冷却状態の判定結果が悪い低温ショーケースがあるために、省エネ運転に移行することができないという問題がある。
【0010】
係る問題は、複数台の室内ユニットと各室内ユニットに冷媒を供給する室外ユニットから構成される空気調和機などの冷凍システムにおいても、同様に生じる。
【0011】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、各利用側ユニットの温調判定をより的確に行って、冷凍システムの熱源側ユニットの制御値を調整することで、環境条件に応じた冷凍システムの制御を適切に行うことができる制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の制御装置は、複数の利用側ユニットと、各利用側ユニットに冷媒を供給する熱源側ユニットとから構成される冷凍システムにおいて、環境条件別に熱源側ユニットの制御値を登録するための環境条件セルを有するデータベースと、温調状態の悪化が許容される特定の利用側ユニットを登録する手段とを備え、現在の各利用側ユニットの温調状態の良否を判定し、全ての利用側ユニットの温調を確保しながら熱源側ユニットの消費電力を削減する方向で制御値を変更し、変更した当該制御値を熱源側ユニットに出力し、且つ、当該制御値を現在の環境条件に合致する環境条件セルに登録し、変更していくことでデータベースを構築すると共に、特定の利用側ユニットの温調状態の判定のみが不良である場合、当該利用側ユニットの温調状態の良否に関する判定条件を甘くする方向で変更することを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、上記発明において、特定の利用側ユニットは、当該利用側ユニットが設置される場所、当該利用側ユニットが使用される目的、当該利用側ユニットの機種に応じて予め登録することを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、上記各発明において、環境条件は、利用側ユニットが設置される屋内温度、熱源側ユニットが設置される屋外温度、及び、時間帯であることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、上記各発明において、熱源側ユニットの制御値は、当該熱源側ユニットの運転を制御するための冷媒回路の低圧側圧力設定値であることを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、上記各発明において、利用側ユニットの温調状態の良否に関する判定は、当該利用側ユニットが温調する空間の目標温度と現在温度との偏差温度に基づいて行うことを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明は、上記各発明において、特定の利用側ユニットの温調状態が所定期間安定している場合、当該利用側ユニットの温調状態の良否に関する判定条件を甘くする方向に変更することを特徴とする。
【0018】
請求項7の発明は、上記各発明において、温調状態の良否に関する判定条件を甘くすることで当該特定の利用側ユニットの温調状態の判定が良となる場合に、当該利用側ユニットの温調状態の良否に関する判定条件を甘くする方向に変更することを特徴とする。
【0019】
請求項8の発明は、上記各発明において、特定の利用側ユニットの温調状態の良否に関する判定条件を甘くする方向に変更した場合、当該温調状態の良否判定の周期を短くすることを特徴とする。
【0020】
請求項9の発明は、上記各発明において、特定の利用側ユニットの温調状態の良否に関する判定条件を甘くする方向に変更した後、当該特定の利用側ユニットの温調状態の判定が再度不良となった場合、変更前の判定条件に戻すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の制御装置によれば、複数の利用側ユニットと、各利用側ユニットに冷媒を供給する熱源側ユニットとから構成される冷凍システムにおいて、環境条件別に熱源側ユニットの制御値を登録するための環境条件セルを有するデータベースと、温調状態の悪化が許容される特定の利用側ユニットを登録する手段とを備え、現在の各利用側ユニットの温調状態の良否を判定し、全ての利用側ユニットの温調を確保しながら熱源側ユニットの消費電力を削減する方向で制御値を変更し、変更した当該制御値を熱源側ユニットに出力し、且つ、当該制御値を現在の環境条件に合致する環境条件セルに登録し、変更していくことでデータベースを構築することにより、全ての利用側ユニットの温調状態が良である場合、熱源側ユニットの消費電力を削減する方向で制御値を変更し、該制御値を熱源側ユニットに出力することで冷凍システムの消費電力を削減することができ、特定の利用側ユニット以外の利用側ユニットの温調状態が不良である場合、熱源側ユニットの能力を上げる方向で制御値を変更し、該制御値を熱源側ユニットに出力することで、全ての利用側ユニットの温調を確保することができる。
【0022】
また、上記発明において、特定の利用側ユニットの温調状態の判定のみが不良である場合、当該利用側ユニットの温調状態の良否に関する判定条件を甘くする方向で変更するようにしたので、特定の利用側ユニットの温調状態の判定を良とすることができ、熱源側ユニットの消費電力を削減する方向で制御値を変更した熱源側ユニットの制御を実現することができる。
【0023】
このとき、請求項6の発明の如く、特定の利用側ユニットの温調状態が所定期間安定している場合や、請求項7の発明の如く、温調状態の良否に関する判定条件を甘くすることで当該特定の利用側ユニットの温調状態の判定が良となる場合に、当該利用側ユニットの温調状態の良否に関する判定条件を甘くする方向に変更することとしたので、判定条件の変更後、当該特定の利用側ユニットの温調状態の判定が直ぐに不良となってしまう不都合を解消することができる。
【0024】
また、請求項8の発明の如く、特定の利用側ユニットの温調状態の良否に関する判定条件を甘くする方向に変更した場合、当該温調状態の良否判定の周期を短くすることで、温調状態の良否判定条件が甘くされたことによって、特定の利用側ユニットの温調状態が悪化してしまう状況を直ぐに検出することができる。これにより、請求項9の如く、係る判定条件を甘くする方向に変更した後、該特定の利用側ユニットの温調状態の判定が再度不良となった場合、変更前の判定条件に戻すことで、当該特定の利用側ユニットの温調を確保することができる。
【0025】
特に、請求項2の発明の如く、当該利用側ユニットが設置される場所、当該利用側ユニットが使用される目的、当該利用側ユニットの機種に応じて予め特定の利用側ユニットを登録することで、該利用側ユニットの温調を必要最小限確保しながら、冷凍システムの消費電力をより効果的に削減することができるようになる。
【0026】
また、利用側ユニットの温調状態の良否に関する判定は、請求項5の発明の如く利用側ユニットが温調する空間の目標温度と現在温度との偏差温度に基づいて行うため、当該利用側ユニットが温調する空間の状態を的確に把握して温調状態の良否を判定することができる。
【0027】
更に、請求項4の発明の如く熱源側ユニットの消費電力を削減するために、低圧側圧力設定値を制御値として出力することから、インバータタイプ以外の熱源側ユニットに対しても対応可能となる。また、請求項3の発明の如く環境条件として、利用側ユニットが設置される屋内温度、熱源側ユニットが設置される屋外温度、及び、時間帯を用いることで、季節の他、店舗の開店や閉店、照明の点消灯、商品の補充やナイトカバー設置などの作業状況及び顧客の来店状況などに的確に対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を適用した冷凍システムを構成する低温ショーケースの一実施例の縦断側面図である。
【図2】図1の低温ショーケースが据え付けられたスーパーマーケットの配置を説明する図である。
【図3】図1の低温ショーケースが据え付けられたスーパーマーケットの配管構成を説明する図である。
【図4】本発明の冷凍システムの制御ブロック図である。
【図5】本発明の冷凍システムのコントローラのデータベースを説明する図である。
【図6】本発明の冷凍システムの制御値の変更に関するフローチャートである。
【図7】本発明における冷凍機(熱源側ユニット)の制御値の変更を説明する図である。
【図8】本発明における冷凍機(熱源側ユニット)の制御値の変更を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を詳述する。図1は本発明を適用する実施例としての低温ショーケース1の縦断側面図、図2は低温ショーケース1が据え付けられたスーパーマーケットの冷凍システムRSの配置を説明する図、図3は低温ショーケース1が据え付けられたスーパーマーケットの冷凍システムRSの配管構成を説明する図、図4は本発明の冷凍システムRSの制御ブロック図である。
【0030】
本願発明の一実施例として本実施例では、複数の利用側ユニットとして複数台の低温ショーケース1・・と、各低温ショーケース1に冷媒を供給する熱源側ユニットとして冷凍機11(12)とから構成される冷却システムを詳述する。冷凍システムはこれに限定されるものではなく、後述するように、複数の利用側ユニットとしての複数台の室内ユニットと、各室内ユニットに冷媒を供給する熱源側ユニットとしての室外ユニットとから構成される空調システム(冷凍システム)についても同様とする。
【0031】
実施例の低温ショーケース(利用側ユニット)1は縦型オープンショーケースであり、断面略コ字状の断熱壁32と、据え付け現場においてこの断熱壁32の両側に取り付けられる側板(図示せず)とから構成されている。断熱壁32の内側にはそれぞれ間隔を存して外層仕切板34と内層仕切板36が取り付けられており、断熱壁32と外層仕切板34間が外層ダクト37、内外層仕切板36、34間が内層ダクト38とされ、内層仕切板36の内側が貯蔵室39(庫内)とされている。
【0032】
この貯蔵室39内には複数段の棚41・・が架設されると共に、各棚41・・の下面前部と貯蔵室39の天井部、及び、庇31内には蛍光灯40・・が取り付けられている。貯蔵室39の底部にはデックパン42が取り付けられ、このデックパン42の下方は前記両ダクト37、38に連通した底部ダクト43とされている。そして、この底部ダクト43内には送風機45を内蔵したファンケース44が設置される。また、貯蔵室39の背方に位置する内層ダクト38内の下部には蒸発器46が縦設されている。
【0033】
貯蔵室39の前面開口部51の上縁には外層吐出口52と内層吐出口53が前後に並設されており、外層吐出口52は外層ダクト37に内層吐出口53は内層ダクト38にそれぞれ連通している。また、開口部51の下縁には吸込口54が形成され、前記底部ダクト43に連通している。
【0034】
そして、前記ファンケース44内の送風機45が運転されると、底部ダクト43内の空気は後方の内外層ダクト37、38に向けて吹き出され、外層ダクト37においてはそのまま吹き上げられると共に、内層ダクト38においては蒸発器46と熱交換した後吹き上げられ、開口部51上縁の内外層吐出口52、53から、下縁の吸込口54に向けてそれぞれ吹き出される。
【0035】
これによって、貯蔵室39の開口部51には内側の冷気エアーカーテンとそれを保護する外側のエアーカーテンとが形成され、開口部51からの外気の侵入が阻止若しくは抑制されると共に、内側の冷気エアーカーテンの一部が貯蔵室39内に循環して貯蔵室39内は冷却される。尚、閉店時にはこの開口部51は図示しないナイトカバーにて塞がれることになる。
【0036】
そして、これらの冷気などは吸込口54から底部ダクト43に帰還し、送風機45に再び吸い込まれることになる。また、蒸発器46には霜取りヒータ67が取り付けられており、発熱して蒸発器46の着霜を融解するものである。
【0037】
次に、図2において、1a〜1dで示すのは生鮮食品(商品)を収納陳列する低温ショーケース(生鮮食品用冷蔵ケース)であり、四台並設されている。1e、1fで示すのは飲料(商品)を収納陳列する低温ショーケース(飲料用冷蔵ケース)であり、二台設けられている。また、1g〜1iで示すのは生鮮食品(商品)を収納陳列する低温ショーケース(生鮮食品用氷温ケース)であり、三台並設されている。1a〜1iのいずれの低温ショーケースも上述した如き低温ショーケース1と同様に構成される。
【0038】
各低温ショーケース1a〜1d、1g〜1iはスーパーマーケットの店内の壁面に沿って図2に示す如く据え付けられる。店内中央には、店内の壁面又は店内の壁面に沿って据え付けられる各低温ショーケース1と所定間隔を存し、通路を確保した状態で複数台、この場合3台の非冷棚2・・と、各低温ショーケース1e、1fが据え付けられる。非冷棚2・・及び各低温ショーケース1e、1fは、相互に所定の間隔を存し、通路を確保した状態で設けられる。一方、図3に示す11、12は店外に構成された機械室13内に設置(別置)された別置型の冷蔵用冷凍機及び氷温用冷凍機(いずれも熱源側ユニット)であり、これら低温ショーケース1a〜1i及び冷凍機11、12によって本発明の冷凍システムRSが構成される。
【0039】
各冷凍機11、12は図示しない圧縮機や凝縮器によりそれぞれ構成されており、低温ショーケース(冷蔵ケース)1a〜1fの蒸発器46・・の入口側はそれぞれ電磁弁14及び膨張弁16を介して冷蔵用冷凍機11の液冷媒配管17に並列接続されると共に、蒸発器46の出口側はそれぞれ冷蔵用冷凍機11のガス冷媒配管18に並列接続されている。
【0040】
また、低温ショーケース(氷温ケース)1g〜1iの蒸発器46・・・の入口側はそれぞれ電磁弁19及び膨張弁21を介して氷温用冷凍機12の液冷媒配管22に並列接続されると共に、蒸発器46の出口側はそれぞれ氷温用冷凍機12のガス冷媒配管23に並列接続されている。
【0041】
各低温ショーケース1a〜1iの制御装置は貯蔵室39内若しくはそこに吹き出される冷気の温度(低温ショーケースが温調する空間の温度)を庫内温度センサ(庫内温度検出手段)63にて検出し、当該温度に基づいて電磁弁14、19を開閉制御し、蒸発器46に冷媒を供給して貯蔵室39内を冷却する。即ち、貯蔵室39の目標温度(設定温度)の上下に上限温度と下限温度を設定し、上限温度にて電磁弁14、19を開き、下限温度にて閉じるON−OFF制御を実行する。これにより、平均として貯蔵室39(庫内)の現在温度を目標温度に近付けるものであるが、冷却能力や周囲の環境によって目標温度と実際の貯蔵室39の現在温度の間には偏差温度が生じる。
【0042】
一方、各冷凍機11、12の圧縮機は何れかの電磁弁14、19が開いている場合には運転されるが、全ての低温ショーケース1a〜1f、或いは、1g〜1iにおいて電磁弁14或いは19が閉じられた場合には、停止される。この場合、具体的には冷媒回路の低圧側圧力設定値Psを用い、各冷凍機11、12の制御装置は、全ての電磁弁14或いは19が閉じられたことで冷媒回路の低圧側の圧力がこの低圧側圧力設定値Psに低下した場合に圧縮機を停止する。そして、何れかの低温ショーケース1a〜1f或いは、1g〜1iの電磁弁14或いは19が開放され、低圧側の圧力が低圧側圧力設定値Psより高くなれば(この場合には所定のヒステリシスが設けられる)、再び圧縮機を起動することになる。
【0043】
次に、図4を用いて本発明に係る冷凍システムRSの消費電力を削減するための制御装置(以下、コントローラと称する)10の動作について説明する。コントローラ10は後述するデータベース15が構築されるメモリ24と時計機能(20で示す)を有する汎用のマイクロコンピュータにより構成されており、各低温ショーケース1a〜1fと冷凍機11との間、及び、各低温ショーケース1g〜1iと冷凍機12との間にそれぞれ介設されてデータの授受を行う。また、コントローラ10には、各種設定を行うコントロールパネル(入力手段)25が接続されている。
【0044】
この場合、各コントローラ10、10には各低温ショーケース1a〜1f、1g〜1iから上述した貯蔵室39(庫内)の偏差温度と各低温ショーケース1a〜1iが設置される店内温度(屋内温度)Tiがそれぞれ入力される。また、冷凍機11、12からは冷凍機11、12が設置される店外温度Toがそれぞれ入力される。そして、各コントローラ10、10からは冷凍機11、12に低圧側圧力設定値Psが制御値としてそれぞれ出力されることになる。
【0045】
また、各コントローラ10、10には、冷却状態(温調状態)の悪化が許容される特定の低温ショーケース1a〜1f、或いは1g〜1iがコントロールパネル25により入力され、登録手段としてのメモリ24に当該特定の低温ショーケースとして登録される。
【0046】
本実施例では、図2に示すように、店舗の出入口GW付近に近い低温ショーケース1bは、出入口GWからの外気(空調)の流れによって冷気エアーカーテンの外乱が生じやすいため、予め冷却状態の悪化が予測される。また、当該低温ショーケース1bは、並設される低温ショーケース1a〜1dのうちで、開口面積が大きくなるラウンドケースとして用いられるため、当該理由によっても冷却状態の悪化が予測される。また、低温ショーケース1fは、店舗の窓W側に設置される低温ショーケースであり、窓越しに入射される日光の影響によって冷却状態の悪化が予測される。このように、予め冷却状態の悪化が予測される低温ショーケースには、生鮮食品等のうち、厳密な温度管理が要求される商品以外の商品や、常温でも提供可能な飲料などが陳列される場合が多い。
【0047】
そのため、このような予め冷却状態の悪化が予測される低温ショーケース1bや1fを、冷却状態の悪化が許容される特定の低温ショーケースとしてサービスマンや店員等によって個別に登録する。係る個別登録以外にも、コントロールパネル25によって、各低温ショーケースが設置される場所(設置場所)、各低温ショーケースが使用される目的(使用目的)、即ち、庫内に陳列される被冷却対象となる商品の種類別、各低温ショーケースの機種に応じて予め登録可能としてもよい。具体的には、店舗の出入口GW付近に設置される低温ショーケースや、厳密な温度管理が供給されない商品、例えば、飲料を冷却目的とする低温ショーケース、更には、他の機種よりも設定温度に対し冷えすぎの傾向にある機種の低温ショーケースの何れかに該当する低温ショーケースを、冷却状態の悪化が許容される特定の低温ショーケースとしての条件を満たすものとして、コントローラ10がメモリ24に登録してもよい。そのため、煩雑な登録作業を簡素化することができると共に、登録過誤を未然に回避することができ、漏れのない確実な特定の低温ショーケースの登録を実現することができる。
【0048】
次に、係るコントローラ10の具体的な動作を説明する。尚、以後は低温ショーケース1a〜1fと冷凍機11の間に介設されたコントローラ10について説明するが、低温ショーケース1g〜1iと冷凍機12の間のコントローラ10も同様であるものとする。
【0049】
先ず、コントローラ10のメモリ24内には前述したデータベース15が構築される。このデータベース15には運転環境の条件(以下、環境条件と称する)の判断の指標となる前記各低温ショーケース1a〜1iが設置される店内温度(屋内温度)Ti、冷凍機11、12が設置される店外温度To及び時刻帯tの三つの条件に基づいてデータの環境条件セルが分類され、複数段階に分類された離散データとして登録される。この場合の離散化のルールは、
店内温度Ti(℃):0℃〜+35℃の範囲を5deg刻みで8段階に分類(実際には1時間当たりの平均値を採用)。
店外温度To(℃):−5℃〜+40℃の範囲を5deg刻みで10段階に分類(実際には1時間当たりの平均値を採用)。
時刻帯t:1時間単位で24段階に分類。
とされ、全部で1920箇所の環境条件セル(図5で破線で示す)が構成される。
【0050】
前記店内温度Tiや店外温度Toは自然環境に影響される環境条件である。また、低温ショーケース1a〜1fの冷却状態は係る自然環境だけでなく、顧客の来店状況、店員や顧客による食品の出し入れ頻度、商品補充、開店時におけ照明点灯、閉店時における省エネ目的の照明消灯、ナイトカバーでの閉塞などが影響するが、係る状況は時刻帯tで判断することが可能となる。
【0051】
尚、後述する偏差温度の平均値の算出に関しては、算出開始時刻が含まれている時点をその時刻帯tとする。例えば、午後3時40分〜4時40分までの60分間の偏差温度から平均偏差温度を算出する際には時刻帯tは午後3時として扱うことになる。また、店内温度Tiが0℃より低い場合には0℃として、また、+35℃より高い場合には+35℃として扱うものとし、店外温度Toが−5℃より低い場合には−5℃として、また、+40℃より高い場合には+40℃として扱うものとする。
【0052】
そして、コントローラ10はデータベース15の各環境条件セルに制御値としての冷凍機11の低圧側圧力設定値Psが図5の如く登録される。
【0053】
以上の構成で、次に実際の制御の実施形態について図6のフローチャートを参照して説明する。コントローラ10は前述したデータベース15に基づいて冷凍機11の低圧側圧力設定値Psを調整する。この冷凍機11の低圧側圧力設定値Psの調整は所定の周期で実行するものであるが、以後は10分周期で調整する例を説明する。また、コントローラ10は現在の店内温度Ti、店外温度To、及び、時間帯tの環境条件に合致する環境条件セル(図5)に登録されている低圧側圧力設定値Ps(制御値)を参照し、制御値として冷凍機11に出力する。冷凍機11ではコントローラ10から送信された低圧側圧力設定値Ps(制御値)に基づいて前述の如く圧縮機の起動・停止を制御することになる。
【0054】
先ず、データベース15の全環境条件セルには、制御値である低圧側圧力設定値Psの初期値としてデフォルト値を予め登録しておく。従って、低温ショーケース1a〜1fと冷凍機11がスーパーマーケットに設置された当初は、低圧側圧力設定値Psはデフォルト値に設定される。尚、このデフォルト値は夏季の最も冷却能力が必要とされる環境の値(例えばPs=0.05)とされており、以後の消費電力を削減する目的で行われる低圧側圧力設定値Psの調整は、当該デフォルト値よりも高くする方向で行われ、係る調整によってデフォルト値よりも低くなることはない。
【0055】
尚、実際の制御では店内温度Ti、店外温度To、及び、時間帯tの3次元で環境条件を判断するものであるが、以下の説明では簡略化し、店内温度Tiのみに着目して説明する。この場合、例えば、店内温度Tiが10〜15℃、15〜20℃、20〜25℃、及び、25℃〜30℃の各環境条件セルに、それぞれ0.3、0.2、0.2、及び、0.05の低圧側圧力設定値Psが登録されているものとする。
【0056】
今、環境条件である店内温度Tiが10〜15℃の範囲内にあるものとすると、コントローラ10は所定の周期(前記10分)で各低温ショーケース1a〜1fの貯蔵室39の冷却状態(温調状態)を判定する(ステップS1)。この判定は、現在の各低温ショーケース1a〜1fの冷却状態の良否を判定するものであり、例えば各低温ショーケース1a〜1fから送られてくる偏差温度から一定時間(実際には10分)当たりの平均偏差温度Te(deg)をそれぞれ算出し、全ての低温ショーケース1a〜1fにおいてこの平均偏差温度Teが予め設定した偏差温度しきい値、例えば、0.5deg以下か否かで判断する。
【0057】
そして、コントローラ10に接続されている全ての低温ショーケース1a〜1fの平均偏差温度Teが偏差温度しきい値以下である場合には、ステップS2に進み、全低温ショーケース1a〜1fの冷却(温調)状態を「良」とし、冷却能力に余裕があるものと判断して、低圧側圧力設定値Psを冷凍機11の消費電力を削減する方向に、即ち、一定値(所定ステップ)上げた値に変更し、該低圧側圧力設定値Psを現在の環境条件に合致する前記環境条件セルに登録(更新)する。コントローラ10は変更・更新した低圧側圧力設定値Psを制御値として冷凍機11に出力する。冷凍機11ではコントローラ10から送信された低圧側圧力設定値Psに基づいて前述した如く圧縮機の停止と起動を制御するが、その際、低圧側圧力設定値Psは高い値とされることにより、圧縮機の起動・停止される低圧側圧力設定値Psが高くなり、その分、冷却能力が低下(冷やさない方向)すると共に、消費電力も削減されるようになる。
【0058】
逆に、上記ステップS1において、1台でも算出された平均偏差温度Teが偏差温度しきい値より高くなっている低温ショーケース1a〜1f、即ち、冷却判定が「不良」と判定された低温ショーケース1a〜1fがある場合には、ステップS3に進む。ステップS3では、偏差温度しきい値より高くなっている低温ショーケースが上記においてメモリ24に予め登録された冷却状態の悪化が許容される特定の低温ショーケース1b又は1fであるか否かを判定する。
【0059】
偏差温度しきい値より高くなっている低温ショーケース、即ち、冷却状態が悪いと判定された低温ショーケースが上記冷却状態の悪化が許容される特定の低温ショーケース、本実施例では低温ショーケース1b又は1fだけでない場合、即ち、特定の低温ショーケース1b又は1f以外の低温ショーケースの冷却状態が不良である場合には、冷却能力が不足しているものと判断して、ステップS4に進み、低圧側圧力設定値Psを一定値(所定ステップ)下げた値に(冷凍機11の能力を上げる方向で)変更し、現在の環境条件に合致する前記環境条件セルに登録(更新)する。コントローラ10は変更・更新した低圧側圧力設定値Psを制御値として冷凍機11に出力する。冷凍機11ではコントローラ10から送信された低圧側圧力設定値Psに基づいて同様に圧縮機の停止と起動を制御するが、その際、低圧側圧力設定値Psは低い値とされることにより、圧縮機の起動・停止される低圧側圧力設定値Psが低くなり、その分、冷却能力が向上(より冷やす方向)する。これにより、貯蔵室39の冷却状態は改善され、所定の冷却状態を確保することができる。
【0060】
このようにして、コントローラ10は或る環境条件セル内において、低温ショーケース1a〜1fの貯蔵室39の冷却状態に基づき、最低限の冷却を維持し、確保しながら、圧縮機の消費電力を削減する方向で所定の周期で低圧側圧力設定値Ps(制御値)を変更し、当該環境条件セルに登録されている値をその値に更新していく。このようにして、年間運転されることで、学習が行われ、データベース15の各環境条件セルに当該環境条件に適した制御値が登録されていく。
【0061】
次に、ステップS3において、偏差温度しきい値より高くなっている低温ショーケースが上記においてメモリ24に予め登録された冷却状態の悪化が許容される特定の低温ショーケース1b又は1fのみである場合には、ステップS5に進む。当該ステップS5では、係る特定の低温ショーケース1b又は1fの冷却状態の判定条件とされる偏差温度しきい値が詳細は後述する補正後のものであるか、即ち、標準であるか否かを判定する。
【0062】
偏差温度しきい値の補正(変更)が行われる前である場合には、ステップS6に進み、一定期間(所定期間)、温度の変化が安定しているか否かを判定する。具体的には、一定期間、係る冷却状態が不良と判定された特定の低温ショーケース1b又は1fの偏差温度の変化が所定値以下であるか否かを判定する。係る一定期間が経過する以前に、当該特定の低温ショーケース1b又は1fの偏差温度の変化が所定値を上回った場合には、当該特定の低温ショーケース1b又は1fの冷却状態が安定していないものと判断し、上記ステップS4に進む。係る場合には、該特定の低温ショーケース1b又は1fの現在温度が上昇傾向にあり、冷却能力が不足しているものと判断して、ステップS4において、低圧側圧力設定値Psを一定値(所定ステップ)下げた値に変更し、現在の環境条件に合致する前記環境条件セルに登録(更新)する。
【0063】
他方、ステップS6において、一定期間、係る冷却状態が不良と判定された特定の低温ショーケース1b又は1fの偏差温度の変化が所定値以下であった場合には、ステップS7に進み、現在の平均偏差温度Te(deg)が係る低温ショーケース1b又は1fの冷却判定条件とされる偏差温度しきい値を所定値だけ上昇させても、即ち、冷却判定条件を甘くする方向に変更したとしても、冷却状態が「良」と判定される範囲にあるか否かを判断する。本実施例では、現在設定されている偏差温度しきい値0.5degに対し所定値、1.0〜2.0degだけ上昇させた1.5deg乃至2.5degの範囲にある何れかの値(ここでは、1.5deg)を補正後の偏差温度しきい値として採用する。
【0064】
当該ステップS7において、冷却状態が不良と判定された特定の低温ショーケースの偏差温度の変化が安定している場合であっても、補正後の偏差温度しきい値より大きい場合には、冷却能力が確保し得ない範囲での安定的な温度変化であり、この場合も冷却能力が不足しているものと判断して、ステップS4に進み、低圧側圧力設定値Psを一定値(所定ステップ)下げた値に変更し、現在の環境条件に合致する前記環境条件セルに登録(更新)する。
【0065】
他方、ステップS7において、現在の平均偏差温度Teが係る低温ショーケース1b又は1fの冷却判定条件とされる偏差温度しきい値Teを所定値だけ上昇させた(判定条件を甘くする方向で変更した)補正後の偏差温度しきい値TeSに変更したとしても、冷却状態が「良」と判定される範囲にあると判断された場合には、ステップS8に進む。このステップS8では、冷却状態が不良と判定された特定の低温ショーケース1b又は1fの偏差温度しきい値を係る所定値だけ上昇させた補正後の偏差温度しきい値とすると共に、係る現在の冷却状態の良否判定の周期(前記10分)を短い補正周期とし、ステップS1に戻る。
【0066】
この際、ステップS1では、係る特定の低温ショーケース1b又は1fの冷却状態の良否判定に用いられる偏差温度しきい値は補正後の偏差温度しきい値TeSHが採用され、他の低温ショーケースについては、これまでと同様の偏差温度しきい値を用いて冷却状態の良否判定が行われる。
【0067】
ここで、一例としての各低温ショーケースの偏差温度Teの変化と、これに対する偏差温度しきい値TeS及び低圧側圧力設定値Psの変動について、図7及び図8を参照して説明する。何れも、冷却状態の悪化が許容される特定の低温ショーケース1b又は1fの偏差温度TeをTeb、その他の低温ショーケース1a、1c〜1eの偏差温度TeをTeaとして示す。
【0068】
これによると、特定の低温ショーケース以外の低温ショーケースの偏差温度Teaは、偏差温度しきい値TeS(0.5deg)以下であり、特定の低温ショーケースの偏差温度Tebは、偏差温度しきい値TeS(0.5deg)より高い、ステップS7にて補正された後の偏差温度しきい値TeSH(1.5deg)以下である。
【0069】
そのため、ステップS7において、現在の平均偏差温度Tebが係る低温ショーケース1b又は1fの冷却判定条件とされる偏差温度しきい値TeSを所定値だけ上昇させた補正後の偏差温度しきい値TeSHに変更すると、冷却状態が「良」と判定される範囲にあると判断され、ステップS8で、冷却状態が不良と判定された特定の低温ショーケース1b又は1fの偏差温度しきい値TeSを係る所定値だけ上昇させた補正後の偏差温度しきい値TeSHに変更されている。他の低温ショーケースについては、これまでと同様の偏差温度しきい値TeSを用いて冷却状態の良否判定が行われるため、図7及び図8では、2つの偏差温度しきい値が採用されていることを示している。
【0070】
そして、冷却状態の悪化が許容される特定の低温ショーケース1b又は1fについての冷却状態の良否判定が判定条件を甘くする方向で変更した補正後の偏差温度しきい値TeSHを採用することによって、補正前の判定条件では、不良と判定されていた特定の低温ショーケース1b又は1fと、その他の低温ショーケース1a、1c〜1eの冷却状態が「良」と判断される。これによって、全ての低温ショーケース1a〜1fの冷却状態が良好と判断されることで、冷却能力に余裕があるものとみなされて、低圧側圧力設定値Psを冷凍機11の消費電力を削減する方向に、即ち、一定値(所定ステップ)上げた値に変更し、更新し、該低圧側圧力設定値Psを制御値として冷凍機11に出力する(図中(i))。これにより、低圧側圧力設定値Psは高い値とされることにより、圧縮機の起動・停止される低圧側圧力設定値Psが高くなり、その分、冷却能力が低下(冷やさない方向)すると共に、消費電力も削減されるようになる。
【0071】
そのため、予め冷却状態の悪化が許容される低温ショーケースとして登録されている低温ショーケースについては、その他の低温ショーケースよりも冷却判定の条件が甘めに制御されることにより、設定温度よりも高い状態で冷却制御されることとなる。しかしながら、係る低温ショーケースは、予め冷却状態の悪化が許容されるものとして登録しているものであるため、庫内には厳密な温度制御の必要性が低い商品等が収納されており、その他の低温ショーケースとは異なり、厳密な温度制御が実現されないことによる不都合が生じない。従って、冷凍機11を停止する低圧側圧力設定値(制御値)を冷凍機11の消費電力を削減する方向に補正することができ、各低温ショーケースの条件に応じた必要最小限の冷却を確保しながら、冷凍システムRSの消費電力をより効果的に削減することができるようになる。
【0072】
特に、本実施例では、ステップS6において、特定の低温ショーケース1b又は1fの冷却状態が一定期間安定しているか否かを判定し、安定している場合にのみステップS7に進み、当該ステップS7では、係る特定の低温ショーケース1b又は1fの偏差温度Tebが冷却状態の良否に関する判定条件を甘くすることで係る低温ショーケース1b又は1fの冷却状態の判定が良となる場合に、当該低温ショーケース1b又は1fの冷却状態の良否に関する判定条件を甘くする方向に変更することとしたので、判定条件の変更後、当該特定の低温ショーケース1b又は1fの冷却状態の判定が直ぐに不良となってしまう不都合を解消することができる。
【0073】
そして、変更された補正周期にて冷却状態の良否判定が行われ、全ての低温ショーケース1a〜1fの冷却状態が良好と判断され(ステップS1)、ステップS2に進んだ際、当該ステップS2では、毎回冷凍機11の能力を低下させる方向に冷凍機11の制御値を変更する動作を行うのではなく、補正前の標準の判定周期、若しくは、当該当該標準の判定周期よりも所定時間長い周期に相当する回数だけ、補正周期での良否判定で冷却状態が良と継続した場合にのみ行うものとする。図7では、標準の判定周期、若しくはこれより長い周期に相当する回数だけ補正周期で良判定が継続したことで、再度、低圧側圧力設定値Psを上げた場合について示している(図中(ii))。これにより、係る短い補正周期にて冷却状態が良好と判断されて頻繁に制御値が変更されてしまうことによる不都合を回避することができる。
【0074】
他方、変更された補正周期にて冷却状態の良否判定が行われ、冷却状態の良否判定条件が甘くされたことによって、特定の低温ショーケース1b又は1fの冷却状態が悪化した場合、即ち、当該特定の低温ショーケースの平均偏差温度Tebが補正後の偏差温度しきい値TeSHを超えた場合(図8中(iii))には、ステップS1での冷却判定で冷却状態が不良と判断される。そして、ステップS3で不良と判断された低温ショーケースが前記特定の低温ショーケース1b又は1fのみであるかが判断され、この場合、係る特定の低温ショーケースのみであるため、ステップS5に進む。ステップS5における判断で、該特定の低温ショーケースの偏差温度しきい値が補正後のものであるか否かが判断され、この場合、補正後の偏差温度しきい値TeSHであるため、ステップS9に進む。
【0075】
ステップS9では、冷却状態の良否判定条件に採用されていた補正後の偏差温度しきい値TeSHを、補正前の標準の偏差温度しきい値TeSに戻し(図8中(iv))、判定周期を短くしていた補正周期から、補正前の標準の判定周期に戻す。そして、ステップS4に進み、低圧側圧力設定値Psを一定値(所定ステップ)下げた値に変更し、現在の環境条件に合致する前記環境条件セルに登録(更新)する(図8中(v))。尚、図8中、偏差温度Tebが補正後の偏差温度しきい値TeSHを超えた時点と、判定周期、制御値の変更にタイムラグが生じている状態を示している。
【0076】
このように、特定の低温ショーケースの冷却状態の良否に関する判定条件を甘くする方向に変更した場合、当該冷却状態の良否判定の周期を標準よりも短い補正周期とすることで、冷却状態の良否判定条件が甘くされたことによって、特定の低温ショーケースの冷却状態が悪化してしまう状況を直ぐに検出することができる。これにより、係る判定条件を甘くする方向に変更した後、該特定の低温ショーケースの冷却状態の判定が再度不良となった場合、変更前の判定条件に戻すことで、当該特定の低温ショーケースの冷却を確保することができる。
【0077】
尚、本実施例では、上記ステップS3において、偏差温度しきい値より高くなっている低温ショーケースが予め登録された冷却状態の悪化が許容される特定の低温ショーケースであるか否かを判定しているが、これに限定されるものではなく、偏差温度しきい値より高くなっている低温ショーケースが、冷却状態の悪化が許容される被冷却対象、例えば、飲料など陳列対象とされているショーケースであるか、予め設定されている使用目的によって、判定を行ってもよい。またこれ以外にも、偏差温度しきい値より高くなっている低温ショーケースが、全体の低温ショーケースのうちの所定割合以下、例えば10%以下となっているか否かにより判定してもよい。所定割合以下である場合、該冷却状態が悪化している特定の低温ショーケースのみ、上記同様、偏差温度しきい値を上げる方向に補正して以降の温調状態の判定を行うものとしてもよい。
【0078】
尚、本実施例では、低温ショーケースの冷却状態の良否に関する判定は、低温ショーケース1が冷却する貯蔵室39の目標温度(設定温度)と現在温度との偏差温度に基づいて行うため、当該低温ショーケース1が冷却する空間の状態を的確に把握して冷却状態の良否を判定することができる。
【0079】
更に、冷凍機11、12の消費電力を削減するために、低圧側圧力設定値Psを制御値として出力しているため、インバータタイプ以外の冷凍機に対しても対応可能となる。
【0080】
また、実施例で示した環境条件はそれに限定されるものでは無い。また、実施例では制御値として冷凍機の低圧側圧力設定値を調整したが、これも限定されるものでは無く、冷凍システムの冷却能力と消費電力に関係する制御ファクターであれば対象となり得る。更に、実施例では標準の判定周期を10分として低圧側圧力設定値を調整したが、それに限らず、1分、30分、1時間、1時間30分、2時間周期など使用状況に応じて適宜選択可能である。
【0081】
上記実施例では、各利用側ユニットとして冷蔵ショーケースや冷凍ショーケースなどの低温ショーケースを用い、熱源側ユニットとしてこれら低温ショーケースに冷媒を供給する冷凍機を採用した冷却システムについて説明しているが、これに限定されるものではなく、各利用側ユニットとして各室内ユニット、熱源側ユニットとして各室内ユニットに冷媒を供給する室外ユニットを採用した空気調和機などの冷凍システムを採用してもよい。
【0082】
この場合、環境条件は、各室内ユニットが設置される室内温度(屋内温度)と、室外ユニットが設置される屋外温度と、時間帯が採用される。そして、室内ユニットの冷却運転における冷却状態の良否の判定、及び、暖房運転における加温状態の良否の判定(以下、併せて室内ユニットの温調状態の良否の判定)は、室内ユニットが冷却又は加温(温調)する空間(室内)の目標温度と、現在温度との偏差温度に基づいて行う。
【0083】
また、店舗において出入口付近や窓側などに設置される室内ユニットや、事務所などの厳密な温度管理が要求されない場所に設置される室内ユニットを温調状態の悪化が許容される特定の室内ユニットとして登録する。尚、当該室内ユニットはこれに限定されるものではない。この場合においても、室内ユニットが設置される場所、使用される目的、機種などに応じて予め登録可能とする。
【0084】
上記実施例における冷却状態の良否の判定では、冷却運転を行っている場合は、略同様であるが、暖房運転を行っている場合は、加温状態の良否を偏差温度Teが偏差温度しきい値TeS以下であるか否かによって判断し、加熱能力に余裕があるものと判断した場合には、低圧側圧力設定値Psを室外ユニットの消費電力を削減する方向に、即ち、一定値(所定ステップ)上げた値に変更し、更新する。加熱能力が不足しているものと判断した場合には、低圧側圧力設定値Psを室外ユニットの能力を上げる方向に、即ち、一定値(所定ステップ)下げた値に変更し、更新する。
【0085】
これによっても、温調状態の悪化が許容される特定の室内ユニットの温調状態の判定のみが不良である場合、当該室内ユニットの温調状態の良否に関する判定条件を甘くする方向で変更することで、特定の室内ユニットの温調状態の判定を良とすることができ、室外ユニットの消費電力を削減する方向で制御値を変更した室外ユニットの制御を実現することができる。これにより、温調状態の悪化が許容される利用側ユニットの温調を必要最小限確保しながら、冷凍システムの消費電力をより効果的に削減することができるようになる。
【符号の説明】
【0086】
GW 出入口
W 窓
1(1a〜1i) 低温ショーケース(利用側ユニット)
2 非冷棚
10 コントローラ(制御装置)
11、12 冷凍機(熱源側ユニット)
14、19 電磁弁
15 データベース
16、21 膨張弁
24 メモリ(登録手段)
25 コントロールパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の利用側ユニットと、各利用側ユニットに冷媒を供給する熱源側ユニットとから構成される冷凍システムにおいて、
環境条件別に前記熱源側ユニットの制御値を登録するための環境条件セルを有するデータベースと、
温調状態の悪化が許容される特定の前記利用側ユニットを登録する手段とを備え、
現在の前記各利用側ユニットの温調状態の良否を判定し、全ての前記利用側ユニットの温調を確保しながら前記熱源側ユニットの消費電力を削減する方向で前記制御値を変更し、変更した当該制御値を前記熱源側ユニットに出力し、且つ、当該制御値を現在の環境条件に合致する前記環境条件セルに登録し、変更していくことで前記データベースを構築すると共に、
前記特定の利用側ユニットの温調状態の判定のみが不良である場合、当該利用側ユニットの温調状態の良否に関する判定条件を甘くする方向で変更することを特徴とする冷凍システムの制御装置。
【請求項2】
前記特定の利用側ユニットは、当該利用側ユニットが設置される場所、当該利用側ユニットが使用される目的、当該利用側ユニットの機種に応じて予め登録することを特徴とする請求項1に記載の冷凍システムの制御装置。
【請求項3】
前記環境条件は、前記利用側ユニットが設置される屋内温度、前記熱源側ユニットが設置される屋外温度、及び、時間帯であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷凍システムの制御装置。
【請求項4】
前記熱源側ユニットの制御値は、当該熱源側ユニットの運転を制御するための冷媒回路の低圧側圧力設定値であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載の冷凍システムの制御装置。
【請求項5】
前記利用側ユニットの温調状態の良否に関する判定は、当該利用側ユニットが温調する空間の目標温度と現在温度との偏差温度に基づいて行うことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載の冷凍システムの制御装置。
【請求項6】
前記特定の利用側ユニットの温調状態が所定期間安定している場合、当該利用側ユニットの温調状態の良否に関する判定条件を甘くする方向に変更することを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかに記載の冷凍システムの制御装置。
【請求項7】
前記温調状態の良否に関する判定条件を甘くすることで当該特定の利用側ユニットの温調状態の判定が良となる場合に、当該利用側ユニットの温調状態の良否に関する判定条件を甘くする方向に変更することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちの何れかに記載の冷凍システムの制御装置。
【請求項8】
前記特定の利用側ユニットの温調状態の良否に関する判定条件を甘くする方向に変更した場合、当該温調状態の良否判定の周期を短くすることを特徴とする請求項1乃至請求項7のうちの何れかに記載の冷凍システムの制御装置。
【請求項9】
前記特定の利用側ユニットの温調状態の良否に関する判定条件を甘くする方向に変更した後、当該特定の利用側ユニットの温調状態の判定が再度不良となった場合、変更前の前記判定条件に戻すことを特徴とする請求項1乃至請求項8のうちの何れかに記載の冷凍システムの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−11398(P2013−11398A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144201(P2011−144201)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】