冷凍プロセスのための高効率の熱交換器
【課題】冷凍プロセスのための高効率の熱交換器などを提供する。
【解決手段】熱交換器(500)が、気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる流体である極低温用の混合冷媒が進入する流体入口マニホールド(502)、流体出口マニホールド(508)、流体入口マニホールド(502)および流体出口マニホールド(508)と連通するように構成されて混合冷媒が流れる複数の熱伝達チャネル(504)、ならびに流体入口マニホールド(502)内に位置する複数の充填材要素(510)を備えている。
【解決手段】熱交換器(500)が、気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる流体である極低温用の混合冷媒が進入する流体入口マニホールド(502)、流体出口マニホールド(508)、流体入口マニホールド(502)および流体出口マニホールド(508)と連通するように構成されて混合冷媒が流れる複数の熱伝達チャネル(504)、ならびに流体入口マニホールド(502)内に位置する複数の充填材要素(510)を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍プロセスのための熱交換器等に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2004年10月7日付の米国特許仮出願第60/616,873号の利益を主張し、本仮出願の教示の全体が、ここでの言及によって本明細書に取り入れられたものとする。
【0003】
低温および極低温の冷凍が、深冷分離のために流体の流れを冷却し、真空プロセスにおいて低い蒸気圧を生成すべく水蒸気を捕まえ、さらには半導体ウエハの加工などの製造プロセス、画像検出器および放射線検出器の冷却、工業用の熱変換、生物薬剤学および生物医学の用途、生物医学的保存、ならびに化学処理において物品を冷却するため、よく使用されている。冷凍サイクルは、一般的には、冷媒ガスを圧縮し、冷却液との熱交換によってガスを凝縮させ、さらには追加の冷却を達成するために、戻ってくる減圧ガスまたは膨張ガスと熱を交換することができる。多くの場合、冷凍サイクルの一部分が、2相の液体/気体の流れを有している。
【0004】
一般的な冷凍サイクルは、1つ以上の熱交換器を有することができる。これらの熱交換器は、圧縮ガスを凝縮させ、膨張後の熱を吸収し、または圧縮された流体と戻りの膨張ガスとの間で熱を交換するために、機能することができる。一般的な用途では、シェルとチューブ(管形、shell and tube)、チューブ内チューブ、またはねじりチューブの熱交換システムが使用される。他の用途では、プレート型熱交換器が使用される。
【0005】
シェルとチューブ、チューブ内チューブ、またはねじりチューブの熱交換器は、2相流の環境においても、安価であって圧力低下が少ない。しかしながら、チューブ状の熱交換器は、熱交換器の単位体積または単位長さあたりの表面積が小さい。所望の熱交換表面積を実現するため、長い延伸の配管が使用される。限られた空間において、これらの熱交換器は、包まれてねじ曲げられており、コストが高くなっている。
【0006】
プレート型熱交換器は、より良好な表面積−体積の比を有しており、より小型である。しかしながら、一般的なプレート型熱交換器は、より高価であって、2相流の環境においては効率的でなく、チャネル間の各相の分配が良好でないことが多い。分配が良好でないと、安定性が低下し、熱交換器の有効性が低下し、熱伝達率が下がり、システムの効率が低下し、圧力損失が大きくなり、超低温および極低温の用途の場合には、凍結(freeze out)状態につながる可能性がある。他方では、プレート型熱交換器において使用される一般的な2相流分配器は、圧力損失が大(約18psi 超)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、熱交換器の改善が望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、熱交換器にある。熱交換器が、流体入口マニホールド、流体出口マニホールド、流体入口マニホールドおよび流体出口マニホールドと連通するように構成された複数の熱伝達チャネル、ならびに流体入口マニホールド内に位置する充填材を備えている。
【0009】
さらなる関連の実施形態においては、流体入口マニホールドに進入する流体が、少なくとも2つの相を含むことができ、それらは気体および液体とすることができる。熱交換器は、対向流の熱交換器、短経路のプレート型熱交換器など、プレート型熱交換器とすることができる。充填材は、無作為な充填材要素または球形のボールなどの充填材要素を含むことができ、球形要素、長円体要素、リング要素、円柱形要素、サドル要素、回転楕円体要素、リボン要素およびガーゼ要素で構成されるグループから選択される充填材要素を含んでもよい。充填材要素は、第1の大きさ最頻値を有する第1組の充填材要素と第1の大きさ最頻値と異なる第2の大きさ最頻値を有する第2組の充填材要素とを含んで、少なくとも2つの大きさ最頻値を有することができる。充填材要素の寸法(最小の寸法など)は、複数の熱伝達チャネルのうちの1つの幅よりも大きくてよい。熱交換器は、さらに構造化部材を流体入口マニホールド内に位置させて有することができ、構造化部材が充填材を固定することができる。構造化部材は、円柱形とすることができ、また、円錐形で第1の端部および第2の端部を有し、第1の端部が第2の端部よりも大きい断面を有するものでもよい。第2の端部が、入口マニホールドの流れのない端部近くに位置することができ、また、入口マニホールドの流れのある端部に近く位置してもよい。構造化部材は、自身の長さの一部分に沿って変化する断面積を有することができる。熱交換器を横切っての圧力低下は、毎秒3メートルの流速について5psi 以下とすることができる。熱交換器の全体としての熱伝達係数を、ヘッダーに充填材料を使用することによって、少なくとも2%改善することができる。
【0010】
本発明のさらなる特徴が、熱交換器にある。熱交換器が、第1組の流体チャネルと少なくとも第2組の流体チャネルとを規定している複数の平行な熱伝達プレート、第1組の流体チャネルと連通するように構成された第1の流体入口ポート、第1組の流体チャネルと連通するように構成された第1の流体出口ポート、第2組の流体チャネルと連通するように構成された第2の流体入口ポート、第2組の流体チャネルと連通するように構成された第2の流体出口ポート、ならびに第1の流体入口ポートおよび第2の流体入口ポートの少なくとも一方に位置する充填材入り分配器を備えている。他のいくつかの構成においては、3つ以上の流体の流れが冷却される。
【0011】
本発明のさらなる特徴は、冷凍システムにある。冷凍システムが、圧縮機および圧縮機に接続された少なくとも1つの熱交換器を備えている。前記少なくとも1つの熱交換器が、ヘッダー、ヘッダー内に位置する充填材、および熱伝達チャネルを備えている。熱伝達チャネルが、ヘッダーおよび充填材を通過する流体を受け取るように構成されている。
【0012】
さらなる関連の実施形態においては、冷凍システムが、混合冷媒を含んでもよい。ヘッダーを、2相の流体を受け取るように構成することができる。冷凍システムを、200K未満の温度に達するように構成することができる。前記少なくとも1つの熱交換器は、過熱低減器、凝縮器、少なくとも2つの冷媒流の間で熱を交換する熱交換器、および蒸発器で構成されるグループから選択される熱交換器として機能することができる。前記少なくとも1つの熱交換器が、冷凍セクションの構成要素を含んでもよい。冷凍セクションは、分離器を有してもよい。前記少なくとも1つの熱交換器は、プレート型熱交換器とすることができ、水平または垂直に向けることができ、高温端を上にして垂直に向けてもよい。冷凍システムは、単一成分の冷媒を含むことができる。また、冷凍システムは、極低温の冷凍システムとすることができ、混合冷媒を含んでもよい。冷凍システムは、少なくとも冷却モードおよびスタンバイモードで動作可能とすることができ、少なくとも冷却モード、スタンバイモードおよび霜取りモードで動作可能とすることもできる。
【0013】
本発明の特徴は、熱を交換するための方法にもある。この方法は、熱交換器を通して第1の流体を流すステップ、およびこの熱交換器を通して第2の流体を流すステップを含んでいる。熱交換器は、第1組の流体チャネルと少なくとも第2組の流体チャネルとを定めている複数の平行な熱伝達プレート、第1組の流体チャネルと連通するように構成された第1の流体入口ポート、第1組の流体チャネルと連通するように構成された第1の流体出口ポート、第2組の流体チャネルと連通するように構成された第2の流体入口ポート、第2組の流体チャネルと連通するように構成された第2の流体出口ポート、ならびに第1の流体入口ポートおよび第2の流体入口ポートの少なくとも一方に位置する充填材入り分配器を備えている。第1の流体が、第1の流体入口ポート、第1組の流体チャネルおよび第1の流体出口ポートを通って流れる。第2の流体は、第2組の流体チャネルを通って流れる。複数の平行な熱伝達プレートを介して第1の流体と第2の流体との間で熱が交換される。
【0014】
本発明のさらなる特徴が、冷凍システムの補修(servicing )方法にある。この方法は、冷凍システムに組み合わせられた熱交換器のマニホールドに充填材を挿入するステップを含んでいる。熱交換器は、マニホールドおよび熱伝達チャネルを備えている。熱伝達チャネルが、マニホールドおよび充填材を通過する流体を受け取るように構成されている。
【0015】
本発明のさらなる特徴は、冷凍システムの製造方法にある。この方法は、冷凍システムに組み合わせられた熱交換器のマニホールドに充填材を挿入するステップを含んでいる。熱交換器は、マニホールドおよび熱伝達チャネルを備えている。熱伝達チャネルが、マニホールドおよび充填材を通過する流体を受け取るように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】カスケード冷凍システムの例示的な実施形態を示している。
【図2】自動カスケード冷凍サイクルの例示的な実施形態を示している。
【図3】冷凍システムの例示的な実施形態を示している。
【図4】冷凍セクションの例示的な実施形態を示している。
【図5】熱交換器の例示的な実施形態を示している。
【図6】熱交換器の例示的な実施形態を示している別の図である。
【図7A】充填材の例示的な実施形態を示している。
【図7B】充填材の別の例示的な実施形態を示している。
【図7C】充填材のさらに別の例示的な実施形態を示している。
【図7D】充填材のさらに別の例示的な実施形態を示している。
【図7E】充填材のさらに別の例示的な実施形態を示している。
【図8A】熱交換器のマニホールドの例示的な実施形態を示している。
【図8B】熱交換器のマニホールドの別の例示的な実施形態を示している。
【図8C】熱交換器のマニホールドのさらに別の例示的な実施形態を示している。
【図8D】熱交換器のマニホールドのさらに別の例示的な実施形態を示している。
【図8E】熱交換器のマニホールドのさらに別の例示的な実施形態を示している。
【図8F】熱交換器のマニホールドのさらに別の例示的な実施形態を示している。
【図9A】熱交換器の例示的な向きを示している。
【図9B】熱交換器の別の例示的な向きを示している。
【図9C】熱交換器のさらに別の例示的な向きを示している。
【図10】充填材入り分配器を備えている熱交換器および備えていない熱交換器の性能特性を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の以上の目的、特徴および利点、ならびにさらなる目的、特徴および利点が、添付の図面に示される本発明の好ましい実施形態についてのさらに詳細な説明から、明らかになるであろう。添付の図面においては、種々の図のすべてにおいて、同様の参照符号が同じ部分を指し示している。図面は必ずしも正確な縮尺ではなく、本発明の原理を説明することに重点が置かれている。
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0019】
冷凍システムは、種々の用途において冷却を提供する。いくつかの用途は、230K以下、183K以下、108K以下などの典型的には230K未満の超低温または極低温の温度を使用する。カスケード配置などの冷凍配置および自動カスケードサイクルを、所望の低温を達成すべく使用することができる。これらの冷凍システムは、冷凍サイクルのある部分から熱を排出し、冷凍サイクルの他の部分において熱を吸収するために、1つ以上の熱交換器を使用する。
【0020】
図1が、第1の冷凍サイクル116および第2の冷凍サイクル118を有する例示的な冷凍システムを示している。第1の冷凍サイクル116および第2の冷凍サイクル118が、第1の冷凍サイクル116が熱交換器または凝縮器108を介して第2の冷凍サイクルを冷却するカスケード構成に配置されている。
【0021】
第1の冷凍サイクル116の冷媒が、圧縮機102によって圧縮される。圧縮された冷媒が、冷媒を凝縮させるべく熱交換器または凝縮器104によって冷却される。凝縮された冷媒が、膨張器106を通って膨張し、熱交換器108において加熱されて気化する。気化した冷媒が、圧縮機102に戻される。
【0022】
第2の冷凍サイクル118においては、第2の冷媒が、圧縮機114によって圧縮される。圧縮された第2の冷媒が、過熱低減器120によって室温に冷却され、次いで熱交換器108において凝縮される。熱交換器108において第1の冷媒を十分に気化させることによって、第2の冷媒が凝縮される。凝縮した第2の冷媒が、膨張器110において膨張し、熱交換器112において加熱されて気化する。膨張器106および110は、バルブ、毛細管、タービン膨張器または圧力低下板とすることができる。気化した第2の冷媒が、圧縮機114に戻される。
【0023】
熱交換器112を、プロセスまたは物品の冷却に使用することができる。熱交換器112は、例えば、熱伝達媒体、ヒートシンクまたは物品を冷却できる。物品を、熱伝達媒体またはヒートシンクを使用して間接的に冷却することができる。1つの例示的な実施形態においては、物品が半導体ウエハである。他の例示的な実施形態においては、熱交換器112が、例えば水蒸気を凝縮させるべく気体の流れを冷却することができる。さらなる例示的な実施形態においては、熱交換器112を、深冷分離において使用すべく流れを冷却するために使用することができる。またさらなる例示的な実施形態においては、熱交換器112が、真空ポンプシステムにおいてクライオコイルを冷却するために使用される。さらに他の例示的な実施形態においては、熱交換器112が、生物医学冷凍庫を冷却するために使用され、検出器を冷却するために使用され、工業プロセス、化学プロセスまたは医薬用原料の調合において熱を交換するために使用される。
【0024】
熱交換器104、108、112および120は、例えば、プレート型熱交換器、チューブ内チューブの熱交換器、シェルおよびチューブの熱交換器とすることができる。熱交換器は、例えば、熱交換器への供給のための1つ以上のマニホールドに充填材または充填材入りの分配器を備えることができる。
【0025】
第1の冷媒は、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、フルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、フルオロエーテル、ヒドロカーボン、大気ガス、希ガス、低反応性成分、極低温ガス、または、これらの組み合わせから選択される1つ以上の成分を含む単一成分もしくは混合冷媒とすることができる。同様に、第2の冷媒も、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、フルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、フルオロエーテル、ヒドロカーボン、大気ガス、希ガス、低反応性成分、極低温ガス、または、これらの組み合わせから選択される1つ以上の成分を含む単一成分もしくは混合冷媒とすることができる。このような混合物においては、幅広く離れた沸点を有する成分(最高の沸点の成分から最低の沸点の成分までの差が、典型的には50Kないし100K)を含んでいる混合物を完全に凝縮または気化させることが困難であるため、2相(液相および気相)の存在が冷凍プロセスの全体を通じてきわめて一般的である。したがって、このような混合物は、この充填材入りのマニホールドから大きく利益を受ける。しかしながら、この充填材入りのマニホールドは、本明細書に開示される種類の熱交換器に進入する2相混合物を有するあらゆるプロセスに利益をもたらす。
【0026】
第1の冷媒の例示的な実施形態としては、ここでの言及によってその全体が分明細書に含まれたものとする米国特許第6,502,410 号、米国特許第5,337,572 号、および国際公開第WO 02/095308 A2 号パンフレットに記載されているような冷媒を挙げることができる。
【0027】
図1の第1および第2の冷凍サイクルのいずれかまたは両者は、自動カスケードサイクルとすることができる。図2が、霜取り能力を備える例示的な自動カスケードサイクルを示している。冷媒が、圧縮機202にて圧縮される。圧縮された冷媒が、圧縮された冷媒の流れから潤滑剤を取り除くため、随意による油分離器224を通過する。油分離器224によって分離された油を、移送管230を介して圧縮機202の吸い込み管222に戻すことができる。油分離器224の使用は、排出流に排出される油の量および冷凍プロセスの油に関する許容範囲に応じ、随意である。他の構成においては、油分離器224が霜取り分岐管228と直列に位置している。
【0028】
圧縮された冷媒は、油分離器224から配管206を通って凝縮器204を通過し、凝縮器204において、圧縮された冷媒が少なくとも部分的に凝縮され、2相の液体/蒸気流がもたらされる。カスケード構成の場合には、第1の冷媒を、凝縮器204において第2の冷媒を凝縮させるために使用することができる。
【0029】
凝縮器204から、凝縮または部分的に凝縮された冷媒が、配管210を通って冷凍プロセス208に運ばれる。冷凍プロセス208は、1つ以上の熱交換器、相分離器および絞り装置を備えることができる。冷凍プロセス208の低温側の出口214が、プロセスまたは物品から熱を吸収して冷却する蒸発器212に向けられている。暖かくなった冷媒は、配管220を介して冷凍プロセス208に戻される。カスケード機構においては、蒸発器212が、次のより低い温度の段の冷媒を冷却するために使用される。本発明による他の実施形態においては、当業者であれば理解できるように、図2の実施形態にさまざまなサービスバルブ(図示されていない)を備えることができる。
【0030】
図2の例示的な実施形態においては、冷凍プロセス208が、自動冷凍カスケードシステムとして示されており、熱交換器232、相分離器234、熱交換器236、相分離器238、熱交換器240、相分離器242、熱交換器244、絞り装置(FMD)246、FMD248およびFMD250を備えている。熱交換器は、高圧の冷媒から低圧の冷媒への熱の伝達をもたらす。FMDは、高圧の冷媒を低圧に絞り、絞りプロセスの結果として冷凍効果を生み出す。
【0031】
熱交換器232、236、240、蒸発器212および凝縮器204は、例えば、プレート型熱交換器、チューブ内チューブの熱交換器、シェルおよびチューブの熱交換器とすることができる。熱交換器は、例えば、熱交換器への供給のための1つ以上のマニホールドに充填材または充填材入りの分配器を備えることができる。
【0032】
冷凍システム200は、冷却、霜取りおよびスタンバイという3つのモードのうちの1つで動作することができる。上述の冷媒混合物は、これら3つのモードのそれぞれでの動作を可能にする。ソレノイドバルブ260および218が、どちらも閉じた状態である場合、システムはスタンバイであると称される。蒸発器に流れる冷媒は存在しない。冷媒は、高圧の冷媒をプロセスの低圧側に届ける内部の絞り装置(すなわち、FMD246、FMD248およびFMD250)によって、冷凍プロセス208内のみを流れる。これにより、冷凍プロセス208の連続動作が可能になる。単一絞りの冷凍プロセスが使用される場合には、スタンバイの動作モードは、冷媒を冷凍プロセス208の高圧側から低圧側に流すため、スタンバイモードの際に、流れを絞り通過で流す手段が利用できる場合にのみ可能である。いくつかの構成においては、スタンバイモードを、蒸発器への冷媒の流れを制御するか、冷凍プロセスに戻る冷媒の流れを制御する一対のソレノイドバルブによって可能にすることができる。他の構成においては、このスタンバイにおける内部の流れを可能にするために、追加の絞りおよびソレノイドバルブを使用することができる。
【0033】
他の実施形態においては、サブクーラーと称される熱交換器(例えば、後述の図3のサブクーラーなど)が、冷凍プロセスに備えられる。サブクーラーは、高圧の冷媒の一部を蒸発器からそらし、冷媒の温度を下げるべく低圧になるよう膨張させる。次いで、この流れが、蒸発器およびこのそらされた流れの両者に供給を行う全体の流れを、前もって冷却するために使用される。このように、蒸発器への流れが止められたとき、内部の流れおよび熱伝達が継続し、高圧の冷媒が徐々に低温になることが可能である。これが、結果として、サブクーラーに進入する膨張した冷媒の温度をより低くする。
【0034】
図3に示されているように、熱交換器312は、サブクーラーとして知られている。ある冷凍プロセスは、サブクーラーを必要とせず、したがってサブクーラーは、随意による構成要素である。熱交換器312が使用されない場合には、熱交換器308を出る高圧の流れが、直接冷媒供給配管320に供給される。戻りの流れの経路においては、冷媒戻り配管348が、熱交換器308に供給を行う。サブクーラーを備えるシステムにおいては、サブクーラーを出る低圧の冷媒が、ノード(分岐点、node)Hにて冷媒の戻りの流れと混ぜ合わされ、得られる混合流が、熱交換器308に供給される。熱交換器308を出る低圧の冷媒が、熱交換器306に供給される。相分離器304によって取り除かれた液体部分が、FMD310によって低圧になるよう膨張させられる。冷媒がFMD310から流れ、次いで熱交換器308から熱交換器306に流れる低圧の冷媒に混ぜ合わされる。この混合流が、熱交換器306に供給され、次いで熱交換器302に供給され、その後に圧縮機の吸い込み管364に供給される。これらの熱交換器が、高圧の冷媒と低圧の冷媒との間で熱を交換する。
【0035】
図2を参照すると、ソレノイドバルブ218を開くことによって、システムは冷却モードになる。この動作モードにおいては、ソレノイドバルブ260は閉鎖位置にある。冷凍プロセス208からのきわめて低い温度の冷媒が、FMD216によって膨張させられ、バルブ218を通って蒸発器212に流れ、次いで冷媒戻り配管220を介して冷凍プロセス208に戻る。
【0036】
冷凍システム200は、ソレノイドバルブ260を開くことによって霜取りモードになる。この動作モードにおいては、ソレノイドバルブ218が閉じた状態にある。霜取りモードにおいては、圧縮機202からの高温ガスが、蒸発器212に供給される。一般的は、霜取りは、蒸発器212の表面を暖めるために開始される。高温の冷媒が油分離器224を通り、霜取り配管228を経由してソレノイドバルブ260に流れ、ソレノイドバルブ218と蒸発器212との間のノードに供給され、蒸発器212に流れる。霜取りの開始時、蒸発器212はきわめて低い温度にあり、高温の冷媒ガスを冷却して完全に、または部分的に凝縮させる。その後、冷媒は、冷媒戻り配管220を介して冷凍プロセス208に戻る。戻ってくる霜取りの冷媒は、最初は、冷却モードにおいて通常もたらされる温度にきわめて近いきわめて低い温度にある。霜取りのプロセスが進むにつれて、蒸発器212の温度が高くなる。最終的に、戻ってくる霜取りガスの温度は、冷却モードにおいてもたらされる温度よりもはるかに高くなる。これは、冷凍プロセス208に大きな熱負荷をもたらす。これは、短い時間、一般的は2〜7分間であれば許容可能であり、通常、蒸発器212の全表面を暖めるために充分である。温度センサ(分かり易くするため図示されていない)を、冷媒戻り配管220に熱的に接触させることができる。冷媒戻り配管220において所望の温度に達したとき、温度センサによって制御システム(分かり易くするため図示されていない)が霜取りを終了させ、ソレノイドバルブ260を閉じて冷凍システム200をスタンバイにする。霜取りの完了後、冷却モードへの切り替えの前に冷凍プロセス208の温度を下げることができるよう、スタンバイの短い期間(一般的は、5分間)が必要とされる。
【0037】
本明細書における説明の目的のため、冷凍システム200の冷凍プロセス208は、図2においては自動冷凍カスケードサイクルの一種として示されている。しかしながら、極低温の冷凍システム200の冷凍プロセス208は、混合冷媒を使用するあらゆる極低温冷凍システムであり得る。より一般的には、本発明による実施形態は、233Kと53K(−40Cと−220C)との間の温度の冷凍を提供する冷凍システムに関する。この範囲に包含される温度は、低温、超低温、極低温などとさまざまに称される。本出願の目的において、用語「きわめて低い」または「極低温」は、233Kと53K(−40Cと−220C)との間の温度範囲を意味して使用される。また、本出願の目的において、用語「混合冷媒」は、少なくとも2つの成分を含んでおり、最高沸点の成分から最低沸点の成分まで標準沸点が少なくとも50Cは異なっている冷媒混合物を意味している。このように定義される用語において、本発明による実施形態は、混合冷媒を使用する極低温の冷凍システム、およびそのような冷凍システムにおいて使用される熱交換器に関する。
【0038】
さらに具体的には、冷凍プロセス208は、複数の相分離器を備えるか、ただ1つの相分離器を備えるか、あるいは相分離器を備えないシステムとすることができる。
【0039】
本発明の実施形態において使用できる複数の相分離器を備えるシステムの例は、Polycold(登録商標)クライオクーラーシステムまたは高速サイクルクライオクーラーシステム(すなわち、自動冷凍カスケードプロセス)としても知られている、Missimer式のサイクルのシステムである(すなわち、Missimerの米国特許第3,768,273 号に記載されているような自動冷凍カスケードシステム)。Polycoldシステムおよび関連の変形例が、Forrestの米国特許第4,597,267 号およびMissimerの米国特許第4,535,597 号に記載されている。あるいは、相分離の段がないか、相分離の段を1つ有するか、相分離の段を2つ以上有する、任意の極低温冷凍プロセスが使用可能である。
【0040】
やはり使用可能であるが、相分離器を1つ備えるシステムの例が、最初のKleemenko によって説明されている。
【0041】
やはり使用可能であるが、相分離器を備えないシステムの例が、CryoTiger またはPCCシステム(カリフォルニア州PetalumaのHelix Polycold Systems Inc. によって製造されている)であり、相分離器を有さない単一段のクライオクーラーとしても知られている。このような装置は、Longsworthの米国特許第5,441,658 号に記載されている。
【0042】
低温または極低温の冷凍についてのさらなる文献を、American Society of Heating, Refrigeration, and Air Conditioning Engineeringによる1998 ASHRAE Refrigeration Handbookのチャプター39に見付けることができる。使用される相分離器の数に加え、使用される熱交換器の数、および内部の絞り装置の数を、種々の構成において、特定の用途にとって適切であるように増減させることができる。上述した文献はすべて、ここでの言及によって本明細書に取り入れられたものとする。
【0043】
冷凍サイクルのさらなる変形として、ガス流の冷却または液化に使用される冷凍プロセスが挙げられる。いくつかの構成においては、ガスの冷却または液化のために蒸発器が使用される。他の構成においては、ガス流が、少なくとも3つの流れの経路(戻りの低圧の冷媒が、高圧の冷媒および少なくとも1つのガス流を冷却する)を備える熱交換器を使用することによってあらかじめ冷却される。いくつかの場合には、蒸発器およびこの予冷熱交換器の機能が組み合わせられる。この構成においては、高圧の冷媒が膨張させられ、次いで3つの流れの熱交換器に直接戻される。さらに他の変形においては、複数のガス流が冷却され、または液化される。冷凍サイクルの他の変形として、単数または複数の液体の流れの冷却または液化に使用される冷凍プロセスを挙げることができる。
【0044】
図2に示した冷凍プロセス208について、いくつかの基本的変形が可能である。図2に示した冷凍システム200は、ただ1つの圧縮機を伴っている。しかしながら、この同じ圧縮作用を並列の2つの圧縮機を使用して得ることができることや、圧縮プロセスを直列の圧縮機または2段式の圧縮機によって複数段に分解できることを理解できるであろう。考えられるこれらの変形はすべて、本明細書の開示の技術的範囲に含まれると考えられる。図示の実施形態は、信頼性の向上をもたらすという理由で、ただ1つの圧縮機を使用している。並列の2つの圧縮機の使用は、冷凍システムの負荷が軽い場合にエネルギーの消費を少なくするために有用である。この手法の欠点は、追加で必要となる構成部品、制御部、床面積およびコスト、ならびに信頼性の低下である。直列の2つの圧縮機を使用すると、各圧縮段の圧縮比を小さくするための手段がもたらされる。これは、圧縮された冷媒ガスが達する最高の吐き出し温度を下げることができるという利点をもたらす。しかしながら、やはり追加の構成部品、制御部およびコストが必要となり、システムの信頼性が低下する。図示の実施形態は、ただ1つの圧縮機を使用している。ただ1つの圧縮機においては、ただ1つの圧縮段における混合冷媒の圧縮を、過剰な圧縮比または吐き出し温度とならないように使用することができる。多段の圧縮をもたらすように設計され、圧縮段の間での冷媒の冷却を可能にする圧縮機を使用すると、別個の圧縮段の利益を維持しつつ、依然として使用されている圧縮機はただ1つであるため、複雑さの増加という不都合を最小限にできる。
【0045】
相分離器は、合体式(coalescent-type )、渦式、デミスター式、またはこれらの形式の組み合わせなど、さまざまな形式をとることができる。相分離器は、合体フィルタ、編みメッシュ、細目金網および構造化された材料を含むことができる。設計、流量および液体の含有量に応じ、相分離器は、30%超の効率で動作でき、85%超、または99%超にもなりうる。
【0046】
図2に示した冷凍システム200は、ただ1つの蒸発器を伴っている。一般的な変形は、複数の蒸発器に霜取りおよび冷却制御の別個独立の制御を提供することにある。そのような構成においては、蒸発器が並列であって、それぞれが低温の冷媒または高温の霜取りガスの流れを制御するための260、218などのバルブ一式、ならびに接続配管を有している。この構成によれば、例えば1つ以上の蒸発器を冷却、霜取りまたはスタンバイのモードにしつつ、他の蒸発器を別個独立に冷却、霜取りまたはスタンバイのモードにすることができる。
【0047】
冷凍システム200は、相分離器234の第1の出口からの分岐によって供給を受ける、随意によるソレノイドバルブ252をさらに備えている。ソレノイドバルブ252の出口は、随意による膨張タンク254に供給され、膨張タンク254は、第2の膨張タンク256に直列(図示)または並列(図示されていない)に接続されている。さらに、随意によるFMD258の入口が、ソレノイドバルブ252と膨張タンク254との間のノードにつながっている。FMD258の出口は、熱交換器236と熱交換器232との間のノードにおいて、冷媒戻り経路につながっている。システムの構成要素について、種々の構成が使用可能である。それらの構成として、米国特許第4,763,486 号および米国特許第6,644,067 号に記載されているように、受動膨張タンク、ガスを膨張タンクに貯蔵すべく起動の際にソレノイドバルブが開くシステム、および起動の際にシステムの性能を管理すべく使用されるバイパスバルブを備えるシステムが挙げられる。Longsworthによって米国特許第5,441,658 号に開示されているような膨張タンクも特別な起動時の構成も備えないさらにほかの構成も、使用可能である。この理由で、膨張タンクの使用は随意である。
【0048】
起動時、冷凍システム200の全体の冷媒の大部分は、システム全体が室温にあるため、一般的には気体の状態にある。冷却時間が短縮されるように冷媒ガスを管理することが重要である。起動時に冷凍システム200における循環から選択的にガスを取り去ることが、この時間短縮に向けて有益である。さらに、ガスが冷凍システム200に戻される速度も、冷却速度に影響する。
【0049】
システムコントローラ(図示されていない)が、起動時にソレノイドバルブ252を短く開く(一般的には、10〜20秒間)。ソレノイドバルブ252は、例えば、Sporlan 社のB6型バルブである。結果として、起動の際に、冷媒ガスが相分離器234を出て、膨張タンク254および膨張タンク256からなる直列の組み合わせに供給される。FMD258が、膨張タンク254および256への冷媒ガスの流れ、ならびに膨張タンク254および256からの冷媒ガスの流れを調節する。FMD258を通過する流れの設定についての2つの考慮事項は、次のとおりである。すなわち、冷凍システム200に戻るガスが、より高速な冷却を保証するために、任意の時点に存在するあらゆる動作条件において凝縮器で凝縮可能であるよう、充分に低速でなければならない。この起動プロセスにおける初期の液体の形成が、15〜60分程度の冷却時間を可能にする。同時に、一方では、FMD258を通過する流れの速度が、低い吸い込み圧力ゆえに生じうる運転停止を防止すべく、充分な冷媒が冷凍システム200内を流れるように保証するため、充分に高速でなければならない。膨張タンク254および256へのガスの流れ、ならびに膨張タンク254および256からのガスの流れは、図2に示されているようにFMD258を使用して受動的に制御される。また、センサに組み合わせたコントローラを、能動的な流れの制御をもたらすために使用することもできる。膨張タンクの構成は、少なくとも1つの圧力容器を含んでおり、直列および並列に配置された任意の数および組み合わせの膨張タンクを有することができる。他の構成においては、システムの冷却時または連続動作の際に、凝縮器における液体の形成が不要である。これらの場合には、認容できない低い吸い込み圧力が生じない限りにおいて、再導入されるガスの流量がより少なくても充分である。
【0050】
図4は、2段の冷凍システムを示している。第1段が高温段であって、第2段すなわち低温段を冷却する。次いで、第2段が、蒸発器または熱交換器444によってプロセスまたは物品を冷却する。
【0051】
第1段において、圧縮機402が第1の冷媒を圧縮する。圧縮された冷媒が、随意による油分離器404を通過し、ここで混入している油を取り除き、圧縮機に戻すことができる。圧縮された冷媒は、凝縮器406に運ばれ、凝縮器406において液体の形態に凝縮する。凝縮した冷媒が、冷凍セクション408に渡される。
【0052】
この冷凍セクション408は、1つ以上の熱交換器を備えることができる。さらに冷凍セクション408は、1つ以上の相分離器および絞り装置(FMD)または膨張機を備えることができる。図示の例では、冷凍セクション408が、3つの熱交換器410、414、416、相分離器412およびFMD420を備えている。膨張した冷媒が、熱交換器430から熱を取り去るために使用され、次いで冷凍セクション408に戻され、その後に熱交換器410、414、416を通過し、熱交換器410、414、416によって、熱が圧縮または凝縮冷媒から圧縮機402に戻る低圧の冷媒と交換される。圧力低下または膨張や、種々の成分の戻りの流れとの混合の結果として、さらなる冷凍効果を生み出すために、相分離器412およびFMD420を使用することができる。
【0053】
冷媒の流れを制御するため、冷凍セクションの出口にFMD418を使用することができる。冷凍サイクルを単独で循環(サイクル)させることができるよう、FMD418を閉じることができる。また、凝縮した冷媒を熱交換器430へ向けて膨張させることができるよう、FMD418を開くこともできる。1つの例示的な実施形態においては、熱交換器430において第1の冷媒が気化できる一方で、第2の冷媒が凝縮する。
【0054】
第2段すなわち低温段においては、第2の冷媒が圧縮機422で圧縮される。圧縮された冷媒は、混入している油を取り除くべく随意による油分離器424を通過することができる。圧縮された冷媒は、圧縮された冷媒を部分的に冷却するためのアフタークーラー426を通過できる。他の実施形態においては、アフタークーラー426および油分離器の配置を、逆にすることができる。また、圧縮された冷媒を、圧縮された冷媒をさらに冷却するとともに、圧縮機吸い込み配管に戻る低圧の冷媒を部分的に加熱するため、熱交換器428に通すことができる。次いで、圧縮された冷媒は、凝縮器または熱交換器430を通過し、ここで第1の冷凍サイクルとの熱の交換が行われる。その後、完全または部分的に凝縮した冷媒は、さらなる冷却のために冷凍セクション432に渡される。冷却された冷媒が、FMD442を通って膨張機444へ向けて膨張させられ、プロセスまたは物品を冷却する。
【0055】
熱交換器434、438、440、相分離器436およびFMD446を含んでいる冷凍セクション432は、冷凍セクション408と同様の様相で動作することができる。あるいは、冷凍セクション432において、さまざまな構成を使用することができる。
【0056】
熱交換器406、410、414、416、426、428、430、434、438、440および444は、例えば、プレート型熱交換器、チューブ内チューブの熱交換器、ならびにシェルおよびチューブの熱交換器とすることができる。熱交換器は、例えば、熱交換器への供給のための1つ以上のマニホールドに充填材または充填材入りの分配器を備えることができる。
【0057】
さらに冷凍セクションは、冷凍システム208について述べた任意のシステムの変形を備えることができる。
【0058】
図5は、例示的な熱交換器500を示している。熱交換器が、第1の流体を受け取るための入力マニホールドまたはヘッダー502を備えている。入力マニホールド502が、1つ以上のチャネル504からなる第1の組に供給を行う。チャネル504を、第2の流体を運んでいる第2の組のチャネル506から、熱伝達表面514によって隔てることができる。チャネル504は、第1の流体を出口マニホールドまたはヘッダー508に伝えることができる。図5は、2つの流れの熱交換器を示している。しかしながら、本発明は、3つ以上の流れを有する熱交換器にも適用可能である。
【0059】
1つの例示的な実施形態において、熱交換器500は、プレート型熱交換器である。1つの例示的な実施形態において、プレート型熱交換器は、平行なプレート一式を、2組のチャネルが形成されるようなやり方で4つのマニホールドに接続して有することができる。1つの実施形態においては、プレート型熱交換器が、例えばプレート型熱交換器の幅に対する長さの比が8.0以下、あるいは6.0以下であるプレート型熱交換器など、短経路のプレート型熱交換器とすることができ、また、他の任意の短経路の熱交換器とすることもできる。所望の熱伝達表面積を達成するため、2つ以上の熱交換器を直列に接続でき、また、タンデム動作のために順に接続することもできる。さらには、2つ以上の熱交換器を、冷凍セクションを形成すべく液体セパレータをちりばめつつ直列に接続することができる。さらなる例示的な実施形態においては、プレート型熱交換器が、熱交換の流体(複数)が互いに反対の方向に流れる対向流のプレート型熱交換器とすることができる。プレート型熱交換器の例示的な実施形態として、Swep, Inc.のB15 およびFlat-Plate FP2x8-40 というプレート型熱交換器が挙げられる。他の実施形態においては、熱交換器500が、シェルおよびチューブの熱交換器、または複数のチューブを備えるチューブ内チューブの熱交換器とすることができる。
【0060】
図5の例示的な熱交換器は、入力マニホールド502に充填材510を備えている。充填材が、流れ分配器を形成している。充填材510は、無作為なまたは構造化された充填材とすることができる。例えば、無作為な充填材は、マニホールド内に位置するときに無作為に配置される充填材とすることができる。図示の充填材は、球形のボールを含んでいる。また、無作為な充填材は、リング、円柱、サドル、中空回転楕円体、ガーゼもしくはメッシュ片、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。寸法および形状の異なる充填材を、1つのマニホールドに一緒に使用することができる。一般に、輸送時または動作時に動くことがないよう、充填材をしっかりと固定することが好ましい。特定の実施形態においては、無作為な充填材の大きさは、チャネル504の幅よりも大きくてよいが、ヘッダーまたはヘッダーにつながる開口の幅の99%を超えるべきではない。例えば、球形または円柱形の充填材要素の直径が、プレート型熱交換器のチャネルの幅よりも大きくてよい。より小さい充填材要素が必要とされる場合には、充填材の材料が流れの通路に進入することがなく、また流れの通路を塞ぐことがないよう、ワイヤメッシュ、スクリーンなどの保持用の構造体を使用することができる。
【0061】
図6は、プレート型熱交換器602を示している。プレート型熱交換器602は、2組のチャネルを形成する1つ以上のプレート604を備えている。入力マニホールドAおよび出口マニホールドBが、1組のチャネルに連通している。入力マニホールドDおよび出口マニホールドCが、第2の組のチャネルに連通している。充填材を、マニホールドAまたはDに流れの分配器を形成するため、入口マニホールドAまたはDの1つ以上に配置することができる。随意により、充填材を、少なくとも1つの流れの出口に使用してもよい。出口に充填材を使用することで、必要とされる冷媒の分量を少なくし、液体冷媒の貯蔵を最小限または不要にすることができる。
【0062】
図5は、チャネル504を通過するAからB(図6参照。図5の入口502から出口508への流れに相当する)への流れのみを示す簡略化した断面図である。チャネル506を通過するDからCへの反対方向の流れも、同様であると考えることができる。必要な流れをもたらすべく複雑な形状のプレートを有しているプレート型熱交換器は、よく知られており、市販の製品の例は上述のとおりである。図6の概略図から見て取ることができるように、そのような図5の熱交換器は、一方の流れが図5のチャネル504を左方から右方に(したがって、図6の入口Aから出口Bに)進み、反対の流れがチャネル506を右方から左方に(したがって、図6の入口Dから出口Cに)進む対向流の熱交換を実現する。また、図5および6の対向流の実施形態に限られず、平行流、交差流、または他の種類の熱交換も、本発明による実施形態において使用可能であることを理解すべきである。
【0063】
図6に例示の熱交換器602を、圧縮された冷媒と冷凍セクションを出る戻りの膨張した冷媒との間で熱を交換するための過熱低減交換器として使用することができる。また、熱交換器602を、凝縮器または蒸発器として使用することも可能である。また、熱交換器602を、圧縮された冷媒から他の冷凍サイクルの膨張した冷媒に熱を伝達するための熱交換器として使用することも可能である。他の例示的な用途においては、熱交換器602を、冷凍セクションにおいて凝縮する圧縮された冷媒と戻りの膨張した冷媒との間で熱を交換するため、冷凍セクションにおいて使用することができる。例えば、1つ以上の熱交換器602を、図2に示した冷凍プロセス208の熱交換器232、236および240として使用することができ、図3の冷凍セクション318の熱交換器302、306、308および312として使用することができ、図4の冷凍セクション408の熱交換器410、414および416として使用することができ、図4の冷凍プロセス432の熱交換器434、438および440として使用することもできる。
【0064】
例としての実験において、SWEP Inc. 製の4プレートPTHX B15/4を取り入れてなる単一の膨張システムをテストした。CH4/C2H4/C3H8/R142を含む多成分の混合冷媒を使用した。システムにおいては、3.6cfm (6m3/h)の往復式気密圧縮機を使用した。流れ分配器のないシステムにおいては、190Kという最小温度に達した(QR=0W)。充填材入りの流れ分配器の設置後、システムは170Kというより低い温度に達し(QR=0W)、190Kにおいては、QR=300Wの冷却能力を有していた。このテストにおいて、熱交換器は、対向流の構成で動作してアフタークーラーから高圧の流れを受け取り、高圧の冷媒を単一の膨張装置に届け、蒸発器から低圧の冷媒を受け取り、圧縮機に低圧の冷媒を届ける、冷媒から冷媒への(refrigerant-to-refrigerant)熱交換器として使用された。
【0065】
図7A〜7Eは、熱交換器のマニホールドにおいて使用するための例示的な充填材を示している。図7Aは、例示的な球形ボールを示している。代案として、長円体の無作為な充填材も使用可能である。図7Bは、ラシヒ・リング(Raschig ring)、ラシヒ・スーパーリング(Raschig Super ring)、カスケード・ミニリング(Cascade mini-rings)、ポール・リング(PALL ring )などの例示的なリングまたは円柱形の充填材を示している。図7Cは、Berlサドル、Intalox セラミックサドル、Intalox 金属サドル、Koch-Glitsch Fleximax などの例示的なサドル型充填材を示している。図7Dは、VFF Hacketten 、 VFF Top-Pak などの例示的な中空楕円体充填材を示している。他の例示的な実施形態において、図7Eがガーゼ構造を示している。代案として、メッシュ片または孔空き金属リボンを使用することが可能である。無作為な充填材は、中実または多孔性とすることができ、選択される材料がプロセス流体および温度に適合できる限りにおいて、金属、セラミック、プラスチックまたは同様に適切な材料とすることができる。さらなる実施形態では、構造化された充填剤が使用される。構造化された充填材として、成型されたチャネルを挙げることができ、メッシュまたは孔空きのホイルによって構成することが可能である。さらなる例示的な実施形態においては、構造化された充填材または無作為の充填材を含んでいるカートリッジを、マニホールド、ヘッダーまたは分配器に配置することができる。
【0066】
本発明の実施形態において使用される充填材に予想される利益は、熱交換器の平行なプレートの間に流れをより均一に分配する点にある。この利益は、ヘッダー領域の全体にわたってより一様な流れを生成することによって達成されると予想される。この場合、一様な流れとは、液体または気体の流れの均一な分配を指す。このプロセスにおいて重要であると予想されるメカニズムは、ヘッダー速度の増加、水力直径の減少、および速度流れ場(velocity flow field)の乱れである。充填材料の物質的存在ゆえ、得られる断面流れ面積が小さくなる。これが、流れの速度を大きくさせる。また、充填材料は流れの通路を小さくし、これが水力直径を小さくする。さらに、充填材料の存在は、流れを乱してねじ曲がった(torturous )経路を生み出す。これが、液相と気相との間のより良好な混合につながる。また、混合および充填材によって占められた物理的体積が、ヘッダー内に液相を「プールする」可能性を少なくする。流れが、ヘッダーの入口(または出口)からヘッダーの流れのない端部に移動するにつれて減じられるため、充分な液体−気体の一様性を確保すべく充分な速度を維持するために、ヘッダーの長さに沿って断面積を減少させる必要があるかもしれない。しかしながら、ヘッダーの長さに沿って同じ寸法および同じ充填材密度を有するボールで構成された充填材において、良好な結果が得られている。
【0067】
充填材を、約4psi 以下、約2psi 以下など、熱交換器を横切って約5psi を超えない圧力低下をもたらし、約3m/s 以下の流速をもたらすような大きさにすることが好ましい。一般に、熱交換器を横切っての圧力低下は、速度とともに大きくなり、液体の割合が多くなると大きくなる。特定の設計では、より積極的な寸法が許容可能である。そのような状況においては、20m/s 以上にもなる速度および50psi 以上にもなる圧力低下が、生じてもよい。通常は、このような高い速度および大きな圧力低下は望ましくないが、幅広い範囲の速度および圧力低下(上述の速度および圧力低下を含む)が本発明の範囲に含まれることを、理解できるであろう。ヘッダーを横切っての圧力低下が、熱交換器を横切っての圧力低下に対して有意になると、入口に最も近い流れがよりいっそう第1組のプレートを横切って流れようとするため、熱交換器を横切って流れの不均衡が一般的には存在する。この理由ゆえ、各プレートにわたってほぼ均一な分配を実現するために、ヘッダーにおける圧力低下が小さいことが好ましい。また、無作為な充填材について、有効寸法または直径(effective size or diameter)がチャネルの幅または直径よりも大きくなり、あるいは小さくなるように、大きさを決めることが可能である。
【0068】
図8A〜8Fは、マニホールドおよびヘッダーの例示的な実施形態を示している。図8Aは、無作為な充填材804が充填されたマニホールド802を示している。充填材804は、例えば、マニホールドから供給を受けるチャネルの直径または寸法よりも大きい直径または寸法を有することができる。構造体806が、無作為な充填材を動かぬように固定することができる。構造体806は、例えば、メッシュ、スクリーンまたは孔空きホイルで形成することができる。例えば、メッシュは、ワイヤまたはポリマーメッシュとすることができる。ホイルは、金属またはプラスチックのホイルとすることができる。そのような構造体806は、構造体806を通過する冷媒流体の流れを可能にするために充分に孔空けされることができ、また透過性とすることができる。図8A〜8Fにおいて、流れの矢印807が、構造体806を通過し、マニホールド802の流れの端部809に入り、流れない端部811に向かい、813において熱交換器のチャネルに向かってヘッダーを出る、冷媒流体の全体としての流れの方向を示している。境界815、817が、マニホールドおよびヘッダーの流れのない境界である一方で、構造体806および境界819は、流れに対して透過性とすることができる。他のさまざまな流れの方向および流れの境界の構成も、使用可能である。図8A〜8Fは、流れが(矢印807によって示されているように)ヘッダーの上部に進入してチャネル504へ向け右方に進む、図5の入口502のようなヘッダーへの流れの例を示している。しかしながら、他の例では、流れがヘッダーの上部に進入してチャネル506へ向け左方に進む、熱交換器500の右側の入口(図5には示されていない)への流れであり得る。また、例えば出口508において、流れがヘッダーの左方から進入でき、上部から出ることもできる。構造体806および他の透過性の境界ならびに流れのない境界の配置構成は、マニホールドまたはヘッダーを通過する流れの方向に応じてさまざまであろう。上述の方向以外の流れの方向も可能である。図8A〜8Fにおいては、流れの方向が矢印によって大まかに示されているが、実際の流れは、ヘッダーまたはマニホールドの透過性の境界の大部分またはすべてを通過することを、理解すべきである。
【0069】
図8Bは、ヘッダーまたはマニホールド802が可変の形状の構造体806を含んでいる他の実施形態を示している。可変の形状の構造体806が、充填材804を固定することができる。図8Bの特定の実施形態においては、構造体806が、マニホールドの奥行きに沿って変化する断面積を有することができる。可変の形状の目的は、得られる流れの面積をヘッダーの長さに沿って減少する流れに一致するように調節することとできる。一般に、入口(または出口)において、流れの面積および質量流量が最大であり、ヘッダーの端部においては、流れの面積および質量流量が最小である。1つの例示的な実施形態においては、構造体806の断面積が、倒立円錐など、入口から流れのない端部へ向けてマニホールドに沿って減少している(反対に、充填材804の総断面積は、入口から流れのない端部へ向けてマニホールドに沿って増加している)。1つの例示的な実施形態においては、円錐の先端がマニホールドまたはヘッダーの中心線からずらされ、チャネルから離れているなど、円錐が非対称であってよい。他の実施形態においては、長さが相違しており、直径が同じまたは相違している一連の流れチャネルがヘッダーの内側に挿入されて、ヘッダー部への複数の入口をもたらしており、この実施形態においては、ヘッダー部が充填材料を含むことができる。さらに他の実施形態においては、構造体806が円柱の形態をとることができる。円柱形の部材の場合には、断面積は変化しないが、その存在がヘッダーの全体により高い速度をもたらす。構造体806は、孔を有する中実の部材、多孔性の部材、メッシュまたは織成の布地とすることができる。構造体を、金属またはポリマー構造で形成することができる。
【0070】
図8Cは、マニホールドがマニホールドの長さに沿って変化する断面を有している変形を示している。この例示的な実施形態においては、充填材の全断面が、入口から流れのない端部へ向けてマニホールドに沿って減少している。構造体806が、充填材804を固定している。図示のように、構造体806は対称的である。しかしながら、他の実施形態においては、非対称な構造体も使用可能である。
【0071】
図8Dは、さまざまな寸法の充填材(810、812、および814)が使用されているマニホールドまたはヘッダー802を示している。充填材が、構造体806によって固定されている。この例示的な実施形態においては、充填材の寸法が、マニホールド802の流れのない端部に向かって減少している。しかしながら、異なる寸法の充填材を、一様に分布させてもよいし、より大きな充填材がマニホールド802の流れのない端部のより近くに位置するように配置してもよい。1つの特定の実施形態においては、充填材が、2種類(bimodal )であって、第1の寸法の充填材および第2のサイズの充填材を含んでいる。他の変形においては、3つ以上の寸法の充填材要素が使用され、いくつかの変形においては、2つ、3つまたはそれよりも多い充填材形状が使用される。異なる寸法の充填材要素が使用される場合には、それらを漸進的な様相(progressive fashion )で(例えば、より大きい充填材要素からより小さい充填材要素に)分布させることができるし、無作為な様相で配置することもできる。さらに、充填材要素が、充填材要素の寸法および形状の異なる複数の組を有することができる。また、充填材要素形状の変化(不連続な組に分布させることができるか、ヘッダーまたはマニホールドを横切って連続的または無作為に変化させることができる、2つ、3つまたはそれよりも多い異なる充填材要素形状によって実現できる)を、使用することが可能である。
【0072】
図8Eは、構造体806がマニホールド802の流れのない端部に向かって増加する断面積を有している(反対に、充填材の総断面積が、マニホールド802の流れのない端部に向かって減少している)さらなる例示的な実施形態を示している(図8Eの配置構成は、マニホールドの流れのない端部に向かって流れの面積が減少するという好ましい関係を有していないが、例示のための変形として提示されている点に注意されたい)。図8Eの他の実施形態においては、空白の空間として図8Eに示されている2つの側の間の領域を、中実のバリアで満たすことができる。その場合、流れは構造体806を通過し、したがって充填材料804を通過する流れの断面積は、マニホールドの流れのない端部に向かって減少する。図8Fは、カートリッジ816がマニホールド802に挿入された例示的な実施形態を示している。カートリッジ816は、例えば、無作為な充填材を含み、または収容することができる。また、カートリッジ816が、構造化された充填材で形成されてもよい。
【0073】
図8A〜8Fに示した変形以外の変形も使用可能である。例えば、充填材が、中実の素子または多孔性の素子を、他の充填材料で囲んで含むことができる。また、充填材の形状、充填材の内側の中実もしくは多孔性の素子の形状、または基本的な充填材そのものの形状が、滑らかな連続的様相で、波状の様相で、または段階的な様相で変化してもよく、さらには対称または非対称とすることができる。構造体による流れの断面積の効果的な減少が、流れの面積の線形または非線形な変化をもたらすことができる。
【0074】
図9A、9Bおよび9Cは、熱交換器の例示的な向きを示している。図9Aは、水平な熱交換器を示している。図9Bは、高温端が上方にある熱交換器を示している。例示的な冷凍セクションにおいては、対向流の熱交換器において、圧縮された冷媒の入口マニホールドが、圧縮された冷媒の出口マニホールドの上方に位置し、膨張した冷媒の入口マニホールドが、膨張した冷媒の出口マニホールドの下方に位置している。図9Cは、高温端が熱交換器の底部の付近に位置し、したがってマニホールドがそのように配置されている他の実施形態を示している。
【0075】
熱交換器は、さまざまな向きで動作させることができる。1つの例示的な実施形態においては、テスト対象の熱交換器を、「高温端」を上にして設置し、その後に「高温端」が下の位置に180°回転させた。これらの状況が、表1にそれぞれNo.3および4として示されている。システムは、良好な動作の安定性を示した。
【0076】
【表1】
【0077】
表1を参照すると、流れ分配器を備える熱交換器を使用する冷凍サイクル(行2、3、および4)は、流れ分配器を備えない熱交換器を使用した冷凍サイクル(行1)よりも、低い蒸発器温度を示した。熱交換器の「高温端」を上にした冷凍サイクル(行3)は、熱交換器の「高温端」を下にした冷凍サイクル(行4)に比べ、蒸発器において低い温度を示した。
【0078】
本発明の実施形態による充填された流れ分配器の効率を、ヒドロカーボン混合物にて動作しているプレート型熱交換器について、流れ分配器の有無での熱交換器の全体効率(HTC またはk 、W/m2・K)を示している図10に見て取ることができる。結果は、190Kの冷凍温度で動作している単一段の冷凍システムを使用するさらなる実験から計算したものである。熱交換器の熱負荷は、混合冷媒について測定された流量ならびに熱交換器の入口および出口における温度および圧力の値にもとづいて割り出された。Soave の状態方程式を、熱交換器の流れの入口および出口におけるエンタルピーの計算に使用した。平均の温度差が計算された。
【0079】
ヒドロカーボン主体の混合冷媒(ヒドロカーボン(HC):CH4/C2H4/C3H8およびR-142bのそれぞれの成分の含有量(モル%)が41/32/20および7)で動作している4プレートのプレート型熱交換器の効率についてのさらなる実験データが、表2に示されている。さらに表2は、Arおよびハロカーボン(AR/R) R14, R23, R134a, R142b にもとづく混合冷媒についてのデータを含んでいる。モル%での組成は、1%の精度で7/41/30/12/10と測定された。データは、本明細書において提案した流れ分配器を備えるプレート型熱交換器が、種々の混合冷媒において高効率であることを実証している。さらに表2は、ヒドロカーボン(HC)混合冷媒CH4 / C2H4 / C3H8 / C4H10 を、それぞれ34/33/17/15(モル%)という成分含有量で含んでいる)で動作している6プレートのプレート型熱交換器についてのテストデータを示している。結果は、約20〜30%の効率改善を示している。実際の性能はさまざまであろう。しかしながら、本発明の使用に起因する2%以下の熱交換器効率の改善であっても、本発明の範囲であると考えられる。本明細書において特定の冷媒混合物および冷媒の種類に触れたが、本発明による実施形態がすべての2相冷媒および冷媒−油混合物において使用可能であることを、理解すべきである。また、大部分の冷凍システムが、圧縮機油を冷媒と一緒に循環させているため、本発明は、油または油に富んだ液相においても有用性を有すると予想される。
【0080】
【表2】
【0081】
タンデム動作の効率が、表3に示されている。このテストにおいては、2つのプレート型熱交換器を、単独の熱交換器の機能上の等価物をもたらすために、直列に接続した。本発明の実施形態による流れ分配器が、入口における混合冷媒の2相の気体−液体の流れにおいて、効率的なプレート型熱交換器の動作を可能にする。表3に示されているように、3.6cfm の圧縮機にもとづく小規模のクーラーについて、約0.10よりも大きい、比較的高いカルノー効率(CEF )が実証された。短経路のプレート型熱交換器B15/6 が、比較的高い温度の範囲で動作するように設置された。
【0082】
【表3】
【0083】
他の一連のテストを、24cfm の排気量の圧縮機を有する2段(単一相分離器)自動カスケード低温冷凍システムについて行った。Ar/R14/R23/R125/R236faを含んだ混合冷媒を使用した。「オリフィス」式の分配器を備えるFlatPlate, Inc. 製のSC-12 5”x12”(50プレートSubCooler )というプレート型熱交換器を最初に選択した。高圧(280〜300psig)の流れの入口に位置する分配器の圧力低下は、8〜10psi であった。分配器をプレート型熱交換器の吸い込み側(30〜50psig)に配置し直したとき、熱交換器は16〜18psi の圧力低下を生じさせた。
【0084】
SC-12 を、同様の寸法のC4A 5”x12”(44プレートCondenser )というプレート型熱交換器に置き換えた。C4A の入口ヘッダーは、工場設置のヘッダーを備えていなかった。代わりに、3/8”のステンレス鋼ボールで構成された充填剤を設置することによって、入口ヘッダーを変更した。ボールベアリングをヘッダー内に保持するため、ヘッダーの上部に円板状に形成された孔空き金属のシートを配置した。円板の直径は、接続配管の内径よりも大きく、ヘッダーの絞りよりも大きかった。これにより、配管が、配管によって孔空き金属板を所定の位置に保持されるように固定できた。熱交換器の供給側において測定した全体としての圧力低下は、2〜3psi であり、戻り側においては3〜5psi であった。全体としての熱伝達係数は、200W/m2・Kから300W/m2・Kに向上した。
【0085】
充填された分配器を入口マニホールドのうちの1つ以上に配置して有している本発明の実施形態による熱交換器を、冷凍システムの構築に使用可能である。冷凍システムの製造のための方法において、充填された分配器または充填材を冷凍システムに関係する熱交換器のマニホールドに挿入してもよい。同様に、既存の冷凍システムを、冷凍システムに関係する熱交換器の入口マニホールドに充填された分配器または充填材を挿入することによって、再生、補修または改良する(be refurbished, serviced, or retrofitted)ことができる。これらの冷凍システムは、単一成分のシステムでも、混合冷媒のシステムでもよい。また、冷凍システムは、小型またはキャビネットサイズのユニットとすることができる。
【0086】
本発明による実施形態は、熱交換器のヘッダーにおける液体冷媒の蓄積を防止することによって、特定のモードでの冷凍システムの長期動作における安定性および信頼性の向上という利点をもたらす。さらに、実施形態は、さまざまな熱負荷および他の条件のもとで、起動時、冷却モード、スタンバイモードおよび霜取りモードを含むさまざまな運転状態における動作時に、改善された安定性をもたらす。
【0087】
以上に照らし、望ましい性能を提供する熱交換器、熱交換器を取り入れた冷凍システム、冷凍システムの運転方法、既存の熱交換器を処置するための方法、および関連の技術を提供することが、この技術分野において一般的に望ましいと考えられる。
【0088】
上述した主題は、例示であると考えるべきであり、本発明を限定するものと考えるべきではなく、添付の特許請求の範囲は、本発明の技術的範囲に含まれるすべての変更、強化および他の実施形態を包含することを意図している。したがって、本発明の技術的範囲は、法律によって許される最大の範囲まで、特許請求の範囲およびそれらの均等物について許される最も広い解釈によって決定されるべきものであり、上述の詳細な説明によって制限または限定されるものではない。
【0089】
本発明は、冷凍プロセスに適用される熱交換器の効率を改善する目的で開発された。本発明を、産業用の熱伝達、発電プラント、熱回収ユニット、太陽エネルギーおよび他の代替のエネルギーシステムおよび化学的石油工程など、他の熱交換器の用途においても効果的に使用できることを、理解できるであろう。
【0090】
本発明を、本発明の好ましい実施形態を参照しつつ詳しく示して説明したが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の技術的範囲から離れることなく、これらの実施形態において形態または細部についてのさまざまな変更が可能であることを、当業者であれば理解できるであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍プロセスのための熱交換器等に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2004年10月7日付の米国特許仮出願第60/616,873号の利益を主張し、本仮出願の教示の全体が、ここでの言及によって本明細書に取り入れられたものとする。
【0003】
低温および極低温の冷凍が、深冷分離のために流体の流れを冷却し、真空プロセスにおいて低い蒸気圧を生成すべく水蒸気を捕まえ、さらには半導体ウエハの加工などの製造プロセス、画像検出器および放射線検出器の冷却、工業用の熱変換、生物薬剤学および生物医学の用途、生物医学的保存、ならびに化学処理において物品を冷却するため、よく使用されている。冷凍サイクルは、一般的には、冷媒ガスを圧縮し、冷却液との熱交換によってガスを凝縮させ、さらには追加の冷却を達成するために、戻ってくる減圧ガスまたは膨張ガスと熱を交換することができる。多くの場合、冷凍サイクルの一部分が、2相の液体/気体の流れを有している。
【0004】
一般的な冷凍サイクルは、1つ以上の熱交換器を有することができる。これらの熱交換器は、圧縮ガスを凝縮させ、膨張後の熱を吸収し、または圧縮された流体と戻りの膨張ガスとの間で熱を交換するために、機能することができる。一般的な用途では、シェルとチューブ(管形、shell and tube)、チューブ内チューブ、またはねじりチューブの熱交換システムが使用される。他の用途では、プレート型熱交換器が使用される。
【0005】
シェルとチューブ、チューブ内チューブ、またはねじりチューブの熱交換器は、2相流の環境においても、安価であって圧力低下が少ない。しかしながら、チューブ状の熱交換器は、熱交換器の単位体積または単位長さあたりの表面積が小さい。所望の熱交換表面積を実現するため、長い延伸の配管が使用される。限られた空間において、これらの熱交換器は、包まれてねじ曲げられており、コストが高くなっている。
【0006】
プレート型熱交換器は、より良好な表面積−体積の比を有しており、より小型である。しかしながら、一般的なプレート型熱交換器は、より高価であって、2相流の環境においては効率的でなく、チャネル間の各相の分配が良好でないことが多い。分配が良好でないと、安定性が低下し、熱交換器の有効性が低下し、熱伝達率が下がり、システムの効率が低下し、圧力損失が大きくなり、超低温および極低温の用途の場合には、凍結(freeze out)状態につながる可能性がある。他方では、プレート型熱交換器において使用される一般的な2相流分配器は、圧力損失が大(約18psi 超)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、熱交換器の改善が望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、熱交換器にある。熱交換器が、流体入口マニホールド、流体出口マニホールド、流体入口マニホールドおよび流体出口マニホールドと連通するように構成された複数の熱伝達チャネル、ならびに流体入口マニホールド内に位置する充填材を備えている。
【0009】
さらなる関連の実施形態においては、流体入口マニホールドに進入する流体が、少なくとも2つの相を含むことができ、それらは気体および液体とすることができる。熱交換器は、対向流の熱交換器、短経路のプレート型熱交換器など、プレート型熱交換器とすることができる。充填材は、無作為な充填材要素または球形のボールなどの充填材要素を含むことができ、球形要素、長円体要素、リング要素、円柱形要素、サドル要素、回転楕円体要素、リボン要素およびガーゼ要素で構成されるグループから選択される充填材要素を含んでもよい。充填材要素は、第1の大きさ最頻値を有する第1組の充填材要素と第1の大きさ最頻値と異なる第2の大きさ最頻値を有する第2組の充填材要素とを含んで、少なくとも2つの大きさ最頻値を有することができる。充填材要素の寸法(最小の寸法など)は、複数の熱伝達チャネルのうちの1つの幅よりも大きくてよい。熱交換器は、さらに構造化部材を流体入口マニホールド内に位置させて有することができ、構造化部材が充填材を固定することができる。構造化部材は、円柱形とすることができ、また、円錐形で第1の端部および第2の端部を有し、第1の端部が第2の端部よりも大きい断面を有するものでもよい。第2の端部が、入口マニホールドの流れのない端部近くに位置することができ、また、入口マニホールドの流れのある端部に近く位置してもよい。構造化部材は、自身の長さの一部分に沿って変化する断面積を有することができる。熱交換器を横切っての圧力低下は、毎秒3メートルの流速について5psi 以下とすることができる。熱交換器の全体としての熱伝達係数を、ヘッダーに充填材料を使用することによって、少なくとも2%改善することができる。
【0010】
本発明のさらなる特徴が、熱交換器にある。熱交換器が、第1組の流体チャネルと少なくとも第2組の流体チャネルとを規定している複数の平行な熱伝達プレート、第1組の流体チャネルと連通するように構成された第1の流体入口ポート、第1組の流体チャネルと連通するように構成された第1の流体出口ポート、第2組の流体チャネルと連通するように構成された第2の流体入口ポート、第2組の流体チャネルと連通するように構成された第2の流体出口ポート、ならびに第1の流体入口ポートおよび第2の流体入口ポートの少なくとも一方に位置する充填材入り分配器を備えている。他のいくつかの構成においては、3つ以上の流体の流れが冷却される。
【0011】
本発明のさらなる特徴は、冷凍システムにある。冷凍システムが、圧縮機および圧縮機に接続された少なくとも1つの熱交換器を備えている。前記少なくとも1つの熱交換器が、ヘッダー、ヘッダー内に位置する充填材、および熱伝達チャネルを備えている。熱伝達チャネルが、ヘッダーおよび充填材を通過する流体を受け取るように構成されている。
【0012】
さらなる関連の実施形態においては、冷凍システムが、混合冷媒を含んでもよい。ヘッダーを、2相の流体を受け取るように構成することができる。冷凍システムを、200K未満の温度に達するように構成することができる。前記少なくとも1つの熱交換器は、過熱低減器、凝縮器、少なくとも2つの冷媒流の間で熱を交換する熱交換器、および蒸発器で構成されるグループから選択される熱交換器として機能することができる。前記少なくとも1つの熱交換器が、冷凍セクションの構成要素を含んでもよい。冷凍セクションは、分離器を有してもよい。前記少なくとも1つの熱交換器は、プレート型熱交換器とすることができ、水平または垂直に向けることができ、高温端を上にして垂直に向けてもよい。冷凍システムは、単一成分の冷媒を含むことができる。また、冷凍システムは、極低温の冷凍システムとすることができ、混合冷媒を含んでもよい。冷凍システムは、少なくとも冷却モードおよびスタンバイモードで動作可能とすることができ、少なくとも冷却モード、スタンバイモードおよび霜取りモードで動作可能とすることもできる。
【0013】
本発明の特徴は、熱を交換するための方法にもある。この方法は、熱交換器を通して第1の流体を流すステップ、およびこの熱交換器を通して第2の流体を流すステップを含んでいる。熱交換器は、第1組の流体チャネルと少なくとも第2組の流体チャネルとを定めている複数の平行な熱伝達プレート、第1組の流体チャネルと連通するように構成された第1の流体入口ポート、第1組の流体チャネルと連通するように構成された第1の流体出口ポート、第2組の流体チャネルと連通するように構成された第2の流体入口ポート、第2組の流体チャネルと連通するように構成された第2の流体出口ポート、ならびに第1の流体入口ポートおよび第2の流体入口ポートの少なくとも一方に位置する充填材入り分配器を備えている。第1の流体が、第1の流体入口ポート、第1組の流体チャネルおよび第1の流体出口ポートを通って流れる。第2の流体は、第2組の流体チャネルを通って流れる。複数の平行な熱伝達プレートを介して第1の流体と第2の流体との間で熱が交換される。
【0014】
本発明のさらなる特徴が、冷凍システムの補修(servicing )方法にある。この方法は、冷凍システムに組み合わせられた熱交換器のマニホールドに充填材を挿入するステップを含んでいる。熱交換器は、マニホールドおよび熱伝達チャネルを備えている。熱伝達チャネルが、マニホールドおよび充填材を通過する流体を受け取るように構成されている。
【0015】
本発明のさらなる特徴は、冷凍システムの製造方法にある。この方法は、冷凍システムに組み合わせられた熱交換器のマニホールドに充填材を挿入するステップを含んでいる。熱交換器は、マニホールドおよび熱伝達チャネルを備えている。熱伝達チャネルが、マニホールドおよび充填材を通過する流体を受け取るように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】カスケード冷凍システムの例示的な実施形態を示している。
【図2】自動カスケード冷凍サイクルの例示的な実施形態を示している。
【図3】冷凍システムの例示的な実施形態を示している。
【図4】冷凍セクションの例示的な実施形態を示している。
【図5】熱交換器の例示的な実施形態を示している。
【図6】熱交換器の例示的な実施形態を示している別の図である。
【図7A】充填材の例示的な実施形態を示している。
【図7B】充填材の別の例示的な実施形態を示している。
【図7C】充填材のさらに別の例示的な実施形態を示している。
【図7D】充填材のさらに別の例示的な実施形態を示している。
【図7E】充填材のさらに別の例示的な実施形態を示している。
【図8A】熱交換器のマニホールドの例示的な実施形態を示している。
【図8B】熱交換器のマニホールドの別の例示的な実施形態を示している。
【図8C】熱交換器のマニホールドのさらに別の例示的な実施形態を示している。
【図8D】熱交換器のマニホールドのさらに別の例示的な実施形態を示している。
【図8E】熱交換器のマニホールドのさらに別の例示的な実施形態を示している。
【図8F】熱交換器のマニホールドのさらに別の例示的な実施形態を示している。
【図9A】熱交換器の例示的な向きを示している。
【図9B】熱交換器の別の例示的な向きを示している。
【図9C】熱交換器のさらに別の例示的な向きを示している。
【図10】充填材入り分配器を備えている熱交換器および備えていない熱交換器の性能特性を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の以上の目的、特徴および利点、ならびにさらなる目的、特徴および利点が、添付の図面に示される本発明の好ましい実施形態についてのさらに詳細な説明から、明らかになるであろう。添付の図面においては、種々の図のすべてにおいて、同様の参照符号が同じ部分を指し示している。図面は必ずしも正確な縮尺ではなく、本発明の原理を説明することに重点が置かれている。
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0019】
冷凍システムは、種々の用途において冷却を提供する。いくつかの用途は、230K以下、183K以下、108K以下などの典型的には230K未満の超低温または極低温の温度を使用する。カスケード配置などの冷凍配置および自動カスケードサイクルを、所望の低温を達成すべく使用することができる。これらの冷凍システムは、冷凍サイクルのある部分から熱を排出し、冷凍サイクルの他の部分において熱を吸収するために、1つ以上の熱交換器を使用する。
【0020】
図1が、第1の冷凍サイクル116および第2の冷凍サイクル118を有する例示的な冷凍システムを示している。第1の冷凍サイクル116および第2の冷凍サイクル118が、第1の冷凍サイクル116が熱交換器または凝縮器108を介して第2の冷凍サイクルを冷却するカスケード構成に配置されている。
【0021】
第1の冷凍サイクル116の冷媒が、圧縮機102によって圧縮される。圧縮された冷媒が、冷媒を凝縮させるべく熱交換器または凝縮器104によって冷却される。凝縮された冷媒が、膨張器106を通って膨張し、熱交換器108において加熱されて気化する。気化した冷媒が、圧縮機102に戻される。
【0022】
第2の冷凍サイクル118においては、第2の冷媒が、圧縮機114によって圧縮される。圧縮された第2の冷媒が、過熱低減器120によって室温に冷却され、次いで熱交換器108において凝縮される。熱交換器108において第1の冷媒を十分に気化させることによって、第2の冷媒が凝縮される。凝縮した第2の冷媒が、膨張器110において膨張し、熱交換器112において加熱されて気化する。膨張器106および110は、バルブ、毛細管、タービン膨張器または圧力低下板とすることができる。気化した第2の冷媒が、圧縮機114に戻される。
【0023】
熱交換器112を、プロセスまたは物品の冷却に使用することができる。熱交換器112は、例えば、熱伝達媒体、ヒートシンクまたは物品を冷却できる。物品を、熱伝達媒体またはヒートシンクを使用して間接的に冷却することができる。1つの例示的な実施形態においては、物品が半導体ウエハである。他の例示的な実施形態においては、熱交換器112が、例えば水蒸気を凝縮させるべく気体の流れを冷却することができる。さらなる例示的な実施形態においては、熱交換器112を、深冷分離において使用すべく流れを冷却するために使用することができる。またさらなる例示的な実施形態においては、熱交換器112が、真空ポンプシステムにおいてクライオコイルを冷却するために使用される。さらに他の例示的な実施形態においては、熱交換器112が、生物医学冷凍庫を冷却するために使用され、検出器を冷却するために使用され、工業プロセス、化学プロセスまたは医薬用原料の調合において熱を交換するために使用される。
【0024】
熱交換器104、108、112および120は、例えば、プレート型熱交換器、チューブ内チューブの熱交換器、シェルおよびチューブの熱交換器とすることができる。熱交換器は、例えば、熱交換器への供給のための1つ以上のマニホールドに充填材または充填材入りの分配器を備えることができる。
【0025】
第1の冷媒は、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、フルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、フルオロエーテル、ヒドロカーボン、大気ガス、希ガス、低反応性成分、極低温ガス、または、これらの組み合わせから選択される1つ以上の成分を含む単一成分もしくは混合冷媒とすることができる。同様に、第2の冷媒も、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、フルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、フルオロエーテル、ヒドロカーボン、大気ガス、希ガス、低反応性成分、極低温ガス、または、これらの組み合わせから選択される1つ以上の成分を含む単一成分もしくは混合冷媒とすることができる。このような混合物においては、幅広く離れた沸点を有する成分(最高の沸点の成分から最低の沸点の成分までの差が、典型的には50Kないし100K)を含んでいる混合物を完全に凝縮または気化させることが困難であるため、2相(液相および気相)の存在が冷凍プロセスの全体を通じてきわめて一般的である。したがって、このような混合物は、この充填材入りのマニホールドから大きく利益を受ける。しかしながら、この充填材入りのマニホールドは、本明細書に開示される種類の熱交換器に進入する2相混合物を有するあらゆるプロセスに利益をもたらす。
【0026】
第1の冷媒の例示的な実施形態としては、ここでの言及によってその全体が分明細書に含まれたものとする米国特許第6,502,410 号、米国特許第5,337,572 号、および国際公開第WO 02/095308 A2 号パンフレットに記載されているような冷媒を挙げることができる。
【0027】
図1の第1および第2の冷凍サイクルのいずれかまたは両者は、自動カスケードサイクルとすることができる。図2が、霜取り能力を備える例示的な自動カスケードサイクルを示している。冷媒が、圧縮機202にて圧縮される。圧縮された冷媒が、圧縮された冷媒の流れから潤滑剤を取り除くため、随意による油分離器224を通過する。油分離器224によって分離された油を、移送管230を介して圧縮機202の吸い込み管222に戻すことができる。油分離器224の使用は、排出流に排出される油の量および冷凍プロセスの油に関する許容範囲に応じ、随意である。他の構成においては、油分離器224が霜取り分岐管228と直列に位置している。
【0028】
圧縮された冷媒は、油分離器224から配管206を通って凝縮器204を通過し、凝縮器204において、圧縮された冷媒が少なくとも部分的に凝縮され、2相の液体/蒸気流がもたらされる。カスケード構成の場合には、第1の冷媒を、凝縮器204において第2の冷媒を凝縮させるために使用することができる。
【0029】
凝縮器204から、凝縮または部分的に凝縮された冷媒が、配管210を通って冷凍プロセス208に運ばれる。冷凍プロセス208は、1つ以上の熱交換器、相分離器および絞り装置を備えることができる。冷凍プロセス208の低温側の出口214が、プロセスまたは物品から熱を吸収して冷却する蒸発器212に向けられている。暖かくなった冷媒は、配管220を介して冷凍プロセス208に戻される。カスケード機構においては、蒸発器212が、次のより低い温度の段の冷媒を冷却するために使用される。本発明による他の実施形態においては、当業者であれば理解できるように、図2の実施形態にさまざまなサービスバルブ(図示されていない)を備えることができる。
【0030】
図2の例示的な実施形態においては、冷凍プロセス208が、自動冷凍カスケードシステムとして示されており、熱交換器232、相分離器234、熱交換器236、相分離器238、熱交換器240、相分離器242、熱交換器244、絞り装置(FMD)246、FMD248およびFMD250を備えている。熱交換器は、高圧の冷媒から低圧の冷媒への熱の伝達をもたらす。FMDは、高圧の冷媒を低圧に絞り、絞りプロセスの結果として冷凍効果を生み出す。
【0031】
熱交換器232、236、240、蒸発器212および凝縮器204は、例えば、プレート型熱交換器、チューブ内チューブの熱交換器、シェルおよびチューブの熱交換器とすることができる。熱交換器は、例えば、熱交換器への供給のための1つ以上のマニホールドに充填材または充填材入りの分配器を備えることができる。
【0032】
冷凍システム200は、冷却、霜取りおよびスタンバイという3つのモードのうちの1つで動作することができる。上述の冷媒混合物は、これら3つのモードのそれぞれでの動作を可能にする。ソレノイドバルブ260および218が、どちらも閉じた状態である場合、システムはスタンバイであると称される。蒸発器に流れる冷媒は存在しない。冷媒は、高圧の冷媒をプロセスの低圧側に届ける内部の絞り装置(すなわち、FMD246、FMD248およびFMD250)によって、冷凍プロセス208内のみを流れる。これにより、冷凍プロセス208の連続動作が可能になる。単一絞りの冷凍プロセスが使用される場合には、スタンバイの動作モードは、冷媒を冷凍プロセス208の高圧側から低圧側に流すため、スタンバイモードの際に、流れを絞り通過で流す手段が利用できる場合にのみ可能である。いくつかの構成においては、スタンバイモードを、蒸発器への冷媒の流れを制御するか、冷凍プロセスに戻る冷媒の流れを制御する一対のソレノイドバルブによって可能にすることができる。他の構成においては、このスタンバイにおける内部の流れを可能にするために、追加の絞りおよびソレノイドバルブを使用することができる。
【0033】
他の実施形態においては、サブクーラーと称される熱交換器(例えば、後述の図3のサブクーラーなど)が、冷凍プロセスに備えられる。サブクーラーは、高圧の冷媒の一部を蒸発器からそらし、冷媒の温度を下げるべく低圧になるよう膨張させる。次いで、この流れが、蒸発器およびこのそらされた流れの両者に供給を行う全体の流れを、前もって冷却するために使用される。このように、蒸発器への流れが止められたとき、内部の流れおよび熱伝達が継続し、高圧の冷媒が徐々に低温になることが可能である。これが、結果として、サブクーラーに進入する膨張した冷媒の温度をより低くする。
【0034】
図3に示されているように、熱交換器312は、サブクーラーとして知られている。ある冷凍プロセスは、サブクーラーを必要とせず、したがってサブクーラーは、随意による構成要素である。熱交換器312が使用されない場合には、熱交換器308を出る高圧の流れが、直接冷媒供給配管320に供給される。戻りの流れの経路においては、冷媒戻り配管348が、熱交換器308に供給を行う。サブクーラーを備えるシステムにおいては、サブクーラーを出る低圧の冷媒が、ノード(分岐点、node)Hにて冷媒の戻りの流れと混ぜ合わされ、得られる混合流が、熱交換器308に供給される。熱交換器308を出る低圧の冷媒が、熱交換器306に供給される。相分離器304によって取り除かれた液体部分が、FMD310によって低圧になるよう膨張させられる。冷媒がFMD310から流れ、次いで熱交換器308から熱交換器306に流れる低圧の冷媒に混ぜ合わされる。この混合流が、熱交換器306に供給され、次いで熱交換器302に供給され、その後に圧縮機の吸い込み管364に供給される。これらの熱交換器が、高圧の冷媒と低圧の冷媒との間で熱を交換する。
【0035】
図2を参照すると、ソレノイドバルブ218を開くことによって、システムは冷却モードになる。この動作モードにおいては、ソレノイドバルブ260は閉鎖位置にある。冷凍プロセス208からのきわめて低い温度の冷媒が、FMD216によって膨張させられ、バルブ218を通って蒸発器212に流れ、次いで冷媒戻り配管220を介して冷凍プロセス208に戻る。
【0036】
冷凍システム200は、ソレノイドバルブ260を開くことによって霜取りモードになる。この動作モードにおいては、ソレノイドバルブ218が閉じた状態にある。霜取りモードにおいては、圧縮機202からの高温ガスが、蒸発器212に供給される。一般的は、霜取りは、蒸発器212の表面を暖めるために開始される。高温の冷媒が油分離器224を通り、霜取り配管228を経由してソレノイドバルブ260に流れ、ソレノイドバルブ218と蒸発器212との間のノードに供給され、蒸発器212に流れる。霜取りの開始時、蒸発器212はきわめて低い温度にあり、高温の冷媒ガスを冷却して完全に、または部分的に凝縮させる。その後、冷媒は、冷媒戻り配管220を介して冷凍プロセス208に戻る。戻ってくる霜取りの冷媒は、最初は、冷却モードにおいて通常もたらされる温度にきわめて近いきわめて低い温度にある。霜取りのプロセスが進むにつれて、蒸発器212の温度が高くなる。最終的に、戻ってくる霜取りガスの温度は、冷却モードにおいてもたらされる温度よりもはるかに高くなる。これは、冷凍プロセス208に大きな熱負荷をもたらす。これは、短い時間、一般的は2〜7分間であれば許容可能であり、通常、蒸発器212の全表面を暖めるために充分である。温度センサ(分かり易くするため図示されていない)を、冷媒戻り配管220に熱的に接触させることができる。冷媒戻り配管220において所望の温度に達したとき、温度センサによって制御システム(分かり易くするため図示されていない)が霜取りを終了させ、ソレノイドバルブ260を閉じて冷凍システム200をスタンバイにする。霜取りの完了後、冷却モードへの切り替えの前に冷凍プロセス208の温度を下げることができるよう、スタンバイの短い期間(一般的は、5分間)が必要とされる。
【0037】
本明細書における説明の目的のため、冷凍システム200の冷凍プロセス208は、図2においては自動冷凍カスケードサイクルの一種として示されている。しかしながら、極低温の冷凍システム200の冷凍プロセス208は、混合冷媒を使用するあらゆる極低温冷凍システムであり得る。より一般的には、本発明による実施形態は、233Kと53K(−40Cと−220C)との間の温度の冷凍を提供する冷凍システムに関する。この範囲に包含される温度は、低温、超低温、極低温などとさまざまに称される。本出願の目的において、用語「きわめて低い」または「極低温」は、233Kと53K(−40Cと−220C)との間の温度範囲を意味して使用される。また、本出願の目的において、用語「混合冷媒」は、少なくとも2つの成分を含んでおり、最高沸点の成分から最低沸点の成分まで標準沸点が少なくとも50Cは異なっている冷媒混合物を意味している。このように定義される用語において、本発明による実施形態は、混合冷媒を使用する極低温の冷凍システム、およびそのような冷凍システムにおいて使用される熱交換器に関する。
【0038】
さらに具体的には、冷凍プロセス208は、複数の相分離器を備えるか、ただ1つの相分離器を備えるか、あるいは相分離器を備えないシステムとすることができる。
【0039】
本発明の実施形態において使用できる複数の相分離器を備えるシステムの例は、Polycold(登録商標)クライオクーラーシステムまたは高速サイクルクライオクーラーシステム(すなわち、自動冷凍カスケードプロセス)としても知られている、Missimer式のサイクルのシステムである(すなわち、Missimerの米国特許第3,768,273 号に記載されているような自動冷凍カスケードシステム)。Polycoldシステムおよび関連の変形例が、Forrestの米国特許第4,597,267 号およびMissimerの米国特許第4,535,597 号に記載されている。あるいは、相分離の段がないか、相分離の段を1つ有するか、相分離の段を2つ以上有する、任意の極低温冷凍プロセスが使用可能である。
【0040】
やはり使用可能であるが、相分離器を1つ備えるシステムの例が、最初のKleemenko によって説明されている。
【0041】
やはり使用可能であるが、相分離器を備えないシステムの例が、CryoTiger またはPCCシステム(カリフォルニア州PetalumaのHelix Polycold Systems Inc. によって製造されている)であり、相分離器を有さない単一段のクライオクーラーとしても知られている。このような装置は、Longsworthの米国特許第5,441,658 号に記載されている。
【0042】
低温または極低温の冷凍についてのさらなる文献を、American Society of Heating, Refrigeration, and Air Conditioning Engineeringによる1998 ASHRAE Refrigeration Handbookのチャプター39に見付けることができる。使用される相分離器の数に加え、使用される熱交換器の数、および内部の絞り装置の数を、種々の構成において、特定の用途にとって適切であるように増減させることができる。上述した文献はすべて、ここでの言及によって本明細書に取り入れられたものとする。
【0043】
冷凍サイクルのさらなる変形として、ガス流の冷却または液化に使用される冷凍プロセスが挙げられる。いくつかの構成においては、ガスの冷却または液化のために蒸発器が使用される。他の構成においては、ガス流が、少なくとも3つの流れの経路(戻りの低圧の冷媒が、高圧の冷媒および少なくとも1つのガス流を冷却する)を備える熱交換器を使用することによってあらかじめ冷却される。いくつかの場合には、蒸発器およびこの予冷熱交換器の機能が組み合わせられる。この構成においては、高圧の冷媒が膨張させられ、次いで3つの流れの熱交換器に直接戻される。さらに他の変形においては、複数のガス流が冷却され、または液化される。冷凍サイクルの他の変形として、単数または複数の液体の流れの冷却または液化に使用される冷凍プロセスを挙げることができる。
【0044】
図2に示した冷凍プロセス208について、いくつかの基本的変形が可能である。図2に示した冷凍システム200は、ただ1つの圧縮機を伴っている。しかしながら、この同じ圧縮作用を並列の2つの圧縮機を使用して得ることができることや、圧縮プロセスを直列の圧縮機または2段式の圧縮機によって複数段に分解できることを理解できるであろう。考えられるこれらの変形はすべて、本明細書の開示の技術的範囲に含まれると考えられる。図示の実施形態は、信頼性の向上をもたらすという理由で、ただ1つの圧縮機を使用している。並列の2つの圧縮機の使用は、冷凍システムの負荷が軽い場合にエネルギーの消費を少なくするために有用である。この手法の欠点は、追加で必要となる構成部品、制御部、床面積およびコスト、ならびに信頼性の低下である。直列の2つの圧縮機を使用すると、各圧縮段の圧縮比を小さくするための手段がもたらされる。これは、圧縮された冷媒ガスが達する最高の吐き出し温度を下げることができるという利点をもたらす。しかしながら、やはり追加の構成部品、制御部およびコストが必要となり、システムの信頼性が低下する。図示の実施形態は、ただ1つの圧縮機を使用している。ただ1つの圧縮機においては、ただ1つの圧縮段における混合冷媒の圧縮を、過剰な圧縮比または吐き出し温度とならないように使用することができる。多段の圧縮をもたらすように設計され、圧縮段の間での冷媒の冷却を可能にする圧縮機を使用すると、別個の圧縮段の利益を維持しつつ、依然として使用されている圧縮機はただ1つであるため、複雑さの増加という不都合を最小限にできる。
【0045】
相分離器は、合体式(coalescent-type )、渦式、デミスター式、またはこれらの形式の組み合わせなど、さまざまな形式をとることができる。相分離器は、合体フィルタ、編みメッシュ、細目金網および構造化された材料を含むことができる。設計、流量および液体の含有量に応じ、相分離器は、30%超の効率で動作でき、85%超、または99%超にもなりうる。
【0046】
図2に示した冷凍システム200は、ただ1つの蒸発器を伴っている。一般的な変形は、複数の蒸発器に霜取りおよび冷却制御の別個独立の制御を提供することにある。そのような構成においては、蒸発器が並列であって、それぞれが低温の冷媒または高温の霜取りガスの流れを制御するための260、218などのバルブ一式、ならびに接続配管を有している。この構成によれば、例えば1つ以上の蒸発器を冷却、霜取りまたはスタンバイのモードにしつつ、他の蒸発器を別個独立に冷却、霜取りまたはスタンバイのモードにすることができる。
【0047】
冷凍システム200は、相分離器234の第1の出口からの分岐によって供給を受ける、随意によるソレノイドバルブ252をさらに備えている。ソレノイドバルブ252の出口は、随意による膨張タンク254に供給され、膨張タンク254は、第2の膨張タンク256に直列(図示)または並列(図示されていない)に接続されている。さらに、随意によるFMD258の入口が、ソレノイドバルブ252と膨張タンク254との間のノードにつながっている。FMD258の出口は、熱交換器236と熱交換器232との間のノードにおいて、冷媒戻り経路につながっている。システムの構成要素について、種々の構成が使用可能である。それらの構成として、米国特許第4,763,486 号および米国特許第6,644,067 号に記載されているように、受動膨張タンク、ガスを膨張タンクに貯蔵すべく起動の際にソレノイドバルブが開くシステム、および起動の際にシステムの性能を管理すべく使用されるバイパスバルブを備えるシステムが挙げられる。Longsworthによって米国特許第5,441,658 号に開示されているような膨張タンクも特別な起動時の構成も備えないさらにほかの構成も、使用可能である。この理由で、膨張タンクの使用は随意である。
【0048】
起動時、冷凍システム200の全体の冷媒の大部分は、システム全体が室温にあるため、一般的には気体の状態にある。冷却時間が短縮されるように冷媒ガスを管理することが重要である。起動時に冷凍システム200における循環から選択的にガスを取り去ることが、この時間短縮に向けて有益である。さらに、ガスが冷凍システム200に戻される速度も、冷却速度に影響する。
【0049】
システムコントローラ(図示されていない)が、起動時にソレノイドバルブ252を短く開く(一般的には、10〜20秒間)。ソレノイドバルブ252は、例えば、Sporlan 社のB6型バルブである。結果として、起動の際に、冷媒ガスが相分離器234を出て、膨張タンク254および膨張タンク256からなる直列の組み合わせに供給される。FMD258が、膨張タンク254および256への冷媒ガスの流れ、ならびに膨張タンク254および256からの冷媒ガスの流れを調節する。FMD258を通過する流れの設定についての2つの考慮事項は、次のとおりである。すなわち、冷凍システム200に戻るガスが、より高速な冷却を保証するために、任意の時点に存在するあらゆる動作条件において凝縮器で凝縮可能であるよう、充分に低速でなければならない。この起動プロセスにおける初期の液体の形成が、15〜60分程度の冷却時間を可能にする。同時に、一方では、FMD258を通過する流れの速度が、低い吸い込み圧力ゆえに生じうる運転停止を防止すべく、充分な冷媒が冷凍システム200内を流れるように保証するため、充分に高速でなければならない。膨張タンク254および256へのガスの流れ、ならびに膨張タンク254および256からのガスの流れは、図2に示されているようにFMD258を使用して受動的に制御される。また、センサに組み合わせたコントローラを、能動的な流れの制御をもたらすために使用することもできる。膨張タンクの構成は、少なくとも1つの圧力容器を含んでおり、直列および並列に配置された任意の数および組み合わせの膨張タンクを有することができる。他の構成においては、システムの冷却時または連続動作の際に、凝縮器における液体の形成が不要である。これらの場合には、認容できない低い吸い込み圧力が生じない限りにおいて、再導入されるガスの流量がより少なくても充分である。
【0050】
図4は、2段の冷凍システムを示している。第1段が高温段であって、第2段すなわち低温段を冷却する。次いで、第2段が、蒸発器または熱交換器444によってプロセスまたは物品を冷却する。
【0051】
第1段において、圧縮機402が第1の冷媒を圧縮する。圧縮された冷媒が、随意による油分離器404を通過し、ここで混入している油を取り除き、圧縮機に戻すことができる。圧縮された冷媒は、凝縮器406に運ばれ、凝縮器406において液体の形態に凝縮する。凝縮した冷媒が、冷凍セクション408に渡される。
【0052】
この冷凍セクション408は、1つ以上の熱交換器を備えることができる。さらに冷凍セクション408は、1つ以上の相分離器および絞り装置(FMD)または膨張機を備えることができる。図示の例では、冷凍セクション408が、3つの熱交換器410、414、416、相分離器412およびFMD420を備えている。膨張した冷媒が、熱交換器430から熱を取り去るために使用され、次いで冷凍セクション408に戻され、その後に熱交換器410、414、416を通過し、熱交換器410、414、416によって、熱が圧縮または凝縮冷媒から圧縮機402に戻る低圧の冷媒と交換される。圧力低下または膨張や、種々の成分の戻りの流れとの混合の結果として、さらなる冷凍効果を生み出すために、相分離器412およびFMD420を使用することができる。
【0053】
冷媒の流れを制御するため、冷凍セクションの出口にFMD418を使用することができる。冷凍サイクルを単独で循環(サイクル)させることができるよう、FMD418を閉じることができる。また、凝縮した冷媒を熱交換器430へ向けて膨張させることができるよう、FMD418を開くこともできる。1つの例示的な実施形態においては、熱交換器430において第1の冷媒が気化できる一方で、第2の冷媒が凝縮する。
【0054】
第2段すなわち低温段においては、第2の冷媒が圧縮機422で圧縮される。圧縮された冷媒は、混入している油を取り除くべく随意による油分離器424を通過することができる。圧縮された冷媒は、圧縮された冷媒を部分的に冷却するためのアフタークーラー426を通過できる。他の実施形態においては、アフタークーラー426および油分離器の配置を、逆にすることができる。また、圧縮された冷媒を、圧縮された冷媒をさらに冷却するとともに、圧縮機吸い込み配管に戻る低圧の冷媒を部分的に加熱するため、熱交換器428に通すことができる。次いで、圧縮された冷媒は、凝縮器または熱交換器430を通過し、ここで第1の冷凍サイクルとの熱の交換が行われる。その後、完全または部分的に凝縮した冷媒は、さらなる冷却のために冷凍セクション432に渡される。冷却された冷媒が、FMD442を通って膨張機444へ向けて膨張させられ、プロセスまたは物品を冷却する。
【0055】
熱交換器434、438、440、相分離器436およびFMD446を含んでいる冷凍セクション432は、冷凍セクション408と同様の様相で動作することができる。あるいは、冷凍セクション432において、さまざまな構成を使用することができる。
【0056】
熱交換器406、410、414、416、426、428、430、434、438、440および444は、例えば、プレート型熱交換器、チューブ内チューブの熱交換器、ならびにシェルおよびチューブの熱交換器とすることができる。熱交換器は、例えば、熱交換器への供給のための1つ以上のマニホールドに充填材または充填材入りの分配器を備えることができる。
【0057】
さらに冷凍セクションは、冷凍システム208について述べた任意のシステムの変形を備えることができる。
【0058】
図5は、例示的な熱交換器500を示している。熱交換器が、第1の流体を受け取るための入力マニホールドまたはヘッダー502を備えている。入力マニホールド502が、1つ以上のチャネル504からなる第1の組に供給を行う。チャネル504を、第2の流体を運んでいる第2の組のチャネル506から、熱伝達表面514によって隔てることができる。チャネル504は、第1の流体を出口マニホールドまたはヘッダー508に伝えることができる。図5は、2つの流れの熱交換器を示している。しかしながら、本発明は、3つ以上の流れを有する熱交換器にも適用可能である。
【0059】
1つの例示的な実施形態において、熱交換器500は、プレート型熱交換器である。1つの例示的な実施形態において、プレート型熱交換器は、平行なプレート一式を、2組のチャネルが形成されるようなやり方で4つのマニホールドに接続して有することができる。1つの実施形態においては、プレート型熱交換器が、例えばプレート型熱交換器の幅に対する長さの比が8.0以下、あるいは6.0以下であるプレート型熱交換器など、短経路のプレート型熱交換器とすることができ、また、他の任意の短経路の熱交換器とすることもできる。所望の熱伝達表面積を達成するため、2つ以上の熱交換器を直列に接続でき、また、タンデム動作のために順に接続することもできる。さらには、2つ以上の熱交換器を、冷凍セクションを形成すべく液体セパレータをちりばめつつ直列に接続することができる。さらなる例示的な実施形態においては、プレート型熱交換器が、熱交換の流体(複数)が互いに反対の方向に流れる対向流のプレート型熱交換器とすることができる。プレート型熱交換器の例示的な実施形態として、Swep, Inc.のB15 およびFlat-Plate FP2x8-40 というプレート型熱交換器が挙げられる。他の実施形態においては、熱交換器500が、シェルおよびチューブの熱交換器、または複数のチューブを備えるチューブ内チューブの熱交換器とすることができる。
【0060】
図5の例示的な熱交換器は、入力マニホールド502に充填材510を備えている。充填材が、流れ分配器を形成している。充填材510は、無作為なまたは構造化された充填材とすることができる。例えば、無作為な充填材は、マニホールド内に位置するときに無作為に配置される充填材とすることができる。図示の充填材は、球形のボールを含んでいる。また、無作為な充填材は、リング、円柱、サドル、中空回転楕円体、ガーゼもしくはメッシュ片、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。寸法および形状の異なる充填材を、1つのマニホールドに一緒に使用することができる。一般に、輸送時または動作時に動くことがないよう、充填材をしっかりと固定することが好ましい。特定の実施形態においては、無作為な充填材の大きさは、チャネル504の幅よりも大きくてよいが、ヘッダーまたはヘッダーにつながる開口の幅の99%を超えるべきではない。例えば、球形または円柱形の充填材要素の直径が、プレート型熱交換器のチャネルの幅よりも大きくてよい。より小さい充填材要素が必要とされる場合には、充填材の材料が流れの通路に進入することがなく、また流れの通路を塞ぐことがないよう、ワイヤメッシュ、スクリーンなどの保持用の構造体を使用することができる。
【0061】
図6は、プレート型熱交換器602を示している。プレート型熱交換器602は、2組のチャネルを形成する1つ以上のプレート604を備えている。入力マニホールドAおよび出口マニホールドBが、1組のチャネルに連通している。入力マニホールドDおよび出口マニホールドCが、第2の組のチャネルに連通している。充填材を、マニホールドAまたはDに流れの分配器を形成するため、入口マニホールドAまたはDの1つ以上に配置することができる。随意により、充填材を、少なくとも1つの流れの出口に使用してもよい。出口に充填材を使用することで、必要とされる冷媒の分量を少なくし、液体冷媒の貯蔵を最小限または不要にすることができる。
【0062】
図5は、チャネル504を通過するAからB(図6参照。図5の入口502から出口508への流れに相当する)への流れのみを示す簡略化した断面図である。チャネル506を通過するDからCへの反対方向の流れも、同様であると考えることができる。必要な流れをもたらすべく複雑な形状のプレートを有しているプレート型熱交換器は、よく知られており、市販の製品の例は上述のとおりである。図6の概略図から見て取ることができるように、そのような図5の熱交換器は、一方の流れが図5のチャネル504を左方から右方に(したがって、図6の入口Aから出口Bに)進み、反対の流れがチャネル506を右方から左方に(したがって、図6の入口Dから出口Cに)進む対向流の熱交換を実現する。また、図5および6の対向流の実施形態に限られず、平行流、交差流、または他の種類の熱交換も、本発明による実施形態において使用可能であることを理解すべきである。
【0063】
図6に例示の熱交換器602を、圧縮された冷媒と冷凍セクションを出る戻りの膨張した冷媒との間で熱を交換するための過熱低減交換器として使用することができる。また、熱交換器602を、凝縮器または蒸発器として使用することも可能である。また、熱交換器602を、圧縮された冷媒から他の冷凍サイクルの膨張した冷媒に熱を伝達するための熱交換器として使用することも可能である。他の例示的な用途においては、熱交換器602を、冷凍セクションにおいて凝縮する圧縮された冷媒と戻りの膨張した冷媒との間で熱を交換するため、冷凍セクションにおいて使用することができる。例えば、1つ以上の熱交換器602を、図2に示した冷凍プロセス208の熱交換器232、236および240として使用することができ、図3の冷凍セクション318の熱交換器302、306、308および312として使用することができ、図4の冷凍セクション408の熱交換器410、414および416として使用することができ、図4の冷凍プロセス432の熱交換器434、438および440として使用することもできる。
【0064】
例としての実験において、SWEP Inc. 製の4プレートPTHX B15/4を取り入れてなる単一の膨張システムをテストした。CH4/C2H4/C3H8/R142を含む多成分の混合冷媒を使用した。システムにおいては、3.6cfm (6m3/h)の往復式気密圧縮機を使用した。流れ分配器のないシステムにおいては、190Kという最小温度に達した(QR=0W)。充填材入りの流れ分配器の設置後、システムは170Kというより低い温度に達し(QR=0W)、190Kにおいては、QR=300Wの冷却能力を有していた。このテストにおいて、熱交換器は、対向流の構成で動作してアフタークーラーから高圧の流れを受け取り、高圧の冷媒を単一の膨張装置に届け、蒸発器から低圧の冷媒を受け取り、圧縮機に低圧の冷媒を届ける、冷媒から冷媒への(refrigerant-to-refrigerant)熱交換器として使用された。
【0065】
図7A〜7Eは、熱交換器のマニホールドにおいて使用するための例示的な充填材を示している。図7Aは、例示的な球形ボールを示している。代案として、長円体の無作為な充填材も使用可能である。図7Bは、ラシヒ・リング(Raschig ring)、ラシヒ・スーパーリング(Raschig Super ring)、カスケード・ミニリング(Cascade mini-rings)、ポール・リング(PALL ring )などの例示的なリングまたは円柱形の充填材を示している。図7Cは、Berlサドル、Intalox セラミックサドル、Intalox 金属サドル、Koch-Glitsch Fleximax などの例示的なサドル型充填材を示している。図7Dは、VFF Hacketten 、 VFF Top-Pak などの例示的な中空楕円体充填材を示している。他の例示的な実施形態において、図7Eがガーゼ構造を示している。代案として、メッシュ片または孔空き金属リボンを使用することが可能である。無作為な充填材は、中実または多孔性とすることができ、選択される材料がプロセス流体および温度に適合できる限りにおいて、金属、セラミック、プラスチックまたは同様に適切な材料とすることができる。さらなる実施形態では、構造化された充填剤が使用される。構造化された充填材として、成型されたチャネルを挙げることができ、メッシュまたは孔空きのホイルによって構成することが可能である。さらなる例示的な実施形態においては、構造化された充填材または無作為の充填材を含んでいるカートリッジを、マニホールド、ヘッダーまたは分配器に配置することができる。
【0066】
本発明の実施形態において使用される充填材に予想される利益は、熱交換器の平行なプレートの間に流れをより均一に分配する点にある。この利益は、ヘッダー領域の全体にわたってより一様な流れを生成することによって達成されると予想される。この場合、一様な流れとは、液体または気体の流れの均一な分配を指す。このプロセスにおいて重要であると予想されるメカニズムは、ヘッダー速度の増加、水力直径の減少、および速度流れ場(velocity flow field)の乱れである。充填材料の物質的存在ゆえ、得られる断面流れ面積が小さくなる。これが、流れの速度を大きくさせる。また、充填材料は流れの通路を小さくし、これが水力直径を小さくする。さらに、充填材料の存在は、流れを乱してねじ曲がった(torturous )経路を生み出す。これが、液相と気相との間のより良好な混合につながる。また、混合および充填材によって占められた物理的体積が、ヘッダー内に液相を「プールする」可能性を少なくする。流れが、ヘッダーの入口(または出口)からヘッダーの流れのない端部に移動するにつれて減じられるため、充分な液体−気体の一様性を確保すべく充分な速度を維持するために、ヘッダーの長さに沿って断面積を減少させる必要があるかもしれない。しかしながら、ヘッダーの長さに沿って同じ寸法および同じ充填材密度を有するボールで構成された充填材において、良好な結果が得られている。
【0067】
充填材を、約4psi 以下、約2psi 以下など、熱交換器を横切って約5psi を超えない圧力低下をもたらし、約3m/s 以下の流速をもたらすような大きさにすることが好ましい。一般に、熱交換器を横切っての圧力低下は、速度とともに大きくなり、液体の割合が多くなると大きくなる。特定の設計では、より積極的な寸法が許容可能である。そのような状況においては、20m/s 以上にもなる速度および50psi 以上にもなる圧力低下が、生じてもよい。通常は、このような高い速度および大きな圧力低下は望ましくないが、幅広い範囲の速度および圧力低下(上述の速度および圧力低下を含む)が本発明の範囲に含まれることを、理解できるであろう。ヘッダーを横切っての圧力低下が、熱交換器を横切っての圧力低下に対して有意になると、入口に最も近い流れがよりいっそう第1組のプレートを横切って流れようとするため、熱交換器を横切って流れの不均衡が一般的には存在する。この理由ゆえ、各プレートにわたってほぼ均一な分配を実現するために、ヘッダーにおける圧力低下が小さいことが好ましい。また、無作為な充填材について、有効寸法または直径(effective size or diameter)がチャネルの幅または直径よりも大きくなり、あるいは小さくなるように、大きさを決めることが可能である。
【0068】
図8A〜8Fは、マニホールドおよびヘッダーの例示的な実施形態を示している。図8Aは、無作為な充填材804が充填されたマニホールド802を示している。充填材804は、例えば、マニホールドから供給を受けるチャネルの直径または寸法よりも大きい直径または寸法を有することができる。構造体806が、無作為な充填材を動かぬように固定することができる。構造体806は、例えば、メッシュ、スクリーンまたは孔空きホイルで形成することができる。例えば、メッシュは、ワイヤまたはポリマーメッシュとすることができる。ホイルは、金属またはプラスチックのホイルとすることができる。そのような構造体806は、構造体806を通過する冷媒流体の流れを可能にするために充分に孔空けされることができ、また透過性とすることができる。図8A〜8Fにおいて、流れの矢印807が、構造体806を通過し、マニホールド802の流れの端部809に入り、流れない端部811に向かい、813において熱交換器のチャネルに向かってヘッダーを出る、冷媒流体の全体としての流れの方向を示している。境界815、817が、マニホールドおよびヘッダーの流れのない境界である一方で、構造体806および境界819は、流れに対して透過性とすることができる。他のさまざまな流れの方向および流れの境界の構成も、使用可能である。図8A〜8Fは、流れが(矢印807によって示されているように)ヘッダーの上部に進入してチャネル504へ向け右方に進む、図5の入口502のようなヘッダーへの流れの例を示している。しかしながら、他の例では、流れがヘッダーの上部に進入してチャネル506へ向け左方に進む、熱交換器500の右側の入口(図5には示されていない)への流れであり得る。また、例えば出口508において、流れがヘッダーの左方から進入でき、上部から出ることもできる。構造体806および他の透過性の境界ならびに流れのない境界の配置構成は、マニホールドまたはヘッダーを通過する流れの方向に応じてさまざまであろう。上述の方向以外の流れの方向も可能である。図8A〜8Fにおいては、流れの方向が矢印によって大まかに示されているが、実際の流れは、ヘッダーまたはマニホールドの透過性の境界の大部分またはすべてを通過することを、理解すべきである。
【0069】
図8Bは、ヘッダーまたはマニホールド802が可変の形状の構造体806を含んでいる他の実施形態を示している。可変の形状の構造体806が、充填材804を固定することができる。図8Bの特定の実施形態においては、構造体806が、マニホールドの奥行きに沿って変化する断面積を有することができる。可変の形状の目的は、得られる流れの面積をヘッダーの長さに沿って減少する流れに一致するように調節することとできる。一般に、入口(または出口)において、流れの面積および質量流量が最大であり、ヘッダーの端部においては、流れの面積および質量流量が最小である。1つの例示的な実施形態においては、構造体806の断面積が、倒立円錐など、入口から流れのない端部へ向けてマニホールドに沿って減少している(反対に、充填材804の総断面積は、入口から流れのない端部へ向けてマニホールドに沿って増加している)。1つの例示的な実施形態においては、円錐の先端がマニホールドまたはヘッダーの中心線からずらされ、チャネルから離れているなど、円錐が非対称であってよい。他の実施形態においては、長さが相違しており、直径が同じまたは相違している一連の流れチャネルがヘッダーの内側に挿入されて、ヘッダー部への複数の入口をもたらしており、この実施形態においては、ヘッダー部が充填材料を含むことができる。さらに他の実施形態においては、構造体806が円柱の形態をとることができる。円柱形の部材の場合には、断面積は変化しないが、その存在がヘッダーの全体により高い速度をもたらす。構造体806は、孔を有する中実の部材、多孔性の部材、メッシュまたは織成の布地とすることができる。構造体を、金属またはポリマー構造で形成することができる。
【0070】
図8Cは、マニホールドがマニホールドの長さに沿って変化する断面を有している変形を示している。この例示的な実施形態においては、充填材の全断面が、入口から流れのない端部へ向けてマニホールドに沿って減少している。構造体806が、充填材804を固定している。図示のように、構造体806は対称的である。しかしながら、他の実施形態においては、非対称な構造体も使用可能である。
【0071】
図8Dは、さまざまな寸法の充填材(810、812、および814)が使用されているマニホールドまたはヘッダー802を示している。充填材が、構造体806によって固定されている。この例示的な実施形態においては、充填材の寸法が、マニホールド802の流れのない端部に向かって減少している。しかしながら、異なる寸法の充填材を、一様に分布させてもよいし、より大きな充填材がマニホールド802の流れのない端部のより近くに位置するように配置してもよい。1つの特定の実施形態においては、充填材が、2種類(bimodal )であって、第1の寸法の充填材および第2のサイズの充填材を含んでいる。他の変形においては、3つ以上の寸法の充填材要素が使用され、いくつかの変形においては、2つ、3つまたはそれよりも多い充填材形状が使用される。異なる寸法の充填材要素が使用される場合には、それらを漸進的な様相(progressive fashion )で(例えば、より大きい充填材要素からより小さい充填材要素に)分布させることができるし、無作為な様相で配置することもできる。さらに、充填材要素が、充填材要素の寸法および形状の異なる複数の組を有することができる。また、充填材要素形状の変化(不連続な組に分布させることができるか、ヘッダーまたはマニホールドを横切って連続的または無作為に変化させることができる、2つ、3つまたはそれよりも多い異なる充填材要素形状によって実現できる)を、使用することが可能である。
【0072】
図8Eは、構造体806がマニホールド802の流れのない端部に向かって増加する断面積を有している(反対に、充填材の総断面積が、マニホールド802の流れのない端部に向かって減少している)さらなる例示的な実施形態を示している(図8Eの配置構成は、マニホールドの流れのない端部に向かって流れの面積が減少するという好ましい関係を有していないが、例示のための変形として提示されている点に注意されたい)。図8Eの他の実施形態においては、空白の空間として図8Eに示されている2つの側の間の領域を、中実のバリアで満たすことができる。その場合、流れは構造体806を通過し、したがって充填材料804を通過する流れの断面積は、マニホールドの流れのない端部に向かって減少する。図8Fは、カートリッジ816がマニホールド802に挿入された例示的な実施形態を示している。カートリッジ816は、例えば、無作為な充填材を含み、または収容することができる。また、カートリッジ816が、構造化された充填材で形成されてもよい。
【0073】
図8A〜8Fに示した変形以外の変形も使用可能である。例えば、充填材が、中実の素子または多孔性の素子を、他の充填材料で囲んで含むことができる。また、充填材の形状、充填材の内側の中実もしくは多孔性の素子の形状、または基本的な充填材そのものの形状が、滑らかな連続的様相で、波状の様相で、または段階的な様相で変化してもよく、さらには対称または非対称とすることができる。構造体による流れの断面積の効果的な減少が、流れの面積の線形または非線形な変化をもたらすことができる。
【0074】
図9A、9Bおよび9Cは、熱交換器の例示的な向きを示している。図9Aは、水平な熱交換器を示している。図9Bは、高温端が上方にある熱交換器を示している。例示的な冷凍セクションにおいては、対向流の熱交換器において、圧縮された冷媒の入口マニホールドが、圧縮された冷媒の出口マニホールドの上方に位置し、膨張した冷媒の入口マニホールドが、膨張した冷媒の出口マニホールドの下方に位置している。図9Cは、高温端が熱交換器の底部の付近に位置し、したがってマニホールドがそのように配置されている他の実施形態を示している。
【0075】
熱交換器は、さまざまな向きで動作させることができる。1つの例示的な実施形態においては、テスト対象の熱交換器を、「高温端」を上にして設置し、その後に「高温端」が下の位置に180°回転させた。これらの状況が、表1にそれぞれNo.3および4として示されている。システムは、良好な動作の安定性を示した。
【0076】
【表1】
【0077】
表1を参照すると、流れ分配器を備える熱交換器を使用する冷凍サイクル(行2、3、および4)は、流れ分配器を備えない熱交換器を使用した冷凍サイクル(行1)よりも、低い蒸発器温度を示した。熱交換器の「高温端」を上にした冷凍サイクル(行3)は、熱交換器の「高温端」を下にした冷凍サイクル(行4)に比べ、蒸発器において低い温度を示した。
【0078】
本発明の実施形態による充填された流れ分配器の効率を、ヒドロカーボン混合物にて動作しているプレート型熱交換器について、流れ分配器の有無での熱交換器の全体効率(HTC またはk 、W/m2・K)を示している図10に見て取ることができる。結果は、190Kの冷凍温度で動作している単一段の冷凍システムを使用するさらなる実験から計算したものである。熱交換器の熱負荷は、混合冷媒について測定された流量ならびに熱交換器の入口および出口における温度および圧力の値にもとづいて割り出された。Soave の状態方程式を、熱交換器の流れの入口および出口におけるエンタルピーの計算に使用した。平均の温度差が計算された。
【0079】
ヒドロカーボン主体の混合冷媒(ヒドロカーボン(HC):CH4/C2H4/C3H8およびR-142bのそれぞれの成分の含有量(モル%)が41/32/20および7)で動作している4プレートのプレート型熱交換器の効率についてのさらなる実験データが、表2に示されている。さらに表2は、Arおよびハロカーボン(AR/R) R14, R23, R134a, R142b にもとづく混合冷媒についてのデータを含んでいる。モル%での組成は、1%の精度で7/41/30/12/10と測定された。データは、本明細書において提案した流れ分配器を備えるプレート型熱交換器が、種々の混合冷媒において高効率であることを実証している。さらに表2は、ヒドロカーボン(HC)混合冷媒CH4 / C2H4 / C3H8 / C4H10 を、それぞれ34/33/17/15(モル%)という成分含有量で含んでいる)で動作している6プレートのプレート型熱交換器についてのテストデータを示している。結果は、約20〜30%の効率改善を示している。実際の性能はさまざまであろう。しかしながら、本発明の使用に起因する2%以下の熱交換器効率の改善であっても、本発明の範囲であると考えられる。本明細書において特定の冷媒混合物および冷媒の種類に触れたが、本発明による実施形態がすべての2相冷媒および冷媒−油混合物において使用可能であることを、理解すべきである。また、大部分の冷凍システムが、圧縮機油を冷媒と一緒に循環させているため、本発明は、油または油に富んだ液相においても有用性を有すると予想される。
【0080】
【表2】
【0081】
タンデム動作の効率が、表3に示されている。このテストにおいては、2つのプレート型熱交換器を、単独の熱交換器の機能上の等価物をもたらすために、直列に接続した。本発明の実施形態による流れ分配器が、入口における混合冷媒の2相の気体−液体の流れにおいて、効率的なプレート型熱交換器の動作を可能にする。表3に示されているように、3.6cfm の圧縮機にもとづく小規模のクーラーについて、約0.10よりも大きい、比較的高いカルノー効率(CEF )が実証された。短経路のプレート型熱交換器B15/6 が、比較的高い温度の範囲で動作するように設置された。
【0082】
【表3】
【0083】
他の一連のテストを、24cfm の排気量の圧縮機を有する2段(単一相分離器)自動カスケード低温冷凍システムについて行った。Ar/R14/R23/R125/R236faを含んだ混合冷媒を使用した。「オリフィス」式の分配器を備えるFlatPlate, Inc. 製のSC-12 5”x12”(50プレートSubCooler )というプレート型熱交換器を最初に選択した。高圧(280〜300psig)の流れの入口に位置する分配器の圧力低下は、8〜10psi であった。分配器をプレート型熱交換器の吸い込み側(30〜50psig)に配置し直したとき、熱交換器は16〜18psi の圧力低下を生じさせた。
【0084】
SC-12 を、同様の寸法のC4A 5”x12”(44プレートCondenser )というプレート型熱交換器に置き換えた。C4A の入口ヘッダーは、工場設置のヘッダーを備えていなかった。代わりに、3/8”のステンレス鋼ボールで構成された充填剤を設置することによって、入口ヘッダーを変更した。ボールベアリングをヘッダー内に保持するため、ヘッダーの上部に円板状に形成された孔空き金属のシートを配置した。円板の直径は、接続配管の内径よりも大きく、ヘッダーの絞りよりも大きかった。これにより、配管が、配管によって孔空き金属板を所定の位置に保持されるように固定できた。熱交換器の供給側において測定した全体としての圧力低下は、2〜3psi であり、戻り側においては3〜5psi であった。全体としての熱伝達係数は、200W/m2・Kから300W/m2・Kに向上した。
【0085】
充填された分配器を入口マニホールドのうちの1つ以上に配置して有している本発明の実施形態による熱交換器を、冷凍システムの構築に使用可能である。冷凍システムの製造のための方法において、充填された分配器または充填材を冷凍システムに関係する熱交換器のマニホールドに挿入してもよい。同様に、既存の冷凍システムを、冷凍システムに関係する熱交換器の入口マニホールドに充填された分配器または充填材を挿入することによって、再生、補修または改良する(be refurbished, serviced, or retrofitted)ことができる。これらの冷凍システムは、単一成分のシステムでも、混合冷媒のシステムでもよい。また、冷凍システムは、小型またはキャビネットサイズのユニットとすることができる。
【0086】
本発明による実施形態は、熱交換器のヘッダーにおける液体冷媒の蓄積を防止することによって、特定のモードでの冷凍システムの長期動作における安定性および信頼性の向上という利点をもたらす。さらに、実施形態は、さまざまな熱負荷および他の条件のもとで、起動時、冷却モード、スタンバイモードおよび霜取りモードを含むさまざまな運転状態における動作時に、改善された安定性をもたらす。
【0087】
以上に照らし、望ましい性能を提供する熱交換器、熱交換器を取り入れた冷凍システム、冷凍システムの運転方法、既存の熱交換器を処置するための方法、および関連の技術を提供することが、この技術分野において一般的に望ましいと考えられる。
【0088】
上述した主題は、例示であると考えるべきであり、本発明を限定するものと考えるべきではなく、添付の特許請求の範囲は、本発明の技術的範囲に含まれるすべての変更、強化および他の実施形態を包含することを意図している。したがって、本発明の技術的範囲は、法律によって許される最大の範囲まで、特許請求の範囲およびそれらの均等物について許される最も広い解釈によって決定されるべきものであり、上述の詳細な説明によって制限または限定されるものではない。
【0089】
本発明は、冷凍プロセスに適用される熱交換器の効率を改善する目的で開発された。本発明を、産業用の熱伝達、発電プラント、熱回収ユニット、太陽エネルギーおよび他の代替のエネルギーシステムおよび化学的石油工程など、他の熱交換器の用途においても効果的に使用できることを、理解できるであろう。
【0090】
本発明を、本発明の好ましい実施形態を参照しつつ詳しく示して説明したが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の技術的範囲から離れることなく、これらの実施形態において形態または細部についてのさまざまな変更が可能であることを、当業者であれば理解できるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる流体である極低温用の混合冷媒が進入する流体入口マニホールドと、
流体出口マニホールドと、
前記流体入口マニホールドおよび流体出口マニホールドと連通するように構成され、前記混合冷媒が流れる複数の熱伝達チャネルと、
前記流体入口マニホールド内に位置する複数の充填材要素とを有している熱交換器。
【請求項2】
請求項1において、
前記熱交換器が、プレート型熱交換器である熱交換器。
【請求項3】
請求項2において、
前記プレート型熱交換器が、対向流の熱交換器である熱交換器。
【請求項4】
請求項2において、
前記プレート型熱交換器が、短経路のプレート型熱交換器である熱交換器。
【請求項5】
請求項1において、
前記充填材要素が、前記流体入口マニホールド内に無作為に配置される充填材要素を含んでいる熱交換器。
【請求項6】
請求項1において、
前記充填材要素が、球形のボールを含んでいる熱交換器。
【請求項7】
請求項1において、
前記充填材要素が、球形要素、長円体要素、リング要素、円柱形要素、サドル要素、回転楕円体要素、リボン要素およびガーゼ要素で構成されるグループから選択される熱交換器。
【請求項8】
請求項1において、
前記充填材要素が、第1の大きさ最頻値を有する第1組の充填材要素と第1の大きさ最頻値と異なる第2の大きさ最頻値を有する第2組の充填材要素とを少なくとも含んで、少なくとも2つの大きさ最頻値を有している熱交換器。
【請求項9】
請求項1において、
前記充填材要素の寸法が、前記複数の熱伝達チャネルのうちの1つの幅よりも大きい熱交換器。
【請求項10】
請求項1において、
前記混合冷媒を通過させる構造体を前記流体入口マニホールド内に位置させてさらに有している熱交換器。
【請求項11】
請求項10において、
前記構造体が、前記充填材要素を固定している熱交換器。
【請求項12】
請求項10において、
前記構造体が円柱形である熱交換器。
【請求項13】
請求項10において、
前記構造体が円錐形であって第1の端部および第2の端部を有しており、前記第1の端部が第2の端部よりも大きい断面を有している熱交換器。
【請求項14】
請求項13において、
前記第2の端部が、前記入口マニホールドの流れのない端部の近くに位置している熱交換器。
【請求項15】
請求項10において、
前記構造体が、自身の長さ方向に沿って変化する断面積を有している熱交換器。
【請求項16】
請求項1において、
ヘッダーに充填材料を使用することによって、全体としての熱伝達係数が少なくとも2%改善されている熱交換器。
【請求項17】
第1組の流体チャネルおよび少なくとも第2組の流体チャネルを規定している複数の平行な熱伝達プレートと、
前記第1組の流体チャネルと連通するように構成された第1の流体入口ポートと、
前記第1組の流体チャネルと連通するように構成された第1の流体出口ポートと、
前記第2組の流体チャネルと連通するように構成された第2の流体入口ポートと、
前記第2組の流体チャネルと連通するように構成された第2の流体出口ポートと、
前記第1の流体入口ポートおよび第2の流体入口ポートの少なくとも一方に位置し、複数の充填材要素を有する充填材入り分配器と、
気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる流体であって、前記第1の流体入口ポートおよび第2の流体入口ポートの少なくとも一方に進入し、前記第1組の流体チャネルおよび第2組の流体チャネルの少なくとも一方を流れる極低温用の混合冷媒とを有している熱交換器。
【請求項18】
圧縮機と、
その圧縮機に接続された少なくとも1つの熱交換器とを有しており、
前記少なくとも1つの熱交換器が、ヘッダーと、そのヘッダー内に位置する複数の充填材要素と、熱伝達チャネルとを有しており、その熱伝達チャネルが、前記ヘッダーおよび充填材要素を通過する流体を受け取るように構成されており、前記流体が、気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる極低温用の混合冷媒である冷凍システム。
【請求項19】
請求項18において、
前記少なくとも1つの熱交換器が、過熱低減器、凝縮器、少なくとも2つの冷媒流の間で熱を交換する熱交換器および蒸発器で構成されるグループから選択される熱交換器として機能する冷凍システム。
【請求項20】
請求項18において、
前記少なくとも1つの熱交換器が、冷凍セクションの構成要素を含んでいる冷凍システム。
【請求項21】
請求項20において、
前記冷凍セクションが分離器を有している冷凍システム。
【請求項22】
請求項18において、
前記少なくとも1つの熱交換器が、プレート型熱交換器である冷凍システム。
【請求項23】
請求項18において、
前記少なくとも1つの熱交換器が、水平に向けられている冷凍システム。
【請求項24】
請求項18において、
前記少なくとも1つの熱交換器が、垂直に向けられている冷凍システム。
【請求項25】
請求項18において、
前記少なくとも1つの熱交換器が、高温端を上にして垂直に向けられている冷凍システム。
【請求項26】
熱交換のための方法であって、
第1組の流体チャネルおよび少なくとも第2組の流体チャネルを規定している複数の平行な熱伝達プレートと、前記第1組の流体チャネルと連通するように構成された第1の流体入口ポートと、前記第1組の流体チャネルと連通するように構成された第1の流体出口ポートと、前記第2組の流体チャネルと連通するように構成された第2の流体入口ポートと、前記第2組の流体チャネルと連通するように構成された第2の流体出口ポートと、前記第1の流体入口ポートおよび第2の流体入口ポートの少なくとも一方に位置し、複数の充填材要素を有する充填材入り分配器とを有している熱交換器において、前記第1の流体入口ポート、前記第1組の流体チャネルおよび前記第1の流体出口ポートを通って第1の流体を流すステップと、
前記第2組の流体チャネルを通って第2の流体を流すことで、前記複数の平行な熱伝達プレートを介して前記第1の流体と第2の流体との間で熱を交換するステップとを含んでおり、
前記第1の流体および第2の流体の少なくとも一方が、気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる極低温用の混合冷媒である方法。
【請求項27】
請求項26において、
熱伝達媒体の冷却、ヒートシンクの冷却、物品の冷却、気体流の冷却、真空ポンプシステムのクライオコイルの冷却、生物医学冷凍庫の冷却、検出器の冷却、工業プロセスでの熱交換、化学プロセスでの熱交換および医薬用原料の調製での熱交換で構成されるグループから選択される少なくとも1つのプロセスに使用される方法。
【請求項28】
請求項27において、
半導体ウエハを冷却するために使用される方法。
【請求項29】
請求項27において、
熱伝達媒体またはヒートシンクを使用して物品を間接的に冷却するステップをさらに含んでいる方法。
【請求項30】
請求項27において、
気体流を冷却して水蒸気を凝縮させるステップをさらに含んでいる方法。
【請求項31】
請求項27において、
深冷分離に使用するために気体流を冷却するステップをさらに含んでいる方法。
【請求項32】
極低温混合冷媒冷凍システムの補修方法であって、
前記冷凍システムに組み合わせられた熱交換器のマニホールドに複数の充填材要素を挿入するステップを含んでおり、
前記熱交換器が、前記マニホールドおよび熱伝達チャネルを有していて、その熱伝達チャネルが、前記マニホールドおよび充填材要素を通過する流体を受け取るように構成されており、前記流体が、気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる極低温用の混合冷媒である方法。
【請求項33】
極低温混合冷媒冷凍システムの製造方法であって、
前記冷凍システムに組み合わせられる熱交換器のマニホールドに複数の充填材要素を挿入するステップを含んでおり、
前記熱交換器が、前記マニホールドおよび熱伝達チャネルを有していて、その熱伝達チャネルが、前記マニホールドおよび充填材要素を通過する流体を受け取るように構成されており、前記流体が、気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる極低温用の混合冷媒である方法。
【請求項34】
請求項32または33において、
前記充填材要素が、前記マニホールド内に無作為に配置される充填材要素を含んでいる方法。
【請求項35】
請求項18において、
前記ヘッダーに挿入された、前記充填材要素を含むカートリッジを有している冷凍システム。
【請求項36】
請求項35において、
前記カートリッジが、構造化された充填材で形成されている冷凍システム。
【請求項37】
請求項35において、
前記カートリッジが、さまざまな寸法の充填材要素を含んでいる冷凍システム。
【請求項38】
請求項18において、
前記充填材要素を動かぬように固定する構造体を有している冷凍システム。
【請求項39】
請求項38において、
前記構造体が、前記流体が流れるように充分な透過性をもつ冷凍システム。
【請求項40】
請求項38において、
前記構造体が、メッシュ、スクリーンおよび孔空きホイルで構成されるグループから選択される冷凍システム。
【請求項41】
請求項38において、
前記構造体が、ワイヤメッシュ、ポリマーメッシュ、金属ホイルおよびプラスチックホイルで構成されるグループから選択される冷凍システム。
【請求項42】
請求項38において、
前記構造体が、可変の形状の構造体、円柱形の構造体、対称的な構造体、非対称な構造体、および、断面積が入口から流れのない端部へ向けてマニホールドに沿って減少している構造体で構成されるグループから選択される構造体を含む冷凍システム。
【請求項43】
請求項42において、
前記構造体が、滑らかな連続的様相、波状の様相および段階的な様相の少なくとも1つで形状が変化する中実の素子を有している冷凍システム。
【請求項44】
圧縮機と、
その圧縮機に接続された少なくとも1つの熱交換器とを有しており、
前記少なくとも1つの熱交換器が、ヘッダーと、そのヘッダー内に位置して中実の素子を含む充填材と、熱伝達チャネルとを有しており、その熱伝達チャネルが、前記ヘッダーを通過する流体を受け取るように構成されており、前記流体が、気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる極低温用の混合冷媒である冷凍システム。
【請求項45】
請求項44において、
前記ヘッダーに挿入された、前記充填材を含むカートリッジを有している冷凍システム。
【請求項46】
請求項44において、
一連の流れチャネルが前記ヘッダーの内側に挿入されている冷凍システム。
【請求項47】
請求項44において、
前記中実の素子が、他の充填材で囲まれる冷凍システム。
【請求項48】
請求項47において、
前記他の充填材が、リボン要素を含んでいる冷凍システム。
【請求項49】
請求項44において、
前記中実の素子が、滑らかな連続的様相、波状の様相および段階的な様相の少なくとも1つで形状が変化する冷凍システム。
【請求項50】
極低温混合冷媒冷凍システムの補修方法であって、
前記冷凍システムに組み合わせられた熱交換器のマニホールドに中実の素子を含む充填材を挿入するステップを含んでおり、
前記熱交換器が、前記マニホールドおよび熱伝達チャネルを有していて、その熱伝達チャネルが、前記マニホールドを通過する流体を受け取るように構成されており、前記流体が、気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる極低温用の混合冷媒である方法。
【請求項51】
極低温混合冷媒冷凍システムの製造方法であって、
前記冷凍システムに組み合わせられる熱交換器のマニホールドに中実の素子を含む充填材を挿入するステップを含んでおり、
前記熱交換器が、前記マニホールドおよび熱伝達チャネルを有していて、その熱伝達チャネルが、前記マニホールドを通過する流体を受け取るように構成されており、前記流体が、気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる極低温用の混合冷媒である方法。
【請求項52】
請求項50または51において、
前記充填材が、カートリッジに含まれた充填材である方法。
【請求項53】
請求項50または51において、
一連の流れチャネルが前記マニホールドの内側に挿入されている方法。
【請求項54】
請求項50または51において、
前記中実の素子が、他の充填材で囲まれる方法。
【請求項55】
請求項54において、
前記他の充填材が、リボン要素を含んでいる方法。
【請求項56】
請求項50または51において、
前記中実の素子が、滑らかな連続的様相、波状の様相および段階的な様相の少なくとも1つで形状が変化する方法。
【請求項1】
気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる流体である極低温用の混合冷媒が進入する流体入口マニホールドと、
流体出口マニホールドと、
前記流体入口マニホールドおよび流体出口マニホールドと連通するように構成され、前記混合冷媒が流れる複数の熱伝達チャネルと、
前記流体入口マニホールド内に位置する複数の充填材要素とを有している熱交換器。
【請求項2】
請求項1において、
前記熱交換器が、プレート型熱交換器である熱交換器。
【請求項3】
請求項2において、
前記プレート型熱交換器が、対向流の熱交換器である熱交換器。
【請求項4】
請求項2において、
前記プレート型熱交換器が、短経路のプレート型熱交換器である熱交換器。
【請求項5】
請求項1において、
前記充填材要素が、前記流体入口マニホールド内に無作為に配置される充填材要素を含んでいる熱交換器。
【請求項6】
請求項1において、
前記充填材要素が、球形のボールを含んでいる熱交換器。
【請求項7】
請求項1において、
前記充填材要素が、球形要素、長円体要素、リング要素、円柱形要素、サドル要素、回転楕円体要素、リボン要素およびガーゼ要素で構成されるグループから選択される熱交換器。
【請求項8】
請求項1において、
前記充填材要素が、第1の大きさ最頻値を有する第1組の充填材要素と第1の大きさ最頻値と異なる第2の大きさ最頻値を有する第2組の充填材要素とを少なくとも含んで、少なくとも2つの大きさ最頻値を有している熱交換器。
【請求項9】
請求項1において、
前記充填材要素の寸法が、前記複数の熱伝達チャネルのうちの1つの幅よりも大きい熱交換器。
【請求項10】
請求項1において、
前記混合冷媒を通過させる構造体を前記流体入口マニホールド内に位置させてさらに有している熱交換器。
【請求項11】
請求項10において、
前記構造体が、前記充填材要素を固定している熱交換器。
【請求項12】
請求項10において、
前記構造体が円柱形である熱交換器。
【請求項13】
請求項10において、
前記構造体が円錐形であって第1の端部および第2の端部を有しており、前記第1の端部が第2の端部よりも大きい断面を有している熱交換器。
【請求項14】
請求項13において、
前記第2の端部が、前記入口マニホールドの流れのない端部の近くに位置している熱交換器。
【請求項15】
請求項10において、
前記構造体が、自身の長さ方向に沿って変化する断面積を有している熱交換器。
【請求項16】
請求項1において、
ヘッダーに充填材料を使用することによって、全体としての熱伝達係数が少なくとも2%改善されている熱交換器。
【請求項17】
第1組の流体チャネルおよび少なくとも第2組の流体チャネルを規定している複数の平行な熱伝達プレートと、
前記第1組の流体チャネルと連通するように構成された第1の流体入口ポートと、
前記第1組の流体チャネルと連通するように構成された第1の流体出口ポートと、
前記第2組の流体チャネルと連通するように構成された第2の流体入口ポートと、
前記第2組の流体チャネルと連通するように構成された第2の流体出口ポートと、
前記第1の流体入口ポートおよび第2の流体入口ポートの少なくとも一方に位置し、複数の充填材要素を有する充填材入り分配器と、
気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる流体であって、前記第1の流体入口ポートおよび第2の流体入口ポートの少なくとも一方に進入し、前記第1組の流体チャネルおよび第2組の流体チャネルの少なくとも一方を流れる極低温用の混合冷媒とを有している熱交換器。
【請求項18】
圧縮機と、
その圧縮機に接続された少なくとも1つの熱交換器とを有しており、
前記少なくとも1つの熱交換器が、ヘッダーと、そのヘッダー内に位置する複数の充填材要素と、熱伝達チャネルとを有しており、その熱伝達チャネルが、前記ヘッダーおよび充填材要素を通過する流体を受け取るように構成されており、前記流体が、気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる極低温用の混合冷媒である冷凍システム。
【請求項19】
請求項18において、
前記少なくとも1つの熱交換器が、過熱低減器、凝縮器、少なくとも2つの冷媒流の間で熱を交換する熱交換器および蒸発器で構成されるグループから選択される熱交換器として機能する冷凍システム。
【請求項20】
請求項18において、
前記少なくとも1つの熱交換器が、冷凍セクションの構成要素を含んでいる冷凍システム。
【請求項21】
請求項20において、
前記冷凍セクションが分離器を有している冷凍システム。
【請求項22】
請求項18において、
前記少なくとも1つの熱交換器が、プレート型熱交換器である冷凍システム。
【請求項23】
請求項18において、
前記少なくとも1つの熱交換器が、水平に向けられている冷凍システム。
【請求項24】
請求項18において、
前記少なくとも1つの熱交換器が、垂直に向けられている冷凍システム。
【請求項25】
請求項18において、
前記少なくとも1つの熱交換器が、高温端を上にして垂直に向けられている冷凍システム。
【請求項26】
熱交換のための方法であって、
第1組の流体チャネルおよび少なくとも第2組の流体チャネルを規定している複数の平行な熱伝達プレートと、前記第1組の流体チャネルと連通するように構成された第1の流体入口ポートと、前記第1組の流体チャネルと連通するように構成された第1の流体出口ポートと、前記第2組の流体チャネルと連通するように構成された第2の流体入口ポートと、前記第2組の流体チャネルと連通するように構成された第2の流体出口ポートと、前記第1の流体入口ポートおよび第2の流体入口ポートの少なくとも一方に位置し、複数の充填材要素を有する充填材入り分配器とを有している熱交換器において、前記第1の流体入口ポート、前記第1組の流体チャネルおよび前記第1の流体出口ポートを通って第1の流体を流すステップと、
前記第2組の流体チャネルを通って第2の流体を流すことで、前記複数の平行な熱伝達プレートを介して前記第1の流体と第2の流体との間で熱を交換するステップとを含んでおり、
前記第1の流体および第2の流体の少なくとも一方が、気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる極低温用の混合冷媒である方法。
【請求項27】
請求項26において、
熱伝達媒体の冷却、ヒートシンクの冷却、物品の冷却、気体流の冷却、真空ポンプシステムのクライオコイルの冷却、生物医学冷凍庫の冷却、検出器の冷却、工業プロセスでの熱交換、化学プロセスでの熱交換および医薬用原料の調製での熱交換で構成されるグループから選択される少なくとも1つのプロセスに使用される方法。
【請求項28】
請求項27において、
半導体ウエハを冷却するために使用される方法。
【請求項29】
請求項27において、
熱伝達媒体またはヒートシンクを使用して物品を間接的に冷却するステップをさらに含んでいる方法。
【請求項30】
請求項27において、
気体流を冷却して水蒸気を凝縮させるステップをさらに含んでいる方法。
【請求項31】
請求項27において、
深冷分離に使用するために気体流を冷却するステップをさらに含んでいる方法。
【請求項32】
極低温混合冷媒冷凍システムの補修方法であって、
前記冷凍システムに組み合わせられた熱交換器のマニホールドに複数の充填材要素を挿入するステップを含んでおり、
前記熱交換器が、前記マニホールドおよび熱伝達チャネルを有していて、その熱伝達チャネルが、前記マニホールドおよび充填材要素を通過する流体を受け取るように構成されており、前記流体が、気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる極低温用の混合冷媒である方法。
【請求項33】
極低温混合冷媒冷凍システムの製造方法であって、
前記冷凍システムに組み合わせられる熱交換器のマニホールドに複数の充填材要素を挿入するステップを含んでおり、
前記熱交換器が、前記マニホールドおよび熱伝達チャネルを有していて、その熱伝達チャネルが、前記マニホールドおよび充填材要素を通過する流体を受け取るように構成されており、前記流体が、気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる極低温用の混合冷媒である方法。
【請求項34】
請求項32または33において、
前記充填材要素が、前記マニホールド内に無作為に配置される充填材要素を含んでいる方法。
【請求項35】
請求項18において、
前記ヘッダーに挿入された、前記充填材要素を含むカートリッジを有している冷凍システム。
【請求項36】
請求項35において、
前記カートリッジが、構造化された充填材で形成されている冷凍システム。
【請求項37】
請求項35において、
前記カートリッジが、さまざまな寸法の充填材要素を含んでいる冷凍システム。
【請求項38】
請求項18において、
前記充填材要素を動かぬように固定する構造体を有している冷凍システム。
【請求項39】
請求項38において、
前記構造体が、前記流体が流れるように充分な透過性をもつ冷凍システム。
【請求項40】
請求項38において、
前記構造体が、メッシュ、スクリーンおよび孔空きホイルで構成されるグループから選択される冷凍システム。
【請求項41】
請求項38において、
前記構造体が、ワイヤメッシュ、ポリマーメッシュ、金属ホイルおよびプラスチックホイルで構成されるグループから選択される冷凍システム。
【請求項42】
請求項38において、
前記構造体が、可変の形状の構造体、円柱形の構造体、対称的な構造体、非対称な構造体、および、断面積が入口から流れのない端部へ向けてマニホールドに沿って減少している構造体で構成されるグループから選択される構造体を含む冷凍システム。
【請求項43】
請求項42において、
前記構造体が、滑らかな連続的様相、波状の様相および段階的な様相の少なくとも1つで形状が変化する中実の素子を有している冷凍システム。
【請求項44】
圧縮機と、
その圧縮機に接続された少なくとも1つの熱交換器とを有しており、
前記少なくとも1つの熱交換器が、ヘッダーと、そのヘッダー内に位置して中実の素子を含む充填材と、熱伝達チャネルとを有しており、その熱伝達チャネルが、前記ヘッダーを通過する流体を受け取るように構成されており、前記流体が、気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる極低温用の混合冷媒である冷凍システム。
【請求項45】
請求項44において、
前記ヘッダーに挿入された、前記充填材を含むカートリッジを有している冷凍システム。
【請求項46】
請求項44において、
一連の流れチャネルが前記ヘッダーの内側に挿入されている冷凍システム。
【請求項47】
請求項44において、
前記中実の素子が、他の充填材で囲まれる冷凍システム。
【請求項48】
請求項47において、
前記他の充填材が、リボン要素を含んでいる冷凍システム。
【請求項49】
請求項44において、
前記中実の素子が、滑らかな連続的様相、波状の様相および段階的な様相の少なくとも1つで形状が変化する冷凍システム。
【請求項50】
極低温混合冷媒冷凍システムの補修方法であって、
前記冷凍システムに組み合わせられた熱交換器のマニホールドに中実の素子を含む充填材を挿入するステップを含んでおり、
前記熱交換器が、前記マニホールドおよび熱伝達チャネルを有していて、その熱伝達チャネルが、前記マニホールドを通過する流体を受け取るように構成されており、前記流体が、気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる極低温用の混合冷媒である方法。
【請求項51】
極低温混合冷媒冷凍システムの製造方法であって、
前記冷凍システムに組み合わせられる熱交換器のマニホールドに中実の素子を含む充填材を挿入するステップを含んでおり、
前記熱交換器が、前記マニホールドおよび熱伝達チャネルを有していて、その熱伝達チャネルが、前記マニホールドを通過する流体を受け取るように構成されており、前記流体が、気体および液体を含む少なくとも2つの相を含んでいる極低温用の混合冷媒である方法。
【請求項52】
請求項50または51において、
前記充填材が、カートリッジに含まれた充填材である方法。
【請求項53】
請求項50または51において、
一連の流れチャネルが前記マニホールドの内側に挿入されている方法。
【請求項54】
請求項50または51において、
前記中実の素子が、他の充填材で囲まれる方法。
【請求項55】
請求項54において、
前記他の充填材が、リボン要素を含んでいる方法。
【請求項56】
請求項50または51において、
前記中実の素子が、滑らかな連続的様相、波状の様相および段階的な様相の少なくとも1つで形状が変化する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【公開番号】特開2013−53848(P2013−53848A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−269353(P2012−269353)
【出願日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【分割の表示】特願2007−535810(P2007−535810)の分割
【原出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(398029692)ブルックス オートメーション インコーポレイテッド (81)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【分割の表示】特願2007−535810(P2007−535810)の分割
【原出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(398029692)ブルックス オートメーション インコーポレイテッド (81)
【Fターム(参考)】
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