説明

冷凍保存に適した筍の加工品及びその製造方法、並びに筍の冷凍保存方法

【目的】 生の筍の食感や風味をそのまま保持できる長期保存可能な筍の加工品、及び、生の筍の食感や風味をそのまま保持できるような筍の長期保存方法を提供する。
【構成】 本発明は、筍を水煮及びアク抜きする工程と、前記水煮及びアク抜きした筍を食べ易いサイズに切断する工程と、前記切断された複数の筍を、前記筍からの水分を外部に放出可能な袋に入れて、遠心分離のための装置を使用して脱水する工程と、前記脱水された複数の筍を、料理に使用するのに適した所定の分量に分けて、それぞれを食品包装フィルムで包むか樹脂製袋に入れる工程と、前記包むか袋に入れた複数の筍をそれぞれアルミホイルなどのアルミ製シートで包むか又はアルミ製シート製の袋に入れる工程と、前記アルミ製シートで包むか又はアルミ製シート製の袋に入れた筍を冷凍する工程と、を含む筍の長期保存方法、及びこのような方法により製造された筍の加工品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筍の冷凍保存に適した加工品、及び筍の冷凍保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、筍は日本国では3〜5月の春の短い期間に採取されるだけなので、採取された筍は、食用に供されるもの以外は、水煮などで加工して長期保存することが行われている。例えば、筍を水煮するときに使用する水溶液のpHを調整することや、筍の水煮後に加圧殺菌することなどにより、筍の保存期間を延ばすことが試行されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−314221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の筍の長期保存方法においては、前述のように水煮用の水溶液のpH調整をしたり水煮後の加圧殺菌をするだけであったため、長期保存そのものは可能であるが、解凍して調理した後の筍は、生の筍の食感が失われたり、生の筍の風味が失われたものになってしまっていた。また、従来より、筍の調理に関しては、筍の内部に調味液がなかなか染み込み難いことから、調味液を含む煮汁の中に筍を漬けた状態で30分以上煮込む必要があり、調理時間が長くなってしまうということが難点とされていた。
【0005】
本発明はこのような従来技術の問題点に着目してなされたものであって、生の筍の食感や風味をそのまま保持できて調理時間も大幅に短縮することができる長期保存可能な筍の加工品、及び、生の筍の食感や風味をそのまま保持できて調理時間も大幅に短縮することができるような筍の長期保存方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述のような課題を解決するための本発明による筍の長期保存方法は、筍を水煮及びアク抜きする工程と、前記水煮及びアク抜きした筍を一口で食べ易いサイズに切断(分割)する工程と、前記切断された複数の筍を、前記筍の内部の水分が約25.5〜27%だけ減少するように、前記筍からの水分を外部に放出可能な袋に入れて遠心分離のための装置で遠心分離する方法(又はその他の方法)により脱水する工程と、前記脱水された複数の筍を、一回の料理に使用するのに適した所定の分量に分けて、それぞれを食品包装フィルムで包むか又は前記食品包装フィルムと同じ機能を有する樹脂製シート製の袋に入れる工程と、前記包むか袋に入れた筍を冷凍する工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明による筍の冷凍保存方法は、筍を水煮及びアク抜きする工程と、前記水煮及びアク抜きした筍を一口で食べ易いサイズに切断(分割)する工程と、前記切断された複数の筍を、前記筍からの水分を外部に放出可能な袋に入れて、前記筍の内部の水分が約25.5〜27%だけ減少するように、遠心分離のための装置を使用して脱水する工程と、前記脱水された複数の筍を、一回の料理に使用するのに適した所定の分量に分けて、それぞれを食品包装フィルムで包むか又は又は前記食品包装フィルムと同じ機能を有する樹脂製シート製の袋に入れる工程と、前記包むか袋に入れた複数の筍をそれぞれアルミホイルなどのアルミ製シートで包むか又はアルミ製シート製の袋に入れる工程と、前記アルミ製シートで包むか又はアルミ製シート製の袋に入れた筍を冷凍する工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明による筍の冷凍保存方法は、筍を水煮及びアク抜きする工程と、前記水煮及びアク抜きした筍を一口で食べ易いサイズに切断(分割)する工程と、前記切断された複数の筍を、前記筍からの水分を外部に放出可能な袋に入れて、遠心分離のための装置を使用して脱水する工程と、前記脱水された複数の筍を、一回の料理に使用するのに適した所定の分量に分けて、それぞれを食品包装フィルムで包むか又は前記食品包装フィルムと同じ機能を有する樹脂製シート製の袋に入れる工程と、前記包むか袋に入れた複数の筍をそれぞれアルミホイルなどのアルミ製シートで包むか又はアルミ製シート製の袋に入れる工程と、前記アルミ製シートで包むか又はアルミ製シート製の袋に入れた筍を冷凍する工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0009】
さらに、本発明による筍の冷凍保存食品は、前述のような方法により加工され、長期の冷凍保存が可能な筍の冷凍保存食品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、前記の水煮、アク抜き及び切断した筍を脱水し、それらを一回の料理に適した適量ずつ食品包装フィルムとアルミホイルなどのアルミ製シートで包むか又は前記各袋に入れて冷凍するようにしている。よって、本発明によれば、前記脱水により冷凍前の筍の内部の水分を適度に少なくしておけるので、冷凍の過程で筍の内部の水分が凍結膨張して筍の細胞を破壊して筍としての食感を失わせてしまうことを防ぐことができる。また、本発明によれば、前記脱水された筍をアルミホイルなどのアルミ製シートで包んでおくことにより、冷凍保存中に外部からの紫外線を受けて筍が劣化してしまうことを防止することができる。
また、本発明によれば、予め一回の調理に必要な分量だけをフィルムに包むか袋に入れた状態で冷凍保存しているので、調理時には、前記のフィルムに包むか袋に入れた状態で冷凍保存されている筍を、鍋の中の調味液を含む煮汁の中に放り込むだけで、簡単に調理が可能である。しかも、本発明では、前述のように冷凍前に所定の割合で脱水されており、脱水されている筍は脱水されていない筍と比較して調味成分の吸い込み時間が短いので、調味成分を含む煮汁を入れた鍋の中での加熱時間を、通常の筍(従来の冷凍の筍を含む)を調理する場合と比較して、極めて短時間で行うことができる(本発明者の実験によれば、例えば通常は30分間くらいかかる煮汁中での加熱を、5分間くらいで終えることができる)。
【0011】
また、特に、本発明においては、前記の水煮、アク抜き及び切断した筍を、例えば前記筍からの水分を外部に放出可能な袋に入れて、遠心分離のための装置を使用して、前記筍の内部の水分が約25.5〜27%だけ減少するように脱水するようにしているので、筍が冷凍保存された後でも、生の筍の食感が得られ、且つ生の筍の風味が得られるように、美味しく調理することができる(すなわち、本発明者の実験によると、詳しくは後述するが、前記脱水により筍の内部の水分を脱水前より約25.5%より少ない程度にしか減少させなかった場合は、冷凍過程で内部の過剰な水分が凍結膨張することにより筍の細胞が壊されてしまい、調理後はスポンジのような食感のものになってしまうしアクの成分も多量に残ってしまう、他方、前記脱水により筍の内部の水分を脱水前より約27%を超えて減少させた場合は、脱水の過程で筍の旨み成分が水分と一緒に筍の外部に離脱・放出されてしまい、調理後は筍の風味が失われたものになってしまう、ということが分かった)。
【0012】
また、本発明によれば、予め一回の調理に必要な分量だけをフィルムに包んだ状態で冷凍保存しているので、調理時には、前記冷凍保存されている筍を取り出して、調味液(調味成分)を含む煮汁を入れた鍋の中に放り込むだけで、簡単に調理が可能である。しかも、本発明では、前述のように冷凍前に所定の脱水がされており、脱水されている筍は脱水されていない筍と比較して調味液の吸い込み時間が短いので、煮汁を入れた鍋の中での加熱時間を通常の筍(従来の冷凍の筍を含む)を調理する場合と比較して極めて短時間で行うことができる(本発明者の実験によれば、例えば通常は30分間くらいかかる煮汁中での加熱を、5分間くらいで終えることができた)。
【0013】
また、本発明によれば、前記切断され脱水された各筍を、食品包装フィルムで包むか又は樹脂製の袋に入れるようにし、さらにこれをアルミ製シートで包むかアルミ製シート製の袋に入れるようにしているので、長期間の冷凍保存中に、冷凍庫又は冷凍室内で、前記筍に外部からの紫外線(例えば冷凍庫の扉を開いたときに外部から照射する紫外線)が照射することが前記アルミ製のシート又は袋により防止される結果、前記紫外線により前記筍が劣化してしまうことが有効に防止されるようになる(もともと筍は多量の油分を含んでいるため紫外線が当たると劣化しやすいという性質を有している)。
【0014】
また、本発明によれば、前記切断され脱水された各筍を、後で一回の調理をしやすい分量(例えば4人家族なら4人に適した分量、2人家族なら2人に適した分量、単身所帯なら一人に適した分量)に分けて、その調理しやすい分量毎に、食品包装フィルムで包むか又は樹脂製の袋に入れて(さらに必要ならアルミ製シートで包むかアルミ製シートの袋に入れて)冷凍するようにしている。よって、ユーザーは、前記冷凍された筍を調理するときは、予め調味液を含む煮汁や他の食材を入れた鍋の中に、前記の予め調理しやすい分量(例えば4人家族なに4人に適した分量)ごとに分けられて前記フィルムに包装され又は袋に入れられた筍を、前記フィルム又は袋から取り出して、前記鍋の中に投入して加熱するだけで、前記冷凍された筍を調理することができる。しかも、本発明においては、前記冷凍された筍は、既に所定の割合だけ脱水された状態であるので、前記鍋の中に投入した後に極めて短時間内に前記煮汁中の調味成分を内部に吸い込むので、調理時間が極めて短縮されるようになる(従来の冷凍された筍を調理するときは、調味成分を筍の内部深くまで吸い込ませて筍を十分に味付けするために約30分以上、加熱し煮続ける必要があったが、本発明によるときは、本発明者の実験では約5分間加熱し煮るだけで、十分な味付けをすることができた)。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態による筍の冷凍保存方法を説明するためのフローチャート。
【図2】本実施形態において水煮・アク抜き後に一口で食すのに適したサイズ・形状に切断された筍の例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態として、筍の冷凍保存食品の製造方法を図1のフローチャートに即して説明すると、次のとおりである。
【0017】
まず、生の筍の穂先を切断すると共に1本の切れ目を縦方向に入れて、それ(皮が付いたままの状態)を、水と糠と唐辛子とが入れられた鍋の中に投入して20〜30分間、茹でる。次に、火を止めて、そのままの状態で自然冷却させる(この間に筍からアクの成分が出る)。以上により、筍の水煮及びアク抜きが行われる(図1のステップS1)。次に、前記水煮及びアク抜きした筍を、後の調理に適した形、例えば筑前煮に適した形、薄切り、乱切りなどの任意の形状であり且つ一口で食べ易いサイズに、切断する(図1のステップS2。例えば、図2の符号1,2は、切断(乱切り)された後の筍の一例を示す)。
【0018】
次に、この切断した複数の筍1,2の多数個を、例えば樹脂製のネットから成る袋(筍からの水分を外部に放出可能な袋の一例)に入れる。そして、この袋に入った多数個の筍を、例えば家庭用洗濯乾燥機の中に入れて、所定時間、脱水機能を作動させることにより(例えばシャープ製の家庭用洗濯乾燥機ES−TG84Vによるときは7分30秒から8分30秒くらいの間、脱水機能を作動させることにより)、脱水直前の筍の内部の水分が例えば約25.5〜27%だけ減少するように、脱水する(図1のステップS3)。
【0019】
次に、この脱水された複数の筍を、料理に使用するのに適した所定の分量に分けて(例えば、4人家族用ならば4人分の分量ずつに分けて、また2人家族用ならば2人分の分量ずつに分けて、また単身者用ならば一人分の分量ずつに分けて)、それぞれを家庭用食品包装フィルムで包む(樹脂製の袋に入れても良い。図1のステップS4)。そして、このフィルムで包んだ複数の筍を、それぞれ、アルミホイルなどのアルミ製シートホイルで包む(アルミ製シート製の袋に入れても良い。図1のステップS5)。そして、この前記各アルミ製シートで包むか前記各袋に入れた筍を、例えば冷凍庫又は冷凍室に入れて、冷凍する(図1のステップS6)。以上により、前記筍を、少なくとも1年以上の長期間冷凍の状態で保存することができる。
【0020】
以上が本発明の最良の実施形態による筍の冷凍保存食品の製造方法(筍の冷凍保存方法)である。
【0021】
なお、ここで、本実施形態による製造された(冷凍保存された)筍の使用方法(調理方法)について説明する。前記筍の冷凍保存食品を調理のために使用するときは、まず、予め調味液を含む煮汁及び他の食材を入れた鍋の中に、前記の一回の調理しやすい分量(例えば4人家族なに4人に適した分量)ごとに予め仕分けされて前記フィルムに包装され又は袋に入れられた筍を、前記フィルム又は袋から取り出して、前記鍋の中に投入して所定時間だけ加熱する。これだけで、前記冷凍された筍を調理することができる。
【0022】
次に、本実施形態による効果について説明する。本実施形態においては、前記ステップS3で、前記水煮・アク抜き及び切断した筍を、例えば樹脂製ネット製の袋などの前記筍からの水分を外部に放出可能な袋に入れて、前記筍の内部の水分が約25.5〜27%だけ減少するように、遠心分離のための装置を使用して脱水するようにしているので、冷凍保存した筍を、生の筍の食感が得られ、且つ生の筍の風味が得られるように、美味しく調理することができる。
【0023】
すなわち、本発明者の実験によると、前記脱水により筍の内部の水分を脱水前より約25.5%より少ない程度にしか減少させなかった場合は、その後の冷凍過程で内部の過剰な水分が凍結膨張することにより筍の細胞が壊されてしまい、解凍又は調理後はスポンジのような食感のものになってしまい、また、解凍又は調理後はアクが強く感じられて美味しくないものになってしまった(詳細は後述する)。また、他方、前記脱水により筍の内部の水分を脱水前より約27%を超えて多量に減少させた場合は、その後の脱水の過程で筍の旨み成分が水分と一緒に筍の外部に離脱・放出されてしまったため、調理後は筍の風味が失われたものになってしまった(詳細は後述する)。したがって、詳細は後述するが、本発明者の実験によると、前記脱水により筍の内部の水分を脱水前より約25.5〜27%だけ少なくなるように減少させることにより、その後に冷凍保存、解凍、及び調理をした筍に、生の筍とほぼ同様の風味と食感を与えることができる、ということが分かった。
【0024】
また、本発明によれば、予め一回の調理に適した分量だけをフィルムに包むか樹脂製袋に入れた状態で冷凍保存しているので、調理時には、前記のフィルムに包むか樹脂製袋に入れた状態で冷凍保存されている筍を取り出して、調味液を含む煮汁を入れた鍋の中に放り込むだけで、簡単に調理が可能である。しかも、本発明の冷凍保存された筍は、前述のように冷凍前に脱水されており、既に脱水された状態にある筍は脱水されていない筍と比較して前記煮汁中の調味成分の吸い込み時間が短くて済むので、前記煮汁を入れた鍋の中での加熱時間を、通常の筍(従来の冷凍の筍を含む)を調理する場合と比較して、極めて短時間にしても、十分な味付けを行うことができる(本発明者の実験によれば、例えば通常は30分間くらいかかる煮汁中での加熱を、5分間くらいで終えることができる)。
【0025】
また、本実施形態では、前記ステップS4及びS5で、前記切断され脱水された各筍を、後で一回の調理に適した分量ずつに分けて、その一回の調理をしやすい分量毎に、食品包装フィルムで包むか又は樹脂製の袋に入れるようにした後、さらに、これをアルミホイルなどのアルミ製シートで包むかアルミ製シート製の袋に入れるようにしている。したがって、本実施形態によれば、長期間の冷凍保存中に、冷凍庫又は冷凍室内で、前記筍が外部からの紫外線(例えば冷凍庫の扉を開いたときに外部から照射する紫外線)に当たってしまうことが前記アルミ製のシート又は袋により防止される結果、前記筍が前記紫外線により劣化してしまうことが有効に防止されるようになる(もともと筍は多量の油分を含んでいるので紫外線が当たると劣化しやすいという性質を有している)。
【0026】
また、本実施形態によれば、前記切断され脱水された各筍を、後で一回の調理をしやすい分量(例えば4人家族なに4人に適した分量)ずつに分けて、その調理しやすい分量毎に、食品包装フィルムで包むか又は樹脂製の袋に入れて冷凍するようにしている。よって、ユーザーは、前記冷凍された筍を調理するときは、予め調味液を含む煮汁や他の食材を入れた鍋の中に、前記の調理しやすい分量(例えば4人家族なに4人に適した分量)ごとに予め分けられて前記フィルムに包装され又は袋に入れられた筍を、前記フィルム又は袋から取り出して、前記鍋の中に投入して加熱するだけで、前記冷凍された筍を調理することができる。しかも、本発明においては、前記冷凍された筍は、所定の割合だけ脱水された状態であるので、前記鍋の中に投入した後に極めて短時間内に調味成分を内部に吸い込むので、調理・加熱時間が大幅に短縮されるようになる(従来の冷凍された筍を調理するときは、調味液を内部深くまで吸い込ませて筍に十分な味付けをするために約30分以上、前記煮汁中で煮続ける必要があったが、本発明によるときは、本発明者の実験では約5分間煮るだけで十分な味付けをすることができた)。
【実施例1】
【0027】
以下、本発明の実施例を説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
実施例1
北九州市の合馬地区で採取した生の筍を、穂先を切断し縦に2cm深さの切れ目を入れて、これ(皮のついた状態)を、水と糠と唐辛子を入れた鍋の中に入れて30分間茹でた後、そのまま放置して自然冷却させることにより、水煮、アク抜きを行った。その後、(皮を剥いてから)この筍を、食しやすいサイズと形、例えば2〜3cm四方のサイズに適当に切断(乱切り)した。その後、前記切断した複数個の筍を、実験のため300gだけそれぞれ取り分けたものA,Bを2つ用意して、それぞれをネット状布製の袋に入れて、家庭用洗濯乾燥機(シャープ製の洗濯乾燥機ES−TG84V)を使用して、7分30秒間だけ、脱水した。この脱水後の重量を測定したところ、A,Bいずれも、230.5gであった。その後、前記各ネット状布製の袋からそれぞれ前記各筍を出して、一方のAは、食品包装フィルムに包み、さらにその上をアルミホイルで包んで、冷凍庫に入れて冷凍した。他方のBは、天日干しの方法で乾燥させてから、その重量を測定したところ、28gであった。
【0028】
実施例2
前記実施例1において前記生の筍を水煮、アク抜き、及び切断(乱切り)した後の複数個の筍を、実験のため300gだけそれぞれ取り分けたものA,Bを2つ用意して、それぞれをネット状布製の袋に入れて、家庭用洗濯乾燥機(シャープ製の洗濯乾燥機ES−TG84V)を使用して、8分間だけ、脱水した。この脱水後の重量を測定したところ、A,Bいずれも、228gであった。その後、前記各ネット状布製の袋からそれぞれ前記各筍を出して、一方のAは、食品包装フィルムに包み、さらにその上をアルミホイルで包んで、冷凍庫に入れて冷凍した。他方のBは、天日干しの方法で乾燥させてから、その重量を測定したところ、28gであった。
【0029】
実施例3
前記実施例1において前記生の筍を水煮、アク抜き、及び切断(乱切り)した後の複数個の筍を、実験のため300gだけそれぞれ取り分けたものA,Bを2つ用意して、それぞれをネット状布製の袋に入れて、家庭用洗濯乾燥機(シャープ製の洗濯乾燥機ES−TG84V)を使用して、8分30秒間だけ、脱水した。この脱水後の重量を測定したところ、A,Bいずれも、226.5gであった。その後、前記各ネット状布製の袋からそれぞれ前記各筍を出して、一方のAは、食品包装フィルムに包み、さらにその上をアルミホイルで包んで、冷凍庫に入れて冷凍した。他方のBは、天日干しの方法で乾燥させてから、その重量を測定したところ、28gであった。
【0030】
次に、比較例について説明する。
比較例1
前記実施例1において前記生の筍を水煮、アク抜き、及び切断(乱切り)した後の複数個の筍を、実験のため300gだけそれぞれ取り分けたものA,Bを2つ用意して、それぞれをネット状布製の袋に入れて、家庭用洗濯乾燥機(シャープ製の洗濯乾燥機ES−TG84V)を使用して、6分30秒間だけ、脱水した。この脱水後の重量を測定したところ、A,Bいずれも、238gであった。その後、前記各ネット状布製の袋からそれぞれ前記各筍を出して、一方のAは、食品包装フィルムに包み、さらにその上をアルミホイルで包んで、冷凍庫に入れて冷凍した。他方のBは、天日干しの方法で乾燥させてから、その重量を測定したところ、28gであった。
【0031】
比較例2
前記実施例1において前記生の筍を水煮、アク抜き、及び切断(乱切り)した後の複数個の筍を、実験のため300gだけそれぞれ取り分けたものA,Bを2つ用意して、それぞれをネット状布製の袋に入れて、家庭用洗濯乾燥機(シャープ製の洗濯乾燥機ES−TG84V)を使用して、7分間だけ、脱水した。この脱水後の重量を測定したところ、A,Bいずれも、234gであった。その後、前記各ネット状布製の袋からそれぞれ前記各筍を出して、一方のAは、食品包装フィルムに包み、さらにその上をアルミホイルで包んで、冷凍庫に入れて冷凍した。他方のBは、天日干しの方法で乾燥させてから、その重量を測定したところ、28gであった。
【0032】
比較例3
前記実施例1において前記生の筍を水煮、アク抜き、及び切断(乱切り)した後の複数個の筍を、実験のため300gだけそれぞれ取り分けたものA,Bを2つ用意して、それぞれをネット状布製の袋に入れて、家庭用洗濯乾燥機(シャープ製の洗濯乾燥機ES−TG84V)を使用して、9分間だけ、脱水した。この脱水後の重量を測定したところ、A,Bいずれも、224gであった。その後、前記各ネット状布製の袋からそれぞれ前記各筍を出して、一方のAは、食品包装フィルムに包み、さらにその上をアルミホイルで包んで、冷凍庫に入れて冷凍した。他方のBは、天日干しの方法で乾燥させてから、その重量を測定したところ、28gであった。
【0033】
以上の各実施例1−3及び各比較例1−3について、前記脱水時間の長さの順に、脱水による筍の水分の減少率をまとめると、次の表1のようになった。
【表1】

【0034】
次に、本発明者は、砂糖20g、酒20g、醤油20g、及び水100gから成る調味液と水を鍋の中に入れて煮汁を沸騰させた後、前記実施例1で製造した冷凍筍を冷凍庫から取り出して、前記アルミホイルと包装フィルムを取り除いて、前記鍋の中の沸騰した煮汁の中に前記冷凍筍を(解凍しないまま)投入し、5分間だけ煮ることにより、前記実施例1による冷凍筍の調理を行った。また、前記実施例1による冷凍筍だけでなく、前記各実施例2−3及び比較例1−3についても同様の調理を順次行った。そして、前記各実施例1−3及び各比較例1−3による前記冷凍筍の調理後の食感及び風味に関する評価テストを6人のモニターにより行った。
【0035】
このモニターによる評価テストの結果は次の表2のとおりであった。
【表2】

【0036】
また、このモニターによる評価の代表的なものを挙げると次の表3のとおりであった。
【表3】

【0037】
表2及び表3のように、実施例1−3(脱水による水分減少率25.5%、26.5%、及び、27%)による冷凍筍を5分間だけ調理したものについてのモニターの評価は、食感(歯答え)は良く、筍の風味もあり、味付けも甘味と醤油味と塩味とのバランスがとれており美味しい、というものであった。
【0038】
この実施例1−3の評価結果については、まず、食感が良好であるのは、脱水による水分の減少率が25.5%〜27%と適度なものであったため、冷凍時に筍の内部の水分が膨張して筍の細胞を破壊することが少なかったためと推測される。また、筍のアクが気にならなかったのは、脱水による水分の減少率が25.5%〜27%と適度なものであったため、脱水時に筍からアクの成分(図1のステップS1の水煮・アク抜きの工程の後も筍内に残存したアクの成分)がかなり(比較的十分に)放出されたためと推測される。また、筍の風味があったのは、脱水による水分の減少率が25.5%〜27%と適度なものであったため、脱水時に筍から旨み成分が多量に放出されることが無かったためと推測される。さらに、味付けについて甘味(砂糖味)と醤油味と塩味とのバランスがとれており美味しかったのは、脱水による水分の減少率が25.5%〜27%と適度なものであったため、煮汁の中に投入された「水分が適度に少ない筍(解凍後の筍)」の内部に、砂糖味(甘味)と醤油味と塩味の成分が5分以内の短時間内に素早く染み込んだ(前記筍の中に水分が少なかったために調味液が素早く浸透した)ためと推測される。
【0039】
他方、表2及び表3のように、比較例1−2(脱水による水分減少率22.8、及び、24.3%)による冷凍筍を5分間だけ調理したときは、食感(歯答え)はスポンジを噛んでいるようで良くなく(柔らかすぎる)、筍のアクも強く残っており、味付けも薄いという結果であった。
【0040】
この比較例1−2の評価結果については、まず、食感(歯答え)はスポンジを噛んでいるようで良くなかった(柔らかすぎた)のは、脱水による水分の減少率が22.8%〜24.3%と少なかったため、冷凍時に筍の内部の比較的多量の水分が凍結膨張して筍の内部の多くの細胞を破壊してしまったためと推測される。また、筍のアクが残っていたのは、脱水による水分の減少率が22.8%〜24.3%と少なかったため、脱水時に筍の中に残存していたアクの成分(図1のステップS1の水煮・アク抜きの工程の後も筍の内部に残存していたアクの成分)が多量に残ってしまったためと推測される。また、味付けが薄いと感じられたのは、脱水による水分の減少率が22.8%〜24.3%と少なかったため、煮汁の中に投入された筍(解凍後の筍)の内部に、砂糖味(甘味)と醤油味と塩味の成分が、5分以内という短時間内では、十分には染み込まなかったためと推測される。
【0041】
さらに他方、表2及び表3のように、比較例3(脱水による水分減少率27.9%)による冷凍筍を5分間だけ調理したときは、食感(歯答え)はあるがメンマ(シナチク)のような感じがする(やや硬過ぎる)、見た目(外観)が痩せてヘタっている感じがする、味付けが濃い、という結果であった。
【0042】
この比較例3の評価結果については、まず、食感(歯答え)はあるがメンマ(シナチク)のような感じがしてやや硬過ぎる感じがしたのは、脱水による水分の減少率が27.9%と多かったため、冷凍時に筍の内部の水分が膨張して筍の多くの細胞を破壊することは無かったが、逆に筍の繊維質が強く残り過ぎたためと推測される。また、見た目(外観)が痩せてヘタっている感じがしたのは、脱水による水分の減少率が27.9%と多かったため、調理後(解凍後)も内部の水分が少ないままであったため、調理から短時間内に干からびた感じになってしまったためと推測される。また、味付けが濃いと感じられたのは、脱水による水分の減少率が27.9%と多かったため、煮汁の中に投入された筍(解凍後の筍)の内部に、特に醤油味と塩味の成分が、短時間内(5分以内)に過剰に浸透し過ぎたためと推測される。
【0043】
以上、本発明の各実施例について説明したが、本発明は前記の各実施例として述べたものに限定されるものではなく、様々な修正及び変更が可能である。例えば、前記実施例1−3においては、家庭用洗濯乾燥機の脱水機能(遠心分離機能)を使って脱水することにより前記筍の水分を約25.5〜27%程度減らすようにしているが、本発明では、前記筍の水分を約25.5〜27%程度減らすことを、例えば家庭用ではない業務用の遠心分離装置による脱水により行うようにしてもよいし、あるいは、減圧乾燥(又は真空乾燥)や温風乾燥などの他の公知の方法により脱水することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1,2 水煮・アク抜き・切断後の筍

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筍を水煮及びアク抜きする工程と、
前記水煮及びアク抜きした筍を一口で食べ易いサイズに切断する工程と、
前記切断された複数の筍を、前記筍の内部の水分が約25.5〜27%だけ減少するように、脱水する工程と、
前記脱水された複数の筍を、一回の料理に使用するのに適した所定の分量に分けて、それぞれを食品包装フィルムで包むか又は樹脂製袋に入れる工程と、
前記包むか袋に入れた筍を冷凍する工程と、
を含むことを特徴とする筍の冷凍保存方法。
【請求項2】
筍を水煮及びアク抜きする工程と、
前記水煮及びアク抜きした筍を一口で食べ易いサイズに切断する工程と、
前記切断された複数の筍を、前記筍からの水分を外部に放出可能な袋に入れて、前記筍の内部の水分が約25.5〜27%だけ減少するように、遠心分離のための装置を使用して脱水する工程と、
前記脱水された複数の筍を、一回の料理に使用するのに適した所定の分量に分けて、それぞれを食品包装フィルムで包むか又は樹脂製袋に入れる工程と、
前記包むか袋に入れた筍を冷凍する工程と、
を含むことを特徴とする筍の冷凍保存方法。
【請求項3】
筍を水煮及びアク抜きする工程と、
前記水煮及びアク抜きした筍を一口で食べ易いサイズに切断する工程と、
前記切断された複数の筍を、前記筍からの水分を外部に放出可能な袋に入れて、前記筍の内部の水分が約25.5〜27%だけ減少するように、遠心分離のための装置を使用して脱水する工程と、
前記脱水された複数の筍を、一回の料理に使用するのに適した所定の分量に分けて、それぞれを食品包装フィルムで包むか又は樹脂製袋に入れる工程と、
前記包むか袋に入れた複数の筍をそれぞれアルミホイルなどのアルミ製シートで包むか又はアルミ製シート製の袋に入れる工程と、
前記アルミ製シートで包むか又はアルミ製シート製の袋に入れた筍を冷凍する工程と、
を含むことを特徴とする筍の冷凍保存方法。
【請求項4】
筍を水煮及びアク抜きする工程と、
前記水煮及びアク抜きした筍を一口で食べ易いサイズに切断する工程と、
前記切断された複数の筍を、前記筍からの水分を外部に放出可能な袋に入れて、遠心分離のための装置を使用して脱水する工程と、
前記脱水された複数の筍を、一回の料理に使用するのに適した所定の分量に分けて、それぞれを食品包装フィルムで包むか又は樹脂製袋に入れる工程と、
前記包むか袋に入れた複数の筍をそれぞれアルミホイルなどのアルミ製シートで包むか又はアルミ製シート製の袋に入れる工程と、
前記アルミ製シートで包むか又はアルミ製シート製の袋に入れた筍を冷凍する工程と、
を含むことを特徴とする筍の冷凍保存方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれかの方法により加工され長期の冷凍保存が可能な筍の冷凍保存食品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−246504(P2010−246504A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102112(P2009−102112)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【特許番号】特許第4368414号(P4368414)
【特許公報発行日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(509113346)
【Fターム(参考)】