説明

冷凍機用の蒸発器

【課題】蒸発器から発生して圧縮機に供給する冷媒ガス中に、冷媒液滴が混入しないようにする。
【解決手段】蒸発器112の円筒型容器114に配置した伝熱管115に冷水を流すと、冷媒液Rが沸騰し、冷媒ガスGが発生する。冷媒ガスGは、冷媒液滴を含みつつ容器114内を上昇する。多孔板131は、冷媒液Rの液面を覆っており、液面で発生した泡が飛散して生じた冷媒液滴を捕捉して、冷媒液滴が冷媒ガスG中に混入するのを防止する。多孔板132は、冷媒ガスGの流速の不均一をなくし、均一化した冷媒ガスGが、デミスタ119を通過することにより、デミスタ119にて、冷媒ガスG中に含まれている冷媒液滴を効果的に捕捉・除去することができる。冷媒液滴が除去された冷媒ガスGは、冷媒ガス排出口120を通って、圧縮機に送られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷凍機用の蒸発器に関し、蒸発器から圧縮機に供給する冷媒ガス中に冷媒液滴が混入しないように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
例えば大規模なビルでは、ビルに布設した配管を通じて冷水を循環させ、熱交換器によりビル内空気と冷水との間で熱交換を行って冷房をしている。循環する冷水は、例えばターボ冷凍機により冷却される。
【0003】
図8は、ターボ冷凍機の概要を示すものである。このターボ冷凍機は、冷却水と気体状の冷媒との間で熱交換を行わせて冷媒を凝縮・液化する凝縮器10と、凝縮された冷媒を減圧する膨張弁11と、凝縮された冷媒と冷水との間で熱交換を行わせて冷水を冷却する蒸発器12と、蒸発器12で蒸発・気化した冷媒ガスを圧縮した後に凝縮器10に供給する圧縮機13により構成されている。圧縮機13としては、遠心圧縮機、いわゆるターボ圧縮機が採用されている。
このようなターボ冷凍機により冷却された冷水は、例えばビルの空調(冷房)等に利用される。
【0004】
蒸発器12は、図9に示すように、冷媒液が導入される円筒型容器14と、冷水が流通する多数の伝熱管15が束となって構成された伝熱管群15A,15Bと、伝熱管群15Aに連通する冷水入口16と、伝熱管群15Bに連通する冷水出口17と、デミスタ枠18に支持されて伝熱管群15A,15Bの上方に配置されたデミスタ19と、冷媒ガスを円筒型容器14の外に排出して圧縮機に送る冷媒ガス排出口20を、主要部材として構成されている。
【0005】
冷媒液は、伝熱管群15A,15Bが、この冷媒液中に浸漬する程度に、円筒型容器14に供給されて流通する。つまり、冷媒液の液面は、伝熱管群15A、15Bよりも上方に位置している。
【0006】
デミスタ19は、ワイヤメッシュや、ワイヤを綿状にからめ合わせたものであり、冷媒ガスが通過する際に、冷媒ガスに随伴して流通してくる冷媒液滴を捕捉・除去して冷媒液滴の通過を防止するものである。
【0007】
伝熱管群15Aと伝熱管群15Bの間には、上下方向に沿う空間(抜き列)21が形成され、伝熱管群15A,15Bと円筒型容器14の内周面の間には、上下方向に沿う空間(抜き列)22が形成されている。
【0008】
抜き列21の上方(冷媒の液面よりも上方)には、略逆V字型をした吹上防止板23が配置され、抜き列22の上方(冷媒の液面よりも上方)には、平板状の吹上防止板24が配置されている。
【0009】
冷水は、冷水入口16→伝熱管群15A→伝熱管群15B→伝熱管群15C→冷水出口17という経路に沿い流れる。
つまり、伝熱管群15A及び伝熱管群15Bの一端側(冷水入口16とは反対側)には折り返し水室(図示省略)が連通されており、伝熱管群15Aを流通してきた冷水は、折り返し水室にて流通方向が反転されて伝熱管群15Bに流れ込むようになっている。
【0010】
このように、冷水が伝熱管群15A,15Bを流通する際に、冷水と冷媒との間で熱交換が行われて冷水が冷却される。
【0011】
一方、冷媒液は冷水から熱を受け取って沸騰して気化する。そうすると、伝熱管15の周りで発生した蒸気(冷媒ガス)が、抜き列21,22を通って浮上する。この冷媒ガスは冷媒液滴を伴いながら、抜き列21,22の上方に向かって勢い良く吹き上がる。冷媒液滴が混入した冷媒ガスが、吹上防止板23,24に衝突すると、その上昇エネルギーが大きく減少される。このため、冷媒ガスに伴って上昇してきた冷媒液滴の多くは、吹上防止板23,24に衝突して落下する。
【0012】
吹上防止板23,24に衝突した冷媒ガスは更に上昇し、デミスタ19を通過する。このように冷媒ガスがデミスタ19を通過する際に、冷媒ガスに混入していた液滴分が更に除去され、気化した蒸発成分のみとなった冷媒ガスが冷媒ガス排出口20を介して流出される。このようにして流出した冷媒ガスは、圧縮機13に吸入されて圧縮される。
【0013】
上述したように、従来技術では、吹上防止板23,24や、デミスタ19により、冷媒ガス中に混入した冷媒液滴を除去し、冷媒ガスに伴って冷媒液滴が圧縮機13に吸入されることを防止していた。
これは、冷媒液滴が圧縮機13に吸入されると、圧縮機13の性能が低下したり、圧縮機13のインペラが損傷するおそれがあるからである。
【0014】
【特許文献1】特開2004−100985
【特許文献2】WO2002/042696
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
近年では蒸発器のコンパクト化が要請されると共に、従来と同等サイズであっても冷凍能力が高いことが要求されている。つまり、同一の冷凍容量であっても、従来よりもコンパクト化を図ることが要求されている。
このような要請を実現するためには、同一の大きさの蒸発器で比較すると、単位時間当たりに流通する冷媒量や冷水量を、従来の蒸発器に比べて多くする必要がある。
【0016】
このようにして、蒸発器に流通する冷媒や冷水の量が多くなると、冷媒の沸騰が激しくなり、多量の冷媒ガスが発生する。しかも、冷媒液中で発生した多量の冷媒ガスが、激しく吹き上がることになり、冷媒液面から上方に流通する冷媒ガスに混入する液滴が多くなる。
また、冷媒液の液面では、液面が大きく波立ち、この波立った冷媒液面上に、冷媒ガスを内部に含む泡が発生し、この泡が破裂する際に冷媒液滴が飛散する。そうすると、飛散した冷媒液滴が、上方に流通する冷媒ガスに随伴して運ばれてしまう。
【0017】
しかも、多量の冷媒ガスが発生するため、デミスタを流通する冷媒ガスの流速が速くなってしまう。
デミスタは、これを通過する冷媒ガスの流速が、予め決めた最大流速以下であれば、冷媒ガス中に混入している冷媒液滴を確実に捕捉・除去することができるが、冷媒ガスの流速が前記最大流速を越えると、冷媒液滴を捕捉・除去する能力が低下する。
【0018】
更に、円筒型容器から冷媒ガスを排出する冷媒ガス排出口は、円筒型容器の上周面の一箇所に備えられている。このため、冷媒ガス排出口の近くでは、冷媒ガスの流速が速く、冷媒ガスの排出口から離れるにしたがって、冷媒ガスの流速が遅くなる。
したがって、円筒型容器の軸方向において見ると、デミスタを通過する冷媒ガスの流速は、冷媒ガス排出口の近くでは速いが、冷媒ガス排出口から離れるにしたがって遅くなる。つまり、デミスタを通過する冷媒ガスの流速分布に不均一が生じている。
しかも、流通する冷媒ガス量が増加し、しかも、全体的に冷媒ガスの流速が速くなると、デミスタにおける冷媒ガスの流速分布の不均一が更に大きくなる。
【0019】
デミスタにおける冷媒ガスの流速分布の不均一が大きいと、流速が大きい所では冷媒液滴の捕捉・除去能力が低下し、デミスタ全体でみたときに、冷媒液滴を捕捉・除去する能力が低下する。
また、デミスタにおいて流速が速い部分では、一旦捕捉した冷媒液滴が、流速の速い冷媒ガスにより再飛散してしまうおそれがあり、再飛散した冷媒液滴が冷媒ガスと共に流通して圧縮機に供給されてしまうという懸念があった。
【0020】
このように、同一の冷凍容量であっても、従来よりもコンパクト化を図るため、単位時間当たりに流通する冷媒量や冷水量を、従来の蒸発器に比べて多くしようとすると、多くの冷媒液滴が混入した流速の速い冷媒ガスが、不均一な流速分布でデミスタを通過することとなり、従来技術のままでは、デミスタにより冷媒液滴を確実に捕捉・除去することができないという問題が懸念されていた。
【0021】
本発明は、上記従来技術に鑑み、蒸発器に流通させる冷媒や冷水の量を多くして、冷凍能力を上げた蒸発器であっても、蒸発器から圧縮機に供給する冷媒ガスから、確実に冷媒液滴を除去することができる、冷凍機用の蒸発器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決する本発明の構成は、
冷媒液が供給されるとともに、前記冷媒液が蒸発してなる冷媒ガスを排出する冷媒ガス排出口を上部に有する容器と、
前記容器の内部に配置されており、前記冷媒液に浸漬される伝熱管群と、
前記容器の内部に配置されており、前記冷媒ガス排出口に向かって流れていく前記冷媒ガスが通過するデミスタとを備えた冷凍機用の蒸発器であって、
前記容器の内部空間を、前記伝熱管群側と前記デミスタ側とに仕切る状態で、前記伝熱管群と前記デミスタとの間に配置された多孔板を備えたことを特徴とする。
【0023】
また本発明の構成は、
前記多孔板は、前記容器内に供給された前記冷媒液の液面を、空間を空けた状態で上方から覆う状態で配置されていることを特徴とする。
【0024】
また本発明の構成は、
前記多孔板は、前記デミスタの下面に空間を空けて対面した状態で配置されていることを特徴とする。
【0025】
また本発明の構成は、
前記多孔板は、
前記容器内に供給された前記冷媒液の液面を、空間を空けた状態で上方から覆う状態で配置されている第1の多孔板と、
前記デミスタの下面に空間を空けて対面した状態で配置されている第2の多孔板であることを特徴とする。
【0026】
また本発明の構成は、
前記多孔板は、
前記容器内に供給された前記冷媒液の液面を、空間を空けた状態で上方から覆う状態で配置されている第1の多孔板と、
前記デミスタの下面に空間を空けて対面した状態で配置されている第2の多孔板と、
第1の多孔板と第2の多孔板との間に配置された第3の多孔板であることを特徴とする。
【0027】
また本発明の構成は、
前記容器の内部空間を、前記デミスタ側と前記冷媒ガス排出口側とに仕切る状態で、前記デミスタと前記冷媒ガス排出口との間に配置された補完デミスタを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、蒸発器の容器内に、伝熱管側とデミスタ側とを仕切る状態で多孔板を備えたため、蒸発器内に流す冷媒液や冷水の量を多くしても、冷媒ガスに含まれている冷媒液滴が、多孔板に衝突することにより、冷媒液滴を捕捉・除去することができる。
このため、圧縮機に供給する冷媒ガス中に、冷媒液滴が混入することがなくなり、圧縮機の良好な性能を確保できる。
【0029】
多孔板を、冷媒液の液面を覆う状態で配置すれば、冷媒液面で発生した泡が破裂して飛散した冷媒液滴が多孔板に衝突し、飛散した冷媒液滴が冷媒ガスに混入することを防止することができる。
【0030】
また多孔板を、デミスタの下面に対面させて配置すれば、デミスタに流れる冷媒ガスの流速を均一化することができ、デミスタによる冷媒液滴の捕捉・除去の効率が向上すると共に、デミスタから冷媒液滴が再飛散することを防止することができる。
【0031】
更に、デミスタの他に、補完デミスタを備えることにより、冷媒ガスに混入している冷媒液滴の捕捉・除去をより確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0033】
図1は、本発明の実施例1に係る、ターボ冷凍機用の蒸発器112を示す。
図1に示すように、円筒型容器114には、その上側周面(上部)に冷媒ガス排出口120が備えられている。冷媒ガス排出口120は、圧縮機に連通している。
また円筒型容器114には、その底面側から冷媒液Rが供給される。
【0034】
円筒型容器114の内部空間には、冷水が流通する多数の伝熱管115が束となって構成された伝熱管群115A,115Bが配置されている。
伝熱管群115A,115Bは、円筒型容器114内に供給された冷媒液R中に浸漬される。つまり、冷媒液Rの液面は、伝熱管群115A、115Bよりも上方に位置している。
【0035】
伝熱管群115Aは冷水入口116に連通し、伝熱管群115Bは冷水出口117に連通している。
冷水は、冷水入口116→伝熱管群115A→伝熱管群115B→冷水出口117という経路に沿い流れる。
つまり、伝熱管群115A及び伝熱管群115Bの一端側(冷水入口116とは反対側)には折り返し水室(図示省略)が連通されており、伝熱管群115Aを流通してきた冷水は、折り返し水室にて流通方向が反転されて伝熱管群115Bに流れ込むようになっている。
【0036】
この実施例1では、円筒型容器114内に、2つの伝熱管群115A,115Bを配置し、冷水が、伝熱管群115A(第1パス)を流れて、次に伝熱管群115B(第2パス)を流れるようにしているが、円筒型容器114内に3パス以上の伝熱管群を配置して、この3パス以上の伝熱管群に順に冷水を流すようにしてもよい。
【0037】
伝熱管群115Aと伝熱管群115Bの間には、上下方向に沿う空間(抜き列)121が形成され、伝熱管群115A,115Bと円筒型容器114の内周面の間には、上下方向に沿う空間(抜き列)122が形成されている。
【0038】
抜き列121の上方(冷媒液Rの液面よりも上方)には、略逆V字型をした吹上防止板123が配置され、抜き列122の上方(冷媒液Rの液面よりも上方)には、平板状の吹上防止板124が配置されている。
【0039】
円筒型容器114の内部には、デミスタ枠118で支持されたデミスタ119が配置されている。このデミスタ119は、伝熱管群115A,115Bの上方(円筒型容器114内の冷媒液Rの上方)に位置して、円筒型容器114の内部空間を、伝熱管群115A,115B側と冷媒ガス排出口120側とに仕切る状態で配置されている。
【0040】
デミスタ119は、ワイヤメッシュや、ワイヤを綿状にからめ合わせたものであり、冷媒ガスが通過する際に、冷媒ガスに随伴して流通してくる冷媒液滴を捕捉・除去して冷媒液滴の通過を防止するものである。
【0041】
なお、デミスタ119は、水平面に対して約15°の傾斜角度となる状態で取り付けられている。これは、冷媒液滴の捕捉と、捕捉した冷媒液滴の再飛散防止に最適な角度であるからである。
【0042】
ここまでの構成は、従来技術と同様である。
【0043】
更に本実施例では、単位時間当たりに流通する冷媒量や冷水量を多くしても、冷媒液滴が冷媒ガス排出口120を介して圧縮機に供給されることがないようにするため、円筒型容器114内に、第1の多孔板131と、第2の多孔板132と、デミスタ枠141で支持された補完デミスタ140が配置されている。
なお、多孔板131,132は、板状部材に多数の孔を形成したものである。
【0044】
第1の多孔板131は、伝熱管群115A,115Bとデミスタ119との間に位置するように円筒型容器114に備えられている。つまり、第1の多孔板131は、円筒型容器114の内部空間を、伝熱管群115A,115B側とデミスタ119側とに仕切る状態で、円筒型容器114内に配置されている。
しかも、第1の多孔板131は、円筒型容器114に供給された冷媒液Rの液面を、空間を空けた状態で、上方から覆う状態で配置されている。
【0045】
第2の多孔板132は、伝熱管群115A,115Bとデミスタ119との間に位置するように円筒型容器114に備えられている。つまり、第2の多孔板132は、円筒型容器114の内部空間を、伝熱管群115A,115B側とデミスタ119側とに仕切る状態で、円筒型容器114内に配置されている。
しかも、第2の多孔板132は、デミスタ119の下面に空間を空けて対面した状態で配置されている。
【0046】
デミスタ枠141で支持された補完デミスタ140は、デミスタ119と冷媒ガス排出口120との間に位置するように円筒型容器114に備えられている。つまり、補完デミスタ140は、円筒型容器114の内部空間を、デミスタ119側と冷媒ガス排出口120側とに仕切る状態で、円筒型容器114に配置されている。この補完デミスタ140は、デミスタ119と同様に、水平面に対して約15°の傾斜角度となる状態で取り付けられている。
【0047】
補完デミスタ140は、ワイヤメッシュや、ワイヤを綿状にからめ合わせたものであり、冷媒ガスが通過する際に、冷媒ガスに随伴して流通してくる冷媒液滴を捕捉・除去して冷媒液滴の通過を防止するものである。
【0048】
冷水が伝熱管群115A,115Bを流通すると、冷水と冷媒液Rとの間で熱交換が行われて冷水が冷却され、一方、冷媒液Rは冷水から熱を受け取って沸騰して気化する。
そうすると、伝熱管115の周りで発生した蒸気(冷媒ガス)は、抜き列121,122を通って浮上する。この冷媒ガスは冷媒液滴を伴いながら、抜き列121,122の上方に向かって勢い良く吹き上がる。
【0049】
また、冷媒液Rの液面では液面が大きく波立ち、この波立った冷媒液面上に、冷媒ガスを内部に含む泡が発生して、この泡が破裂する際に冷媒液滴が飛散する。飛散した冷媒液滴は、上方に流通する冷媒ガスGに随伴して上方に運ばれようとする。
【0050】
実施例1では、第1の多孔板131が、冷媒液Rの液面を、空間を空けた状態で上方から覆う状態で配置されている。このため、冷媒液Rの液面上で冷媒液Rの泡が破裂して液滴が飛散しても、この飛散した冷媒液滴の多くは第1の多孔板131に衝突して捕捉される。このため、飛散した比較的大粒の冷媒液滴が、上方に流通する冷媒ガスGに随伴して上方に運ばれることを防止することができる。
【0051】
また第2の多孔板132が、デミスタ119の下面に空間を空けて対面した状態で配置されている。このため、冷媒液Rが蒸発して上方に流れてきた冷媒ガスGは、第2の多孔板132の多数の孔を通過してから、デミスタ119を通過する。
このように冷媒ガスGが、第2の多孔板132の多数の孔を通過することにより、円筒型容器114の軸方向において見ると、冷媒ガスGの流速分布が均一化される。
【0052】
このように流速分布が均一化されるため、デミスタ119を流通する冷媒ガスGの流速分布も、円筒型容器114の軸方向において見て、均一化される。
このようにデミスタ119を流通する冷媒ガスGの流速分布が均一化するため、デミスタ119における、冷媒液滴の捕捉・除去能力が向上する。
【0053】
また、デミスタ119を流通する冷媒ガスGの流速分布が均一化するため、換言すると、デミスタ119の一部においてピーク的に冷媒ガスGの流速が速くなることがないため、デミスタ119により捕捉した冷媒液滴が、ピーク的に速い流速により吹き飛ばされて再飛散するという事態の発生を防止することができる。
【0054】
更に実施例1では、補完デミスタ140が、デミスタ119側と冷媒ガス排出口120側とを仕切る状態で、円筒型容器114に配置されている。つまり、冷媒ガスGの流れ方向に関して、デミスタ119の下流側に補完デミスタ140を配置している。
【0055】
このように、デミスタ119の下流側に補完デミスタ140を配置しているため、冷媒ガスGに含まれている冷媒液滴は、デミスタ119を通過することにより捕捉・除去され、更に、補完デミスタ140を通過することにより捕捉・除去される。つまり、デミスタ119,140により2段階で冷媒液滴の捕捉・除去をしている。
また仮に、デミスタ119により捕捉した冷媒液滴が再飛散しても、再飛散した冷媒液滴は、補完デミスタ140により捕捉・除去することができる。
この結果、冷媒ガスGに含まれている冷媒液滴を、確実に捕捉・除去することができ、冷媒液滴が圧縮機に流れ込むことを防止することができる。
【0056】
なお、補完デミスタ140を配置することなくデミスタ119の厚さを厚くしたとしても、冷媒液滴の再飛散に対して対応することができない。したがって、実施例1のように、デミスタ119と補完デミスタ140との間に空間を空けて、デミスタ119,140により2段階で冷媒液滴の捕捉・除去をした方が、冷媒液滴の再飛散に対応して適切に冷媒液滴の捕捉ができる。
【0057】
多孔板131,132及び補完デミスタ140は、円筒型容器114内の従来ではデッドスペースであった部分に配置しているため、蒸発器112を大型化することはない。
【実施例2】
【0058】
図2は本発明の実施例2に係る、ターボ冷凍機用の蒸発器112Aを示す。
実施例2の蒸発器112Aは、実施例1の蒸発器112の構成に、更に第3の多孔板133を備えたものである。
【0059】
第3の多孔板133は、第1の多孔板131と第2の多孔板132の間に位置するように、円筒型容器114内に配置されている。この第3の多孔板133も、円筒型容器114の内部空間を、伝熱管群115A,115B側とデミスタ119側とに仕切る状態で、円筒型容器114内に配置されている。
【0060】
しかも、第1パスである伝熱管群115Aの全てを、上方から覆う状態で第3の多孔板133が配置されている。
【0061】
第1パスである伝熱管群115Aを流れる冷水の温度は、第2パスである伝熱管群115Bを流れる冷水の温度よりも高い。このため、第1パスである伝熱管群115Aを流れる冷水の温度と冷媒Rの液温の温度差は、第2パスである伝熱管115Bを流れる冷水の温度と冷媒Rの液温の温度差よりも大きいことから、第2パスである伝熱管群115Bよりも第1パスである伝熱管群115Aにおいて、冷媒ガスGが激しく発生し、冷媒ガスGに随伴して上昇する冷媒液滴も多い。
【0062】
第3の多孔板133は、特に、第1パスである伝熱管群115Aにおいて激しく発生した冷媒ガスGが衝突することにより、この冷媒ガスGに含まれている冷媒液滴を捕捉することができる。
【実施例3】
【0063】
図3は、本発明の実施例3に係る、ターボ冷凍機用の蒸発器112Bを示す。
実施例3の蒸発器112Bは、図2に示す実施例2の蒸発器112の構成から補完デミスタ140及びデミスタ枠141を除くと共に、デミスタ119の厚さを厚くしたものである。
他の部分の構成は、実施例2と同様である。
【実施例4】
【0064】
図4は、本発明の実施例4に係る、ターボ冷凍機用の蒸発器112Cを示す。
実施例4の蒸発器112Cは、図3に示す実施例3の蒸発器112Bの構成から第3の多孔板133を除いたものである。
他の部分の構成は、実施例3と同様である。
【実施例5】
【0065】
図5は、本発明の実施例5に係る、ターボ冷凍機用の蒸発器112Dを示す。
実施例5の蒸発器112Dは、図4に示す実施例4の蒸発器112Cの構成から第2の多孔板131を除いたものである。
他の部分の構成は、実施例4と同様である。
【実施例6】
【0066】
図6は、本発明の実施例6に係る、ターボ冷凍機用の蒸発器112Eを示す。
実施例6の蒸発器112Eは、図5に示す実施例5の蒸発器112Dの構成に、補完デミスタ140及びデミスタ枠141を備えたものである。
【実施例7】
【0067】
図7は、本発明の実施例7に係る、ターボ冷凍機用の蒸発器112Eを示す。
実施例7の蒸発器112Eは、図6に示す実施例6の蒸発器112Eの構成から第2の多孔板132を除いたものである。
他の部分の構成は、実施例6と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施例1に係る蒸発器を示す構成図。
【図2】本発明の実施例2に係る蒸発器を示す構成図。
【図3】本発明の実施例3に係る蒸発器を示す構成図。
【図4】本発明の実施例4に係る蒸発器を示す構成図。
【図5】本発明の実施例5に係る蒸発器を示す構成図。
【図6】本発明の実施例6に係る蒸発器を示す構成図。
【図7】本発明の実施例7に係る蒸発器を示す構成図。
【図8】ターボ冷凍機の概要を示す構成図。
【図9】従来の蒸発器を示す構成図。
【符号の説明】
【0069】
112,112A,112B,112C,112D,112E,112F 蒸発器
114 円筒型容器
115 伝熱管
115A,115B 伝熱管群
116 冷水入口
117 冷水出口
118 デミスタ枠
119 デミスタ
120 冷媒ガス排出口
121,122 抜き列
123,124 吹上防止板
131,132,133 多孔板
140 補完デミスタ
141 デミスタ枠
R 冷媒液
G 冷媒ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒液が供給されるとともに、前記冷媒液が蒸発してなる冷媒ガスを排出する冷媒ガス排出口を上部に有する容器と、
前記容器の内部に配置されており、前記冷媒液に浸漬される伝熱管群と、
前記容器の内部に配置されており、前記冷媒ガス排出口に向かって流れていく前記冷媒ガスが通過するデミスタとを備えた冷凍機用の蒸発器であって、
前記容器の内部空間を、前記伝熱管群側と前記デミスタ側とに仕切る状態で、前記伝熱管群と前記デミスタとの間に配置された多孔板を備えたことを特徴とする冷凍機用の蒸発器。
【請求項2】
請求項1において、
前記多孔板は、前記容器内に供給された前記冷媒液の液面を、空間を空けた状態で上方から覆う状態で配置されていることを特徴とする冷凍機用の蒸発器。
【請求項3】
請求項1において、
前記多孔板は、前記デミスタの下面に空間を空けて対面した状態で配置されていることを特徴とする冷凍機用の蒸発器。
【請求項4】
請求項1において、
前記多孔板は、
前記容器内に供給された前記冷媒液の液面を、空間を空けた状態で上方から覆う状態で配置されている第1の多孔板と、
前記デミスタの下面に空間を空けて対面した状態で配置されている第2の多孔板であることを特徴とする冷凍機用の蒸発器。
【請求項5】
請求項1において、
前記多孔板は、
前記容器内に供給された前記冷媒液の液面を、空間を空けた状態で上方から覆う状態で配置されている第1の多孔板と、
前記デミスタの下面に空間を空けて対面した状態で配置されている第2の多孔板と、
第1の多孔板と第2の多孔板との間に配置された第3の多孔板であることを特徴とする冷凍機用の蒸発器。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項において、
前記容器の内部空間を、前記デミスタ側と前記冷媒ガス排出口側とに仕切る状態で、前記デミスタと前記冷媒ガス排出口との間に配置された補完デミスタを備えたことを特徴とする冷凍機用の蒸発器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−138891(P2008−138891A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322780(P2006−322780)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】