説明

冷凍機用作動流体組成物

【課題】二酸化炭素冷媒の存在下において、冷凍機油の潤滑性と冷媒相溶性とを両立することが可能な冷凍機用作動流体組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の冷凍機用作動流体組成物は、40℃における動粘度が100〜1000mm/sであり且つ100℃における動粘度が8〜50mm/sであるエステル系潤滑油基油と、二酸化炭素冷媒と、ジメチルエーテル冷媒と、を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷凍機用作動流体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のオゾン層破壊の問題から、従来冷凍機器の冷媒として使用されてきたCFC(クロロフルオロカーボン)およびHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)が規制の対象となり、これらに代わってHFC(ハイドロフルオロカーボン)が冷媒として使用されつつある。しかしながら、このようなHFC冷媒においても、地球温暖化能が高いなどの問題があり、これらのフロン系冷媒に代わる代替冷媒として自然系冷媒の使用が検討されている。中でも二酸化炭素(CO)は環境に対して無害であり安全性の点で優れている上、オイルや機械材料との適合性や入手性のなどの利点を有しており、従来から冷凍機などの冷媒として使用されてきたものである。また近年、開放型圧縮機あるいは密閉型電動圧縮機を用いたカーエアコン、ル−ムエアコン、給湯用ヒートポンプ等の冷媒としてその適用が検討されている。
【0003】
このような背景の下、二酸化炭素冷媒用冷凍機油として、炭化水素系潤滑油基油を用いたもの(特許文献1)、ポリアルキレングリコールやポリビニルエーテル等のエーテル系基油を用いたもの(特許文献2、特許文献3)、エステル系基油を用いたもの(特許文献4〜7)などの使用が提案されている。
【特許文献1】特開平10−46168号公報
【特許文献2】特開平10−46169号公報
【特許文献3】特開2002−155290号公報
【特許文献4】特開2000−104084号公報
【特許文献5】特開2000−169868号公報
【特許文献6】特開2000−169869号公報
【特許文献7】特開2002−220595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の二酸化炭素冷媒用冷凍機油であっても、以下の点で未だ改善の余地がある。
【0005】
すなわち、従来、冷凍空調機器の分野では、上述のように、冷凍機油の性能評価の一つとして冷媒相溶性が重視されている。しかし、冷凍機油の冷媒相溶性が良好であると、冷媒の溶解により冷凍機油の粘度が低下して潤滑性が不十分となりやすい。より具体的には、冷凍システム内で冷媒が冷凍機油に溶解することにより冷凍機油と冷媒との混合物である流体組成物の粘度(冷媒溶解粘度)が低下すると、冷媒圧縮機の圧縮部での吹き抜け、潤滑不良などの問題が懸念される。
【0006】
なお、潤滑性を改善する方法の一つとして高粘度化があるが、冷凍機油の高粘度化は省エネルギー性や取り扱い性の観点から望ましくないと考えられている。特に、冷凍空調機器において冷凍機油の側から省エネルギー対策に貢献するためには、冷凍機油を低粘度化してエネルギー効率の向上並びに冷媒圧縮機内での撹拌抵抗の低減を図る必要があり、冷凍機油の高粘度化はこのような省エネルギー対策のコンセプトに逆行することになる。
【0007】
また、冷凍機油は、冷媒存在下で使用されるという点で、空気雰囲気等で使用される他の潤滑油とはその使用環境が大きく異なる。そして、このことが他の潤滑油分野における潤滑性の改善技術をそのまま冷凍機油に適用できない一因となっている。
【0008】
また、冷凍機油の高粘度化により冷媒溶解粘度を維持するとその分冷媒相溶性は損なわれることになるが、この場合は別の理由により潤滑不良が懸念される。つまり、冷凍空調機器の冷媒循環システムにおいては、その機構上、冷媒圧縮機内の冷凍機油の一部が冷媒と共に循環流路に吐出される。ここで、冷媒圧縮機内の冷凍機油の量が不足することによる潤滑不良等を防ぐためには、吐出された冷凍機油が循環流路を通って冷媒圧縮機に戻ること(オイル戻り性)が重要であり、オイル戻り性の観点からは冷媒相溶性の低下は望ましいとはいえない。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素冷媒の存在下において、冷凍機油の潤滑性と冷媒相溶性とを両立することが可能な冷凍機用作動流体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の動粘度を有するエステル系潤滑油基油と二酸化炭素冷媒とジメチルエーテル冷媒とを組み合わせることによって上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、40℃における動粘度が100〜1000mm/sであり且つ100℃における動粘度が8〜50mm/sであるエステル系潤滑油基油と、二酸化炭素冷媒と、ジメチルエーテル冷媒と、を含有することを特徴とする冷凍機用作動流体組成物を提供する。
【0012】
本発明の冷凍機用作動流体組成物においては、エステル系潤滑油基油を、従来の二酸化炭素冷媒用冷凍機油に用いられているエステル等の合成系基油と比べて、敢えて高粘度化している。このようなエステル系潤滑油基油と二酸化炭素冷媒との組み合わせは、冷凍機油の冷媒相溶性と冷媒溶解粘度の維持との両立の観点から好ましくないというのが従来の一般的認識であり、これらの組み合わせについては必ずしも十分な検討がなされていなかった。しかし、驚くべきことに、上記特定のエステル系潤滑油基油及び二酸化炭素系冷媒にジメチルエーテル系冷媒を更に組み合わせることによって、二酸化炭素冷媒の存在下において、冷凍機油の潤滑性と冷媒相溶性とを両立することが可能となることを本発明者らは見出した。このように、本発明の冷凍機用作動流体組成物を完成するに至った根底には、所定の冷媒と共に使用される冷凍機油の特性を冷凍機油の改良のみによって達成しようとしてきた従来の技術的思想からみて極めて異質の技術的思想があり、また、本発明による上記の効果も非常に予想外の効果であるといえる。
【0013】
本発明の冷凍機用作動流体組成物においては、二酸化炭素冷媒とジメチルエーテル冷媒との混合比率が、質量比で、95:5〜60:40であることが好ましい。二酸化炭素冷媒とジメチルエーテル冷媒との混合比率を上記範囲内とすることによって、潤滑性と冷媒相溶性とをより高水準で両立することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、二酸化炭素冷媒の存在下において、冷凍機油の潤滑性と冷媒相溶性とを両立することが可能な冷凍機用作動流体組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明の冷凍機用作動流体組成物に含まれるエステル系潤滑油基油としては、例えば、芳香族エステル、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、コンプレックスエステル、炭酸エステルおよびこれらの混合物等であって、40℃における動粘度が100〜1000mm/sであり且つ100℃における動粘度が8〜50mm/sのものが例示される。
【0017】
芳香族エステルとしては、1〜6価、好ましくは1〜4価、より好ましくは1〜3価の芳香族カルボン酸と炭素数1〜18、好ましくは1〜12の脂肪族アルコールとのエステルなどが用いられる。1〜6価の芳香族カルボン酸としては、具体的には例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの混合物などが挙げられる。また、炭素数1〜18の脂肪族アルコールとしては、直鎖状のものでも分枝状のものであってもよく、具体的には例えば、メタノール、エタノール、直鎖状または分枝状のプロパノール、直鎖状または分枝状のブタノール、直鎖状または分枝状のペンタノール、直鎖状または分枝状のヘキサノール、直鎖状または分枝状のヘプタノール、直鎖状または分枝状のオクタノール、直鎖状または分枝状のノナノール、直鎖状または分枝状のデカノール、直鎖状または分枝状のウンデカノール、直鎖状または分枝状のドデカノール、直鎖状または分枝状のトリデカノール、直鎖状または分枝状のテトラデカノール、直鎖状または分枝状のペンタデカノール、直鎖状または分枝状のヘキサデカノール、直鎖状または分枝状のヘプタデカノール、直鎖状または分枝状のオクタデカノールおよびこれらの混合物などが挙げられる。芳香族エステルとしては、具体的には例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジドデシル、フタル酸ジトリデシル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリノニル、トリメリット酸トリデシル、トリメリット酸トリドデシル、トリメリット酸トリトリデシルなどが挙げられる。なお、当然のことながら、2価以上の芳香族カルボン酸を用いた場合、1種の脂肪族アルコールからなる単純エステルであってもよいし、2種以上の脂肪族アルコールからなる複合エステルであってもよい。
【0018】
二塩基酸エステルとしては、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの炭素数5〜10の二塩基酸と、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノールなどの直鎖または分枝アルキル基を有する炭素数1〜15の一価アルコールとのエステルおよびこれらの混合物が好ましく用いられ、より具体的には例えば、ジトリデシルグルタレート、ジ2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ2−エチルヘキシルセバケート、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0019】
また、ポリオールエステルとしては、ジオールあるいは水酸基を3〜20個有するポリオールと、炭素数6〜20の脂肪酸とのエステルが好ましく用いられる。ここで、ジオールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2ーメチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどが挙げられる。ポリオールとしては、具体的には例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜20量体)、1,3,5ーペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなどの多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトースなどの糖類、ならびにこれらの部分エーテル化物、およびメチルグルコシド(配糖体)などが挙げられる。これらの中でもポリオールとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールが好ましい。
【0020】
脂肪酸としては、特に炭素数は制限されないが、通常炭素数1〜24のものが用いられる。炭素数1〜24の脂肪酸の中でも、潤滑性の点から炭素数3以上のものが好ましく、炭素数4以上のものがより好ましく、炭素数5以上のものがさらにより好ましく、炭素数10以上のものが最も好ましい。また、冷媒との相溶性の点から、炭素数18以下のものが好ましく、炭素数12以下のものがより好ましく、炭素数9以下のものがさらにより好ましい。
【0021】
また、直鎖状脂肪酸、分枝状脂肪酸の何れであっても良く、潤滑性の点からは直鎖状脂肪酸が好ましく、加水分解安定性の点からは分枝状脂肪酸が好ましい。更に、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の何れであっても良い。
【0022】
脂肪酸としては、具体的には例えば、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、オレイン酸などの直鎖または分枝のもの、あるいはα炭素原子が4級であるいわゆるネオ酸などが挙げられる。さらに具体的には、吉草酸(n−ペンタン酸)、カプロン酸(n−ヘキサン酸)、エナント酸(n−ヘプタン酸)、カプリル酸(n−オクタン酸)、ペラルゴン酸(n−ノナン酸)、カプリン酸(n−デカン酸)、オレイン酸(cis−9−オクタデセン酸)、イソペンタン酸(3−メチルブタン酸)、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸などが好ましい。
【0023】
なお、ポリオールエステルとしては、ポリオールの全ての水酸基がエステル化されずに残った部分エステルであっても良く、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであっても良く、また部分エステルと完全エステルの混合物であっても良いが、完全エステルであることが好ましい。
【0024】
また、コンプレックスエステルとは、脂肪酸および二塩基酸と、一価アルコールおよびポリオールとのエステルのことであり、脂肪酸、二塩基酸、一価アルコール、ポリオールとしては、二塩基酸エステルおよびポリオールエステルに関する説明において例示したものと同様のものが使用できる。
【0025】
また、炭酸エステルとは、分子内に下記式(A)で表される炭酸エステル構造を有する化合物である。なお、炭酸エステル構造は一分子内に1つでも良いし複数有していても良い。
【化1】

【0026】
炭酸エステルを構成するアルコールとしては、前述の脂肪族アルコール、ポリオールなどが使用でき、またポリグリコールやポリオールにポリグリコールを付加させたものも使用できる。また、炭酸と脂肪酸および/または二塩基酸を用いたものを使用しても良い。
【0027】
また、当然のことながら本発明でいうエステルとしては、単一の構造のエステル1種からなるものであっても良く、構造の異なる2種以上のエステルの混合物であっても良い。
【0028】
これらのエステル系潤滑油基油の中でも、冷媒との相溶性に優れることから、ポリオールエステル、炭酸エステルが好ましい。
【0029】
また、ポリオールエステルの中でも、より加水分解安定性に優れることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールのエステルがより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンおよびペンタエリスリトールのエステルがさらにより好ましく、冷媒との相溶性および加水分解安定性に特に優れることからペンタエリスリトールのエステルが最も好ましい。
【0030】
好ましいポリオールエステルの具体例としては、ネオペンチルグリコールと吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸の中から選ばれる1種または2種以上の脂肪酸とのジエステル、トリメチロールエタンと吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸の中から選ばれる1種または2種以上の脂肪酸とのトリエステル、トリメチロールプロパンと吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸の中から選ばれる1種または2種以上の脂肪酸とのトリエステル、トリメチロールブタンと吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸の中から選ばれる1種または2種以上の脂肪酸とのトリエステル、ペンタエリスリトールと吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸の中から選ばれる1種または2種以上の脂肪酸とのテトラエステルが挙げられる。
【0031】
なお、2種以上の脂肪酸とのエステルとは、1種の脂肪酸とポリオールのエステルを2種以上混合したものでも良く、2種以上の混合脂肪酸とポリオールのエステルであっても良い。なお、2種以上の脂肪酸とのエステル、特に混合脂肪酸とポリオールとのエステルは、低温特性や冷媒との相溶性に優れる。
【0032】
また、炭酸エステルの中でも、下記一般式(1)で表される構造のものが好ましい。
【化2】


[上記式(1)中、Xは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基または下記一般式(2):
−(OA)e− (2)
(上記式(2)中、Yは水素原子、アルキル基またはシクロアルキル基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、eは1〜50の整数を示す)で表される基を示し、AおよびAは同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜4のアルキレン基を示し、Yは水素原子、アルキル基またはシクロアルキル基を示し、Bは水酸基3〜20個を有する化合物の残基を示し、aは1〜20、bは0〜19でかつa+b=3〜20となる整数を示し、cは0〜50の整数、dは1〜50の整数をそれぞれ示す]
【0033】
上記一般式(1)において、Xは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基または上記一般式(2)で表される基を示す。ここでいう、アルキル基の炭素数は特に制限されないが、通常1〜24、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜12である。また、直鎖のものであっても分枝のものであっても良い。
【0034】
炭素数1〜24のアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖または分枝ペンチル基、直鎖または分枝ヘキシル基、直鎖または分枝ヘプチル基、直鎖または分枝オクチル基、直鎖または分枝ノニル基、直鎖または分枝デシル基、直鎖または分枝ウンデシル基、直鎖または分枝ドデシル基、直鎖または分枝トリデシル基、直鎖または分枝テトラデシル基、直鎖または分枝ペンタデシル基、直鎖または分枝ヘキサデシル基、直鎖または分枝ヘプタデシル基、直鎖または分枝オクタデシル基、直鎖または分枝ノナデシル基、直鎖または分枝イコシル基、直鎖または分枝ヘンイコシル基、直鎖または分枝ドコシル基、直鎖または分枝トリコシル基、直鎖または分枝テトラコシル基などが挙げられる。
【0035】
また、シクロアルキル基としては、具体的には例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などが挙げられる。
【0036】
上記一般式(2)において、Aで表される炭素数2〜4のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基などが例示される。
【0037】
また、上記一般式(2)におけるYは、水素原子、アルキル基またはシクロアルキルキル基である。ここでいうアルキル基の炭素数は特に制限されないが、通常1〜24、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜12である。また、直鎖のものであっても分枝のものであっても良い。炭素数1〜24のアルキル基としては、具体的には例えば、Xに関する説明において列挙した基が挙げられる。
【0038】
また、シクロアルキル基としては、具体的には例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などが挙げられる。
【0039】
これらの中でも、Yとしては、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、n−ヘプチル基、iso−ヘプチル基、n−オクチル基、iso−オクチル基、n−ノニル基、iso−ノニル基、n−デシル基、iso−デシル基、n−ウンデシル基、iso−ウンデシル基、n−ドデシル基またはiso−ドデシル基の何れかであることがより好ましい。また、eは1〜50の整数を表す。
【0040】
また、Xとしては、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基または一般式(2)で表される基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、n−ヘプチル基、iso−ヘプチル基、n−オクチル基、iso−オクチル基、n−ノニル基、iso−ノニル基、n−デシル基、iso−デシル基、n−ウンデシル基、iso−ウンデシル基、n−ドデシル基、iso−ドデシル基または一般式(2)で表される基の何れかであることがより好ましい。
【0041】
Bを残基とする3〜20個の水酸基を有する化合物としては、具体的には、前述のポリオールが挙げられる。
【0042】
また、AおよびAは同一でも異なっていても良く、それぞれ炭素数2〜4のアルキレン基を表す。具体的には例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基などが例示される。
【0043】
また、Yは、水素原子、アルキル基またはシクロアルキルキル基である。ここでいうアルキル基の炭素数は特に制限されないが、通常1〜24、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜12である。また、直鎖のものであっても分枝のものであっても良い。炭素数1〜24のアルキル基としては、具体的には例えば、Xに関する説明において列挙した基が挙げられる。
【0044】
また、シクロアルキル基としては、具体的には例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などが挙げられる。
【0045】
これらの中でも、Yとしては、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、n−ヘプチル基、iso−ヘプチル基、n−オクチル基、iso−オクチル基、n−ノニル基、iso−ノニル基、n−デシル基、iso−デシル基、n−ウンデシル基、iso−ウンデシル基、n−ドデシル基またはiso−ドデシル基の何れかであることがより好ましい。
【0046】
なお、上記一般式(1)および(2)においてc、dおよびeはポリオキシアルキレン部分の重合度を表すが、このポリオキシアルキレン部分としては、分子中同じでも異なっていても良く、複数の異なるポリオキシアルキレン部分を有する場合、オキシアルキレン基の重合形式に特に制限はなく、ランダム共重合していてもブロック共重合していてもよい。
【0047】
本発明に用いられる炭酸エステルの製造法は任意であるが、例えば、ポリオール化合物にアルキレンオキサイドを付加せしめてポリアルキレングリコールポリオールエーテルを製造し、これとクロロフォーメートとを水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド、あるいは金属ナトリウムなどのアルカリの存在下、0〜30℃で反応せしめることにより得られる。あるいはポリアルキレングリコールポリオールエーテルに、炭酸ジエステル、ホスゲンなどの炭酸の供給源および水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド、あるいは金属ナトリウムなどのアルカリの存在下、80〜150℃で反応せしめることにより得られる。この後、必要に応じて遊離の水酸基をエーテル化せしめる。
【0048】
上記のような原料より得られた生成物を精製して副生成物や未反応物を除去してもよいが、少量の副生成物や未反応物は、本発明の潤滑油の優れた性能を損なわない限り、存在していても支障はない。
【0049】
本発明において、炭酸エステルは、混合物の形で用いても、単品で用いてもよい。本発明に係る炭酸エステルの分子量は特に限定されるものではないが、圧縮機の密閉性をより向上させる点から、数平均分子量が200〜4000のものが好ましく使用され、数平均分子量が300〜3000のものがより好ましく使用される。
【0050】
本発明においては、上記のエステル系潤滑油基油のうちの1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
本発明の冷凍機用作動流体組成物に含まれるエステル系潤滑油基油の動粘度は、潤滑性の性能に優れる点から、40℃において100mm/s以上であることが必要であり、120mm/s以上であることが好ましく、140mm/s以上であることが最も好ましい。また、同様の理由により、100℃における動粘度は、8mm/s以上であることが必要であり、9mm/s以上であることが好ましく、10mm/s以上であることがより好ましい。
【0052】
また、冷媒相溶性の性能に優れる点から、エステル系潤滑油基油の40℃における動粘度は、1000mm/s以下であることが必要であり、500mm/s以下であることが好ましく、300mm/s以下であることがより好ましい。また、同様の理由により、100℃における動粘度は、50mm/s以下であることが必要であり、40mm/s以下であることが好ましく、30mm/s以下であることがより好ましい。
【0053】
40℃及び100℃における動粘度がそれぞれ前記下限値未満であると潤滑性が不十分となり、また、前記上限値を超えると冷媒との相溶性が悪くなり好ましくない。
【0054】
本発明の冷凍機用作動流体組成物におけるエステル系潤滑油基油の含有量は特に制限されないが、潤滑性、冷媒相溶性、熱・化学安定性、電気絶縁性等の各種性能により優れる点から、組成物全量基準で50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがより好ましく、70質量%以上含有することがさらにより好ましく、80質量%以上含有することが最も好ましい。
【0055】
本発明の冷凍機用作動流体組成物は、上記したエステル系潤滑油基油を含有するものであるが、これに加えて鉱油、オレフィン重合体、ナフタレン化合物、アルキルベンゼン等の炭化水素系油、エーテル、ケトン等の含酸素合成油を更に含有しても良い。
【0056】
また、本発明の冷凍機用作動流体組成物は、添加剤未添加の状態でも好適に用いることができるが、必要に応じて各種添加剤を配合した形で使用することもできる。
【0057】
本発明の冷凍機用作動流体組成物の耐摩耗性、耐荷重性をさらに改良するために、リン酸エステル、チオリン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステルおよび亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン化合物を配合することができる。これらのリン化合物は、リン酸または亜リン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体である。
【0058】
リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。
【0059】
チオリン酸エステルとしては、トリブチルホスフォロチオネート、トリペンチルホスフォロチオネート、トリへキシルホスフォロチオネート、トリヘプチルホスフォロチオネート、トリオクチルホスフォロチオネート、トリノニルホスフォロチオネート、トリデシルホスフォロチオネート、トリウンデシルホスフォロチオネート、トリドデシルホスフォロチオネート、トリトリデシルホスフォロチオネート、トリテトラデシルホスフォロチオネート、トリペンタデシルホスフォロチオネート、トリへキサデシルホスフォロチオネート、トリへプタデシルホスフォロチオネート、トリオクタデシルホスフォロチオネート、トリオレイルホスフォロチオネート、トリフェニルホスフォロチオネート、トリクレジルホスフォロチオネート、トリキシレニルホスフォロチオネート、クレジルジフェニルホスフォロチオネート、キシレニルジフェニルホスフォロチオネート、トリス(n−プロピルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(−n−ブチルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(イソブチルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(s−ブチルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフォロチオネート等、が挙げられる。より具体的には、トリフェニルホスフォロチオネート、トリクレジルホスフォロチオネート、トリキシレニルホスフォロチオネート、クレジルジフェニルホスフォロチオネートなどが挙げられる。
【0060】
酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアト、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
【0061】
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミンなどのアミンとの塩が挙げられる。
【0062】
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェートなどが挙げられる。
【0063】
亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイトなどが挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
【0064】
これらのリン化合物を本発明の冷凍機用作動流体組成物に配合する場合、その配合量は特に制限されないが、潤滑油基油と添加剤の合計量を基準として、リン化合物の含有量は、好ましくは0.01〜5.0質量%、より好ましくは0.02〜3.0質量%である。
【0065】
また、本発明の冷凍機用作動流体組成物において、その安定性をさらに改良するために、
下記(1)〜(8)からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を配合することができる。
(1)フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物
(2)アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物
(3)グリシジルエステル型エポキシ化合物
(4)アリルオキシラン化合物
(5)アルキルオキシラン化合物
(6)脂環式エポキシ化合物
(7)エポキシ化脂肪酸モノエステル
(8)エポキシ化植物油。
【0066】
(1)フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、フェニルグリシジルエーテル型エポキエーテルまたはアルキルフェニルグリシジルエーテルが例示できる。ここでいうアルキルフェニルグリシジルエーテルとは、炭素数1〜13のアルキル基を1〜3個有するものが挙げられ、中でも炭素数4〜10のアルキル基を1個有するもの、例えばn−ブチルフェニルグリシジルエーテル、i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテルなどが好ましいものとして例示できる。
【0067】
(2)アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどが例示できる。
【0068】
(3)グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエステル、アルケニルグリシジルエステルなどが挙げられ、好ましいものとしては、グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルベンゾエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが例示できる。
【0069】
(4)アリルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシスチレン、アルキル−1,2−エポキシスチレンなどが例示できる。
【0070】
(5)アルキルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,1,21,2−エポキシイコサンなどが例示できる。
【0071】
(6)脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−2,3−エポキシノルボルナン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサン−5,3’−[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4−(1’−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサンなどが例示できる。
【0072】
(7)エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、具体的には、エポキシ化された炭素数12〜20の脂肪酸と炭素数1〜8のアルコールまたはフェノール、にエポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
【0073】
(8)エポキシ化植物油としては、具体的には、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物などが例示できる。
【0074】
これらのエポキシ化合物の中でも好ましいものは、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物およびエポキシ化脂肪酸モノエステルである。中でもフェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物およびグリシジルエステル型エポキシ化合物がより好ましく、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステルもしくはこれらの混合物が特に好ましい。
【0075】
これらのエポキシ化合物を本発明の冷凍機用作動流体組成物に配合する場合、その配合量は特に制限されないが、エポキシ化合物の含有量は、潤滑油基油と添加剤の合計量を基準として、好ましくは0.1〜5.0質量%、より好ましくは0.2〜2.0質量%である。
【0076】
上記リン化合物およびエポキシ化合物は、それぞれ1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
さらに、本発明の冷凍機用作動流体組成物に対して、その性能をさらに高めるため、必要に応じて従来より公知の冷凍機油添加剤、例えばジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ビスフェノールA等のフェノール系の酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛などの摩耗防止剤、塩素化パラフィン、硫黄化合物等の極圧剤、脂肪酸等の油性剤、シリコーン系等の消泡剤、ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤等の添加剤を単独で、または数種類組み合わせて配合することも可能である。これらの添加剤の合計配合量は特に制限されないが、潤滑油基油と添加剤の合計量基準を基準として、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0078】
また、本発明の冷凍機用作動流体組成物を調製する際には、好ましくは、40℃における動粘度が100〜1000mm/sであり且つ100℃における動粘度が5〜50mm/sであるエステル系潤滑油基油、並びに必要に応じて配合されるその他の潤滑油基油及び添加剤を含有する冷凍機油(以下、「本発明にかかる冷凍機油」という。)を調製し、次いで、本発明にかかる冷凍機油と二酸化炭素冷媒及びDME冷媒とを混合する。ここで、本発明にかかる冷凍機油は、以下の性状を有することが好ましい。
【0079】
本発明にかかる冷凍機油の体積抵抗率は、好ましくは1.0×1012Ω・cm以上、より好ましくは1.0×1013Ω・cm以上、最も好ましくは1.0×1014Ω・cm以上とすることができる。特に、密閉型の冷凍機用に用いる場合には高い電気絶縁性が必要となる傾向にある。なお、本発明において、体積抵抗率とは、JIS C 2101「電気絶縁油試験方法」に準拠して測定した25℃での値を表す。
【0080】
本発明にかかる冷凍機油の水分含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下とすることができる。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、油の安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが求められる。
【0081】
また、本発明にかかる冷凍機油の酸価は特に限定されないが、冷凍機または配管に用いられている金属への腐食を防止するため、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下とすることができる。なお、本発明において、酸価とは、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」に準拠して測定した酸価の値を表す。
【0082】
また、本発明にかかる冷凍機油の灰分は特に限定されないが、本発明にかかる冷凍機油の安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するため、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とすることができる。なお、本発明において、灰分とは、JIS K 2272「原油及び石油製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法」に準拠して測定した灰分の値を表す。
【0083】
また、本発明の冷凍機用作動流体組成物は二酸化炭素冷媒とジメチルエーテル(DME)冷媒との混合冷媒を含有するが、二酸化炭素冷媒とDME冷媒との混合比率は、質量比で、好ましくは95:5〜60:40であり、より好ましくは95:5〜70:30であり、最も好ましくは、95:5〜75:25である。前記混合冷媒において、DMEの混合比が5質量%未満であると、冷媒相溶性が低下する傾向にあり、また、40質量%を超えると潤滑性が低下する傾向にある。
【0084】
また、本発明の冷凍機用作動流体組成物は、冷媒として、二酸化炭素冷媒とDME冷媒との混合冷媒のみを含有するものであっても良く、あるいは、当該混合冷媒以外の冷媒をさらに含有しても良い。当該混合冷媒以外の冷媒としては、ハイドロフルオロカーボン、炭化水素、アンモニア等が挙げられる。
【0085】
ハイドロフルオロカーボン冷媒としては、炭素数1〜3のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。具体的には例えば、ジフルオロメタン(HFC−32)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、1,3,3,3,−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3,−テトラフルオロプロペンなどのHFC、またはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択されるが、例えばHFC−32単独;HFC−23単独;HFC−134a単独;HFC−125単独;HFC−134a/HFC−32=60〜80質量%/40〜20質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/60〜30質量%の混合物;HFC−125/HFC−143a=40〜60質量%/60〜40質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/15〜35質量%/5〜40質量%の混合物;HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=35〜55質量%/1〜15質量%/40〜60質量%の混合物などが好ましい例として挙げられる。
【0086】
さらに具体的には、HFC−134a/HFC−32=70/30質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=60/40質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=50/50質量%の混合物(R410A);HFC−32/HFC−125=45/55質量%の混合物(R410B);HFC−125/HFC−143a=50/50質量%の混合物(R507C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=30/10/60質量%の混合物;HFC−32/HFC−125/HFC−134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)などが挙げられる。
【0087】
また、炭化水素冷媒としては、25℃、1気圧で気体のものが好ましく用いられる。具体的には炭素数1〜5、好ましくは1〜4のアルカン、シクロアルカン、アルケンまたはこれらの混合物である。具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、シクロプロパン、ブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパンまたはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。これらの中でも、プロパン、ブタン、イソブタンまたはこれらの混合物が好ましい。
【0088】
二酸化炭素冷媒とDME冷媒との混合冷媒に対する、ハイドロフルオロカーボンおよび/または炭化水素の混合比については特に制限はないが、二酸化炭素冷媒とDME冷媒との混合冷媒100質量部に対してハイドロフルオロカーボンと炭化水素の合計量として好ましくは1〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部を配合して用いられる。
【0089】
本発明の冷凍機用流体組成物において、本発明にかかる冷凍機油と冷媒との配合割合は特に制限されないが、冷媒100質量部に対して、本発明にかかる冷凍機油が1〜500質量部であることが好ましく、2〜400質量部であることがより好ましい。
【0090】
本発明の冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコンや冷蔵庫に好ましく用いられる。また、本発明の冷凍機用作動流体組成物は、自動車用エアコンや除湿機、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置等に好ましく用いられる。更に、本発明の冷凍機用作動流体組成物は、遠心式の圧縮機を有するものにも好ましく用いられる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0092】
[実施例1〜4、比較例1〜8]
実施例1〜4及び比較例1〜8においては、それぞれ表1に示す基油1〜8を用いて、表2〜4に示す冷凍機油組成物を調製した。
【0093】
【表1】

【0094】
次に、実施例1〜4及び比較例1〜8の冷凍機油組成物について以下の試験を実施した。
【0095】
(冷媒相溶性)
JIS−K−2211「冷凍機油」の「冷媒との相溶性試験方法」に準拠して、二酸化炭素/ジメチルエーテル=80重量%/20重量%の混合冷媒(以下「混合冷媒」)または二酸化炭素冷媒18gに対して冷凍機油を2g配合し、上記混合冷媒と冷凍機油とが20℃において相互に溶解しているかを観察し、「相溶」、「白濁」、「分離」として評価した。得られた結果を表2〜5に示す。
【0096】
(潤滑性(摩耗量))
ASTM D 2670“FALEXWEAR TEST”に準拠して、冷凍機油の温度100℃の条件下で、慣らし運転を150lb荷重の下に1分間行った。次いで、二酸化炭素/ジメチルエーテル=80重量%/20重量%の混合冷媒10L/hを吹き込みながら、250lb荷重の下に2時間試験機を運転し、試験後のテストジャーナル(ピン)の摩耗量を測定した。得られた結果を表2〜5に示す。
【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
表2〜4に示した結果から明らかなように、実施例1〜4の冷凍機油は、COとDMEの混合冷媒と共に用いた場合に、潤滑性と冷媒相溶性の性能がバランスよく優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
40℃における動粘度が100〜1000mm/sであり且つ100℃における動粘度が8〜50mm/sであるエステル系潤滑油基油と、
二酸化炭素冷媒と、
ジメチルエーテル冷媒と、
を含有することを特徴とする冷凍機用作動流体組成物。
【請求項2】
前記二酸化炭素冷媒と前記ジメチルエーテル冷媒との混合比率が、質量比で、95:5〜60:40であることを特徴とする、請求項1に記載の冷凍機用作動流体組成物。


【公開番号】特開2008−248002(P2008−248002A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88601(P2007−88601)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】