説明

冷凍機用潤滑油組成物及びそれを用いた冷凍機用作動流体組成物

【課題】電気絶縁性、フロン相溶性及び耐熱性を維持することができると共に、冷凍機に用いられる希土類磁石等の金属に対する優れた防錆効果を発揮することができる冷凍機用潤滑油組成物及びそれを用いた冷凍機用作動流体組成物を提供する。
【解決手段】冷凍機用潤滑油組成物は、ポリオールと脂肪酸とのエステル化合物、及び側鎖にエステル結合を有する5又は6員環の環状エーテル化合物からなり、前記環状エーテル化合物の含有量がエステル化合物100質量部当たり0.01〜5質量部に設定されている。環状エーテル化合物としては、側鎖にエステル結合を有する5又は6員環の環状アセタール化合物であることが好ましい。エステル化合物は、水酸基について2〜6価で炭素数5〜10のネオペンチルポリオールと、炭素数5〜10の直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族モノカルボン酸からなるエステル化合物であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気絶縁性、フロン相溶性及び耐熱性を維持することができると共に、冷凍機に用いられる希土類磁石等の金属に対する優れた防錆効果を発揮することができる冷凍機用潤滑油組成物及びそれを用いた冷凍機用作動流体組成物に関するものである。さらには、希土類磁石を使用した高効率モータを備えた冷媒圧縮機に用いられ、希土類磁石に対して優れた防錆効果を有する冷凍機用潤滑油組成物及びそれを用いた冷凍機用作動流体組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オゾン層の破壊などの問題から、従来ルームエアコン、パッケージエアコンなどの空調機器、低温機器や産業用冷凍機、及びハイブリッドカーや電気自動車のカーエアコンなどに用いられていた塩素を含むフロン冷媒の代替が進められている。係る代替冷媒としては、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R−134a)、ペルタフルオロエタン(R−125)、ジフルオルエタン(R−32)、これらの混合冷媒などの非塩素系フロン冷媒が挙げられる。それに従い、非塩素系フロン冷媒と相溶性の高いポリオール系エステル化合物を基油とする冷凍機用潤滑油が種々提案されている。フロンとの相溶性の他、冷凍機用潤滑油には高い電気絶縁性と耐熱性が要求され、上記の非塩素系フロン冷媒との相溶性に優れ、高い電気絶縁性を有するポリオール系エステル化合物を用いた冷凍機用潤滑油が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、省エネルギーに対する社会的関心の高まりにより、電気製品の消費電力の低減が重要な課題になっている。その中で、冷凍機や空調機器においては、その消費電力の大半を占める圧縮機の省電力化が重要視されている。圧縮機の省電力化には高効率な圧縮機構の開発が進められているが、圧縮機構におけるモータの高効率化も機器全体の省電力化に繋がる重要な課題である。
【0004】
モータの効率化に関しては、使用する磁石をより効率の良いものへ変更することが有効であり、それまで使用されてきたフェライト磁石から、磁気特性に優れる希土類磁石への転換が積極的に進められ、機器の省電力化や小型化に寄与している。希土類磁石としては、Nd−Fe―B(ネオジウム−鉄−ホウ素)を主体としたネオジウム系のものがコスト的に優位であり、このような希土類磁石を使用した冷媒圧縮機が知られている(例えば、特許文献2を参照)。しかし、ネオジウム系希土類磁石は耐食性が低く、錆の発生により磁石の品質が劣化して機器の特性を悪くしたり、錆粉の発生により冷凍サイクルの配管を詰まらせたりする。従って、通常は磁石の表面にニッケルやアルミニウムを用いたメッキ処理を施して使用するのが一般的である。
【0005】
一方、低コスト化の要因からニッケルメッキを施さず、珪酸ナトリウムガラスを用いた防錆コーティング(例えば、特許文献3を参照)や、ポリシラザン皮膜からガラス状保護皮膜を得る試み(例えば、特許文献4を参照)がなされている。また、低酸素雰囲気下で熱処理を行い、錆の発生を防ぐ技術も知られている(例えば、特許文献5を参照)。しかし、これらの手法も非塩素系フロン冷媒や潤滑油に長年曝される冷媒圧縮機特有のモータの使用条件において、コーティング剤から冷媒や潤滑油の性状に悪影響を及ぼす成分が溶出する可能性があり、加えて磁石の製造においても特殊な技術と設備、手間が必要で、コスト面においても不利であった。
【0006】
希土類磁石にメッキを施すと磁束量が減少することから、モータの製造を、低酸素状態の機密性を保持した環境で行うことにより、メッキ処理を行わない希土類磁石を用いる例も知られている(例えば、特許文献6を参照)。この特許文献6に記載の技術においても特殊な技術と設備、手間が必要で、安価な製品の製造は困難であった。
【特許文献1】特開平5−17789号公報(第2〜4頁)
【特許文献2】特開平11−150930号公報(第2頁及び第3頁)
【特許文献3】特開2000−32715号公報(第2頁及び第3頁)
【特許文献4】特開2003−17349号公報(第2頁及び第5頁)
【特許文献5】特開2002−57052号公報(第2頁及び第4頁)
【特許文献6】特開2003−61283号公報(第2頁及び第5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した冷媒用の冷凍機油に関する特許文献1においては、冷凍機油は多価アルコールと1価脂肪酸より合成されたエステル油を主成分とするものであり、フロン相溶性、電気絶縁性及び耐熱性等に優れている。しかしながら、係るエステル油は、圧縮機のモータを構成するフェライト磁石や特に耐食性が低いネオジウム系希土類磁石に対しては、錆の発生を十分に抑制することができないという問題があった。すなわち、エステル油のもつエステル結合により金属表面に吸着するものの、その吸着性は弱く、また剛直性及び疎水性が低いことから、金属表面における錆の生成を抑えることができないものと推測される。このため、ネオジウム系希土類磁石等にメッキ処理やコーティング処理のような特殊な処理を行うことなく、満足できる防錆効果を発揮することができる冷凍機用潤滑油組成物が求められていた。
【0008】
本発明は、以上のような従来技術の問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、電気絶縁性、フロン相溶性及び耐熱性を維持することができると共に、冷凍機に用いられる希土類磁石等の金属に対する優れた防錆効果を発揮することができる冷凍機用潤滑油組成物及びそれを用いた冷凍機用作動流体組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を克服するために鋭意検討を行った結果、エステル化合物の基油に、側鎖にエステル結合を有する5又は6員環の環状エーテル化合物を特定量加えた冷凍機用潤滑油組成物が、従来から要求されている電気絶縁性、フロン相溶性、耐熱性等の特性を満足し、希土類磁石の錆の発生を効果的に防止できることを見出した。この冷凍機用潤滑油組成物を使用することにより、希土類磁石にメッキ処理やコーティング処理などの特殊な処理を施すことなく高効率モータに組み込むことが可能となり、冷凍機用の冷媒圧縮機の省エネルギー化を容易に実施することができ、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、第1の発明の冷凍機用潤滑油組成物は、ポリオールと脂肪酸とのエステル化合物、及び側鎖にエステル結合を有する5又は6員環の環状エーテル化合物からなり、前記環状エーテル化合物の含有量がエステル化合物100質量部当たり0.01〜5質量部であることを特徴とする。
【0011】
第2の発明の冷凍機用潤滑油組成物では、第1の発明において、環状エーテル化合物が、側鎖にエステル結合を有する5又は6員環の環状アセタール化合物であることを特徴とする。
【0012】
第3の発明の冷凍機用潤滑油組成物では、第2の発明において、環状アセタール化合物が下記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される化合物であることを特徴とする。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

【0016】
【化4】

(式中のRとRは水素又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは炭素数1又は2のアルキル基を示す。AとAはそれぞれ構造式(V)で表されるエステル置換基を示し、同一又は異なっていてもよい。)
【0017】
【化5】

(式中のRは炭素数4〜11の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。)
第4の発明の冷凍機用潤滑油組成物では、第1から第3のいずれかに係る発明において、エステル化合物が、水酸基について2〜6価で炭素数5〜10のネオペンチルポリオールと、炭素数5〜10の直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族モノカルボン酸からなるエステル化合物であることを特徴とする。
【0018】
第5の発明の冷凍機用潤滑油組成物では、第4の発明において、飽和脂肪族モノカルボン酸はその60モル%以上が分岐鎖であることを特徴とする。
第6の発明の冷凍機用潤滑油組成物では、第1から第5のいずれかに係る発明において、冷凍機は希土類磁石を用いる駆動装置によって駆動される冷媒圧縮機を備えていることを特徴とする。
【0019】
第7の発明の冷凍機用作動流体組成物では、第1から第6のいずれかに係る発明の冷凍機用潤滑油組成物と、非塩素系フロン冷媒とを含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
第1の発明の冷凍機用潤滑油組成物は、ポリオールと脂肪酸とのエステル化合物、及び側鎖にエステル結合を有する5又は6員環の環状エーテル化合物からなり、前記環状エーテル化合物の含有量がエステル化合物100質量部当たり0.01〜5質量部である。この環状エーテル化合物は分子内に電荷を有しておらず電気的に中性な化合物であり、水酸基、アミノ基、カルボキシル基のような極性の高い置換基を有していないことから、基油となる前記エステル化合物の電気絶縁性や耐熱性を損なうことがないものと考えられる。加えて、環状エーテル化合物は分子内にエステル結合を有することにより、非塩素系フロン冷媒等に対して親和し、溶解する。その上、環状エーテル化合物は、その環状エーテル骨格の酸素原子が剛直な環状構造により結合の回転が規制され、その非共有電子対とエステル結合により効果的に金属表面に吸着し、かつエステル結合によって導入されたアルキル基の疎水性によって優れた防錆作用を発現することができるものと推測される。
【0021】
従って、冷凍機用潤滑油組成物は、電気絶縁性、フロン相溶性及び耐熱性を維持することができると共に、冷凍機に用いられる希土類磁石等の金属に対する優れた防錆効果を発揮することができる。
【0022】
第2の発明の冷凍機用潤滑油組成物では、環状エーテル化合物が側鎖にエステル結合を有する5又は6員環の環状アセタール化合物であることから、第1の発明の効果に加えて、特に耐熱性を向上させることができる。
【0023】
第3の発明の冷凍機用潤滑油組成物では、環状アセタール化合物が前記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される化合物であることから、第2の発明の効果に加えて、環状アセタール化合物を容易に得ることができる。
【0024】
第4の発明の冷凍機用潤滑油組成物では、エステル化合物が、水酸基について2〜6価で炭素数5〜10のネオペンチルポリオールと、炭素数5〜10の直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族モノカルボン酸からなるエステル化合物である。このため、第1から第3のいずれかに係る発明の効果に加え、エステル化合物は基油として優れた効果を発揮することができる。
【0025】
第5の発明の冷凍機用潤滑油組成物では、飽和脂肪族モノカルボン酸はその60モル%以上が分岐鎖であることから、第4の発明の効果に加えて、フロン相溶性及び耐加水分解性を向上させることができる。
【0026】
第6の発明の冷凍機用潤滑油組成物では、冷凍機が希土類磁石を用いる駆動装置によって駆動される冷媒圧縮機を備えていることから、第1から第6のいずれかに係る発明の効果を発揮することができ、冷凍機を高効率で駆動することができ、省電力化を果たすことができる。
【0027】
第7の発明の冷凍機用作動流体組成物では、前記冷凍機用潤滑油組成物と、非塩素系フロン冷媒とを含有する組成物である。従って、冷凍機用潤滑油組成物は前述のように非塩素系フロン冷媒と相溶性が良く、第1から第6のいずれかに係る発明の効果を十分に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の最良と思われる実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の冷凍機用潤滑油組成物は、ポリオールと脂肪酸とのエステル化合物、及び側鎖にエステル結合を有する5又は6員環の環状エーテル化合物からなり、環状エーテル化合物の含有量がエステル化合物100質量部当たり0.01〜5質量部に設定されたものである。
【0029】
前記エステル化合物は冷凍機用潤滑油組成物の基油(ベースオイル)として用いられる。エステル化合物を形成するポリオールは特に限定されないが、水酸基について2〜6価で炭素数5〜10のネオペンチルポリオールが好ましい。炭素数5〜10の直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族モノカルボン酸からなるエステルである。2〜6価で炭素数5〜10のネオペンチルポリオールとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが好ましく、ペンタエリスリトールがさらに好ましい。
【0030】
一方、脂肪酸は特に限定されないが、炭素数5〜10の直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族モノカルボン酸が好ましい。炭素数5〜10の直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族モノカルボン族としては、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2−エチルブタン酸、3,3−ジメチルブタン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2−メチル−2−エチルブタン酸、2,2,3−トリメチルブタン酸、2−メチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、4−メチルヘキサン酸、5−メチルヘキサン酸、イソヘブタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5−ジメチルヘキサン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、2−メチルヘブタン酸、3−メチルヘブタン酸、4−メチルヘブタン酸、2−プロピルペンタン酸、イソオクタン酸、2,2−ジメチルヘブタン酸、2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−メチルオクタン酸、2−エチルヘブタン酸、3−メチルオクタン酸、イソノナン酸、ネオノナン酸、2,2−ジメチルオクタン酸、2−メチル−2−エチルヘブタン酸、2−メチル−2−プロピルヘキサン酸、イソデカン酸、ネオデカン酸等が用いられる。これらの飽和脂肪族モノカルボン酸は単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
全ての飽和脂肪族モノカルボン酸に占める分岐鎖の比率は、フロン相溶性及び耐加水分解性の観点から、60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、全ての飽和脂肪族モノカルボン酸が分岐鎖であることが特に好ましい。分岐鎖を有する飽和脂肪族モノカルボン酸としては、2−エチルヘキサン酸又は3,5,5−トリメチルへキサン酸が好ましい。
【0032】
前記ポリオールと脂肪酸の使用量は、得られる冷凍機用潤滑油組成物の水酸基価が10.0mgKOH/g以下で、かつ酸価が0.1mgKOH/g以下となるように調整することが好ましい。水酸基価は、好ましくは5.0mgKOH/g以下、さらに好ましくは2.0mgKOH/g、最も好ましくは1.0mgKOH/g以下である。また、酸価は低いほど好ましく、好ましくは0.05mgKOH/g以下、より好ましくは0.02mgKOH/g以下である。
【0033】
エステル化合物は、通常のエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。具体的には、上記のポリオールと脂肪酸の当量比は、通常ポリオールの水酸基1当量に対し、脂肪酸のカルボキシル基1.0〜1.5当量であることが好ましく、さらに生産効率と経済性の点から、1.05〜1.3当量であることがより好ましい。エステル化反応又はエステル交換反応においては、必要に応じて触媒を加える。これを窒素気流下、160〜260℃で3〜15時間反応させ、水酸基価が3.0mgKOH/g以下となった時点で過剰の脂肪酸を減圧下で除去する。その後、アルカリによる脱酸後、活性白土、酸性白土又は合成系の吸着剤を用いた吸着処理やスチーミングなどの操作を単独又は組合せて行うことによってエステルを得ることができる。
【0034】
次に、環状エーテル化合物は、側鎖にエステル結合を有する5又は6員環の化合物である。この環状エーテル化合物としては、側鎖にエステル結合を有し、5又は6員環の環状アセタール化合物が好適に用いられる。該環状アセタール化合物としては、下記の構造式(I)〜(IV)に示される環状アセタール化合物が挙げられる。
【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
【化9】

(式中のRとRは水素又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは炭素数1又は2のアルキル基を示す。AとAはそれぞれ構造式(V)で表されるエステル置換基を示し、同一又は異なっていても良い。)
【0039】
【化10】

(式中のRは炭素数4〜11の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示す。)
構造式(I)〜(IV)の側鎖にエステル結合を有する環状アセタール化合物は、下記の式(VI)で示されるアルデヒド又はケトンを分子内に3つ以上の水酸基を有する多価アルコールで、1:1又は2:1のモル比でアセタール化することによって得られるアルコールと、Rに示される炭素数4〜11、好ましくは炭素数6〜11の直鎖又は分岐鎖アルキル基を有するモノカルボン酸をエステル化反応することによって得ることができる。
【0040】
アセタール化反応を行う3つ以上の水酸基を有する多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリシリトール等が用いられる。化合物(VI)はR、Rに水素又は炭素数1〜4のアルキル基を有するものが用いられる。R、Rが炭素数4を超える場合、5又は6員環の環状アセタール骨格におけるRとRが金属表面への吸着を立体的に阻害するため、希土類磁石に対して良好な防錆作用を示さなくなり好ましくない。RとRのどちらかが水素であるものが好ましく、RとRが共に水素であるものがより好ましい。
【0041】
【化11】

(R、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基)
これらのアセタール化反応を行う方法には様々あるが、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酸性イオン交換樹脂、塩化カルシウムのような酸性触媒を使用する方法で容易に得ることができる。
【0042】
冷凍機用潤滑油に用いられるポリオールエステルが有する電気絶縁性やフロン相溶性、耐熱性などの優れた性能を損なわず、希土類磁石に対して優れた防錆性を付与するため、Rに示されるアルキル基を有するモノカルボン酸は、炭素数5〜12のものを用いることが好ましい。これらの飽和脂肪族モノカルボン酸、或いは飽和脂肪族モノアルコールは直鎖又は分岐構造のものを使用することができる。
【0043】
環状エーテル化合物は、構造式(VI)のアルデヒド又はケトン化合物を3つ以上の水酸基を有する多価アルコールでアセタール化して得られるアルコールと、Rのアルキル基を有するモノカルボン酸のエステル化反応によって得られる。この場合、無触媒、又は塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酸性イオン交換樹脂のようなプロトン酸触媒や、ルイス酸触媒を用いる一般的なエステル化反応に従って行われ、適宜アルカリ性水溶液による脱酸工程や、吸着処理などの精製処理が行われる。このような方法で合成された環状エーテル化合物は、酸価が1.0mgKOH/g以下、水酸基価が30mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が1.0mgKOH/gを超える場合、冷凍機用潤滑油組成物は良好な耐腐食性を発現することができない。また、水酸基価が30mgKOH/gを超える場合、冷凍機用潤滑油組成物の電気絶縁性や耐加水分解性を悪化させる。
【0044】
また、環状エーテル化合物の含有量は、前記エステル化合物100質量部に対し、0.01〜5質量部であり、0.02〜3質量部であることが好ましく、0.1〜1質量部であることがより好ましい。この含有量が0・01質量部未満の場合には、冷凍機用潤滑油組成物は希土類磁石に対する十分な防錆効果を発現できず、5質量部を超える場合にはそれ以上の効果が得られないだけではなく、冷凍機用潤滑油組成物として要求される電気絶縁性を得ることができない。
【0045】
冷凍機用潤滑油組成物は、非塩素系フロン冷媒と混合することにより冷凍機の潤滑をつかさどる作動流体組成物となる。上記非塩素系フロン冷媒として具体的には、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R−134a)、ペンタフルオロエタン(R−125)、ジフルオロエタン(R−32)、トリフルオロメタン(R−23)、1,1,2,2−テトラロフルオロエタン(R−134)、1,1,1−トリフルオロエタン(R−143a)、1,1−ジフルオロエタン(R−152a)等が挙げられる。これらの非塩素系フロン冷媒は、1種又は2種以上の混合冷媒が用いられる。
【0046】
上記混合冷媒としては、具体的にはR−407C(R−134a/R−125/R−32=52/25/23wt%)、R−410R(R−125/R−32=50/50wt%)、R−404A(R−125/R−143/R−134a=44/52/4wt%)、R−407E(R−134a/R−125/R−32=60/15/25wt%)、R−410B(R−32/R−125=45/55wt%)等が挙げられる。これらの中でも、特にR−134a及びR−32の少なくとも1種を含む冷媒が好ましい。
【0047】
冷凍機用作動流体組成物は冷凍機用潤滑油組成物と非塩素系フロン冷媒の質量比が、通常10:90〜90:10のものである。非塩素系フロン冷媒の質量比が90を超えると冷凍機用作動流体組成物の粘性が低下し、潤滑不良を起こすおそれがあることから、非塩素系フロン冷媒の質量比は、通常90以下であり、好ましくは80以下である。一方、非塩素系フロン冷媒の質量比が10未満の場合には、冷凍効率が低下するおそれがある。
【0048】
冷凍機用作動流体組成物には、公知の添加剤、例えばフェノール系等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール又はジチオカーバメート等の金属不活性化剤、エポキシ化合物、カルボジイミド等の酸補足剤、リン系の極圧剤、磨耗防止剤などの添加剤を目的に応じて適宜配合することができる。
【0049】
冷凍機用作動流体組成物は、少なくとも圧縮機、凝縮器、膨張機構及び蒸発器を有し、必要に応じて乾燥器を有する冷凍機に用いることができる。冷凍機として具体的には、ルームエアコン、パッケージエアコン等の空調機器、低温機器や産業用冷凍機、ハイブリッドカーや電気自動車のカーエアコン等に用いられるものが挙げられる。
【0050】
以上詳述した実施形態によって発揮される作用及び効果について、以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態の冷凍機用潤滑油組成物は、ポリオールと脂肪酸とのエステル化合物、及び側鎖にエステル結合を有する5又は6員環の環状エーテル化合物からなり、環状エーテル化合物の含有量がエステル化合物100質量部当たり0.01〜5質量部に設定されている。この環状エーテル化合物は分子内に電荷を有しておらず電気的に中性な化合物であり、水酸基、アミノ基、カルボキシル基のような極性の高い置換基を有していないことから、基油となる前記エステル化合物の電気絶縁性や耐熱性を損なうことがないものと考えられる。加えて、環状エーテル化合物は分子内にエステル結合を有することにより、非塩素系フロン冷媒等に対して親和し、溶解する。その上、環状エーテル化合物は、その環状エーテル骨格の酸素原子が剛直な環状構造により結合の回転が規制され、その非共有電子対とエステル結合により効果的に金属表面に吸着し、かつエステル結合によって導入されたアルキル基の疎水性によって優れた防錆作用を発現することができるものと推測される。
【0051】
従って、冷凍機用潤滑油組成物は、電気絶縁性、フロン相溶性及び耐熱性を維持することができると共に、冷凍機に用いられる希土類磁石等の金属に対する優れた防錆効果を発揮することができる。よって、特にネオジウム系希土類磁石について、メッキ処理やコーティング処理のような特殊な処理を行うことなく、十分な防錆効果を与えることができ、冷凍機のモータを高効率で作動させることができる。
【0052】
・ 前記環状エーテル化合物が、側鎖にエステル結合を有する5又は6員環の環状アセタール化合物であることにより、その化学構造に基づいて冷凍機用潤滑油組成物の特に耐熱性を向上させることができる。
【0053】
・ 環状アセタール化合物が前記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される化合物であることにより、環状アセタール化合物を容易に得ることができる。
・ 前記エステル化合物が水酸基について2〜6価で炭素数5〜10のネオペンチルポリオールと、炭素数5〜10の直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族モノカルボン酸からなるエステル化合物であることにより、エステル化合物は基油として優れた効果を発揮することができる。
【0054】
・ エステル化合物を形成する飽和脂肪族モノカルボン酸はその60モル%以上が分岐鎖であることにより、フロン相溶性及び耐加水分解性を向上させることができる。
・ 前記冷凍機が希土類磁石を用いる駆動装置によって駆動される冷媒圧縮機を備えていることにより、上記冷凍機用潤滑油組成物の効果を冷媒圧縮機において発揮することができ、冷凍機を高効率で駆動することができ、省電力化を果たすことができる。
【0055】
・ 冷凍機用作動流体組成物は前記冷凍機用潤滑油組成物と、非塩素系フロン冷媒とを含有する組成物であるため、冷凍機用潤滑油組成物は非塩素系フロン冷媒と相溶性が良く、その効果を十分に発揮することができる。
【実施例】
【0056】
以下に、合成例、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。
(合成例1、エステル化合物A〜Hの合成)
温度計、窒素導入管、攪拌機及び冷却管と油水分離管を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、水酸基とカルボキシル基の当量が1:1.1の比率になるように原料を仕込み、表1に示すポリオールと脂肪酸とからなるエステルを合成した。具体的には、窒素気流下、原料を160℃で6時間保持した後、220℃で反応水を留去しつつ常圧で反応した。水酸基価が2.0mgKOH/g以下になった時点で反応を終え、1〜5kPaの減圧下で未反応の脂肪酸を1時間かけて除去した。その後、水酸化カリウム水溶液を加えて中和し、エステル化合物を5回水洗いした。次いで、100℃、1kPaの条件で減圧下に脱水し、酸性白土及びシリカ−アルミナ系の吸着剤を理論エステル量の各1.0質量%添加して吸着処理を行った。吸着温度、圧力及び吸着処理時間は、それぞれ100℃、1kPa及び3時間とした。最後に、1ミクロン(μm)のフィルターを用いて濾過を行い、エステル化合物A〜Hを得た。
【0057】
これらのエステル化合物について、40℃における動粘度、色相、酸価及び水酸基価を下記の測定方法に基づいて測定し、それらの結果を表1に示した。
動粘度:JIS K−2283に準拠して測定した。
【0058】
色相: JOCS 2.2.1.4−1996に準拠して測定した。
酸価: JIS C−2101に準拠して測定した。
水酸基価: JIS K−0070に準拠して測定した。
【0059】
【表1】

なお、表1中の略号を以下に示す。
【0060】
NPG:ネオペンチルグリコール
PE:ペンタエリスリトール
TMP:トリメチロールプロパン
diPE:ジペンタエリスリトール
〔合成例2、側鎖にエステル結合を有する環状エーテルとしての環状アセタール化合物1〜8の合成〕
合成例2の環状アセタール化合物1〜8を表2に示した。また、合成例2の環状アセタール化合物1〜8と比較として用いた比較合成例のアセタール化合物を化学式(VII)及び化学式(VIII)に示した。化学式(VII)のアセタール化合物は側鎖にエステル結合を有しておらず、化学式(VIII)のアセタール化合物は鎖状の化合物である。表3では、化学式(VII)のアセタール化合物をエーテル化合物9、化学式(VIII)のアセタール化合物をエーテル化合物10で示す。
【0061】
また、環状アセタール化合物の合成は以下のように実施した。
【0062】
【化12】

【0063】
【化13】

(環状アセタール化合物1の合成)
温度計、窒素導入管、攪拌機及び冷却管油水分離管を取り付けた2Lの4つ口フラスコにグリセリン(250g)、アセトン(522g)とトルエン800mLを注入し、次いでメタンスルホン酸(26g)を加えて還流し、留出する水を除去しながら30時間反応を行った。続いて、水酸化カリウム水溶液を加えて中和し、イオン交換水で5回水洗いした後、トルエンを減圧留去し、4−ヒドロキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランを298g得た。
【0064】
温度計、窒素導入管、攪拌機及び冷却管油水分離管を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、上記の4−ヒドロキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン298gを注入し、そこへ3,5,5−トリメチルヘキサン酸392gを加え、エステル化合物の合成方法と同様の操作を行うことにより、491gの環状アセタール化合物1を得た。得られた環状アセタール化合物1の酸価は0.1mgKOH/g、及び水酸基価は6mgKOH/gであった。
(環状アセタール化合物2〜8の合成)
環状アセタール化合物1と同様の操作により、表2に示す環状アセタール化合物2〜8を合成した。得られた環状アセタール化合物2の酸価は0.1mgKOH/g及び水酸基価は5mgKOH/gであった。環状アセタール化合物3の酸価は0.1mgKOH/g及び水酸基価は3mgKOH/gであった。環状アセタール化合物4の酸価は0.1mgKOH/g及び水酸基価は2mgKOH/gであった。環状アセタール化合物5の酸価は0.2mgKOH/g及び水酸基価は8mgKOH/gであった。環状アセタール化合物6の酸価は0.1mgKOH/g及び水酸基価は2mgKOH/gであった。環状アセタール化合物7及び8の酸価は0.2mgKOH/g及び水酸基価は3mgKOH/gであった。
【0065】
【表2】

なお、表2のRの欄に記載した()内の数値は、全構成アルキル基に対するモル%を示す。
(実施例1〜17及び比較例1〜5)
実施例1〜17及び比較例1〜5においては、合成例1のエステル化合物と合成例2の環状エーテル化合物とを表3に示す組成にて混合し、冷凍機用潤滑油組成物を調製した。ここで、比較例1〜3では、エーテル化合物として本発明の範囲外の化合物を用いた例、比較例4及び5では、エステル化合物に対する環状エーテル化合物の含有量が本発明の範囲外である例を示す。
【0066】
得られた冷凍機用潤滑油組成物について、体積抵抗率、二層分離温度及びシールドチューブ試験を下記に示す方法で実施し、その結果を表4に示した。
体積抵抗率:JIS C−2101に準拠し、25℃における体積抵抗率(×1013Ω・cm)を測定した。
【0067】
二層分離温度:0.5gの試料と2.5gの冷媒R−134aとをドライアイスを入れたエタノール浴で冷却した肉厚パイレックス(登録商標)チューブ(全長300mm、外径10mm及び内径6mm)に封入し、1℃/分の速度で昇温又は冷却を行った。そして、高温及び低温における二層分離温度(℃)を−50℃〜80℃の範囲で目視により測定した。冷媒R−407Cについても同様な操作を行い、二層分離温度を測定した。
【0068】
シールドチューブ試験:肉厚パイレックス(登録商標)チューブ(全長300mm、外径10mm及び内径6mm)に予め水分量を約100ppmに調整した試料を2g、冷媒R−134aを3g、及び長さ10mmの鉄、銅、及びアルミニウムの金属片を各1枚ずつ封入し、封管した。これを175℃にて14日間加熱した後、開封して冷媒を抜き取り、金属片の変化と試料の外観を目視にて観察するとともに、酸価(mgKOH/g)を測定した。
【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

表4に示した結果より、環状エーテル化合物の含有量が過剰であった比較例4において、体積抵抗率すなわち電気絶縁性の低下と、低温におけるフロン相溶性の低下が顕著であった。それ以外の実施例1〜17、比較例1〜3及び5においては、体積抵抗率、二層分離温度及びシールドチューブ試験とも良好な結果であった。
【0071】
次に、前記冷凍機用潤滑油組成物に、非塩素系フロン冷媒を配合して冷凍機用作動流体組成物を調製し、その冷凍機用作動流体組成物について、下記に示す希土類磁石の防錆試験を行った。その結果を表5に示した。
(防錆試験)
ガラス管に、予め水分量を約1000ppmに調整した試料を2.0g、冷媒R−134aを3.0g、及び株式会社NEOMAX社製のNEOMAX−39SH(ネオジウム−鉄−ホウ素系希土類磁石:外形5mm、長さ50mm)の未コーティング試験片と長さ10mmの鉄、銅及びアルミニウムの金属片を封入し、封管した。これを175℃にて14日間加熱した後、開封して冷媒を抜き取り、希土類磁石の試験片の外観を目視にて観察した。わずかな腐食であっても目視でその発生が認められた場合を「×」、磁石の試験片が黒褐色に変色したのみの場合を「○」、磁石の試験片に変化が認められなかった場合を「◎」と評価した。
【0072】
【表5】

表5に示した結果より、実施例1〜17及び比較例4に関しては錆の発生は確認されず、希土類磁石の錆びの発生が効果的に抑制されていることが確認された。その一方、比較例1〜3及び5では、用いたエーテル化合物が本発明の範囲外の化合物であったり、エステル化合物に対する環状エーテル化合物の含有量が過少であったりしたため、錆の発生を抑えることができず、明らかな錆の発生が認められた。
【0073】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記実施例において、環状アセタール化合物として、構造式(V)で表されるRについて、前記表2に示した環状アセタール化合物7及び8以外の炭素数が4〜6である化合物を用いることもできる。
【0074】
・ 前記実施例において、非塩素系フロン冷媒として、R−125、R−32等を使用することもできる。
・ 冷凍機用作動流体組成物には、前記エステル化合物と環状エーテル化合物との相溶性を高めるような化合物を配合することも可能である。
【0075】
・ 冷凍機用作動流体組成物には、鉱油、合成油等の潤滑油を配合することも可能である。
・ 冷凍機用潤滑油組成物を構成するエステル化合物を4種類以上組合せて使用したり、環状エーテル化合物を3種類以上組合せて使用することもできる。
【0076】
・ 冷凍機用潤滑油組成物を構成するエステル化合物及び環状エーテル化合物として、相溶性が良好となるような化合物を組合せて使用することができる。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0077】
・ 前記環状エーテル化合物は、側鎖にエステル結合を有する6員環の環状アセタール化合物であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の冷凍機用潤滑油組成物。このように構成した場合、環状エーテル化合物の作用が有効に発現され、請求項1から請求項6のいずれかの発明の効果を向上させることができる。
【0078】
・ 前記環状エーテル化合物は、前記構造式(III)で表される環状アセタール化合物であることを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の冷凍機用潤滑油組成物。このように構成した場合、請求項3から請求項6のいずれかの発明の効果を向上させることができる。
【0079】
・ 前記ネオペンチルポリオールは、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールであることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の冷凍機用潤滑油組成物。このように構成した場合、請求項4から請求項6のいずれかの発明の効果に加えて、基油としての効果を向上させることができる。
【0080】
・ 前記直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族モノカルボン酸は、2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、ペンタン酸、ヘプタン酸又はオクタン酸であることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の冷凍機用潤滑油組成物。このように構成した場合、請求項4から請求項6のいずれかの発明の効果に加えて、フロン相溶性及び耐加水分解性を一層高めることができる。
【0081】
・ 前記分岐鎖の飽和脂肪族モノカルボン酸は、2−エチルヘキサン酸又は3,5,5−トリメチルヘキサン酸であることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の冷凍機用潤滑油組成物。このように構成した場合、請求項4から請求項6のいずれかの発明の効果に加えて、フロン相溶性及び耐加水分解性を一層高めることができる。
【0082】
・ 前記構造式(I)〜(IV)中のRとRは、共に水素であることを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の冷凍機用潤滑油組成物。このように構成した場合、請求項3から請求項6のいずれかの発明の効果に加えて、希土類磁石等の金属に対する防錆効果を一層向上させることができる。
【0083】
・ 酸価が0.1mgKOH/g以下であると共に、水酸基価が10.0mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の冷凍機用潤滑油組成物。このように構成した場合、請求項1から請求項6のいずれかの発明の効果に加えて、冷凍機用潤滑油組成物の耐腐食性を向上させることができると共に、電気絶縁性、耐加水分解性などの物性を向上させることができる。
【0084】
・ 前記環状エーテル化合物は、酸価が1.0mgKOH/g以下であると共に、水酸基価が30.0mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の冷凍機用潤滑油組成物。このように構成した場合、請求項1から請求項6のいずれかの発明の効果に加えて、冷凍機用潤滑油組成物の耐腐食性、電気絶縁性、耐加水分解性などの物性を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールと脂肪酸とのエステル化合物、及び側鎖にエステル結合を有する5又は6員環の環状エーテル化合物からなり、前記環状エーテル化合物の含有量がエステル化合物100質量部当たり0.01〜5質量部であることを特徴とする冷凍機用潤滑油組成物。
【請求項2】
環状エーテル化合物が、側鎖にエステル結合を有する5又は6員環の環状アセタール化合物であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍機用潤滑油組成物。
【請求項3】
環状アセタール化合物が下記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の冷凍機用潤滑油組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

(式中のRとRは水素又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは炭素数1又は2のアルキル基を示す。AとAはそれぞれ構造式(V)で表されるエステル置換基を示し、同一又は異なっていてもよい。)
【化5】

(式中のRは炭素数4〜11の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。)
【請求項4】
エステル化合物が、水酸基について2〜6価で炭素数5〜10のネオペンチルポリオールと、炭素数5〜10の直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族モノカルボン酸からなるエステル化合物であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の冷凍機用潤滑油組成物。
【請求項5】
飽和脂肪族モノカルボン酸はその60モル%以上が分岐鎖であることを特徴とする請求項4に記載の冷凍機用潤滑油組成物。
【請求項6】
冷凍機は希土類磁石を用いる駆動装置によって駆動される冷媒圧縮機を備えていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の冷凍機用潤滑油組成物。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の冷凍機用潤滑油組成物と、非塩素系フロン冷媒とを含有することを特徴とする冷凍機用作動流体組成物。

【公開番号】特開2008−266582(P2008−266582A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44812(P2008−44812)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】