説明

冷凍機複合型燃料電池システム

【課題】システム全体における排熱を充分に有効利用可能な冷凍機複合型燃料電池システムを提供する。
【解決手段】改質器112および燃料電池10を有する燃料電池ユニット1と、吸着式冷凍機2とを複合した冷凍機複合型燃料電池システムであって、吸着式冷凍機2の吸着材Sを燃料電池10の排熱にて加熱すると共に、燃料電池ユニット1に供給する水、燃料、および空気(酸素)といった供給流体のうち少なくとも1つを吸着式冷凍機2にて生ずる排熱(凝縮熱)にて加熱する。このように、吸着式冷凍機2の排熱を、燃料電池ユニット1にて必要となる熱源として利用することで、燃料電池10の作動に必要とされる熱量を低減することができる。これにより、システム全体での排熱を充分に有効利用することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素と酸素との電気化学反応により電気エネルギを発生させる燃料電池を備える燃料電池ユニットと作動時に燃料電池ユニットの排熱を利用する熱駆動式冷凍機を複合した冷凍機複合型燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池ユニットは、灯油やLPG等の燃料を改質して水素を含む燃料ガスを生成する改質器と、当該燃料ガスと酸化剤ガス(空気)との電気化学反応により電気エネルギを発生させる燃料電池とを含んで構成されている。
【0003】
燃料電池では、燃料極側(アノード側)に燃料ガス(水素)が供給され、空気極側(カソード側)に酸化剤ガス(空気)が供給される。燃料電池に供給される反応ガスは、燃料電池での発電に利用された後、未反応ガスを含む排ガスとして排出される。そして、燃料電池から排出された未反応ガスを燃焼させ、燃焼により生じた熱(燃料電池の排熱)を改質器の改質反応用の熱源として利用することで、未反応ガスを活用する燃料電池ユニット(所謂、内部改質型の燃料電池ユニット)が存在する。
【0004】
ここで、燃料電池ユニットと吸収式冷凍機とを複合したシステム(吸収式冷凍機複合型燃料電池システム)において、燃料電池の排熱を吸収式冷凍機の熱源として利用する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的に特許文献1では、燃料電池の排熱を、改質器の改質反応用等の熱源および吸収式冷凍機の再生器を加熱する熱源として利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−73416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の如く、燃料電池ユニットと燃料電池の排熱を熱源として駆動する冷凍機(熱駆動式冷凍機)とを複合した冷凍機複合型燃料電池システムでは、燃料電池ユニット側の排熱の有効利用を図っているものの、冷凍機側の排熱については有効利用されておらず、システム全体における排熱の有効利用を図るには不充分であった。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、システム全体における排熱を充分に有効利用可能な冷凍機複合型燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、加熱されることによって改質対象流体を改質して、少なくとも水素を含む燃料ガスを生成する改質器(112)、および燃料ガスと酸化剤ガスとを電気化学反応させることによって電気エネルギを出力する燃料電池(10)を有する燃料電池ユニット(1)と、冷媒を捕捉材に捕捉させることによって冷媒を蒸発させて冷凍能力を発揮するとともに、加熱されることによって捕捉材に捕捉していた冷媒を解離させ、解離させた冷媒を凝縮させる際に生ずる凝縮熱を放熱する熱駆動式冷凍機とを備える冷凍機複合型燃料電池システムであって、捕捉材を燃料電池(10)の排熱にて加熱する捕捉材加熱手段(24)と、改質対象流体および酸化剤ガスといった燃料電池ユニット(1)に供給する供給流体のうち少なくとも1つを熱駆動式冷凍機にて生ずる凝縮熱にて加熱する第1供給流体加熱手段(22、24、162〜164)と、を備えることを特徴とする冷凍機複合型燃料電池システム。
【0009】
このように、本発明では、燃料電池(10)の排熱を熱駆動式冷凍機の捕捉材の加熱に有効利用すると共に、熱駆動式冷凍機にて冷媒を凝縮させる際に生ずる凝縮熱を燃料電池ユニット(1)に供給される供給流体の加熱に有効利用する構成としている。すなわち、燃料電池(10)および熱駆動式冷凍機の排熱を、燃料電池ユニット(1)および熱駆動式冷凍機(2)の相互で有効利用する構成としている。
【0010】
これによれば、熱駆動式冷凍機の排熱を燃料電池ユニット(1)にて利用することで、燃料電池(10)の作動に必要とされる熱量を低減することができるので、システム全体での排熱を充分に有効利用することが可能となる。
【0011】
さらに、請求項2に記載の発明の如く、請求項1に記載の冷凍機複合型燃料電池システムにおいて、供給流体を燃料電池(10)の排熱にて加熱する第2供給流体加熱手段(15)を備える構成とすれば、システム全体での排熱をより効果的に有効利用することが可能となる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の冷凍機複合型燃料電池システムにおいて、第1供給流体加熱手段(22、24、162〜164)では、供給流体と凝縮熱によって加熱された加熱媒体とを熱交換させることによって、供給流体を加熱することを特徴とする。
【0013】
これによれば、熱駆動式冷凍機の排熱によって加熱された加熱媒体を介して供給流体である改質対象流体および酸化剤ガスそれぞれを加熱することができる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明のように、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の冷凍機複合型燃料電池システムにおいて、熱駆動式冷凍機を、捕捉材として冷媒を吸着すると共に加熱されることによって吸着した冷媒を脱離する吸着材(S)、吸着材(S)が封入された吸着器(21)、および吸着材(S)から脱離した冷媒を凝縮させるための凝縮器(22)を有する吸着式冷凍機(2)で構成し、第1供給流体加熱手段(22、24、162〜164)では、供給流体のうち少なくとも1つを凝縮器(22)で冷媒が凝縮する際の凝縮熱にて加熱する構成とすることができる。
【0015】
また、請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の冷凍機複合型燃料電池システムにおいて、第1供給流体加熱手段(22、24、162〜164)では、供給流体のうち少なくとも1つを吸着材(S)で冷媒を吸着した際に生ずる吸着熱にて加熱することを特徴とする。
【0016】
これによれば、凝縮器(22)にて生ずる凝縮熱および吸着材(S)にて冷媒を吸着した際に生ずる凝縮熱(吸着熱)の両方によって、燃料電池ユニット(1)に供給する供給流体を加熱することができるので、供給流体の加熱に利用する燃料電池ユニット(1)の排熱の熱量をより効果的に低減することができる。
【0017】
また、請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の冷凍機複合型燃料電池システムにおいて、第1供給流体加熱手段(22、24、162〜164)では、凝縮器(22)における凝縮熱にて加熱した改質対象流体を、吸着材(S)における吸着熱にて加熱するように構成されていることを特徴とする。
【0018】
これによれば、先に、凝縮器(22)にて生ずる凝縮熱にて改質対象流体を加熱することで、凝縮器(22)における冷媒の温度を低下させて効率的に凝縮させることができる。この場合、先ず、吸着材(S)にて冷媒を吸着した際に生ずる凝縮熱(吸着熱)にて改質対象流体を加熱する構成に比べて、同一の放熱量を確保するための放熱面積を小さくすることができるので、凝縮器(22)の小型化を図ることが可能となる。
【0019】
ここで、吸着材(S)で冷媒を吸着する際に生ずる凝縮熱にて改質対象流体を加熱する場合、すなわち、吸着材(S)を低温の改質対象流体にて冷却する場合には、改質対象流体の温度が低く過ぎると、吸着する冷媒が、吸着材(S)の吸着孔の開口部で凝縮して吸着孔を塞いでしまうことで、吸着材(S)での吸着量が低下する虞がある。
【0020】
これに対して、請求項6に係る発明では、凝縮器(22)にて加熱された改質対象流体にて吸着工程時の吸着材(S)を冷却するので、吸着材(S)における吸着孔の開口部で凝縮して吸着孔を塞いでしまうことを回避することができ、吸着材(S)における吸着量の低下を抑制することができる。
【0021】
さらに、凝縮器(22)にて加熱された改質対象流体にて吸着材(S)を冷却する場合、低温の改質対象流体にて当該吸着材(S)を冷却するよりも吸着材(S)周辺の飽和蒸気圧を増加させることができるので、吸着材(S)の吸着速度を増加させて効率的に吸着させることが可能となる。
【0022】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係る冷凍機複合型燃料電池システムの全体構成図である。
【図2】第2実施形態に係る冷凍機複合型燃料電池システムの全体構成図である。
【図3】第3実施形態に係る冷凍機複合型燃料電池システムの全体構成図である。
【図4】第4実施形態に係る冷凍機複合型燃料電池システムの全体構成図である。
【図5】第5実施形態に係る冷凍機複合型燃料電池システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0025】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1に基づいて説明する。図1は、第1実施形態に係る冷凍機複合型燃料電池システムの全体構成図である。
【0026】
この冷凍機複合型燃料電池システムは、燃料ガス(水素等)と酸化剤ガス(酸素)との電気化学反応を利用して電力を発生する燃料電池10を備える燃料電池ユニット1および燃料電池ユニット1からの排熱を利用して駆動する吸着式冷凍機2を複合させたものである。
【0027】
まず、燃料電池ユニット1について説明する。燃料電池ユニット1は、燃料を水蒸気改質することによって生成した水素(および一酸化炭素)を含む燃料ガスと空気中に含まれる酸素(酸化剤ガス)とを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる燃料電池10を備えている。燃料電池10にて生じた直流の電力は、インバータ3を介して交流電流に変換されて各種電気負荷(図示略)に供給される。
【0028】
本実施形態の燃料電池10は、電解質(固体酸化物)、燃料極10a、空気極10b等で構成される燃料電池セルをインターコネクタ(セル同士を接合する接合部材)を介して複数接合した固体電解質型燃料電池(SOFC)で構成している。固体電解質型燃料電池は、その作動温度が700℃〜1000℃に設定される高温型燃料電池である。なお、説明の便宜のため、図1では単一の燃料極10aおよび空気極10bのみを図示している。
【0029】
燃料電池10には、炭化水素系の燃料(水蒸気を含む燃料ガスを含む)および空気が供給流体として供給される。具体的には、燃料電池10の燃料極10a側には、燃料や燃料ガスを供給するための燃料供給経路11が接続され、燃料電池10の空気極10b側には、空気(酸化剤ガス)を供給するための空気供給経路12が接続されている。
【0030】
燃料供給経路11には、燃料流れ上流側から順に、気化器111、改質器112が設けられている。気化器111は、水供給経路13を介して供給される水を加熱して気化させると共に、燃料を加熱して気化させ、気化した水(水蒸気)と燃料とを混合して水蒸気を含む混合ガスを生成する気化手段である。気化器111は、後述する燃焼器14で生成した燃焼排ガスの高熱を熱源とし、当該熱源により燃料および水を加熱するように構成されている。
【0031】
なお、燃料としてLPG等の気体燃料を採用する場合には、気化器111にて水蒸気を生成し、気体燃料を混合すればよい。さらに、気化器111によらず、水蒸気を生成できる場合には、気化器111を省略して、気体燃料と水蒸気とを改質器112にて混合するようにしてもよい。
【0032】
改質器112は、気化器111にて生成された混合ガスを高温(800℃程度)まで加熱することによって、水蒸気改質反応(触媒反応)により改質して水素および(一酸化炭素)を含む燃料ガスを生成するものである。改質器112にて改質された燃料ガスは、燃料電池10の燃料極10a側に導入される。改質器112は、後述する燃焼器14で生成した燃焼排ガスの高熱を熱源とし、当該熱源により混合ガスを加熱するように構成されている。
【0033】
ここで、改質器112に導入する混合ガスは、水蒸気を含む燃料ガスであり、気化器111に導入する燃料および水が本発明の改質対象流体に相当している。
【0034】
空気供給経路12には、空気極10bに導入する空気を加熱するための空気予熱器121が設けられている。この空気予熱器121は、空気極10bに導入する空気を加熱することで、空気極10bに導入する空気(酸化剤ガス)と燃料電池10の燃料極10aに導入する高温の燃料ガスとの温度差を小さくし、燃料電池10における電気化学反応の効率向上を図るための空気予熱手段である。
【0035】
なお、図示しないが、燃料供給経路11および空気供給経路12それぞれには、燃料極10aに供給する改質ガスの供給量を調整するための調整弁や空気極10bに供給する空気(酸化剤ガス)の供給量を調整するための調整弁等が設けられている。
【0036】
また、燃料電池10には、燃料極側排ガスに含まれる未反応水素および空気極側排ガスに含まれる未反応空気を燃焼させて高温の燃焼排ガスを生成する燃焼器14が隣接配置されており、燃焼器14は、燃料電池10の保温用の熱源として機能している。なお、燃料電池10の保温には、燃焼器14だけに限らず、外部から導入された熱源を用いることができる。
【0037】
燃焼器14には、燃焼器14にて生じた高温の燃焼排ガスを外部に排出するための燃焼排ガス経路15が接続されている。燃焼排ガス経路15には、内部を通過する燃焼排ガスの高熱(排熱)を有効利用すべく、上流側から順に、改質器112、気化器111、空気予熱器121、排熱回収熱交換器31といった加熱対象機器を経由するように構成されている。
【0038】
これにより、燃焼器14で生成した燃焼排ガスの高熱が燃焼排ガス経路15を介して当該加熱対象機器111、112、121、31のそれぞれに授受されるようになっている。すなわち、燃焼排ガス経路15を介して燃料電池10に供給される燃料ガスおよび空気といった供給流体が加熱される。このため、本実施形態における燃焼排ガス経路15は、本発明の第2供給流体加熱手段を構成している。
【0039】
ここで、排熱回収熱交換器31は、燃焼排ガス経路15を通過する燃焼排ガスと温水経路30内の水とを熱交換させて温水を生成する熱交換器である。なお、温水経路30には、排熱回収熱交換器31の水流れ上流側に電動式の水ポンプ32が配置されており、当該水ポンプ32が作動することで、温水経路30内を水が循環する。
【0040】
次に、吸着式冷凍機2について説明する。吸着式冷凍機2は、吸着材Sに気相状態の冷媒を吸着させることによって冷媒を蒸発させて冷凍能力を発揮させると共に、加熱されることによって吸着材Sから吸着していた冷媒を脱離させ、脱離させた冷媒を凝縮させる際に生ずる凝縮熱を放熱する熱駆動式冷凍機である。
【0041】
本実施形態の吸着式冷凍機2は、2つの吸着器21、凝縮器22、蒸発器23等を有して構成されている。以下、説明の便宜のため、2つの吸着器21のうち図1中左側に示す吸着器を第1吸着器21aといい、図1中右側に示す吸着器を第2吸着器21bという。
【0042】
第1吸着器21aは、その内部を略真空とした断熱容器内に第1吸着コア24aを収容(封入)して、第1吸着コア24aの周囲に冷媒(本実施形態では水を採用)を流通可能に構成したものである。第1吸着コア24aは、吸着材Sと吸着材Sを加熱する加熱用熱媒体あるいは吸着材Sを冷却する冷却用熱媒体とを熱交換させる熱交換器であって、熱交換器の表面に吸着材Sを接合もしくは接触して構成されている。
【0043】
また、第2吸着器21bの基本構成は、第1吸着器21aと同様である。従って、第2吸着器21bの断熱容器の内部には、第1吸着コア24aと同様の構成の第2吸着コア24bが収容(封入)されている。なお、以下、第1吸着コア24aおよび第2吸着コア24bを総称する場合には、単に吸着コア24ともいう。
【0044】
吸着材Sは、気相状態の吸着用冷媒を捕捉(吸着)するともに、加熱されることによって吸着した吸着用冷媒を解離(脱離)する捕捉材を構成している。本実施形態では、吸着材Sとして、例えば、骨格が酸化アルミニウム、リン酸、酸化珪酸からなるものや、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、活性炭を採用することができる。
【0045】
ここで、第1、第2吸着コア24a、24bは、冷却用熱媒体を供給可能に構成されると共に、温水経路30を介して、加熱用熱媒体としての温水が供給可能に構成されている。本実施形態では、加熱用熱媒体として前述の排熱回収熱交換器31にて生成した温水を利用し、冷却用熱媒体として改質対象流体の1つである燃料電池ユニット1の気化器111に供給する水を利用している。このため、加熱用熱媒体である温水が流れる温水経路30および冷却用熱媒体である水が流れる水供給経路13にて熱媒体経路が構成されている。
【0046】
具体的には、熱媒体経路を構成する温水経路30および水供給経路13には、第1、第2吸着コア24a、24bの熱媒体流れ上流側および下流側に第1吸着コア24aおよび第2吸着コア24bに供給する熱媒体の流れを切り換えるための第1、第2四方弁25a、25bが配置されている。
【0047】
第1、第2四方弁25a、25bそれぞれが図1の実線位置に設定されると、第1吸着コア24aと水供給経路13とが接続されると共に、第2吸着コア24bと温水経路30とが接続される。これにより、水供給経路13を流れる水が第1吸着コア24aの内部に直接供給されて第1吸着コア24aの表面に接合された吸着材Sが冷却されると共に、温水経路30を流れる温水が第2吸着コア24bの内部に供給されて第2吸着コア24bの外表面に接合された吸着材Sが加熱される。
【0048】
また、第1、第2四方弁25a、25bそれぞれが破線位置に設定されると、第2吸着コア24bと水供給経路13とが接続されると共に、第1吸着コア24aと温水経路30とが接続される。これにより、水供給経路13を流れる冷水が第2吸着コア24aの内部に直接供給されて第2吸着コア24aの外表面に接合された吸着材Sが冷却されると共に、温水経路30を流れる温水が第1吸着コア24aの内部に供給されて第1吸着コア24aの外表面に接合された吸着材Sが加熱される。
【0049】
本実施形態の第1、第2吸着コア24a、24bは、上述のように、温水経路30を流れる温水が供給されることで、吸着コア24に接合された吸着材Sを加熱する構成であるため、第1、第2吸着コア24a、24bのうち温水が供給される吸着コア24が本発明の捕捉材加熱手段を構成している。
【0050】
凝縮器22は、第1、第2吸着コア24a、24bの吸着材Sから脱離した気相状態の吸着用冷媒(以下、脱離冷媒という。)と空気供給経路12を流れる空気(空気予熱器121に導入する前の空気)とを熱交換させることによって、脱離冷媒を凝縮させる凝縮用熱交換器である。
【0051】
ここで、空気予熱器121に導入する前の空気は、凝縮器22において脱離冷媒を凝縮させる際の凝縮熱によって加熱され、水供給経路13を流れる水は、第1、第2吸着コア24a、24bに供給される際に、吸着材Sにて冷媒を吸着する際に生ずる凝縮熱(吸着熱)にて加熱される。このため、本実施形態における凝縮器22および第1、第2吸着コア24a、24bのうち冷水が供給される吸着コア24が本発明の第1供給流体加熱手段を構成している。
【0052】
蒸発器23は、液相状態の吸着用冷媒と外部から導入された冷却対象流体とを熱交換させることによって、吸着用冷媒を蒸発させて、第1、第2吸着コア24a、24bの外表面に接合された吸着材Sに吸着される気相状態の吸着用冷媒(以下、吸着冷媒という。)を発生させる蒸発用熱交換器である。なお、蒸発器23は、吸着用冷媒を蒸発させることで冷凍能力を発揮し、外部から導入された冷却対象流体を冷却する。蒸発器23にて冷却された冷却対象流体は、室内等の冷房用に利用することができる。
【0053】
上述した第1吸着器21a、凝縮器22、および蒸発器23は、第1冷媒回路26によって接続され、第2吸着器21b、凝縮器22、および蒸発器23は、第2冷媒回路27によって接続されている。
【0054】
各冷媒回路26、27には、凝縮器22と各吸着器21a、21bとの間に、各吸着器21a、21b側から凝縮器22側へ脱離冷媒が流れることだけを許容する逆止弁として機能する第1、第2凝縮用水蒸気バルブ26a、27aが配置されている。また、各冷媒回路26、27には、蒸発器23と吸着器21a、21bとの間に、各吸着器21a、21b側から蒸発器23へ吸着冷媒が流れることだけを許容する逆止弁として機能する第1、第2蒸発用水蒸気バルブ26b、27bが配置されている。なお、各水蒸気バルブ26a、26b、27a、27bは、図示しない制御装置によって、その作動が制御されている。
【0055】
さらに、凝縮器22および蒸発器23は、凝縮器22にて凝縮した吸着用冷媒を蒸発器23へ戻す冷媒戻し回路28によって接続されている。この冷媒戻し回路28には、冷媒戻し回路28を開閉する電磁弁である冷媒戻し用バルブ29が配置されている。
【0056】
冷媒戻し用バルブ29は、図示しない制御装置によって、その作動が制御されており、制御装置が冷媒戻し用バルブ29を所定時間間隔で開閉させることによって、凝縮器22で凝縮した吸着用冷媒が蒸発器23へ戻されるようになっている。
【0057】
次に、上記構成における本実施形態の冷凍機複合型燃料電池システムの作動について説明する。
【0058】
まず、燃料電池ユニット1では、燃料電池10において、燃料極10aに導入された燃料ガス中の水素(および一酸化炭素)と、空気極10bに導入された空気中の酸素(酸化剤ガス)との電気化学反応により電気を発生させる。そして、燃料電池10の燃料極10aから排出される燃料極側排ガスと空気極10bから排出される空気極側排ガスを燃焼器14にて燃焼させる。この燃焼器14にて生じた高温の燃焼排ガスは、燃焼排ガス経路15を介して排出される。
【0059】
ここで、燃焼排ガス経路15は、改質器112、気化器111、空気予熱器121、排熱回収熱交換器31を経由しているので、燃焼排ガスの排熱は、改質器112、気化器111、空気予熱器121、排熱回収熱交換器31にて有効利用される。なお、燃焼排ガスの排熱によって排熱回収熱交換器31で加熱された温水は、温水経路30を介して吸着式冷凍機2の吸着コア24に供給され、吸着材Sから吸着用冷媒を脱利させる脱離工程時の熱源として利用される。
【0060】
次に、吸着式冷凍機2は、燃料電池ユニット1の作動時に、第1吸着器21aを内部の吸着材Sで冷媒を吸着する吸着工程とし、第2吸着器21bを内部の吸着材Sに吸着された冷媒を脱離する脱離工程とする第1運転モードと、第1吸着器21aを吸着工程とし、第2吸着器21bを脱離工程とする第2運転モードとを所定時間毎に切り換えて作動する。
【0061】
具体的には、第1運転モード時には、第1、第2四方弁25a、25bが図1の実線位置に設定される。そして、第1凝縮用水蒸気バルブ26aを閉じ、かつ、第2凝縮用水蒸気バルブ27aを開き、さらに、第1蒸発用水蒸気バルブ26bを開き、かつ、第2蒸発用水蒸気バルブ27bを閉じる。
【0062】
この状態で、水供給経路13を流れる水は、第1四方弁25a(実線)→第1吸着コア24a→第2四方弁25b(実線)→気化器111の順に流れる(図1中の水供給経路13近傍の太実線矢印参照)。
【0063】
これにより、蒸発器23にて蒸発した吸着用冷媒が、第1冷媒回路26を介して第1吸着器21aに流入し、第1吸着器21a内の吸着材Sに吸着される。そして、水供給経路13から第1吸着コア24aに供給された水により吸着材Sが冷却されて吸着材Sの温度が吸着器外部の雰囲気温度程度に保たれる。
【0064】
この際、水供給経路13内を流れる水は、吸着材Sが吸着冷媒を吸着する際に生ずる凝縮熱(吸着熱)により加熱されて昇温し、当該昇温した水が燃料電池ユニット1の気化器111に導入される。
【0065】
また、温水経路30を流れる温水は、水ポンプ32→排熱回収熱交換器31→第1四方弁25a(実線)→第2吸着コア24b→第2四方弁25b(実線)→水ポンプ32の順に流れる(図1中の温水経路30近傍の白抜実線矢印参照)。
【0066】
これにより、第2吸着器21bでは、第2吸着コア24bに温水経路30の温水が供給されるので、第2吸着コア24bの外表面に接合された吸着材Sが加熱され、吸着材Sに吸着している吸着冷媒を脱離する。そして、第2吸着器21b内の吸着材Sから脱離した脱離冷媒は、第2冷媒回路27を介して凝縮器22に流入し、凝縮器22にて空気供給経路12を流れる空気(空気予熱器121に導入される前の空気)により冷却されて凝縮する。
【0067】
この際、空気供給経路12を流れる空気は、凝縮器22にて脱離冷媒を凝縮する際に小ずる凝縮熱により加熱されて昇温し、当該昇温した空気が空気予熱器121に導入されて燃焼排ガスの高温により加熱された後に空気極10bに導入される。
【0068】
一方、第2運転モード時には、第1、第2四方弁25a、25bが図1の破線位置(図1の破線位置)に設定される。そして、第1凝縮用水蒸気バルブ26aを開き、かつ、第2凝縮用水蒸気バルブ27aを閉じ、さらに、第1蒸発用水蒸気バルブ26bを閉じ、かつ、第2蒸発用水蒸気バルブ27bを開く。
【0069】
この状態で、水供給経路13を流れる水は、第1四方弁25a(破線)→第2吸着コア24b→第2四方弁25b(破線)→気化器111の順に流れる(図1中の水供給経路13近傍の太破線矢印参照)。
【0070】
これにより、蒸発器23にて蒸発した吸着用冷媒が、第2冷媒回路27を介して第2吸着器21bに流入し、第2吸着器21b内の吸着材Sに吸着される。そして、水供給経路13から第2吸着コア24bに供給された冷水により吸着材Sが冷却されて吸着材Sの温度が吸着器外部の雰囲気温度程度に保たれる。
【0071】
この際、水供給経路13内を流れる水は、吸着材Sが吸着冷媒を吸着する際に生ずる凝縮熱により加熱されて昇温し、当該昇温した水が気化器111に導入される。
【0072】
また、温水経路30を流れる水は、水ポンプ32→排熱回収熱交換器31→第1四方弁25a(破線)→第1吸着コア24a→第2四方弁25b(破線)→水ポンプ32の順に流れる(図1中の温水経路30近傍の白抜破線矢印参照)。
【0073】
これにより、第1吸着器21aでは、第1吸着コア24aに温水経路30の温水が供給されるので、第1吸着コア24aの外表面に接合された吸着材Sが加熱され、吸着材Sが吸着している吸着冷媒を脱離する。そして、第1吸着器21a内の吸着材Sから脱離した脱離冷媒は、第1冷媒回路26を介して凝縮器22に流入し、凝縮器22にて空気供給経路12を流れる空気(空気予熱器121に導入される前の空気)により冷却されて凝縮する。
【0074】
この際、空気供給経路12を流れる空気は、凝縮器22にて脱離冷媒を凝縮する際に生ずる凝縮熱により加熱されて昇温し、当該昇温した空気が、空気予熱器121に導入されて燃焼排ガスの高温により加熱された後に空気極10bに導入される。
【0075】
以上説明した本実施形態の構成によれば、高温の燃焼排ガスを排出する燃焼排ガス経路15を改質器112、気化器111、空気予熱器121、排熱回収熱交換器31を経由するように構成している。これにより、燃料電池ユニット1からの排熱である燃焼排ガスの熱を、燃料電池ユニット1の各種加熱対象機器111、112、121、および排熱回収熱交換器31を加熱する熱源として有効利用することができる。
【0076】
さらに、本実施形態では、水供給経路13を流れる水(気化器111に導入する前の水)を吸着工程時の吸着材Sを冷却する冷却用熱媒体とし、空気供給経路12を流れる空気(空気予熱器121に導入する前の空気)にて凝縮器22の脱離冷媒を冷却する構成としている。
【0077】
このため、吸着工程時の吸着材Sに生ずる凝縮熱(吸着熱)により、気化器111に導入する水を加熱することができると共に、凝縮器22における凝縮熱により空気予熱器121に導入する空気を加熱することができる。すなわち、吸着工程時の吸着材Sにて生ずる凝縮熱や凝縮器22における凝縮熱といった吸着式冷凍機2の排熱を、燃料電池ユニット1の気化器111に導入する水を加熱する熱源および空気予熱器121に導入する空気を加熱する熱源として有効利用することができる。
【0078】
これによれば、吸着式冷凍機2の排熱を燃料電池ユニット1燃料電池10の作動に必要とされる熱量を低減することができる。さらに、吸着式冷凍機2で利用可能な燃料電池ユニット1の排熱の熱量を増加させることができるので、吸着式冷凍機2の能力向上を図ることができ、吸着式冷凍機2の排熱を有効利用することが可能となる。
【0079】
従って、本実施形態の構成によれば、燃料電池ユニット1と吸着式冷凍機2とを複合した冷凍機複合型燃料電池システムにおいて、システム全体における排熱を充分に有効利用することが可能となる。
【0080】
また、本実施形態では、燃料電池ユニット1の水供給経路13を流れる水を吸着コア24に供給し、吸着式冷凍機2の吸着器21内の吸着材Sを冷却する構成としているので、吸着式冷凍機2の構成として冷却用熱媒体を供給する供給手段(例えば、ポンプ)を省略することができる。
【0081】
さらに、燃料電池ユニット1の空気供給経路12を流れる空気を吸着式冷凍機2の凝縮器22内の脱離冷媒を冷却する構成としているので、吸着式冷凍機2の構成として凝縮器22を冷却するための手段(例えば、送風機)を省略することができる。
【0082】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図2に基づいて説明する。ここで、図2は、第2実施形態に係る冷凍機複合型燃料電池システムの全体構成図である。
【0083】
第1実施形態では、空気供給経路12を流れる空気と凝縮器22内の脱離冷媒とを熱交換させる構成としているのに対して、本実施形態では、改質対象流体の1つである気化器111に導入する前の水と凝縮器22内の脱離冷媒とを熱交換させる構成としている。
【0084】
本実施形態の水供給経路13は、吸着器21を経由する第1経路13aと凝縮器22を経由する第2経路13bとを有して構成されている。具体的には、水供給経路13は、第1四方弁25aの上流側で第1経路13aと第2経路13bといった2つの経路に分岐し、分岐した2つの経路を第2四方弁25bと気化器111の間で合流している。
【0085】
水供給経路13のうち第1経路13aには、上流側から順に、分岐部13c、第1四方弁25a、吸着器21、第2四方弁25b、合流部13dに接続されている。そして、第1経路13aを流れる水は、第1実施形態と同様に、吸着式冷凍機2の吸着工程時の吸着材Sの凝縮熱により加熱される。
【0086】
一方、水供給経路13の第2経路13bには、上流側から順に、分岐部13c、凝縮器22、合流部13dに接続されている。そして、第2経路13bを流れる水は、凝縮器22を冷却する冷却水として作用させている。このため、第2経路13bを流れる水は、凝縮器22にて脱離冷媒を凝縮した際に生ずる凝縮熱により加熱される。なお、本実施形態の凝縮器22は、吸着用冷媒と液体(水)とが熱交換可能なように水−水熱交換器にて構成されている。
【0087】
水供給経路13の合流部13dでは、吸着コア24にて加熱された水と凝縮器22にて加熱された水とが混合される。そして、合流部13dにて混合された水が気化器111に導入される。
【0088】
本実施形態の構成によれば、吸着工程時に吸着材Sにて生ずる凝縮熱(吸着熱)および凝縮器22にて脱離冷媒を凝縮した際に生ずる凝縮熱により、気化器111に導入する水を加熱することができる。すなわち、吸着工程時の吸着材Sにて生ずる凝縮熱や凝縮器22における凝縮熱といった吸着式冷凍機1の排熱を、燃料電池ユニット1の気化器111に導入する水を加熱する熱源として有効利用することができる。
【0089】
これにより、気化器111における燃料電池ユニット1の排熱の使用量(熱量)を低減することができる。これに伴い、吸着式冷凍機2で利用可能な燃料電池ユニット1の排熱の熱量が増加するので、吸着式冷凍機2の能力向上を図ることができ、吸着式冷凍機2の排熱を有効利用することが可能となる。
【0090】
ここで、燃料電池10にて使用される空気の流量が少なく、気化器111にて使用される水量が多い場合には、空気予熱器121にける燃料電池ユニット1の排熱の使用量が少ないものの、気化器111における燃料電池ユニット1の排熱の使用量が増加する。
【0091】
この場合、本実施形態の構成の如く、気化器111にて導入する前の水を、吸着工程時の吸着材Sにて生ずる凝縮熱に加えて凝縮器22での凝縮熱により加熱する構成とすることで、気化器111における燃料電池ユニット1の排熱の使用量を効果的に減少させることができる。このため、本実施形態の構成は、燃料電池ユニット1の燃料電池10にて使用される空気の流量が少なく、逆に気化器111にて使用される水量が多い場合に特に有効である。
【0092】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図3に基づいて説明する。ここで、図3は、第3実施形態に係る冷凍機複合型燃料電池システムの全体構成図である。
【0093】
上述の第2実施形態では、水供給経路13を、吸着器21を経由する第1経路13aと凝縮器22を経由する第2経路13bに分岐させ、各経路13a、13bを水供給経路13における気化器111の上流側にて合流させる構成としている。これに対して、本実施形態では、水供給経路13を2つの経路に分岐させることなく、水供給経路13の水流れ上流側にて凝縮器22を経由させ、その下流側にて吸着工程時の吸着コア24を経由させる構成としている。
【0094】
具体的には、本実施形態の水供給経路13は、上流側から順に、凝縮器22、第1四方弁25a、吸着工程時の吸着コア24、第2四方弁25b、気化器111に接続されている。このため、水供給経路13を流れる水は、凝縮器22において脱離冷媒の凝縮により生ずる凝縮熱で加熱された後、さらに、吸着工程時の吸着材Sにて生ずる凝縮熱(吸着熱)によって加熱される。
【0095】
本実施形態の構成によれば、吸着工程時の吸着材Sにて生ずる凝縮熱(吸着熱)および凝縮器22にて脱離冷媒を凝縮した際に生ずる凝縮熱により、気化器111に導入する水を加熱することができる。従って、本実施形態の構成では、第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0096】
ここで、本実施形態では、水供給経路13を流れる水を凝縮器22→吸着工程時の吸着コアの順に経由させる構成としているが、吸着工程時の吸着コア→凝縮器22の順に経由させる構成としてもよい。
【0097】
但し、水供給経路13を流れる水を凝縮器22→吸着工程時の吸着コア24の順に経由させる構成とする場合には、吸着工程時の吸着コア24→凝縮器22の順に経由させる構成に比べて、以下のように種々利点がある。
【0098】
例えば、先に凝縮器22にて生ずる凝縮熱にて改質対象流体の1つである水(気化器111に導入する前の水)を加熱することで、凝縮器22における脱離冷媒の温度を低下させて効率的に凝縮させることができる。この場合、先ず、吸着工程時の吸着材Sにて冷媒を吸着した際に生ずる凝縮熱(吸着熱)によって水を加熱する構成に比べて、同一の放熱量を確保するための放熱面積を小さくすることができるので、凝縮器22の小型化を図ることが可能となる。
【0099】
ここで、吸着工程時の吸着材Sで生ずる凝縮熱によって水供給経路13を流れる水を加熱する場合、すなわち、吸着材Sを低温の水にて冷却する場合には、水供給経路13を流れる水の温度が低過ぎると、吸着する冷媒が、吸着材Sの吸着孔の開口部で凝縮して吸着孔を塞いでしまうことで、吸着材Sでの吸着量が低下する虞がある。
【0100】
このため、一旦凝縮器22にて加熱された水を吸着コア24に供給し、凝縮器22にて昇温した水にて吸着工程時の吸着材Sを冷却することで、吸着材Sにおける吸着孔の開口部で凝縮して吸着孔を塞いでしまうことを回避することができ、吸着材Sにおける吸着量の低下を抑制することができる。
【0101】
さらに、凝縮器22にて加熱された水(水供給経路13を流れる水)にて吸着工程時の吸着材Sを冷却する場合、低温の水にて当該吸着材Sを冷却するよりも吸着材S周辺の飽和蒸気圧を増加させることができるので、吸着材Sの吸着速度を増加させて効率的に吸着させることが可能となる。
【0102】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図4に基づいて説明する。ここで、図4は、第4実施形態に係る冷凍機複合型燃料電池システムの全体構成図である。
【0103】
第1実施形態では、空気供給経路12を流れる空気と凝縮器22内の脱離冷媒とを熱交換させる構成とし、第2、第3実施形態では、気化器111に導入する前の水と凝縮器22内の脱離冷媒とを熱交換させる構成としている。
【0104】
これに対して、本実施形態では、改質対象流体の1つである燃料供給経路11を流れる燃料(気化器111に導入する前の燃料)と凝縮器22内の脱離冷媒とを熱交換させる構成としている。具体的には、本実施形態の燃料供給経路11は、上流側から順に、凝縮器22→気化器111→改質器112→燃料極10aへと接続されている。
【0105】
このため、第1吸着器21aおよび第2吸着器21bのいずれかに収容された吸着材Sから脱離した脱離冷媒が凝縮器22に流入し、流入した脱離冷媒は、燃料供給経路11を流れる燃料(気化器111に導入される前の燃料)により冷却されて凝縮する。この際、燃料供給経路11を流れる燃料は、凝縮器22にて脱離冷媒を凝縮する際に生ずる凝縮熱により加熱されて昇温する。そして、凝縮器22にて加熱された燃料供給経路11を流れる燃料が、気化器111に導入され燃焼排ガスの高温により加熱された後に、改質器112→燃料極10aへと導入される。
【0106】
本実施形態の構成によれば、改質対象流体の1つである水供給経路13を流れる水(気化器111に導入する前の水)を吸着工程時の吸着材Sを冷却する冷却用熱媒体とし、改質対象流体の1つである燃料供給経路11を流れる燃料(気化器111に導入する前の燃料)にて凝縮器22の脱離冷媒を冷却する構成としている。
【0107】
このため、吸着工程時の吸着材Sにて生ずる凝縮熱により、気化器111に導入する水(改質対象流体)を加熱することができると共に、凝縮器22における凝縮熱により気化器111に導入する燃料(改質対象流体)を加熱することができる。すなわち、吸着工程時の吸着材Sにて生ずる凝縮熱や凝縮器22における凝縮熱といった吸着式冷凍機1の排熱を、燃料電池ユニット1の気化器111に導入する水および燃料を加熱する熱源として有効利用することができる。
【0108】
ここで、気化器111にて使用される水量が少なく、燃料電池10にて使用される燃料の流量が多い場合には、気化器111にて水を気化させる際の燃料電池ユニット1の排熱使用量が少ないものの、気化器111にて燃料を気化させる際の燃料電池ユニット1の排熱使用量が増加する。
【0109】
この場合、本実施形態の構成の如く、気化器111にて導入する前の燃料を、凝縮器22での凝縮熱により加熱する構成とすることで、気化器111にて燃料を気化させる際の燃料電池ユニット1の排熱使用量を効果的に減少させることができる。このため、本実施形態の構成は、燃料電池ユニット1の気化器111にて使用される水量が少なく、燃料電池10にて使用される燃料の流量が多い場合に特に有効である。
【0110】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図5に基づいて説明する。ここで、図5は、第5実施形態に係る冷凍機複合型燃料電池システムの全体構成図である。
【0111】
上述の第1〜第4実施形態では、水供給経路13を流れる水を吸着コア24に直接供給して気化器111に導入する前の水を加熱する構成としている。
【0112】
これに対して、本実施形態では、吸着コア24に吸着材Sを冷却するための冷却水(冷却用熱媒体)を供給し、吸着工程時の吸着材Sに生ずる凝縮熱にて加熱された冷却水と燃料電池ユニット1に供給する供給流体(気化器111に導入する前の水や燃料、空気予熱器121に導入する前の空気)とを熱交換させる構成としている。これにより、燃料電池10の供給流体(水、燃料、空気)を加熱する構成としている。
【0113】
具体的には、本実施形態では、凝縮器22→第1四方弁25a→吸着コア24→第2四方弁25b→凝縮器22へと冷却水を循環させるための冷却水循環経路16が設けられている。
【0114】
この冷却水循環経路16には、冷却水流れ上流側から順に、冷却水を循環させる循環ポンプ161、凝縮器22、吸着コア24、水加熱用熱交換器162、燃料加熱用熱交換器163、空気加熱用熱交換器164、および給湯用熱交換器51が接続されている。なお、給湯用熱交換器51の冷却水出口側と循環ポンプ161の冷却水入口側が接続されている。
【0115】
水加熱用熱交換器162は、冷却水と気化器111に導入する水とを熱交換させ、凝縮器22における凝縮熱および吸着工程時の吸着材Sにて生ずる凝縮熱によって昇温した冷却水を冷却する液−液熱交換器である。このため、気化器111に導入する水は、水加熱用熱交換器162にて冷却水の熱により加熱される。
【0116】
燃料加熱用熱交換器163は、冷却水と気化器111に導入する燃料とを熱交換させ、凝縮器22および吸着コア24にて昇温した冷却水を冷却する液−液熱交換器である。このため、気化器111に導入する燃料は、燃料加熱用熱交換器163にて冷却水の熱により加熱される。
【0117】
なお、本実施形態では、冷却水循環経路16において冷却水流れ上流側に水加熱用熱交換器162を配置し、その下流側に燃料加熱用熱交換器163を配置しているが、これに限定されず、水加熱用熱交換器162の上流側に燃料加熱用熱交換器163を配置する構成としてもよい。
【0118】
空気加熱用熱交換器164は、冷却水と空気予熱器121に導入する空気とを熱交換させ、凝縮器22および吸着コア24にて昇温した冷却水を冷却する気−液熱交換器である。このため、空気予熱器121に導入する空気は、空気加熱用熱交換器164にて冷却水の熱により加熱される。
【0119】
給湯用熱交換器51は、冷却水と給湯水とを熱交換させ、凝縮器22および吸着コア24にて昇温した冷却水を冷却する液−液熱交換器である。このため、給湯水は、空気加熱用熱交換器164にて冷却水の熱により加熱される。なお、給湯水経路50を介して給湯用熱交換器51に供給される。
【0120】
ここで、給湯水経路50には、給湯用熱交換器51の給湯水流れ下流側に、燃焼排ガスと給湯水とを熱交換させる給湯用排熱回収熱交換器52と、給湯用熱交換器51および給湯用排熱回収熱交換器52で加熱された給湯水を貯める貯湯タンク53が配置されている。また、給湯水経路50には、貯湯タンク53内の給湯水を給湯用熱交換器51→給湯用排熱回収熱交換器52→貯湯タンク53へと循環させる循環ポンプ54が配置されている。
【0121】
本実施形態では、冷却水循環経路16を流れる冷却水は、凝縮器22にて脱離冷媒を凝縮させた際に生ずる凝縮熱および吸着工程時の吸着材Sで生ずる凝縮熱により加熱されて昇温する。そして、昇温した冷却水は、水加熱用熱交換器162、燃料加熱用熱交換器163、空気加熱用熱交換器164、および給湯用熱交換器51にて冷却される。
【0122】
この際、気化器111に導入する水、気化器111に導入する燃料、空気予熱器121に導入する空気、および給湯水は、冷却水の熱により加熱される。なお、本実施形態では、水加熱用熱交換器162、燃料加熱用熱交換器163、空気加熱用熱交換器164が、本発明の第1供給流体加熱手段を構成している。また、冷却水循環経路16を流れる冷却水が、本発明の加熱媒体に相当している。
【0123】
本実施形態の構成では、凝縮器22および吸着コア24に供給した冷却水を介して、気化器111に導入する水や燃料、空気予熱器121に導入する空気、および給湯水を間接的に加熱している。
【0124】
これにより、吸着工程時の吸着材Sで生ずる凝縮熱や凝縮器22における凝縮熱といった吸着式冷凍機1の排熱を、冷却水を介して間接的に燃料電池ユニット1に供給する水、燃料、および空気を加熱する熱源として有効利用することができる。
【0125】
また、本実施形態では、各加熱用熱交換器162〜164にて冷却水の熱を充分に放熱させることが困難な場合であっても、給湯水経路50内を流れる給湯水の水量を増大させることで、給湯用熱交換器51にて冷却水循環経路16を流れる冷却水の熱を充分に放熱させることができるので、凝縮器22における放熱量を確保することができる。
【0126】
また、本実施形態では、給湯水経路50に給湯用排熱回収熱交換器52を設けているので、凝縮器22における凝縮熱に加えて、燃焼排ガスの高温にて給湯水を加熱することができる。なお、本実施形態のように、給湯用排熱回収熱交換器52を給湯水経路50に配置し、給湯水と燃焼排ガスとを熱交換させる構成は、第1〜第4実施形態にて説明したシステムに適用してもよい。
【0127】
また、本実施形態の水加熱用熱交換器162、燃料加熱用熱交換器163、空気加熱用熱交換器164、および給湯用熱交換器51では、各熱交換器162〜164、51を流れる流体の流れ方向が、冷却水の流れ方向と同じ方向としているが、これに限定されない。例えば、各熱交換器162〜164、51を流れる流体の流れ方向と冷却水の流れ方向とを対向方向(対向流)となるようにしてもよい。この場合、各熱交換器162〜164、51を流れる流体と冷却水との温度差を確保して熱交換効率を向上させることができる。
【0128】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0129】
(1)上述の各実施形態では、熱駆動式冷凍機として吸着式冷凍機2を例に挙げて説明したが、熱駆動式冷凍機として吸収式冷凍機を採用する構成としてもよい。
【0130】
ここで、吸収式冷凍機は、冷媒を蒸発させる蒸発器、蒸発器にて蒸発させた冷媒を吸収(捕捉)する吸収液(臭化リチウム溶液等)が封入された吸収器、加熱することで吸収液中に吸収された冷媒を分離(解離)させる再生器、再生器にて分離した冷媒を凝縮させる凝縮器等を備えている。なお、吸収式冷凍機における吸収液は、冷媒を捕捉すると共に、加熱されることにより冷媒を解離する捕捉材に相当する。
【0131】
このため、吸収式冷凍機を熱駆動式冷凍機として採用する場合には、燃料電池10の排熱を再生器にて吸収液から冷媒を分離する際の熱源に利用すると共に、凝縮器22にて冷媒を凝縮させる際に生ずる凝縮熱を、燃料電池ユニット1に供給する供給流体を加熱する熱源として利用すればよい。
【0132】
これによれば、燃料電池10の排熱および吸収式冷凍機の排熱(凝縮器における凝縮熱)を、燃料電池ユニット1および吸収式冷凍機の相互で有効利用することができる。従って、燃料電池ユニット1と吸収式冷凍機とを複合した冷凍機複合型システムにおいて、システム全体での排熱を充分に有効利用することができる。
【0133】
(2)上述の各実施形態では、燃料電池10として固体電解型燃料電池(SOFC)を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、燃料電池10として燃料極10aと空気極10bとで電解質膜を狭持してなる膜電極接合体(MEA)を有する固体高分子型燃料電池(PEFC)を採用してもよい。
【0134】
(3)上述の各実施形態では、燃料電池10の排熱を利用して、水や燃料(改質対象流体)および空気といった燃料電池10に供給する供給媒体を加熱する構成としているが、これに限定されない。例えば、供給媒体を加熱する加熱装置を別途用意して、当該加熱装置にて供給媒体を加熱する構成としてもよい。
【0135】
(4)上述の各実施形態では、2つの吸着器21を備える吸着式冷凍機2について説明したが、吸着器21の数はこれに限定されず、吸着器21を1つ或いは3つ以上設ける構成としてもよい。
【0136】
(5)上述の第1〜第4実施形態では、吸着式冷凍機2の吸着材Sを冷却する冷却用熱媒体として、水供給経路13を流れる水(気化器111に導入する前の水)を用いているが、これに限定されない。例えば、吸着式冷凍機2の吸着材Sを冷却する冷却用熱媒体として、燃料電池ユニット1に供給する供給流体の1つである燃料供給経路11を流れる燃料(気化器111に導入する前の燃料)等を用いてもよい。この場合、熱媒体経路において、冷却用熱媒体と加熱用熱媒体との混合による不具合を防ぐために、加熱用熱媒体として冷却用熱媒体と同様の燃料を採用した方が好ましい。
【符号の説明】
【0137】
1 燃料電池ユニット
10 燃料電池
112 改質器
15 燃焼排ガス経路(第2供給流体加熱手段)
162 水加熱用熱交換器
163 燃料加熱用熱交換器
164 空気加熱用熱交換器
2 吸着式冷凍機(熱駆動式冷凍機)
21 吸着器
22 凝縮器(第1供給流体加熱手段)
24 吸着コア(捕捉材加熱手段、第1供給流体加熱手段)
S 吸着材(捕捉材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されることによって改質対象流体を改質して、少なくとも水素を含む燃料ガスを生成する改質器(112)、および前記燃料ガスと酸化剤ガスとを電気化学反応させることによって電気エネルギを発生する燃料電池(10)を有する燃料電池ユニット(1)と、
冷媒を捕捉材に捕捉させることによって前記冷媒を蒸発させて冷凍能力を発揮すると共に、加熱されることによって前記捕捉材に捕捉していた前記冷媒を解離させ、解離させた前記冷媒を凝縮させる際に生ずる凝縮熱を放熱する熱駆動式冷凍機とを備える冷凍機複合型燃料電池システムであって、
前記捕捉材を前記燃料電池(10)の排熱にて加熱する捕捉材加熱手段(24)と、
前記改質対象流体および前記酸化剤ガスといった燃料電池ユニット(1)に供給する供給流体のうち少なくとも1つを前記熱駆動式冷凍機にて生ずる凝縮熱にて加熱する第1供給流体加熱手段(22、24、162〜164)と、
を備えることを特徴とする冷凍機複合型燃料電池システム。
【請求項2】
さらに、前記供給流体を前記燃料電池(10)の排熱にて加熱する第2供給流体加熱手段(15)を備えることを特徴とする請求項1に記載の冷凍機複合型燃料電池システム。
【請求項3】
前記第1供給流体加熱手段(22、24、162〜164)では、前記供給流体と前記凝縮熱によって加熱された加熱媒体とを熱交換させることによって、前記供給流体を加熱することを特徴とする請求項1または2に記載の冷凍機複合型燃料電池システム。
【請求項4】
前記熱駆動式冷凍機は、前記捕捉材として前記冷媒を吸着すると共に加熱されることによって吸着した前記冷媒を脱離する吸着材(S)、前記吸着材(S)が封入された吸着器(21)、および前記吸着材(S)から脱離した前記冷媒を凝縮させるための凝縮器(22)を有する吸着式冷凍機(2)で構成され、
前記第1供給流体加熱手段(22、24、162〜164)は、前記供給流体のうち少なくとも1つを前記凝縮器(22)で冷媒が凝縮する際の凝縮熱にて加熱することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の冷凍機複合型燃料電池システム。
【請求項5】
さらに、前記第1供給流体加熱手段(22、24、162〜164)では、前記供給流体のうち少なくとも1つを前記吸着材(S)で前記冷媒を吸着した際に生ずる吸着熱にて加熱することを特徴とする請求項4に記載の冷凍機複合型燃料電池システム。
【請求項6】
前記第1供給流体加熱手段(22、24、162〜164)では、前記凝縮器(22)における凝縮熱にて加熱した前記改質対象流体を、前記吸着材(S)における吸着熱にて加熱するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の冷凍機複合型燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−153758(P2011−153758A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15295(P2010−15295)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】