説明

冷却ユニット及びこれを用いた焼却システム

【課題】 燃焼ガスを冷却液と接触させることなく効率的に冷却することができる耐久性に優れた冷却ユニットおよび焼却システムの提供を目的としている。
【解決手段】 本発明の冷却ユニット10は、焼却炉2からの燃焼ガスが流入する流入口34と、この燃焼ガスを排気するための排気口32とを有する本体37と、本体37内で上下方向に沿って互いに略平行に延び、流入口34を通じて流入する燃焼ガスを排気口32へと導く複数の送気管30A,30Bとを備え、本体37内には、燃焼ガスを冷却する冷却液を送気管30A,30Bの周囲に満たすための空間Sが形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却炉からの燃焼ガスを冷却するための新規な冷却ユニット、および、そのような冷却ユニットを有する焼却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、焼却炉を有する焼却システムにおいて、焼却炉からの燃焼ガス(廃ガス)は、冷却装置や集塵装置等の各種装置を通じて冷却および清浄化された後、大気中に放出される。大気中に放出される際のガスの温度は法的にも規制されているため、限られた設置スペース内で燃焼ガスを効果的に冷却できるように、従来から様々な冷却装置が開発されてきた。例えば、焼却炉からの燃焼ガスを冷却室内に導き、この冷却室内で燃焼ガスに冷却水を噴射する冷却装置が知られている(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開平9−60853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、燃焼ガスに対して直接に冷却水を噴き付ける前記冷却装置では、燃焼ガスが水と直接に接触して反応を起こし、硫酸が生成される。この硫酸は、冷却装置を構成する金属を腐食させ、冷却装置の寿命を短くする。
【0004】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、燃焼ガスを冷却液と接触させることなく効率的に冷却することができる耐久性に優れた冷却ユニットおよび焼却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された冷却ユニットは、焼却炉からの燃焼ガスが流入する流入口と、この燃焼ガスを排気するための排気口とを有する本体と、前記本体内で上下方向に沿って互いに略平行に延び、前記流入口を通じて流入する燃焼ガスを前記排気口へと導く複数の送気管とを備え、前記本体内には、燃焼ガスを冷却する冷却液を前記送気管の周囲に満たすための空間が形成されていることを特徴とする。
【0006】
この請求項1に記載された冷却ユニットによれば、燃焼ガスは、送気管内を通じて搬送され、送気管によって冷却液から隔離される。そのため、燃焼ガスが冷却液と直接に接触して反応を起こし、硫酸が生成されることが防止される。その結果、冷却ユニットが硫酸に侵されるといった事態を回避でき、冷却ユニットの耐久性が向上する(寿命が長くなる)。
【0007】
また、請求項1に記載された冷却ユニットによれば、燃焼ガスを搬送する送気管が複数設けられ、その周囲が冷却液によって満たされているため、燃焼ガスを効率的に冷却することができる。
【0008】
また、請求項1に記載された冷却ユニットによれば、送気管が上下方向に沿って互いに略平行に延びているため、冷却ユニット内で送気管が平面的に占める面積を小さくでき、ひいては、冷却ユニットの設置面積を小さくすることが可能になる。また、設置スペースが小さいため、燃焼システム中にコンパクトに組み込むことができるとともに、トレーラ等による搬送も容易になる。
【0009】
また、請求項1に記載された冷却ユニットは、焼却炉からの燃焼ガスが流入する流入口と、この燃焼ガスを排気するための排気口とを有しているため、燃焼システムにおける燃焼ガス供給管路中に規模に応じた必要数だけ組み込むことができる。したがって、使い勝手が非常に良い。
【0010】
また、請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記送気管は、前記流入口から下方に向けて燃焼ガスを導く複数の第1の送気管と、前記排気口へと上方に向けて燃焼ガスを導く複数の第2の送気管とから成ることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載された冷却ユニットによれば、請求項1に記載された冷却ユニットと同様の作用効果が得られるとともに、第1および第2の送気管によって燃焼ガスを上下2方向の長い距離にわたって搬送するため、限られたスペースで冷却面積(送気管の表面積)を大きく確保でき、冷却効率を大幅に高めることができる。
【0012】
また、請求項3に記載された発明は、請求項1または請求項2に記載された発明において、前記本体の下部に設けられ、前記送気管を通じて流れる燃焼ガス中の灰塵を収集するための集塵部を有していることを特徴とする。
【0013】
この請求項3に記載された冷却ユニットによれば、請求項1または請求項2に記載された冷却ユニットと同様の作用効果が得られるとともに、上下に延びる送気管の下方に集塵部が設けられているため、送気管を流れる燃焼ガス中の灰塵を重力の作用によって集塵部内に容易に落下させることができ、簡単な構成で集塵効率を高めることができるとともに、送気管のメンテナンスの手間を大幅に削減することができる。
【0014】
また、請求項4に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記本体の下部に設けられ且つ前記送気管を通じて流れる燃焼ガス中の灰塵を収集するための集塵部を有し、前記送気管は、前記流入口から前記集塵部に向けて燃焼ガスを下方に導く複数の第1の送気管と、前記集塵部から前記排気口に向けて燃焼ガスを上方に導く複数の第2の送気管とから成ることを特徴とする。
【0015】
この請求項4に記載された冷却ユニットによれば、請求項2および請求項3に記載された冷却ユニットと同様の作用効果が得られる。
【0016】
また、請求項5に記載された発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された発明において、前記冷却液が前記空間を通じて循環されることを特徴とする。
【0017】
この請求項5に記載された冷却ユニットによれば、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された冷却ユニットと同様の作用効果が得られるとともに、冷却液が循環するため、熱移動を促進させて、冷却効率を高めることができる。
【0018】
また、請求項6に記載された焼却システムは、各種の雑芥が内部で焼却される焼却炉と、前記焼却に伴って前記焼却炉から排出される燃焼ガスを大気中に吐き出すための吐出部と、前記焼却炉からの燃焼ガスを前記吐出部へと供給する供給管とを備え、前記供給管の途中には、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の冷却ユニットが少なくとも1つ介挿され、この冷却ユニットの前記流入口および前記排気口に対して前記供給管の途中部位が接続されて成ることを特徴とする。
【0019】
この請求項6に記載された焼却システムによれば、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載された冷却ユニットと同様の作用効果を奏しつつ、その規模に応じて冷却ユニットを増減できるため、状況に応じたシステムの変更が容易になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、燃焼ガスを冷却液と接触させることなく効率的に冷却することができる耐久性に優れた冷却ユニットおよび焼却システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。
【0022】
図1には、本発明の一実施形態に係る焼却システム1が示されている。図示のように、本実施形態の焼却システム1は、各種の雑芥が内部で焼却される焼却炉2と、前記焼却に伴って焼却炉2から排出される燃焼ガスを冷却する例えばサイクロン型の一次冷却装置4と、燃焼ガスを大気中に吐き出すための吐出部16と、一次冷却装置4から吐き出される一次冷却された燃焼ガスを吐出部16へと供給する供給管8とを備えている。この場合、吐出部16は、供給管8の端部に接続された排煙筒14によって形成されている。また、焼却炉2には蒸気を排気するための蒸気排気筒12が設けられている。また、一次冷却装置4には、これに冷却液(例えば冷却水)を供給するための冷却液タンク6が接続されている。
【0023】
供給管8の途中には、少なくとも1つ(本実施形態では、例えば2つ)の冷却ユニット10と、集塵装置20と、ブロワ22とが介挿されている。また、ブロワ22の下流側には、CO測定装置18が設置されている。
【0024】
冷却ユニット10は、供給管8の途中部位に着脱自在に取り付けられており、供給管8が接続される流入口34および排気口32を有している。具体的には、冷却ユニット10は、図2〜図4に明確に示されるように、焼却炉2(本実施形態では、一次冷却装置4)からの燃焼ガスが流入する流入口34と燃焼ガスを排気するための排気口32とを有する本体37を備えている。また、本体37の底部には、本体を垂直に支持するための脚部40が設けられている。
【0025】
また、本体37内には、上下方向に沿って互いに略平行に延びる多数の送気管30A,30Bが群を成して配設されている。これらの送気管30A,30Bは、流入口34を通じて流入する燃焼ガスを協働して排気口32へと導く。また、本体37の下部には、送気管30A,30Bを通じて流れる燃焼ガス中の灰塵を収集するための集塵部49が設けられている。特に本実施形態においては、複数の第1の送気管30Aが流入口34から集塵部49に向けて燃焼ガスを下方に導き(流入口34から下方に向けて燃焼ガスを導き)、複数の第2の送気管30Bが集塵部49から排気口32に向けて燃焼ガスを上方に導く(排気口32へと上方に向けて燃焼ガスを導く)。なお、複数の第1の送気管30Aは、第1の支持体50Aによって一体的に支持され、複数の第2の送気管30Bは、第2の支持体50Aによって一体的に支持されている。
【0026】
また、図4に明確に示されるように、本体37内には、燃焼ガスを冷却する冷却液を送気管30A,30Bの周囲に満たすための空間Sが形成されている。空間Sには、冷却液タンク6から冷却液が供給され、周知の手段により冷却液が空間Sを通じて循環されるようになっている。なお、図中、35は、送気管30A,30Bの途中、流入口34、排気口32、集塵部49にそれぞれ対応して設けられた点検口35であり、37は、空間Sから冷却液を吐き出すためのドレンである。
【0027】
次に、上記構成の焼却システム1における燃焼ガスの流れについて説明する。
【0028】
まず、焼却炉2から排出された燃焼ガスは、ブロワ22の作用により、図1に矢印で示されるように、一次冷却装置4を通って、供給管8へと導かれる。供給管8を通じて流れる燃焼ガスは、その後、冷却ユニット10の第1の送気管30Aを下方に流れた後、第2の送気管30Bを上方に流れる。この上下方向の流れは、冷却ユニット10の数に応じて繰り返される。また、冷却ユニット10の排気口32から排出された燃焼ガスは、集塵装置20によって清浄された後、吐出部16から大気中に放出される。そして、このような流れにより、800℃を超える焼却炉2からの燃焼ガスは、一次冷却装置4により例えば300〜400℃まで冷却され、冷却ユニット10により更に効果的に冷却されて、例えば250℃以下の温度で大気中に放出される。
【0029】
以上説明したように、本実施形態において、冷却ユニット10は、焼却炉2からの燃焼ガスが流入する流入口34と、この燃焼ガスを排気するための排気口32とを有する本体37と、本体37内で上下方向に沿って互いに略平行に延び且つ流入口34を通じて流入する燃焼ガスを排気口34へと導く複数の送気管30A,30Bとを備え、本体37内には、燃焼ガスを冷却する冷却液を送気管30A,30Bの周囲に満たすための空間Sが形成されている。したがって、このような構成では、燃焼ガスは、送気管30A,30B内を通じて搬送され、送気管30A,30Bによって冷却液から隔離される。そのため、燃焼ガスが冷却液と直接に接触して反応を起こし、硫酸が生成されることが防止される。その結果、冷却ユニット10が硫酸に侵されるといった事態を回避でき、冷却ユニット10の耐久性が向上する(寿命が長くなる)。
【0030】
また、本実施形態の冷却ユニット10によれば、燃焼ガスを搬送する送気管30A,30Bが複数設けられ、その周囲が冷却液によって満たされているため、燃焼ガスを効率的に冷却することができる。
【0031】
また、本実施形態の冷却ユニット10によれば、送気管30A,30Bが上下方向に沿って互いに略平行に延びているため、冷却ユニット10内で送気管30A,30Bが平面的に占める面積を小さくでき、ひいては、冷却ユニット10の設置面積を小さくすることが可能になる。また、設置スペースが小さいため、燃焼システム1中にコンパクトに組み込むことができるとともに、トレーラ等による搬送も容易になる。
【0032】
また、本実施形態の冷却ユニット10は、焼却炉2からの燃焼ガスが流入する流入口34と、この燃焼ガスを排気するための排気口32とを有しているため、燃焼システム1における燃焼ガス供給管路8中に規模に応じた必要数だけ組み込むことができる。したがって、使い勝手が非常に良い。
【0033】
また、本実施形態の冷却ユニット10において、送気管は、流入口34から下方に向けて燃焼ガスを導く複数の第1の送気管30Aと、排気口32へと上方に向けて燃焼ガスを導く複数の第2の送気管30Bとから成る。このように、第1および第2の送気管30A,30Bによって燃焼ガスを上下2方向の長い距離にわたって搬送すると、限られたスペースで冷却面積(送気管の表面積)を大きく確保でき、冷却効率を大幅に高めることができる。
【0034】
また、本実施形態の冷却ユニット10は、本体37の下部に設けられ且つ送気管30A,30Bを通じて流れる燃焼ガス中の灰塵を収集するための集塵部49を有している。このように上下に延びる送気管30A,30Bの下方に集塵部49が設けられていると、送気管30A,30Bを流れる燃焼ガス中の灰塵を重力の作用によって集塵部49内に容易に落下させることができ、簡単な構成で集塵効率を高めることができるとともに、送気管30A,30Bのメンテナンスの手間を大幅に削減することができる。
【0035】
また、本実施形態の冷却ユニット10では、冷却液が空間Sを通じて循環されるようになっている。そのため、熱移動を促進させて、冷却効率を高めることができる。
【0036】
また、本実施形態の冷却ユニット10によれば、熱の利用効率が向上する(熱の回収率が高い)。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、焼却炉からの燃焼ガスを冷却して大気中に放出させる全ての焼却システム(排煙システム)に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃焼システムの概略構成図である。
【図2】図1の燃焼システムに設けられる冷却ユニットの正面図である。
【図3】図2の冷却ユニットの側面図である。
【図4】(a)は図2のA−A線に沿う断面図、(b)は図2のB−B線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 燃焼システム
2 焼却炉
10 冷却ユニット
30A,30B 送気管
32 排気口
34 流入口
37 本体
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉からの燃焼ガスが流入する流入口と、この燃焼ガスを排気するための排気口とを有する本体と、
前記本体内で上下方向に沿って互いに略平行に延び、前記流入口を通じて流入する燃焼ガスを前記排気口へと導く複数の送気管と、
を備え、
前記本体内には、燃焼ガスを冷却する冷却液を前記送気管の周囲に満たすための空間が形成されていることを特徴とする冷却ユニット。
【請求項2】
前記送気管は、前記流入口から下方に向けて燃焼ガスを導く複数の第1の送気管と、前記排気口へと上方に向けて燃焼ガスを導く複数の第2の送気管とから成ることを特徴とする請求項1に記載の冷却ユニット。
【請求項3】
前記本体の下部に設けられ、前記送気管を通じて流れる燃焼ガス中の灰塵を収集するための集塵部を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷却ユニット。
【請求項4】
前記本体の下部に設けられ且つ前記送気管を通じて流れる燃焼ガス中の灰塵を収集するための集塵部を有し、
前記送気管は、前記流入口から前記集塵部に向けて燃焼ガスを下方に導く複数の第1の送気管と、前記集塵部から前記排気口に向けて燃焼ガスを上方に導く複数の第2の送気管とから成ることを特徴とする請求項1に記載の冷却ユニット。
【請求項5】
前記冷却液が前記空間を通じて循環されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の冷却ユニット。
【請求項6】
各種の雑芥が内部で焼却される焼却炉と、
前記焼却に伴って前記焼却炉から排出される燃焼ガスを大気中に吐き出すための吐出部と、
前記焼却炉からの燃焼ガスを前記吐出部へと供給する供給管と、
を備え、
前記供給管の途中には、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の冷却ユニットが少なくとも1つ介挿され、この冷却ユニットの前記流入口および前記排気口に対して前記供給管の途中部位が接続されて成ることを特徴とする焼却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−3066(P2007−3066A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182045(P2005−182045)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(595053375)
【Fターム(参考)】