説明

冷却板の製造方法、冷却板、電子機器の冷却構造

【課題】冷却板における流路の構造に関する設計の自由度を高くして冷却性能を向上でき、更に、冷却板から被冷却体以外との接触部分からの熱交換を防いで本来の熱交換の性能を維持できる技術を提供する。
【解決手段】プレス加工により第一の金属板(2)の接合面側に冷却流路となる溝(20)を設け、第二の金属板(1)を前記第一の金属板の前記溝に蓋をするよう重ね合わせ、前記第二の金属板を前記第一の金属板の前記溝の周囲の平面部にて前記第一の金属板と接合し、前記第一の金属板の前記溝によって接合面の反対側に形成された凸部を収容する凹部を有する樹脂製の補強板(3)に前記第一の金属板を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品や電子機器等の冷却(放熱)の技術に関し、特に、サーバーなどの電子計算機器に搭載される電子回路基板や、FPD(フラットパネルディスプレイ)に搭載されるディスプレイパネル等の冷却に用いる冷却板(コールドプレート)及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高密度に実装された電子基板や高発熱部品の冷却方式として、ファン等の強制的な冷却風による冷却構造(強制空冷方式)が代表的なものとして用いられている。しかしながら、強制空冷方式でも冷却仕様を満足できない場合や、機器の構造上あるいは性質上などの理由から、強制空冷ができない場合もある。このような場合には、冷却板(コールドプレート)のような熱交換器による冷却構造が採用されている。
【0003】
冷却板は、電子回路基板やパネルなどの被冷却体に接触させて用いられ、被冷却体に接触させた冷却板の内部もしくは表面には、配管が埋め込まれている。この配管内には、空気などの気体よりも熱伝導性が高い冷却液が流される。被冷却体からの熱を、上記冷却板と冷却液を介して熱交換する。
【0004】
一般的に冷却板の材質としては、加工性や熱伝導性から、銅やアルミなどの金属材料が採用されており、また、配管についても同じく、銅やアルミ、ステンレスなどのパイプ材などが採用されている。
【0005】
また冷却板の別の特徴として、上述のように金属材料が使われていることから、電子回路基板やFPDなどの被冷却体を補強することも機能の一つであることが多い。
【0006】
上記配管を持つ冷却板に係わる先行技術例として、実開平2−26289号公報(特許文献1)、特開平6−304739号公報(特許文献2)、特開平7−227634号公報(特許文献3)、特開2002−156195号公報(特許文献4)、特開2008−307552号公報(特許文献5)などがある。これらはいずれも、冷却板内に配管を設ける技術である。
【0007】
また、特開2006−336942号公報(特許文献6)には、冷却板において、凹部となる溝を設けた金属板と、凸部を設けた金属板との嵌合により、冷却水の溝を形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平2−26289号公報
【特許文献2】特開平6−304739号公報
【特許文献3】特開平7−227634号公報
【特許文献4】特開2002−156195号公報
【特許文献5】特開2008−307552号公報
【特許文献6】特開2006−336942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記冷却板における配管による冷却液の流路構造では、配管を曲げて流路方向を変更する必要あるが、配管の持つ許容曲げ半径以下では曲げることができない。また、上記の配管は、曲げはできるが、途中で分岐はできない。このため、冷却板において配管を通せる箇所には制限がある。また、配管の内部は均一な流路断面積となっているため、局所的に流量を増やすといった、配管内を流れる冷却液の流量コントロールは難しい。上記のように、冷却板における配管による流路の構造や配置、流量などに制約がある。
【0010】
上記制約から、被冷却体に接触させる冷却板の面において、冷却性能の偏りが生じる。被冷却体側も、例えば回路基板の面において高発熱体のプロセッサ等が配置されている箇所とそうでない箇所とが存在している等、熱の分布に偏りがあることが多い。そのため、上記被冷却体側の構造と冷却板側の構造との組み合わせに応じて、全体的な冷却性能が低くなってしまう場合がある。被冷却体の熱の分布に対応して、冷却板の構造(配管の配置や流量コントロール等)による効率的な冷却ができれば望ましいが、従来はできていない。
【0011】
また、被冷却体と冷却板を搭載する電子機器等においては、前述のように補強性能を持たせる場合などを含め、冷却板を所定の箇所に保持・固定する必要がある。そのために、冷却板には、被冷却体以外の構造部品等と接触(接続)する部分が必要となる。例えば、冷却板に、機器の筐体の所定の箇所(取り付け部)に接触(接続)する部分を要する。しかしその接触部分からも熱交換が行われてしまうため、冷却板の本来の目的である被冷却体の熱交換量(即ち冷却性能)を損なうという欠点があった。
【0012】
なお、前記特許文献6の技術では、金属板に溝を設けるので、配管を設ける必要は無いが、溝を設けるために切削工程などを要し、製造コストが大きいという欠点がある。
【0013】
本発明の主な目的は、冷却板における流路の構造・配置・流量コントロール等に関する設計の自由度を高くすることにより冷却性能を向上できる技術を提供することである。更に、冷却板において被冷却体以外と接触する場合に、冷却板から被冷却体以外(例えば筐体)との接触部分からの熱交換(熱流入出)を防ぐ又は低減することにより、本来の熱交換の性能(冷却性能)を維持又は向上できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、一対の金属板を接合して冷却流路を形成する冷却板の製造方法において、プレス加工により第一の金属板の接合面側に冷却流路となる溝を設け、第二の金属板を前記第一の金属板の前記溝に蓋をするよう重ね合わせ、前記第二の金属板を前記第一の金属板の前記溝の周囲の平面部にて前記第一の金属板と接合し、前記第一の金属板の前記溝によって接合面の反対側に形成された凸部を収容する凹部を有する樹脂製の補強板に前記第一の金属板を固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、冷却板における流路の構造・配置・流量コントロール等に関する設計の自由度を高くすること(特に被冷却体の構造に応じた設計を可能とすること)により冷却性能を向上できる。例えば、流路(冷却液)の位置(有無)、曲げ、分岐、断面積、流量等が、1つの流路構造体内で柔軟に設計可能である。特に、流路の断面積などが調整可能により各流路部での流量コントロール等が可能である。特に、被冷却体における熱の分布などに応じた、冷却板における流量コントロール等による冷却性能の設計が可能である。
【0016】
更に、本発明によれば、冷却板において被冷却体以外と接触する場合に、冷却板から被冷却体以外(例えば筐体)との接触部分からの熱交換(熱流入出)を防ぐ又は低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態の冷却板の分解構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態の冷却板の完成状態の外観、及び内部の流路の構造を透過的に示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態の冷却板の溝板における溝(凹部)の構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態の冷却板、被冷却体、及び製品の筐体における、接続前における各要素の関係を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態の冷却板、被冷却体、及び製品の筐体における、接続後における各要素の関係を示す断面図であり、特に補強板の構造に関する第1の例を示す。
【図6】本発明の一実施の形態の冷却板、被冷却体、及び製品の筐体における、接続後における各要素の関係を示す断面図であり、特に補強板の構造に関する第2の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
図1は本発明の一実施の形態の冷却板100の分解構造を示している。冷却板100は、本実施の形態の冷却板製造方法によって製造される。
【0020】
冷却板100は、熱伝導板1、溝板2、補強板3、流入管61及び流出管62、ろう材7、等から構成される。熱伝導板1と溝板2を接合して成る基板を、流路板4と称する。
【0021】
熱伝導板1は、銅合金などの金属板から成り、被冷却体200の形状に対応して例えば平板である。
【0022】
溝板2は、銅合金などの平らな金属板に対するプレス加工(プレス成形)により、溝20が形成される。溝20の形状等は予め自由に設計が可能となっている。
【0023】
流入管61及び流出管62は、流路板4における流路(溝20)に流す冷却液を冷却板100へ送り込む管部(取り入れ口)及び送り出す管部(吐き出し口)となる。なお冷却板100における溝20(流路)の開口部だけで冷却液の流入及び流出の機能が十分な場合には、流入管61及び流出管62の具備を不要としてもよい。
【0024】
ろう材7は、熱伝導板1、溝板2、流入管61及び流出管62などの要素を接合するための接合部材である。ろう材7は、例えば図示のように、熱伝導板1と溝板2との間において、溝板2の溝20や取り付け用の逃げ穴(非図示)など、熱伝導板1と溝板2とが接触しない部分をくり貫いた形状のシート状のものである。なおこれに限らず例えば接着剤の塗布などで代えてもよい。
【0025】
補強板3は、溝板2よりも低い熱伝導性を有する樹脂製などによる構造体であり、補強機能として、所定の剛性や弾力性を持つ。また、補強板3は、溝板2との接合のために、溝板2の溝20の形状に応じた凹凸形状などを有する。また、補強板3は、被冷却体200及び流路板4や、被冷却体200以外の固定物(例えば製品の筐体の内部の取り付け部)へ接続・固定し補強するための構造部を有する(後述)。
【0026】
製造時には、熱伝導板1と溝板2との間、冷却液の取り入れ口及び吐き出し口に、流入管61及び流出管62が置かれる。また、熱伝導板1と溝板2との間、溝20以外の位置に対応した形状のろう材7を挟んだ状態で、加熱炉に入れて加熱させる。これにより、溝板2と流入管61及び流出管62は、熱伝導板1と接合され、流路板4が完成する。溝板2の溝20は、その上部に熱伝導板1の面によって蓋がされる形になり、これにより、流路板4の内部の管路40となる。
【0027】
図2は冷却板100の完成状態を示している。冷却板100も、被冷却体200の概略平面板形状に対応して、概略平面板形状である。
【0028】
溝板2は、プレス成形などにより、連続した溝20を持つ。流路板4の内部において、流入管61(入口)から流出管62(出口)まで連続した冷却液の管路40が形成されている。流入管61から流入する冷却液は、熱伝導板1と熱交換を行うためのこの管路40を通り、流出管62へと流れ出る。
【0029】
図3は溝板2における溝20の構造を示す斜視図である。入口側の溝20aから、溝20b,20c,20d,20e,20fへ分岐し、これらが出口側の溝20gで合流する、という配置構造である。各流路部の位置や数などは自由に設計可能である。また例えば溝20cは、他の溝に比べて流路の断面積(幅や深さなど)が大きい。このように流路部の配置や断面積などによって流量のコントロールが可能である。また溝20dのように、流路を途中で曲げることが可能である。
【0030】
流路板4内部の管路40における各流路部の位置や流量などは、プレス成形などによってかたち作られる溝20によって決定ができるため、従来のチューブ配管による冷却板の管路と比較して、自由に管路を作ることができる。
【0031】
溝板2の溝20による流路の設計は、例えばコンピュータのソフトウェアで流量のシミュレーション等に基づいて可能である。
【0032】
図4は、冷却板100、被冷却体200、及びそれらを搭載する電子機器等の筐体300の接続前における関係の概要を示している。また、図5は、その接続後における概要であり、特に補強板3の構造に関する第1の例を示している。
【0033】
被冷却体は、概略平らな回路基板200の場合であり、対応して、熱伝導板1も平らである。これに限らず、被冷却体(回路基板200)の形状に応じて、熱伝導板1及び溝板2等は、例えば凹凸形状としてもよい。熱伝導板1は、被冷却体200以外の外部構造物には接触しない。
【0034】
溝板2の第1面s1は前述の溝20を有する。例えば溝20Aの溝断面に対し、溝20Bは幅が大きく、溝20Cは深さが大きい。第2面s2は溝20に対応した凸形状となる。
【0035】
溝板2と補強板3との接合・固定は、例えば接着剤やねじ等による(非図示)。本実施の形態では、図4,図5のように、補強板3の上側の面(第1面)は、溝板2の第2面s2の凸形状に対応して、この凸形状よりも嵌合のために少し大きい凹部33を有する。この補強板3の凹部33は、樹脂成形や溝を掘る等の製法及び工程により、容易に製造ができる。従来の金属基板の切削工程に比べても容易である。例えば溝板2の第2面s2の凸形状と、補強板3の上側の面の凹部33とを嵌合する。図5の補強板3では、溝板2との隙間は殆ど無い。
【0036】
補強板3は、補強性を持ちつつ、樹脂製のため、外部の接触部分(筐体300の取り付け部301等)との熱的な分離による冷却性能の確保もされている。従来の冷却板が金属性の熱伝導板に直接的にチューブ配管を埋め込む一体型構造であるのに対し、本実施の形態では、補強板3は、流路板4と分離しているため、金属よりも熱伝導性の低い樹脂などの材料を選択することができる。即ち、冷却板100及び被冷却体200を搭載する機器の内部での取り付けや接触を、補強板3で行うことにより、被冷却体200以外の、熱伝導性が高い部位(金属製の筐体300など)に対して流路板4が接触することを防ぐことができる。即ち、流路板4と被冷却体200以外の部位との熱交換を防ぎ、被冷却体200に対する本来の冷却性能の低下を防止できる。
【0037】
図4の例では、補強板3の一部(例えば外枠などの位置)に設けた取り付け部31は、ねじ32等によるものであり、機器の筐体300側の取り付け部301におけるねじ穴302に対してねじ止めがされる。これにより、冷却板100が筐体300に対して固定される。
【0038】
また、図6は、補強板3の第2の例を示している。この補強板3Aの上側の面では、接続後の状態において補強板3Aと溝板2との間に空間35がある形態である。このように、補強板3Aでは、所定の補強性能等を持つ条件で、形状は特に限定されない。補強板3Aの補強性能としては、例えば、補強板3Aの平面における外枠や平面内の一部の位置に溝板2と接する支持部36を設ける。
【0039】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…熱伝導板、2…溝板、3,3A…補強板、4…流路板、7…ろう材、20,20a〜20g,20A〜20C…溝、31…取り付け部、32…ねじ、33…凹部、35…空間、36…支持部、40…管路、61…流入管、62…流出管、100…冷却板、200…被冷却体(回路基板)、300…筐体、301…取り付け部、302…ねじ穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の金属板を接合して冷却流路を形成する冷却板の製造方法において、プレス加工により第一の金属板の接合面側に冷却流路となる溝を設け、第二の金属板を前記第一の金属板の前記溝に蓋をするよう重ね合わせ、前記第二の金属板を前記第一の金属板の前記溝の周囲の平面部にて前記第一の金属板と接合し、前記第一の金属板の前記溝によって接合面の反対側に形成された凸部を収容する凹部を有する樹脂製の補強板に前記第一の金属板を固定することを特徴とする冷却板の製造方法。
【請求項2】
前記第一及び第二の金属板は銅または銅合金から成り、前記第一及び第二の金属板をろう付け接合することを特徴とする請求項1記載の冷却板の製造方法。
【請求項3】
前記第一の金属板の前記溝の周囲の平面部上にシート状のろう材を載置し、前記シート状のろう材を挟んで前記第二の金属板を前記第一の金属板に重ね合わせ、前記第一の金属板と前記第二の金属板を加熱炉でろう付け接合することを特徴とする請求項2記載の冷却板の製造方法。
【請求項4】
一対の金属板を接合して冷却流路を形成した冷却板であって、接合面側に冷却流路となる溝をプレス加工により設けた第一の金属板と、前記第一の金属板の溝に蓋をするよう重ね合わせて前記第一の金属板の前記溝の周囲の平面部にて前記第一の金属板と接合された第二の金属板と、前記第一の金属板を固定する補強板であって、前記第一の金属板の前記溝によって接合面の反対側に形成された凸部を収容する凹部を有する樹脂製の補強板とから成ることを特徴とする冷却板。
【請求項5】
前記第一及び第二の金属板は銅または銅合金から成り、前記接合はろう付け接合であることを特徴とする請求項4記載の冷却板。
【請求項6】
前記第一の金属板の溝は分岐を有することを特徴とする請求項4記載の冷却板。
【請求項7】
前記第一の金属板の溝は複数種類の幅と深さ又は複数種類の断面積を有することを特徴とする請求項4記載の冷却板。
【請求項8】
請求項4記載の冷却板を用いた電子機器の冷却構造であって、前記冷却板が当該冷却板の樹脂製の補強板を介して前記電子機器の筺体に固定されることを特徴とする電子機器の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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