説明

冷却板

【課題】発熱性の電子部品を内部に実装した電子機器を間接冷却する冷却部材において、冷却板内面と冷媒間の対流熱伝達率を向上させることができる安価な冷却板を得る。
【解決手段】冷却板を構成する薄肉平板3aの冷媒流路に、突起6を形成した薄板3bを内挿することで、冷媒流路を流れる冷媒の流れ方向に、冷却板内面に向かう方向成分を発生させて、冷却板内面と冷媒間の対流熱伝達率を向上させるとともに、冷却板を安価に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を実装した電子機器を冷却する冷却板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレクトロニクスモジュールの放熱面に接触して、モジュール内部の電子部品を間接冷却する冷却板が知られている。この冷却板は、内部に冷媒の流れる流路が形成され、冷媒を流したときの流路の内圧上昇によって膨張変形する。これによって、モジュールの放熱面に密着して接触熱抵抗を低減する。また、流路を構成する内面に突起を設けて冷媒の流れを乱流化し、流路内面に向かう流れ方向成分を発生させ温度境界層を崩すことで、冷却板の流路内面と冷媒との対流熱伝達率を向上させていた。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開2004−221315号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の冷却板は、2つの平板を対向配置して流路内面を構成し、平板の内側壁面に非対象な突起を形成していた。しかし、この構成では、冷却板の内側壁面に直接突起を加工することから、製造コストの低い押出し成型による加工ができず、加工コストが高くなってしまうという問題があった。
【0005】
また、壁面に複数の突起を形成することにより、突起の有無により冷却板の剛性が部分的に変化する。このため、冷媒を流したときに冷却板が膨張変形する際、表面形状にバラツキを持つことになり、この形状バラツキによってモジュールと冷却板間の密着性が悪くなり、接触熱抵抗にバラツキを生じるという問題があった。
【0006】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、内部流路に乱流を生じさせて高い対流熱伝達率を確保しながら、冷却面の剛性を均一にし、かつ加工コストを低減した冷却板を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による冷却板は、矩形状の中空断面を有し、当該中空断面が長手方向に冷媒の流れる流路を形成し、外壁面に発熱性の電子部品が熱的に間接的に接続される薄肉平板と、上記薄肉平板の流路内に内挿され、薄肉平板の長手方向に傾斜面を成すように複数個配列された突起が形成された薄板とを備えたものである。
【0008】
また、薄板は、上記突起が弾性変形された状態で薄肉平板の内壁面に付勢されるように、上記薄肉平板に内挿されたものであっても良い。
【0009】
また、薄板は、上記薄肉平板への内挿後に規定の温度を印加することにより上記突起が薄肉平板の内壁面に付勢されるように、形状記憶された突起を有したものであっても良い。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、プレス加工、板金加工等により突起を形成した薄板を、冷却板の流路内に挿入することで、冷却板内面と冷媒間の対流熱伝達率を向上させた冷却板を安価に構成することができるとともに、冷却面を成す外壁面の剛性を均一化した、冷却板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
図1(a)は、この発明の実施の形態1において、エレクトロニクスモジュール1(以下、モジュール1)が規則正しく配列された電子機器の斜視図である。図1(b)は図1(a)のAA断面図、図1(c)および図1(d)は、図1(a)のBB断面図である。
【0012】
電子機器としては、例えばアクティブフェーズドアレイアンテナのような電子走査アンテナ装置が構成される。モジュール1は、シャーシ5の上に複数個アレイ状に配置されている。モジュール1は、例えば高出力増幅器、低雑音増幅器等の発熱性の電子部品2を内蔵し、電子部品2の保護や所定の性能を得るために冷却を必要とする。モジュール1は外部表面に平坦な放熱面を有する。冷却板3の外壁面には冷却面が構成され、この冷却面に複数のモジュール1の放熱面が接触するように、冷却板3とモジュール1が配置される。冷却板3は、薄肉平板の内部に薄板(後述する)を挿入して構成される。
【0013】
冷却板3を構成する薄肉平板は、押出し成型により平板の内部に流路を成型することによって形成するのが良い。押出し成型は、比較的安価で大量に冷却板3を製造するのに適している。また、冷媒の流れる流路溝を加工した薄肉平板と均一厚さの極めて薄い平板とを、ろう付によって接合して冷却板3の薄肉平板を構成しても良い。
【0014】
冷却板3の薄肉平板は、対向配置した幅が広い2枚の長尺の平板61と、その平板の短手方向の2つの端面に接続された幅の狭い2枚の長尺の平板62とで、中空の矩形断面を形成するように内部流路が構成される。この幅が広い2枚の長尺の平板は、外壁面が冷却板3の冷却面を構成する。冷却板3は、内部流路の長手方向へ冷媒4が流れるように構成される。また、冷却板3は長手方向の両端に出入孔50が設けられる。出入孔50を通じて、冷媒4が冷却板3の内部流路に対し垂直に流入もしくは流出する。
【0015】
図1(b)に、冷却板における冷媒の流れ方向41(41a、41b、41c)を図示する。図において、冷媒4は、冷却板3の出入孔50を通じて外部から符号41aの方向に流入し、冷却板3の長手方向41bの方向に流れた後、出入孔50から符号41cの方向に流れて冷却板外部に排出される。これによって、モジュール1の電子部品で発生した熱は、モジュール1の放熱面と冷却板3の冷却面の接触により冷媒4に伝達され、冷媒4を通じて冷却板3の流路内を移送されて、冷媒4の排出とともに外部に放熱される。なお、各モジュール1は、冷却板3の長手方向41bの方向に配列される。
【0016】
図1(d)に示すとおり、冷却板3の内部に冷媒4が流れると、冷却板3は薄肉であるため、冷却板内の内圧が上昇し、この内圧上昇により冷却板3が膨張して、冷却板3の冷却面とモジュール1の放熱面とが密着する。これによって、冷却板3とモジュール1間の空気層を減じ、接触熱抵抗を減じて、モジュール内の電子部品で発生した熱を効率的に放熱することができる。この状態で、モジュール1の内部の電子部品2で発生した熱は、冷却板3の壁面を通過して冷媒4に伝達され、冷媒4の流れ方向41に冷媒4を介して移送される。
【0017】
一方、図1(c)に示すとおり、冷却板3の流路に冷媒4が流れていない状態では、冷却板3は膨張せず、モジュール1の放熱面と冷却板3間に隙間を有している。このため、モジュール1の整備時、および故障による交換作業時等での、モジュール1の取外し、および取付作業を容易にしている。
【0018】
ところで、モジュール1の内部に収納される電子部品は、近年、高出力化、高密度実装化、稼働率の向上等に伴って、発熱量が増大する傾向にある。このため、冷却板3の流路を流れる冷媒4とモジュール1との熱伝達率を減少させる必要がある。
ここで、冷却板の流路内面が冷媒の流れる方向に平坦な断面を有すると、冷媒の流れは乱流に発達せず層流状態の流れとなり、冷媒の流れに平行に温度境界層が形成され、流れに対し直交する方向の熱移動は制限される。従ってこの場合、冷却板内面と冷媒間の対流熱伝達率は向上せず、冷却板内面と冷媒間に許容できない温度差が生じてしまう。
【0019】
この実施の形態1ではこの温度差を解消するため、冷却板を構成する薄肉平板の内部に突起を有した薄板を配置して、流路内の冷媒の流れを乱流化している。これによって、冷却板内面と冷媒4の対流熱伝達率を向上させている。以下、冷却板の流路内に配置した突起の構成について説明する。
【0020】
図2は実施の形態1による突起6の構造を示す図であり、図2(a)は突起6が形成された薄板3bの斜視図、図2(b)は薄板3bに形成された突起6の詳細形状を示す図、図2(c)は薄板3bを内挿した状態での冷却板3の断面図、図2(d)は薄板挿入前の突起6の状態を示す図である。
薄板3bは、プレス加工、板金加工等により突起6を比較的安価に形成することができる。
【0021】
図に示すように、薄肉平板3aの流路内に、表裏両面に複数の切り起し状の突起6が形成された薄板3bを内挿して、冷却板3を構成する。これによって、冷媒の流れ41は突起6により乱流化され、冷却板3の流路の内面に向かう流れ方向成分を持ち、この流れ方向成分が温度境界層を崩すことで、冷却板内面と冷媒間の対流熱伝達率が向上する。
【0022】
図2(b)に示すように、突起6は、薄板3bの表面を切り起し、その切り起しの両端面を薄板側に斜めに折り曲げることで形成され、断面が台形状となる傾斜面61を有している。この突起6に冷媒が流れると、突起6の傾斜面61によって冷媒の流れに縦渦42が発生し、この縦渦42は冷却板の内面に向かう流れ方向成分を持っているため温度境界層を崩し、冷却板の内面と冷媒間の対流熱伝達率を向上することができる。
【0023】
図2(c)に示すように、突起の傾斜面61で発生した縦渦42の回転軸の方向成分は、冷媒の流れ方向41と近いため、縦渦42はすぐに消失することなく持続性が高い。これにより、冷却板長手方向の冷却板内面と冷媒間の対流熱伝達率が安定し、また薄板3bの挿入による冷却板3aの圧力損失の増大を小さくすることが可能となる。また、突起6を冷却板の長手方向に複数並べることにより、縦渦42を連続的に発生している。
【0024】
なお、冷却板3の片側のみの対流熱伝達率を向上させればよいときは、薄板3bに形成される突起6は表裏の片側だけに形成しても良い。この場合は突起6の存在する側の冷媒流れが乱流化され、突起の存在する側の冷却板内面と冷媒間の対流熱伝達率が向上する。また、突起6を表裏両面に形成した場合よりも冷却板3の全体の圧力損失が低くなる利点がある。
【0025】
ここで、冷却板3の表面、および裏面での冷却板内面と冷媒間の対流熱伝達率のバラツキを低減させる必要がある場合は、図2(d)に示すように、薄肉平板3aへの挿入前の薄板3bの突起高さを、冷却板3の流路高さ31よりも高く、なおかつ冷却板3の膨張量を加味した高さ(膨張時の冷却板3の流路高さ31と同じか僅かに高い高さ)に設定しておく。薄肉平板3aへの挿入の際、突起部分が薄肉平板の内壁面に付勢されて、突起6が弾性変形した状態で、薄板3bを冷却板3の流路に内挿すれば良い。また、薄板3bの中央面は冷却板3の流路高さ31の中央に位置するように配置しておく。これにより、膨張時においても薄板3bの中央面の位置を冷媒流路の中立位置(流路高さ31の中央)に維持させることが可能となる。これによって、冷却板3の膨張時に薄板3bが片側に偏ることによる、冷却板内面と冷媒間の対流熱伝達率のバラツキを抑制することができる。
【0026】
なお、他の実施の態様として、内挿する薄板3bの材質を、使用環境下で冷却板3の膨張量を加味した高さで形状記憶し、周囲温度が低い状態で薄板3bの突起6の高さが膨張前の冷却板3の流路高さよりも低くなるような、形状記憶合金を使用しても良い。この場合、周囲温度が低い環境下で薄板3bを冷却板3の冷媒流路の中に内挿することによって、薄板3bの突起6の高さが冷却板3の流路高さよりも低い状態となっているため、薄板3bを容易に薄肉平板3aに内挿することができる。一方、使用環境下で冷却板3の内部温度が上昇し、突起高さが記憶された形状高さに復元すれば、冷却板3の膨張時に薄板が片側に偏ることによる対流熱伝達率のバラツキを抑制することができる。
【0027】
以上説明したとおり、この実施の形態1によれば、矩形状の中空断面により長手方向に冷媒の流れる流路を形成して薄肉平板3aを構成し、薄肉平板3aの長手方向に傾斜面61を成す複数の突起6を配列した薄板3bを、薄肉平板3aの流路内に内挿して冷却板3を構成する。これによって、冷却板3の外壁面に発熱性の電子部品を密着させることにより、冷却板内面と冷媒間の対流熱伝達率を向上させた冷却板を安価に構成することができるとともに、冷却面を成す外壁面の剛性を均一化した、冷却板を得ることができる。また、薄肉平板3aの内壁面に直接突起を加工せず、薄板3bを内挿して突起を構成しているので、突起形状による薄肉平板3aの外壁面の剛性低下がなく、モジュールの放熱面と冷却板の外壁面とを緊密に密着させることができる。
【0028】
また、薄板3bは、プレス加工、板金加工等で突起が形成され、突起が弾性変形された状態で薄肉平板の内壁面に付勢されるように、薄肉平板3aに内挿される。これによって、冷却板3の膨張時に薄板3bが片側に偏ることによる、冷却板内面と冷媒間の対流熱伝達率のバラツキを抑制することができる。
【0029】
また、薄板3bは、薄肉平板3aへの内挿後に規定の温度を印加することにより、突起が薄肉平板3bの内壁面に付勢されるように、形状記憶された突起6を構成しても良い。これによって、薄板3bを容易に薄肉平板3aに内挿することができる。
【0030】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2における冷却板3の構成を示すものであり、図3(a)は薄肉平板と薄板を示す図、図3(b)は薄板を内挿した状態での冷却板3の断面図、図3(c)は薄板挿入前の突起の状態を示す図である。
【0031】
図において、薄板3cは、長手方向に表裏交互に長方形状の傾斜面71を切り起して、突起7を複数形成し、冷媒の流れ方向に対し突起が開口した形状としている。なお、図3(a)では、冷媒の流れに対して垂直方向に立設した突起を1つとした例を示しているが、この突起を分割して、垂直方向に複数並べた構成としても良い。
【0032】
図3(b)に示すように、冷却板3に冷媒4が流れると、薄板3cの傾斜面71により冷媒の流れは薄板3cの開口部72へ導かれる。これにより、冷媒の流れ方向41は薄板3cによって仕切られた冷却板3の表側と裏側をジグザグ上に流れることになり、冷媒4の流れは冷却板3の内面に向かう流れ方向成分を持つため、冷却板内面の温度境界層を崩し、対流熱伝達率を向上することができる。
【0033】
また、図3(c)に示すとおり、実施の形態1と同様に、薄板3cの突起高さを冷却板3の膨張量を加味した高さに設定する。突起部分を弾性変形させながら突起7が形成された薄板3cを冷却板流路に内挿すれば、冷却板3の表裏面での冷却性能のバラツキを低減させることができる。また、実施の形態1と同様に形状記憶合金を使用すれば、薄板3cを容易に冷却板3の流路の中に内挿することができる。
【0034】
実施の形態3.
図4はこの発明の実施の形態3における冷却板の構成を示すものであり、図4(a)は薄肉平板と薄板を示す図、図4(b)は薄板を内挿した状態での冷却板3の断面図、図4(c)は薄板挿入前の突起の状態を示す図である。
図において、薄板3dは、冷却板長手方向にジグザグ状に折り曲げられて突起9が形成された形状をしており、その曲げられた上下の角部を構成する突起9に対して、冷媒の流れに垂直方向に、複数の切欠き部8を設けることを特徴とする。
【0035】
図4(b)は図4(a)における、切り欠き部8を含む部分の断面を示しており、この切り欠き部8に冷媒が流れると、傾斜面81により冷媒の流れは冷却板3の内面に向かう流れ方向の成分を発生し、冷却板内面の温度境界層を崩し、対流熱伝達率を向上することができる。
【0036】
図4(c)に示すとおり、実施の形態1と同様に、薄板3dの突起高さを冷却板3の膨張量を加味した高さに設定する。そして、突起9を弾性変形させながら突起9が形成された薄板3dを冷却板流路に内挿すれば、冷却板3の表裏面での冷却性能のバラツキを低減させることができる。また、実施の形態1と同様に、形状記憶合金を使用すれば、薄板3dを容易に冷却板3の流路中に内挿することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施の形態1による電子機器装置を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1による冷却板を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態2による冷却板を示す構成図である。
【図4】この発明の実施の形態3による冷却板を示す構成図である。
【符号の説明】
【0038】
1 モジュール、2 電子部品、3 冷却板、31 流路高さ、3a 薄肉平板、3b 薄板、3c 薄板、3d 薄板、4 冷媒、5 シャーシ、6 突起、61 傾斜面、7 突起、71 傾斜面、8 切り欠き部、81 傾斜面、9 突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の中空断面を有し、当該中空断面が長手方向に冷媒の流れる流路を形成し、外壁面に発熱性の電子部品が熱的に間接的に接続される薄肉平板と、
上記薄肉平板の流路内に内挿され、薄肉平板の長手方向に傾斜面を成すように複数個配列された突起が形成された薄板と、
を備えた冷却板。
【請求項2】
上記薄板は、上記突起が弾性変形された状態で薄肉平板の内壁面に付勢されるように、上記薄肉平板に内挿されたことを特徴とする請求項1記載の冷却板。
【請求項3】
上記薄板は、上記薄肉平板への内挿後に規定の温度を印加することにより上記突起が薄肉平板の内壁面に付勢されるように、形状記憶された突起を有することを特徴とする請求項1記載の冷却板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−250753(P2007−250753A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71006(P2006−71006)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】