説明

冷却機

【課題】断層撮影の高速化に伴う回転時の遠心力と慣性力に対する耐性が向上したCT装置用冷却機を実現する。
【解決手段】CT装置用冷却機においては、排気口を有するベースが回転体に固定され、ポンプ装置がベース上に配置されている。筐体がベース上に排気空間を規定し、X線発生器と配管で連結されるラジエータ・ユニットが吸気導入口を規定している。冷却ファン装置がベースに固定され、ラジエータ・ユニットを介して吸気している。支持構造体がベースに固定され、ラジエータ・ユニットを回転中心軸側に向けるように屋根型に突出させている。ベース固定部から筐体の頂部への高さがベース固定部間の距離より小さく、支持構造体固定部からのラジエータ・ユニット頂部への高さが支持構造体固定部間の距離より小さく、固定台座固定部からのラジエータ・ユニット頂部への高さが固定台座固定部間の距離より小さく設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷却機に関する。
【背景技術】
【0002】
X線を発生するX線発生器(X線管ユニット)を備えたCT装置においては、X線の発生に伴い発熱するX線発生器を冷却する為に冷却装置がCT装置に組み込まれている。近年、このCT装置のX線発生器として、特に、CT装置の回転体が高速回転されて断層撮影が高速化されているCT装置において、大出力のX線を発生するX線発生器が要請され、大出力のX線管が開発されている。このX線発生器の大出力化に伴い、大出力のX線発生器が発生する多量の熱を効果的に冷却するために冷却能力の大きい冷却機が必要とされている。
【0003】
一般に、大きな冷却能力を冷却機に与える為には、熱を空気等に放出するための冷却機の放熱部品を大型化する必要があり、この大型化した冷却機を備えるCT装置では、冷却機が高速回転による遠心力及び回転の加速時に生じる慣性力に対して十分な耐性の確保が課題となっている。即ち、冷却機に十分な剛性が与えられ、また、大きい冷却能力を与えることが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−137224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、X線発生器及びX線発生器を冷却する為の冷却装置を備えたCT装置として特許文献1が知られている。
【0006】
特許文献1に開示されたX線発生器を備えたCT装置においては、その冷却機は、従前の構造のままとされている。CT装置の断層撮影の高速化に伴い回転体が高速回転されるようになると、回転時に発生する遠心力と回転加速時に発生する慣性力に対抗する構造設計が成されていないことから、構造部及び固定部の損傷と緩みが生じる虞があり、X線発生器を大出力で動作させ続けることが困難になる等、種々の問題が発生する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、回転体に搭載され、当該回転体の回転方向に沿って回転体とともに当該回転体の回転中心軸の周りに回転されるX線発生器を冷却する上記課題を解決する為の冷却機が提供される。
【0008】
この冷却機においては、ベースが前記回転体の冷却機搭載部の冷却機固定面に固定され、ベースがこの冷却機搭載部に設けた排気部に連通される排気口を有している。前記X線発生器の内部で発生した熱を外部の雰囲気に放出する為のラジエータ・ユニットが前記X線発生器と配管で連結されている。
【0009】
前記X線発生器及び前記ラジエータ・ユニットとの間で前記配管を介して冷却液を循環させるポンプ装置が前記ベース上に配置固定されている。また、冷却機筐体が前記ベース上に排気空間を規定し、また、前記ラジエータ・ユニットが配置される吸気導入口を規定している。冷却ファン装置が前記排気部上の前記ベースに配置固定され、前記吸気導入口に設けた前記ラジエータ・ユニットを介して前記冷却機筐体外から前記排気空間に吸気し、前記排気口及び前記排気部を介して前記排気空間から排気している。支持構造体が前記ラジエータ・ユニットを支持する為に複数の支柱を介して前記ベースの支柱固定面に固定され、支持構造体が前記支柱固定面に立設されている前記複数の支柱と前記ラジエータ・ユニットを取り付けて固定するための固定台座とを有している。前記固定台座が前記複数の支柱の固定台座固定面に固定され、固定台座が前記回転中心軸側に向けて屋根型に突出するフレーム構造で構成され、前記ラジエータ・ユニットを前記回転中心軸側に向けて屋根型に突出して配置されるように固定支持している。
【0010】
前記ベースには、このベースを前記冷却機固定面に固定するためのベース第1固定部がこのベースの前記回転方向に関して上流側にある一辺に隣接して設けられ、このベースを前記冷却機固定面に固定するためのベース第2固定部がこのベースの前記回転方向に関して下流側にある一辺に隣接して設けられている。前記冷却機固定面からの前記冷却機筐体の頂部の高さが前記ベース第1固定部と前記ベース第2固定部の間の距離より小さく設定されている。
【0011】
前記支持構造体には、この支持構造体を前記支柱固定面に固定するための支持構造体第1固定部がこの支持構造体の前記回転方向に関して上流側にある前記複数の支柱に設けられ、この支持構造体を前記支柱固定面に固定するための支持構造体第2固定部がこの支持構造体の前記回転方向に関して下流側にある前記複数の支柱に設けられている。前記複数の支柱が固定されている前記支柱固定面からの前記ラジエータ・ユニットの頂部の高さが前記支持構造体第1固定部と前記支持構造体第2固定部の間の距離より小さく設定されている。
【0012】
前記固定台座には、この固定台座を前記複数の支柱の固定台座固定面に固定するための固定台座第1固定部がこの固定台座の前記回転方向に関して上流側にある前記フレーム構造に設けられ、この固定台座を前記複数の支柱の固定台座固定面に固定するための固定台座第2固定部がこの固定台座の前記回転方向に関して下流側にある前記フレーム構造に設けられている。前記支柱の固定台座固定面からの前記ラジエータ・ユニットの頂部の高さが前記固定台座第1固定部と前記固定台座第2固定部の間の距離より小さく設定されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るCT装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1に示したCT装置における回転体内の構造を概略的に示す断面図である。
【図3】図2に示した第1の実施形態に係る冷却機の構造を概略的に示す断面図である。
【図4】図2に示した第1の実施形態に係る冷却機の特徴を概略的に示す断面図である。
【図5】図2に示した第1の実施形態に係る冷却機の特徴を概略的に示す断面図である。
【図6】図2に示した第1の実施形態に係る冷却機の特徴を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態に係る冷却機ついて、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、実施の形態に係るCT(コンピュータ断層撮影)装置の外観を示し、図2は、図1に示すCT装置内の内部構造を概略的に示している。このCT装置は、ガントリ100を備え、このガントリ100は、回転中心軸4の周りに回転される回転体5、この回転体5を回転可能に支持する支持構造(図示せず)及びこの回転体5を囲むような筐体108から構成されている。ガントリ100の中央部には、被検体が寝かされる寝台120が進入する空洞部40が撮影領域として設けられている。被検体の撮影時には、この寝台120が空洞部40内に前進されて被検体が撮影領域に配置される。
【0016】
回転体5は、円環状のフレームで構成され、この回転体5には、X線をファンビーム状に発生するようにコリメータ(図示せず)を備えたX線発生器2が固定されている。また、このX線発生器2に空洞部40の撮影領域を介して対向して配置され、ファンビーム状のX線を検出するX線検出器8も回転体5に固定されている。更に、回転体5には、後に詳細に説明するX線発生器2を冷却する為の冷却機10が固定されている。
【0017】
このようなCT装置では、被検体(図示せず)が寝かされた寝台120が空洞部40内に進入した状態で、回転体5が回転され、X線発生器2からX線ファンビームが被検体(図示せず)に照射されて透過X線がX線検出器8で検出される。回転体5の回転に伴い、被検体の周りの様々な方向からX線ファンビームが照射されて被検体内の様々な箇所からのX線がX線検出器8で検出される。このX線検出器8からの検出信号が回転体5外に出力されて画像再構成処理部(図示せず)に供給され、画像再構成処理部でこの出力信号が処理されて被検体内の様々な箇所の透過率が計算され、被検体の断層像が再構築される。
【0018】
冷却機10は、冷却液を循環する配管6でX線発生器2に連結され、X線発生器2内で発生した熱は、この冷却液に与えられて排熱の為に配管6を介して冷却機10に供給され、冷却機10で冷却された冷却液は、吸熱の為に配管6を介してX線発生器2に供給される。
【0019】
(実施形態1)
図3、図4、図5及び図6には、図1及び図2に示された冷却機10の第1の実施例が示されている。
【0020】
冷却機10が載置固定される回転体5のフレーム上の冷却機搭載部51の冷却機固定面52には、ベース31が設けられ、ベース31には、回転体5のフレームに形成された排気部22に連通する複数の排気口17A,17Bが設けられている。また、このベース31の外周に隣接してベース31の支柱固定面32には、複数の支柱18A,18Bが立設され、ねじ等の結合部材で支柱固定面32に結合固定されている。そして、この複数の支柱18A,18Bの周囲には、ベース31に固定されている冷却機筐体カバー11が設けられ、この冷却機筐体カバー11で囲まれた空間が排気空間に定められている。
【0021】
冷却機10は、複数の冷却ファン13A、13Bを備え、この冷却ファン13A、13Bは、排気口17A,17B上に配置され、冷却機筐体カバー11で囲まれるように配置されている。また、この冷却ファン13A、13Bによって排気される排気空間の回転中心軸4側の全面には、ラジエータ・ユニット12が冷却機筐体カバー11の開口部を覆うように固定されている。
【0022】
冷却機筐体111は、冷却機筐体カバー11を含み、冷却機10の内部部品を囲い、冷却機10の内部空間を画定してベース31上に排気空間を規定し、また、ラジエータ・ユニット12が配置される吸気導入口16を規定している。
【0023】
支持構造体60がラジエータ・ユニット12を支持する為に複数の支柱18A、18Bを介してベース31の支柱固定面32に固定され、支持構造体60が支柱固定面32に立設されている複数の支柱18A、18Bとラジエータ・ユニット12を取り付けて固定するための固定台座20とを有している。より具体的には、固定台座20が複数の支柱18A,18Bの固定台座固定面181A、181Bに固定され、この固定台座20にラジエータ・ユニット12を構成する複数のラジエータ19A、19Bが載置固定されている。このラジエータ19A、19Bは、互いに流路が並列に連結されている。ここで、固定台座20は、複数のラジエータ19A、19Bが回転中心軸4側に頂部が向けられるような三角ルーフ状(三角屋根型)を成すようなフレーム構造23A、23Bに形成されている。より具体的には、固定台座20は、A−A断面として拡大して示すように取り付け部(板状部材)21A、21B及びこの取り付け部21A、21Bの背面(排気空間に向けられる面)に隣接する断面がL字形或いはT字形の板状の補強部材(図示では断面がL字形の例を示している。)22A,22Bを有している。固定台座20を成す取り付け部21A、21Bの一端及び補強部材22A、22Bの一端は、複数の支柱18A、18Bの回転中心軸4側にある固定台座固定面181A、181Bにねじ等の固定部材で取り付け固定され、また、取り付け部21A、21Bの他端及び補強部材22A,22Bの他端は、ルーフ状(屋根状)の頂部を構成するように当接され、ねじ等の固定部材で取り付け固定されている。このような構造の固定台座20に複数のラジエータ19A、19Bが載置固定されていることから、ラジエータ19A、19Bも同様にルーフ状(屋根状)に配置されることとなる。従って、この複数のラジエータ19A、19Bは、その回転中心軸4側の前面に吸気口16A、16Bを有し、この吸気口16A、16Bで冷却機10の吸気導入口16が構成される。
【0024】
ラジエータ・ユニット12には、図3に示すポンプ14A、14Bが接続され、このポンプ14A、14Bには、配管6が連結されている。従って、X線発生器2で熱せられた冷却液は、配管6を介してポンプ14Aと14Bに供給され、ポンプ14Aと14Bからラジエータ・ユニット12に供給される。ここで、ラジエータ・ユニット12が互いに流路が並列に接続されている複数のラジエータ19A、19Bを有する場合には、冷却液がポンプ14Aと14Bの其々からラジエータ19A、19Bに並列に供給される。また、ラジエータ・ユニット12で冷却された冷却液は、ラジエータ19A、19Bを通った後に合流し、ラジエータ・ユニット12から配管6を介してX線発生器2に供給される
ここで、ラジエータ19A、19Bは、冷却液が流通され、その熱を周囲の空気に放出するための放熱管(図示せず)及びこの放熱管に連結され、放熱面積を大きくする為の放熱フィン(図示せず)とで構成されている。
【0025】
冷却ファン13A、13Bは、冷却機筐体カバー11及びラジエータ・ユニット12で囲繞され、冷却ファン13A、13Bのファン動作に伴い冷却機10外から吸気流Sが吸気口16A、16Bを介してラジエータ・ユニット12を通過し、排気空間に流入し、流入した吸気流Sは、冷却ファン13A、13Bによって排気部22を介して排気空間外に排気流Vとして排気される。従って、ラジエータ・ユニット12において、熱せられた冷却液は、吸気流Sで冷却され、吸気流Sは、冷却液によって熱せられるような熱交換が生じ、結果として、X線発生器2の熱は、冷却機10の外部に放出される。
【0026】
図4を参照しながら、実施例の特徴を説明する。
【0027】
ベース31には、ベース31を冷却機固定面52に固定するためのベース第1固定部311がベース31の回転体5の回転方向Rに関して上流側にある一辺に隣接して設けられ、ベース31を冷却機固定面52に固定するためのベース第2固定部312がベース31の回転体5の回転方向Rに関して下流側にある一辺に隣接して設けられている。冷却機固定面52からの冷却機筐体111の頂部112の高さH1がベース第1固定部311とベース第2固定部312の間の距離D1より小さく設定されている。
【0028】
図5を参照しながら、実施例の特徴を更に説明する。
【0029】
支持構造体60には、支持構造体60を支柱固定面32に固定するための支持構造体第1固定部601が支持構造体60の回転体5の回転方向Rに関して上流側にある複数の支柱18Aに設けられ、支持構造体60を支柱固定面32に固定するための支持構造体第2固定部602が支持構造体60の回転体5の回転方向Rに関して下流側にある複数の支柱18Bに設けられている。支柱固定面32からのラジエータ・ユニット12の頂部121の高さH2が支持構造体第1固定部601と支持構造体第2固定部602の間の距離D2より小さく設定されている。
【0030】
図6を参照しながら、実施例の特徴を更に説明する。
【0031】
固定台座20には、固定台座20を複数の支柱18Aの固定台座固定面181Aに固定するための固定台座第1固定部201が固定台座20の回転体5の回転方向Rに関して上流側にあるフレーム構造23Aに設けられ、固定台座20を複数の支柱18Bの固定台座固定面181Bに固定するための固定台座第2固定部202が固定台座20の回転体5の回転方向Rに関して下流側にあるフレーム構造23Bに設けられている。固定台座固定面181A、181Bからのラジエータ・ユニット12の頂部121の高さH3が固定台座第1固定部201と固定台座第2固定部202の間の距離D3より小さく設定されている。
【0032】
回転体5が回転方向Rで示されるように回転されるに伴い、冷却機10には、回転体5の半径方向の外側に方向に向けられた遠心力F0が作用する。一例として、回転体5が高速回転され、32G以上の遠心力F0がラジエータ・ユニット12に作用される。ここで、ラジエータ・ユニット12に与えられた遠心力F0は、ラジエータ・ユニット12の支持構造を成すルーフ状(屋根型)の固定台座20に負荷される。固定台座20には、遠心力F0が向けられた方向に補強部材22A,22Bの板状部分(L字或いはT字の一方の辺の部分であって、遠心力F0に沿って幅がある部分)が設けられていることから、遠心力F0の負荷に固定台座20が十分に耐えることができ、固定台座20は、単なる板状ではないことから、この固定台座20が変形されることが防止される。また、固定台座20に与えられた負荷は、ルーフ(屋根)の方向に沿って、即ち、取り付け部(板状部材)21A、21Bの延出方向に沿って固定台座20の固定部201、202に伝達され、剛性の大きな支柱18A,18Bに与えられ、十分な剛性を有するベース31に伝達される。
【0033】
また、回転体の回転起動時などにおいて回転体5が回転方向Rで示されるように加速度的に回転されるに伴い、冷却機10には、回転体5の回転方向Rと逆の方向に向けられた慣性力F1が作用する。ここで、冷却機10が冷却機固定面52に固定され、冷却機固定面52からの冷却機10の質量中心C1の高さH11の位置に慣性力F1が作用することから、慣性力F1は冷却機10の固定部(即ちベース第1固定部311とベース第2固定部312)に対してモーメントM1(F1とH11の掛け算)が発生する。モーメントM1は、ベース第1固定部311とベース第2固定部312に作用する1対の反力R1を生じさせ、この1対の反力R1からなる偶力によるモーメント(R1とD1の掛け算)によってバランスされる。反力R1は固定部におけるねじ等の固定部材に負荷として作用する。モーメントM1は冷却機10を冷却機固定面52から引き離す作用として働き、ベース第1固定部311とベース第2固定部312におけるねじ等の固定部材に損傷を与える虞があり、小さく抑える必要がある。
【0034】
ここで、本実施例では、冷却機固定面52からの冷却機筐体111の頂部112の高さH1がベース第1固定部311とベース第2固定部312の間の距離D1より小さく設定されていることから、冷却機固定面52からの冷却機10の質量中心C1の高さH11(H1より小さい)も小さく抑えられ、ベース第1固定部311とベース第2固定部312の間の距離D1より小さくなっている。その結果、ベース第1固定部311とベース第2固定部312に作用する1対の反力のR1の大きさは慣性力F1より小さく低減されている。従って、回転体の回転の加速時における冷却機10の固定部(ベース第1固定部311とベース第2固定部312)のねじ等の固定部材に作用する負荷が小さく抑えられ、損傷を防ぐことができる。
【0035】
また、回転体の回転起動時などにおいて回転体5が回転方向Rで示されるように加速度的に回転されるに伴い、支持構造体60及び支持構造体60に固定されているラジエータ・ユニット12には、回転体5の回転方向Rと逆の方向に向けられた慣性力F2が作用する。ここで、支持構造体60が支柱固定面32に固定され、支柱固定面32からの支持構造体60とラジエータ・ユニット12の合計の質量中心C2の高さH21の位置に慣性力F2が作用することから、慣性力F2は支持構造体60の固定部(支持構造体第1固定部601と支持構造体第2固定部602)に対してモーメントM2(F2とH21の掛け算)が発生する。モーメントM2は、支持構造体第1固定部601と支持構造体第2固定部602に作用する1対の反力R2を生じさせ、この1対の反力R2からなる偶力によるモーメント(R2とD2の掛け算)によってバランスされる。反力R2は固定部におけるねじ等の固定部材に負荷として作用する。モーメントM2は支持構造体60を支柱固定面32から引き離す作用として働き、支持構造体第1固定部601と支持構造体第2固定部602におけるねじ等の固定部材に損傷を与える虞があり、小さく抑える必要がある。
【0036】
ここで、本実施例では、支柱固定面32からのラジエータ・ユニット12の頂部121の高さH2が支持構造体第1固定部601と支持構造体第2固定部602の間の距離D2より小さく設定されていることから、支柱固定面32からの支持構造体60とラジエータ・ユニット12の合計の質量中心C2の高さH21(H2より小さい)も小さく抑えられ、支持構造体第1固定部601と支持構造体第2固定部602の間の距離D2より小さくなっている。その結果、支持構造体第1固定部601と支持構造体第2固定部602に作用する1対の反力R2の大きさは慣性力F2より小さく低減されている。従って、回転体の回転の加速時における支持構造体60の固定部(支持構造体第1固定部601と支持構造体第2固定部602)のねじ等の固定部材に作用する負荷が小さく抑えられ、損傷を防ぐことができる。
【0037】
また、回転体の回転起動時などにおいて回転体5が回転方向Rで示されるように加速度的に回転されるに伴い、固定台座20及び固定台座20に固定されているラジエータ・ユニット12には、回転体5の回転方向Rと逆の方向に向けられた慣性力F3が作用する。ここで、固定台座20が固定台座固定面181A、181Bに固定され、固定台座固定面181A、181Bからの固定台座20とラジエータ・ユニット12の合計の質量中心C3の高さH31の位置に慣性力F3が作用することから、慣性力F3は固定台座20の固定部(固定台座第1固定部201と固定台座第2固定部202)に対してモーメントM3(F3とH31の掛け算)が発生する。モーメントM3は、固定台座第1固定部201と固定台座第2固定部202に作用する1対の反力R3を生じさせ、この1対の反力R3からなる偶力によるモーメント(R3とD3の掛け算)によってバランスされる。反力R3は固定部におけるねじ等の固定部材に負荷として作用する。モーメントM3は固定台座20を固定台座固定面181A、181Bから引き離す作用として働き、固定台座第1固定部201と固定台座第2固定部202におけるねじ等の固定部材に損傷を与える虞があり、小さく抑える必要がある。
【0038】
ここで、本実施例では、固定台座固定面181A、181Bからのラジエータ・ユニット12の頂部121の高さH3が固定台座第1固定部201と固定台座第2固定部202の間の距離D3より小さく設定されていることから、固定台座固定面181A、181Bからの固定台座20とラジエータ・ユニット12の合計の質量中心C3の高さH31(H3より小さい)も小さく抑えられ、固定台座第1固定部201と固定台座第2固定部202の間の距離D3より小さくなっている。その結果、固定台座第1固定部201と固定台座第2固定部202に作用する1対の反力R3の大きさは慣性力F3より小さく低減されている。従って、回転体の回転の加速時における固定台座20の固定部(固定台座第1固定部201と固定台座第2固定部202)のねじ等の固定部材に作用する負荷が小さく抑えられ、損傷を防ぐことができる。
【0039】
尚、X線発生器2の電源装置は、スリップリング(図示せず)等を介して回転体5外のガントリ100に設けられている。同様に、冷却ファン13A、13B及びポンプ14A、14Bの電源装置(図示せず)は、回転体5上に設けられても良く、或いは、X線発生器2の電源装置と同様に回転体5外のガントリ100に設けられても良い。
【0040】
以上のように、回転体の回転によって発生する遠心力F0が冷却機に作用しても、ラジエータ・ユニット12が剛性の向上した支持構造で支持されていることから、変形されることがなく、また、放熱管など部品の破断の可能性が低減され、遠心力に対する耐性が向上される。更に、ラジエータ・ユニット12をベース31に複数の支柱18a、18bを介して結合することによって、遠心力を確実に分散支持することができる。また、冷却機10のラジエータ・ユニット12等の部品の負荷が作用しない部分、例えば、冷却機筐体カバー11等の遠心力が作用しない部分の軽量化を図ることができる。
【0041】
更に、ベース31は、回転体に固定されるため、ポンプ14A、14B、冷却ファン13A、13B、電源装置(図示せず)の遠心力による荷重が作用しても、ベースの変形が低減され、部品の破断の可能性が低減される。その結果、冷却機の耐性を向上させることができる。
【0042】
更に、回転体の回転加速時に発生する慣性力F1、F2、F3が冷却機に作用しても、冷却機固定面52からの冷却機の質量中心C1の高さと、支柱固定面32からの支持構造体60とラジエータ・ユニット12の合計の質量中心C2の高さと、固定台座固定面181A、181Bからの固定台座20とラジエータ・ユニット12の合計の質量中心C3の高さがともに小さく抑えられているため、固定部に作用する反力R1が慣性力F1以下に、反力R2が慣性力F2以下に、反力R3が慣性力F3以下に低減され、固定部のねじ等の固定部材に作用する負荷が小さく抑えられ、損傷を防ぐことができる。その結果、冷却機の耐性を向上させることができる。
【0043】
このように第1の実施形態によれば、大きい冷却能力に対応するために部品が大型化した冷却機の回転体の回転による遠心力と慣性力に対する耐性を確保することができる。
【0044】
以上のように、上述した実施の形態によれば、CT装置の回転体の回転による遠心力と慣性力に対する耐性が向上した冷却機を実現することができる。
【0045】
本発明の一つの実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
2・・・X線発生器、4・・・回転中心軸、5・・・回転体、8・・・X線検出器、10・・・冷却機、11・・・冷却機筐体カバー、12・・・ラジエータ・ユニット、13A、13B・・・冷却ファン、14A、14B・・・ポンプ、16・・・吸気導入口、16A、16B・・・吸気口、17A,17B・・・排気口、18A,18B・・・支柱、19A、19B・・・ラジエータ、20・・・固定台座、21A、21B・・・取り付け部、22・・・排気部、22A,22B・・・補強部材、23A、23B・・・固定台座のフレーム構造、31・・・ベース、32・・・支柱固定面、40・・・空洞、51・・・冷却機搭載部、52・・・冷却機固定面、60・・・支持構造体、100・・・ガントリ、108・・・筐体、111・・・冷却機筐体、112・・・冷却機筐体の頂部、120・・・寝台、121・・・ラジエータ・ユニットの頂部、181A、181B・・・固定台座固定面、201、202・・・固定台座の固定部、311、312・・・ベースの固定部、601、602・・・支持構造体の固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に搭載され、当該回転体とともに当該回転体の回転中心軸の周りに回転されるX線発生器を冷却する為の冷却機において、
前記回転体の冷却機固定面に固定され、この回転体に設けた排気部に連通される排気口を有するベースと、
前記ベースを前記冷却機固定面に固定するベース第1固定部であって、前記ベースの前記回転体の回転方向に関して上流側にある一辺に隣接して設けられるベース第1固定部と、
前記ベースを前記冷却機固定面に固定するベース第2固定部であって、前記ベースの前記回転体の回転方向に関して下流側にある一辺に隣接して設けられるベース第2固定部と、
前記X線発生器で発生した熱を外部の雰囲気に放出する為のラジエータ・ユニットであって、前記X線発生器とは、配管で連結されているラジエータ・ユニットと、
前記ベース上に配置固定され、前記X線発生器及び前記ラジエータ・ユニットとの間で前記配管を介して冷却液を循環させるポンプ装置と、
前記ベース上に排気空間を規定するとともに前記ラジエータ・ユニットが配置される吸気導入口を規定する冷却機筐体と、
前記排気部上の前記ベースに配置固定され、前記吸気導入口に設けた前記ラジエータ・ユニットを介して前記冷却機筐体外から前記排気空間に吸気し、前記排気口及び前記排気部を介して前記排気空間から排気する冷却ファン装置と、
前記ラジエータ・ユニットを支持する前記ベースに固定された支持構造体であって、前記ラジエータ・ユニットを前記回転中心軸側に向けられるように屋根型に突出して配置する支持構造体と、
を具備するとともに、前記冷却機固定面からの前記冷却機筐体の頂部の高さが前記ベース第1固定部と前記ベース第2固定部の間の距離より小さいことを特徴とする冷却機。
【請求項2】
前記支持構造体は、前記ベースの支柱固定面に立設された複数の支柱及び当該複数の支柱の固定台座固定面に取り付け固定された固定台座から構成され、この固定台座が前記回転中心軸側に向けて屋根型に突出するフレーム構造で構成され、前記ラジエータ・ユニットを当該フレーム構造に取り付け固定していることを特徴とする請求項1に記載の冷却機。
【請求項3】
前記支持構造体を前記支柱固定面に固定する支持構造体第1固定部であって、前記支持構造体の前記回転体の回転方向に関して上流側にある前記複数の支柱に設けられる支持構造体第1固定部と、
前記支持構造体を前記支柱固定面に固定する支持構造体第2固定部であって、前記支持構造体の前記回転体の回転方向に関して下流側にある前記複数の支柱に設けられる支持構造体第2固定部と、
を具備するとともに、前記支柱固定面からの前記ラジエータ・ユニットの頂部の高さが前記支持構造体第1固定部と前記支持構造体第2固定部の間の距離より小さいことを特徴とする請求項2に記載の冷却機。
【請求項4】
前記固定台座を前記固定台座固定面に固定する固定台座第1固定部であって、前記固定台座の前記回転体の回転方向に関して上流側にある前記フレーム構造に設けられる固定台座第1固定部と、
前記固定台座を前記固定台座固定面に固定する固定台座第2固定部であって、前記固定台座の前記回転体の回転方向に関して下流側にある前記フレーム構造に設けられる固定台座第2固定部と、
を具備するとともに、前記固定台座固定面からの前記ラジエータ・ユニットの頂部の高さが前記固定台座第1固定部と前記固定台座第2固定部の間の距離より小さいことを特徴とする請求項2〜3に記載の冷却機。
【請求項5】
前記ラジエータ・ユニットは、前記ポンプに並列に連結された複数のラジエータを有することを特徴とする請求項1〜4に記載の冷却機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の冷却機を具備することを特徴とするCT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−84572(P2013−84572A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−169319(P2012−169319)
【出願日】平成24年7月31日(2012.7.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)
【Fターム(参考)】