説明

冷却水吸い込み防止キャップ

【課題】上蓋がキャップ本体に螺子係合するキャップにおいて、上記したような欠点を解決し、キャップの容器への打栓時に衝撃を受けてもキャップが変形しにくく、上蓋とキャップ本体との密封性が高く、冷却水をかけても冷却水の吸い込みを防止することができるキャップを提供する。
【解決手段】
上蓋とキャップ本体からなる合成樹脂製のキャップにおいて、該キャップ本体に螺条を有する螺条筒を形成し、上蓋のスカート壁内面に前記螺条に螺着する螺条を形成し、前記螺条筒の上端部に環状シール部として、環状突条を形成するとともに、前記上蓋スカート壁に段差部を設け、その内面に環状シール受部として前記環状突条が嵌合する凹条を形成し、両者を圧接させることで、上蓋とキャップの密封性を高め冷却水の吸い込みを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部に打栓装着される合成樹脂製のキャップであって、さらに詳細には上蓋とキャップ本体から構成され、該上蓋がキャップ本体に螺子係合される形態の合成樹脂製キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上蓋がキャップ本体に螺着される合成樹脂製のキャップとして種々のものが知られている。例えば、特開平10−59397号公報に開示されるように、冷却水吸い込み防止キャップが実用に供されている。前記従来技術では、上蓋を螺着壁と側筒壁との二重壁構造とするとともに、キャップ本体の嵌合筒上端周縁に、上壁上面から傾斜して立ち上がる傾斜面を有する突出リングを形成し、前記側筒壁下端に前記突出リングに接合する傾斜面を形成し、両者を密接させることで、容器の加熱殺菌後のキャップ内空間が負圧になった状態で冷却水をかけても、冷却水の吸い込みを防止することが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このように嵌合筒上端周縁に形成した突出リングと側筒壁下端に形成した傾斜面を密接させた場合には、該密接が周方向全体に亘って達成されている時には有効であるが、打栓時の強い衝撃等により上蓋に変形が生じた場合や、下蓋(特に突出リング近傍)の僅かな変形により、密接が部分的に達成されなかった場合、冷却水の吸い込みの防止を達成できないという問題がある。また上蓋を二重壁構造とすることは、金型構造が複雑となり、また使用する樹脂量が増えるため好ましくない。
【0004】
【特許文献1】特開平10−59397号公報
【0005】
本発明は、従来の上蓋がキャップ本体に螺子係合するキャップにおいて上記したような欠点を解決し、キャップの容器への打栓時に衝撃を受けてもキャップが変形しにくく、上蓋とキャップ本体とのシール性が高く、冷却水をかけても冷却水の吸い込みを防止することができ、さらに製造が容易なキャップを提供することを目的とするものである。

【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、上蓋とキャップ本体からなる合成樹脂製のキャップにおいて、該キャップ本体に螺条を有する螺条筒を形成し、上蓋のスカート壁内面に前記螺条に螺着する螺条を形成し、前記螺条筒の上端部に環状シール部を形成し、前記上蓋スカート壁に段差部を設け、その内面において、前記環状シール部と圧接する環状シール受部を形成することによって、上蓋とキャップとの間の密封性を高め冷却水の吸い込みを防止する合成樹脂製のキャップを提供することにある。
【0007】
本発明の第1の実施態様においては、前記螺条筒の上端部に形成した環状シール部に環状突条を形成するとともに、前記上蓋のスカート壁段差部内面に形成した環状シール受部として、前記環状突条が嵌合する凹条を形成することによって、閉蓋に際してその両者を密接に圧接させることで両者の密封性の向上を果たすことができる。また、第2の実施態様においては、環状シール部および/または環状シール受部を突起形状の環状コンタクトリングとすることで、密封性を確実なものとすることができる。
【0008】
通常このようなキャップにおいては、加熱殺菌処理された高温の内容物を充填後、キャップを容器口部に打栓装着してから、冷却用のシャワーを容器にかけるため、キャップ内部が負圧状態になり、冷却水を吸い込み易い状態になっているが、本発明のキャップは上記のように構成されているので、キャップ本体の螺条筒上端部に形成された突条と上蓋段差部の内壁に形成された凹条が、上下方向および/または半径方向に嵌合することにより、上蓋とキャップ本体との螺着の緩みを防ぐことができ、強固な密封性を維持することができ、冷却水の吸い込みを確実に防ぐことができる。
【0009】
本発明によれば、環状シール部を螺条筒の直上に設けたことにより、螺子係合力がそのまま、該シール部の圧接力となり、強固なシールを達成することができる。
さらに、本発明では、上蓋のスカート壁に段差部を設け、該段差部の内面に環状シール受部を設けたので、打栓時の衝撃が螺条筒を介してキャップ本体に直達するため、キャップの変形を防ぐことができる。
【0010】
また本発明によれば、キャップ本体に形成される注出筒先端部を上蓋の内壁に当接させることにより、前記上蓋とキャップ本体に形成されたシール部に加えて、2重のシール部を形成することができるので、冷却水の吸い込みを確実に防ぐことができる。
また、上蓋内側天井面から注出筒の上面に当接するように環状補助突起部を垂下させることによりさらに密封性が強化され、冷却水の吸い込み防止に高い効果を示すキャップを提供することができる。
【0011】
本発明のキャップは、従来の螺子係合するキャップと同様にキャップ本体の螺条と上蓋のスカート部内壁の螺条を係合するタイプのものなので、上蓋を二重壁にしてキャップ本体の螺条と密接させる必要がなく、製造が容易である上に、使用する樹脂量も少なく製造コストを低く抑えることができる。
【0012】
また本発明によれば、加熱殺菌後の高温の内容物を充填した容器の冷却工程における冷却水のキャップ内部への吸い込みが防止されるので、キャップの中に水滴が滞留することがなく、それによるカビや雑菌の繁殖等を抑えることができ、消費者に衛生上安全な食品等の内容物を提供することができる。
【0013】
本発明のキャップを構成する材料として、従来の合成樹脂製のキャップと同様に、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂を使用することが好ましいが、容器内に充填する食品、洗剤等の内容物により材料は適宜選択するものとする。
【発明の効果】
【0014】
上記したように、本発明は、螺子係合するキャップにおいて、加熱殺菌処理をした高温の内容物を充填後に容器に冷却水をかける工程において、キャップの隙間からキャップ内部への冷却水の吸い込みを防止するための密封性の高い構造を有するキャップを提供することができる。しかも製造が容易で廉価なキャップを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施態様を示す実施例を図1〜6を参照して説明する。
【0016】
最初に本発明の第1の実施例を図1乃至図3を使って説明すると、図1乃至図3において、1は本発明の合成樹脂製のキャップであって、キャップ本体2と上蓋3から構成される。4はキャップ本体に形成された螺条を有する螺条筒であり、該螺条筒4の外側には上蓋3のスカート壁5が垂下し、該スカート壁5の内側に形成された螺条部6が前記螺条筒4と螺着している。前記螺条筒4の上端部には環状シール部8の一例である環状突条10が形成されている。上蓋3のスカート壁5は、小径部5aと大径部5bとを備えており、該両部5a、5bの連結部は段差部7となっている。前記環状突条10は、前記スカート壁5に形成された段差部7の内面と嵌合している。なお、本実施例においては、該環状シール部8には環状突条10が、また前記段差部7の内面には環状シール受部9として凹条11が形成され両者が上下方向および半径方向に嵌合して密封性を高めている。図1〜3において、嵌合する方向は斜上であるが、嵌合が十分に作用する方向であれば、嵌合方向は特に制限されない。
【0017】
図3に示すように、注出筒13の先端部を上蓋3の内面に当接させることにより、さらにキャップ本体と上蓋の密封性を高めることができる。また、図示していないが、上蓋3の天面壁14の内側から環状補助突起を垂下させ注出筒13の上端部に当接させることもできる。このように、キャップの内部を幾つもの空間に仕切ることにより、キャップ内の食品等の内容物が通過する部分に外部からの冷却水を吸い込まないように工夫されている。
【0018】
次に本発明の第2の実施例を図4〜7を参照して説明する。図中の参照番号1〜8は上記実施例1のキャップと同じ作用を持つものである。実施例1と比べて、実施例2の異なる点は、螺条筒4の上端面に形成された環状シール部8と、上蓋3のスカート壁5の段差部7の内面の環状シール受部9の形状が異なることである。図4〜6では、環状シール受部9を尖頭を有する突起状の環状コンタクトリング12とし、閉蓋に際して該環状コンタクトリング12の先端を前記螺条筒4上端面に当接させることにより、両者を上下方向に圧接している。また図7に示すように、環状シール部8を環状コンタクトリング12として、該段差部7の内面に当接させても良い。
【0019】
図6および図7に示すように実施例2では、上蓋3の内側から注出筒13の上端部に当接する環状補助突起15が形成されている。上記した環状コンタクトリング12による螺条筒4上端面と前記スカート壁5段差部7内面の圧接に加え、前記環状補助突起15により冷却水の吸い込みをさらに防止することができ、キャップの密封性を高めることができる。
【0020】
以上述べたように、本発明のキャップは上記したように構成されているので、容器の加熱殺菌後に冷却のために冷却水をかけても、キャップ本体と上蓋が上下方向および半径方向に圧接しているので、キャップの内部への冷却水の吸い込みを防止することができる。また環状シール部を螺条筒の直上に設けたことにより螺子係合力がそのまま前記環状シール部の圧接力となりキャップ本体と上蓋の密接力がさらに高まる効果がある。しかも本発明のキャップは製造が容易であり、製造コストを低く抑えることができるなど、優れた点が多い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施例の拡大断面斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施例の一部断面正面図である。
【図3】図2の環状シール部の拡大断面図である。
【図4】本発明の第2の実施例の拡大断面斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施例の一部断面正面図である。
【図6】図5の環状コンタクトリングおよび環状補助突起の拡大断面図である。
【図7】本発明の第2の実施例で環状シール部に形成された環状コンタクトリングおよび環状補助突起の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 キャップ
2 キャップ本体
3 上蓋
4 螺条筒
5 スカート壁
6 螺条部
7 段差部
8 環状シール部
9 環状シール受部
10 環状突条
11 凹条
12 環状コンタクトリング
13 注出筒
14 天面壁
15 環状補助突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上蓋(3)とキャップ本体(2)からなる合成樹脂製のキャップ(1)であって、該キャップ本体(2)に螺条を有する螺条筒(4)と、前記上蓋(3)のスカート壁(5)内面に前記螺条に螺着する螺条部(6)を設け、前記螺条筒(4)の上端部に環状シール部(8)を形成し、前記上蓋(3)スカート壁(5)に段差部(7)を設け、該段差部(7)の内面において前記環状シール部(8)と圧接する環状シール受部(9)を形成することを特徴とする合成樹脂製の冷却水吸い込み防止キャップ。
【請求項2】
前記環状シール部(8)が、環状突条(10)であり、前記環状シール受部(9)が凹条(11)であることを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製の冷却水吸い込み防止キャップキャップ。
【請求項3】
前記環状シール部(8)および/または環状シール受部(9)が、環状のコンタクトリング(12)であることを特徴とする、請求項1記載の合成樹脂製の冷却水吸い込み防止キャップ。












【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−154927(P2009−154927A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336091(P2007−336091)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000175397)三笠産業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】