冷却装置および加熱装置
【課題】冷却効率を向上させ、冷却処理を高速化できる冷却装置を提供する。他の課題は、加熱効率を向上させ、加熱処理を高速化できる加熱装置を提供する。
【解決手段】冷却装置は、チャンバ211と、基板1を保持するための基板キャリア2であって、チャンバの搬入口からチャンバ内部の停止位置に搬入されて、さらに前記チャンバの搬出口から搬出される基板キャリア2と、チャンバ内の停止位置に搬入された基板キャリア2の両側に配置された第1冷却板3a、及び第2冷却板3bと、第1冷却板3a又は第2冷却板3bのうち少なくとも一つに設けられ、基板にガスを放出するガス放出口4と、ガス放出口4にガスを供給するガス供給手段と、基板キャリア2に近接して第1冷却板及び第2冷却板を移動する移動手段と、を備える。
【解決手段】冷却装置は、チャンバ211と、基板1を保持するための基板キャリア2であって、チャンバの搬入口からチャンバ内部の停止位置に搬入されて、さらに前記チャンバの搬出口から搬出される基板キャリア2と、チャンバ内の停止位置に搬入された基板キャリア2の両側に配置された第1冷却板3a、及び第2冷却板3bと、第1冷却板3a又は第2冷却板3bのうち少なくとも一つに設けられ、基板にガスを放出するガス放出口4と、ガス放出口4にガスを供給するガス供給手段と、基板キャリア2に近接して第1冷却板及び第2冷却板を移動する移動手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体の製造工程において用いられる、基板の冷却装置および加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体の製造工程において、基板は、真空中に搬送されて、成膜、加熱、冷却などのさまざまな処理が施される。装置のスループットを向上させるため、各チャンバにおいて処理に要する処理時間(タクトタイム)を短縮化することが求められている。このようにタクトタイムを短縮化しつつも、冷却効率を高めるために、冷却プレートを基板に対して、近接させる構成を備える冷却装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−537356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、高密度の磁性膜を成膜するため、基板を高温に加熱して、成膜処理が行われている。一方、装置のスループットを向上させるため、タクトタイムは短縮化している。そのため、短時間で高速で冷却する冷却装置が求められている。しかしながら、従来の冷却装置は、冷却効率が十分ではなく、スループットの低下を招くという問題が生じている。
【0005】
そこで、本発明は上記従来技術が有する問題を鑑みてなされたものであり、冷却効率を高め、高速に冷却可能な冷却装置を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明の他の目的は、基板の加熱効率を高め、高速に基板の加熱が可能な加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、このような目的を達成するために、冷却装置であって、チャンバと、前記チャンバ内に設けられ、基板を冷却するように構成された第1冷却手段と、前記チャンバ内において前記第1冷却手段と対向配置され、前記基板を冷却するように構成された第2冷却手段と、前記第1冷却手段と前記第2冷却手段との間の配置領域に、基板を保持している基板保持部を配置するように構成された配置手段と、前記第1冷却手段および第2冷却手段のうち少なくとも一方に設けられ、基板冷却に寄与するガスを放出するガス放出口と、前記ガス放出口に前記ガスを供給するガス供給手段と、前記配置領域に配置された前記基板保持部に近接するように、前記第1冷却手段及び第2冷却手段を移動する移動手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の第2の態様は、加熱装置であって、チャンバと、前記チャンバ内に設けられ、基板を加熱するように構成された第1加熱手段と、前記チャンバ内において前記第1加熱手段と対向配置され、前記基板を加熱するように構成された第2加熱手段と、前記第1加熱手段と前記第2加熱手段との間の配置領域に、基板を保持している基板保持部を配置するように構成された配置手段と、前記第1加熱手段および第2加熱手段のうち少なくとも一つに設けられ、基板加熱に寄与するガスを放出するガス放出口と、前記ガス放出口に前記ガスを供給するガス供給手段と、前記配置領域に配置された前記基板保持部に近接するように、前記第1加熱手段及び第2加熱手段を移動する移動手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の冷却装置によれば、冷却効率を向上させ、冷却処理を高速化することができ、スループットの向上を図ることができる。
また、本発明の加熱装置によれば、基板の加熱効率を向上させることができ、基板の加熱処理を高速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体製造装置の全体構成を説明する図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る冷却装置の内部構成を説明するための側断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る冷却装置の内部構成を説明するための側断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る冷却板を説明する図であって、図2のA−A矢視断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る第1囲い部及び第2囲い部の形状の変形例を説明する図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る第1囲い部及び第2囲い部の形状の変形例を説明する図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る第1囲い部及び第2囲い部の形状の変形例を説明する図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る第1囲い部及び第2囲い部の形状の変形例を説明する図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る冷却装置の内部構成を説明するための側断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る冷却部の正面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る冷却部の背面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る基板と反対側から見た冷却部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体製造装置の全体構成を説明する図である。
なお、本明細書において、「磁気記録媒体」という用語は、情報の記録、読み取りに磁気のみを用いるハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク等の磁気ディスク等に限定されない。例えば、磁気と光を併用するMO(Magneto Optical)等の光磁気記録媒体、磁気と熱を併用する熱アシスト型の記録媒体も含むものとする。
また、基板は、センターに開口部を有する円板状であり、基板の両面に成膜するものである。
【0013】
図1に示すように、磁気記録媒体製造装置200には、キャリア2に基板1(図2)の搭載を行うロードロックチャンバ81、キャリア2から基板1の回収を行うアンロードロックチャンバ82、複数のチャンバ201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218が方形の輪郭に沿って配置されている。ロードロックチャンバ81、チャンバ201〜218、アンロードロックチャンバ82に沿って搬送路220が形成されている。搬送路には、基板1を搭載可能な、複数のキャリア2が該搬送路上を移動可能に設けられている。各チャンバにおいて処理に要する処理時間(タクトタイム)は、予め決められており、この処理時間(タクトタイム)が経過すると、キャリア2は、順次、次のチャンバに搬送されるように構成されている。
【0014】
磁気記録媒体製造装置200が1時間あたり約1000枚の基板を処理するためには、1つのチャンバにおけるタクトタイムは、約5秒以下、望ましくは約3.6秒以下となる。
【0015】
ロードロックチャンバ81、アンロードロックチャンバ82、及びチャンバ201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218の各々は、専用又は兼用の排気系によって排気可能な真空チャンバである。ロードロックチャンバ81、アンロードロックチャンバ82、及びチャンバ201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218の各々の境界部分、即ちキャリア2の搬出口及び搬入口には、ゲートバルブ(不図示)が設けられている。
【0016】
具体的には、磁気記録媒体製造装置200のチャンバ201は、基板1に第1軟磁性層を形成する。方向転換チャンバ202は、キャリア2の搬送方向を転換する。チャンバ203は、第1軟磁性層上にスペーサー層を形成する。チャンバ204は、スペーサー層上に第2軟磁性層を形成する。チャンバ205は、第2軟磁性層上にシード層を形成する。方向転換チャンバ206は、キャリア2の搬送方向を転換する。また、磁気記録媒体製造装置200は基板1を予め加熱するためのプレヒート用のチャンバ207(第1加熱チャンバ)と、チャンバ208(第2加熱チャンバ)と、を有する。更に、チャンバ209はシード層を形成することが可能である。
【0017】
チャンバ210は、シード層上に磁性層を形成するためのスパッタ装置として機能することが可能である。冷却チャンバ(冷却装置)211は、該磁性層が形成された基板100を冷却する。方向転換チャンバ212はキャリア2の方向を転換する。冷却チャンバ(冷却装置)213は、チャンバ内の停止位置にある基板1を冷却する。チャンバ214は、磁性層上に交換結合制御層を形成する。チャンバ215は交換結合制御層上に第3軟磁性層を形成する。方向転換チャンバ216は、キャリア2の方向を転換する。チャンバ217、及び218は、保護層を形成する。
【0018】
なお、磁気記録媒体製造装置200には、基板キャリア2の搬送処理、各チャンバの排気動作、成膜処理等を一括管理するための制御手段(例えば、コンピュータ)が設けられている。
【0019】
(第1実施形態)
次に、図2を参照して本発明の特徴部分である、冷却装置211の内部構成を説明する。図2は、冷却装置211の内部構成を説明するための側断面図である。
【0020】
冷却装置211は、チャンバ11と、基板1を保持するための基板保持部を有する基板キャリア2であって、チャンバ11の搬入口からチャンバ内部の停止位置に搬入され、さらにチャンバ11の搬出口から搬出されるように構成された基板キャリア2と、冷却装置211内における基板キャリア2の搬送路としての搬送路220を備える。また、冷却装置211は、チャンバ内の停止位置に搬入された基板キャリア2の両側に配置された第1冷却板3a、及び第2冷却板3bと、を備えている。第1冷却板3aおよび第2冷却板3bとは、チャンバ11内において対向配置されており、対向配置された第1冷却板3aと第2冷却板3bとの間の領域(配置領域)に、基板キャリア2が有する基板支持部が位置するように、基板キャリア2が搬送路220上を移動して上記停止位置に静止する。すなわち、冷却時に基板1が位置すべき領域(基板配置領域)に基板1が位置するように、基板キャリア2の移動、静止が制御されている。本実施形態では、上記制御手段の制御により搬送路上での基板キャリア2の停止および移動を実行する、基板キャリア2に備えられた搬送機構(不図示)と、搬送路220とが、基板保持部を上記配置領域に配置する配置手段として機能する。
【0021】
なお、本実施形態では、基板1を、基板保持部および移動機構の双方の機能を有する基板キャリアに保持させているが、これに限定されない。例えば、基板1を、基板保持部として機能する基板ホルダーに保持させても良い。この場合は、例えば、上記配置手段としての、回転及び伸縮可能なアームを有する搬送ロボットにより、基板ホルダーに保持された基板1が上記基板配置領域に位置するように上記基板ホルダーを上記配置領域に配置する構成を採用すれば良い。
【0022】
さらに冷却装置211は、第1冷却板3a、及び第2冷却板3bのうち少なくとも一つに設けられ、基板1に冷却ガスを放出するためのガス放出口4と、上記停止位置に位置する基板キャリア2に近接するように第1冷却板3a及び第2冷却板3bを移動させることが可能な移動手段としての移動機構10と、を備えている。なお、図示していないが、基板キャリア2には、基板を保持するための複数(例えば、3本)の保持爪が設けられている。
なお、移動機構10は、第1冷却板3a及び第2冷却板3bのそれぞれに対して設けられているが、図2においては、冷却ガス供給源40からガス放出口4への冷却ガスの供給を模式的に示すために、第1冷却板3aを駆動させるための移動機構10を便宜上省略している。
【0023】
第1冷却板3a及び第2冷却板3bは、基板を冷却するための部材であり、例えば熱伝導性が高い銅製のプレートで出来ており、第1冷却板3a及び第2冷却板3bの内部には、冷却水を循環する配管が設けられている。該配管には冷却水供給源(不図示)が接続されている。本実施形態では、上記制御手段が冷却水供給源を制御することにより、第1冷却板3aおよび第2冷却板3bの内部に設けられた配管に冷却水が流れる。該冷却水の循環により第1冷却板3aおよび第2冷却板3bが冷却され、上記基板配置領域に位置する基板1から第1冷却板3aおよび第2冷却板3bへと熱を伝達させて基板1を冷却することができる。
【0024】
移動機構10は、チャンバ11の搬入口からチャンバ内部の停止位置に搬入された基板キャリア2に対して、支持体(支持体9a、9b)を介して冷却板(第1冷却板3a、第2冷却板3b)を近接させて移動するための駆動源(モータ)を有している。チャンバ11の対向する側壁にはそれぞれ開口部が形成されており、それら開口部を介して支持体9a、9bがチャンバ11内に挿入されている。該挿入された支持体9aのチャンバ11の外側には移動機構10(図2では不図示)が連結されており、上記支持体9aのチャンバ11の内側にはベース部8aが接続されている。同様に、上記挿入された支持体9bのチャンバ11の外側には移動機構10が連結されており、上記支持体9bのチャンバ11の内側にはベース部8bが接続されている。このような構成において、上記制御手段の制御による移動機構10の駆動により、第1冷却板3aおよび第2冷却板3bを矢印方向Pに移動させることができる。
【0025】
本実施形態は、ベース部8aには第1冷却板3aが取り付けられており、該第1冷却板3aには上記ガス放出口4が形成されており、該ガス放出口4は、ガス供給手段としての冷却ガス供給源40から供給される冷却ガスの導入経路となるガス供給路4aに接続されている。このように、本実施形態では、冷却ガス供給源40から放出された冷却ガスは、ガス供給路4aを介してガス放出口4から放出される。なお、本実施形態では、ガス供給路4aは、支持体9a、ベース部8a、および第1冷却板3aの内部に設けられている。よって、本実施形態では、冷却板の移動機構と冷却ガスの導入経路とを別々に設ける必要が無くなり、冷却板を移動させることと、冷却板と基板とを近接して設けた空間に冷却ガスを導入することとを同一の構成で実現することができる。従って、冷却ガスの供給経路を引き回さなくても冷却ガスを基板1近傍に供給することができる。
【0026】
また、第1冷却板3aを取り付けているベース部8aには、第1冷却部3aを取り囲んだ囲い部5aが設けられている。同様に、第2冷却板3bを取り付けているベース部8bには、第2冷却部3bを取り囲んだ囲い部5bが設けられている。
【0027】
図3は、第1冷却板3a及び第2冷却板3bを基板キャリア2に近接した位置(例えば、冷却板と基板との距離は2mm以内)にある状態を示している。上記制御手段からの制御コマンドにより移動機構10が駆動し、該駆動により第1冷却板3aおよび第2冷却板3bが図3中の矢印方向Qに移動し、第1冷却板3aおよび第2冷却板3bの双方が基板配置領域に位置する基板1の近傍に配置される。なお、図3には示されていないが、囲い部5aには、基板1を保持する保持爪を回避するための切り欠き部(図4の符号7)が設けられている。
【0028】
第1冷却板3aには、冷却ガス供給源40からの冷却ガス(例えば、ヘリウム、又は水素)を基板1に放出するためのガス放出口4が設けられている。ガス放出口4は、図4に示すように、第1冷却板3aの中央部で、基板1のセンター開口部にガスを放出する位置に設けられている。円筒状の囲い部5aには、基板キャリア2の保持爪と接触しないように、上記保持爪の各々と対応する位置の3ヶ所に切り欠き部7が設けられている。
なお、本実施形態では、第1冷却板3aのみに、ガス放出口5を設けたが、第2冷却板3bにもガス放出口5を設けてもよい。
【0029】
また、第1冷却板3aが設けられる部材としてのベース部8aにおいて第1冷却板3aの周囲には、第2冷却板3bに向けてベース部8aから延設された円筒状の第1囲い部5aが設けられている。また、第2冷却板3bが設けられる部材としてのベース部8bにおいて第2冷却板3bの周囲には、第2冷却板3bに向けてベース部8bから延設された円筒状の第2囲い部5bが設けられている。すなわち、第1囲い部5aは、自身が設けられたベース部8aに支持された第1冷却板3aの周囲を囲み、かつ第1冷却板3aに対向配置された第2冷却板3bの方に延在するように構成されている。また、第2囲い部5bは、自身が設けられたベース部8bに支持された第2冷却板3bの周囲を囲み、第2冷却板3bに対向配置された第1冷却板3aの方に延在するように構成されている。さらに、第1囲い部5aおよび第2囲い部5bはそれぞれ、第1冷却板3aおよび第2冷却板3bとを連通させるための開口を有する。
【0030】
より具体的には、第1囲い部5aは、ベース部8aの第1冷却板8aが設けられた第1の面8cと、ベース部8bの第2冷却板3bが設けられた第2の面8cとの間の空間の少なくとも一部を囲うようにベース部8aに設けられている。同様に、第2囲い部5bは、上記第1の面8cと、上記第2の面8dとの間の空間の少なくとも一部を囲うようにベース部8bに設けられている。
なお、本明細書において、「円筒状」とは、ほぼ円筒状を意味し、円筒状の一部が切り欠いていた形状も含むものである。
【0031】
図2、3に示すように、第1囲い部5aの方が、第2囲い部5bより長く形成されているが、特にこれに限定されるものではない。すなわち、本実施形態では、図3に示すように、基板1に対して第1冷却板3aおよび第2冷却板3bが近接して配置された状態(実際に冷却動作を行う状態)において、上記第1の面8cと上記第2の面8dとの間の空間を第1囲い部5aおよび第2囲い部により覆うことが重要であり、該事項を実現できれば、第1囲い部5aおよび第2囲い部の長さはいずれの長さでも良いのである。すなわち、囲い部の長さは、基板1の冷却時に位置する第1冷却板3aの第1の面8cと、該冷却時に位置する第2冷却板3bの第2の面8dとの間の距離以下の長さであれば、該冷却時における上記第1の面8cと第2の面8dとの間の空間の少なくとも一部を囲うことができる。よって、後述するように、囲い部により、基板近傍に供給された冷却ガスが基板1が配置された空間から外に漏れるのを低減することができる。
【0032】
本実施形態では、第1囲い部5aと、第2囲い部5bは、いずれも基板面の中心を軸とする同心円状に形成された囲い部であるが、第1囲い部5aの直径の方が、第2囲い部5bより小さくなるように形成されている。これにより、図3に示すように、第1冷却板3a及び第2冷却板3bが基板キャリア2に接近した際、第1囲い部5aと、第2囲い部5bは、互いに非接触で入れ違いに配置され、その隙間がラビリンス形状を形成するようになっている。これにより、基板1を囲む閉空間を形成することができ、冷却ガスを漏れにくくすることができる。よって、基板1の冷却効率を向上させることができる。
なお、本実施形態では、第1囲い部5aおよび第2囲い部5bの閉ループの形状を同心円状としているが、これに限定されない。本実施形態では、基板1と第1冷却板3aと第2冷却板3bとを近接して配置した際に(すなわち、冷却動作を行う際に)、基板1の周囲に供給された冷却ガスを基板1近傍の空間から逃さないようにするために、第1囲い部5aおよび第2囲い部5bを設けている。よって、このような作用を奏することができるのであれば、第1囲い部5aおよび第2囲い部5bの形状は、いずれであっても良く、例えば閉ループ状の四角形、五角形、六角形といった多角形であっても良い。
【0033】
冷却装置における上述した各種動作は、制御手段により、制御されている。制御手段は、移動機構10を駆動して第1冷却板3a及び第2冷却板3bを基板キャリア2に向けて接近させた後(図3の状態)、冷却ガス供給源40を制御して冷却ガスを供給経路4aに供給すると共に、冷却水供給源を制御して冷却水を第1冷却板3aおよび第2冷却板3bの内部に供給するように構成されている。これにより、基板1を囲む閉じた空間に効率よく冷却ガスを導入でき、第1冷却板3aおよび第2冷却板3bの冷却作用に加えて、上記冷却ガスによる冷却作用により、冷却効率を高めることができる。
【0034】
なお、本明細書において、「冷却ガス」とは、基板冷却に寄与するガスであり、その基板冷却作用が異なる場合であっても、結果として基板を冷却することができるものであればいずれも本発明に係る冷却ガスに含まれる。
例えば、上述のように冷却ガスとしてヘリウムや水素を用いる場合は、ヘリウムまたは水素が上記第1の面および第2の面との間の空間に存在することにより、基板1から第1冷却板3aおよび第2冷却板3bへの熱の伝達を促進することができる。すなわち、ヘリウムや水素は熱伝達用の媒体として機能することになり、基板1から第1冷却板3aおよび第2冷却板3bに熱をより効率良く伝達することができるので、ヘリウムや水素といった熱伝達媒体となるガスは本発明の冷却ガスに含まれる。
また、温度が低いガス(例えば、基板1よりも温度が低いガス)を冷却ガスとして用いても良い。この場合は、冷却ガス供給源40にて、温度が低いガスを生成して、該冷却ガス供給源40から供給経路4aを介してガス放出口4へと供給すれば良い。この場合は、基板1には該基板1よりも温度が低いガスが吹き付けられるので、基板1から第1冷却板3aおよび第2冷却板3bへの熱の移動による冷却に加えて、上記ガス自体により基板1を冷却することができる。
このように、本発明では、冷却ガスは、間接的に作用して基板1を冷却するガス、および直接的に作用して基板1を冷却するガスの双方を含み、そのガスを用いることによって基板を冷却するものであればいずれのガスも本発明の冷却ガスと言える。
【0035】
上述のように、本実施形態では、第1冷却板3aおよび第2冷却板の双方を基板1に近接させた状態で基板1の冷却を行うので、冷却板による冷却、すなわち基板1から第1冷却板3aおよび第2冷却板3bへの熱の移動を効率良く行うことができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、基板1からの熱の受け皿となる第1冷却板3aおよび第2冷却板3bの少なくとも一方に、冷却ガスを放出するように構成されたガス放出口4を設けているので、基板1に近接した位置から冷却ガスを基板1に供給することができる。その結果、基板1の冷却効率をさらに向上させることができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、第1囲い部5aを第1冷却板3aが設けられたベース部8aに設け、第2囲い部5bを第2冷却板3bが設けられたベース部8bに設けている。従って、冷却動作を行う際に第1冷却板3aと第2冷却板3bと基板1とが近接するように第1冷却板3aおよび第2冷却板3bとを位置させると、基板1、第1冷却板3a、および第2冷却板3bを囲む空間が自動的に形成される。よって、第1冷却板3aに形成されたガス放出口4から放出された冷却ガスが上記囲む空間から外に漏れるのを低減することができるので、さらに冷却効率を向上することができる。
【0038】
また、第1囲い部5aおよび第2囲い部5bを設け、冷却動作時においては基板1に対して近接して配置される第1冷却板3aおよび第2冷却板3bの少なくとも一方にガス放出口4を設けているので、第1囲い部5a、第2囲い部5b、ベース部8a、およびベース部8bにより区画された空間(上記囲む空間)に冷却ガスを放出することができる。よって、基板冷却に作用する冷却ガスを必要な箇所(上記区画された空間内)に限定的に存在させることができる。すなわち、本実施形態では、基板冷却時に、第1冷却板3aおよび第2冷却板3bに対して基板1を近接した状態で基板1を囲むように形成された衝立により規定された空間を自動的に形成し、該空間内に限定的に冷却ガスを供給することができる。
【0039】
(変形例1)
図5は、第1囲い部及び第2囲い部の形状の変形例1を説明する図である。
本変形例では、第1囲い部5aと、第2囲い部5bとは、いずれも基板面の中心を軸とする同心円状に形成された囲い部であり、かつ第1囲い部5aの直径と、第2囲い部5bの直径は等しくなるように形成されている。つまり、図5に示すように、第1冷却板3a及び第2冷却板3bが基板キャリア2に接近した際、第1囲い部5aの先端及び第2囲い部5bの先端が互いに接触するようになっている。
【0040】
(変形例2)
図6は、第1囲い部及び第2囲い部の形状の変形例2を説明する図である。
本変形例における第1囲い部5a及び第2囲い部5bは、いずれも基板キャリア2の開口部の中に挿入されるようになっている。挿入された第1囲い部5a及び第2囲い部5bが基板キャリア2の保持爪とぶつからないように、第1囲い部5a及び第2囲い部5bのいずれにも、基板キャリア2の保持爪を回避するため、切り欠き部(不図示)が形成されている。第1囲い部5aと第2囲い部5bとの間の隙間は、ラビリンス形状を形成しているため、基板1を囲む空間に導入された冷却ガスが漏れにくい構成となっている。
【0041】
(変形例3)
図7は、第1囲い部及び第2囲い部の形状の変形例3を説明する図である。
本変形例では、第1囲い部5a及び第2囲い部5bとは別に、基板キャリア2の基板を保持する側に、両側面に第1凹部及び第2凹部を有する端部6が形成されている。図7に示すように、冷却板3が基板に接近した時に、この第1凹部及び第2凹部に、第1囲い部5a及び第2囲い部5bが挿入されて、第1囲い部5aと第1凹部、及び第2囲い部5bと第2凹部とがラビリンス形状となるように構成されている。
【0042】
(変形例4)
図8は、第1囲い部及び第2囲い部の形状の変形例4を説明する図である。
本変形例では、第1囲い部5a及び第2囲い部5bとは別に、基板キャリア2の基板を保持する側に、第1冷却板3及び第2冷却板3に向かって突き出した端部6が形成されている。上述した変形例と同様に、第1囲い部5a及び第2囲い部5bと端部6との間は、ラビリンス形状となるように構成されている。
【0043】
(他の変形例)
なお、図2〜7に例示した形態では、第1囲い部5aおよび第2囲い部5bの双方を設けているが、第1囲い部5aおよび第2囲い部5bのいずれか一方のみを設ける形態であっても良い。
【0044】
なお、上述した実施形態では、基板を冷却するための冷却手段として冷却板3を用いたが、これに限定されず、ヒーターなどを備えた、基板を加熱するための加熱手段としての加熱板を用いてもよい。また、加熱板を備えた装置は、図1において第1加熱チャンバ207又は第2加熱チャンバ208として採用することができる。なお、加熱装置として用いる場合は、上記ガス放出口4から放出させるガスは、加熱ガスとなる。よって、冷却ガス供給源40を加熱ガス供給源に変更すれば良い。
【0045】
本明細書において、「加熱ガス」とは、基板加熱に寄与するガスであり、その基板加熱作用が異なる場合であっても、結果として基板を加熱することができるものであればいずれも本発明に係る加熱ガスに含まれる。
例えば、上記加熱ガスとしては、ヘリウムや水素といった熱伝達媒体となるガスや、基板よりも温度が高いガスなどを用いれば良い。このように、本発明では、加熱ガスは、間接的に作用して基板1を加熱するガス、および直接的に作用して基板1を加熱するガスの双方を含み、そのガスを用いることによって基板を加熱するものであればいずれのガスも本発明の加熱ガスと言える。
【0046】
なお、本発明の冷却装置、加熱装置は、各変形例で述べられたいかなる特徴を組み合わせることによって構成することができる。
【0047】
(第2実施形態)
図9乃至12を参照して、本発明の第2実施形態に係る冷却装置を説明する。図9は、本発明の第2実施形態に係る冷却装置の全体構成を説明するための側断面図である。図9では図2と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。図2に示した、第1実施形態に係る冷却装置では、冷却手段としての冷却板3の内部に冷却水を循環する配管が設けられているのに対し、本実施形態に係る冷却装置では、冷却手段として、基板を冷却するためのペルチェ素子31が設けられている。
【0048】
図9に示すように、チャンバ壁11を隔てて真空側に、冷却装置211が設けられ、大気側には、移動手段としての移動機構10及び電力導入手段(不図示)が設けられている。移動機構10は、モーターの回転力をボールネジで直線運動に変えることで、ベース部12が前後する。これにより、シャフト38を介してペルチェ素子31を基板に接近させることができる。
【0049】
図10は、冷却装置の拡大断面図である。
セラミック等からなる熱伝達機能を有する熱伝達部30の裏側には、第1金属部35及び第2金属部34に挟持されたペルチエ素子31が設けられている。ペルチエ素子31は、P型半導体素子とN型半導体素子とが交互に等間隔で配置されて構成されている。ペルチエ素子31は、上記電力導入手段に接続された配線36を介して、第1金属部35及び第2金属部34間に電流を流すことで、冷却効果を奏する。ペルチエ素子31の前面側が冷却されると、ペルチエ素子31の後背面側は放熱する。この熱を冷却するため、ペルチエ素子31の後背面側には、ペルチエ素子31を冷却する冷却エアーを導入するためのエアー配管37が設けられている。このエアーがチャンバ内部の真空空間に漏れないように、ペルチエ素子31と熱伝達部30との間は、Oリング33によってシールされている。同様に、熱伝達部30とベース板32との間も、Oリング33によってシールされている。
【0050】
図11は、基板側から見た、冷却部を示す図である。円盤状のペルチエ素子31は、該ペルチエ素子31よりも径が大きな円盤状の第1金属部35に設けられており、図11では不図示である。該円盤状の第1金属部35は、外縁に設けられた4つの穴39を介して、熱伝達部30にネジ止め可能になっている。また、ペルチエ素子31および第1金属部35の中心部には、前述したガス導出口4と連結するための開口が設けられている。
【0051】
図12は、基板と反対側から見た冷却部を示す図である。図示するように、ペルチエ素子31は、交互に等間隔に配置されているが、これに限定されず自由に設計することができる。
【0052】
以上、第2実施形態に係る冷却装置では、第1実施形態と異なり、冷却板内に冷却水を導入するための配管を設ける必要がないので、水漏れの心配はない。同様に、本実施形態の冷却装置は、冷却板内に冷却水を導入するための配管がないので、チャンバをベントするときに結露することがない。
【符号の説明】
【0053】
1 基板
2 基板キャリア
3a、3b 冷却板
4 ガス放出口
5a、5b 囲い部
10 移動機構
31 ペルチエ素子
40 冷却ガス供給源
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体の製造工程において用いられる、基板の冷却装置および加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体の製造工程において、基板は、真空中に搬送されて、成膜、加熱、冷却などのさまざまな処理が施される。装置のスループットを向上させるため、各チャンバにおいて処理に要する処理時間(タクトタイム)を短縮化することが求められている。このようにタクトタイムを短縮化しつつも、冷却効率を高めるために、冷却プレートを基板に対して、近接させる構成を備える冷却装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−537356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、高密度の磁性膜を成膜するため、基板を高温に加熱して、成膜処理が行われている。一方、装置のスループットを向上させるため、タクトタイムは短縮化している。そのため、短時間で高速で冷却する冷却装置が求められている。しかしながら、従来の冷却装置は、冷却効率が十分ではなく、スループットの低下を招くという問題が生じている。
【0005】
そこで、本発明は上記従来技術が有する問題を鑑みてなされたものであり、冷却効率を高め、高速に冷却可能な冷却装置を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明の他の目的は、基板の加熱効率を高め、高速に基板の加熱が可能な加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、このような目的を達成するために、冷却装置であって、チャンバと、前記チャンバ内に設けられ、基板を冷却するように構成された第1冷却手段と、前記チャンバ内において前記第1冷却手段と対向配置され、前記基板を冷却するように構成された第2冷却手段と、前記第1冷却手段と前記第2冷却手段との間の配置領域に、基板を保持している基板保持部を配置するように構成された配置手段と、前記第1冷却手段および第2冷却手段のうち少なくとも一方に設けられ、基板冷却に寄与するガスを放出するガス放出口と、前記ガス放出口に前記ガスを供給するガス供給手段と、前記配置領域に配置された前記基板保持部に近接するように、前記第1冷却手段及び第2冷却手段を移動する移動手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の第2の態様は、加熱装置であって、チャンバと、前記チャンバ内に設けられ、基板を加熱するように構成された第1加熱手段と、前記チャンバ内において前記第1加熱手段と対向配置され、前記基板を加熱するように構成された第2加熱手段と、前記第1加熱手段と前記第2加熱手段との間の配置領域に、基板を保持している基板保持部を配置するように構成された配置手段と、前記第1加熱手段および第2加熱手段のうち少なくとも一つに設けられ、基板加熱に寄与するガスを放出するガス放出口と、前記ガス放出口に前記ガスを供給するガス供給手段と、前記配置領域に配置された前記基板保持部に近接するように、前記第1加熱手段及び第2加熱手段を移動する移動手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の冷却装置によれば、冷却効率を向上させ、冷却処理を高速化することができ、スループットの向上を図ることができる。
また、本発明の加熱装置によれば、基板の加熱効率を向上させることができ、基板の加熱処理を高速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体製造装置の全体構成を説明する図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る冷却装置の内部構成を説明するための側断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る冷却装置の内部構成を説明するための側断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る冷却板を説明する図であって、図2のA−A矢視断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る第1囲い部及び第2囲い部の形状の変形例を説明する図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る第1囲い部及び第2囲い部の形状の変形例を説明する図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る第1囲い部及び第2囲い部の形状の変形例を説明する図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る第1囲い部及び第2囲い部の形状の変形例を説明する図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る冷却装置の内部構成を説明するための側断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る冷却部の正面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る冷却部の背面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る基板と反対側から見た冷却部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体製造装置の全体構成を説明する図である。
なお、本明細書において、「磁気記録媒体」という用語は、情報の記録、読み取りに磁気のみを用いるハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク等の磁気ディスク等に限定されない。例えば、磁気と光を併用するMO(Magneto Optical)等の光磁気記録媒体、磁気と熱を併用する熱アシスト型の記録媒体も含むものとする。
また、基板は、センターに開口部を有する円板状であり、基板の両面に成膜するものである。
【0013】
図1に示すように、磁気記録媒体製造装置200には、キャリア2に基板1(図2)の搭載を行うロードロックチャンバ81、キャリア2から基板1の回収を行うアンロードロックチャンバ82、複数のチャンバ201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218が方形の輪郭に沿って配置されている。ロードロックチャンバ81、チャンバ201〜218、アンロードロックチャンバ82に沿って搬送路220が形成されている。搬送路には、基板1を搭載可能な、複数のキャリア2が該搬送路上を移動可能に設けられている。各チャンバにおいて処理に要する処理時間(タクトタイム)は、予め決められており、この処理時間(タクトタイム)が経過すると、キャリア2は、順次、次のチャンバに搬送されるように構成されている。
【0014】
磁気記録媒体製造装置200が1時間あたり約1000枚の基板を処理するためには、1つのチャンバにおけるタクトタイムは、約5秒以下、望ましくは約3.6秒以下となる。
【0015】
ロードロックチャンバ81、アンロードロックチャンバ82、及びチャンバ201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218の各々は、専用又は兼用の排気系によって排気可能な真空チャンバである。ロードロックチャンバ81、アンロードロックチャンバ82、及びチャンバ201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218の各々の境界部分、即ちキャリア2の搬出口及び搬入口には、ゲートバルブ(不図示)が設けられている。
【0016】
具体的には、磁気記録媒体製造装置200のチャンバ201は、基板1に第1軟磁性層を形成する。方向転換チャンバ202は、キャリア2の搬送方向を転換する。チャンバ203は、第1軟磁性層上にスペーサー層を形成する。チャンバ204は、スペーサー層上に第2軟磁性層を形成する。チャンバ205は、第2軟磁性層上にシード層を形成する。方向転換チャンバ206は、キャリア2の搬送方向を転換する。また、磁気記録媒体製造装置200は基板1を予め加熱するためのプレヒート用のチャンバ207(第1加熱チャンバ)と、チャンバ208(第2加熱チャンバ)と、を有する。更に、チャンバ209はシード層を形成することが可能である。
【0017】
チャンバ210は、シード層上に磁性層を形成するためのスパッタ装置として機能することが可能である。冷却チャンバ(冷却装置)211は、該磁性層が形成された基板100を冷却する。方向転換チャンバ212はキャリア2の方向を転換する。冷却チャンバ(冷却装置)213は、チャンバ内の停止位置にある基板1を冷却する。チャンバ214は、磁性層上に交換結合制御層を形成する。チャンバ215は交換結合制御層上に第3軟磁性層を形成する。方向転換チャンバ216は、キャリア2の方向を転換する。チャンバ217、及び218は、保護層を形成する。
【0018】
なお、磁気記録媒体製造装置200には、基板キャリア2の搬送処理、各チャンバの排気動作、成膜処理等を一括管理するための制御手段(例えば、コンピュータ)が設けられている。
【0019】
(第1実施形態)
次に、図2を参照して本発明の特徴部分である、冷却装置211の内部構成を説明する。図2は、冷却装置211の内部構成を説明するための側断面図である。
【0020】
冷却装置211は、チャンバ11と、基板1を保持するための基板保持部を有する基板キャリア2であって、チャンバ11の搬入口からチャンバ内部の停止位置に搬入され、さらにチャンバ11の搬出口から搬出されるように構成された基板キャリア2と、冷却装置211内における基板キャリア2の搬送路としての搬送路220を備える。また、冷却装置211は、チャンバ内の停止位置に搬入された基板キャリア2の両側に配置された第1冷却板3a、及び第2冷却板3bと、を備えている。第1冷却板3aおよび第2冷却板3bとは、チャンバ11内において対向配置されており、対向配置された第1冷却板3aと第2冷却板3bとの間の領域(配置領域)に、基板キャリア2が有する基板支持部が位置するように、基板キャリア2が搬送路220上を移動して上記停止位置に静止する。すなわち、冷却時に基板1が位置すべき領域(基板配置領域)に基板1が位置するように、基板キャリア2の移動、静止が制御されている。本実施形態では、上記制御手段の制御により搬送路上での基板キャリア2の停止および移動を実行する、基板キャリア2に備えられた搬送機構(不図示)と、搬送路220とが、基板保持部を上記配置領域に配置する配置手段として機能する。
【0021】
なお、本実施形態では、基板1を、基板保持部および移動機構の双方の機能を有する基板キャリアに保持させているが、これに限定されない。例えば、基板1を、基板保持部として機能する基板ホルダーに保持させても良い。この場合は、例えば、上記配置手段としての、回転及び伸縮可能なアームを有する搬送ロボットにより、基板ホルダーに保持された基板1が上記基板配置領域に位置するように上記基板ホルダーを上記配置領域に配置する構成を採用すれば良い。
【0022】
さらに冷却装置211は、第1冷却板3a、及び第2冷却板3bのうち少なくとも一つに設けられ、基板1に冷却ガスを放出するためのガス放出口4と、上記停止位置に位置する基板キャリア2に近接するように第1冷却板3a及び第2冷却板3bを移動させることが可能な移動手段としての移動機構10と、を備えている。なお、図示していないが、基板キャリア2には、基板を保持するための複数(例えば、3本)の保持爪が設けられている。
なお、移動機構10は、第1冷却板3a及び第2冷却板3bのそれぞれに対して設けられているが、図2においては、冷却ガス供給源40からガス放出口4への冷却ガスの供給を模式的に示すために、第1冷却板3aを駆動させるための移動機構10を便宜上省略している。
【0023】
第1冷却板3a及び第2冷却板3bは、基板を冷却するための部材であり、例えば熱伝導性が高い銅製のプレートで出来ており、第1冷却板3a及び第2冷却板3bの内部には、冷却水を循環する配管が設けられている。該配管には冷却水供給源(不図示)が接続されている。本実施形態では、上記制御手段が冷却水供給源を制御することにより、第1冷却板3aおよび第2冷却板3bの内部に設けられた配管に冷却水が流れる。該冷却水の循環により第1冷却板3aおよび第2冷却板3bが冷却され、上記基板配置領域に位置する基板1から第1冷却板3aおよび第2冷却板3bへと熱を伝達させて基板1を冷却することができる。
【0024】
移動機構10は、チャンバ11の搬入口からチャンバ内部の停止位置に搬入された基板キャリア2に対して、支持体(支持体9a、9b)を介して冷却板(第1冷却板3a、第2冷却板3b)を近接させて移動するための駆動源(モータ)を有している。チャンバ11の対向する側壁にはそれぞれ開口部が形成されており、それら開口部を介して支持体9a、9bがチャンバ11内に挿入されている。該挿入された支持体9aのチャンバ11の外側には移動機構10(図2では不図示)が連結されており、上記支持体9aのチャンバ11の内側にはベース部8aが接続されている。同様に、上記挿入された支持体9bのチャンバ11の外側には移動機構10が連結されており、上記支持体9bのチャンバ11の内側にはベース部8bが接続されている。このような構成において、上記制御手段の制御による移動機構10の駆動により、第1冷却板3aおよび第2冷却板3bを矢印方向Pに移動させることができる。
【0025】
本実施形態は、ベース部8aには第1冷却板3aが取り付けられており、該第1冷却板3aには上記ガス放出口4が形成されており、該ガス放出口4は、ガス供給手段としての冷却ガス供給源40から供給される冷却ガスの導入経路となるガス供給路4aに接続されている。このように、本実施形態では、冷却ガス供給源40から放出された冷却ガスは、ガス供給路4aを介してガス放出口4から放出される。なお、本実施形態では、ガス供給路4aは、支持体9a、ベース部8a、および第1冷却板3aの内部に設けられている。よって、本実施形態では、冷却板の移動機構と冷却ガスの導入経路とを別々に設ける必要が無くなり、冷却板を移動させることと、冷却板と基板とを近接して設けた空間に冷却ガスを導入することとを同一の構成で実現することができる。従って、冷却ガスの供給経路を引き回さなくても冷却ガスを基板1近傍に供給することができる。
【0026】
また、第1冷却板3aを取り付けているベース部8aには、第1冷却部3aを取り囲んだ囲い部5aが設けられている。同様に、第2冷却板3bを取り付けているベース部8bには、第2冷却部3bを取り囲んだ囲い部5bが設けられている。
【0027】
図3は、第1冷却板3a及び第2冷却板3bを基板キャリア2に近接した位置(例えば、冷却板と基板との距離は2mm以内)にある状態を示している。上記制御手段からの制御コマンドにより移動機構10が駆動し、該駆動により第1冷却板3aおよび第2冷却板3bが図3中の矢印方向Qに移動し、第1冷却板3aおよび第2冷却板3bの双方が基板配置領域に位置する基板1の近傍に配置される。なお、図3には示されていないが、囲い部5aには、基板1を保持する保持爪を回避するための切り欠き部(図4の符号7)が設けられている。
【0028】
第1冷却板3aには、冷却ガス供給源40からの冷却ガス(例えば、ヘリウム、又は水素)を基板1に放出するためのガス放出口4が設けられている。ガス放出口4は、図4に示すように、第1冷却板3aの中央部で、基板1のセンター開口部にガスを放出する位置に設けられている。円筒状の囲い部5aには、基板キャリア2の保持爪と接触しないように、上記保持爪の各々と対応する位置の3ヶ所に切り欠き部7が設けられている。
なお、本実施形態では、第1冷却板3aのみに、ガス放出口5を設けたが、第2冷却板3bにもガス放出口5を設けてもよい。
【0029】
また、第1冷却板3aが設けられる部材としてのベース部8aにおいて第1冷却板3aの周囲には、第2冷却板3bに向けてベース部8aから延設された円筒状の第1囲い部5aが設けられている。また、第2冷却板3bが設けられる部材としてのベース部8bにおいて第2冷却板3bの周囲には、第2冷却板3bに向けてベース部8bから延設された円筒状の第2囲い部5bが設けられている。すなわち、第1囲い部5aは、自身が設けられたベース部8aに支持された第1冷却板3aの周囲を囲み、かつ第1冷却板3aに対向配置された第2冷却板3bの方に延在するように構成されている。また、第2囲い部5bは、自身が設けられたベース部8bに支持された第2冷却板3bの周囲を囲み、第2冷却板3bに対向配置された第1冷却板3aの方に延在するように構成されている。さらに、第1囲い部5aおよび第2囲い部5bはそれぞれ、第1冷却板3aおよび第2冷却板3bとを連通させるための開口を有する。
【0030】
より具体的には、第1囲い部5aは、ベース部8aの第1冷却板8aが設けられた第1の面8cと、ベース部8bの第2冷却板3bが設けられた第2の面8cとの間の空間の少なくとも一部を囲うようにベース部8aに設けられている。同様に、第2囲い部5bは、上記第1の面8cと、上記第2の面8dとの間の空間の少なくとも一部を囲うようにベース部8bに設けられている。
なお、本明細書において、「円筒状」とは、ほぼ円筒状を意味し、円筒状の一部が切り欠いていた形状も含むものである。
【0031】
図2、3に示すように、第1囲い部5aの方が、第2囲い部5bより長く形成されているが、特にこれに限定されるものではない。すなわち、本実施形態では、図3に示すように、基板1に対して第1冷却板3aおよび第2冷却板3bが近接して配置された状態(実際に冷却動作を行う状態)において、上記第1の面8cと上記第2の面8dとの間の空間を第1囲い部5aおよび第2囲い部により覆うことが重要であり、該事項を実現できれば、第1囲い部5aおよび第2囲い部の長さはいずれの長さでも良いのである。すなわち、囲い部の長さは、基板1の冷却時に位置する第1冷却板3aの第1の面8cと、該冷却時に位置する第2冷却板3bの第2の面8dとの間の距離以下の長さであれば、該冷却時における上記第1の面8cと第2の面8dとの間の空間の少なくとも一部を囲うことができる。よって、後述するように、囲い部により、基板近傍に供給された冷却ガスが基板1が配置された空間から外に漏れるのを低減することができる。
【0032】
本実施形態では、第1囲い部5aと、第2囲い部5bは、いずれも基板面の中心を軸とする同心円状に形成された囲い部であるが、第1囲い部5aの直径の方が、第2囲い部5bより小さくなるように形成されている。これにより、図3に示すように、第1冷却板3a及び第2冷却板3bが基板キャリア2に接近した際、第1囲い部5aと、第2囲い部5bは、互いに非接触で入れ違いに配置され、その隙間がラビリンス形状を形成するようになっている。これにより、基板1を囲む閉空間を形成することができ、冷却ガスを漏れにくくすることができる。よって、基板1の冷却効率を向上させることができる。
なお、本実施形態では、第1囲い部5aおよび第2囲い部5bの閉ループの形状を同心円状としているが、これに限定されない。本実施形態では、基板1と第1冷却板3aと第2冷却板3bとを近接して配置した際に(すなわち、冷却動作を行う際に)、基板1の周囲に供給された冷却ガスを基板1近傍の空間から逃さないようにするために、第1囲い部5aおよび第2囲い部5bを設けている。よって、このような作用を奏することができるのであれば、第1囲い部5aおよび第2囲い部5bの形状は、いずれであっても良く、例えば閉ループ状の四角形、五角形、六角形といった多角形であっても良い。
【0033】
冷却装置における上述した各種動作は、制御手段により、制御されている。制御手段は、移動機構10を駆動して第1冷却板3a及び第2冷却板3bを基板キャリア2に向けて接近させた後(図3の状態)、冷却ガス供給源40を制御して冷却ガスを供給経路4aに供給すると共に、冷却水供給源を制御して冷却水を第1冷却板3aおよび第2冷却板3bの内部に供給するように構成されている。これにより、基板1を囲む閉じた空間に効率よく冷却ガスを導入でき、第1冷却板3aおよび第2冷却板3bの冷却作用に加えて、上記冷却ガスによる冷却作用により、冷却効率を高めることができる。
【0034】
なお、本明細書において、「冷却ガス」とは、基板冷却に寄与するガスであり、その基板冷却作用が異なる場合であっても、結果として基板を冷却することができるものであればいずれも本発明に係る冷却ガスに含まれる。
例えば、上述のように冷却ガスとしてヘリウムや水素を用いる場合は、ヘリウムまたは水素が上記第1の面および第2の面との間の空間に存在することにより、基板1から第1冷却板3aおよび第2冷却板3bへの熱の伝達を促進することができる。すなわち、ヘリウムや水素は熱伝達用の媒体として機能することになり、基板1から第1冷却板3aおよび第2冷却板3bに熱をより効率良く伝達することができるので、ヘリウムや水素といった熱伝達媒体となるガスは本発明の冷却ガスに含まれる。
また、温度が低いガス(例えば、基板1よりも温度が低いガス)を冷却ガスとして用いても良い。この場合は、冷却ガス供給源40にて、温度が低いガスを生成して、該冷却ガス供給源40から供給経路4aを介してガス放出口4へと供給すれば良い。この場合は、基板1には該基板1よりも温度が低いガスが吹き付けられるので、基板1から第1冷却板3aおよび第2冷却板3bへの熱の移動による冷却に加えて、上記ガス自体により基板1を冷却することができる。
このように、本発明では、冷却ガスは、間接的に作用して基板1を冷却するガス、および直接的に作用して基板1を冷却するガスの双方を含み、そのガスを用いることによって基板を冷却するものであればいずれのガスも本発明の冷却ガスと言える。
【0035】
上述のように、本実施形態では、第1冷却板3aおよび第2冷却板の双方を基板1に近接させた状態で基板1の冷却を行うので、冷却板による冷却、すなわち基板1から第1冷却板3aおよび第2冷却板3bへの熱の移動を効率良く行うことができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、基板1からの熱の受け皿となる第1冷却板3aおよび第2冷却板3bの少なくとも一方に、冷却ガスを放出するように構成されたガス放出口4を設けているので、基板1に近接した位置から冷却ガスを基板1に供給することができる。その結果、基板1の冷却効率をさらに向上させることができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、第1囲い部5aを第1冷却板3aが設けられたベース部8aに設け、第2囲い部5bを第2冷却板3bが設けられたベース部8bに設けている。従って、冷却動作を行う際に第1冷却板3aと第2冷却板3bと基板1とが近接するように第1冷却板3aおよび第2冷却板3bとを位置させると、基板1、第1冷却板3a、および第2冷却板3bを囲む空間が自動的に形成される。よって、第1冷却板3aに形成されたガス放出口4から放出された冷却ガスが上記囲む空間から外に漏れるのを低減することができるので、さらに冷却効率を向上することができる。
【0038】
また、第1囲い部5aおよび第2囲い部5bを設け、冷却動作時においては基板1に対して近接して配置される第1冷却板3aおよび第2冷却板3bの少なくとも一方にガス放出口4を設けているので、第1囲い部5a、第2囲い部5b、ベース部8a、およびベース部8bにより区画された空間(上記囲む空間)に冷却ガスを放出することができる。よって、基板冷却に作用する冷却ガスを必要な箇所(上記区画された空間内)に限定的に存在させることができる。すなわち、本実施形態では、基板冷却時に、第1冷却板3aおよび第2冷却板3bに対して基板1を近接した状態で基板1を囲むように形成された衝立により規定された空間を自動的に形成し、該空間内に限定的に冷却ガスを供給することができる。
【0039】
(変形例1)
図5は、第1囲い部及び第2囲い部の形状の変形例1を説明する図である。
本変形例では、第1囲い部5aと、第2囲い部5bとは、いずれも基板面の中心を軸とする同心円状に形成された囲い部であり、かつ第1囲い部5aの直径と、第2囲い部5bの直径は等しくなるように形成されている。つまり、図5に示すように、第1冷却板3a及び第2冷却板3bが基板キャリア2に接近した際、第1囲い部5aの先端及び第2囲い部5bの先端が互いに接触するようになっている。
【0040】
(変形例2)
図6は、第1囲い部及び第2囲い部の形状の変形例2を説明する図である。
本変形例における第1囲い部5a及び第2囲い部5bは、いずれも基板キャリア2の開口部の中に挿入されるようになっている。挿入された第1囲い部5a及び第2囲い部5bが基板キャリア2の保持爪とぶつからないように、第1囲い部5a及び第2囲い部5bのいずれにも、基板キャリア2の保持爪を回避するため、切り欠き部(不図示)が形成されている。第1囲い部5aと第2囲い部5bとの間の隙間は、ラビリンス形状を形成しているため、基板1を囲む空間に導入された冷却ガスが漏れにくい構成となっている。
【0041】
(変形例3)
図7は、第1囲い部及び第2囲い部の形状の変形例3を説明する図である。
本変形例では、第1囲い部5a及び第2囲い部5bとは別に、基板キャリア2の基板を保持する側に、両側面に第1凹部及び第2凹部を有する端部6が形成されている。図7に示すように、冷却板3が基板に接近した時に、この第1凹部及び第2凹部に、第1囲い部5a及び第2囲い部5bが挿入されて、第1囲い部5aと第1凹部、及び第2囲い部5bと第2凹部とがラビリンス形状となるように構成されている。
【0042】
(変形例4)
図8は、第1囲い部及び第2囲い部の形状の変形例4を説明する図である。
本変形例では、第1囲い部5a及び第2囲い部5bとは別に、基板キャリア2の基板を保持する側に、第1冷却板3及び第2冷却板3に向かって突き出した端部6が形成されている。上述した変形例と同様に、第1囲い部5a及び第2囲い部5bと端部6との間は、ラビリンス形状となるように構成されている。
【0043】
(他の変形例)
なお、図2〜7に例示した形態では、第1囲い部5aおよび第2囲い部5bの双方を設けているが、第1囲い部5aおよび第2囲い部5bのいずれか一方のみを設ける形態であっても良い。
【0044】
なお、上述した実施形態では、基板を冷却するための冷却手段として冷却板3を用いたが、これに限定されず、ヒーターなどを備えた、基板を加熱するための加熱手段としての加熱板を用いてもよい。また、加熱板を備えた装置は、図1において第1加熱チャンバ207又は第2加熱チャンバ208として採用することができる。なお、加熱装置として用いる場合は、上記ガス放出口4から放出させるガスは、加熱ガスとなる。よって、冷却ガス供給源40を加熱ガス供給源に変更すれば良い。
【0045】
本明細書において、「加熱ガス」とは、基板加熱に寄与するガスであり、その基板加熱作用が異なる場合であっても、結果として基板を加熱することができるものであればいずれも本発明に係る加熱ガスに含まれる。
例えば、上記加熱ガスとしては、ヘリウムや水素といった熱伝達媒体となるガスや、基板よりも温度が高いガスなどを用いれば良い。このように、本発明では、加熱ガスは、間接的に作用して基板1を加熱するガス、および直接的に作用して基板1を加熱するガスの双方を含み、そのガスを用いることによって基板を加熱するものであればいずれのガスも本発明の加熱ガスと言える。
【0046】
なお、本発明の冷却装置、加熱装置は、各変形例で述べられたいかなる特徴を組み合わせることによって構成することができる。
【0047】
(第2実施形態)
図9乃至12を参照して、本発明の第2実施形態に係る冷却装置を説明する。図9は、本発明の第2実施形態に係る冷却装置の全体構成を説明するための側断面図である。図9では図2と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。図2に示した、第1実施形態に係る冷却装置では、冷却手段としての冷却板3の内部に冷却水を循環する配管が設けられているのに対し、本実施形態に係る冷却装置では、冷却手段として、基板を冷却するためのペルチェ素子31が設けられている。
【0048】
図9に示すように、チャンバ壁11を隔てて真空側に、冷却装置211が設けられ、大気側には、移動手段としての移動機構10及び電力導入手段(不図示)が設けられている。移動機構10は、モーターの回転力をボールネジで直線運動に変えることで、ベース部12が前後する。これにより、シャフト38を介してペルチェ素子31を基板に接近させることができる。
【0049】
図10は、冷却装置の拡大断面図である。
セラミック等からなる熱伝達機能を有する熱伝達部30の裏側には、第1金属部35及び第2金属部34に挟持されたペルチエ素子31が設けられている。ペルチエ素子31は、P型半導体素子とN型半導体素子とが交互に等間隔で配置されて構成されている。ペルチエ素子31は、上記電力導入手段に接続された配線36を介して、第1金属部35及び第2金属部34間に電流を流すことで、冷却効果を奏する。ペルチエ素子31の前面側が冷却されると、ペルチエ素子31の後背面側は放熱する。この熱を冷却するため、ペルチエ素子31の後背面側には、ペルチエ素子31を冷却する冷却エアーを導入するためのエアー配管37が設けられている。このエアーがチャンバ内部の真空空間に漏れないように、ペルチエ素子31と熱伝達部30との間は、Oリング33によってシールされている。同様に、熱伝達部30とベース板32との間も、Oリング33によってシールされている。
【0050】
図11は、基板側から見た、冷却部を示す図である。円盤状のペルチエ素子31は、該ペルチエ素子31よりも径が大きな円盤状の第1金属部35に設けられており、図11では不図示である。該円盤状の第1金属部35は、外縁に設けられた4つの穴39を介して、熱伝達部30にネジ止め可能になっている。また、ペルチエ素子31および第1金属部35の中心部には、前述したガス導出口4と連結するための開口が設けられている。
【0051】
図12は、基板と反対側から見た冷却部を示す図である。図示するように、ペルチエ素子31は、交互に等間隔に配置されているが、これに限定されず自由に設計することができる。
【0052】
以上、第2実施形態に係る冷却装置では、第1実施形態と異なり、冷却板内に冷却水を導入するための配管を設ける必要がないので、水漏れの心配はない。同様に、本実施形態の冷却装置は、冷却板内に冷却水を導入するための配管がないので、チャンバをベントするときに結露することがない。
【符号の説明】
【0053】
1 基板
2 基板キャリア
3a、3b 冷却板
4 ガス放出口
5a、5b 囲い部
10 移動機構
31 ペルチエ素子
40 冷却ガス供給源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられ、基板を冷却するように構成された第1冷却手段と、
前記チャンバ内において前記第1冷却手段と対向配置され、前記基板を冷却するように構成された第2冷却手段と、
前記第1冷却手段と前記第2冷却手段との間の配置領域に、基板を保持している基板保持部を配置するように構成された配置手段と、
前記第1冷却手段および第2冷却手段のうち少なくとも一方に設けられ、基板冷却に寄与するガスを放出するガス放出口と、
前記ガス放出口に前記ガスを供給するガス供給手段と、
前記配置領域に配置された前記基板保持部に近接するように、前記第1冷却手段及び第2冷却手段を移動する移動手段と
を備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記第1冷却手段を支持する支持部と前記第2冷却手段を支持する支持部との少なくとも一方に設けられた囲い部であって、自身が設けられた支持部に支持された冷却手段の周囲を囲み、かつ対向する冷却手段の方に延在し、さらに前記自身が設けられた支持部に支持された冷却手段と前記対向する冷却手段とを連通させるように開口された囲い部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記第1冷却手段の周囲に設けられ、前記第1冷却手段と前記第2冷却手段との間の空間の少なくとも一部を囲う第1囲い部と、
前記第2冷却手段の周囲に設けられ、前記第2冷却手段と前記第1冷却手段との間の空間の少なくとも一部を囲う第2囲い部とをさらに備え、
前記第1囲い部および前記第2囲い部は、前記移動手段により前記第1冷却手段及び第2冷却手段が前記配置領域に配置された前記基板保持部に接近した際、前記第1囲い部と前記第2囲い部との間の領域がラビリンス形状となるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第1冷却手段および前記第2冷却手段を、前記配置領域に配置された前記基板保持部に向けて移動させるように前記移動手段を制御し、かつ前記ガスを前記ガス放出口に放出するように前記ガス供給手段を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記第1冷却手段、及び第2冷却手段は、ペルチェ素子を備えることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記ペルチェ素子を冷却するエアーを導入するためのエアー配管をさらに備えること特徴とする請求項5に記載の冷却装置。
【請求項7】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられ、基板を加熱するように構成された第1加熱手段と、
前記チャンバ内において前記第1加熱手段と対向配置され、前記基板を加熱するように構成された第2加熱手段と、
前記第1加熱手段と前記第2加熱手段との間の配置領域に、基板を保持している基板保持部を配置するように構成された配置手段と、
前記第1加熱手段および第2加熱手段のうち少なくとも一つに設けられ、基板加熱に寄与するガスを放出するガス放出口と、
前記ガス放出口に前記ガスを供給するガス供給手段と、
前記配置領域に配置された前記基板保持部に近接するように、前記第1加熱手段及び第2加熱手段を移動する移動手段と
を備えることを特徴とする加熱装置。
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられ、基板を冷却するように構成された第1冷却手段と、
前記チャンバ内において前記第1冷却手段と対向配置され、前記基板を冷却するように構成された第2冷却手段と、
前記第1冷却手段と前記第2冷却手段との間の配置領域に、基板を保持している基板保持部を配置するように構成された配置手段と、
前記第1冷却手段および第2冷却手段のうち少なくとも一方に設けられ、基板冷却に寄与するガスを放出するガス放出口と、
前記ガス放出口に前記ガスを供給するガス供給手段と、
前記配置領域に配置された前記基板保持部に近接するように、前記第1冷却手段及び第2冷却手段を移動する移動手段と
を備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記第1冷却手段を支持する支持部と前記第2冷却手段を支持する支持部との少なくとも一方に設けられた囲い部であって、自身が設けられた支持部に支持された冷却手段の周囲を囲み、かつ対向する冷却手段の方に延在し、さらに前記自身が設けられた支持部に支持された冷却手段と前記対向する冷却手段とを連通させるように開口された囲い部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記第1冷却手段の周囲に設けられ、前記第1冷却手段と前記第2冷却手段との間の空間の少なくとも一部を囲う第1囲い部と、
前記第2冷却手段の周囲に設けられ、前記第2冷却手段と前記第1冷却手段との間の空間の少なくとも一部を囲う第2囲い部とをさらに備え、
前記第1囲い部および前記第2囲い部は、前記移動手段により前記第1冷却手段及び第2冷却手段が前記配置領域に配置された前記基板保持部に接近した際、前記第1囲い部と前記第2囲い部との間の領域がラビリンス形状となるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第1冷却手段および前記第2冷却手段を、前記配置領域に配置された前記基板保持部に向けて移動させるように前記移動手段を制御し、かつ前記ガスを前記ガス放出口に放出するように前記ガス供給手段を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記第1冷却手段、及び第2冷却手段は、ペルチェ素子を備えることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記ペルチェ素子を冷却するエアーを導入するためのエアー配管をさらに備えること特徴とする請求項5に記載の冷却装置。
【請求項7】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられ、基板を加熱するように構成された第1加熱手段と、
前記チャンバ内において前記第1加熱手段と対向配置され、前記基板を加熱するように構成された第2加熱手段と、
前記第1加熱手段と前記第2加熱手段との間の配置領域に、基板を保持している基板保持部を配置するように構成された配置手段と、
前記第1加熱手段および第2加熱手段のうち少なくとも一つに設けられ、基板加熱に寄与するガスを放出するガス放出口と、
前記ガス放出口に前記ガスを供給するガス供給手段と、
前記配置領域に配置された前記基板保持部に近接するように、前記第1加熱手段及び第2加熱手段を移動する移動手段と
を備えることを特徴とする加熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−31504(P2012−31504A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45872(P2011−45872)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
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