説明

冷却装置

【課題】 真空冷却による被冷却物の冷却時間の短縮を行うことである。
【解決手段】 被冷却物3を収容する冷却室2と、前記冷却室2内を減圧することにより前記被冷却物3を冷却する真空冷却手段4と、前記冷却室2内の気体を循環させるファン13と、前記真空冷却手段4および前記ファン13の作動を制御する制御手段6とを備える冷却装置であって、前記制御手段6は、前記真空冷却手段4の作動による真空冷却工程中に 前記ファン13を駆動し前記被冷却物3の粗熱取りを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空冷却を行う複合冷却装置などの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種複合冷却装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この複合冷却装置は、冷風冷却手段の作動による冷風冷却と真空冷却手段の作動による真空冷却とを行うものである。
【0003】
【特許文献1】特開2002−318051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする課題は、真空冷却による被冷却物の冷却時間の短縮を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被冷却物を収容する冷却室と、前記冷却室内を減圧することにより前記被冷却物を冷却する真空冷却手段と、前記冷却室内の気体を循環させるファンと、前記真空冷却手段および前記ファンの作動を制御する制御手段とを備える冷却装置であって、前記制御手段は、前記真空冷却手段の作動による真空冷却工程中に前記ファンを駆動し前記被冷却物の粗熱取りを行うことを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、真空冷却時に前記ファンを駆動することにより、被冷却物と前記冷却室内に存在する気体との間に強制対流伝熱が行われて、被冷却物の粗熱取りが行われる結果、冷却時間を短縮することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記冷却室内に配置した冷却用熱交換器により前記被冷却物を冷風冷却する冷風冷却工程を行う冷風冷却手段を備え、前記ファンが前記冷却用熱交換器への送風用のファンであることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、真空冷却と冷風冷却を行う冷却装置において、真空冷却による冷却時間の短縮を行うことができるという効果を奏する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記真空冷却手段は、前記冷却室と接続される減圧手段の作動により第一真空冷却工程を行うように構成される第一真空冷却手段と、前記冷却室を低圧下で密閉状態として前記冷却用熱交換器により前記被冷却物からの蒸気を凝縮することで第二真空冷却工程を行うように構成される第二真空冷却手段とを含んで構成され、前記制御手段は、前記第一真空冷却工程において前記ファンを駆動することを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明による効果に加えて、第一真空冷却による冷却時間を短縮でき、真空冷却全体の冷却時間の短縮を行うことができるという効果を奏する。
【0011】
さらに、請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3において、前記冷却室内の圧力を検出する圧力センサおよび前記被冷却物の温度を検出する品温センサと前記真空冷却手段の減圧能力調整手段とを備え、前記制御手段は、前記真空冷却手段の作動による真空冷却工程を開始してから、前記圧力センサによる検出圧力相当の飽和温度が前記品温センサによる検出温度と等しくなるか、前記飽和温度と前記検出温度との差が設定値となるまで、前記減圧能力調整手段により減圧能力を高くして急冷を行い、その後に前記減圧能力を低くして徐冷を行うことを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜請求項3に記載の発明による効果に加えて、設定温度まで急冷を行い、その後徐冷するものと比較して、真空冷却による冷却時間を短縮できるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、真空冷却による冷却時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、この発明の冷却装置の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、被冷却物を真空冷却する冷却装置,または冷風冷却と真空冷却とによって被冷却物を冷却可能な複合冷却装置と称される冷却装置に適用される。
【0015】
この実施の形態を具体的に説明する。この実施の形態は、被冷却物を収容する冷却室と、前記冷却室内を減圧することにより被冷却物を冷却する真空冷却手段と、前記冷却室内の空気を循環させるファンと、前記真空冷却手段および前記ファンの作動を制御する制御手段とを備える冷却装置であって、前記制御手段は、真空冷却手段の作動による真空冷却工程中に 前記ファンを駆動し前記被冷却物の粗熱取りを行うことを特徴としている。
【0016】
この発明の実施の形態においては、前記真空冷却手段を作動させる真空冷却工程時に前記ファンが駆動される。このファンの駆動により、前記冷却室内に存在する気体が循環され、この気体と被冷却物との間に強制対流伝熱が行われて、被冷却物の粗熱取りが行われる。その結果、被冷却物を設定冷却温度まで冷却するのに要する冷却時間を短縮することができる。前記強制対流伝熱量は、前記冷却室内に存在する気体の量が多いほど、多くなるが、前記冷却室内の気体は真空冷却の進行と共に減少するので、前記ファンの駆動は、真空冷却工程の初期に限定することが省エネルギーの観点から望ましい。なお、前記気体に含まれる被冷却物からの蒸気は、対流伝熱による冷却に寄与しない。
【0017】
前記真空冷却工程の初期は、前記冷却室内の圧力が設定圧力以下となるまで期間を意味する、この期間は、前記冷却室内の圧力,または品温を検出するセンサにより制御することができる。また、前記期間は、タイマーにより計測される前記真空冷却工程開始から前記設定圧力まで降下するに要する時間とすることができる。このファン駆動時、前記冷却用熱交換器を作動状態としない。
【0018】
この実施の形態は、好ましくは、前記冷却室内に配置した冷却用熱交換器により前記被冷却物を冷風冷却する冷風冷却工程を行う冷風冷却手段を備えた冷却装置(複合冷却装置)として、前記ファンを前記冷却用熱交換器への冷却風の送風用のファンとする。
【0019】
こうした構成とすることで、これまで真空冷却工程中に使用されない前記ファンを有効に活用して真空冷却における粗熱取りを行うことができ、真空冷却による冷却時間の短縮を行うことができる。
【0020】
また、前記真空冷却手段は、前記冷却室と接続される減圧手段の作動により第一真空冷却工程を行うように構成する第一真空冷却手段と、前記冷却室を低圧下で密閉状態として前記冷却用熱交換器により前記被冷却物からの蒸気を凝縮することで第二真空冷却工程を
行うように構成する第二真空冷却手段とを含んで構成し、前記制御手段は、前記第一真空冷却工程において前記冷却用熱交換器に送風するファンを駆動するように構成し、前記第一真空冷却工程の初期において、前記ファンを駆動するように構成する。このファン駆動時も、前記冷却用熱交換器を作動状態としない。
【0021】
このように、前記真空冷却手段を前記第一真空冷却手段と前記第二真空冷却手段とから構成することにより、前記減圧手段の構成を簡素化できるとともに、前記第一真空冷却工程の冷却時間を短縮でき、真空冷却全体の冷却時間の短縮を行うことができる。
【0022】
また、この実施の形態において、前記減圧手段の減圧能力を調整する減圧能力調整手段を備え、前記真空冷却工程を前記減圧能力調整手段により減圧能力(速度)を高くして行う急冷と、前記減圧能力を低くして行う徐冷とを順次行う構成とする場合には、好ましくは、前記冷却室内の圧力を検出する圧力センサおよび前記被冷却物の温度を検出する品温センサを備え、前記制御手段は、前記真空冷却手段の作動による真空冷却工程を開始してから、前記圧力センサによる検出圧力相当の飽和温度が前記品温センサによる検出温度と等しくなるか、前記飽和温度と前記検出温度との差が設定値となるまで、前記減圧能力を高くして急冷を行い、その後に前記減圧能力を低くして徐冷を行うように構成する。
【0023】
こうした構成を採用することにより、設定温度(たとえば初期品温)まで急冷を行い、その後徐冷するものと比較して、真空冷却による冷却時間を短縮できる。すなわち、真空冷却工程前または真空冷却工程の初期に粗熱取りを行うと品温が低下するが、この品温低下に追いつくまで急冷を行うので、品温がほとんど低下しない徐冷期間を無くすることができる。
【0024】
前記徐冷が真空冷却工程が前記第一真空冷却手段による第一真空冷却工程のみにより行われる場合は、前記冷却室に備える復圧手段の復圧弁の開度を調整することにより可能である。
【0025】
また、前記徐冷が真空冷却工程が前記第一真空冷却手段による第一真空冷却工程とこの後に続く前記第二真空冷却手段による第二真空冷却工程とから行われる場合は、前記復圧弁による制御は、不適である。その理由は、前記第二真空冷却は、空気が存在すると機能しないからである。よって、この場合は、徐冷時に前記冷却室内へ空気が入り込まない減圧能力調整手段を備える。この減圧能力調整手段は、好ましくは、前記冷却室と前記減圧手段との間に設けた開度調整可能な調整弁(真空弁と称することができる。)とするが、前記減圧手段の上流側の減圧ラインから分岐する給気ラインと、この給気ラインに設けた開度が調整可能な調整弁とから構成することができる。また、前記減圧能力調整手段は、前記減圧手段を構成する真空ポンプの回転数を制御することで構成することもできる。
【0026】
こうした減圧能力調整手段を備える冷却装置によれば、徐冷時に前記冷却室内に外気(空気)が入り込まないので、高真空度を必要とする前記第二真空冷却工程を不能とすることなく、効果的に行うことができる。
【0027】
つぎに、この実施の形態の各構成要素について説明する。被冷却物は、好ましくは食材とするが、これに限定されるものではない。前記冷却室は、被冷却物を収容する密閉空間を形成するとともに、被冷却物を出し入れすることができるものであれば、その形式、種類および大きさは問わない。この冷却室は、冷却室,冷却区画、冷却容器などと称することができる。
【0028】
前記真空冷却手段は、好ましくは、前記冷却室と接続される減圧ラインに減圧手段を設けるとともに、前記冷却室および前記減圧手段間に開閉弁を設けた構成とし、前記制御手段は、前記開閉弁を開き、前記減圧手段の作動により前記冷却室内を減圧する第一真空冷却工程と、前記開閉弁を閉じ、前記減圧手段の作動を停止するとともに、前記冷却室内に設けた冷却用熱交換器を作動させる第二真空冷却工程とを順次行う構成とする。前記真空冷却手段は、前記第一真空冷却工程のみを行うものとすることができる。
【0029】
前記第一真空冷却工程を行う手段を第一真空冷却手段と称し、第二真空冷却工程を行う手段を第二真空冷却手段と称する。
【0030】
前記第一真空冷却手段の作動とは、前記開閉弁を開き、前記減圧手段を運転することであり、前記第二真空冷却手段の作動とは、前記冷却室が低圧下の状態を作った後に前記開閉弁を閉じ、前記冷却用熱交換器を作動させる,すなわち冷媒を供給して冷却作用を行わせることである。
【0031】
こうした真空冷却手段の構成においては、まず、第一真空冷却工程を行う。この第一真空冷却工程は、前記減圧手段の作動により前記冷却室内を減圧して前記被冷却物に含まれる水分の蒸発により被冷却物を冷却する。この第一真空冷却工程を終了すると、前記第二真空冷却工程を行う。この第二真空冷却工程では、前記開閉弁を閉じて前記冷却室内を密閉状態とし、前記冷却用熱交換器を作動させる。すると、被冷却物内の水分が蒸発して、その蒸気が前記冷却用熱交換器へ移動して、ここで凝縮し、被冷却物の水分蒸発を促進する。この水分の蒸発と凝縮とが連続的に行われて、前記冷却室内が大気圧以下の低圧に保持されて、第二真空冷却工程が行われる。ここにおいて、前記冷却用熱交換器は、前記冷却室内で蒸気を凝縮するコールドトラップ(内部コールドトラップと称することができる。)として機能する。
【0032】
ところで、前記減圧手段は、蒸気エゼクタを用いることなく、好ましくは、真空ポンプだけか、前記冷却室外でコールドトラップとして機能する凝縮用熱交換器(外部コールドトラップと称することができる。)と真空ポンプとを組み合わせたものとする。この減圧手段は、前記冷却室外において真空状態を生成するので外部真空生成手段と称することができる。前記真空ポンプは、水エゼクタとすることができる。
【0033】
一般的に、前記減圧手段を真空ポンプと冷却水を常温水とした凝縮用熱交換器との組み合わせとした場合は、前記冷却室内を約30℃程度(水温+7℃程度)まで冷却することができる。また、前記減圧手段を真空ポンプと冷却水を冷水とした凝縮用熱交換器との組み合わせとした場合は、冷水温度+7℃程度まで(普通のチラーによる冷水なら20℃程度まで)冷却することができる。そして、減圧手段として蒸気エゼクタなどを加えることによってより、更に低い温度まで冷却することができる。
【0034】
しかしながら、前記のように前記減圧手段を水封式真空ポンプのみ,または水封式真空ポンプと冷却水を常温水とした凝縮用熱交換器熱交換器とした場合は、30℃程度までしか、前記冷却室内を冷却できないところ、前記第二真空冷却工程を行うことにより、約10℃程度まで冷却することが可能となる。
【0035】
この第二真空冷却工程を行うためには、この実施の形態のように、前記減圧手段の減圧能力が低い場合には、前記水封式真空ポンプから封水が沸騰して発生した蒸気が逆流すると前記冷却室内の圧力が低下しないので、前記減圧手段を前記冷却室から切り離す必要がある。この切り離し機能をなすのが前記開閉弁である
【0036】
また、前記第二真空冷却工程において前記凝縮用熱交換器に蒸気が凝縮するためには、前記冷却室内の空気排除により前記冷却槽内の残留空気分圧がある程度以下に下がっている必要がある。ところで、食材の初期温度(以下、初期品温という。)が高い場合には、前記減圧手段が減圧能力限界に達する時点よりもかなり早い時点から被冷却物から蒸気が出るので、前記冷却室内の空気を排除して、前記空気分圧を下げることができる。
【0037】
しかしながら、初期品温が前記減圧手段の減圧能力限界に相当する温度よりも低い場合
(一例として、初期品温が20℃,減圧能力限界が30℃)には、前記減圧手段の減圧能力限界まで減圧した時点でも被冷却物から蒸気が出てこないので、前記冷却室内はその圧力の空気で満たされたままとなる。その結果、前記冷却用熱交換器での蒸気の凝縮がうまく行われなくなる。こうした、初期品温が低い場合には、前記第二冷却工程開始前に、前記冷却室内の空気を排除する空気排除工程を行っておく必要がある。
【0038】
前記空気排除工程は、好ましくは、前記減圧器を作動させながら、前記冷却室へ蒸気を供給(給蒸)および/または温水を供給(給水)して前記冷却室内を蒸気で満たすことにより、空気を排除するように構成する。また、この空気排除工程は、前記排気→前記給蒸→前記排気の順に行い、これを1回乃至複数回繰り返すことで行うように構成することができる。この空気排除工程に用いる蒸気および/または温水を供給するために供給手段が備えられる。この供給手段は、減圧下の前記冷却室内へ温水を供給する温水供給手段、蒸気を供給する蒸気供給手段、温水および蒸気を供給する温水および蒸気供給手段のいずれかとすることができる。
【0039】
前記ファンについて説明する。まず、冷却装置を真空冷却と冷風冷却とを行う冷却装置(複合冷却装置)とする場合について説明する。前記冷風冷却手段は、前記冷却用熱交換器と、前記冷却室内の空気を循環させる空気循環手段と、この空気循環手段による循環流中に被冷却物および前記冷却用熱交換器を位置させるように循環経路を構成する循環経路構成部材とを備えたものとする。前記循環手段は、モータにより駆動するファンから構成される。このファンが、真空冷却工程時に粗熱取り機能をなすファンである。そして、前記循環経路は、好ましくは、前記熱交換器および前記ファンを前記冷却室内に配置することで、前記冷却室内に形成して構成する。
【0040】
前記冷却用熱交換器は、目標冷却温度よりも低い温度(好ましくは、−10℃程度)以下とすることができる熱交換器であればよく、好ましくは、冷凍機のコンデンシングユニットから供給される液化冷媒を蒸発して間接熱交換により前記冷却室内の空気を冷却する蒸発器から構成する。しかしながら、この冷却用熱交換器は、冷水製造装置(チラー)から供給される冷水、またはブラインチラーから供給されるブラインを冷媒とする熱交換器とすることができる。
【0041】
前記循環経路の構成は、好ましくは、区画壁により前記冷却室内を上下に第一領域と第二領域とに区画し、前記第一領域に被冷却物を収容し、前記第二領域に前記冷却用熱交換器を配置する。前記ファンは、好ましくは前記第二領域に配置する。
【0042】
前記第一領域と前記第二領域とは、前記区画壁と前記冷却室壁との間に第一開口および第二開口を形成するか、前記区画壁に前記第一開口および第二開口を形成することで、前記第一領域→前記第一開口→前記第二領域→前記第二開口→前記第一領域なる循環経路を形成している。
【0043】
前記区画壁は、好ましくは、着脱自在に構成され、外した状態で、前記冷却用熱交換器が前記冷却室の被冷却物を出し入れする開口から露出するように構成する。こうした構成により、前記冷却用熱交換器の洗浄および点検を容易に行うことができる。
【0044】
前記循環経路構成部材として、前記被冷却物を冷却した後の冷風を前記区画壁の第一開口へ戻す第一送風ガイドと前記区画壁の第二開口からの冷風を被冷却物へ向けて案内する第二送風ガイドとを前記第二領域に設けることができる。前記第一送風ガイドおよび前記第二送風ガイドは、好ましくは、前記区画壁に着脱自在に構成する。また、前記第一送風ガイドおよび前記第二送風ガイドは、好ましくはダクト状に形成する。
【0045】
さらに、前記第一構成においては、前記空気循環手段としてのファンを前記冷却室内に配置し、好ましくは、前記第二領域に配置する。そして、前記冷却室内に配置したファンは、前記冷却室外へ配置されるモータにより駆動されように構成する。この構成においては、真空冷却工程の際の真空漏れを防止するために、前記モータを前記冷却室内空間に対して気密に遮断するシール手段を備える。
【0046】
この実施の形態の冷却装置を、真空冷却を行うが、前記冷却用熱交換器による冷風冷却を行わない装置とする場合、前記ファンは、前記冷却室内の気体を循環させ、このファンを駆動することにより、前記気体の強制対流を生じて、被冷却物の粗熱取りを行うように構成する。このファンの配置構成は、複合冷却装置のファンと同様なものとすることができるが、これに限定されない。
【0047】
さらに、この実施の形態において、前記真空冷却手段を前記第一真空冷却手段と前記第二真空冷却手段とから構成する場合、好ましくは、前記冷却用熱交換器に送風するファンを前記第二真空冷却工程中に駆動するように構成する。こうした構成を採用することで、前記ファンを駆動することにより、前記冷却用熱交換器の表面に付着した空気を吹き飛ばすことができる。これにより、伝熱障害が解消され、所期の真空冷却を行うことができる。
【0048】
また、前記ファンの駆動は、好ましくは、前記ファンを逆回転可能で、気体の流れを逆転できるものとして、正回転と逆回転とを1乃至複数回行うように構成する。こうした構成を採用することで、前記冷却用熱交換器の前記ファンに対向する面だけでなく、対向面と反対側の面においても空気を効果的に吹き飛ばすことができる。また、前記ファンの駆動は、好ましくは、前記第二真空冷却工程の全工程において実施するが、工程の一部,すなわち前記ファンを間欠的に駆動するように構成することができる。
【実施例1】
【0049】
以下、この発明の具体的実施例1を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、同実施例1の冷却装置としての複合冷却装置1の概略構成図であり、図2は、同実施例1の要部拡大断面の説明図であり、図3〜図7は、それぞれ同実施例1による制御手順の要部を説明するフローチャート図である。
【0050】
前記複合冷却装置1は、真空冷却と冷風冷却とを行うことができる冷却装置であり、種々の冷却パターンを選択的に実行できるとともに、被冷却物温度(以下、品温という。)がチルド域の低温となるように被冷却物3を短時間で冷却できる特徴を有している。
【0051】
前記複合冷却装置1は、冷却室2と、この冷却室2内の被冷却物3を真空冷却する真空冷却手段4と、前記被冷却物3を冷風冷却する冷風冷却手段5と、前記真空冷却手段4および前記冷風冷却手段5を制御する制御手段としての制御器6とを主要部として備える。
【0052】
そして、前記制御器6には、ソフトウエアによるタイマー7を備えている。前記制御器6は、予め記憶した第一〜第五プログラムからなる冷却プログラムに基づき、前記真空冷却手段4および前記冷風冷却手段5などを制御するように構成されている。
【0053】
前記第一〜第五プログラムは、被冷却物3の性状(真空冷却に適した食材か否か)と冷却開始当初の品温(以下、初期品温という。)および到達(冷却)すべき品温(以下、設定冷却温度という。)に応じて選択される。すなわち、被冷却物3が真空冷却に適した食材かどうかという被冷却物3の性状条件と、初期品温が前記第一温度設定値(たとえば70℃)以上か、それより低いかという初期品温条件と、設定冷却温度が前記第二温度設定値(たとえば10℃)以上かそれより低いかという冷却温度条件とに応じて、前記プログ
ラムを選択することができるように構成している。前記設定冷却温度は、目標冷却温度または到達冷却温度と称することができる。
【0054】
つぎに、この複合冷却装置1の各構成要素について説明する。前記冷却室2は、被冷却物3を収容する密閉空間を形成し、被冷却物3を出し入れするための開口とこれを開閉する扉(いずれも図示省略)を備えている。また、前記冷却室2は、区画壁8により内部を上部の第一領域81と下部の第二領域82とに区画している。前記第一領域81には、被冷却物3が収容され、前記第二領域82には、前記冷風冷却手段5の一部を構成する冷却用熱交換器9が配置されている。被冷却物3は、容器に収容した食材である。
【0055】
前記冷却用熱交換器9は、冷凍機10の冷媒を液化するコンデンサ(図示省略)を有するコンデンシングユニット11から供給される液化冷媒を蒸発させることにより冷却作用をなす周知の蒸発器にて構成されている。
【0056】
この冷凍機10は、前記冷却用熱交換器9を除霜する除霜手段を備えている。この除霜手段は、冷媒の流れを逆転させるなどにより、前記コンデンシングユニット11から前記冷却用熱交換器9へホットガスを流して除霜するホットガスデフロストと称される周知の構成である。
【0057】
前記区画壁8は前記冷却室2に対して着脱自在に構成されており、前記扉を開いて、前記区画壁8を外すと前記冷却用熱交換器9が前記冷却室2の被冷却物出し入れ用の開口から露出するように構成されている。前記冷却用熱交換器9を洗浄するには、前記区画壁8を外して露出状態とすることにより、前記冷却用熱交換器9をこの複合冷却装置1に備え付けの洗浄機(図示省略)を用いて丸洗いすることができる。
【0058】
そして、前記冷風冷却手段5は、被冷却物3を冷風により冷却するものである。この冷風冷却手段5は、前記冷却室2内の空気を冷却するための前記冷却用熱交換器9と、前記冷却室2外に配置されるモータ12によって駆動される空気循環手段としてファン13とを含む。
【0059】
そして、前記冷却室2の構成壁と前記区画壁8との間に第一開口(または隙間)141,第二開口(または隙間)142を設けて、前記冷却室2内に空気の循環経路(符号省略)を形成することにより、冷風冷却機能をなすように構成している。この実施例1では、前記区画壁8は前記冷却室2の構成壁とで前記循環経路構成部材を構成する。なお、前記ファン13から出た空気がショートパスして戻らないように、前記ファン13と前記区画壁8および前記冷却室2の構成壁との間に遮蔽部材(図示省略)を設けるとともに、前記冷却用熱交換器9と前記区画壁8および前記冷却室2の構成壁との間にも遮蔽部材(図示省略)を設けている。
【0060】
前記真空冷却手段4は、前期の真空冷却速度が早く(速く)、後期で真空冷却速度が鈍化する第一真空冷却特性を有する第一真空冷却手段41と、前期の真空冷却速度が早く、後期で真空冷却速度が鈍化する第二真空冷却特性を有する第二真空冷却手段42とから構成されている。
【0061】
前記第一真空冷却手段41および前記第二真空冷却手段42は、具体的には、つぎのように構成される。すなわち、前記第一真空冷却手段41は、前記冷却室2と接続される減圧ライン15と、この減圧ライン15途中に設けられる減圧手段としての水封式の真空ポンプ16と、前記冷却室2および前記真空ポンプ16の間に位置して閉時に前記冷却室2を密閉保持する開閉弁17とを含んで構成される。
【0062】
前記減圧ライン15は、図1に示すように前記冷却室2の底壁の中央部と接続されている。前記底壁は、周端部から中央部へ向けて下向きに傾斜形成されているので、前記減圧ライン15は、前記底壁の一番低い箇所に接続されている。この構成により後記のドレン排出動作において、ドレンを速やかに排出することができる。
【0063】
この第一真空冷却手段41は、前記開閉弁17を開いた状態で前記真空ポンプ16を作動(運転)させることにより第一真空冷却工程を実行するように構成される。前記開閉弁17は、開閉だけの弁としているが、開度が調整可能な弁とすることができる。前記減圧ライン15には、必要に応じて前記冷却室2方向への流れを阻止する逆止弁(図示省略)を設けることができる。こうした構成による第一真空冷却手段41の第一真空冷却特性は、前期の真空冷却速度が早く、後期で真空冷却速度が鈍化するものとなっている。
【0064】
また、前記第二真空冷却手段42は、前記冷却室2内を低圧下で密閉状態として前記冷却用熱交換器9により被冷却物3からの蒸気を凝縮する機能を有し、第二真空冷却工程を実行するように構成される。この第二真空冷却手段42を構成する要素は、前記冷却室2,前記冷却用熱交換器9,前記開閉弁17および前記第一真空冷却手段41である。前記冷却室2内を低圧下で密閉状態とするには、前記第一真空冷却工程後に、前記開閉弁17を閉じることで実現される。こうした構成による第二真空冷却手段42の第二真空冷却特性は、前記第一真空冷却特性と同様に、前期の真空冷却速度が早く、後期で真空冷却速度が鈍化するものとなっている。
【0065】
そして、前記冷風冷却手段5の冷風冷却特性について説明すると、前記第一温度設定値以上の温度域の特性(第一冷風冷却特性)は、前記第一温度設定値以上の温度域では被冷却物3からの自然蒸発が支配的であるので真空冷却速度より早く、前記第二温度設定値以下の温度域の特性(第二冷風冷却特性)は、冷風冷却速度が前記第一真空冷却手段41および前記第二真空冷却手段42の前期の真空冷却速度より遅く、後期の鈍化した真空冷却速度よりも早いものとしている。
【0066】
この実施例1においては、初期品温が低い場合でも、前記第二真空冷却工程の作用を可能とするために、前記第一真空冷却工程の中期または後期に空気排除工程を実行するように構成している。より具体的には、前記冷却室2内圧力が前記真空ポンプ16の減圧能力限界に対応する圧力(限界圧力)となる前に、前記限界圧力に相当する温度以上の40℃の温水を前記冷却室2内へ注入するように構成している。注入された温水は、前記冷却室2内の圧力がその温水の飽和蒸気圧力以下まで減圧された時点から蒸発し始め、発生した蒸気により、前記冷却室2内の空気を室外へ排出することができる。
【0067】
この空気排除工程における温水注入のタイミングは、前記第一真空冷却工程開始からの経過時間を前記タイマー7により計測し、この計測値が設定値(注入タイミング)となった時としている。また、この温水の注入必要量は、予め実験により前記冷却室2の容積に応じた値として求めておく。前記の温水注入タイミングは、前記冷却室2内圧力が設定値まで下がったときとすることができる。
【0068】
前記冷却室2内への温水注入手段としての温水供給手段18は、温水を前記冷却室2内へ供給するための第一給水ライン19と、温水供給源(温水器または温水発生器)20と、温水供給を制御する第一給水弁21とを設けて構成されている。
【0069】
また、前記冷却室2は、真空冷却工程後に前記冷却室2内を負圧から大気圧に復圧する復圧手段22を備えている。この復圧手段22は、前記冷却室2と接続される復圧ライン23と、この復圧ライン23途中に設ける復圧弁24および除菌フィルター25とを含んで構成される。前記復圧弁24は、復圧速度および減圧速度を調整するために開度が調整
可能な弁とするが、開閉のみの弁とすることができる。また、前記復圧ライン23には、前記冷却室2内から外方向への流れを阻止する逆止弁(図示省略)を設けることができる。
【0070】
前記第一真空冷却手段41は、前記冷却室2内の気体を排出する排気機能に加えて、前記冷風冷却工程時に前記冷却用熱交換器9にて生ずる凝縮水(ドレン)を前記冷却室2外へ排出するドレン排出機能をもなすように構成されている。すなわち、前記冷風冷却工程時に前記開閉弁17を開き、前記真空ポンプ16を作動させる動作を間欠的に行うように構成している。
【0071】
前記制御器6は、予め記憶した前記冷却プログラムにより前記第一真空冷却手段41,前記第二真空冷却手段42,前記温水供給手段18および前記冷風冷却手段5の作動などを制御するように構成されている。
【0072】
前記冷却プログラムなどの制御を行うために、被冷却物3の品温を検出する品温センサ26,前記冷却室2内の圧力(温度)を検出する室内圧力センサ27,前記冷凍機10の冷媒回路の圧力および温度をそれぞれ検出する冷媒圧力センサ28,冷媒温度センサ29を備えている。これらのセンサは、前記制御器6と接続されて、前記コンデンシングユニット11,前記モータ12,前記真空ポンプ16、前記開閉弁17,前記第一給水弁21,前記復圧弁24などを制御する。
【0073】
前記冷却プログラムには、前記冷風冷却手段5による第一冷風冷却工程,前記真空冷却手段41,42による真空冷却工程および前記冷風冷却手段5による第二冷風冷却工程を順次行う第一冷却パターンを実行するプログラム(第一プログラム),前記真空冷却工程を行った後に前記第二冷風冷却工程を行う第二冷却パターンを実行するプログラム(第二プログラム)、前記冷風冷却手段5による冷風冷却工程のみを行う第三冷却パターンを実行するプログラム(第三プログラム),前記真空冷却工程のみを行う第四冷却パターンを実行するプログラム(第四プログラム)、前記第一冷風冷却工程および前記真空冷却工程を順次行う第五冷却パターンを実行するプログラム(第五プログラム)を含ませている。
【0074】
また、真空冷却工程を含む前記第一プログラム,前記第二プログラム,前記第四プログラムおよび前記第五プログラムには、前記第一真空冷却工程の初期において、前記ファン13を回転、駆動して被冷却物3の粗熱取りを行う制御(粗熱取り制御)を含んでいる。
【0075】
前記第一〜第五プログラムは、前記のように、被冷却物3の性状条件と、初期品温条件と、冷却温度条件とに応じて、選択できるように構成している。すなわち、被冷却物3が真空冷却に適している食材,すなわち水分を含み、蒸発が可能な食材であって、チルド域まで短時間で冷却したいという条件下において、初期品温が前記第一温度設定値以上の場合には、前記第一プログラムを選択して実行し、初期品温が前記第一温度設定値より低い場合は、前記第二プログラムを選択して実行する。そして、被冷却物3が真空冷却に適している食材であって、チルド域より高い温度域まで短時間で冷却したいという条件下において、初期品温が前記第一温度設定値以上の場合には、前記第五プログラムを選択して実行し、初期品温が前記第一温度設定値より低い場合は、前記第四プログラムを選択して実行する。さらに、被冷却物3が真空冷却に適していない食材や含有水分が蒸発不可能な態様の食材の場合は、前記第三プログラムを選択して実行する。
【0076】
つぎに、前記第一プログラムおよび前記第二プログラムにおける前記第一冷風冷却工程から前記第一真空冷却工程への切換タイミング(以下、第一真空切換タイミングという。)、前記第一真空冷却工程から前記第二真空冷却工程への切換タイミング(以下、第二真空切換タイミングという。)および前記第二真空冷却工程から前記第二冷風冷却工程への
切換タイミング(以下、冷風切換タイミングという。)について説明する。
【0077】
すなわち、前記第一真空切換タイミングは、検出手段としての品温センサ26の検出値が前記第一切換設定値となったときとしている。
【0078】
また、前記第二真空切換タイミングおよび前記冷風切換タイミングは、それぞれ前記第一真空冷却特性および前記第二真空冷却特性を踏まえて、予め実験により、求めておく。前記第二真空冷却切換タイミングは、前記第一真空工程開始から前記第一真空冷却工程の後期の真空冷却速度が前記第二冷風冷却工程の冷風冷却速度近傍に達するまでの経過時間(冷却時間)を第二切換設定値として求めておき、検出手段としての前記タイマー7による計測値が前記第二切換設定値となったときとしている。また、前記冷風切換タイミングは、前記第二真空冷却工程開始から前記第二真空冷却工程の後期の真空冷却速度が前記第二冷風冷却工程の冷風冷却速度近傍に達するまでの経過時間(冷却時間)を第三切換設定値として求めておき、前記タイマー7による計測値が前記第三切換設定値となったときとしている。
【0079】
前記第二切換設定値および前記第三切換設定値は、冷却時間(前記タイマー7による計測時間)によらずに、前記冷却室2内の圧力,前記冷却室2内の温度,前記近傍に達したときの被冷却物3の温度のいずれかにより,または前記冷却室2内の圧力,前記冷却室2内の温度,被冷却物3の温度のいずれかの変化量により求めることができる。そして、前記室内圧力センサ27により室内圧力または室内温度を検出するか、前記品温センサ7により品温を検出するかして、検出値が前記第二切換設定値となったとき、前記第一真空冷却工程から前記第二真空冷却工程へ切り換え、前記検出値が前記第三切換設定値となったとき、前記第二真空冷却工程から前記第二冷風冷却工程へ切り換えるように構成することができる。品温により前記第一〜第三切換設定値を設定する場合には、各第一切換設定値,前記第二切換設定値,第三切換設定値をそれぞれ前記第一温度設定値,前記第二温度設定値,前記第三設定温度とすることができる。前記第一切換設定値も品温以外の時間,室内圧力または室内温度などにより設定することができる。
【0080】
ところで、この実施例1においては、前記ファン13を前記第二領域82に前記冷却用熱交換器9に対向するように配置し、前記冷却室2外へ配置したモータ12により駆動するように構成している。このため、前記ファン13と前記モータ12とを連結し前記冷却室2壁を貫通する部分において、真空冷却工程時に真空漏れを生じないように、前記モータ12を前記冷却室2内空間に対して気密に遮断するシール手段50を備えている。
【0081】
前記シール手段50を図2に基づき説明する。前記ファン13は、前記冷却室2の室壁51を貫通する回転軸52により前記モータ12と連結される。前記回転軸52は、前記モータ12のモータ軸53および前記ファン13とそれぞれ軸継手54およびファンボス55により着脱自在に連結されている。この軸継手54は、螺子(符号省略)により着脱可能に構成されている。前記ファンボス55は、前記ファン13と一体的に設けている。
【0082】
前記シール手段50は、前記回転軸52をその左右両端部において支持する第一軸受56,第二軸受57と、前記第一軸受56および前記第二軸受57の位置決めをなし、前記軸継手54を収容するとともに、前記モータ12を固定する固定筒58と、この固定筒58の前記冷却室2側の端部を液密,かつ気密にシールするシール部材59とから主構成される。
【0083】
前記第一軸受56および前記第二軸受57は、前記固定筒58に形成された第一貫通孔60内に位置決め固定される。そして、この第一軸受56および前記第二軸受57は、前記回転軸52の回転運動を滑らかにし、回転精度を維持すると同時に重力方向の荷重を支
える機能をなす。
【0084】
前記固定筒58は、前記室壁51に形成された第二貫通孔61を貫通して固定されている。この固定筒58の前記室壁51への固定および前記モータ12との固定は、それぞれ固定筒58と一体的に設けた第一フランジ62と第二フランジ63を用いて行われる。前記第二貫通孔61の内径は、前記固定筒58の外径よりも若干大きく形成され、前記固定筒58の挿通を容易にしている。
【0085】
すなわち、前記第一フランジ62を環状のフランジ用パッキン70を介して前記室壁51に形成した第三フランジ64に接合して、それぞれボルト,ナット(図示省略)にて固定することで、前記固定筒58を前記室壁51に着脱可能に固定する。前記固定筒58と前記第二貫通孔61との間の液密,かつ気密シールは、前記第一フランジ62,前記フランジ用パッキン70および前記第三フランジ64により実現されており、前記第一フランジ62,前記フランジ用パッキン70および前記第三フランジ64は、前記シール手段50を構成している。
【0086】
また、前記第二フランジ63を前記モータ12のケースの一部として形成される第四フランジ65に接合して、それぞれボルト,ナット(図示省略)にて固定することで、前記固定筒58を前記室壁51に着脱可能に固定する。前記固定筒58は、SUSにて形成されるが、これに限定されるものではない。
【0087】
前記シール部材59は、前記回転軸52と前記固定筒58の第一貫通孔60との間に形成される隙間を液密,かつ気密にシール(封止)するための部材である。このシール部材59は、封止板66と、第一環状パッキン67と、第二環状パッキン68と、押え板69とを含む。
【0088】
前記封止板66は、前記回転軸52が貫通される第三貫通孔71を有し、前記第一貫通孔60の前記冷却室2に臨む端部を封止するように、前記固定筒58の端部に形成された凹部72に装着される。
【0089】
前記第一環状パッキン67は、前記封止板66の第三貫通孔71と前記回転軸52との間をシールするように、前記第三貫通孔71の構成面に装着される。この第一環状パッキン67は、前記回転軸52を回転可能にシールする回転シールである。前記第二環状パッキン68は、前記封止板66の外周面と前記凹部72との間をシールするように前記封止板66の外周面に装着される。この第二環状パッキン68は、シリコンゴム製のOリングから構成される。
【0090】
前記押え板69は、前記封止板66を前記凹部72に押えて固定するように、前記固定筒58の前記冷却室2に臨む端面に螺子73にて着脱自在に固定される。
【0091】
また、前記固定筒58には、前記軸継手54と前記回転軸52との連結または非連結を前記固定筒58の外方から可能とするための操作孔74を形成している。
【0092】
さらに、図1を参照して、前記前記冷却用熱交換器9と前記コンデンシングユニット11を接続する冷媒配管39,39が前記冷却室3の室壁51を貫通する箇所は、シールパッキン75にて液密,かつ気密にシールしている。このシールパッキン75は、コンプレッションフィッティングとすることができる。
【0093】
以下に、この実施例1の動作を図1〜図7に基づき以下に説明する。以下の説明において、前記粗熱取り制御は、前記第一プログラムについてのみ説明し、前記第二プログラム
,前記第四プログラムおよび前記第五プログラムについては同様であるので説明を省略する。
【0094】
<準備段階>
使用者は、前記扉を開いて前記冷却室2内へ被冷却物3を収容し、前記扉を閉じて密閉状態とする。この状態では、前記開閉弁17,前記第一給水弁21,前記復圧弁24は、全て閉状態で、前記モータ12,前記真空ポンプ16,前記コンデンシングユニット11は、全て作動(運転)停止状態である。前記蒸気発生源20は、予め作動状態としておくことができる。
【0095】
<冷却プログラムの選択>
この状態で、使用者は、運転スイッチ(図示省略)により運転を開始した後、前記第一〜前記第五プログラムを選択する。この選択は、初期品温と設定冷却温度と被冷却物3の種類とに応じて行うことができる。
【0096】
この選択により、図3を参照して、処理ステップS1(以下、処理ステップSNは、単にSNと称する。)において、前記第一プログラム〜前記第五プログラムが選択されると、それぞれS2〜S6にて第一プログラム〜前記第五プログラムが実行される。以下、各冷却プログラムによる動作を説明する。
【0097】
<第一プログラム:冷風冷却→真空冷却→冷風冷却切換>
前記第一プログラムは、初期品温が約70℃以上で、設定冷却温度が10℃以下であって、被冷却物3が水分を含み、その水分が蒸発可能な食材の冷却に適している。今、初期品温を90℃,設定冷却温度を3℃とする。
【0098】
(第一冷風冷却工程)
この第一プログラムが選択されると、図4の処理手順が実行される。第一冷風冷却工程S21では、前記開閉弁17,前記第一給水弁21および前記復圧弁24を閉じて、前記真空ポンプ16を停止するとともに、前記コンデンシングユニット11および前記ファン13を作動させる。これにより、前記冷却室2内において前記ファン13→前記冷却用熱交換器9→前記第二開口142→前記被冷却物3→前記第一開口141→前記ファン13の一点破線矢視の冷風循環流が形成される。この循環流により、前記冷却室2内の空気は、前記冷却用熱交換器9により冷却されて温度低下し、前記被冷却物3を冷却する。こうした冷風冷却により、品温が約70℃となるまで冷却される。品温が70℃まで低下したことを前記品温センサ26により検出すると、S22にてYESが判定されて、前記第一冷風冷却工程S21を終了する。
【0099】
この第一冷風冷却工程S21は、前記コンデンシングユニット11を作動させることなく、前記復圧手段22および前記開閉弁17を開き、前記真空ポンプ16を作動させることにより、外気を前記冷却室2へ導入しつつ、前記減圧ライン15を通して排出することにより、外気により前記被冷却物3を冷却(外気導入冷却)するように構成することができる。この場合、前記ファン13の作動は、必要に応じて行うことができる。
【0100】
(第一真空冷却工程)
この第一真空冷却工程S23は、つぎのように行われる。前記開閉弁17を開き、前記第一給水弁21を閉じ、前記復圧弁24を閉じて、前記真空ポンプ16を作動させ、前記コンデンシングユニット11の作動を停止する。そして、S24にて前記第一冷風冷却工程S21から引き続いてファン13を駆動する。すると、前記冷却室2内の気体は、前記減圧ライン15を通して室外へ排出される。前記冷却室2内の圧力は、前記第一真空冷却特性に沿って低下し、この圧力低下に従って、被冷却物3からの蒸気の蒸発により、被冷
却物3の温度が70℃から低下して行く。この品温低下速度は、初期において急速で、温度の低下とともに、後期において鈍化して行く。
【0101】
この第一真空冷却S23開始時から前記ファン13が駆動されていて、第一真空冷却工程S23の初期には、前記冷却室2内に気体が残存しているので、気体の強制対流が生ずる。この強制対流により、被冷却物3は、対流伝熱によって熱が奪われて、被冷却物3の粗熱取りが行われる。S24のファン13の回転数は、前記第一冷風冷却工程S21と同じにするが、異なる回転数とすることもできる。この粗熱取りは、S25において前記室内圧力センサ27の検出圧力が前記設定圧力(例えば、約250hPa程度)となり、YESが判定されると終了し、S26へ移行する。S26では、前記制御器6は、前記ファン13の駆動を停止し、前記ファン13を回転しない第一真空冷却工程を続行する。
【0102】
この第一真空冷却工程S23において、前記タイマー7の計測値が前記注入タイミングとなると前記制御器6は、S27の空気排除工程を行う。すなわち、前記第一給水弁21を所定時間だけ開いて、前記温水供給源20から前記冷却室2内へ所定量の温水を供給する。そして、前記冷却室2内の圧力がその温水の飽和蒸気圧力以下まで減圧されると、供給された温水が蒸発し始める。こうして発生した蒸気とともに前記冷却室2内の空気が前記減圧ライン15を通して室外へ排出される。こうして、前記冷却室2内の空気排除が行われる。
【0103】
そして、前記タイマー7による計測時間が前記第二切換設定値に達し、S28にてYESが判定されると、S29の第二真空冷却工程へ移行する。この移行時点における真空冷却速度は、前記冷風冷却手段5の冷風冷却特性による冷却速度より低くなっている。また、この移行時点の品温は、約20℃である。
【0104】
(第二真空冷却工程)
前記第二真空冷却工程S29では、前記開閉弁17,前記第一給水弁21および前記復圧弁24を閉じて、前記真空ポンプ16を停止するとともに、前記コンデンシングユニット11を作動させる。前記コンデンシングユニット11の作動により、前記冷却用熱交換器9内の温度を約−10℃とする。このコンデンシングユニット11による前記冷却用熱交換器9の温度低下には起動から所定の時間を要するので、前記第一切換設定値の所定時間前に前記コンデンシングユニット11を起動させておくことが望ましい。
【0105】
同時に、S71において、前記ファン13を駆動する。このファン13の駆動による第二真空冷却工程29は、つぎのようにして行われる。すなわち、前記冷却室2内は、低圧で密封され、前記冷却室2内の蒸気は、前記冷却用熱交換器9へ移動して、ここで凝縮する。この蒸気の移動の際に、残存空気が蒸気に連れられて前記熱交換器9の表面に付着すると、伝熱を阻害するが、前記ファン13の駆動により、付着した空気を吹き飛ばす。これにより、伝熱障害が阻止または改善され、前記冷却室2内の圧力は、低圧状態を維持する。その結果、被冷却物3から蒸気が連続的に発生し、品温が低下して行く。
【0106】
この品温低下は、前記第二真空冷却特性に沿ってなされ、初期において急速に行われ、温度の低下とともに、後期において低下速度が鈍化して行く。前記タイマー7による計測時間が前記第三切換設定値に達すると、S72の復圧工程へ移行する。この移行時点における真空冷却速度は、前記冷風冷却手段5の第二冷風冷却特性による冷却速度より低くなっている。また、この移行時点の品温は、約10℃である。
【0107】
前記第二真空冷却工程S29において、前記冷却用熱交換器9に着霜すると、前記制御器6は除霜動作を行う。着霜は、前記冷媒圧力センサ28または前記冷媒温度センサ29により前記冷凍機10の低圧側の圧力または温度を検出することにより行い、検出値が着
霜と判定できる設定値となるとホットガスを前記冷却用熱交換器9へ供給することにより除霜が行われる。この除霜動作により、前記冷却用熱交換器9の凝縮作用を良好に維持することができ、前記第二真空冷却工程による冷却を着霜による影響を受けずに効果的に行うことができる。
【0108】
(復圧工程)
前記復圧工程S72は、前記復圧弁24を開くことで行う。これにより、外気が前記復圧ライン23を通して前記冷却室2内へ導入され、前記冷却室2内が大気圧に復帰する。この復圧工程は、前記室内圧力センサ27により検出され、大気圧を検出すると、復圧工程を終了し、S73の第二冷風冷却工程へ移行する。この実施例1においては、前記復圧工程中は、前記コンデンシングユニット11をの作動を継続し、前記ファン13の作動を停止しておく。しかしながら、必要に応じて、前記コンデンシングユニット11の作動を停止し、前記ファン13を作動させるように構成することができる。
【0109】
(第二冷風冷却工程)
前記第二冷風冷却工程S73では、前記第一冷風冷却工程S21と同様に、前記開閉弁17,前記第一給水弁21および前記復圧弁24を閉じて、前記真空ポンプ16を停止するとともに、前記コンデンシングユニット11および前記ファン13を作動させる。これにより、前記冷却室2内において前記ファン13→前記冷却用熱交換器9→前記第二開口142→前記被冷却物3→前第一記開口141→前記ファン13の一点破線矢視の冷風循環流が形成される。この循環流により、前記冷却室2内の空気は、前記冷却用熱交換器9により冷却されて温度低下し、前記被冷却物3を対流伝熱により冷却する。こうした冷風冷却により、品温が約3℃となるまで冷却される。品温が3℃まで低下したことを前記品温センサ26により検出すると、前記第二冷風冷却工程S73を終了する。
【0110】
この第二冷風冷却工程S73においては、被冷却物3および前記冷却用熱交換器9の表面から凝縮水(ドレン)が発生し、前記冷却室2内底部に貯留する。このドレンは、つぎのようにして排出される。前記開閉弁17を開き、前記真空ポンプ16を作動させる。すると、前記ドレンは、前記減圧ライン15を通して前記冷却室2外へ排出される。このドレン排出時、前記復圧弁24を開くことにより、ドレンの排出をスムーズに行うことができる。前記第一冷風冷却工程S21において発生したドレンも、同様にして前記冷却室2外へ排出される。このドレン排出動作は、この実施例1では、前記制御器6により間欠的に実行されるが、ドレンの貯留を検出して、前記ドレン排出動作を行うように構成することができる。
【0111】
(冷却運転終了)
この第二冷風冷却工程S73が終了すると、使用者は、前記運転スイッチを操作して、冷却運転を停止して、前記冷却室2内の被冷却物3を取り出すことができる。勿論、前記第二冷風冷却工程S73終了後も、被冷却物3の冷蔵のために前記第二冷風冷却工程S73を続けることができる。
【0112】
このように、この第一プログラムでは、前記第一冷風冷却工程S21により、被冷却物3の粗熱取りが行われる。品温が約70℃以上では、被冷却物3の温度が高く、被冷却物3からの自然蒸発が支配的であるので、前記真空冷却手段4を作動させることによる真空冷却が効果的に行われない。この第一プログラムでは、冷風冷却による粗熱取りを行うとともに、前記第一真空冷却工程時の前記ファン13を駆動することにより粗熱取りを行っているので、効果的な被冷却物3の冷却を行うことができ、全冷却時間を短縮することができる。
【0113】
<第二プログラム:真空冷却→冷風冷却切換>
前記第二プログラムは、初期品温が約70℃以下で、設定冷却温度が約10℃以下であって、被冷却物3が水分を含み、その水分が蒸発可能な食材の冷却に適している。今、初期品温を65℃,設定冷却温度を3℃とする。
【0114】
この第二プログラムが選択されると、図5に示す処理手順が実行される。すなわち、→第一真空冷却工程S31→第二真空冷却工程S32→復圧工程S33→冷風冷却工程S34が順次実行される。
【0115】
この第二プログラムにおいて、前記第一プログラムと異なる主な点は、図4の第一冷風冷却工程S21を削除した点であり、前記第一プログラムのS22,S24,S25,S26,S28,S71に相当する処理を図示省略している。
【0116】
図5の第一真空冷却工程S31,第二真空冷却工程S32,復圧工程S33,冷風冷却工程S35は、それぞれ図4の第一真空冷却工程S23および空気排除工程S27,第二真空冷却工程S29,復圧工程72,第二冷風冷却工程S73に相当するので、その説明を省略する。また、前記第一真空冷却工程から前記第二真空冷却工程への切換タイミング,前記第二真空冷却工程から前記冷風冷却工程(復圧工程を含む)への切換タイミングおよび前記第一真空冷却工程における空気排除工程開始のタイミングは、それぞれ前記第一プログラムの第二真空切換タイミング,前記冷風切換タイミング,第一真空冷却工程における空気排除工程開始のタイミングと同様であるのでその説明を省略する。
【0117】
<第三プログラム:冷風冷却>
前記第三プログラムは、被冷却物3が水分を含まない食材や、水分を含んでいてもその水分が蒸発できないように包装されている食材の冷却に適している。
【0118】
この第三プログラムが選択されると、図3の冷風冷却工程S4が実行される。この冷風冷却工程S4は、前記第一プログラム(図4)の第一冷風冷却工程S21と同様に、前記開閉弁17,前記第一給水弁21および前記復圧弁24を閉じて、前記真空ポンプ16を停止するとともに、前記コンデンシングユニット11および前記ファン13を作動させて行われる。すなわち、図1の一点破線矢視の冷風循環流が形成され、この冷風循環流により、被冷却物3を冷却する。この冷風冷却工程S5は、前記品温センサ26による検出値が設定冷却温度となることで終了する。
【0119】
<第四プログラム:真空冷却>
前記第四プログラムは、初期品温が約70℃以下で、前記設定冷却温度が約10℃以上であって、被冷却物3が水分を含み、その水分が蒸発可能な食材の冷却に適している。今、初期品温を65℃とし、前記設定冷却温度を15℃とする。
【0120】
この第四プログラムが選択されると、図6に示すように、第一真空冷却工程S51→第二真空冷却工程S52→復圧工程S53が順次実行される。
【0121】
この第四プログラムにおいて、前記第一プログラムと異なる主な点は、図4の第一冷風冷却工程S21および第二冷風冷却工程S73を削除し、前記第一プログラムのS24,S25,S26,S28,S71に相当する処理を図示省略している。また、前記第二真空冷却工程S29の終了を品温が15℃となったタイミングとしている点である。
【0122】
以下の説明においては、図6の第一真空冷却工程S51,第二真空冷却工程S52,復圧工程S53は、それぞれ図4の第一真空冷却工程S23および空気排除工程S27,第二真空冷却工程S29,復圧工程S72に相当するので、その説明を省略する。また、前記第一真空冷却工程S51から前記第二真空冷却工程S52への第二真空切換タイミング
,前記第一真空冷却工程における空気排除工程開始のタイミングは、それぞれ前記第一プログラムの前記第二真空切換タイミング,第一真空冷却工程S51における空気排除工程開始のタイミングと同様であるので、その説明を省略する。以下、前記第四プログラムにおいて前記第一プログラムと異なる部分を主として説明する。
【0123】
図6において、前記第一真空冷却工程S51および前記第二真空冷却工程S52は、図4の前記第一プログラムと同様に行われる。前記第二真空冷却工程S52において、前記品温センサ26による検出値が15℃となると、前記第二真空冷却工程S52を終了し、前記第一プログラムと同様に前記復圧工程S53を実行して、冷却運転を終了する。
【0124】
<第五プログラム:冷風冷却→真空冷却>
前記第五プログラムは、初期品温が約70℃以上,設定冷却温度が10℃以上であって、被冷却物3が水分を含み、その水分が蒸発可能な食材の冷却に適している。今、初期品温を90℃,設定冷却温度を15℃とする。
【0125】
この第五プログラムが選択されると、図7に示す処理手順が実行される。すなわち、冷風冷却工程S61→第一真空冷却工程S62→第二真空冷却工程S63→復圧工程S64が順次実行される。
【0126】
この第五プログラムにおいて、図4の前記第一プログラムと異なる主な点は、図4の前記第二冷風冷却工程S25を削除した点であり、前記第一プログラムのS22,S24,S25,S26,S28,S71に相当する処理を図示省略している。
【0127】
また、図7の冷風冷却工程S61,第一真空冷却工程S62,第二真空冷却工程S63,復圧工程S64は、それぞれ図4の第一冷風冷却工程S21,第一真空冷却工程S22および空気排除工程S27,第二真空冷却工程S23,復圧工程S24に相当するので、その説明を省略する。また、前記冷風冷却工程S61から前記第一真空冷却工程S62への切り換えタイミング,前記第一真空冷却工程S62から前記第二真空冷却工程S63への切り換えタイミングおよび前記第一真空冷却工程S62における空気排除工程開始のタイミングは、図4の第一プログラムと同様であるので、その説明を省略する。
【0128】
以上のように構成される実施例1によれば、つぎの作用効果を奏する。前記第一真空冷却工程初期に前記ファン13を回転させて、被冷却物3の粗熱取りを行うので、前記第一真空冷却工程の冷却時間を短縮することができ、全冷却時間を短縮することができる。
【0129】
また、前記真空冷却工程を前記第一真空冷却手段41による外部コールドトラップを用いた第一真空冷却工程と前記第二真空冷却手段42による内部コールドトラップを用いた第二真空冷却工程との二段階で行っているので、前記真空冷却手段4の減圧手段を簡素なものとすることができる。また、真空冷却開始当初から過大な冷却能力で真空冷却するものと比較して、真空冷却手段の作動に必要なエネルギーを削減できるとともに、急激な冷却で被冷却物の品質低下が問題になる食材では、品質の低下を抑えることができる。
【0130】
また、前記第一真空冷却工程中に空気排除工程を行っているので、前記第二真空冷却工程における前記冷却用熱交換器9表面での蒸気の凝縮を効率よく行うことができる。
【0131】
また、冷風冷却用の前記冷却用熱交換器9を前記第二真空冷却手段42の蒸気凝縮用のコールドトラップと兼用しているので、真空冷却手段の設備を簡素化でき、複合冷却装置のイニシャルコストを低減することができる。
【0132】
さらに、被冷却物3が真空冷却に適している食材をチルド域まで短時間で冷却したい場
合には、初期品温に応じて前記第一プログラムと前記第二プログラムとを選択して実行することにより、被冷却物3を短時間で冷却することができる。また、被冷却物3が真空冷却に適している食材であって、チルド域より高い温度域まで短時間で冷却したい場合には、初期品温に応じて前記第四プログラムと前記第五プログラムとを選択して実行することにより、同様に被冷却物3を短時間で冷却することができる。さらに、被冷却物3が真空冷却に適していない食材や含有水分が蒸発不可能な態様の場合は、前記第三プログラムを選択して実行することにより、短時間で冷却することができる。このように、前記第一〜第五プログラムを選択することにより、被冷却物3の性状,初期品温および設定冷却温度に応じた冷却を実現することができ、1台の冷却装置で種々の冷却を短時間で、高品質にて実現することができる。
【実施例2】
【0133】
つぎに、この発明の実施例2の複合冷却装置1を図8に基づき説明する。この実施例2は、前記真空冷却手段4を前記第一真空冷却手段41と前記第二真空冷却手段42とから構成するなどの点で前記実施例1と構成を同じくしており、以下に異なる部分を主として説明する。
【0134】
この実施例2において、前記実施例1と異なるのは、前記第一真空冷却手段41の構成である。前記実施例1では、前記第一真空冷却手段41の減圧手段を前記減圧ライン15,前記開閉弁17および前記真空ポンプ16としたが、この実施例2では、これらの構成要素に加えて、前記真空ポンプ16の上流側に凝縮用熱交換器31を設けた点である。前記開閉弁17は、前記凝縮用熱交換器31と前記冷却室2との間に設けている。前記凝縮用熱交換器41へは第二給水ライン32が接続される。そして、前記第二給水ライン32に設けた第二給水弁33の開閉により前記凝縮用熱交換器31への通水が制御され、この凝縮用熱交換器31の作動が制御される。前記第二給水弁33は、前記制御器6により制御される。
【0135】
この実施例2の第一真空冷却手段41は、前記開閉弁17を開き、前記凝縮用熱交換器31および前記真空ポンプ16を作動させて、前記第一真空冷却工程を実行する。この第一真空冷却工程の第一真空冷却特性は、前記実施例1の第一真空冷却と同様であるが、前記凝縮用熱交換器31の冷却作用により真空冷却能力が前記第一真空冷却手段41よりも増強されるとともに、前記冷却室2の空気排除が効率よく行える。
【0136】
以上、この実施例2において、前記実施例1と異なる構成を説明したが、その他は同様であるので、その説明を省略する。また、この実施例2においても、前記第一〜第五プログラムが同様に実行されるので、その説明を省略する。
【実施例3】
【0137】
つぎに、この発明の実施例3の複合冷却装置1を図9〜図11に基づき説明する。図9は、同実施例3の概略構成図であり、図10は、同実施例3の第一真空冷却工程の制御手順を説明する図であり、図11は、同実施例3の時間−冷却室内圧力特性Xおよび時間−品温特性Yを示す図である。
【0138】
この実施例3は、ハード構成に関しては、基本構成を前記実施例1の構成(図1)と同じにしているが、前記冷却室2内へ空気を導入することなく前記第一減圧手段41の減圧能力を調整する減圧能力調整手段76を備えている点で構成を異にしている。また、ソフト構成に関しては、図10に示すように、前記第一真空冷却工程において、急冷と徐冷とを順次行うように構成している点で異なる。その他の構成は、前記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【0139】
まず、ハード構成の相違点を図9に基づき説明する。前記減圧能力調整手段76は、前記真空ポンプ16の上流側の前記減圧ライン15から分岐する給気ライン77と、この給気ライン77の途中に設けられ、開度が調整可能な調整弁78とから構成されている。前記調整弁78は、前記制御器6と接続されて、この制御器6により制御される。
【0140】
ついで、ソフト構成の相違点について説明する。前記第一プログラム,前記第二プログラム,前記第四プログラムおよび前記第五プログラムの粗熱取りを行う第一真空冷却工程について、減圧能力(速度)を変更しない第一冷却と、減圧能力を高くして行う急冷と、減圧の能力を低くして行う徐冷とを順次行う第二冷却とを選択可能に構成している。そして、前記急冷を、前記第一真空冷却手段41の作動による第一真空冷却工程を開始してから、前記室内圧力センサ27による検出圧力相当の飽和温度が前記品温センサ26による検出温度との差が設定値(たとえば50hPa)となるまでとした点である。前記制御器6による制御手順は、図10に示される。前記急冷を行うのは、冷却時間の短縮であり、前記徐冷を行うのは、被冷却物3の突沸を防止するためである。
【0141】
前記の急冷と徐冷は、この実施例3では、前記調整弁78の開度を調整することにより行っている。すなわち、急冷時には、前記調整弁78を全閉、徐冷時には前記調整弁78を所定の開度とすることにより実現している。
【0142】
以上の構成の実施例3の動作を説明する。以下の説明では、前記第一プログラムの第一真空冷却工程S23についてのみ説明し、前記第二プログラム,前記第四プログラムおよび前記第五プログラムについては同様であるので説明を省略する。今、初期品温T0が大気圧に相当する飽和蒸気温度以上とする。
【0143】
まず、図4の前記第一冷風冷却工程S21が行われ、冷風冷却により品温は、図11の曲線Y1の如く低下する。この間前記冷却室2内の圧力は大気圧を保つ(X1)。この第一冷風冷却工程S21が終了すると、図4の前記第一真空冷却工程S23が行われる。この第一真空冷却工程S23においては、図10に示す如く、まず、S81の急冷が行われる。この急冷は、前記開閉弁17を開き、前記復圧弁24,前記第一給水弁21および前記調整弁78を閉じ、前記真空ポンプ16を駆動することにより行われる。この急冷時、前記冷却室2内の圧力は、図11の曲線X2のように降下し、品温は、前記ファン13が駆動されているので、強制対流伝熱により、同図の曲線Y2の如く降下する。
【0144】
そして、前記室内圧力センサ27による検出圧力に相当する飽和蒸気温度が前記品温センサ26による検出温度より設定値だけ高い値T1となると、S82において、YESが判定されて、S83の徐冷に移行する。この徐冷時、前記冷却室2内の圧力は、図10の曲線X3のように降下し、品温は、同図の曲線Y3の如く降下する。以下、前記第一真空冷却工程S23以降の工程は、前記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【0145】
この実施例3によれば、前記冷却室2内圧力がほぼ品温相当圧力となるまで、急冷を行うので、設定温度まで急冷を行い、その後徐冷するものと比較して、品温が低下しない期間(粗熱取りによる品温低下により生ずる)を殆ど無くすことができ、真空冷却による冷却時間を短縮できる。また、前記調整弁78により徐冷を行うので、前記冷却室2内に空気が供給されることがなく、前記第二真空工程を支障無く行うことができる。
【0146】
ここで、前記実施例3の変形例を図12に基づき説明する。この変形例は、前記実施例3の減圧能力調整手段76を前記実施例1の開閉弁17に代えて開度が調整可能な調整弁78としたものである。この調整弁78は、前記開閉弁17の機能に加えて、前記制御器7により急冷時に全開,徐冷時に所定の開度に制御され、減圧能力が調整される。この変形例の動作は、前記実施例3と同様であるので、その説明を省略する。この変形例によれ
ば、前記実施例3と比較して、前記給気ライン77および調整弁78を前記開閉弁17と別個に必要としないので、構成を簡素化できる効果を奏する。
【0147】
この発明は、前記実施例1〜3に限定されるものではなく、たとえば、前記実施例1〜3を、複合冷却装置としたが、前記ファン13を有し真空冷却のみを行う冷却装置とすることができる。また、前記実施例1〜3の複合冷却装置は、前記第一真空冷却手段41と前記第二真空冷却手段42とを有しているが、前記第一真空冷却手段41のみで第一真空冷却工程のみを行う装置として、第一真空冷却工程中に前記ファン13を駆動して粗熱取りを行うように構成することができる。また、前記真空冷却手段41を前記第二真空冷却工程が行われない構成とする場合には、前記徐冷を前記復圧弁24の開度を調節(開いて)行うように構成することができる。前記冷却室2内の前記循環経路構成部材は、種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】この発明の実施例1の概略構成を説明する説明図である。
【図2】同実施例1の要部拡大断面の説明図である。
【図3】同実施例1の冷却プログラムを説明するフローチャート図である。
【図4】同実施例1の他の冷却プログラムを説明するフローチャート図である。
【図5】同実施例1の他の冷却プログラムを説明するフローチャート図である。
【図6】同実施例1の他の冷却プログラムを説明するフローチャート図である。
【図7】同実施例1の他の冷却プログラムを説明するフローチャート図である。
【図8】この発明の実施例2の概略構成を説明する図である。
【図9】この発明の実施例3の概略構成を説明する図である。
【図10】この発明の実施例3の冷却プログラムの要部を説明するフローチャート図である。
【図11】同実施例3の冷却特性を説明する図である。
【図12】この発明の実施例3の変形例の概略構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0149】
1 複合冷却装置
2 冷却室
3 被冷却物
4 真空冷却手段
5 冷風冷却手段
6 制御器
13 ファン
26 品温センサ
27 室内圧力センサ
41 第一真空冷却手段
42 第二真空冷却手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を収容する冷却室と、前記冷却室内を減圧することにより前記被冷却物を冷却する真空冷却手段と、前記冷却室内の気体を循環させるファンと、前記真空冷却手段および前記ファンの作動を制御する制御手段とを備える冷却装置であって、
前記制御手段は、前記真空冷却手段の作動による真空冷却工程中に前記ファンを駆動し前記被冷却物の粗熱取りを行うことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記冷却室内に配置した冷却用熱交換器により前記被冷却物を冷風冷却する冷風冷却工程を行う冷風冷却手段を備え、
前記ファンが前記冷却用熱交換器への送風用のファンであることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記真空冷却手段は、前記冷却室と接続される減圧手段の作動により第一真空冷却工程を行うように構成される第一真空冷却手段と、前記冷却室を低圧下で密閉状態として前記冷却用熱交換器により前記被冷却物からの蒸気を凝縮することで第二真空冷却工程を行うように構成される第二真空冷却手段とを含んで構成され、
前記制御手段は、前記第一真空冷却工程において前記ファンを駆動することを特徴とする請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記冷却室内の圧力を検出する圧力センサおよび前記被冷却物の温度を検出する品温センサと前記真空冷却手段の減圧能力調整手段とを備え、
前記制御手段は、前記真空冷却手段の作動による真空冷却工程を開始してから、前記圧力センサによる検出圧力相当の飽和温度が前記品温センサによる検出温度と等しくなるか、前記飽和温度と前記検出温度との差が設定値となるまで、前記減圧能力調整手段により減圧能力を高くして急冷を行い、その後に前記減圧能力を低くして徐冷を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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