説明

冷却装置

【課題】被冷却物の運用を停止することなく手軽に冷媒を交換可能な冷却装置を提供すること。
【解決手段】密閉型の冷却装置は、冷媒が満たされた管1と、管内の冷媒に大気圧以上の圧力をかけて冷媒を循環させるポンプ5と、管1から排出された冷媒を溜める第1の液溜め部81と管内に注入される冷媒を溜める第2の液溜め部82とが液面よりも上部で連結されたタンク6と、管1および第1の液溜め部81に接続される第1の3方弁Aと、管1および第2の液溜め部82に接続される第2の3方弁Bとを具備する。そして、冷媒の交換時に、管内の冷媒の流路を第1の液溜め部81に切り替え、第2の液溜め部82の冷媒を管内に導入すべく第1および第2の3方弁A、Bを連動して切り替えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地上波デジタル放送用のテレビ送信装置などにおいては、多量の廃熱を処理するために冷却装置が用いられる。この種の用途においては水冷型の冷却装置(以下、水冷装置と称する)を用いるのが一般的である。水冷装置は冷媒として用いられる冷却水を循環させて使用する。このため一定の期間ごとに冷却水を交換しなければ冷却効果の低下や、装置の腐食などの問題が生じる。
【0003】
水冷装置には密閉型と開放型がある。このうち開放型は冷却水が外気と接している。密閉型は冷却水が外気から完全に遮断されており、冷却水の劣化が少ない。冷却水交換の際はどちらも装置を一時停止させ、装置から冷却水を抜き取らなければならない。その間は冷却機能が停止するので、被冷却物(送信装置など)の運用を停止する必要がある。
【0004】
冷却水の再充填に際して、開放型は装置に備わる循環ポンプを使用できるが、密閉型は充填用ポンプが別途必要になる。密閉型の冷却水交換周期は長いので充填用ポンプの稼働は数年ごとに1回という場合も想定され、ポンプの維持管理の面でも問題になる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−236083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既存の冷却装置においては、冷媒の交換に際して被冷却物の運用を停止する必要がある。これは、常時稼動を前提として運用される大出力の送信装置やサーバ装置などへの適用に際してはぜひとも避けたいことである。また充填ポンプのような機材を別途用意する必要もあり、冷媒を手軽に交換できるとは言いがたい面もある。
目的は、被冷却物の運用を停止することなく手軽に冷媒を交換可能な冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、密閉型の冷却装置は、冷媒が満たされた管と、前記管内の冷媒に大気圧以上の圧力をかけて前記冷媒を循環させるポンプと、前記管から排出された冷媒を溜める第1の液溜め部と前記管内に注入される冷媒を溜める第2の液溜め部とが液面よりも上部で連結されたタンクと、前記管および前記第1の液溜め部に接続される第1の3方弁と、前記管および前記第2の液溜め部に接続される第2の3方弁とを具備する。そして、前記冷媒の交換時に、前記管内の冷媒の流路を前記第1の液溜め部に切り替え、前記第2の液溜め部の冷媒を前記管内に導入すべく前記第1および第2の3方弁を連動して切り替えるようにした。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係わる冷却装置の一例を示す図。
【図2】図1に示される3方弁A,Bを示す図。
【図3】比較のため既存の開放型の冷却装置を示す図。
【図4】比較のため既存の密閉型の冷却装置を示す図。
【図5】図4に示す冷却装置の冷媒交換時の様子を示す図。
【図6】交換用タンク8の形態の例を示す図。
【図7】交換用タンク8の形態の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施形態に係わる冷却装置の一例を示す図である。この冷却装置は密閉型であり、管1内に満たされた水などの冷媒を循環させることにより、被冷却物の熱を冷媒を介して回収する。図1において、被冷却物2(例えばテレビ送信装置)に冷却部3が取り付けられる。冷却部3において被冷却物2の熱が回収され、管を介して連結された熱交換器4において、回収された熱が外気に廃熱される。管1には、管1内の冷媒に大気圧以上の圧力をかけて冷媒を循環させるポンプ5が接続される。また管1には、密閉タンク6や空気抜き弁7が設けられることもある。
ところで、図1の冷却装置は、いずれも管1の途中に接続され、管1内の冷媒の流路を切り替える第1の3方弁Aおよび第2の3方弁Bを備える。3方弁A,Bは交換用タンク8にも接続される。交換用タンク8は、管1から排出された冷媒を溜める第1の液溜め部81と、管1内に注入される冷媒を溜める第2の液溜め部82とを備える。すなわち液溜め部81には劣化した冷媒が溜まり、液溜め部82には交換用の新鮮な冷媒が入れられている。なお冷媒の交換作業前には液溜め部81は空であってよい。
【0010】
交換用タンク8は全体として密閉されているが、液溜め部81と液溜め部82とは冷媒の液面よりも上部の空気口を介して互いに連結されている。液溜め部81は3方弁Aに、液溜め部82は3方弁Bに、それぞれフレキシブルチューブやカプラなどで個別に接続される。
【0011】
図2は、図1に示される3方弁A,Bを示す図である。通常運用時(a)、すなわち冷媒の交換作業を行わない状態では3方弁A,Bのいずれも、冷媒が管1内を循環するように切り替えられた状態になっている。つまり通常運用時(a)においては冷媒の流路は管1内で閉じており、ポンプ5から押し出された冷媒は管1内を通ってポンプ5に戻る格好である。
【0012】
冷媒交換時(b)においては、3方弁A,Bが連動して切り替えられる。これにより冷媒の流路は、間に交換用タンク8を挟む格好になる。すなわち管1内の冷媒は、3方弁Aから交換用タンク8の液溜め部81に、ポンプ5による大気圧以上の力で押し出されることになる。そうすると液溜め部81内の空気が液溜め部82に押し出され、その圧力が液溜め部82内の冷媒にかかり、新鮮な冷媒が液溜め部82から押し出されて3方弁Bを介して管1内に注入される。以上の過程を経て、交換用タンク8に古い冷媒が回収されるともに、新しい冷媒が管1に補充される。
【0013】
以上説明した作用により、古い冷媒の回収と新しい冷媒の補充とが一気に行なえるようになり、短時間のうちに交換作業が完了する。しかも循環用のポンプ5と大気圧による作用を利用しているので、給水用のポンプなどを別途用意する必要もない。
【0014】
図3は、比較のため既存の開放型の冷却装置を示す図である。開放型の冷却装置においては開放型タンク9に交換用の冷媒(水)を注水し、ポンプ5で管内に冷媒を満たす。冷媒の交換時にはポンプ5を止め、排出口(ドレイン)10を開き、さらに空気抜き弁7などを開けて冷媒を排出する。開放型タンク9への水の補充にあたってはポリタンクから手作業で注水するか、または注水用ポンプを用いるといった作業を要し、手間が大きい。また冷媒の交換時に冷却装置を停止しなければならず、よって被冷却物の運用も停止しなくてはならない。
【0015】
図4は、比較のため既存の密閉型の冷却装置を示す図である。図4の装置においては、冷媒は注入口11から注入される。冷媒を交換する場合は、やはりポンプ5を停止させ、排出口(ドレイン)を開き、さらに空気抜き弁7などを開けて冷媒を排出した後、図5に示すように別途用意した注入用ポンプ12にて注水する。
【0016】
以上のように既存の冷却装置では、冷媒の交換に際して冷媒を循環させるためのポンプを停止する必要があり、冷却効果が得られなくなるその間は被冷却物を停止せざるを得ない。よって常時稼動型の機器を冷却するには問題がある。たとえポンプを停止させずに作業を行なったとしても、注入用ポンプのような機器を別途用意する必要があり、手軽に交換作業を行えるとはいえない。
【0017】
これに対し実施形態によれば、連動する3方弁A,Bを切り替えれば循環用ポンプ5および大気圧の作用により冷媒が自動的に交換される。よって交換作業にかかる手間を飛躍的に軽減でき、時間も短縮できるのに加え、注入用のポンプを別途用意する必要も無くなる。また交換作業時においても管1内を冷媒が循環するので、冷却装置を停止させる必要が無く、よって被冷却物の運用を停止する必要も無い。さらには、劣化した冷媒が新しい冷媒に混入する割合が少ないという効果も得ることができる。これらのことから、被冷却物の運用を停止することなく手軽に冷媒を交換可能な冷却装置を提供することができる。
【0018】
以下に、交換用タンク8の別の形態を示す。
図6は交換用タンク8の形態の例を示す図である。交換用タンク8は図6(a)に示すように一体型でなくても良く、図6(b)に示すように、液面より上部がパイプやチューブなどで連結して気密が保たれていれば別体型でも良い。
【0019】
図7は、交換用タンクの形態の例を示す図である。図7に示すタンクは第3の液溜め部83を備える。液溜め部83は、液面よりも上部で液溜め部81と液溜め部82とに連結される。このように液溜め部は2つに限らず、空気配管により連結されていれば、冷媒の交換時には実施形態と同様の作用をもたらす。さらには、冷媒の交換量に応じて複数の液溜め部やタンクそのものを連結するようにしても良い。
【0020】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態はその他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0021】
1…管、2…被冷却物、3…冷却部、4…熱交換器、5…ポンプ、6…密閉タンク、7…空気抜き弁、A,B…3方弁、8…交換用タンク、81,82,83…液溜め部、9…開放型タンク、10…排出口(ドレイン)、11…注入口、12…注入用ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉型の冷却装置において、
冷媒が満たされた管と、
前記管内の冷媒に大気圧以上の圧力をかけて前記冷媒を循環させるポンプと、
前記管から排出された冷媒を溜める第1の液溜め部と前記管内に注入される冷媒を溜める第2の液溜め部とが液面よりも上部で連結されたタンクと、
前記管および前記第1の液溜め部に接続される第1の3方弁と、
前記管および前記第2の液溜め部に接続される第2の3方弁とを具備し、
前記冷媒の交換時に、前記管内の冷媒の流路を前記第1の液溜め部に切り替え、前記第2の液溜め部の冷媒を前記管内に導入すべく前記第1および第2の3方弁を連動して切り替えるようにした、冷却装置。
【請求項2】
前記タンクは、さらに、前記第1の液溜め部と前記第2の液溜め部とに液面よりも上部で連結される第3の液溜め部を備える、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記冷媒は水である、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記被冷却物はテレビ送信装置である、請求項1に記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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