説明

冷媒用冷凍機油

【課題】塩素を含有しない水素含有フロン冷媒や、さらに温室効果が小さいハロゲン原子を含まない炭化水素冷媒とともに使用する、低粘度でしかも安全性、安定性に優れた冷媒用冷凍機油を提供する。
【解決手段】次の一般式(1)で表されるモノエステルを主成分として含有し、40℃における動粘度が7mm/s未満である冷媒用冷凍機油、
【化1】


(式中、Rは炭素数5〜9の炭化水素基を表し、Rは炭素数8〜10の炭化水素基を表し、R及びRはそれぞれ分岐であっても直鎖であってもよく、かつR及びRの炭素数の合計が13〜17である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素を含有しない水素含有フロン冷媒及び炭化水素冷媒等のオゾン層破壊係数や地球温暖化係数の小さい冷媒を用いる冷媒圧縮式冷凍サイクル装置に好適に用いることができる冷媒用冷凍機油に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍機、空調機、冷蔵庫等に用いられている冷媒圧縮式冷凍サイクル装置には、冷媒としてフッ素と塩素を構成元素とするフロン、例えばクロロフルオロカーボン(CFC)であるR−11(トリクロロモノフルオロメタン)、R−12(ジクロロジフルオロメタン)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)であるR−22(モノクロロジフルオロメタン)等が使用されてきたが、最近のオゾン層破壊問題に関連し、国際的にその生産及び使用が規制され、現在では、塩素を含有しない水素含有フロン冷媒、例えば、ジフルオロメタン(R−32)、テトラフルオロエタン(R−134又はR−134a)や、さらに温室効果が小さいハロゲン原子を含まない炭化水素冷媒、例えばエタン、プロパン、ブタン、イソブタン等のなどに転換されてきている。
【0003】
発明者は、これらの冷媒に使用する冷媒用冷凍機油としてポリオールなどの多価アルコールを用いたエステルを基油とする冷媒用冷凍機油を提案してきた(特許文献1)。これにより、作業流体に低級炭化水素冷媒等を用いた場合にオリゴマー(高分子物質)の発生を防止するという効果を得ることができた。ところが最近は冷凍機、空調機、冷蔵庫等に更なる省エネルギー化が求められ、冷凍機油についても、低粘度化を図った省エネルギータイプの冷凍機油が求められてきている。しかしながら、低粘度のポリオールエステルには、酸化安定性及び潤滑性に満足できるものが見当たらない。
【特許文献1】特開2007−254713
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、塩素を含有しない水素含有フロン冷媒や、さらに温室効果が小さいハロゲン原子を含まない炭化水素冷媒を使用する冷凍機において、省エネルギー性を向上させるためには粘度の低い潤滑油を冷凍機油として用いることが有効であるが、パラフィン鉱油あるいはナフテン鉱油を基材とする場合、引火点が低くなり、取り扱いにおいて危険性が高まることが問題である。一方、ポリオールなどの多価アルコールを用いたエステルを基油とする場合、炭素数の少ない脂肪酸を使用しなければならないが、この構造では安定性が著しく低下し、また分解時に発生する脂肪酸による腐食も懸念される。
本発明は、上記課題を解決するもので、本発明の目的は、塩素を含有しない水素含有フロン冷媒や、さらに温室効果が小さいハロゲン原子を含まない炭化水素冷媒とともに使用する、低粘度でしかも安全性、安定性に優れた冷媒用冷凍機油を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するために、鋭意研究を進めた結果、基油として特定のモノエステルを主成分とした冷凍機油が、塩素を含有しない水素含有フロン冷媒や炭化水素冷媒において、良好な潤滑性、省エネルギー性を有しており、安定性も高く、冷媒圧縮式冷凍サイクル装置用潤滑油、すなわち冷媒用冷凍機油として、非常に優れていることを見出し、本発明に想到した。
【0006】
即ち、本発明は、以下のとおりの冷媒用冷凍機油である。
(1) 次の一般式(1)で表されるモノエステルを主成分として含有し、40℃における動粘度が7mm/s未満である冷媒用冷凍機油、
【化1】

(式中、Rは炭素数5〜9の炭化水素基を表し、Rは炭素数8〜10の炭化水素基を表し、R及びRはそれぞれ分岐であっても直鎖であってもよく、かつR及びRの炭素数の合計が13〜17である。)
(2) さらに酸捕捉剤を含有する上記(1)に記載の冷媒用冷凍機油。
(3) さらにリンを含む極圧添加剤を含有する上記(1)又は(2)に記載の冷媒用冷凍機油。
(4) さらに2個以上の水酸基を持つ油性剤を含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の冷媒用冷凍機油。
(5) 引火点が120℃以上である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の冷媒用冷凍機油。
(6) 40℃における動粘度が6mm/s未満である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の冷媒用冷凍機油。
(7) エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、又はこれらの混合物である炭化水素冷媒とともに用いる上記(1)〜(6)のいずれかに記載の冷媒用冷凍機油。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、塩素を含有しない水素含有フロン冷媒や、さらに温室効果が小さいハロゲン原子を含まない炭化水素冷媒に使用する、低粘度でしかも安定性に優れた冷媒用冷凍機油を提供することを可能とした。したがって、地球の温暖化等の環境に与える影響が小さく、しかも、低粘度で省エネルギーにも期待されることから、媒圧縮式冷凍サイクルを利用する冷凍機、空調機、冷蔵庫等に有効に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を詳細に説明する。
本発明は、次の一般式(1)で表されるモノエステルを主成分として含有し、40℃における動粘度が7mm/s未満である冷媒用冷凍機油である。
【化2】

一般式(1)において、Rは炭素数5〜9の炭化水素基を表し、Rは炭素数8〜10の炭化水素基を表し、R及びRはそれぞれ分岐であっても直鎖であってもよく、かつR及びRの炭素数の合計が13〜17である。
本発明の冷媒用冷凍機油は、塩素を含有しない冷媒とともに、さらにはハロゲンを含有しない冷媒とともに好適に用いることができる。すなわち、本発明の冷媒用冷凍機油は、塩素を含有せずオゾン層破壊係数の小さい水素含有フロン冷媒、例えば、ジフルオロメタン(R−32)、テトラフルオロエタン(R−134又はR−134a)や、特にハロゲンを含有せずオゾン層破壊係数や地球温暖化係数がともに小さい炭化水素冷媒、例えば、エタン(R170)、プロパン(R290)、ブタン(R600)、イソブタン(R600a)等の冷媒に使用する冷凍機として好適に用いることができる。
【0009】
本発明において、冷媒用冷凍機油の主成分として用いられるモノエステルは一般式(1)で表される。
【化3】

式中、Rは炭素数5〜9の炭化水素基を表す。炭化水素基は不飽和結合を有していてもよいが、化学的な安定性の観点から飽和炭化水素基であることが好ましい。また、Rはアルキル基と芳香環又はナフテン環とが組み合わさったかたちの炭化水素基であってもよいが、直鎖又は分岐のアルキル基が特に好ましい。Rは炭素数8〜10の炭化水素基を表す。RはRと同様に、不飽和結合を有していてもよく、またアルキル基と芳香環又はナフテン環とが組み合わさったかたちの炭化水素基であってもよく、直鎖又は分岐のアルキル基が特に好ましい。Rの炭素数が8を下回る場合、得られるものエステル粘度が低下しすぎて潤滑性が不足する、及び引火点が低下し取り扱い上の危険性が増すなどの問題が生じ、10を上回る場合は、省エネルギー効果が得られなくなる。
【0010】
また、R及びRの炭素数の合計は13〜17であり、炭素数の合計が13未満では、粘度が低下しすぎて潤滑性が不足し、さらに引火点も低下して取り扱い上の危険性が増すなどの問題が生ずることから好ましくない。また、炭素数の合計が17を超えると、粘度が高くなり、圧縮機における省エネルギー効果に乏しくなるという問題が生じる。さらに、Rの炭素数が5未満の場合、加水分解したときに炭素数が小さくなればなるほど酸強度の強い1価脂肪酸(カルボン酸)生成し、周囲の設備材料を腐食する等の危害を与えるので好ましくない。
【0011】
本発明で用いるこのようなモノエステルは、一般式(1)の化学式から分かるように炭素数6〜10の一価脂肪酸(カルボン酸)と、炭素数8〜10の一価アルコールをエステル化して合成することができる。本発明においてモノエステルの製造方法を限定するものではなく、一価脂肪酸に相当する化合物として、一価脂肪酸の塩化物やカルボン酸無水物などを用いて合成してもよく、さらにモノエステルのアルコイシル基やアシル基を他のアルコイシル基やアシル基と交換するエステル交換反応を利用して合成することができる。
【0012】
本発明において、一般式(1)のモノエステルの合成に好適に用いることができる一価脂肪酸としては、へキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、デカン酸が挙げられ、これらの中でも炭素数8のオクタン酸又は2−エチルヘキサン酸が特に好ましい。
【0013】
本発明において、一般式(1)のモノエステルの合成に好適に用いることができる一価アルコールとしてはオクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノールが挙げられ、これらの中でも炭素数8のオクタノール又は2−エチルヘキサノールが好適である。
なお、直鎖の一価脂肪酸と一価アルコールから得られたエステルは、粘度指数が高く耐摩耗性に優れる。また、分岐の、特にはカルボキシル基を有する炭素原子が2個のアルキル基を有する分岐の一価脂肪酸や水酸基を有する炭素原子が2個のアルキル基を有する分岐の一価アルコールから得られたエステルは、粘度が低く、特に耐加水分解安定性に優れる。したがって、一価脂肪酸と一価アルコールは少なくともいずれか一方が前記のような2個のアルキル基を有するものであることが好ましい。
【0014】
本発明で用いるモノエステルは、冷媒用冷凍機油の主成分を構成するので、冷媒用冷凍機油と同様に、40℃における動粘度は7mm/s未満であることが好ましい。より好ましくは6mm/s未満であり、さらに好ましくは2〜5mm/sである。7mm/sを超える場合には省エネルギー効果が得られなくなる。動粘度と引火点は必ずしも比例するものではないが、通常動粘度が低いと引火点の低くなる。冷凍機油は密閉系で使われることが多く、引火点が問題になることは少ないが、冷凍機に充填される以前での取扱における安全性を確保する上で、引火点は120℃以上とすることが好ましい。より好ましくは130℃以上であり、特に好ましくは140℃以上である。
【0015】
本発明で用いるモノエステルは、エステル化で原料として用いた脂肪酸、アルコールやそれらの誘導体などが残存していないことが好ましい。モノエステルの酸価としては、0.1mgKOH/g以下が好ましく、0.05mgKOH/g以下がより好ましく、0.03mgKOH/g以下が特に好ましい。また、水酸基価としては、10mgKOH/g以下が好ましく、5.0mgKOH/g以下がより好ましく、3.0mgKOH/g以下が特に好ましい。
【0016】
モノエステルは、それ単独で、あるいはその他の潤滑油基材とともに各種の添加剤と混合して冷媒用冷凍機油を調製することができる。その他の潤滑油基材としては、鉱油系の潤滑油基材、合成油系の潤滑油基材、及びそれらの混合物を用いることができる。鉱油系の潤滑油基材としては、ナフテン系又はパラフィン系の鉱物油、合成油系の潤滑油基材としては、アルキルベンゼン、ポリアルファオレフィン、ポリオールエステル、ジエステル、ポリエーテルなどが挙げられる。これらの混合用基材は、混合したときの40℃における動粘度が高くなりすぎないように、40℃における動粘度が10mm/s未満であることが好ましい。より好ましくは8mm/s未満である。
これらの潤滑油基材の中で、ポリオールエステル、ジエステル、ポリエーテルなどはモノエステルと組み合わせて特に好ましく使用することができる。これらは分子内に酸素原子を持つ化合物であり、同様に分子内に酸素原子を持つモノエステルと混合したときに親和性が高いので、好ましい。
【0017】
その他の潤滑油基材の物性としては、できるだけモノエステルと同等程度の物性を有することが好ましい。すなわち、40℃における動粘度は7mm/s未満であることが好ましく、より好ましくは6mm/s未満であり、さらに好ましくは2〜5mm/sである。引火点は120℃以上が好ましい。より好ましくは130℃以上であり、特に好ましくは140℃以上である。その他の潤滑油基材の酸価としては、0.1mgKOH/g以下が好ましく、0.05mgKOH/g以下がより好ましく、0.03mgKOH/g以下が特に好ましい。
【0018】
モノエステルをその他の潤滑油基材とともに用いる場合、モノエステルとその他の潤滑油基材との配合割合(質量比)は30/70以上、さらには40/60以上とすることが好ましい。より好ましくは60/40以上であり、特に好ましくは80/20以上である。なお、その他の潤滑油基材を全く使用せずに、モノエステル100%であってよいことは断るまでもない。
【0019】
本発明の冷媒用冷凍機油は、冷凍機油としての性能をさらに高めるために、冷凍機油に用いられている各種の添加剤を配合することができる。例えば、酸捕捉剤を添加することにより、さらに安定性を高めることが可能である。また、本発明の冷媒用冷凍機油は、適当な潤滑性が得られるように主成分を構成する潤滑油基油の構造を特定しているが、粘度が非常に低いために使用条件によっては摺動部で金属接触が生じる可能性がある。これに対処するにはリンを含む極圧添加剤及び/又は2個以上の水酸基を持つ油性剤を添加することが効果的である。
【0020】
酸捕捉剤としては、グリシジルエーテル基含有化合物、グリシジルエステル基含有化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステル類、エポキシ化油脂、エポキシシクロアルキル基含有化合物などが挙げられる。この中で特にはグリシジルエーテル基含有化合物、グリシジルエステル基含有化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステル類、エポキシ化油脂、エポキシシクロアルキル基含有化合物がより好ましい。配合量は0.1〜1.0質量%が好ましく、0.2〜0.7質量%がさらに好ましい。
【0021】
リンを含む極圧添加剤としては、リン酸の水酸基の一つ以上がエステル化されたリン酸エステルが挙げられる。リン酸エステルは、トリエステルであっても、ジエステルであっても、モノエステルであってもよいが、トリエステルが最も好ましい。具体的には、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート、トリプロピルフェニルホスフェート、トリブチルフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、エチルフェニルジフェニルホスフェート、プロピルフェニルジフェニルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジエチルフェニルフェニルホスフェート、ジプロピルフェニルフェニルホスフェート、ジブチルフェニルフェニルホスフェート等のトリアリールホスフェートが挙げられる。この中でもトリクレジルホスフェート(TCP)が特に好ましい。配合量は0.1〜2.0質量%が好ましく、0.2〜1.5質量%がさらに好ましい。
【0022】
2個以上の水酸基を持つ油性剤としては、グリセリンモノオレート、グリセリンモノオレイルエーテル、グリセリンモノラウリルエーテル等が挙げられ、特にはグリセリンモノオレート又はグリセリンモノオレイルエーテルが好ましい。配合量は0.1〜1.0質量%が好ましく、0.2〜0.5質量%がさらに好ましい。
【0023】
本発明の冷凍機油には、必要に応じて上記以外の添加剤をさらに適宜配合してもよい。このような添加剤として、例えば、2,6−ジ−ターシャリーブチルフェノール、2,6−ジ−ターシャリーブチル−p−クレゾール、4,4−メチレン−ビス−(2,6−ジ−ターシャリーブチル−p−クレゾール)、p,p’−ジ−オクチル−ジ−フェニルアミンなどのフェノール系又はアミン系の酸化防止剤、腐食性化合物を捕捉して冷凍機内の材料の劣化、冷媒や潤滑油の劣化を防ぐカルボジイミド化合物などの安定剤、ベンゾトリアゾールなどの金属不活性化剤、ポリジメチルシロキサンやポリメタクリアクリレートなどの消泡剤又は制泡剤などが挙げられる。その他、周知の清浄分散剤、粘度指数向上剤、防錆剤、腐食防止剤、流動点降下剤などの添加剤も必要に応じて適宜配合することができる。これらの添加剤は、通常本発明の冷凍機油に1質量ppm〜2質量%程度含有されるように配合される。特に、フェノール系又はアミン系の酸化防止剤は、0.01〜0.5質量%程度添加することにより、潤滑剤の安定性、耐久性を大幅に改善することができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてより詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0025】
本発明を評価するために、実施例及び比較例の冷媒用冷凍機油(供試油)を用意した。供試油に使用した基油、添加剤は下記の通りである。
基油
モノエステル1〜8:表1に示すモノエステル
【0026】
【表1】

ポリオールエステル1(PE−1):ネオペンチルグリコール(NPG)のペンタン酸エステル
ポリオールエステル2(PE−2):NPGのヘキサン酸エステル
ポリオールエステル3(PE−3):NPGの2−エチルヘキサン酸エステル
鉱油1(MO−1):パラフィン系潤滑油基油(40℃動粘度:7.8mm2/s)
鉱油2(MO−2):パラフィン系潤滑油基油(40℃動粘度:5.2mm2/s)
鉱油3(MO−3):ナフテン系潤滑油基油(40℃動粘度:5.0mm2/s)
【0027】
添加剤:
酸捕捉剤:2−エチルヘキシルグリシジルエーテル
極圧剤:トリクレジルホスフェート
油性剤:グリセリンモノオレート
【0028】
上記の基油及び添加剤を用い、表2、表3及び表4の上部に示す割合(質量%)で調合して、実施例及び比較例の冷凍機油を得た。表2は実施例1〜8の冷凍機油を示し、表3は実施例9〜13の冷凍機油を示し、表4は比較例1〜9の冷凍機油を示す。
【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
これらの実施例及び比較例の冷凍機油について、その物性及び相溶性や安定性などの性能を測定し、評価した。その結果を表2及び表3の下部に示す。
なお、物性測定及び性能評価の試験は以下のようにして行った。
動粘度(40℃)
JIS K 2283に準拠し、アトランティック粘度計の改良型を用いて測定した。
引火点:
JIS K 2265に準拠し、クリーブランド開放式(COC)の試験方法で測定した。
酸価:
JIS K 2501に準拠し、指示薬滴定法にて全酸価を測定した。
【0033】
相溶性:
JIS K 2211の附属書3に準拠し、二層分離温度を測定した。なお、冷媒としては、イソブタン(R600a)、プロパン(R290)及び1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R−134a)を用い、また、供試油/冷媒比(重量)は2/8の条件で測定した。
【0034】
安定性:
いわゆるオートクレーブテストを実施して劣化後の冷凍機油の色相、酸価をテストした。すなわち、内容量100mlのステンレス鋼製耐圧容器(オートクレーブ)に供試油30gと冷媒10g、及び触媒としてFe、Cu、Alの針金を入れ、密封し、175℃の恒温槽に14日間放置した。劣化後のサンプルを取り出しで色、酸価を確認した。冷媒に関してはR600aとR−134aを用い、それぞれについて評価した。なお、酸価は上記と同じ方法で測定した。
潤滑性:
ASTM D3233に準拠するファレックス(Falex)試験(290rpm、室温)を行い、試験片が焼付きを生じた時の荷重を測定した。
【0035】
モノエステルのRとRの合計が13から17であるME−2〜6を基油として用いた実施例1〜8およびME−4を基油の一つとし、PE−3をもう一つの基油とした実施例9〜13は、低粘度油でありながら、引火点が高く、また冷媒との相溶性、安定性にも優れている。潤滑性も良好である。
ME−1を基油として比較例1は、RとRの合計が11と少ないため、粘度と引火点が下がりすぎ、実用とすることは困難である。冷媒との安定性にもおとり、試験後の酸価が上昇している。
ME−7とME−8を基油として比較例2及び3は、冷媒との適合性、特に相溶性に劣るため、実用的に用いることは困難である。
PE−1およびPE−2を基油とした比較例4、5は安定性に劣っている。また、PE−3を基油とした比較例6では動粘度が目的の範囲内とすることが困難である。
MO−1を基油とした比較例7も比較例6と同様、動粘度が目的の範囲内にならない。MO−2および3を基油とした比較例8、9では引火点が低く、安全性に劣っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1)で表されるモノエステルを主成分として含有し、40℃における動粘度が7mm/s未満である冷媒用冷凍機油、
【化1】

(式中、Rは炭素数5〜9の炭化水素基を表し、Rは炭素数8〜10の炭化水素基を表し、R及びRはそれぞれ分岐であっても直鎖であってもよく、かつR及びRの炭素数の合計が13〜17である。)
【請求項2】
さらに酸捕捉剤を含有する請求項1に記載の冷媒用冷凍機油。
【請求項3】
さらにリンを含む極圧添加剤を含有する請求項1又は2に記載の冷媒用冷凍機油。
【請求項4】
さらに2個以上の水酸基を持つ油性剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の冷媒用冷凍機油。
【請求項5】
引火点が120℃以上である請求項1〜4のいずれかに記載の冷媒用冷凍機油。
【請求項6】
40℃における動粘度が6mm/s未満である請求項1〜5のいずれかに記載の冷媒用冷凍機油。
【請求項7】
エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、又はこれらの混合物である炭化水素冷媒とともに用いる請求項1〜6のいずれかに記載の冷媒用冷凍機油。

【公開番号】特開2009−235179(P2009−235179A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80885(P2008−80885)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(304003860)株式会社ジャパンエナジー (344)
【Fターム(参考)】