説明

冷蔵コンテナの製造方法及び冷蔵コンテナ

【課題】保冷性能に優れた冷蔵コンテナを提供する。
【解決手段】屋根、台枠、側、妻、扉を構成する高断熱性パネルを、個別に製造する工程において、予めウレタンフォーム36aで全体が被覆された真空断熱材36を用いることで、真空断熱材36の搬送中又は組付工程中に、真空断熱材36の表面材が破損することによる、真空断熱材36の所定の断熱性能の低下を回避する。又、外板32の内側面及び内張板34の外側面の双方に対し隙間を空けるように真空断熱材36を位置決めして発泡ウレタン18を充填することにより、真空断熱材36と外板32及び内張板34との間に発泡ウレタン18が行き渡り、真空断熱材36の全体を被覆するウレタンフォーム36aと発泡ウレタン18とが結合し、高断熱性パネル12の強度が向上すると共に、冷蔵コンテナ10の運用中においても、外部からの衝撃を減衰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵コンテナの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、低温状態での輸送が必要な貨物の取り扱いに、冷蔵コンテナが用いられている。冷蔵コンテナは、荷箱を構成するパネル内部に、発泡スチロールや真空断熱材を断熱材として用いることで、外部からの熱伝導を抑制し、コンテナ内部を低温に維持するものである。なお、冷蔵コンテナには、冷蔵・冷凍ユニット搭載型(例えば、特許文献1参照。)と冷蔵・冷凍ユニット非搭載型(例えば、特許文献2参照。)とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61−97193号公報
【特許文献2】特開2000−255679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の燃料価格の高騰や、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量の削減といった要請から、鉄道や船舶を用いた貨物の取り扱い性に優れたコンテナの要請は増大し、冷蔵コンテナによる貨物の輸送量も増大している。本発明はかかる要請に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、保冷性能に優れた冷蔵コンテナの提供を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)台枠、屋根、側、妻、扉を構成する高断熱性パネルを個別に製造し、これらの高断熱性パネルを、柱及び梁を含む骨格部材と共に箱状に組み立て、前記各高断熱性パネル及び前記骨格部材の接続部に形成される空間に、予め取り付け容易な形状に切断されたウレタンスラブを装着し、該ウレタンスラブの装着状態でなお残存する隙間に発泡ウレタンを充填する工程を含む冷蔵コンテナの製造方法。
本項に記載の冷蔵コンテナの製造方法は、台枠、屋根、側、妻、扉を構成する高断熱性パネルを、各々の形状や構造に適した方法で製造することにより、各パネル単独での断熱性能を確保する。そして、これらの高断熱性パネルを、柱及び梁を含む骨格部材と共に箱状に組み立て、各高断熱性パネル及び骨格部材の接続部に形成される空間に、予め取り付け容易な形状に切断されたウレタンスラブを装着する。そして、ウレタンスラブの装着状態でなお残存する隙間に発泡ウレタンを充填することで、各高断熱性パネル及び骨格部材の接続部における断熱性を確保する。
【0007】
(2)上記(1)項において、前記高断熱性パネルを個別に製造する工程において、外板と、内張板と、予めウレタンフォームで全体が被覆された真空断熱材とを、該真空断熱材が前記外板の内側面及び内張板の外側面の双方に対し隙間を空けるように位置決めし、前記外板と前記内張板と前記真空断熱材との間の空間に、発泡ウレタンを充填する冷蔵コンテナの製造方法(請求項1)。
本項に記載の冷蔵コンテナの製造方法は、断熱性パネルを個別に製造する工程において、予めウレタンフォームで全体が被覆された真空断熱材を用いることで、真空断熱材の搬送中又は組付工程中に、真空断熱材の表面材が破損することによる、真空断熱材の所定の断熱性能の低下を回避するものである。又、外板の内側面及び内張板の外側面の双方に対し隙間を空けるように真空断熱材を位置決めして発泡ウレタンを充填することにより、真空断熱材と外板及び内張板との間に発泡ウレタンが行き渡り、真空断熱材の全体を被覆するウレタンフォームと発泡ウレタンとが結合し、高断熱性パネルの強度が向上すると共に、冷蔵コンテナ運用中においても、外部からの衝撃や、積荷の搬入搬出時における内部からの衝撃を減衰させて、真空断熱材の表皮材の破損を回避するものである。
【0008】
(3)上記(1)、(2)項の、前記各高断熱性パネルを個別に製造する工程において、プレス機の定盤に前記外板を載置し、前記外板の周囲を枠状治具で囲み、前記外板の内側面に、前記枠状治具で囲まれた部分を複数の領域に区分けする棒状のウレタンスラブを載置し、隣接する領域にまたがるようにして、前記棒状のウレタンスラブ上に前記真空断熱材を載置し、更に、各真空断熱材の上面を二つの領域に区分けする棒状のウレタンスラブを載置し、該棒状のウレタンスラブ上に内張板を載置して、前記枠状治具と前記外板と前記棒状のウレタンスラブと前記真空断熱材と前記内張板とで囲まれた密閉空間を形成し、該密閉空間からの空気抜き経路を確保して、該密閉空間内に発泡ウレタンを充填する冷蔵コンテナの製造方法(請求項2)。
【0009】
本項に記載の冷蔵コンテナの製造方法は、各高断熱性パネルを個別に製造する工程において、プレス機の定盤に前記外板を載置し、外板の周囲を枠状治具で囲み、外板の内側面に、枠状治具で囲まれた部分を複数の領域に区分けする棒状のウレタンスラブを載置し、隣接する領域にまたがるようにして棒状のウレタンスラブ上に真空断熱材を載置し、更に、真空断熱材の上面を二つの領域に区分けする棒状のウレタンスラブを載置し、棒状のウレタンスラブ上に内張板を載置して、枠状治具と外板と棒状のウレタンスラブと真空断熱材と内張板とで囲まれた密閉空間を形成し、この密閉空間からの空気抜き経路を確保して、密閉空間内に発泡ウレタンを充填することにより、当該密閉空間内の発泡ウレタンの充填率を高めるものである。
【0010】
(4)上記(3)項において、前記内張板を棒状のウレタンスラブ上に載置する以前に、前記真空断熱材の少なくとも外形角部と、前記外板の内側面及び内張板の外側面の双方との間に、ウレタンスラブを配置する冷蔵コンテナの製造方法(請求項3)。
本項に記載の冷蔵コンテナの製造方法は、真空断熱材の少なくとも外形角部を、外板の内側面及び内張板の外側面の双方との間で挟持するようにウレタンスラブを配置することで、少なくとも真空断熱材の外形角部についても、外板の内側面及び内張板の外側面の双方に対し適切な隙間を空けるように、正確に位置決めするものである。この状態で、枠状治具と外板と棒状のウレタンスラブと真空断熱材と内張板とで囲まれた密閉空間に発泡ウレタンを充填することにより、真空断熱材と外板及び内張板との間に発泡ウレタンが行き渡り、真空断熱材の全体を被覆するウレタンフォームと発泡ウレタンとが結合し、高断熱性パネルの強度が向上すると共に、冷蔵コンテナ運用中においても、外部からの衝撃や、積荷の搬入搬出時における内部からの衝撃を減衰させて、真空断熱材の表皮材の破損を回避するものである。
【0011】
(5)上記(1)から(4)項において、前記各高断熱性パネル及び前記骨格部材の接続部に形成される空間の全てに、前記ウレタンスラブを装着し、該ウレタンスラブの装着状態でなお残存する隙間に発泡ウレタンを充填する冷蔵コンテナの製造方法(請求項4)。
本項に記載の冷蔵コンテナの製造方法は、各高断熱性パネル及び骨格部材の接続部に形成される空間の全てに、ウレタンスラブを装着し、ウレタンスラブの装着状態でなお残存する隙間に発泡ウレタンを充填することで、コンテナの構造上、断熱性が損なわれ易い部分を全て無くすものである。
【0012】
(6)上記(1)から(5)項において、前記屋根を構成する高断熱性パネルの外板に、予め、前記棒状のウレタンスラブの設置方向と平行に延びる段差部を成形する工程を含む冷蔵コンテナの製造方法(請求項5)。
本項に記載の冷蔵コンテナの製造方法は、前記屋根を構成する高断熱性パネルの外板に、予め段差部を成形することで外板の強度を高め、熱膨張による外板の変形を防ぎ、外板が変形することに起因する、外板とウレタンスラブ又は発泡ウレタンとの剥離を回避するものである。又、段差部が棒状のウレタンスラブの設置方向と平行に伸びることにより、当該段差部に棒状のウレタンスラブが交差することで、両者に隙間が生ずることを回避する。
【0013】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1項記載の製造方法により製造された冷蔵コンテナ(請求項6)。
【発明の効果】
【0014】
本発明はこのように構成したので、保冷性能に優れた冷蔵コンテナの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る冷蔵コンテナの製造方法を示す工程図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る冷蔵コンテナの正面図である。
【図3】(a)は図2に示される冷蔵コンテナの平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る冷蔵コンテナの3位柱押え面を部分的に示しており、(a)は側面図、(b)は(a)のD−D断面図である。
【図5】(a)は、図3(a)のC−C断面図、(b)は(a)のE部拡大図、(c)は(b)のF部拡大図、(d)は(b)のG部拡大図である。
【図6】(a)は図5(a)の矢視H透視図、(b)は(a)のJ−J断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る冷蔵コンテナの製造方法に用いられるプレス機である。
【図8】図7に示されるプレス機の下定盤に、鋼体の外板を載置し、外板の周囲を枠状治具で囲み、枠状治具で囲まれた部分に棒状ウレタンスラブを接着固定し、枠状治具で囲まれた部分を複数の領域に区分けした状態を示すものである。
【図9】図8の状態から、棒状のウレタンスラブにより区分けされた隣接する領域にまたがるようにして、棒状のウレタンスラブ上に真空断熱材を接着固定した状態を示すものである。
【図10】図9の状態から、各真空断熱材の上面を二つの領域に区分けする位置に、棒状のウレタンスラブを接着固定した状態を示すものである。
【図11】図8の状態から、棒状のウレタンスラブ上に内張板を位置決めして、接着固定した状態を示すものである。
【図12】発泡ウレタン注入後、図11の状態から枠状治具を取り外した様子を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態に係る冷蔵コンテナ10(図2、図3(a)参照)の製造方法は、図1に示されるように、屋根、台枠、側、妻、扉を構成する高断熱性パネルを個別に製造し、これらの高断熱性パネルを、柱及び梁を含む骨格部材と共に箱状に組み立てることにより、冷蔵コンテナ10を製造するものである。
又、図3(b)、図4に示されるように、高断熱性パネル12及び骨格部材14の接続部に形成される空間Sに、予め取り付け容易な形状に切断されたウレタンスラブ16(16A、16B、16C、16D)を装着し、ウレタンスラブ16の装着状態でなお残存する隙間S’に発泡ウレタン18を注入する工程を含んでいる。具体的製造手順は、以下に説明する図1の工程(1)〜(25)の通りであるが、主な構成部品である、屋根20、台枠22、側24、側扉26、妻28、妻扉30については、構造及び製造手順がほぼ同一であることから、ここでは、屋根20を例に挙げて詳しく説明する。
【0017】
屋根20は、図5、図6に示されるように、外板32、内張板34、ウレタンスラブ16、発泡ウレタン18、予めウレタンフォーム36aで全体が被覆された真空断熱材36により構成され、外板32には梁38が溶接により固定されている。真空断熱材36と、外板32の内側面及び内張板34の外側面の双方との間には、棒状のウレタンスラブ16Eが配置されている。又、真空断熱材36の外形端部、特に角部と、外板32の内側面及び内張板34の外側面の双方との間にも、ウレタンスラブ16Fを配置している。
図5(c)の例では、梁38は断面ハット状をなしており、ウレタンスラブ16Fは梁38及び真空断熱材36の形状に倣って密着する形状を有しているが、梁38及び真空断熱材36の端部の一部分に密着固定されるものである。このウレタンスラブ16Fは、図示の例のごとく真空断熱材36の上下面に跨るように一体形成されたものであっても良く、複数のウレタンスラブを組み合わせたものであっても良い。更には、棒状のウレタンスラブ16Eのごとく、真空断熱材36の上下面で完全に別体に配置されるものであっても良い。又、梁38のハット状断面形状の内側を埋めるように、棒状のウレタンスラブ16Gが嵌め込まれている。そして、外板32と内張板34との間の、各ウレタンスラブ16、真空断熱材36及び梁38以外の空間部分に、発泡ウレタン18が充填された構造となっている。
【0018】
(1)屋根の製造工程
(1)−1 屋根組立
図7に示されるプレス機100が用いられる。プレス機100は、下定盤102と上定盤104とを備え、下定盤102は、外板32の載置を容易にするために、プレス機100の機外へと横移動することが可能であるが、上下方向には位置固定されている。一方、上定盤104は下定盤102に対し上下に移動可能である。このプレス機100に対し、図8に示されるように、鋼体の外板32をプレス機100の下定盤102に密着させるようにして載置し、外板32の周囲を枠状治具42で囲む。なお、外板32には、図3(a)、(c)に示されるように、予め、図5、図6に示される棒状のウレタンスラブ16Eの設置方向と平行に延びる段差部32aを成形しておくことが望ましい。
【0019】
(1)−2 ウレタンスラブ取付
続いて、枠状治具42で囲まれた部分に棒状のウレタンスラブ16Eを接着固定し、枠状治具42で囲まれた部分を複数の領域に区分けする。
枠状治具42は鋼体32の周囲を塞ぐことにより、後の工程で注入される発泡ウレタン18の注入範囲を定める型枠として機能するものである。又、枠状治具42には、発泡ウレタン18を注入するための注入穴及び空気抜き穴が複数設けられている。この、注入穴及び空気抜き穴は、区分けされた領域毎に設けられている。
(1)−3 真空断熱材取付
外板32の内側面の、ウレタンスラブ16で区分けされた隣接する領域にまたがるようにして、棒状のウレタンスラブ16E上に、図9に示されるように真空断熱材36を載置し、棒状のウレタンスラブ16Eと真空断熱材36とを接着する。この際、梁38及び真空断熱材36に密着するように、ウレタンスラブ16Fを接着固定する。又、棒状のウレタンスラブ16Gを、梁38のハット状断面形状の内側に嵌め込み、接着固定する。
【0020】
(1)−4 ウレタンスラブ取付
続いて、図10に示されるように、各真空断熱材36の上面を二つの領域に区分けするようにして、棒状のウレタンスラブ16Eを載置し、両者を接着固定する。なお、このウレタンスラブ16Eを、予め内張板38の外側面に接着固定し、図11に示される内張板38の取り付け時に、ウレタンスラブ16Eと真空断熱材36の上面とを接着固定することとしても良い。
(1)−5 ウレタン注入発泡
枠状治具42を用いて内張板38を位置決めし、棒状のウレタンスラブ上16E上に、図11に示されるように内張板38を載置して、枠状治具42と外板32と棒状のウレタンスラブ16Eと真空断熱材36と内張板34とで囲まれた密閉空間を形成する。
そして、鋼体32を下定盤102、上定盤104で挟み込み圧力を加えた状態で、枠状治具42の各注入穴から密閉空間内に発泡ウレタン18を注入する。発泡ウレタン18の凝固の後、上定盤104を上昇させ、枠状治具42を取り外し(図12参照)、下定盤102から、高断熱性パネルとして完成した屋根20を搬出する。
【0021】
(2)台枠の製造工程
(3)側の製造工程
(4)側扉の製造工程
台枠、側及び側扉の製造工程は、いずれも上述の屋根の製造工程(1)と同じであることから、説明を省略する。
【0022】
(5)側枠部の製造工程
鋼材を組み合わせて溶接し、側枠部を製造する。
(6)妻の製造工程
(7)妻扉の製造工程
妻及び妻扉の製造工程は、いずれも上述の屋根、台枠、側及び側扉の製造工程(1)〜(4)と同じであることから、説明を省略する。
(8)妻枠部の製造工程
側枠部と同様に鋼材を組み合わせて溶接し、妻枠部を製造する。
【0023】
(9)側扉に側枠を取り付ける。
(10)台枠に側を取り付ける。
(11)台枠に側扉及び側枠を取り付ける。
(12)台枠に妻を取り付ける。
(13)妻に妻枠を取り付ける。
(14)妻枠に妻扉を取り付ける。
(15)屋根を取り付ける。
(16)必要な部分に塗装を施す。
(17)柱部の空間Sに、予め取り付け容易な形状に切断されたウレタンスラブを貼付ける(図3、図4の16A、16B、16C、16D参照)。
(18)上梁・柱部の空間S’(図3、図4参照)に、手作業により発泡ウレタン18を充填する。
(19)側・下妻部の空間S’(図3、図4参照)に、手作業により発泡ウレタン18を充填する。
(20)押さえ面・入口モールを取り付ける(図8の床板モール30参照)。
(21)表記を貼付する。
(22)必要な部分にゴムを取り付ける。
(23)検査を行う。
(24)出荷整備を行う。
(25)完成。出荷を行う。
【0024】
上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能となる。
本発明実施の形態に係る冷蔵コンテナ10の製造方法は、屋根、台枠、側、妻、扉を構成する高断熱性パネルを、個別に製造する工程(工程(1)〜(4)、(6)、(7))において、予めウレタンフォーム36aで全体が被覆された真空断熱材36を用いることで、真空断熱材36の搬送中又は組付工程中に、真空断熱材36の表面材が破損することによる、真空断熱材36の所定の断熱性能の低下を回避することができる。又、外板32の内側面及び内張板34の外側面の双方に対し隙間を空けるように真空断熱材36を位置決めして発泡ウレタン18を充填することにより、真空断熱材36と外板32及び内張板34との間に発泡ウレタン18が行き渡り、真空断熱材36の全体を被覆するウレタンフォーム36aと発泡ウレタン18とが結合し、高断熱性パネル12の強度が向上すると共に、冷蔵コンテナ10の運用中においても、外部からの衝撃や、積荷の搬入搬出時における内部からの衝撃を減衰させて、真空断熱材36の表皮材の破損を回避することができる。
【0025】
又、各高断熱性パネルを、柱及び梁を含む骨格部材と共に箱状に組み立て(工程(9)〜(15))、各高断熱性パネル及び骨格部材の接続部に形成される空間S(図3、図4参照)に、予め取り付け容易な形状に切断されたウレタンスラブ16を装着する(工程(17))。そして、ウレタンスラブ16の装着状態でなお残存する隙間S’(図3、図4参照)に発泡ウレタン18を充填する(工程(18)、(19))ことで、各高断熱性パネル及び骨格部材の接続部における断熱性を確保することができる。
【0026】
又、本発明の実施の形態に係る冷蔵コンテナの製造方法は、各高断熱性パネルを個別に製造する工程(工程(1)〜(4)、(6)、(7))において、プレス機100(図7)の下定盤102に外板を載置し、各高断熱性パネルを構成する外板の周囲を枠状治具42で囲み、外板32の内側面に、枠状治具42で囲まれた部分を複数の領域に区分けする棒状のウレタンスラブ16Eを載置し(図8)、隣接する領域にまたがるようにして、棒状のウレタンスラブ16E上に真空断熱材36を載置し(図9)、更に、各真空断熱材36の上面を二つの領域に区分けする棒状のウレタンスラブ16Eを載置し(図10)、棒状のウレタンスラブ16E上に内張板34を載置して(図11)、枠状治具42と外板32と棒状のウレタンスラブ16Eと真空断熱材36と内張板34とで囲まれた密閉空間を形成し、密閉空間からの空気抜き経路を枠状治具42の空気抜き穴により確保して、該密閉空間内に発泡ウレタン18を充填することにより、該密閉空間内への発泡ウレタン18の充填率を高めるものである。又、枠状治具42によって、外板32と内張板34との位置決めを正確に行うことが可能である。なお、枠状治具42は、適宜、各高断熱性パネルの外形に密着可能な形状に構成されるものである。
【0027】
又、本発明の実施の形態では、真空断熱材36の少なくとも外形角部を、外板32の内側面及び内張板34の外側面の双方との間で挟持するようにウレタンスラブ16Fを配置することで、少なくとも真空断熱材36の外形角部についても、外板32の内側面及び内張板34の外側面の双方に対し適切な隙間を空けるように、正確に位置決めすることができる。そして、枠状治具42と外板32と棒状のウレタンスラブ16Gと真空断熱材36と内張板とで囲まれた密閉空間に発泡ウレタンを充填することにより、真空断熱材と外板及び内張板との間に発泡ウレタンが十分に行き渡ることとなる。なお、図5、図6に示されるように、ウレタンスラブ16Fは梁38及び真空断熱材36の形状に倣って密着する形状を有しているが、梁38及び真空断熱材36の端部の一部分に密着固定されるものであることから、前記密閉空間内への発泡ウレタンの充填経路が、ウレタンスラブ16Fに塞がれて阻害されることはない。
【0028】
又、各高断熱性パネル及び骨格部材の接続部に形成される空間Sの全てに、ウレタンスラブ16を装着し、ウレタンスラブ16の装着状態でなお残存する隙間S’に発泡ウレタンを充填することで、コンテナの構造上、断熱性が損なわれ易い部分を全て無くし、冷蔵コンテナ10に高い断熱性を与えることができる。
又、屋根20を構成する高断熱性パネル12の外板32に、予め段差部32aを成形することで、外板32の強度を高め、熱膨張による外板32の変形を防いでいる。よって、外板32が変形することに起因する、外板32とウレタンスラブ16又は発泡ウレタン18との剥離を回避することができる。又、段差部32aが棒状のウレタンスラブ16Eの設置方向と平行に伸びることにより、段差部32aに棒状のウレタンスラブ16Eが交差することで両者に隙間が生ずることを回避することができる。
従って、以上の製造手順によって製造された本発明の実施の形態に係る冷蔵コンテナ10は、保冷性能に優れたものとなる。なお、本発明の実施の形態では、冷蔵・冷凍ユニット非搭載型の冷蔵コンテナを例示して説明したが、本発明は冷蔵・冷凍ユニット搭載型の冷蔵コンテナにも適用可能であることは理解されるであろう。
【符号の説明】
【0029】
10:冷蔵コンテナ、12:高断熱性パネル、14:骨格部材、16:ウレタンスラブ、18:発泡ウレタン、20:屋根、22:台枠、24:側、26:側扉、28:妻、30:妻扉、32:外板、32a:段差部、34:内張板、36:真空断熱材、36a:ウレタンフォーム、38:梁、42:枠状治具、 S、S’:空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台枠、屋根、側、妻、扉を構成する高断熱性パネルを個別に製造し、これらの高断熱性パネルを、柱及び梁を含む骨格部材と共に箱状に組み立て、前記各高断熱性パネル及び前記骨格部材の接続部に形成される空間に、予め取り付け容易な形状に切断されたウレタンスラブを装着し、該ウレタンスラブの装着状態でなお残存する隙間に発泡ウレタンを充填する工程を含み、
前記高断熱性パネルを個別に製造する工程において、外板と、内張板と、予めウレタンフォームで全体が被覆された真空断熱材とを、該真空断熱材が前記外板の内側面及び内張板の外側面の双方に対し隙間を空けるように位置決めし、前記外板と前記内張板と前記真空断熱材との間の空間に、発泡ウレタンを充填することを特徴とする冷蔵コンテナの製造方法。
【請求項2】
前記各高断熱性パネルを個別に製造する工程において、プレス機の定盤に前記外板を載置し、前記外板の周囲を枠状治具で囲み、前記外板の内側面に、前記枠状治具で囲まれた部分を複数の領域に区分けする棒状のウレタンスラブを載置し、隣接する領域にまたがるようにして、前記棒状のウレタンスラブ上に前記真空断熱材を載置し、更に、各真空断熱材の上面を二つの領域に区分けする棒状のウレタンスラブを載置し、該棒状のウレタンスラブ上に内張板を載置して、前記枠状治具と前記外板と前記棒状のウレタンスラブと前記真空断熱材と前記内張板とで囲まれた密閉空間を形成し、該密閉空間からの空気抜き経路を確保して、該密閉空間内に発泡ウレタンを充填することを特徴とする請求項1記載の冷蔵コンテナの製造方法。
【請求項3】
前記内張板を棒状のウレタンスラブ上に載置する以前に、前記真空断熱材の少なくとも外形角部と、前記外板の内側面及び内張板の外側面の双方との間に、ウレタンスラブを配置することを特徴とする請求項2記載の冷蔵コンテナの製造方法。
【請求項4】
前記各高断熱性パネル及び前記骨格部材の接続部に形成される空間の全てに、前記ウレタンスラブを装着し、該ウレタンスラブの装着状態でなお残存する隙間に発泡ウレタンを充填することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の冷蔵コンテナの製造方法。
【請求項5】
前記屋根を構成する高断熱性パネルの外板に、予め、前記棒状のウレタンスラブの設置方向と平行に延びる段差部を成形する工程を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の冷蔵コンテナの製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の製造方法により製造された冷蔵コンテナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−222011(P2010−222011A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68245(P2009−68245)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(591040030)日本石油輸送株式会社 (4)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】