説明

冷蔵庫

【課題】 調理品の冷却不足や過冷却を防止できる粗熱取りモードを備えた冷蔵庫を提供する。
【解決手段】 温度切替室吐出ダンパ13及び温度切替室戻りダンパ20の開口部20bを常時開いて温度切替室送風機14を駆動することにより温度切替室3を冷却する急速冷却運転と、冷却器17と冷蔵室2等との冷気経路を開いて冷蔵室2等を冷却するとともに温度切替室吐出ダンパ13及び温度切替室戻りダンパ20の開口部20bを閉じて温度切替室送風機14を停止して所定期間待機後温度センサ24、16により温度切替室3内の温度を検知する検温運転とを繰り返す粗熱取りモードを設け、検温運転時に温度センサ24、16の検知温度が所定の温度差よりも小さくなったときに粗熱取りモードを終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱隔離されるとともに冷気の経路が並列な第1、第2貯蔵室を有した冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷蔵庫は特許文献1に開示される。この冷蔵庫は、使用者の用途に応じて冷凍、冷蔵、パーシャル、チルド等の所望の温度帯に室内温度を切り替える温度切替室を有している。温度切替室は冷凍室と断熱隔離され、冷気を生成する冷却器に接続された冷気経路が冷凍室と並列になっている。圧縮機の駆動により冷却器で生成された冷気は送風機の運転によって温度切替室及び冷凍室に送出される。これにより、温度切替室及び冷凍室内が冷却される。
【0003】
温度切替室に高温の貯蔵物を貯蔵した際には、粗熱取りモードを選択することができる。粗熱取りモードは風量及び圧縮機の回転数を大きくして所定時間冷気を温度切替室内に送出し、温度切替室内を急速に冷却することができる。これにより、プリン、ゼリー、ハンバーグのタネ等の調理品を急速冷却して調理時間を短縮することができる。
【特許文献1】特開2002−22335号公報(第4頁−第9頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に開示された冷蔵庫によると、温度切替室内の急速冷却を所定時間行って粗熱取りモードが終了する。このため、粗熱取りモードで調理品が所望の温度まで降温されず、冷却不足により調理時間を充分短縮できない問題があった。また、粗熱取りモードで調理品が過冷却され、使用者の満足する調理を行えない問題があった。
【0005】
本発明は、粗熱取りモード時の冷却不足及び過冷却を防止できる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の冷蔵庫は、断熱隔離された第1、第2貯蔵室を有し、冷却器で生成した冷気が並列に配された第1、第2貯蔵室に分岐して流入し、第1、第2貯蔵室から流出した冷気が合流して前記冷却器に戻る冷蔵庫において、前記冷却器と第2貯蔵室の流入側とを連結する経路を開閉する第1ダンパと、前記冷却器と第2貯蔵室の流出側とを連結する経路を開閉するとともに第2貯蔵室の流入側に冷気を導く第2ダンパと、第1、第2ダンパを開いた際に第2貯蔵室に冷気を取り込んで排出する送風機と、第2貯蔵室の異なる位置の温度を検知する第1、第2温度センサとを備え、
第1、第2ダンパを開いて前記送風機の駆動により第2貯蔵室を冷却する急速冷却運転と、前記冷却器と第1貯蔵室との冷気経路を開いて第1貯蔵室を冷却するとともに第1、第2ダンパを閉じて前記送風機を停止した状態で所定期間維持した後に第1、第2温度センサによって第2貯蔵室の温度を検知する検温運転とを繰り返す粗熱取りモードを設け、前記検温運転で検知した第1、第2温度センサの検知温度差が所定温度よりも小さいときに粗熱取りモードを終了することを特徴としている。
【0007】
この構成によると、冷却器により生成された冷気は第1、第2貯蔵室を流通して第1、第2貯蔵室内を冷却する。第2貯蔵室には室内に冷気を取り込むことが可能な専用の送風機が設けられる。使用者により粗熱取りモードが選択されると、第1貯蔵室の冷却が継続されるとともに送風機を駆動して第2貯蔵室の急速冷却運転が行われる。所定期間急速冷却運転を行うと、第1、第2ダンパを閉じて送風機を停止し、検温運転が行われる。検温運転では所定期間待機した後、第2貯蔵室内の温度が第1、第2温度センサにより検知される。この時の第1、第2温度センサの検知温度が所定の温度差よりも小さいと粗熱取りモードが終了し、所定の温度差よりも高い場合は急速冷却運転及び検温運転が繰り返し行われる。
【0008】
また本発明は上記構成の冷蔵庫において、第2貯蔵室は所望の室内温度に切り替えできる温度切替室から成ることを特徴としている。この構成によると、粗熱取りモード終了後の第2貯蔵室の室内温度を使用者の選択により冷凍、冷蔵、パーシャル、チルド等の所望の温度帯に切り替えることができる。また、第2貯蔵室の室内温度を加熱食品を保温する高温側に切り替えできるようにしてもよい。
【0009】
また本発明は上記構成の冷蔵庫において、第1、第2温度センサにより第2貯蔵室の異なる高さの温度を検知したことを特徴としている。この構成によると、貯蔵物の温度が高いと貯蔵物の熱を受け取った空気が上昇し、第2貯蔵室内の上部と下部との間で温度差が発生する。第1、第2温度センサにより異なる高さの温度を検知して貯蔵物の温度が高いか否かを判別する。
【0010】
また本発明は上記構成の冷蔵庫において、粗熱取りモード開始前の第2貯蔵室の温度に応じて、粗熱取りモードを終了する第1、第2温度センサの温度差の設定値を可変したことを特徴としている。この構成によると、粗熱取りモード開始前の第2貯蔵室の温度が高い場合は、第2貯蔵室の温度が低い場合よりも粗熱取りモードが終了する第1、第2温度センサの測定温度差が小さい値に設定される。
【0011】
また本発明は上記構成の冷蔵庫において、前記検温運転による第1、第2温度センサの検知温度に応じて、前記急速冷却運転の時間を可変したことを特徴としている。この構成によると、第1、第2温度センサの温度差が大きい場合に急速冷却運転の運転時間が長く設定され、第1、第2温度センサの温度差が小さい場合に急速冷却運転の運転時間が短く設定される。
【0012】
また本発明は上記構成の冷蔵庫において、粗熱取りモードの開始時に前記検温運転を行うことを特徴としている。
【0013】
また本発明は上記構成の冷蔵庫において、粗熱取りモード開始前の第2貯蔵室の温度に応じて、前記急速冷却運転の運転時間を可変したことを特徴としている。この構成によると、粗熱取りモード開始前の第2貯蔵室の温度が高い場合に急速冷却運転の運転時間が長く設定され、第2貯蔵室の温度が低い場合に急速冷却運転の運転時間が短く設定される。
【0014】
また本発明は上記構成の冷蔵庫において、前記急速冷却運転及び前記検温運転を所定回数繰り返した時に前記粗熱取りモードを終了することを特徴としている。この構成によると、予め設定される繰り返し回数に到達すると第1、第2温度センサの検知温度に拘わらず粗熱取りモードが終了する。
【0015】
また本発明は上記構成の冷蔵庫において、前記急速冷却運転を行った後、前記検温運転を行わずに前記粗熱取りモードを終了することを特徴としている。この構成によると、急速冷却運転及び検温運転が所定回数繰り返され、急速冷却運転を行って粗熱取りモードを終了する。
【0016】
また本発明は上記構成の冷蔵庫において、前記粗熱取りモードの終了を報知する報知手段を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、急速冷却運転と検温運転とを繰り返し行う粗熱取りモードを設け、検温運転で第2貯蔵室に設けた第1、第2温度センサの検知温度差が所定温度よりも小さいときに粗熱取りモードを終了するので、粗熱取りモードにより第2貯蔵室を冷却するとともに貯蔵物が第2貯蔵室と略同じ温度に冷却される。従って、調理品の冷却不足による調理時間の増加を防止することができる。また、貯蔵物の放熱が減少して第2貯蔵室内の温度が均一になった時に粗熱取りモードを終了するため、調理品の過冷却を防止することができる。
【0018】
また本発明によると、第2貯蔵室が温度切替室から成るので、粗熱取りモード終了後に貯蔵物を冷凍保存や冷蔵保存等の所望の温度で保存することができる。
【0019】
また本発明によると、第1、第2温度センサにより第2貯蔵室の異なる高さの温度を検知したので、貯蔵物によって暖められた空気の上昇による第2貯蔵室の温度むらを第1、第2温度センサにより容易に検知し、貯蔵物が冷却されたか否かを簡単に判別することができる。
【0020】
また本発明によると、粗熱取りモード開始前の第2貯蔵室の温度に応じて粗熱取りモードを終了する第1、第2温度センサの温度差の設定値を可変したので、粗熱取りモード開始前の第2貯蔵室の温度が高い場合に、貯蔵物の温度が高いにも拘わらず粗熱取りモードが終了することを防止できる。従って、貯蔵物の冷却不足を防止することができる。
【0021】
また本発明によると、検温運転による第1、第2温度センサの検知温度に応じて急速冷却運転の時間を可変したので、第1、第2温度センサの温度差が大きい場合に急速冷却運転の運転時間を長くして、検温運転の回数を減らして迅速に冷却することができる。また、第1、第2温度センサの温度差が小さい場合に電力消費の大きい急速冷却運転の運転時間を短くして省電力化を図ることができる。
【0022】
また本発明によると、粗熱取りモードの開始時に検温運転を行うので、最初の急速冷却運転の時間を適正に可変することができる。
【0023】
また本発明によると、粗熱取りモード開始前の第2貯蔵室の温度に応じて急速冷却運転の運転時間を可変したので、第2貯蔵室の温度が高い場合に冷却が遅くなるため急速冷却運転の運転時間を長くし、検温運転の回数を減らして迅速に冷却することができる。また、第2貯蔵室の温度が低い場合に迅速に冷却できるため電力消費の大きい急速冷却運転の運転時間を短くして、省電力化を図ることができる。
【0024】
また本発明によると、急速冷却運転及び検温運転を所定回数繰り返した時に粗熱取りモードを終了するので、電力消費の大きい急速冷却を中止して省電力化を図ることができる。
【0025】
また本発明によると、急速冷却運転及び検温運転を所定回数繰り返して粗熱取りモードを終了する際に検温運転を行わないので、最終の検温運転を省いて電力浪費を防止することができる。
【0026】
また本発明によると、粗熱取りモードの終了を報知する報知手段を設けたので、使用者が調理品の冷却を容易に知ることができ、利便性の高い冷蔵庫を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1、図2は一実施形態の冷蔵庫を示す正面図及び右側面図である。冷蔵庫1は、上段に冷蔵室2が配され、中段に温度切替室3及び製氷室4が配される。冷蔵庫1の下段には野菜室5及び冷凍室6が配されている。
【0028】
冷蔵室2は観音開きの扉を有し、貯蔵物を冷蔵保存する。温度切替室3は中段左側に設けられ、使用者により室温を切り替えられるようになっている。製氷室4は中段右側に設けられ、製氷を行う。野菜室5は下段左側に設けられ、野菜の貯蔵に適した温度(約8℃)に維持される。冷凍室6は下段右側に設けられ、製氷室4に連通して貯蔵物を冷凍保存する。
【0029】
図3は冷蔵庫1の右側面断面図である。冷凍室6及び製氷室4には貯蔵物を収納する収納ケース11が設けられる。野菜室5及び温度切替室3にも同様の収納ケース11が設けられる。冷蔵室2には貯蔵物を載置する複数の収納棚41が設けられる。冷蔵室2の扉には収納ポケット42が設けられる。これらにより、冷蔵庫1の使い勝手が向上されている。また、冷蔵室2内の下部にはチルド温度帯(約0℃)に維持されたチルド室23が設けられている。
【0030】
冷凍室6の背後には冷気通路31が設けられ、冷気通路31内には圧縮機35に接続された冷却器17が配される。冷蔵室2の背後には冷気通路31と連通する冷気通路32が設けられる。凝縮器、膨張器(いずれも不図示)が接続された圧縮機35の駆動によりイソブタン等の冷媒が循環して冷凍サイクルが運転される。これにより、冷凍サイクルの低温側となる冷却器17との熱交換により冷気が生成される。
【0031】
また、冷気通路31、32内には冷凍室送風機18及び冷蔵室送風機28がそれぞれ配される。詳細を後述するように、冷却器17で生成された冷気は冷凍室送風機18の駆動により冷気通路31を介して冷凍室6、製氷室4、チルド室23及び温度切替室3に供給される。また、冷蔵室送風機28の駆動により冷気通路32を介して冷蔵室2及び野菜室5に供給される。
【0032】
図4は温度切替室3を示す右側面断面図である。温度切替室3の上下面は断熱壁7、8により冷蔵室2及び野菜室5と断熱隔離されている。また、温度切替室3の側面は図示しない断熱壁により製氷室4及び冷凍室6と断熱隔離されている。温度切替室3の前面は回動式の扉9により開閉可能になっている。温度切替室3の背面は背面板33により覆われている。
【0033】
背面板33の上部には温度切替室3に空気が流入する流入口33aが設けられ、下部には温度切替室3から空気が流出する流出口33bが設けられる。流入口33a及び流出口33b近傍には、温度切替室3の温度を検知する温度センサ24(第1温度センサ)及び温度センサ16(第2温度センサ)がそれぞれ設けられる。温度センサ24及び温度センサ16は温度切替室3内の異なる高さの温度を検知する。
【0034】
背面板33の後方には、外壁を形成する断熱壁10との間に導入通風路12が設けられている。導入通風路12には温度切替室吐出ダンパ13(図5参照)が設けられ、冷気通路31に連通して冷却器17(図3参照)で発生した冷気を温度切替室3に導く。また、温度切替室吐出ダンパ13の開閉により冷却器17と温度切替室3の流入側との冷気経路が開閉され、開閉量によって導入通風路12から温度切替室3に流入する風量が調整される。
【0035】
導入通風路12内には、温度切替室吐出ダンパ13と流入口33aとの間に温度切替室送風機14が設けられている。温度切替室送風機14の駆動によって冷気通路31の冷気が容易に温度切替室3に導かれる。
【0036】
流出口33bの後方には温度切替室戻りダンパ20が設けられる。温度切替室戻りダンパ20は開口部20a、20bを有し、回動により一方を開いて他方を閉じる回動板20cを有している。開口部20bを開くと温度切替室3から流出する空気は戻り通風路19(図5参照)を介して冷却器17に導かれる。
【0037】
開口部20aを開くと温度切替室3から流出する空気は温度切替室送風機14の吸気側に導かれるとともに、温度切替室3の流出側と冷却器17との間の冷気経路が閉じられる。従って、温度切替室送風機14を駆動し、開口部20bを閉じて温度切替室戻りダンパ20を閉じることにより、矢印Fに示すように温度切替室3の空気を循環させることができる。尚、温度切替室送風機14を温度切替室3内に設けてもよい。
【0038】
温度切替室3の流入口33aの背後にはヒータ15が設けられる。ヒータ15は熱輻射式のガラス管ヒータから成り、背面板33を介して放出される輻射熱により温度切替室3を昇温する。温度切替室送風機14はヒータ15の表面に向けて送風するように配置されている。これにより、ヒータ15の表面温度を下げて安全性を向上させることができる。また、流出口33bには、所定の温度まで高温になるとヒータ15の通電を遮断する温度ヒューズ30が設けられる。
【0039】
温度切替室3内には貯蔵物を載置する引出し式の収納ケース11が配されている。収納ケース11の底面には温度センサ34が設けられる。これにより、収納ケース11上に載置される貯蔵物の温度を検知することができる。
【0040】
図5は冷蔵庫1の中段付近の正面断面図を示している。冷凍室6の背後の冷気通路31は冷凍室送風機18の前面上部を開口し、冷凍室送風機18によって製氷室4に空気が送出される。製氷室4に連通する冷凍室6の下部には冷凍室ダンパ22が設けられる。冷凍室6の後方下部には、冷凍室ダンパ22を介して冷却器17に空気を導いて冷気通路31に戻る戻り通風路21(図3参照)が設けられている。冷凍室ダンパ22の開閉により冷凍室6から流出する空気の風量が調整される。
【0041】
冷気通路31の上部は冷蔵室ダンパ27を介して冷気通路32に連通する。また、冷気通路31は分岐され、チルド室ダンパ25を介してチルド室23(図2参照)と連通するとともに、前述のように導入通風路12(図4参照)に連通する。
【0042】
冷蔵室2の背面下部には冷蔵室流出口(不図示)が開口し、野菜室5には野菜室流入口(不図示)が設けられる。冷蔵室流出口と野菜室流入口とは温度切替室3の背面を通る通路(不図示)により連結され、冷蔵室2と野菜室5が連通している。
【0043】
温度切替室戻りダンパ20は温度切替室3の左方下部に設けられる。温度切替室3及び野菜室5の背後には、温度切替室戻りダンパ20から下方に延びて戻り通風路21(図3参照)に連通する戻り通風路19が設けられている。前述したように、温度切替室3内の空気は温度切替室戻りダンパ20の開口部20b(図4参照)を開くことにより戻り通風路19、21を介して冷却器17に導かれる。尚、野菜室5の背面には戻り通風路19に連通する野菜室流出口(不図示)が設けられる。
【0044】
図6は冷蔵庫1の冷気の流れを示す冷気回路図である。冷凍室6、冷蔵室2及び温度切替室3はそれぞれ並列に配される。また、製氷室4は冷凍室6と直列に配され、チルド室23及び野菜室5は冷蔵室2と直列に配される。冷却器17で生成された冷気は、冷凍室送風機18の駆動により矢印A(図5参照)に示すように冷気通路31を上昇して製氷室4に送出される。製氷室4に送出された冷気は製氷室4及び冷凍室6を流通し、冷凍室ダンパ22から流出する。そして、戻り通風路21を介して冷却器17に戻る。これにより、製氷室4及び冷凍室6内が冷却される。
【0045】
冷蔵室送風機28の駆動により冷気通路31の上部で分岐した冷気は冷蔵室ダンパ27を介して矢印B(図5参照)に示すように冷気通路32を流通し、冷蔵室2に送出される。また、矢印C(図5参照)に示すようにチルド室ダンパ25を介してチルド室23に送出される。
【0046】
これらの冷気は冷蔵室2及びチルド室23を流通した後、野菜室5に流入する。野菜室5に流入した冷気は野菜室5内を流通して戻り通路19、21を介して冷却器17に戻る。これにより、冷蔵室2及び野菜室5内が冷却され、設定温度になると冷蔵室ダンパ27及びチルド室ダンパ23が閉じられる。
【0047】
また、温度切替室送風機14の駆動により冷気通路31の上部で分岐した冷気は矢印D(図5参照)に示すように導入通風路12を流通し、温度切替室吐出ダンパ13を介して温度切替室3に流入する。温度切替室3に流入した冷気は温度切替室3内を流通し、温度切替室戻りダンパ20の開口部20bから流出する。そして、矢印E(図5参照)に示すように、戻り通風路19、21を介して冷却器17に戻る。これにより、温度切替室3内が冷却される。
【0048】
前述のように、温度切替室3は使用者の操作により室内温度を切り替えることができるようになっている。図7は温度切替室3の扉9の前面に設けられるドアパネルを示す正面図である。ドアパネル40には操作スイッチ41及び複数の表示器42a〜42hから成る表示部42が設けられる。これにより、使用者は各動作モードを容易に視認して判別することができる。
【0049】
操作スイッチ41は使用者の操作により温度切替室3の各動作モードを切り替える。各表示器42a〜42hは点灯して温度切替室3の各動作モードを報知する。温度切替室3の動作モードは温度帯に応じてワイン(8℃)、冷蔵(3℃)、チルド(0℃)、ソフト冷凍(−8℃)、冷凍(−15℃)の各冷却モードが設けられ、表示器42d〜42hにより報知される。
【0050】
これにより、使用者は所望の温度で貯蔵物を冷凍保存または冷蔵保存できる。室内温度の切り替えは温度切替室吐出ダンパ13を開く量を可変して行うことができる。尚、例えば冷凍の室内温度から冷蔵の室内温度に切り替える際にヒータ15に通電して昇温してもよい。これにより、迅速に所望の室内温度に切り替えることができる。
【0051】
また、ヒータ15に通電することにより、温度切替室3の室内温度を貯蔵物を冷凍保存または冷蔵保存する低温側から調理済み加熱食品の一時的な保温や温調理等を行う高温側に切り替えることができる。高温側では8時間保温や4時間保温の運転モードが設けられ、それぞれ表示器42a、42bにより報知される。
【0052】
高温側の室内温度は、主な食中毒菌の発育温度が30℃〜45℃であるため、ヒータ容量の公差や温度切替室3内の温度分布等を考慮して50℃以上にするとよい。これにより、雑菌の繁殖を防止できる。また、冷蔵庫に用いられる一般的な樹脂製部品の耐熱温度が80℃であるため、高温側の室内温度を80℃以下にすると安価に実現することができる。
【0053】
また、食中毒菌を滅菌するためには、例えば腸管出血性大腸菌(病原性大腸菌O157)の場合では75℃で1分間の加熱が必要である。従って、高温側の室内温度を75℃〜80℃にするとより望ましい。
【0054】
以下は55℃での食中毒菌の減菌に関する試験結果である。試験サンプルは初期状態で大腸菌2.4×103CFU/mL、黄色ブドウ球菌2.0×103CFU/mL、サルモネラ2.1×103CFU/mL、腸炎ビブリオ1.5×103CFU/mL、セレウス4.0×103CFU/mLを含んでいる。この試験サンプルを40分間で3℃から55℃に加温し、55℃で3.5時間保温後、80分間で55℃から3℃に戻して再度各菌の量を調べた。その結果、いずれの菌も10CFU/mL以下(検出せず)のレベルまで減少していた。従って、温度切替室3の高温側の設定温度を55℃としても充分減菌効果がある。
【0055】
また、操作スイッチ41の操作によって温度切替室3に収納した高温の貯蔵物の粗熱取りを行う粗熱取りモードが設けられる。粗熱取りモードは表示器42cで報知される。図8は粗熱取りモードの動作を示すフローチャートである。
【0056】
粗熱取りモードは温度切替室3を急速に冷却する急速冷却運転と、温度切替室3の温度を検知する検温運転とが繰り返し行われる。検温運転では温度センサ24、16により温度切替室3の温度が検知される。温度切替室3内に配される貯蔵物の温度が高いと貯蔵物の熱を受け取った空気が上昇し、温度切替室3内の上部と下部との間で温度差が発生する。従って、温度センサ24、16により検知された温度切替室3の上部と下部の温度の差によって貯蔵物が冷却されたか否かを判別して粗熱取りモードが終了するようになっている。
【0057】
ステップ#11では粗熱取りモードを終了する温度センサ24及び温度センサ16の検知温度の温度差が設定される。該温度差は粗熱取りモードの開始前の温度切替室3の各動作モードに応じて可変される。即ち、各動作モードの設定温度が低い場合は該温度差が大きく設定され、各動作モードの設定温度が高い場合は温度差が小さく設定される。
【0058】
粗熱取りモード開始前に温度切替室3の温度が高い場合は、粗熱取りモード開始直後であっても温度センサ24及び温度センサ16の検知温度差が余り大きくならない場合がある。特に、温度切替室3が高温側であった場合に顕著になる。このため、粗熱取りモード開始前の温度切替室3の温度が低い場合よりも粗熱取りモードを終了する温度差を小さく設定する。これにより、貯蔵物の冷却前に粗熱取りモードが終了することを防止し、貯蔵物の冷却不足を防止することができる。
【0059】
ステップ#12では図9に示す検温運転の処理が呼び出される。検温運転のステップ#21では温度切替室送風機14がOFFになる。ステップ#22では温度切替室吐出ダンパ13が閉じられ、温度切替室戻りダンパ20の開口部20bが閉じられる。ステップ#23では所定時間が経過するまで待機する。所定時間が経過するとステップ#24に移行して温度センサ24、16により温度切替室3の温度が検知され、図8のフローチャートに戻る。
【0060】
ステップ#13では急速冷却運転時の運転時間が設定される。該運転時間はステップ#12の検温運転による温度センサ24、16の検知温度に応じて可変される。即ち、温度センサ24、16の温度差が大きい場合には急速冷却運転の運転時間が長く設定される。これにより、検温運転の回数を減らして迅速に冷却することができる。また、温度センサ24、16の温度差が小さい場合には急速冷却運転の運転時間が短く設定される。これにより、電力消費の大きい急速冷却運転を短縮して省電力化を図ることができる。。
【0061】
尚、急速冷却運転の運転時間を粗熱取りモードの開始前の各動作モードに応じて可変してもよい。即ち、温度切替室3の各動作モードの設定温度が高い場合には冷却が遅くなるため急速冷却運転の運転時間が長く設定される。これにより、検温運転の回数を減らして迅速に冷却することができる。また、各動作モードの設定温度が低い場合には迅速に冷却できるため電力消費の大きい急速冷却運転の運転時間を短くして、省電力化を図ることができる。
【0062】
ステップ#14では図10に示す急速運転の処理が呼び出される。急速運転のステップ#31では温度切替室送風機14がONされる。ステップ#32で温度切替室吐出ダンパ13及び温度切替室戻りダンパ20の開口部20bが開かれる。これにより、冷却器17と温度切替室3との間の冷気経路が開かれ、大量の冷気が温度切替室3を通過して急速冷却運転が行われる。ステップ#33では急速冷却運転の運転時間がステップ#13で設定された所定時間が経過するまで待機し、所定時間経過した場合に図8のフローチャートに戻る。
【0063】
ステップ#15では急速冷却運転及び検温運転を行った回数が所定回数以下か否かが判断される。急速冷却運転が所定回数以下の場合はステップ#16に移行する。急速冷却運転が所定回数を超えた場合はステップ#19に移行する。ステップ#19では表示器42c(図7参照)の消灯により粗熱取りモードの終了を報知して粗熱取りモードが終了する。これにより、圧縮機35及び温度切替室送風機14の電力消費の大きい急速冷却運転を中止して省電力化を図ることができる。粗熱取りモードの終了により温度切替室3は低温側の所定の動作モードで冷却される。
【0064】
ステップ#16では図9の検温運転処理が呼び出され、温度センサ24、16により温度切替室3内の温度が検知される。ステップ#17では温度センサ24、16に応じて次回の急速冷却運転の運転時間が設定される。ステップ#18では温度センサ24、16の検知温度の温度差がステップ#11で設定された温度差よりも小さいか否かが判断される。
【0065】
温度センサ24、16の検知温度の温度差が所定の温度差よりも大きい場合はステップ#14に戻り、ステップ#14〜#18が繰り返し行われる。これにより、急速冷却運転と検温運転とが繰り返される。温度センサ24、16の検知温度の温度差が所定の温度差よりも小さい場合はステップ#19に移行する。
【0066】
ステップ#19では表示器42c(図7参照)の消灯により粗熱取りモードの終了を報知して粗熱取りモードが終了する。これにより、使用者が調理品の冷却を容易に知ることができ、利便性の高い冷蔵庫1を得ることができる。粗熱取りモードの終了時に点灯やメッセージ表示を行う表示装置や、粗熱取りモードの終了を音響や音声により報知するブザーや音声出力装置等を設けてもよい。
【0067】
粗熱取りモードが終了すると、予め選択される冷蔵や冷凍等の冷却モードに移行する。この時、温度切替室ダンパ13及び温度切替室戻りダンパ20を開閉して、所定の温度に維持される。
【0068】
本実施形態によると、冷蔵室2、冷凍室6、チルド室3、野菜室5(いずれも第1貯蔵室)と、温度切替室3(第2貯蔵室)とは断熱隔離され、冷気回路が並列に構成されるので、他の貯蔵室の冷却を行いながら温度切替室3内を密閉することができる。これにより、高温の貯蔵物を温度切替室3に貯蔵した際に粗熱取りモードを選択すると温度切替室3内を空気が通過する急速冷却運転と温度切替室3を遮断する検温運転とが繰り返し行われる。
【0069】
そして、検温運転で温度切替室3に設けた温度センサ24、16の検知温度差が所定温度よりも小さいときに粗熱取りモードを終了するので、粗熱取りモードにより温度切替室3を冷却するとともに、貯蔵物の放熱が減少して貯蔵物が温度切替室3と略同じ温度に冷却される。従って、調理品の冷却不足による調理時間の増加を防止することができる。また、貯蔵物の放熱が減少して温度切替室3内の温度が均一になった時に粗熱取りモードを終了するため、調理品の過冷却を防止することができる。
【0070】
本実施形態において、粗熱取りモードを実行できる貯蔵室は温度を切り替えできなくてもよい。即ち、冷気回路が冷蔵室2等と並列で断熱隔離された貯蔵室であれば、冷蔵温度や冷凍温度等に一定に維持される貯蔵室でもよい。尚、粗熱取りモードを実行できる貯蔵室を温度切替室3にすることで、粗熱取りモード終了後に貯蔵物を冷凍保存や冷蔵保存等の所望の温度で保存することができる。
【0071】
また、本実施形態において、野菜室5の流出口にダンパを設けてもよい。これにより、温度切替室3を高温側から低温側に切り替えた際に、該ダンパを閉じて温度切替室3からの熱風が野菜室5に逆流することを防止できる。また、温度切替室3を高温側から低温側へ切り替える際に冷凍室送風機18が停止されている場合には、冷凍室ダンパ22が閉じられるようになっている。これにより、温度切替室送風機14の駆動によって冷凍室ダンパ22から冷凍室6内へ熱風が逆流することを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によると、冷気回路が並列に配される第1、第2貯蔵室を有し、高温の貯蔵物の粗熱取りを行う冷蔵庫に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態の冷蔵庫を示す正面図
【図2】本発明の実施形態の冷蔵庫を示す右側面図
【図3】本発明の実施形態の冷蔵庫を示す右側面断面図
【図4】本発明の実施形態の冷蔵庫の温度切替室を示す右側面断面図
【図5】本発明の実施形態の冷蔵庫の中段部を示す正面断面図
【図6】本発明の実施形態の冷蔵庫の冷気の流れを示す冷気回路図
【図7】本発明の実施形態の冷蔵庫の温度切替室のドアパネルを示す正面図
【図8】本発明の実施形態の冷蔵庫の粗熱取りモードの動作を示すフローチャート
【図9】本発明の実施形態の冷蔵庫の検温運転の動作を示すフローチャート
【図10】本発明の実施形態の冷蔵庫の急速冷却運転の動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0074】
1 冷蔵庫
2 冷蔵室
3 温度切替室
4 製氷室
5 野菜室
6 冷凍室
9 扉
12 導入通風路
13 温度切替室吐出ダンパ
14、18、28 送風機
15 ヒータ
17 冷却器
16、24、34 温度センサ
19、21 戻り通風路
20 温度切替室戻りダンパ
22 冷凍室ダンパ
25 チルド室ダンパ
30 温度ヒューズ
31、32 冷気通路
33 背面板
35 圧縮機
40 ドアパネル
41 操作スイッチ
42 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱隔離された第1、第2貯蔵室を有し、冷却器で生成した冷気が並列に配された第1、第2貯蔵室に分岐して流入し、第1、第2貯蔵室から流出した冷気が合流して前記冷却器に戻る冷蔵庫において、前記冷却器と第2貯蔵室の流入側とを連結する経路を開閉する第1ダンパと、前記冷却器と第2貯蔵室の流出側とを連結する経路を開閉するとともに第2貯蔵室の流入側に冷気を導く第2ダンパと、第1、第2ダンパを開いた際に第2貯蔵室に冷気を取り込んで排出する送風機と、第2貯蔵室の異なる位置の温度を検知する第1、第2温度センサとを備え、
第1、第2ダンパを開いて前記送風機の駆動により第2貯蔵室を冷却する急速冷却運転と、前記冷却器と第1貯蔵室との冷気経路を開いて第1貯蔵室を冷却するとともに第1、第2ダンパを閉じて前記送風機を停止した状態で所定期間維持した後に第1、第2温度センサによって第2貯蔵室の温度を検知する検温運転とを繰り返す粗熱取りモードを設け、前記検温運転で検知した第1、第2温度センサの検知温度差が所定温度よりも小さいときに粗熱取りモードを終了することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
第2貯蔵室は所望の室内温度に切り替えできる温度切替室から成ることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
第1、第2温度センサにより第2貯蔵室の異なる高さの温度を検知したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
粗熱取りモード開始前の第2貯蔵室の温度に応じて、粗熱取りモードを終了する第1、第2温度センサの温度差の設定値を可変したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記検温運転による第1、第2温度センサの検知温度に応じて、前記急速冷却運転の時間を可変したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項6】
粗熱取りモードの開始時に前記検温運転を行うことを特徴とする請求項5に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
粗熱取りモード開始前の第2貯蔵室の温度に応じて、前記急速冷却運転の時間を可変したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記急速冷却運転及び前記検温運転を所定回数繰り返した時に前記粗熱取りモードを終了することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記急速冷却運転を行った後、前記検温運転を行わずに前記粗熱取りモードを終了することを特徴とする請求項8に記載の冷蔵庫。
【請求項10】
前記粗熱取りモードの終了を報知する報知手段を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−322668(P2006−322668A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146440(P2005−146440)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【特許番号】特許第3805351号(P3805351)
【特許公報発行日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】