冷蔵庫
【課題】減圧貯蔵室に収納した食品中の栄養成分の酸化劣化と、微生物による腐敗防止を長期間にわたって防止できる冷蔵庫を提供することである。
【解決手段】冷蔵庫は、減圧貯蔵室24の温度を設定温度に制御するための冷却装置180と、冷却装置180に制御信号を出力して、減圧貯蔵室24の温度を設定温度に調節する制御装置100とを備える。制御装置100は、減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかった場合、減圧貯蔵室24の設定温度を、第1温度(例えばチルド温度)から、第1温度よりも低い第2温度(例えば冷凍温度)に変更する。
【解決手段】冷蔵庫は、減圧貯蔵室24の温度を設定温度に制御するための冷却装置180と、冷却装置180に制御信号を出力して、減圧貯蔵室24の温度を設定温度に調節する制御装置100とを備える。制御装置100は、減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかった場合、減圧貯蔵室24の設定温度を、第1温度(例えばチルド温度)から、第1温度よりも低い第2温度(例えば冷凍温度)に変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関し、特に減圧貯蔵室を備える冷蔵庫に係る。
【背景技術】
【0002】
従来の冷蔵庫として、特開2011−58670号公報(特許文献1)に示されたものがある。この冷蔵庫は、食品収納容器を低酸素状態に制御して、容器内部の食品の鮮度を保持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−58670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献に記載の冷蔵庫では、収納容器に貯蔵した食品を、減圧状態の中で間接的に冷却できるため、食品の酸化劣化防止および乾燥防止に有効である。しかし、たとえ氷温度帯であっても長期間保存すると、品質が劣化すると考えられる。従って、例えば、ユーザが、種々の事情により、収納容器に肉や魚等の食品を保存中であることを一週間ほど忘れてしまうと、品質の劣化が進んで、その食品を廃棄せざるを得なくなる。
【0005】
従って、本発明の目的は、使用状況に応じて減圧貯蔵室の設定温度を自動的に変更することにより、使い勝手を向上できるようにした冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明に係る冷蔵庫は、大気圧よりも低い圧力で貯蔵するための減圧貯蔵室を備える冷蔵庫であって、減圧貯蔵室の温度を設定温度に制御するための冷却装置と、冷却装置に制御信号を出力して、減圧貯蔵室の温度を設定温度に調節する制御装置と、を備え、制御装置は、予め設定される所定条件が満たされた場合に、減圧貯蔵室の設定温度を変更する。
【0007】
制御装置は、減圧貯蔵室の設定温度をチルド温度または冷蔵温度である第1温度に設定しており、所定条件が満たされた場合には、減圧貯蔵室の設定温度を第1温度よりも低い冷凍温度である第2温度に変更する。
【0008】
所定条件は、減圧貯蔵室に食品を貯蔵してから所定期間、該食品が使用されなかったこと、として設定できる。制御装置は、所定の装置からの情報により、減圧貯蔵室が所定期間使用されなかったかを判定し、減圧貯蔵室が所定期間使用されなかったと判定された場合は、減圧貯蔵室の設定温度を第1温度から第2温度に変更する。
【0009】
所定の装置としては、例えば、減圧貯蔵室の圧力を検出するための圧力検出部、減圧貯蔵室の開口部を開閉可能に施蓋する扉の開閉を検出するための開閉スイッチなどを使用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、減圧貯蔵室の設定温度を使用状況に応じて自動的に変更でき、使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施例に係る冷蔵庫の正面図。
【図2】冷蔵庫の縦断面図。
【図3】冷蔵庫本体の扉を外した状態の正面図。
【図4】急速冷凍室の減圧貯蔵室付近の縦断面図。
【図5】急速冷凍室の減圧貯蔵室付近の斜視図。
【図6】減圧貯蔵室の収納容器を左上方から見た斜視図。
【図7】減圧貯蔵室の補強ガラス板と環状パッキングを示す斜視図。
【図8】減圧貯蔵室のドアを背面側から見た斜視図。
【図9】減圧貯蔵室の断面斜視図。
【図10】減圧貯蔵室の収納容器を左上方から見た斜視図。
【図11】減圧貯蔵室の設定温度を自動的に変更する制御構造の説明図。
【図12】小松菜を従来の冷凍方法で冷凍した場合と真空で冷凍した場合とでビタミンCを測定した値を示すグラフ。
【図13】レモンをチルド温度と冷凍温度に保存し、3日後・10日後・2週間後に測定したビタミンC量を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、以下に詳述するように、冷蔵庫の使用状況(詳しくは、冷蔵庫内の減圧貯蔵室の使用状況)を判定し、使用状況に応じて減圧貯蔵室の設定温度を自動的に変更する。
【実施例1】
【0013】
まず、図1から図3を参照しながら冷蔵庫全体に関して説明する。図1は本実施形態の冷蔵庫の正面図、図2は図1の冷蔵庫の中央縦断面図、図3は図1の冷蔵庫本体の扉を外した状態の正面図である。
【0014】
冷蔵庫は、冷蔵庫本体1と、複数の扉6〜10とを備えて構成されている。冷蔵庫本体1は、鋼板製の外箱11と樹脂製の内箱12との間にウレタン発泡断熱材13及び真空断熱材(図示せず)を有して構成される。冷蔵庫は、上から冷蔵室2、冷凍室3、4、野菜室5の順で複数の貯蔵室を有している。換言すれば、最上段に冷蔵室2が、最下段に野菜室5が、それぞれ区画して配置されている。冷蔵室2と野菜室5との間には、これらの両室2、5と断熱的に仕切られた冷凍室3、4が配設されている。冷蔵室2及び野菜室5は冷蔵温度帯の貯蔵室であり、冷凍室3、4は、0度以下の冷凍温度帯(例えば、約−20度〜−18度の温度帯)の貯蔵室である。なお、冷凍室3は製氷室3aと急速冷凍室3bとに区画されており、急速冷凍室3b内に減圧貯蔵室24を備えている。これらの貯蔵室2〜5は仕切り壁34,35,36により区画されている。
【0015】
冷蔵庫本体1の前面には、貯蔵室2〜5の前面開口部を閉塞する扉6〜10が設けられている。冷蔵室扉6は、冷蔵室2の前面開口部を閉塞する扉である。製氷室扉7は、製氷室3aの前面開口部を閉塞する扉である。急速冷凍室扉8は、急速冷凍室3bの前面開口部を閉塞する扉である。冷凍室扉9は、冷凍室4の前面開口部を閉塞する扉である。野菜室扉10は、野菜室5の前面開口部を閉塞する扉である。冷蔵室扉6は、いわゆる観音開き式として知られる両開きの式の扉で構成される。製氷室3a、急速冷凍室3b、冷凍室4、野菜室5の各扉は、引き出し式の扉によって構成されており、引き出し式の扉とともに貯蔵室内の容器が引き出される。
【0016】
冷蔵庫本体1には、「冷却装置」としての冷凍サイクル180(図11参照)が設置されている。冷凍サイクル180は、例えば、圧縮機14、凝縮器(図示せず)、キャピラリチューブ(図示せず)及び蒸発器15、そして再び圧縮機14の順に接続することで、構成されている。圧縮機14及び凝縮器は、冷蔵庫本体1の背面下部に設けられた機械室に設置されている。蒸発器15は、冷凍室3、4の後方に設けられた冷却器室に設置されている。冷却器室における蒸発器15の上方には、送風ファン16が設置される。
【0017】
蒸発器15によって冷却された冷気は、送風ファン16によって冷蔵室2、製氷室3a、急速冷凍室3b、冷凍室4及び野菜室5の、各貯蔵室へと送られる。具体的には、送風ファン16によって送られる冷気は、開閉可能なダンパー装置を介して、その一部が冷蔵室2及び野菜室5の冷蔵温度帯の貯蔵室へと送られ、他の一部が製氷室3a、急速冷凍室3b及び冷凍室4の冷凍温度帯の貯蔵室へと送られる。つまり、開閉可能なダンパー装置は、冷却室からの冷気を、冷蔵温度帯の貯蔵室への冷蔵吐出口と、冷凍温度帯の貯蔵室への冷凍吐出口との、一方若しくは両方に選択可能に流通させる選択手段である。
【0018】
送風ファン16によって冷蔵室2、製氷室3a、急速冷凍室3b、冷凍室4及び野菜室5の各貯蔵室へと送られる冷気は、各貯蔵室を冷却した後、冷気戻り通路を通って冷却器室へと戻される。このように、本実施形態の冷蔵庫は冷気の循環構造を有しており、各貯蔵室2〜5を適切な温度に維持する。
【0019】
冷蔵室2内には、透明な板で構成される複数段の棚17〜20が取り外し可能に設置される。最下段の棚20は、内箱12の背面及び両側面に接するように設置され、その下方空間である最下段空間21を上方空間と区画している。最下段空間21には、チルド室2aが設けられている。また、各冷蔵室扉6の内側には、複数段の扉ポケット25〜27が設置されている。これらの扉ポケット25〜27は、冷蔵室扉6が閉じられた状態で冷蔵室2内に突出するように設けられている。
【0020】
図2を参照して、急速冷凍室3bにおける機器の配置を説明する。急速冷凍室3b内には、減圧貯蔵室24が配置されている。製氷室3aとの間に仕切りを設け、冷凍室4との間にも他の仕切りを設けて、独立の空間を形成している。急速冷凍室3bの背面に設けられたダンパーにより、温度を切り替えることができるようになっている。急速冷凍室3bには、引き出し式の扉がついているため、冷気が逃げにくい。従って、急速冷凍室3bを低い温度に維持することが容易となっている。
【0021】
ユーザは、急速冷凍室扉6を開くのみで、減圧貯蔵室24内の食品トレイ60(図4参照)を容易に引き出すことができる。食品トレイ60の底部には、蓄冷材80が設置されている。蓄冷材80は、減圧貯蔵室24内の温度(設定温度)よりも高い温度の食品が減圧貯蔵室24に貯蔵されたときに、その食品を速やかに設定温度まで冷却し、食品の鮮度を保つものである。
【0022】
図5に示すように、減圧貯蔵室24を減圧するための手段の一例である真空ポンプ29が、減圧貯蔵室24の側面後方に配置されている。真空ポンプ29は、減圧貯蔵室24の側面に設けられたポンプ接続部42i(図6参照)に導管29a(図5参照)を介して、容易に接続することができる。また、収納ケース23(図3参照)を取り出すことにより、真空ポンプ29を前方から簡単にメンテナンスできるようになっている。
【0023】
図5〜図7を参照しながら、減圧貯蔵室24の構成を説明する。図5は減圧貯蔵室24の斜視図、図6は減圧貯蔵室24の収納容器42を左上方から見た斜視図、図7は減圧貯蔵室24の補強ガラス板と環状パッキングを示す斜視図である。
【0024】
減圧貯蔵室24は、例えば、食品出し入れ用開口部42aを有する箱状の収納容器42と、食品出し入れ用開口部42aを開閉する減圧貯蔵室ドア50と、収納容器42内に出し入れされる食品トレイ60とを備えて構成されている。
【0025】
収納容器42において、減圧貯蔵室ドア50で食品出し入れ用開口部42aを閉じることにより、減圧貯蔵室ドア50と食品トレイ60とで囲まれた空間が形成される。この空間は、真空ポンプ29により減圧される低圧空間41として形成される。食品トレイ60は、減圧貯蔵室ドア50の背面側に取り付けられ、減圧貯蔵室ドア50の移動に伴って前後に移動可能である。
【0026】
収納容器42は、耐薬品性、耐衝撃性及び成形性に優れた樹脂製の外郭と、透明な強化ガラスで構成されたガラス板43(例えば強化ガラス)と、鋼板などの金属製の板状部材44と、樹脂製のドア係合部材48とを備えて構成されている。
【0027】
収納容器42の外郭は略直方体の基本形状を有しており、その前面に食品出し入れ用開口部42aが形成され、その上面にガラス板載置用開口部42bが形成されている。この外郭を構成する側壁42c、底壁42d及び背壁42eの外面には、外郭の強度アップを図るために、外郭補強リブ42fが突出して形成されている。
【0028】
図7に示すように、ガラス板43は、ガラス板載置用開口部42bに環状パッキング45を介して気密的に載置されており、収納容器42の上壁を形成している。ガラス板43は、収納容器42内の負圧力によって、ガラス板載置用開口部42bが内側に変形するのを防止するための強度を備える。また、透明なガラス板43を収納容器42の上面に設けたことにより、ユーザは、減圧貯蔵室ドア50を開けることなく、減圧貯蔵室24内を覗き見ることができる。
【0029】
板状部材44は、収納容器42内の負圧力によって、収納容器42の両側壁42c及び底壁42d及び背壁42eが変形するのを防止すべく、両側壁42c、底壁42d及び背壁42eに沿って延びるように、設置されている。
【0030】
収納容器42は、樹脂材料から食品出し入れ用開口部42aを有する箱状に形成されており、両側壁42cと底壁42d及び背壁42eには、金属製の板状部材44が設けられている。従って、収納容器42の全体を金属板で形成する場合に比較して、製造コストを低減できる。また、収納容器42を樹脂材料から形成するため、取り付け構造などを簡略化することができる。
【0031】
図5、図8、図9、図10を参照して、減圧貯蔵室ドア50を説明する。図8は、減圧貯蔵室ドア50の背面側の斜視図である。
【0032】
減圧貯蔵室ドア50は、例えば、ドア本体51と、ドアハンドル52と、密閉状態解除バルブ53と、ゴム製のインジケータ54と、マグネットガスケット55とを備えて構成されている。ドア本体51は、耐薬品性、耐衝撃性及び成形性に優れた樹脂材料から形成される。マグネットガスケット55は、収納容器42を気密にシールして密閉性を高めるためのものである。
【0033】
ドア係合部材48は、図9に示すように、食品出し入れ用開口部42aの上面に設置されている。ドア係合部材48は、食品出し入れ用開口部42aの上面に形成された凹部内に収納されるコ字状部48aと、コ字状部48aから前方に延びるドア係合爪部48bとが一体に成形されている。ドア係合爪部48bは、ドアハンドル52の幅と略同じ幅で設けられており、前後位置決め上端部51e(図8参照)に係合されている。
【0034】
減圧貯蔵室ドア50を開ける場合、ユーザがドアハンドル52を引くと、ヒンジ部(図示せず)を中心にドアハンドル52は上方に回転し、ドアハンドル52の上部がドア係合爪部48bを押し上げる。これによって、ドア係合爪部48bと前後位置決め上端部51eとの係合が外れる。ユーザがさらにドアハンドル52を引くと、減圧貯蔵室ドア50を開くことができる。
【0035】
減圧貯蔵室ドア50は、リンク機構70(図10参照)と接続されており、回動可能及び前後への移動可能となっている。ドアハンドル52には、密閉状態を解除するためのバルブ53が設けられている。このバルブ53は、指の力の弱いユーザでも容易にドア50を開閉できるように、収納容器42の密閉状態を解除し、収納容器42内の圧力を大気圧に近づけるためのものである。収納容器42内部の圧力は、真空ポンプ29の作動により、または、収容した食品及び空気が冷却されて収縮することにより、僅かに減圧する(例えば0.8気圧程度)。そのため、減圧状態の収納容器42のドア50を開けるには、力を要する。そこで、本実施例では、大気圧を収納容器42内に導入するためのバルブ53を設けている。
【0036】
ドア本体51は、収納容器42の開口部42aの外形とほぼ同じ外形を有しており、ハンドル凹部51a、ハンドルヒンジ受け51c、リンク機構接続部51d、前後位置決め上端部51e、前後位置決め下端部51fなどを備えている。
【0037】
減圧貯蔵室24の操作を説明する。図9は、減圧貯蔵室の断面斜視図である。ドア本体51を開く際には、ユーザは、図5の状態で、ハンドル凹部51a内に指を入れ、ドアハンドル52の下部を引く。これにより、密閉状態解除バルブ53が動作して減圧貯蔵室24の密閉状態が解除される。従って、ユーザが特に意識しなくても、ドア本体51の開放動作の最初に、減圧貯蔵室24の密閉状態を解除できる。
【0038】
さらに、ユーザがドアハンドル52を引くと、ドア本体51を介して上リンク辺70a(図5参照)が前方に引かれる。これにより、上リンク辺70aと後リンク辺70dとの接続部がリンク用上支持部42kの傾斜に沿って前方下方へ移動され、ドア本体51が傾斜された状態となる。これによって、図8のドア本体51の前後位置決め下端部51fが図4の仕切り壁34の前後位置決め溝34aから開放され、ドア本体51を前方に引き出すことが可能となる。
【0039】
さらに、ユーザがドアハンドル52を引くと、ドア本体51を介して上リンク辺70aが前方に引かれる。これにより、上リンク辺70aに近接して配置され、減圧貯蔵室24のドア本体51の開閉状態を検出するドアスイッチ130(図11参照)が、減圧貯蔵室24のドア本体51の開状態を検出することになる。
【0040】
さらに、ユーザがドアハンドル52を引くと、ドア本体51が傾斜した状態でリンク機構70及び食品トレイ60と共に前方に引き出される。これにより、食品トレイ60の上面が開放される。ユーザは、食品トレイ60に食品を出し入れすることができる。
【0041】
ユーザがドアハンドル52を引くだけで、上記の一連の動作が実行される。ユーザは、意識して特別に力をこめたりする必要はなく、使い勝手が良い。
【0042】
なお、ドア本体51を閉じる際には、図10の状態で、ユーザがドアハンドル52の上部を押すことにより、上述した開動作の逆の動作が行われる。ドアスイッチ130は、減圧貯蔵室24のドア本体51が閉じられたことを検出する。
【0043】
図5及び図10を参照しながら、リンク機構70を説明する。図10は減圧貯蔵室ドア50を前方に引き出した状態の斜視図である。リンク機構70は、隣接する急速冷凍室3bの側面と収納容器42の側面との間に配置されている。
【0044】
図11を参照して、減圧貯蔵室24の温度制御を説明する。冷蔵庫の作動を制御するための制御装置100は、例えば、マイクロコンピュータシステムとして構成することができる。
【0045】
制御装置100の入力側には、例えば、圧力スイッチ110、光センサ120、減圧貯蔵室ドアスイッチ130、操作スイッチ150、温度センサ160等が接続される。また、場合によっては、後述するHEMS(Home Energy Management System)170を制御装置100に接続してもよい。
【0046】
制御装置100の出力側には、例えば、真空ポンプ29と、冷凍サイクル180と、操作パネル(図示せず)等が接続される。
【0047】
制御装置100は、予め設定される所定条件が満たされた場合に、減圧貯蔵室24の設定温度を、第1温度から第2温度に自動的に変更する。第1温度とは、例えば、チルド温度または冷蔵温度である。第2温度とは、第1温度よりも低い値に設定される冷凍温度である。
【0048】
所定条件の一例としては、減圧貯蔵室24に食品が貯蔵されてから所定期間使用されなかったこと(例えば、減圧貯蔵室24に食品が投入されてから急速冷凍室扉6の開閉、減圧貯蔵室ドア60の開閉、食品の出し入れ等、使用者からの操作が一定時間無い状態)、を挙げることができる。減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかった場合、その中に貯蔵されている食品の品質が劣化し、食用に耐えなくなる可能性がある。
【0049】
そこで、本実施例では、減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかった場合、減圧貯蔵室24の設定温度を冷凍温度に低下させて、鮮度保持優先モード(チルド温度)から長期保存モード(冷凍温度)に移行する。
【0050】
減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかったか否かは、所定の装置からの情報によって知ることができる。一例として、制御装置100は、圧力スイッチ110の検出信号から、減圧貯蔵室24のドア50が開閉されたか否かを知ることができる。ドア50が開閉されると、減圧貯蔵室24内の圧力が変化し、その圧力変化は圧力スイッチ110によって検出されるためである。
【0051】
減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかったことを検出する他の例として、光センサ120の信号を用いることもできる。光センサ120は、例えば冷蔵庫の表面に設けることができ、冷蔵庫の周囲の光に応じた信号を出力する。制御装置100は、光センサ120からの信号に基づいて、ユーザが在宅か不在であるかを判定できる。冷蔵庫の設置されている場所の窓の位置等によっても相違するが、旅行または出張等でユーザが不在の場合、冷蔵庫の置かれている周囲の明るさは、ユーザが在宅の場合に比べて、変化に乏しい。従って、光センサ120から出力された信号の履歴データを管理したり、制御装置100に設けるカレンダタイマの出力を参照したりすれば、ユーザが在宅であるか否かを判定することができる。ユーザが所定期間不在であると判定した場合、制御装置100は、減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかったと推定して、減圧貯蔵室24の設定温度を冷凍温度に低下させる。
【0052】
減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかったことを検出するさらに別の例として、減圧貯蔵室ドア50の開閉を検出するドアスイッチ130の信号を用いることもできる。
【0053】
さらに、冷蔵庫の各扉6〜10の開閉を検出するための扉スイッチ140からの信号に基づいて、ユーザが在宅であるか否かを判定してもよい。光センサ120について述べたと同様に、ユーザが所定期間不在であると判定された場合、制御装置100は、減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかったと判断して、減圧貯蔵室24の設定温度を冷凍温度に低下させる。
【0054】
また、冷蔵庫に各種設定をするための操作スイッチ150の操作状態に基づいて、ユーザが在宅であるか否かを判定してもよい。この場合も前記同様に、制御装置100は、ユーザが所定期間不在であると判定すると、減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかったと判定する。
【0055】
さらに、HEMS170からの信号を受信することで、冷蔵庫の設置されている建物の消費電力の変化を知ることができる。ユーザが不在の場合、消費電力は少なく、昼夜を通してあまり変化しない。従って、制御装置100は、HEMS170からの信号に基づいて、ユーザが所定期間不在であるか否かを判定できる。
【0056】
なお、図示は省略しているが、上記の方法以外に、例えば、冷蔵庫の置かれている建物の玄関扉の開閉状態、その建物内の人体を検出するための人体検知センサからの信号を利用する構成でもよい。
【0057】
制御装置100の動作を説明する。制御装置100は、減圧貯蔵室24の設定温度をチルド温度または冷蔵温度にして温度を制御する(S10)。制御装置100は、所定の装置110〜170のいずれか一つまたは複数から情報(信号)を取得する(S11)。制御装置100は、取得した情報に基づいて、減圧貯蔵室24が所定期間使用されていないかを判定する(S12)。減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかったと判定された場合(S12:YES)、制御装置100は、減圧貯蔵室24の設定温度を冷凍温度に低下させる(S13)。
【0058】
このように構成される本実施例では、減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかった場合、設定温度を自動的に低下させるため、減圧貯蔵室24内の食品の品質劣化を抑制することができ、長期保存を可能にする。従って、廃棄される食品の無駄を少なくでき、使い勝手も向上する。
【0059】
図12および図13を参照して、冷蔵庫の保存効果を説明する。最初に、図12を参照しながら真空冷凍の効果について説明する。図12は、小松菜を従来の冷凍方法で冷凍した場合と真空で冷凍した場合とで、ビタミンCを測定した値を示すグラフである。
【0060】
棒グラフ84は、急速冷凍温度にされた真空容器に小松菜を保存して冷凍させた場合のビタミンCを示す。棒グラフ85は、通常冷凍温度にされた真空容器に小松菜を保存して冷凍させた場合のビタミンCを示す。棒グラフ86は、急速冷凍モードで小松菜を冷凍した場合のビタミンCを示す。棒グラフ87は、通常冷凍モードで小松菜を冷凍した場合のビタミンC量を示す。なお、冷凍時は生のまま保存し、解凍は1分間沸騰水に入れて解凍を行った。
【0061】
図12に示すように、最もビタミンC残存量が多いのは真空容器を急速冷凍温度にした場合である(グラフ84)。ビタミンC残存量が次に多いのは、真空容器を通常冷凍温度にした場合である(グラフ85)。次にビタミンC残存量の多いのは、急速冷凍した場合である(グラフ86)。最もビタミンC残存量が少ないのは、通常冷凍の場合である(グラフ87)。
【0062】
このことから、大気圧で冷凍するよりも真空で冷凍を行った方が栄養成分の保持効果が高いということがわかる。これは、真空で冷凍することにより間接冷却となり、温度変動が少なくなるため、食品中の水分が抜けにくくなり、鮮度が保たれるからであると考えられる。また、冷凍温度では化学反応が遅くなるが、真空状態では酸素が少なくなっているため、食品の酸化反応を抑制し、鮮度を保持する効果が高まったことがわかる。
【0063】
さらに、通常冷凍よりも急速冷凍の方がビタミンC保持効果が高いことから、早く凍結させた方が栄養成分の保持効果が高いことがわかる。従って、真空容器内に熱伝導の高い部材や蓄冷材80を設けることで、間接冷却において冷却速度を向上し、最大氷結晶形成温度帯の−1度から−5度付近を早く通過することができる。これにより、氷結晶による細胞破壊を抑制でき、食品の酵素反応による鮮度劣化を低減できる。
【0064】
図13を参照して、冷凍温度帯とチルド温度帯の、保存期間と栄養成分残存量の関係について説明する。図13はレモンをチルド温度と冷凍温度に保存し、3日後、10日後、2週間後に測定したビタミンC量を示すグラフである。
【0065】
図13の折れ線グラフ89は、真空容器をチルド温度に保ち、レモンを保存したときのビタミンC量の時間変化を示す。折れ線グラフ89は、真空容器を冷凍温度帯(−18度)に保ち、レモンを保存したときのビタミンC量の時間変化を示す。なお、グラフの横軸0は、保存前の初期のレモンのビタミンC量を示している。
【0066】
図13からわかるように、3日後では、冷凍温度よりもチルド温度の方がビタミンC量が多い。しかし、10日後には、チルド温度でのビタミンC量と冷凍温度でのビタミンC量が同様となる。2週間後には、チルド温度で保存したものよりも冷凍温度で保存したものの方が、残存しているビタミンC量が多くなる。
【0067】
冷凍温度で保存すると、水分が凍結して食材の細胞を破壊するため、ビタミンC分解酵素とビタミンCとの反応が活発化するため、保存期間が短くても、ビタミンCが減少すると考えられる。一方、チルド温度では凍結を伴わないため、細胞膜によってビタミンCの分解反応は抑制される。さらに真空保存により酸化反応を抑制しているため、ビタミンCの分解速度が低下し、保存性が高くなる。
【0068】
しかし、保存温度が高いほど微生物の繁殖が進むため、日にちが経つほど、微生物によるビタミンCの分解反応が加速する。さらに、食品が持つ水分が蒸散することで食材が萎れてしまい、水溶性であるビタミンCを保持する力が弱まり、ビタミンC残存量が少なくなっていく。
【0069】
一方、冷凍の場合は、空間温度が低いため化学反応の速度が遅くなる。さらに、−12度以下ではほとんどの微生物の反応は停止し、微生物の繁殖が抑制される。従って、10日経過後ではチルド温度での保存と同様の結果となる。さらに保存日数が延びて2週間が経過すると、冷凍温度で保存した方が、チルド温度で保存した場合よりも、ビタミンCの損失が少なくなる。
【0070】
このことから、例えば、1週間以内の比較的短い保存日数の場合は、食品が凍結しない範囲で最も低い保存温度であるチルド温度帯に設定し、1週間以上の比較的長期間保存する場合には、食品を凍結させて保存する冷凍温度に設定ですることが望ましいことがわかった。
【0071】
したがって、所定の期間内の保存ではチルド温度に設定し、所定期間以上保存されている場合には冷凍温度に切り替えることで、食品の栄養成分保持効果を更に高めることができる。
【0072】
また、もしもユーザが保存中の食品の存在を忘れてしまった場合でも、自動的に温度を低くして長期保存モードに移行するため、食品の廃棄を少なくでき、より一層の節約が可能となる。
【0073】
そこで、本実施例では、上述のように、減圧貯蔵室24を急速冷凍室3bに設け、チルド温度と冷凍温度に切り替える機構を設け、チルド温度での保存に所定期間以上変化が無いと判定された場合には、チルド温度から冷凍温度に切り替える。
【符号の説明】
【0074】
1…冷蔵庫本体、2…冷蔵室、2a…チルド室、3…冷凍室、3a…製氷室、3b…急速冷凍室、4…冷凍室、5…野菜室、6…冷蔵室扉、7…製氷室扉、8…急速冷凍室扉、9…冷凍室扉、10…野菜室扉、11…外箱、12…内箱、13…発泡断熱材、14…圧縮機、15…蒸発器、16…送風ファン、17〜20…棚、21…最下段空間、22…製氷水タンク、23…収納ケース、24…減圧貯蔵室、25〜27…扉ポケット、28…製氷水ポンプ、29…真空ポンプ、100…制御装置、110…圧力スイッチ、120…光センサ、130…減圧貯蔵室ドアスイッチ、140…冷蔵室扉スイッチ、150…操作スイッチ、160…温度センサ、170…HEMS。
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関し、特に減圧貯蔵室を備える冷蔵庫に係る。
【背景技術】
【0002】
従来の冷蔵庫として、特開2011−58670号公報(特許文献1)に示されたものがある。この冷蔵庫は、食品収納容器を低酸素状態に制御して、容器内部の食品の鮮度を保持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−58670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献に記載の冷蔵庫では、収納容器に貯蔵した食品を、減圧状態の中で間接的に冷却できるため、食品の酸化劣化防止および乾燥防止に有効である。しかし、たとえ氷温度帯であっても長期間保存すると、品質が劣化すると考えられる。従って、例えば、ユーザが、種々の事情により、収納容器に肉や魚等の食品を保存中であることを一週間ほど忘れてしまうと、品質の劣化が進んで、その食品を廃棄せざるを得なくなる。
【0005】
従って、本発明の目的は、使用状況に応じて減圧貯蔵室の設定温度を自動的に変更することにより、使い勝手を向上できるようにした冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明に係る冷蔵庫は、大気圧よりも低い圧力で貯蔵するための減圧貯蔵室を備える冷蔵庫であって、減圧貯蔵室の温度を設定温度に制御するための冷却装置と、冷却装置に制御信号を出力して、減圧貯蔵室の温度を設定温度に調節する制御装置と、を備え、制御装置は、予め設定される所定条件が満たされた場合に、減圧貯蔵室の設定温度を変更する。
【0007】
制御装置は、減圧貯蔵室の設定温度をチルド温度または冷蔵温度である第1温度に設定しており、所定条件が満たされた場合には、減圧貯蔵室の設定温度を第1温度よりも低い冷凍温度である第2温度に変更する。
【0008】
所定条件は、減圧貯蔵室に食品を貯蔵してから所定期間、該食品が使用されなかったこと、として設定できる。制御装置は、所定の装置からの情報により、減圧貯蔵室が所定期間使用されなかったかを判定し、減圧貯蔵室が所定期間使用されなかったと判定された場合は、減圧貯蔵室の設定温度を第1温度から第2温度に変更する。
【0009】
所定の装置としては、例えば、減圧貯蔵室の圧力を検出するための圧力検出部、減圧貯蔵室の開口部を開閉可能に施蓋する扉の開閉を検出するための開閉スイッチなどを使用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、減圧貯蔵室の設定温度を使用状況に応じて自動的に変更でき、使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施例に係る冷蔵庫の正面図。
【図2】冷蔵庫の縦断面図。
【図3】冷蔵庫本体の扉を外した状態の正面図。
【図4】急速冷凍室の減圧貯蔵室付近の縦断面図。
【図5】急速冷凍室の減圧貯蔵室付近の斜視図。
【図6】減圧貯蔵室の収納容器を左上方から見た斜視図。
【図7】減圧貯蔵室の補強ガラス板と環状パッキングを示す斜視図。
【図8】減圧貯蔵室のドアを背面側から見た斜視図。
【図9】減圧貯蔵室の断面斜視図。
【図10】減圧貯蔵室の収納容器を左上方から見た斜視図。
【図11】減圧貯蔵室の設定温度を自動的に変更する制御構造の説明図。
【図12】小松菜を従来の冷凍方法で冷凍した場合と真空で冷凍した場合とでビタミンCを測定した値を示すグラフ。
【図13】レモンをチルド温度と冷凍温度に保存し、3日後・10日後・2週間後に測定したビタミンC量を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、以下に詳述するように、冷蔵庫の使用状況(詳しくは、冷蔵庫内の減圧貯蔵室の使用状況)を判定し、使用状況に応じて減圧貯蔵室の設定温度を自動的に変更する。
【実施例1】
【0013】
まず、図1から図3を参照しながら冷蔵庫全体に関して説明する。図1は本実施形態の冷蔵庫の正面図、図2は図1の冷蔵庫の中央縦断面図、図3は図1の冷蔵庫本体の扉を外した状態の正面図である。
【0014】
冷蔵庫は、冷蔵庫本体1と、複数の扉6〜10とを備えて構成されている。冷蔵庫本体1は、鋼板製の外箱11と樹脂製の内箱12との間にウレタン発泡断熱材13及び真空断熱材(図示せず)を有して構成される。冷蔵庫は、上から冷蔵室2、冷凍室3、4、野菜室5の順で複数の貯蔵室を有している。換言すれば、最上段に冷蔵室2が、最下段に野菜室5が、それぞれ区画して配置されている。冷蔵室2と野菜室5との間には、これらの両室2、5と断熱的に仕切られた冷凍室3、4が配設されている。冷蔵室2及び野菜室5は冷蔵温度帯の貯蔵室であり、冷凍室3、4は、0度以下の冷凍温度帯(例えば、約−20度〜−18度の温度帯)の貯蔵室である。なお、冷凍室3は製氷室3aと急速冷凍室3bとに区画されており、急速冷凍室3b内に減圧貯蔵室24を備えている。これらの貯蔵室2〜5は仕切り壁34,35,36により区画されている。
【0015】
冷蔵庫本体1の前面には、貯蔵室2〜5の前面開口部を閉塞する扉6〜10が設けられている。冷蔵室扉6は、冷蔵室2の前面開口部を閉塞する扉である。製氷室扉7は、製氷室3aの前面開口部を閉塞する扉である。急速冷凍室扉8は、急速冷凍室3bの前面開口部を閉塞する扉である。冷凍室扉9は、冷凍室4の前面開口部を閉塞する扉である。野菜室扉10は、野菜室5の前面開口部を閉塞する扉である。冷蔵室扉6は、いわゆる観音開き式として知られる両開きの式の扉で構成される。製氷室3a、急速冷凍室3b、冷凍室4、野菜室5の各扉は、引き出し式の扉によって構成されており、引き出し式の扉とともに貯蔵室内の容器が引き出される。
【0016】
冷蔵庫本体1には、「冷却装置」としての冷凍サイクル180(図11参照)が設置されている。冷凍サイクル180は、例えば、圧縮機14、凝縮器(図示せず)、キャピラリチューブ(図示せず)及び蒸発器15、そして再び圧縮機14の順に接続することで、構成されている。圧縮機14及び凝縮器は、冷蔵庫本体1の背面下部に設けられた機械室に設置されている。蒸発器15は、冷凍室3、4の後方に設けられた冷却器室に設置されている。冷却器室における蒸発器15の上方には、送風ファン16が設置される。
【0017】
蒸発器15によって冷却された冷気は、送風ファン16によって冷蔵室2、製氷室3a、急速冷凍室3b、冷凍室4及び野菜室5の、各貯蔵室へと送られる。具体的には、送風ファン16によって送られる冷気は、開閉可能なダンパー装置を介して、その一部が冷蔵室2及び野菜室5の冷蔵温度帯の貯蔵室へと送られ、他の一部が製氷室3a、急速冷凍室3b及び冷凍室4の冷凍温度帯の貯蔵室へと送られる。つまり、開閉可能なダンパー装置は、冷却室からの冷気を、冷蔵温度帯の貯蔵室への冷蔵吐出口と、冷凍温度帯の貯蔵室への冷凍吐出口との、一方若しくは両方に選択可能に流通させる選択手段である。
【0018】
送風ファン16によって冷蔵室2、製氷室3a、急速冷凍室3b、冷凍室4及び野菜室5の各貯蔵室へと送られる冷気は、各貯蔵室を冷却した後、冷気戻り通路を通って冷却器室へと戻される。このように、本実施形態の冷蔵庫は冷気の循環構造を有しており、各貯蔵室2〜5を適切な温度に維持する。
【0019】
冷蔵室2内には、透明な板で構成される複数段の棚17〜20が取り外し可能に設置される。最下段の棚20は、内箱12の背面及び両側面に接するように設置され、その下方空間である最下段空間21を上方空間と区画している。最下段空間21には、チルド室2aが設けられている。また、各冷蔵室扉6の内側には、複数段の扉ポケット25〜27が設置されている。これらの扉ポケット25〜27は、冷蔵室扉6が閉じられた状態で冷蔵室2内に突出するように設けられている。
【0020】
図2を参照して、急速冷凍室3bにおける機器の配置を説明する。急速冷凍室3b内には、減圧貯蔵室24が配置されている。製氷室3aとの間に仕切りを設け、冷凍室4との間にも他の仕切りを設けて、独立の空間を形成している。急速冷凍室3bの背面に設けられたダンパーにより、温度を切り替えることができるようになっている。急速冷凍室3bには、引き出し式の扉がついているため、冷気が逃げにくい。従って、急速冷凍室3bを低い温度に維持することが容易となっている。
【0021】
ユーザは、急速冷凍室扉6を開くのみで、減圧貯蔵室24内の食品トレイ60(図4参照)を容易に引き出すことができる。食品トレイ60の底部には、蓄冷材80が設置されている。蓄冷材80は、減圧貯蔵室24内の温度(設定温度)よりも高い温度の食品が減圧貯蔵室24に貯蔵されたときに、その食品を速やかに設定温度まで冷却し、食品の鮮度を保つものである。
【0022】
図5に示すように、減圧貯蔵室24を減圧するための手段の一例である真空ポンプ29が、減圧貯蔵室24の側面後方に配置されている。真空ポンプ29は、減圧貯蔵室24の側面に設けられたポンプ接続部42i(図6参照)に導管29a(図5参照)を介して、容易に接続することができる。また、収納ケース23(図3参照)を取り出すことにより、真空ポンプ29を前方から簡単にメンテナンスできるようになっている。
【0023】
図5〜図7を参照しながら、減圧貯蔵室24の構成を説明する。図5は減圧貯蔵室24の斜視図、図6は減圧貯蔵室24の収納容器42を左上方から見た斜視図、図7は減圧貯蔵室24の補強ガラス板と環状パッキングを示す斜視図である。
【0024】
減圧貯蔵室24は、例えば、食品出し入れ用開口部42aを有する箱状の収納容器42と、食品出し入れ用開口部42aを開閉する減圧貯蔵室ドア50と、収納容器42内に出し入れされる食品トレイ60とを備えて構成されている。
【0025】
収納容器42において、減圧貯蔵室ドア50で食品出し入れ用開口部42aを閉じることにより、減圧貯蔵室ドア50と食品トレイ60とで囲まれた空間が形成される。この空間は、真空ポンプ29により減圧される低圧空間41として形成される。食品トレイ60は、減圧貯蔵室ドア50の背面側に取り付けられ、減圧貯蔵室ドア50の移動に伴って前後に移動可能である。
【0026】
収納容器42は、耐薬品性、耐衝撃性及び成形性に優れた樹脂製の外郭と、透明な強化ガラスで構成されたガラス板43(例えば強化ガラス)と、鋼板などの金属製の板状部材44と、樹脂製のドア係合部材48とを備えて構成されている。
【0027】
収納容器42の外郭は略直方体の基本形状を有しており、その前面に食品出し入れ用開口部42aが形成され、その上面にガラス板載置用開口部42bが形成されている。この外郭を構成する側壁42c、底壁42d及び背壁42eの外面には、外郭の強度アップを図るために、外郭補強リブ42fが突出して形成されている。
【0028】
図7に示すように、ガラス板43は、ガラス板載置用開口部42bに環状パッキング45を介して気密的に載置されており、収納容器42の上壁を形成している。ガラス板43は、収納容器42内の負圧力によって、ガラス板載置用開口部42bが内側に変形するのを防止するための強度を備える。また、透明なガラス板43を収納容器42の上面に設けたことにより、ユーザは、減圧貯蔵室ドア50を開けることなく、減圧貯蔵室24内を覗き見ることができる。
【0029】
板状部材44は、収納容器42内の負圧力によって、収納容器42の両側壁42c及び底壁42d及び背壁42eが変形するのを防止すべく、両側壁42c、底壁42d及び背壁42eに沿って延びるように、設置されている。
【0030】
収納容器42は、樹脂材料から食品出し入れ用開口部42aを有する箱状に形成されており、両側壁42cと底壁42d及び背壁42eには、金属製の板状部材44が設けられている。従って、収納容器42の全体を金属板で形成する場合に比較して、製造コストを低減できる。また、収納容器42を樹脂材料から形成するため、取り付け構造などを簡略化することができる。
【0031】
図5、図8、図9、図10を参照して、減圧貯蔵室ドア50を説明する。図8は、減圧貯蔵室ドア50の背面側の斜視図である。
【0032】
減圧貯蔵室ドア50は、例えば、ドア本体51と、ドアハンドル52と、密閉状態解除バルブ53と、ゴム製のインジケータ54と、マグネットガスケット55とを備えて構成されている。ドア本体51は、耐薬品性、耐衝撃性及び成形性に優れた樹脂材料から形成される。マグネットガスケット55は、収納容器42を気密にシールして密閉性を高めるためのものである。
【0033】
ドア係合部材48は、図9に示すように、食品出し入れ用開口部42aの上面に設置されている。ドア係合部材48は、食品出し入れ用開口部42aの上面に形成された凹部内に収納されるコ字状部48aと、コ字状部48aから前方に延びるドア係合爪部48bとが一体に成形されている。ドア係合爪部48bは、ドアハンドル52の幅と略同じ幅で設けられており、前後位置決め上端部51e(図8参照)に係合されている。
【0034】
減圧貯蔵室ドア50を開ける場合、ユーザがドアハンドル52を引くと、ヒンジ部(図示せず)を中心にドアハンドル52は上方に回転し、ドアハンドル52の上部がドア係合爪部48bを押し上げる。これによって、ドア係合爪部48bと前後位置決め上端部51eとの係合が外れる。ユーザがさらにドアハンドル52を引くと、減圧貯蔵室ドア50を開くことができる。
【0035】
減圧貯蔵室ドア50は、リンク機構70(図10参照)と接続されており、回動可能及び前後への移動可能となっている。ドアハンドル52には、密閉状態を解除するためのバルブ53が設けられている。このバルブ53は、指の力の弱いユーザでも容易にドア50を開閉できるように、収納容器42の密閉状態を解除し、収納容器42内の圧力を大気圧に近づけるためのものである。収納容器42内部の圧力は、真空ポンプ29の作動により、または、収容した食品及び空気が冷却されて収縮することにより、僅かに減圧する(例えば0.8気圧程度)。そのため、減圧状態の収納容器42のドア50を開けるには、力を要する。そこで、本実施例では、大気圧を収納容器42内に導入するためのバルブ53を設けている。
【0036】
ドア本体51は、収納容器42の開口部42aの外形とほぼ同じ外形を有しており、ハンドル凹部51a、ハンドルヒンジ受け51c、リンク機構接続部51d、前後位置決め上端部51e、前後位置決め下端部51fなどを備えている。
【0037】
減圧貯蔵室24の操作を説明する。図9は、減圧貯蔵室の断面斜視図である。ドア本体51を開く際には、ユーザは、図5の状態で、ハンドル凹部51a内に指を入れ、ドアハンドル52の下部を引く。これにより、密閉状態解除バルブ53が動作して減圧貯蔵室24の密閉状態が解除される。従って、ユーザが特に意識しなくても、ドア本体51の開放動作の最初に、減圧貯蔵室24の密閉状態を解除できる。
【0038】
さらに、ユーザがドアハンドル52を引くと、ドア本体51を介して上リンク辺70a(図5参照)が前方に引かれる。これにより、上リンク辺70aと後リンク辺70dとの接続部がリンク用上支持部42kの傾斜に沿って前方下方へ移動され、ドア本体51が傾斜された状態となる。これによって、図8のドア本体51の前後位置決め下端部51fが図4の仕切り壁34の前後位置決め溝34aから開放され、ドア本体51を前方に引き出すことが可能となる。
【0039】
さらに、ユーザがドアハンドル52を引くと、ドア本体51を介して上リンク辺70aが前方に引かれる。これにより、上リンク辺70aに近接して配置され、減圧貯蔵室24のドア本体51の開閉状態を検出するドアスイッチ130(図11参照)が、減圧貯蔵室24のドア本体51の開状態を検出することになる。
【0040】
さらに、ユーザがドアハンドル52を引くと、ドア本体51が傾斜した状態でリンク機構70及び食品トレイ60と共に前方に引き出される。これにより、食品トレイ60の上面が開放される。ユーザは、食品トレイ60に食品を出し入れすることができる。
【0041】
ユーザがドアハンドル52を引くだけで、上記の一連の動作が実行される。ユーザは、意識して特別に力をこめたりする必要はなく、使い勝手が良い。
【0042】
なお、ドア本体51を閉じる際には、図10の状態で、ユーザがドアハンドル52の上部を押すことにより、上述した開動作の逆の動作が行われる。ドアスイッチ130は、減圧貯蔵室24のドア本体51が閉じられたことを検出する。
【0043】
図5及び図10を参照しながら、リンク機構70を説明する。図10は減圧貯蔵室ドア50を前方に引き出した状態の斜視図である。リンク機構70は、隣接する急速冷凍室3bの側面と収納容器42の側面との間に配置されている。
【0044】
図11を参照して、減圧貯蔵室24の温度制御を説明する。冷蔵庫の作動を制御するための制御装置100は、例えば、マイクロコンピュータシステムとして構成することができる。
【0045】
制御装置100の入力側には、例えば、圧力スイッチ110、光センサ120、減圧貯蔵室ドアスイッチ130、操作スイッチ150、温度センサ160等が接続される。また、場合によっては、後述するHEMS(Home Energy Management System)170を制御装置100に接続してもよい。
【0046】
制御装置100の出力側には、例えば、真空ポンプ29と、冷凍サイクル180と、操作パネル(図示せず)等が接続される。
【0047】
制御装置100は、予め設定される所定条件が満たされた場合に、減圧貯蔵室24の設定温度を、第1温度から第2温度に自動的に変更する。第1温度とは、例えば、チルド温度または冷蔵温度である。第2温度とは、第1温度よりも低い値に設定される冷凍温度である。
【0048】
所定条件の一例としては、減圧貯蔵室24に食品が貯蔵されてから所定期間使用されなかったこと(例えば、減圧貯蔵室24に食品が投入されてから急速冷凍室扉6の開閉、減圧貯蔵室ドア60の開閉、食品の出し入れ等、使用者からの操作が一定時間無い状態)、を挙げることができる。減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかった場合、その中に貯蔵されている食品の品質が劣化し、食用に耐えなくなる可能性がある。
【0049】
そこで、本実施例では、減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかった場合、減圧貯蔵室24の設定温度を冷凍温度に低下させて、鮮度保持優先モード(チルド温度)から長期保存モード(冷凍温度)に移行する。
【0050】
減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかったか否かは、所定の装置からの情報によって知ることができる。一例として、制御装置100は、圧力スイッチ110の検出信号から、減圧貯蔵室24のドア50が開閉されたか否かを知ることができる。ドア50が開閉されると、減圧貯蔵室24内の圧力が変化し、その圧力変化は圧力スイッチ110によって検出されるためである。
【0051】
減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかったことを検出する他の例として、光センサ120の信号を用いることもできる。光センサ120は、例えば冷蔵庫の表面に設けることができ、冷蔵庫の周囲の光に応じた信号を出力する。制御装置100は、光センサ120からの信号に基づいて、ユーザが在宅か不在であるかを判定できる。冷蔵庫の設置されている場所の窓の位置等によっても相違するが、旅行または出張等でユーザが不在の場合、冷蔵庫の置かれている周囲の明るさは、ユーザが在宅の場合に比べて、変化に乏しい。従って、光センサ120から出力された信号の履歴データを管理したり、制御装置100に設けるカレンダタイマの出力を参照したりすれば、ユーザが在宅であるか否かを判定することができる。ユーザが所定期間不在であると判定した場合、制御装置100は、減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかったと推定して、減圧貯蔵室24の設定温度を冷凍温度に低下させる。
【0052】
減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかったことを検出するさらに別の例として、減圧貯蔵室ドア50の開閉を検出するドアスイッチ130の信号を用いることもできる。
【0053】
さらに、冷蔵庫の各扉6〜10の開閉を検出するための扉スイッチ140からの信号に基づいて、ユーザが在宅であるか否かを判定してもよい。光センサ120について述べたと同様に、ユーザが所定期間不在であると判定された場合、制御装置100は、減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかったと判断して、減圧貯蔵室24の設定温度を冷凍温度に低下させる。
【0054】
また、冷蔵庫に各種設定をするための操作スイッチ150の操作状態に基づいて、ユーザが在宅であるか否かを判定してもよい。この場合も前記同様に、制御装置100は、ユーザが所定期間不在であると判定すると、減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかったと判定する。
【0055】
さらに、HEMS170からの信号を受信することで、冷蔵庫の設置されている建物の消費電力の変化を知ることができる。ユーザが不在の場合、消費電力は少なく、昼夜を通してあまり変化しない。従って、制御装置100は、HEMS170からの信号に基づいて、ユーザが所定期間不在であるか否かを判定できる。
【0056】
なお、図示は省略しているが、上記の方法以外に、例えば、冷蔵庫の置かれている建物の玄関扉の開閉状態、その建物内の人体を検出するための人体検知センサからの信号を利用する構成でもよい。
【0057】
制御装置100の動作を説明する。制御装置100は、減圧貯蔵室24の設定温度をチルド温度または冷蔵温度にして温度を制御する(S10)。制御装置100は、所定の装置110〜170のいずれか一つまたは複数から情報(信号)を取得する(S11)。制御装置100は、取得した情報に基づいて、減圧貯蔵室24が所定期間使用されていないかを判定する(S12)。減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかったと判定された場合(S12:YES)、制御装置100は、減圧貯蔵室24の設定温度を冷凍温度に低下させる(S13)。
【0058】
このように構成される本実施例では、減圧貯蔵室24が所定期間使用されなかった場合、設定温度を自動的に低下させるため、減圧貯蔵室24内の食品の品質劣化を抑制することができ、長期保存を可能にする。従って、廃棄される食品の無駄を少なくでき、使い勝手も向上する。
【0059】
図12および図13を参照して、冷蔵庫の保存効果を説明する。最初に、図12を参照しながら真空冷凍の効果について説明する。図12は、小松菜を従来の冷凍方法で冷凍した場合と真空で冷凍した場合とで、ビタミンCを測定した値を示すグラフである。
【0060】
棒グラフ84は、急速冷凍温度にされた真空容器に小松菜を保存して冷凍させた場合のビタミンCを示す。棒グラフ85は、通常冷凍温度にされた真空容器に小松菜を保存して冷凍させた場合のビタミンCを示す。棒グラフ86は、急速冷凍モードで小松菜を冷凍した場合のビタミンCを示す。棒グラフ87は、通常冷凍モードで小松菜を冷凍した場合のビタミンC量を示す。なお、冷凍時は生のまま保存し、解凍は1分間沸騰水に入れて解凍を行った。
【0061】
図12に示すように、最もビタミンC残存量が多いのは真空容器を急速冷凍温度にした場合である(グラフ84)。ビタミンC残存量が次に多いのは、真空容器を通常冷凍温度にした場合である(グラフ85)。次にビタミンC残存量の多いのは、急速冷凍した場合である(グラフ86)。最もビタミンC残存量が少ないのは、通常冷凍の場合である(グラフ87)。
【0062】
このことから、大気圧で冷凍するよりも真空で冷凍を行った方が栄養成分の保持効果が高いということがわかる。これは、真空で冷凍することにより間接冷却となり、温度変動が少なくなるため、食品中の水分が抜けにくくなり、鮮度が保たれるからであると考えられる。また、冷凍温度では化学反応が遅くなるが、真空状態では酸素が少なくなっているため、食品の酸化反応を抑制し、鮮度を保持する効果が高まったことがわかる。
【0063】
さらに、通常冷凍よりも急速冷凍の方がビタミンC保持効果が高いことから、早く凍結させた方が栄養成分の保持効果が高いことがわかる。従って、真空容器内に熱伝導の高い部材や蓄冷材80を設けることで、間接冷却において冷却速度を向上し、最大氷結晶形成温度帯の−1度から−5度付近を早く通過することができる。これにより、氷結晶による細胞破壊を抑制でき、食品の酵素反応による鮮度劣化を低減できる。
【0064】
図13を参照して、冷凍温度帯とチルド温度帯の、保存期間と栄養成分残存量の関係について説明する。図13はレモンをチルド温度と冷凍温度に保存し、3日後、10日後、2週間後に測定したビタミンC量を示すグラフである。
【0065】
図13の折れ線グラフ89は、真空容器をチルド温度に保ち、レモンを保存したときのビタミンC量の時間変化を示す。折れ線グラフ89は、真空容器を冷凍温度帯(−18度)に保ち、レモンを保存したときのビタミンC量の時間変化を示す。なお、グラフの横軸0は、保存前の初期のレモンのビタミンC量を示している。
【0066】
図13からわかるように、3日後では、冷凍温度よりもチルド温度の方がビタミンC量が多い。しかし、10日後には、チルド温度でのビタミンC量と冷凍温度でのビタミンC量が同様となる。2週間後には、チルド温度で保存したものよりも冷凍温度で保存したものの方が、残存しているビタミンC量が多くなる。
【0067】
冷凍温度で保存すると、水分が凍結して食材の細胞を破壊するため、ビタミンC分解酵素とビタミンCとの反応が活発化するため、保存期間が短くても、ビタミンCが減少すると考えられる。一方、チルド温度では凍結を伴わないため、細胞膜によってビタミンCの分解反応は抑制される。さらに真空保存により酸化反応を抑制しているため、ビタミンCの分解速度が低下し、保存性が高くなる。
【0068】
しかし、保存温度が高いほど微生物の繁殖が進むため、日にちが経つほど、微生物によるビタミンCの分解反応が加速する。さらに、食品が持つ水分が蒸散することで食材が萎れてしまい、水溶性であるビタミンCを保持する力が弱まり、ビタミンC残存量が少なくなっていく。
【0069】
一方、冷凍の場合は、空間温度が低いため化学反応の速度が遅くなる。さらに、−12度以下ではほとんどの微生物の反応は停止し、微生物の繁殖が抑制される。従って、10日経過後ではチルド温度での保存と同様の結果となる。さらに保存日数が延びて2週間が経過すると、冷凍温度で保存した方が、チルド温度で保存した場合よりも、ビタミンCの損失が少なくなる。
【0070】
このことから、例えば、1週間以内の比較的短い保存日数の場合は、食品が凍結しない範囲で最も低い保存温度であるチルド温度帯に設定し、1週間以上の比較的長期間保存する場合には、食品を凍結させて保存する冷凍温度に設定ですることが望ましいことがわかった。
【0071】
したがって、所定の期間内の保存ではチルド温度に設定し、所定期間以上保存されている場合には冷凍温度に切り替えることで、食品の栄養成分保持効果を更に高めることができる。
【0072】
また、もしもユーザが保存中の食品の存在を忘れてしまった場合でも、自動的に温度を低くして長期保存モードに移行するため、食品の廃棄を少なくでき、より一層の節約が可能となる。
【0073】
そこで、本実施例では、上述のように、減圧貯蔵室24を急速冷凍室3bに設け、チルド温度と冷凍温度に切り替える機構を設け、チルド温度での保存に所定期間以上変化が無いと判定された場合には、チルド温度から冷凍温度に切り替える。
【符号の説明】
【0074】
1…冷蔵庫本体、2…冷蔵室、2a…チルド室、3…冷凍室、3a…製氷室、3b…急速冷凍室、4…冷凍室、5…野菜室、6…冷蔵室扉、7…製氷室扉、8…急速冷凍室扉、9…冷凍室扉、10…野菜室扉、11…外箱、12…内箱、13…発泡断熱材、14…圧縮機、15…蒸発器、16…送風ファン、17〜20…棚、21…最下段空間、22…製氷水タンク、23…収納ケース、24…減圧貯蔵室、25〜27…扉ポケット、28…製氷水ポンプ、29…真空ポンプ、100…制御装置、110…圧力スイッチ、120…光センサ、130…減圧貯蔵室ドアスイッチ、140…冷蔵室扉スイッチ、150…操作スイッチ、160…温度センサ、170…HEMS。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧よりも低い圧力で貯蔵するための減圧貯蔵室を備える冷蔵庫であって、
前記減圧貯蔵室の温度を設定温度に制御するための冷却装置と、
前記冷却装置に制御信号を出力して、前記減圧貯蔵室の温度を設定温度に調節する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、予め設定される所定条件が満たされた場合に、前記減圧貯蔵室の設定温度を変更する、
冷蔵庫。
【請求項2】
前記制御装置は、前記減圧貯蔵室の設定温度をチルド温度または冷蔵温度である第1温度に設定しており、前記所定条件が満たされた場合には、前記減圧貯蔵室の設定温度を前記第1温度よりも低い冷凍温度である第2温度に変更する、
請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記所定条件は、前記減圧貯蔵室に食品を貯蔵してから所定期間、該食品が使用されなかったことであり、
前記制御装置は、所定の装置からの情報により、前記減圧貯蔵室が前記所定期間使用されなかったかを判定し、前記減圧貯蔵室が前記所定期間使用されなかったと判定された場合は、前記減圧貯蔵室の設定温度を前記第1温度から前記第2温度に変更する、
請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記所定の装置は、前記減圧貯蔵室の圧力を検出するための圧力検出部であり、
前記制御装置は、前記圧力検出部により検出される圧力に基づいて、前記減圧貯蔵室が前記所定期間使用されなかったかを判定する、
請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記所定の装置は、前記減圧貯蔵室の開口部を開閉可能に施蓋する扉の開閉を検出するための開閉スイッチであり、
前記制御装置は、前記開閉スイッチからの開閉検出信号に基づいて、前記減圧貯蔵室が前記所定期間使用されなかったかを判定する、
請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記減圧貯蔵室には、蓄冷材、または、収容物の熱を減圧貯蔵室の壁部に伝導するための熱伝導部材を設けた、
請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項1】
大気圧よりも低い圧力で貯蔵するための減圧貯蔵室を備える冷蔵庫であって、
前記減圧貯蔵室の温度を設定温度に制御するための冷却装置と、
前記冷却装置に制御信号を出力して、前記減圧貯蔵室の温度を設定温度に調節する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、予め設定される所定条件が満たされた場合に、前記減圧貯蔵室の設定温度を変更する、
冷蔵庫。
【請求項2】
前記制御装置は、前記減圧貯蔵室の設定温度をチルド温度または冷蔵温度である第1温度に設定しており、前記所定条件が満たされた場合には、前記減圧貯蔵室の設定温度を前記第1温度よりも低い冷凍温度である第2温度に変更する、
請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記所定条件は、前記減圧貯蔵室に食品を貯蔵してから所定期間、該食品が使用されなかったことであり、
前記制御装置は、所定の装置からの情報により、前記減圧貯蔵室が前記所定期間使用されなかったかを判定し、前記減圧貯蔵室が前記所定期間使用されなかったと判定された場合は、前記減圧貯蔵室の設定温度を前記第1温度から前記第2温度に変更する、
請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記所定の装置は、前記減圧貯蔵室の圧力を検出するための圧力検出部であり、
前記制御装置は、前記圧力検出部により検出される圧力に基づいて、前記減圧貯蔵室が前記所定期間使用されなかったかを判定する、
請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記所定の装置は、前記減圧貯蔵室の開口部を開閉可能に施蓋する扉の開閉を検出するための開閉スイッチであり、
前記制御装置は、前記開閉スイッチからの開閉検出信号に基づいて、前記減圧貯蔵室が前記所定期間使用されなかったかを判定する、
請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記減圧貯蔵室には、蓄冷材、または、収容物の熱を減圧貯蔵室の壁部に伝導するための熱伝導部材を設けた、
請求項1に記載の冷蔵庫。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−104631(P2013−104631A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249779(P2011−249779)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】
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