説明

冷蔵庫

【課題】冷蔵室内に、冷蔵室より低温の貯蔵室を備えた冷蔵庫において、貯蔵室の近傍に結露が生じることを防止する。
【解決手段】天面に設けられた天面ダクトユニット80と、前面に設けられた前面扉64と、前面扉64の下方に設けられた前面壁91とを備えた貯蔵室63において、前面壁91に通気孔94を設けることで、天面ダクトユニット80の前方吹出口86から通気孔94へと流れる冷気の流れを生じさせ、前面扉64の内面付近に結露が生じることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、冷蔵室の内部に低温の貯蔵室を備えた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵室内の底部にチルド室を備えた冷蔵庫が知られている(例えば、特許文献1)。この種の冷蔵庫では、冷蔵室の天面に冷蔵室用ダクトが、冷蔵室の背面にチルド室用ダクトがそれぞれ設けられ、また、冷蔵室背面には冷却器およびファンが設けられている。そして、冷却器で冷却された空気(冷気)が、ファンにより冷蔵室用ダクト、チルド室用ダクトを介して冷蔵室、チルド室に送られることで、冷蔵室、チルド室ごとに所定の温度に冷却制御される。
【0003】
また、チルド室などの区画された貯蔵室の天面に、上方から冷気を送る天面ダクトを備えた冷蔵庫もある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−278959号公報
【特許文献2】特開昭63−83568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、魚介類や肉類を本来のおいしさや鮮度を保ちながら、比較的長い間保存したいという要望から、冷蔵室の内部に、チルド室より低温の温度帯の貯蔵室を設けることが要望されている。
【0006】
冷蔵室の温度は通常3℃±2℃であり、チルド室の温度は通常0℃±1℃であるのに対し、低温の貯蔵室の温度は、例えば−3℃±1.5℃である。このため、冷蔵室内に低温の貯蔵室を設けると、従来のチルド室を設けた場合より、冷蔵室との温度差が大きくなる。
【0007】
このため、冷蔵室内の空気と触れる低温の貯蔵室の外側が結露する恐れが生じていた。また、扉と貯蔵室との隙間から冷蔵室内の比較的暖かい空気が、低温の貯蔵室内に侵入し、低温の貯蔵室の扉付近に結露を生じる恐れもあった。
【0008】
そして、貯蔵室近傍に結露が生じることを、冷蔵庫の使用者が不快に感じるという課題があった。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、冷蔵室の内部に低温の貯蔵室を設けても、貯蔵室の外側や、扉付近に結露が生じることのない冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために、本発明の冷蔵庫は、冷蔵室と、前記冷蔵室の内部に設けられ前記冷蔵室より低温の貯蔵室と、前記貯蔵室の天面に設けられた天面ダクトと、前記貯蔵室の前面に設けられた扉と、前記扉の下方に設けられた前面壁とを備え、前記前面壁に通気孔を設けたものである。
【0011】
これによって、低温の貯蔵室の扉付近が結露するのを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の冷蔵庫は、貯蔵室の近傍に結露が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面図
【図2】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の側面断面図
【図3】本発明の実施の形態1における貯蔵室の側面断面図
【図4】本発明の実施の形態1における収納ケースの前面壁部分の斜視図
【図5】本発明の実施の形態2における貯蔵室の側面断面図
【図6】本発明の実施の形態3における貯蔵室の側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、冷蔵室と、前記冷蔵室の内部に設けられ前記冷蔵室より低温の貯蔵室と、前記貯蔵室の天面に設けられた天面ダクトと、前記貯蔵室の前面に設けられた扉と、前記扉の下方に設けられた前面壁とを備え、前記前面壁に通気孔を設けたために、天面ダクトから前面壁へと流れる空気の流れを生じさせ、その流れにより扉の内面付近に滞留する比較的暖かい空気を拡散させることができるために、扉の内面付近に結露が生じることがない。
【0015】
第2の発明は、冷蔵室と、前記冷蔵室の内部に設けられ前記冷蔵室より低温の貯蔵室と、前記貯蔵室の天面に設けられた天面ダクトと、前記貯蔵室の前面に設けられた扉と、前記扉の高さ方向中央より下方に通気孔を設けたことにより、天面ダクトから扉の下方へと流れる空気の流れを生じさせ、その流れにより扉の内面付近に滞留する比較的暖かい空気を拡散させることができるために、扉の内面付近に結露が生じることがない。
【0016】
第3の発明は、第1の発明の前面壁は前記貯蔵室に設けられた容器の取っ手部の背面であるために、使用者の手の触れる容器の取っ手部近傍が結露することを防止できるので、使用者に不快な思いをさせることがない。
【0017】
第4の発明は、第1または第2の発明において、天面ダクトの内部に設けられた断熱材と、前記天面ダクトの上面に設けられた天板との間に空気層を設けたことにより、断熱材に加えて空気層が、貯蔵室内部と天板との間を断熱するために、天面ダクトの内部に設けられた断熱材の厚みを薄くしても、天板の外面が結露することがない。
【0018】
第5の発明は、第4の発明の貯蔵室は、断熱材の後方に設けられ上方に突出する凸部と、前記天板の内面とを当接させることで前記空気層を形成するために、簡単な構成で空気層を形成することができ、本発明を容易に実現できる。
【0019】
以下、本発明の冷蔵庫の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面図である。図1において、冷蔵庫21は、観音開き式の扉を備える冷蔵庫であり、断熱箱体11内に複数に区画された室を備えている。
【0021】
具体的には、上部より冷蔵室22、製氷室23、製氷室23に併設され急速冷凍可能な急速冷凍室24、冷凍室25、および野菜室26を備えている。
【0022】
各室の開口部には、例えばウレタンのような発泡断熱材を発泡充填した断熱扉が設けられている。具体的には、冷蔵室22には断熱箱体の開口部を開閉可能に塞ぐ第1の扉31aおよび第2の扉31bが設けられている。
【0023】
また、製氷室23、急速冷凍室24、冷凍室25、および野菜室26は引き出し式の室であり、それぞれ引き出し式の扉32、扉33、扉34、および扉35が設けられている。
【0024】
第2の扉31bには、第2の扉31bの反ヒンジ側、すなわち、開放端側の外面の端辺に沿って扉化粧板36が取り付けられている。扉化粧板36には裏側から操作表示手段37が取り付けられており、その取り付け位置は、一般的な使用者や作業者の目の高さ程度の高さ位置である。
【0025】
図2は、冷蔵庫21の側面断面図である。図2に示すように、断熱箱体11の天面部は冷蔵庫21の背面方向に向かって階段状に凹みを設けた形状であり、この階段状の凹部に機械室を形成して圧縮機12、水分除去を行うドライヤ(図示せず)等の冷凍サイクルの構成部品が収容されている。すなわち、圧縮機12を配設する機械室は、冷蔵室22内の最上部の後方領域に食い込んで形成されることになる。手が届きにくくデッドスペースとなっていた冷蔵室22の最上部の後方領域に機械室を設けて圧縮機12を配置することにより、冷凍室25や野菜室26の容量を拡大し、収納性や使い勝手を大きく改善することができる。
【0026】
冷蔵室22の内部には、冷蔵室22の側面に設けられた凸部(図示せず)に支持される複数の棚61が設けられている。また、天板62で区画された貯蔵室63が、冷蔵室22の底部に設けられている。貯蔵室63の前面には、前面に第1の扉31a、第2の扉31bとは別に専用の前面扉64を備えている。前面扉64と天板62により、貯蔵室63は、冷蔵室22内の温度より低温の状態を、効率よく維持することができる。
【0027】
冷蔵庫21の背面には、冷気を生成する冷却室71、各室への冷気の搬送風路72、冷蔵室22と搬送風路72を断熱区画するための背面パネル73が設けられている。すなわち、搬送風路72は、断熱箱体11の内箱11aと背面パネル73との間に形成されている。冷却室71は、冷凍室25と野菜室26の背面に設けられており、内部に、冷却器74を備えている。
【0028】
冷却器74の上部空間には冷却器74で冷却した冷気を強制対流させる冷却ファン75が配置され、冷却器74の下部空間には冷却時に冷却器74やその周辺に付着する霜や氷を除霜するためのガラス管製のラジアントヒータ76が設けられ、さらにその下部には除霜時に生じる除霜水を受けるためのドレンパン77、その最深部から庫外に貫通したドレンチューブ78が構成され、その下流側の庫外に蒸発皿79が構成されている。
【0029】
搬送風路72を形成する背面パネル73は、冷蔵室22側に配置された樹脂製のカバー(図示せず)と、冷蔵庫21の背面側に配置され搬送風路72を形成する断熱部材(図示せず)とから形成されている。そして、背面パネル73には、冷蔵室22内に開口し、冷却室71内で生成された冷気を冷蔵室22内に吹き出す冷蔵室用吹出口(図示せず)と、貯蔵室63内に連通し、冷却室71内で生成された冷気を貯蔵室63内に供給する貯蔵室用吹出口(図示せず)とがそれぞれ設けられている。
【0030】
搬送風路72の下部には、冷蔵室用吹出口へと流れる冷気の量と、貯蔵室用吹出口へと流れる冷気の量を調整するツインダンパ(図示せず)が設けられている。このツインダン
パにより、冷蔵室22と貯蔵室63とに流れる冷気の量を調整することで、冷蔵室22内、貯蔵室63内の温度を個別に調整することができる。
【0031】
冷蔵室22は冷蔵保存のために凍らない温度を下限に通常1℃〜5℃とし、野菜室26は冷蔵室22と同等もしくは若干高い温度設定の2℃〜7℃としている。冷凍室25はマイナス温度帯に設定されており、冷凍保存のために通常−22℃〜−15℃で設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、例えば−30℃や−25℃の低温で設定されることもある。貯蔵室63は、いわゆるパーシャル室として、冷蔵室22より低い温度設定の−4.5℃〜−1.5℃としている。製氷室23は、冷蔵室22内の貯水タンク(図示せず)から送られた水で室内上部に設けられた自動製氷機(図示せず)で氷を作り、室内下部に配置した貯氷容器(図示せず)に貯蔵する。
【0032】
貯蔵室63の構成について、図3を用いてさらに説明する。図3は、本実施の形態1における貯蔵室の側面断面図である。図3に示すように、天板62の下側には、内部に天面風路81を備えた天面ダクトユニット80が設けられている。天面ダクトユニット80は、主に、貯蔵室63の庫内側に位置する樹脂製のダクトカバー82、ダクトカバー82の内面に接して設けられた下部断熱部材83、下部断熱部材83の上方に配置された上部断熱部材84とから構成されている。
【0033】
天板62は、透明や半透明のガラス製、または、樹脂製である。天板62の周囲には、樹脂製の支持枠89が設けられている。ダクトカバー82は、樹脂性であり、支持枠89に固定されている。上部断熱部材84、下部断熱部材83は、発泡ポリスチレンに代表される発泡樹脂などの断熱材を成形したものであり、ダクトカバー82により、天板62の下側に固定されている。
【0034】
天面風路81は、上部断熱部材84と下部断熱部材83とにより、上部断熱部材84と下部断熱部材83との間に形成されている。さらに、天面風路81は、下部断熱部材83に設けられた下方吹出口85、上部断熱部材84と下部断熱部材83との間に設けられた前方吹出口86とそれぞれ連通している。また、ダクトカバー82の下方吹出口85と前方吹出口86のそれぞれに対応する箇所には、スリットが設けられている。
【0035】
また、天面風路81は、貯蔵室63の背面側で、背面パネル73に設けられた貯蔵室用吹出口87を介して、搬送風路72と連通している。天面ダクトユニット80の背面の貯蔵室用吹出口87に対応する箇所の周囲には、貯蔵室用吹出口87と天面風路81との接続部からの冷気漏れを防止するためにシール部材(図示せず)が設けられている。
【0036】
上部断熱部材84の後方側(貯蔵室用吹出口87との接続側)の上面には、上方に突出する凸部84aが設けられている。凸部84aは、上部断熱部材84の左右方向の全幅に亘ってリブ状に設けられている。凸部84aが天板62の下側(内面)と当接することで、天板62と上部断熱部材84との間に空気層88が形成される。そして、空気層88は冷蔵庫21の背面側ほど、厚みが厚くなるように形成される。
【0037】
貯蔵室用吹出口87の上下方向の中心は、天面風路81の上下方向の中心より下方に設けられている。このため、天面風路81の貯蔵室用吹出口87との接続側には、天面風路傾斜部81aが設けられている。
【0038】
貯蔵室63の底部側は、上方が開口した収納ケース65により形成されている。収納ケース65は、冷蔵室22を区画する断熱仕切体の上面に、リブ51を介して配置されており、前後に引出すことができる。リブ51は前後に突起部51aを備えた前後方向に長い凸部であり、冷蔵室22を区画する断熱仕切体の上面の左右に設けられている。
【0039】
収納ケース65の前面側の壁面である前面壁91は、使用者が収納ケース65への食品の出し入れが容易なように、背面壁92や側面壁(図示せず)より高さが低くなっている。そして、前面壁91の上端には、上端から前方に水平に延長され、前面壁91の上方を覆うように垂下した取っ手部93が設けられている。取っ手部93の背面側に位置する前面壁91には、通気孔94が設けられている。
【0040】
背面壁92は、後方側に行くほど収納ケース65の開口部が大きくなるように傾斜している。収納ケース65の底面は、凹凸形状となっている。
【0041】
天板62の前面の支持枠89の下面には、左右に、前面扉64を開閉可能に支持する支持穴(図示せず)が設けられている。この支持穴が前面扉64の上端に設けられた支持軸64aをそれぞれ支持することで、前面扉64を前方から上方へと回転させて、開閉できる。なお、前面扉64は、収納ケース65方向に突出した突起部(図示せず)を備えており、使用者が収納ケース65を前方に引き出すと、収納ケース65の一部が前面扉64の突起部を押し上げて、前面扉64を開くように構成されている。
【0042】
図4は、本実施の形態における収納ケース65の前面壁91部分の斜視図である。図4に示すように、通気孔94は横長のスリット形状の穴が複数、横一列に、収納ケース65の全幅に亘って、設けられている。また、通気孔94は、使用者が冷蔵庫21の正面から見ても見えないように、取っ手部93の垂下部分の背面に設けられている。
【0043】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
【0044】
まず、冷凍サイクルの動作について説明する。庫内の設定された温度に応じて制御基板(図示せず)からの信号により冷凍サイクルが動作して冷却運転が行われる。圧縮機12の動作により吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器(図示せず)である程度凝縮液化し、さらに冷蔵庫21本体の側面や背面、また冷蔵庫21本体の前面間口部に配設された冷媒配管(図示せず)などを経由し冷蔵庫21本体の結露を防止しながら凝縮液化し、キャピラリーチューブ(図示せず)に至る。その後、キャピラリーチューブでは圧縮機12への吸入管(図示せず)と熱交換しながら減圧されて低温低圧の液冷媒となって冷却器74に至る。ここで、低温低圧の液冷媒は、冷却ファン75の動作により空気と熱交換され、冷却器74内の冷媒は蒸発気化する。
【0045】
そして、冷却室71内で各室を冷却するための冷気が生成され、生成された冷気は各室に送られる。例えば、ツインダンパを介して、搬送風路72を通って冷蔵室22や、貯蔵室63に送られる。これにより、各室ごとに所定の温度に冷却制御される。
【0046】
搬送風路72を通り貯蔵室用吹出口87から天面ダクトユニット80に流入した冷気は、天面風路傾斜部81aにより、貯蔵室用吹出口87から、天面側に上昇するように流れる。そして、天面風路81内を前方に流れ、複数の下方吹出口85、前方吹出口86から貯蔵室63に流入する。そして、この冷気は、貯蔵室63内を冷却し、収納ケース65の底面から傾斜して設けられた背面壁92を上昇した後、下方に流れる。その後、貯蔵室63を冷却した冷気は、冷蔵庫21の背面側に設けられた戻り風路(図示せず)を通り、冷却室71へと再び戻る。
【0047】
また、前方吹出口86から吹き出された冷気の一部は、通気孔94に向かって、前面扉64の内壁に沿って流れる。そして、通気孔94を通って貯蔵室63の外へ流れた後、取っ手部93により流れの方向を下向きにされ、収納ケース65とリブ51との間の隙間を通って、冷蔵庫21の背面側の戻り風路へと流れる。
【0048】
以上のように構成された冷蔵庫において、貯蔵室63は低温の貯蔵室であるため、周囲の冷蔵室22内より温度が低く、貯蔵室63の周囲に結露しやすい。特に、貯蔵室63が、マイナス温度帯の低温室であるパーシャル室である場合には、貯蔵室63の冷蔵室22との温度差が大きくなるため、貯蔵室63の周囲に結露しやすくなる。
【0049】
より詳細には、天板62の下面には、貯蔵室63を冷却する前の冷気が流れる天面ダクトユニット80が設けられているため、天板62の上面と下面とで温度差が生じる。このため、冷蔵室22内の比較的暖かい空気と触れる天板62の上面に結露が生じやすい。特に、天板62の後方側は、貯蔵室用吹出口87に近いためより、結露しやすい。
【0050】
しかし、本実施の形態では、凸部84aにより、空気層88が設けられているため、上部断熱部材84に加えて空気層88が、天面風路81と天板62との間を断熱するために、天板62の上面が結露することがない。あるいは、上部断熱部材84の厚みを薄くすることができる。
【0051】
さらに、凸部84aは、後方側にのみ設けられているので、空気層88は冷蔵庫21の背面側ほど、厚みが厚くなる。このため、簡単な構成で容易に、結露しやすい天板62後方の断熱性を向上させることができ、結露を防止できる。
【0052】
さらに、凸部84aを設けることで、上部断熱部材84を下側に押し付ける力が生じるため、上部断熱部材84および下部断熱部材83を、支持枠89に固定されたダクトカバー82に押し付けて、密着性を向上させることができる。このため、搬送風路72からの冷気が漏れやすい天面ダクトユニット80の後方側の冷気漏れを防止することができ、この付近の結露を防止することもできる。
【0053】
また、前面扉64の近傍は、冷蔵室22内の比較的暖かい空気が前面扉64の周囲の隙間より侵入し、貯蔵室63内の比較的冷たい空気と触れるために、結露しやすい。しかし、本実施の形態では、天面ダクトユニット80の前方吹出口86の下方に位置する前面壁91に通気孔94を設けているため、前方吹出口86から通気孔94へと流れる冷気の流れを作り出すことができる。これにより、前面扉64の内面付近に滞留する比較的暖かい空気を拡散させ、前面扉64の内面付近に結露が生じることを防止できる。
【0054】
また、通気孔94を取っ手部93の背面に設けたことで、使用者の手の触れる取っ手部93の内側にも、冷気の流れを作り出し、結露することを防止できる。これにより、使用者が取っ手部93の内側に手を掛けた際にも、不快な思いをさせることがない。さらに、取っ手部93は略垂直に取り付けられているため、通気孔94から吹き出した冷気の流れを下方に向けることができ、スムーズに戻り通路に冷気を戻すことができるために、貯蔵室63の冷却効率を低下させることもない。また、正面から見ても、通気孔94は見えないので、美観もよい。
【0055】
また、収納ケース65の底面は、凹凸形状となっているので、収納ケース65内の収納物が転がることを防止するとともに、底面に結露が生じる難くなる。
【0056】
加えて、貯蔵室63の天面には、天面ダクトユニット80が設けられていることにより、搬送風路72から冷気が、貯蔵室63の天面前方や天面中央から流入するので、貯蔵室63内の温度分布が不均一となることがない。また、貯蔵室63内を循環した冷気が、収納ケース65の底面から傾斜した背面壁92を上昇した後、下方に流れることで、貯蔵室63内に多量の食品が収納された場合にも、温度分布が不均一となることがないため、貯蔵室63内の収納性の向上と温度分布の均一化が両立できる。
【0057】
なお、本実施の形態では、凸部84aを上部断熱部材84の後方側にのみ設けるものとして説明したが、前方側にも設けて空気層88を天板62の下面全面に亘って設けても良い。この際には、後方側の凸部の高さを前方側の凸部の高さより高くすることで、容易に、前方側より後方側の空気層の厚さを厚くすることも可能である。
【0058】
また、貯蔵室63は、マイナス温度帯のパーシャル室とプラス温度帯のチルド室とが切換可能な切換室であってもよい。この場合には、保存する食品に適した温度帯を選択することができ、使用者の使い勝手が向上する。
【0059】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の要部側面図である。本実施の形態においては、第1の実施の形態と異なる点のみを説明し、同様の構成、動作、作用については、説明を省略する。
【0060】
図5に示すように、本発明の実施の形態では、貯蔵室63は、収納ケース65を備えておらず、冷蔵室22を区画する断熱仕切体の上面に前面壁101が設けられている。そして、通気孔94は、前面壁101の高さ方向中央より上方に設けられている。
【0061】
本実施の形態では、前方吹出口86の下方に位置する前面壁101に通気孔94を設けているため、前方吹出口86から通気孔94へと流れる冷気の流れを作り出すことができる。これにより、前面扉64の内面付近に滞留する比較的暖かい空気を拡散させて、前面扉64の内面付近に結露が生じることを防止できる。なお、前面壁91の上端には、上端から前方に水平に延長され、前面壁91の上方を覆うように垂下した折り返し部が設けられ、その折り返し部の背面側に位置する前面壁101に、通気孔94が設けられていてもよい。この場合には、正面から見ても、通気孔94は見えないので、美観が向上する。
【0062】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫の要部側面図である。本実施の形態においては、第1の実施の形態と異なる点のみを説明し、同様の構成、動作、作用については、説明を省略する。
【0063】
図6に示すように、本発明の実施の形態では、前面扉104は、冷蔵室22を区画する断熱仕切体の上面まで達する長さを備えており、前面壁91が設けられていない。そして、通気孔94は、前面扉104の高さ方向中央より下方に設けられている。
【0064】
本実施の形態では、前方吹出口86の下方に位置する前面扉104に通気孔94を設けているため、前方吹出口86から通気孔94へと流れる冷気の流れを作り出すことができる。これにより、前面扉104の内面付近に滞留する比較的暖かい空気を拡散させて、前面扉104の内面付近に結露が生じることを防止できる。なお、前面扉104の下端から前方に水平に延長され上方に折り曲げられた取っ手部、あるいは、前面扉104の下方から前方に水平に延長され下方に折り曲げられた取っ手部が設けられており、その取っ手部の背面側に位置する前面扉104に通気孔94が設けられていることが、使用者が取っ手部の内側に手を掛けた際にも、不快な思いをさせないこと、また、正面から見ても、通気孔94は見えないので、美観が向上することから望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明にかかる冷蔵庫は、冷蔵室の内部に低温の貯蔵室を設けても、低温の貯蔵室の近傍に結露することがなく、家庭用および業務用など様々な種類および大きさの冷蔵庫等に適用できる。
【符号の説明】
【0066】
11 断熱箱体
11a 内箱
12 圧縮機
21 冷蔵庫
22 冷蔵室
23 製氷室
24 急速冷凍室
25 冷凍室
26 野菜室
31a 第1の扉
31b 第2の扉
32、33、34、35 扉
36 扉化粧板
37 操作表示手段
51 リブ
51a 突起部
61 棚
62 天板
63 貯蔵室
64、104 前面扉
64a 支持軸
65 収納ケース
71 冷却室
72 搬送風路
73 背面パネル
74 冷却器
75 冷却ファン
76 ラジアントヒータ
77 ドレンパン
78 ドレンチューブ
79 蒸発皿
80 天面ダクトユニット
81 天面風路
81a 天面風路傾斜部
82 ダクトカバー
83 下部断熱部材
84 上部断熱部材
84a 凸部
85 下方吹出口
86 前方吹出口
87 貯蔵室用吹出口
88 空気層
89 支持枠
91、101 前面壁
92 背面壁
93 取っ手部
94 通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵室と、前記冷蔵室の内部に設けられ前記冷蔵室より低温の貯蔵室と、前記貯蔵室の天面に設けられた天面ダクトと、前記貯蔵室の前面に設けられた扉と、前記扉の下方に設けられた前面壁とを備え、前記前面壁に通気孔を設けたことを特徴とした冷蔵庫。
【請求項2】
冷蔵室と、前記冷蔵室の内部に設けられ前記冷蔵室より低温の貯蔵室と、前記貯蔵室の天面に設けられた天面ダクトと、前記貯蔵室の前面に設けられた扉と、前記扉の高さ方向中央より下方に通気孔を設けたことを特徴とした冷蔵庫。
【請求項3】
前記前面壁は前記貯蔵室に設けられた容器の取っ手部の背面であることを特徴とした請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記天面ダクトの内部に設けられた断熱材と、前記天面ダクトの上面に設けられた天板との間に空気層を設けたことを特徴とした請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記断熱材の後方に設けられ上方に突出する凸部と、前記天板の内面とを当接させることで空気層を形成することを特徴とした請求項4に記載の冷蔵庫。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−83364(P2013−83364A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221620(P2011−221620)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】