説明

冷陰極、冷陰極アレイおよび電界放出型ディスプレイ

【課題】電子ビーム径を小さくできるとともに、電子放出効率を向上することのできる冷陰極、冷陰極アレイおよび電界放出型ディスプレイを提供する。
【解決手段】冷陰極10は、絶縁基板11上に配置されるカソード電極12と、カソード電極12を露出する開口を有するゲート電極14と、フォーカス電極16と、カソード電極12上に植毛されるCNT17とを含み、ゲート電極14の開口部のカソード電極12の露出部上への投影領域に植毛された1本のCNT17が放出する電子によりアノード電極19に誘起されるアノード電流が最大値となる1本のCNT17の植毛位置が描く第1の曲線と、アノード電流が最大値の10%となるアノード電流を誘起する1本のCNT17の植毛位置が描く第2の曲線とに挟まれた閉領域のうち、見込み角度が180度以下の部分領域RにCNT17が植毛される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極、冷陰極アレイおよび電界放出型ディスプレイに係り、特に、電子ビーム径を小さくするとともに、電子放出効率を高くすることの可能な冷陰極、ならびにこれを用いた冷陰極アレイおよび電界放出型ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
電界放出型ディスプレイ(FED:Field Emission Display)は、CRTあるいは液晶表示装置に代わる表示装置として実用化が進められているが、表示を高精細とすること、適切な輝度を確保すること、電子放出効率を高めることが要求される。
【0003】
FEDに使用する冷陰極として、既に種々の形式が提案されているが、電子放出効率の観点から、カソード電極上にカーボンナノチューブ(以下CNTと記す)などの炭素系材料を植毛した冷陰極が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図13は、特許文献1に開示されている冷陰極を使用したFEDの部分断面図(a)および冷陰極の上面図(b)である。
【0005】
そして、冷陰極は、基板301と、基板301上に設置されたカソード電極302と、カソード電極302上に植毛されたCNT303と、基板301上に絶縁体304を介して設置されるゲート電極305とを含む。
【0006】
カソード電極302とゲート電極305との間に印加された電圧によりCNT303の先端に強電界が形成され、CNT303の先端から電子がビーム状に放射される。
【0007】
この電子ビームは、冷陰極から適宜の距離を隔てて設置された前面基板306の裏面に形成されたアノード電極307に到達し、アノード電極307に塗布された蛍光塗料308を発光させる。
【0008】
また、CNTから放出された電子が水平方向の速度成分を有すると、電子ビームが発散して解像度の低下およびクロストークの発生の原因となるため、ゲート電極の上部にフォーカス電極を設置した冷陰極も既に提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−243607公報([0040]、図7)
【非特許文献1】Y. W. Jin, et al, "A Study on the Driving Property of Double Gated Triode-Type Field Emission Display using Carbon Nanotube Emitter" Proc. Euro Display '02, pp.229-232, 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された冷陰極にあっては、フォーカス電極を有していないので電子ビーム径が大きくなるだけでなく、CNTはカソード電極の中心部だけに植毛されているので放出する電流が少ないという課題があった。
【0010】
また、非特許文献1に開示された冷陰極にあっては、フォーカス電極により電子ビームを集束させることは可能であるものの、集束を強化すると電子放出効率が低下するという課題があった。
【0011】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであって、電子ビーム径を小さくできるとともに、電子放出効率を向上することの可能な冷陰極、冷陰極アレイおよび電界放出型ディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[第1の発明]
本発明の冷陰極は、絶縁基板上に配置されるカソード電極と、前記カソード電極上に配置され、前記カソード電極を露出する開口を有する第1の絶縁材と、前記第1の絶縁材上に配置され、前記カソード電極を露出する開口を有するゲート電極と、前記ゲート電極上に配置され、前記カソード電極を露出する開口を有する第2の絶縁材と、前記第2の絶縁材上に配置され、前記カソード電極を露出する開口を有するフォーカス電極と、前記カソード電極上に植毛される炭素系材料とを含む冷陰極であって、前記炭素系材料が、中央から偏倚して位置する前記カソード電極上の部分領域に植毛されることを特徴とする。
【0013】
この構成により、電子ビーム径を小さくできるとともに、電子放出効率を向上することができることとなる。
【0014】
[第2の発明]
本発明の冷陰極は、前記部分領域が、前記ゲート電極の開口部の前記カソード電極の露出部上への投影領域に植毛された1本の炭素系材料が放出する電子により前記アノード電極に誘起されるアノード電流が最大値となる1本の炭素系材料の植毛位置が描く第1の曲線と、前記アノード電流が前記最大値の1.0以下の予め定められた所定数倍となるアノード電流を誘起する1本の炭素系材料の植毛位置が描く第2の曲線とに挟まれた閉領域の一部領域であってもよい。
【0015】
[第3の発明]
本発明の冷陰極は、前記カソード電極を露出する前記ゲート電極の開口が円であり、前記部分領域が、前記ゲート電極の開口の前記カソード電極上への投影円の中心が前記閉領域を見込む角度が180度以下となる領域であってもよい。
【0016】
[第4の発明]
本発明の冷陰極は、前記部分領域を含む領域に前記炭素系材料が植毛されていてもよい。
【0017】
[第5の発明]
本発明の冷陰極アレイは、上記いずれかの冷陰極を複数個配列した冷陰極アレイであって、各冷陰極の前記炭素系材料の植毛領域を同一方向に向けて配置した構成を有している。
【0018】
この構成により、複数の冷陰極を1つのサブピクセルに適用する際に、サブピクセルのドット径が大きくなることを回避することができることとなる。
【0019】
[第6の発明]
本発明の電界放出型ディスプレイは、上記の冷陰極アレイをサブピクセルとして使用した構成を有している。
【0020】
この構成により、電界放出型ディスプレイの輝度、解像度、および発光効率を向上できることとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、カソード電極の一部の領域に炭素系材料を植毛することにより、電子ビーム径を小さくできるとともに、電子放出効率を向上することの可能な冷陰極、冷陰極アレイおよび電界放出型ディスプレイを提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る冷陰極、冷陰極アレイおよび電界放出型ディスプレイの実施形態について、図面を用いて説明する。
【0023】
なお、本明細書において、電子ビーム径とは、1つの冷陰極から放出された電子のアノード電極への到達位置の最大間隔を意味するものとする。
【0024】
本発明の実施形態に係る冷陰極10は、図1のX−X断面図(a)および上面図(b)に示すように、絶縁基板11上に配置されるカソード電極12と、カソード電極12上に配置されカソード電極12を露出する開口を有する第1の絶縁材13と、第1の絶縁材13上に配置されカソード電極12を露出する開口を有するゲート電極14と、ゲート電極14上に配置されカソード電極12を露出する開口を有する第2の絶縁材15と、第2の絶縁材15上に配置されカソード電極12を露出する開口を有するフォーカス電極16と、カソード電極12上に植毛される炭素系材料であるCNT17とを含む。
【0025】
なお、冷陰極10と所定距離を隔てて配置されるアノード電極19は、前面基板18下面に成膜され、アノード電極19の下面には蛍光塗料20が塗布されている。
【0026】
そして、CNT17は、カソード電極12の中心から偏倚したカソード電極12の部分領域Rに植毛される。
【0027】
また、部分領域Rは、ゲート電極14の開口部のカソード電極12の露出部上への投影領域に植毛された1本のCNT17が放出する電子によりアノード電極19に誘起されるアノード電流が最大値となる1本のCNT17の植毛位置が描く第1の曲線と、アノード電流が最大値の1.0以下の予め定められた所定数倍となるアノード電流を誘起する1本のCNT17の植毛位置が描く第2の曲線とに挟まれた閉領域の部分領域であることが望ましい。
【0028】
そして、カソード電極12を露出するゲート電極14の開口は円であり、部分領域Rは、ゲート電極14の開口のカソード電極12上への投影円の中心が閉領域を見込む角度が180度以下となる領域である。
【0029】
このとき、図1(b)に示すように、部分領域Rは、ゲート電極14の開口のカソード電極12上への投影円の中心Oが見込む角度θが180度以下である投影円の一部である円弧a、円弧aからゲート電極14下面とカソード電極12上面間の距離hの1.0以下の予め定められた所定数α倍である距離(α・h)だけ投影円の中心側に位置する内側円弧b、円弧aの一方の端点A1と投影円の中心Oとを結ぶ第1の線分d、および円弧aの他方の端点A2と中心Oとを結ぶ第2の線分eで囲まれる領域に相当する。
【0030】
カソード電極12とゲート電極14との間に電圧を印加すると、CNT17の先端から電子が放射されるが、CNT17の先端に印加される電界は投影円中心では弱く、周辺に向かうほど強くなる。
【0031】
図2は投影円内に1つのCNT17を植毛した場合に、冷陰極10が放射するエミッション電流ieおよびこのエミッション電流ieによりアノード電極19に誘起されるアノード電流iaと投影円の中心Oからの距離rの関係を示すグラフであって、横軸は投影円の中心Oからの距離rを、縦軸はエミッション電流ieおよびアノード電流iaを表す。
【0032】
なお、測定条件は以下の通りである。
ゲート電極電位=0ボルト、カソード電極電位=−50ボルト
フォーカス電極電位=−50ボルト、アノード電極電位=1000ボルト
ゲート電極とアノード電極との距離=1ミリメートル
ゲート電極とカソード電極との距離=3マイクロメートル
ゲート電極とフォーカス電極との距離=1.2マイクロメートル
ゲート電極の開口半径=2.5マイクロメートル
フォーカス電極の開口半径=3.0マイクロメートル
【0033】
図2のグラフに示すように、投影円の中心Oからの距離r=2.2マイクロメートルに1つのCNT17を植毛したときのアノード電流iaは0.04ナノアンペア、r=2.5マイクロメートルに1つのCNT17を植毛したときのアノード電流iaは0.4ナノアンペアとなる。
【0034】
以上から、カソード電極12の露出部上へのゲート電極14の開口部の投影線pと、投影線pからゲート電極14下面とカソード電極12上面間の距離h(=3マイクロメートル)の0.1倍である距離0.3マイクロメートルだけ中心O側に隔たった線とで囲まれる円環領域にCNT17を植毛すれば十分なアノード電流が得られることが判る。
【0035】
図3は、半径2.5マイクロメートルの外周円と半径2.2マイクロメートルの内周円との間の円環領域にCNT17を植毛した冷陰極10の電子ビームの軌跡図であって、(a)はフォーカス電圧が高い(−45ボルト)場合を、(b)はフォーカス電圧が低い(−50ボルト)場合を示す。
【0036】
図3から判るように、フォーカス電圧が高い(−45ボルト)場合は、低い(−50ボルト)場合に比べて、アノード電極19における電子ビーム径が大きい。
【0037】
図4は、フォーカス電圧と電子ビーム径の関係を示すグラフであって、横軸はフォーカス電圧を、縦軸は電子ビーム径を表す。図4から、フォーカス電圧が高くなるに従ってアノード電極19における電子ビーム径は大きくなることが判る。
【0038】
また、図5は、フォーカス電圧とエミッション電流、アノード電流および電子放出効率ηとの関係を示すグラフであって、横軸はフォーカス電圧を、左側縦軸は電流を、右側縦軸は電子放出効率ηを表す。ここでは、エミッション電流およびアノード電流は、円環領域におけるCNT17の1個当たりの平均電流値に換算したものとなっている。
【0039】
表示を高精細化するためには電子ビーム径は小さい方が好ましいが、図5に示すように、フォーカス電圧を過度に低くするとアノード電流は急激に減少し、電子放出効率ηも急激に低減する。
【0040】
ハイビジョン映像を対角25インチの表示装置に表示する場合、もしくはスーパーハイビジョン映像を対角50インチの表示装置に表示する場合には、電子ビーム径を射程1ミリメートルで略100マイクロメートル以下とすることが好ましい。
【0041】
電子ビーム径を100マイクロメートルとしたときは、フォーカス電圧は−52.7ボルト、エミッション電流は1.353ナノアンペア、アノード電流は0.023ナノアンペアとなり、円環領域全体にCNT17を植毛した場合には電子放出効率ηは1.7%にまで低下してしまう。
【0042】
そこで、本発明においては、フォーカス電圧を過度に低くすることなく電子ビーム径を小さくするために、CNT17を円環領域の一部に植毛する。
【0043】
図6は、CNT17を植毛する円環領域を投影円の中心Oが見込む角度θ(度)(以下、中心角度θと記す)と電子ビーム径(マイクロメートル)の関係を示すグラフであって、横軸は中心角度θを、縦軸は電子ビーム径を表す。
【0044】
このグラフから、電子ビーム径を100マイクロメートルとするには、フォーカス電圧Vfを−45ボルトとしたときは円環領域の中心角度θを2度に、フォーカス電圧Vfを−50ボルトとしたときは円環領域の中心角度θを54度に選定すればよいことが判明する。
【0045】
図7は、CNT17を植毛する円環領域の中心角度θ(度)とエミッション電流Ieおよびアノード電流Iaの関係を示すグラフであって、横軸は中心角度θを、縦軸は電流(ナノアンペア)を表す。
【0046】
このグラフから、フォーカス電圧Vfを−45ボルト、中心角度θを2度としたときは、エミッション電流Ieは0.007ナノアンペア、アノード電流Iaは0.002ナノアンペアとなり、フォーカス電圧Vfを−50ボルト、中心角度θを54度としたときは、エミッション電流Ieは0.194ナノアンペア、アノード電流Iaは0.035ナノアンペアとなることが判る。
【0047】
即ち、フォーカス電圧Vfを−50ボルトとした場合は、ゲート電極14の開口のカソード電極12上への投影円の一部であり、中心角度θが54度である第1の円弧、第1の円弧からゲート電極14下面とカソード電極12上面間の距離h=3マイクロメートルの1.0以下の予め定められた所定数α=0.1倍である距離α・h=0.3マイクロメートルだけ中心側に隔たった第2の円弧、第1の円弧の一方の端点と中心Oとを結ぶ線分、および第1の円弧の他方の端点と中心Oとを結ぶ線分で囲まれた部分円環領域R50にCNT17を植毛すれば、電子放出効率ηを円環領域全体にCNT17を植毛したときの1.7%から18%に向上させることが可能となる。
【0048】
また、フォーカス電圧Vfを−45ボルトとした場合は、ゲート電極14の開口のカソード電極12上への投影円の一部であり、中心角度θが2度である第1の円弧、第1の円弧からゲート電極14下面とカソード電極12上面間の距離h=3マイクロメートルの1.0以下の予め定められた所定数α=0.1倍である距離α・h=0.3マイクロメートルだけ中心側に隔たった第2の円弧、第1の円弧の一方の端点と中心Oとを結ぶ線分、および第1の円弧の他方の端点と中心Oとを結ぶ線分で囲まれた部分円環領域R45にCNT17を植毛すれば、電子放出効率ηを円環領域全体にCNT17を植毛したときの1.7%から29%に向上させることが可能となる。
【0049】
1つの冷陰極で1つのサブピクセル(赤色、緑色および青色を表示する3つのサブピクセルが1つのピクセルを構成する)を構成した場合には、冷陰極のバラツキにより画質が劣化するが、複数の冷陰極をアレイ状に配置した冷陰極アレイを1つのサブピクセルとすることにより、冷陰極のバラツキに起因する画質劣化を改善することが可能となる。
【0050】
ただし、冷陰極アレイを構成する冷陰極のCNT植毛領域を同一方向に向けて、サブピクセルのドット径が大きくなることを回避する配慮が必要となる。
【0051】
図8は3×5の冷陰極アレイの上面図およびX−X断面図であって、各冷陰極のCNT植毛領域は3時の方向に設定されている。
【0052】
n×m個の冷陰極で構成された冷陰極アレイから放射された電子ビームで構成されるサブピクセルのドットの縦径(H)および横径(W)は[数1]で表される。
【数1】

【0053】
図9はサブピクセルの一例であって、例えば、左上および右下の冷陰極アレイで緑色を、右上の冷陰極アレイで赤色を、左下の冷陰極アレイで青色を表示するベイヤー配置を適用することができる。
【0054】
図10はサブピクセルの他の例であって、図10(a)は円形の冷陰極を使用した場合であって、各冷陰極の12時の方向にCNTが植毛されている。図10(b)は矩形の冷陰極を使用した場合であって、各冷陰極の3時の方向にCNTが植毛されている。
【0055】
図11は、本発明に係る冷陰極の上面図であって、冷陰極は(a)および(b)に示すように矩形であっても良いし、(c)に示すように六角形であっても、(d)に示すように側辺が波形となっていてもよい。
【0056】
さらに、CNT17は、ゲート電極14の開口部のカソード電極12の露出部上への投影領域に植毛された1本のCNT17が放出する電子によりアノード電極19に誘起されるアノード電流が最大値となる1本のCNT17の植毛位置が描く第1の曲線と、アノード電流が最大値の10%となるアノード電流を誘起する1本のCNT17の植毛位置が描く第2の曲線とに挟まれた閉領域の部分領域Rに植毛されていれば十分であるが、この部分領域R以外の領域に植毛してもよい。
【0057】
図12は、本発明に係る冷陰極アレイを使用した電界放出型ディスプレイ(FED)100の構造を説明するための斜視図であって、冷陰極アレイ21と前面基板22は所定の厚さ(例えば1ミリメートル)のスペーサ(図示せず)の上下に接着され、内部を真空に維持する。
【0058】
ゲート電極211には走査パルスに従ってゲート電圧VGが、カソード電極212には画像信号に応じてカソード電圧VKが印加される。
【0059】
フォーカス電極213にはフォーカス電圧VFが、前面基板22に蒸着されたアノード電極221にはアノード電圧VAが常時印加されている。
【0060】
ゲート電極211にゲート電圧VGが、カソード電極212にカソード電圧VKが同時に印加された冷陰極214は動作状態となり電子を放射するが、この電子はフォーカス電極213の周囲に生じた電界により集束され、アノード電極221に吸収される。
【0061】
アノード電極221に吸収される電子は、前面基板22に塗布された蛍光体222を発光させる。
【0062】
上記の実施形態においては、冷陰極の大きさは略5マイクロメートルであるとしたが、この大きさの冷陰極は蒸着あるいはスパッタリング等の薄膜製造技術により製造することが可能である。
【0063】
なお、画素の大きさが600マイクロメートルのFEDにあっては、100マイクロメートル程度の大きさの冷陰極を適用することも可能であるが、この大きさの冷陰極は印刷技術により製造することが可能である。
【0064】
以上説明したように、本発明に係る冷陰極は、CNTをカソード電極の中心から偏倚したカソード電極の部分領域に植毛することにより、電子ビーム径を小さくするとともに、電子放出効率を向上することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明に係る冷陰極、冷陰極アレイおよび電界放出型ディスプレイは、電子ビーム径を小さくできるとともに、電子放出効率を向上することができるという効果を有し、表示装置等として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る冷陰極のブロック図
【図2】エミッション電流ieおよびアノード電流iaと投影円の中心Oからの距離rの関係を示すグラフ
【図3】本発明に係る冷陰極の電子ビームの軌跡図
【図4】フォーカス電圧と電子ビーム径の関係を示すグラフ
【図5】フォーカス電圧とエミッション電流、アノード電流および電子放出効率ηとの関係を示すグラフ
【図6】円環領域の中心角度と電子ビーム径の関係を示すグラフ
【図7】円環領域の中心角度とエミッション電流Ieおよびアノード電流Iaの関係を示すグラフ
【図8】3×5の冷陰極アレイの上面図およびX−X断面図
【図9】サブピクセルの一例
【図10】サブピクセルの他の例
【図11】冷陰極の上面図
【図12】本発明に係る冷陰極アレイを使用したFEDの構造を説明するための斜視図
【図13】従来の冷陰極を使用したFEDの部分断面図および上面図
【符号の説明】
【0067】
10 冷陰極
11 絶縁基板
12 カソード電極
13 第1の絶縁材
14 ゲート電極
15 第2の絶縁材
16 フォーカス電極
17 カーボンナノチューブ(CNT)
18 前面基板
19 アノード電極
20 蛍光塗料
21 冷陰極アレイ
100 電界放出型ディスプレイ(FED)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板上に配置されるカソード電極と、
前記カソード電極上に配置され、前記カソード電極を露出する開口を有する第1の絶縁材と、
前記第1の絶縁材上に配置され、前記カソード電極を露出する開口を有するゲート電極と、
前記ゲート電極上に配置され、前記カソード電極を露出する開口を有する第2の絶縁材と、
前記第2の絶縁材上に配置され、前記カソード電極を露出する開口を有するフォーカス電極と、
前記カソード電極上に植毛される炭素系材料とを含む冷陰極であって、
前記炭素系材料が、中央から偏倚して位置する前記カソード電極上の部分領域に植毛されることを特徴とする冷陰極。
【請求項2】
前記部分領域が、前記ゲート電極の開口部の前記カソード電極の露出部上への投影領域に植毛された1本の炭素系材料が放出する電子により前記アノード電極に誘起されるアノード電流が最大値となる1本の炭素系材料の植毛位置が描く第1の曲線と、前記アノード電流が前記最大値の1.0以下の予め定められた所定数倍となるアノード電流を誘起する1本の炭素系材料の植毛位置が描く第2の曲線とに挟まれた閉領域の一部領域である請求項1に記載の冷陰極。
【請求項3】
前記カソード電極を露出する前記ゲート電極の開口が円であり、前記部分領域が、前記ゲート電極の開口の前記カソード電極上への投影円の中心が前記閉領域を見込む角度が180度以下となる領域である請求項1または請求項2に記載の冷陰極。
【請求項4】
前記部分領域を含む領域に前記炭素系材料が植毛される請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の冷陰極。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の冷陰極を複数個配列した冷陰極アレイであって、
各冷陰極の前記炭素系材料の植毛領域を同一方向に向けて配置した冷陰極アレイ。
【請求項6】
請求項5に記載の冷陰極アレイをサブピクセルとして使用した電界放出型ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−112609(P2008−112609A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293854(P2006−293854)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】