説明

冷陰極電子源基板及び冷陰極ディスプレイ

【課題】従来のものよりも画面の高輝度化を図ることができる冷陰極電子源基板及び冷陰極ディスプレイを提供すること。
【解決手段】冷陰極ディスプレイ10は、電子を電界放出する冷陰極電子源基板30と、冷陰極電子源基板30に対向配置されたアノード基板60とを備え、冷陰極電子源基板30は冷陰極素子20を備え、冷陰極素子20は、印加された電界に応じて電子を放出する冷陰極エミッタ21と、冷陰極エミッタ21が形成されたカソード電極22と、冷陰極エミッタ21から電子を引き出すゲート電極23と、引き出された電子のビームを集束させるフォーカス電極24とを備え、ゲート電極23とフォーカス電極24との間の距離に関し、冷陰極アレイ40の中央部を端部よりも短くすることによって電子ビームの発散を大きくし、アノード電流を増加させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印加された電界によって電子を放出する冷陰極電子源基板及びこれを用いた冷陰極ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の冷陰極電子源としては、例えば特許文献1に示された電界放出型電子源が知られている。特許文献1に示されたものは、電子を放出する冷陰極エミッタと、電子を引き出すゲート電極と、電子を集束するフォーカス電極とを備え、フォーカス電極に所定の電圧を印加することによって、冷陰極エミッタからの電子ビームの発散を抑えることができるようになっている。なお、特許文献1においては、冷陰極エミッタ、ゲート電極及びフォーカス電極は、それぞれ、電子放出デバイス、電子引出し電極及び制御電極と呼称されている。
【0003】
また、冷陰極電子源を用いた冷陰極ディスプレイ(Field Emission Display:FED)としては、例えば非特許文献1に示されたものが知られている。
【特許文献1】特開平2−226635号公報
【非特許文献1】S.Itoh et.al SID'07 Digest,"Development of Field−Emission Display", pp.1297−1300(2007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非特許文献1において、フォーカス電極の電位を下げていき、電子ビームの発散を抑えようとすると、フォーカス電極の電位の影響により、冷陰極エミッタからの電子ビームがフォーカス電極付近で追い返されてしまい、フォーカス電極のホールを通過できず、アノード電極に到達できる電子の数が急激に減少してしまうというシミュレーション結果が報告されている。以下、図5を用いて説明する。
【0005】
図5は、特許文献1に示された従来の冷陰極ディスプレイ1を模式的に示したものである。図5(a)は、冷陰極ディスプレイ1が備える冷陰極電子源基板2の上面図である。図5(b)は、図5(a)に示した線分BBにおける冷陰極ディスプレイ1の断面図である。
【0006】
図5に示すように、従来の冷陰極ディスプレイ1は、冷陰極電子源基板2と、アノード基板7とを備えている。冷陰極電子源基板2は、冷陰極アレイ2a及び2bを備えている。なお、冷陰極アレイ2a及び2bは同様に構成されているので、以下の説明では冷陰極アレイ2aの構成について説明する。冷陰極アレイ2aは9個の冷陰極素子3を備え、冷陰極素子3は、それぞれ、冷陰極エミッタを備えている。図5(b)において、冷陰極アレイ2aの右端部にある冷陰極エミッタを冷陰極エミッタ3a、中央部にあるものを冷陰極エミッタ3b、左端部にあるものを冷陰極エミッタ3cと呼び、冷陰極アレイ2bの右端部にある冷陰極エミッタを冷陰極エミッタ3dと呼ぶ。また、冷陰極素子3は、カソード電極4と、ゲート電極5と、フォーカス電極6とを備えている。アノード基板7は、アノード電極8と、蛍光体9とを備えている。
【0007】
冷陰極アレイ2aにおいて、カソード電極4とゲート電極5との間、ゲート電極5とフォーカス電極6との間には、それぞれ、一定の厚さの絶縁層が設けられている。
【0008】
図5(b)に示すように、従来の冷陰極アレイ2aは、ゲート電極5とフォーカス電極6との間の距離が一定になるよう構成されているので、フォーカス電極6によるフォーカス効果は、冷陰極アレイ2a及び2bの中央部、端部に拘わらず一定であった。
【0009】
そのため、冷陰極アレイ2aからの電子ビームと、冷陰極アレイ2bからの電子ビームとがアノード基板7上において互いに重ならないよう分離するための条件は、互いに隣接する冷陰極エミッタ3c及び3dからの電子ビームの発散によって決まってしまうこととなる。その結果、例えば冷陰極アレイ2aの中央部に配置された冷陰極エミッタ3bからの電子ビームをフォーカス電極6が不必要に集束することになってしまう。
【0010】
具体的には、図5(b)に示すように、冷陰極アレイ2aの中央部に配置された冷陰極エミッタ3bからの電子ビームの発散は、アノード基板7上において直径W1まで許容されるのに対し、直径W2に抑えられてしまうことになり、それに伴う電子ビームの追い返しによってアノード基板7に到達できる電子の数が減少することによりアノード電流が減少してしまい、画面の高輝度化が図れないという課題があった。
【0011】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、従来のものよりも画面の高輝度化を図ることができる冷陰極電子源基板及び冷陰極ディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者らは、冷陰極ディスプレイの高輝度化を図る検討を重ねた結果、冷陰極アレイ内部において、ゲート電極とフォーカス電極との間の距離を変化させることによって、前述の課題を解決した。
【0013】
すなわち、本発明の冷陰極電子源基板は、印加された電界に応じて電子を放出する冷陰極エミッタと、前記冷陰極エミッタから電子を引き出すゲート電極と、前記電子のビームを集束するフォーカス電極とを含む冷陰極素子を有する冷陰極アレイを複数備えた冷陰極電子源基板であって、前記ゲート電極と前記フォーカス電極との間の距離が、前記冷陰極アレイ端部の冷陰極素子から前記冷陰極アレイ中央部の冷陰極素子に向かうに従って短くなっている構成を有している。
【0014】
この構成により、本発明の冷陰極電子源基板は、ゲート電極とフォーカス電極との間の距離が、冷陰極アレイ端部の冷陰極素子から冷陰極アレイ中央部の冷陰極素子に向かうに従って短くなっているので、冷陰極アレイの中央部に配置された冷陰極エミッタからの電子ビームの発散を従来のものよりも大きくしてアノード電流を増加させることができる。したがって、本発明の冷陰極電子源基板は、従来のものよりも画面の高輝度化を図ることができる。
【0015】
本発明の冷陰極ディスプレイは、冷陰極電子源基板と、該冷陰極電子源基板から所定の間隔をおいて対向配置され、前記冷陰極電子源基板と対向する面側に蛍光体が設けられたアノード電極とを備えた構成を有している。
【0016】
この構成により、本発明の冷陰極ディスプレイは、冷陰極エミッタからの電子ビームの発散を従来のものよりも大きくしてアノード電流を増加させることができるので、従来のものよりも画面の高輝度化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、従来のものよりも画面の高輝度化を図ることができるという効果を有する冷陰極電子源基板及び冷陰極ディスプレイを提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
まず、本実施の形態における冷陰極ディスプレイの構成について説明する。図1(a)は、冷陰極ディスプレイ10が有するアノード基板60側から見たときの冷陰極電子源基板30の平面図である。図1(b)は、図1(a)に示した線分AAにおける冷陰極ディスプレイ10の断面図である。
【0020】
本実施の形態における冷陰極ディスプレイ10は、電子を電界放出する冷陰極電子源基板30と、冷陰極電子源基板30に対向配置されたアノード基板60とを備えている。冷陰極電子源基板30は、2つの冷陰極アレイ40及び50を備えている。ここで、冷陰極アレイ40及び50は、それぞれ、例えば、RGB(赤、緑、青)のうち、赤色及び緑色の発光体を発光させるための電子源となるものである。なお、冷陰極アレイ40及び50は同様に構成されているので、以下の説明では、冷陰極アレイ40の構成について説明する。
【0021】
冷陰極アレイ40は、9個の冷陰極素子20を備えている。ここで、冷陰極素子20の個数を9個としたのは、冷陰極ディスプレイ10の構成を分かりやすくするためであり、本発明はこれに限定されない。冷陰極素子20は、印加された電界に応じて電子を放出する冷陰極エミッタ21と、冷陰極エミッタ21が形成されたカソード電極22と、冷陰極エミッタ21から電子を引き出すゲート電極23と、引き出された電子のビームを集束させるフォーカス電極24とを備えている。カソード電極22とゲート電極23との間(以下「カソード−ゲート電極間」という。)には第1の絶縁層が、ゲート電極23とフォーカス電極24との間(以下「ゲート−フォーカス電極間」という。)には第2の絶縁層が、それぞれ形成されている。
【0022】
冷陰極エミッタ21は、例えばカーボンナノチューブやグラファイトナノファイバのような炭素系微細繊維で構成され、カソード電極22上に設けられている。カソード電極22は、例えばガラス基板上に例えばCrを用いて形成されている。なお、図1に示すように、冷陰極アレイ40が有する冷陰極エミッタ21のうち、冷陰極アレイ40の端部にあるものを冷陰極エミッタ21a、冷陰極アレイ40の中央部にあるものを冷陰極エミッタ21bという。本実施の形態における冷陰極アレイ40は、9個の冷陰極エミッタ21で構成されているので、冷陰極エミッタ21aは、冷陰極エミッタ21bを取り囲む配置となっている。
【0023】
ゲート電極23は、カソード電極22上に設けられた第1の絶縁層上に例えばCrを用いて形成されており、電子を通過させるゲートホールを有している。カソード−ゲート電極間には所定のゲート電圧が印加されるようになっており、ゲート電極23は、印加されたゲート電圧に応じて冷陰極エミッタ21から電子を引き出すようになっている。
【0024】
フォーカス電極24は、ゲート電極23上に設けられた第2の絶縁層上に例えばCrを用いて形成されており、電子を通過させるフォーカスホール24aを有している。カソード電極22とフォーカス電極24との間には所定のフォーカス電圧が印加されるようになっており、フォーカス電極24は、印加されたフォーカス電圧に応じて冷陰極エミッタ21からの電子ビームを集束させるようになっている。
【0025】
ここで、ゲート電極23上に設けられた第2の絶縁層の厚さは一様ではなく、冷陰極アレイ40の中央部に位置する冷陰極エミッタ21bの上方には円形状の凹部24bが設けられている。すなわち、ゲート−フォーカス電極間の距離が、冷陰極アレイ40の端部よりも中央部の方が短くなるよう円形状の凹部24bが形成され、この凹部24bの表面にフォーカス電極24が設けられる構成となっている。凹部24bの形成方法としては、例えば、ゲート電極23とフォーカス電極24との間に設ける絶縁層を全面で均一な厚さに堆積させた後、冷陰極アレイ40の中央部をエッチングして中央部を窪ませる方法や、印刷法により冷陰極アレイ40の中央部以外の部分に絶縁層を形成して中央部を窪ませる方法等がある。なお、凹部24bの形状は、円形状に限定されない。
【0026】
アノード基板60は、図示を省略したガラス基板上に形成され、透明電極からなるアノード電極61と、電子の通過により発光する蛍光体62とを備えている。カソード電極22とアノード電極61との間(以下「カソード−アノード電極間」という。)には所定のアノード電圧が印加されるようになっている。
【0027】
次に、本実施の形態における冷陰極アレイ40の特性を確認するために行った実験結果について説明する。最初に、実験に用いた冷陰極アレイ40の製造工程の概要について説明する。
【0028】
まず、ゲート−フォーカス電極間が、2μmの冷陰極アレイと2.5μmの冷陰極アレイとをガラス基板上にそれぞれ作製した。これらの冷陰極アレイにおいて、カソード電極22、ゲート電極23及びフォーカス電極24は、スパッタリング法によって堆積させた膜厚200nmのCrで形成したものである。
【0029】
また、カソード−ゲート電極間にある第1の絶縁層と、ゲート−フォーカス電極間にある第2の絶縁層とを、スパッタリング法によって堆積したSiOで形成した。ここで、作製したサンプルは2種類ある。1つ目のサンプルは、第1の絶縁層が3μmで第2の絶縁層が2μmのもの、すなわちゲート−フォーカス電極間の距離が2μmのものである。2つ目のサンプルは、第1の絶縁層及び第2の絶縁層が共に2.5μmのもの、すなわちゲート−フォーカス電極間の距離が2.5μmのものである。
【0030】
また、ゲート電極23及びフォーカス電極24に設けた各ホールの半径を、それぞれ、2.5μm及び3.5μmとした。ゲート電極23及びフォーカス電極24に設けたホールの数は共に35個とし、35個の冷陰極エミッタ21を形成できる構成とした。
【0031】
カソード電極22上には次のように冷陰極エミッタ21を形成した。まず、電子ビーム蒸着法によって5nm成膜したFe、Co及びNiからなる合金触媒を、リフトオフ法によってホール内のカソード電極22上だけに堆積させた。次いで、熱CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法によって微細な炭素繊維状の冷陰極エミッタ21を形成した。熱CVD法による工程において、HガスとCOガスとを1:1の体積比となるようチャンバ内で混合し、赤外線ランプによって基板温度580℃で10分間加熱した。
【0032】
以上の製造工程で作製した冷陰極アレイ40にアノード基板60を対向配置し、フォーカス電圧に対するアノード電流の変化について調べた結果を図2に示す。ここで、カソード−アノード電極間の距離は7mmとした。また、カソード電圧、ゲート電圧及びアノード電圧は、それぞれ、0V、42V及び300Vとした。なお、アノード電流は、588個分の冷陰極アレイによるものである(冷陰極エミッタ数=35×588個)。
【0033】
図2に示すように、ゲート−フォーカス電極間が2μmのもの及び2.5μmのものは、共にフォーカス電圧を下げてビームを集束させるに従ってフォーカス電圧による電子ビームの追い返しが起こり、その結果フォーカス電圧に応じてアノード電流が減少している。ただし、ゲート−フォーカス電極間が2μmのものの方が2.5μmのものよりもアノード電流の減少傾向が緩やかである。また、例えばフォーカス電圧を5Vとした場合、ゲート−フォーカス電極間が2μmのものの方が2.5μmのものよりもアノード電流は約3倍多くなっていることが分かる。すなわち、同一の電圧条件の場合にアノード電流を増加させるには、ゲート−フォーカス電極間の間隔を小さくするのが好ましい。
【0034】
次に、ゲート−フォーカス電極間の距離を変化させたときの電子ビームの発散について、計算機シミュレーションにより求めた結果を図3に基づいて説明する。
【0035】
図3(a)及び(b)は、それぞれ、ゲート−フォーカス電極間の距離が2μm及び2.5μmの場合における電子ビームの発散を示している。ゲート−フォーカス電極間の距離以外は同条件であり、カソード−ゲート電極間の距離は3μm、カソード−アノード電極間の距離は1mm、ゲートホールの半径は2.5μm、フォーカスホール24aの半径は3.5μmとした。また、冷陰極エミッタ21の形状は、その先端が半径10nmの半球状となっている高さ2μmの円柱状とした。また、カソード電圧、ゲート電圧、フォーカス電圧及びアノード電圧は、それぞれ、0V、50V、5V及び300Vとした。
【0036】
計算機シミュレーションによる電子ビームの発散は次のようになった。まず、図3(a)に示すように、ゲート−フォーカス電極間の距離が2μmのものは、アノード電極61上における電子ビームの発散が半径96.2μmであった。一方、図3(b)に示すように、ゲート−フォーカス電極間の距離が2.5μmのものは、アノード電極61上における電子ビームの発散が半径86.5μmであった。この結果より、ゲート−フォーカス電極間の距離が2μmのものは、同距離が2.5μmのものよりも電子ビームの発散が大きいことが分かった。
【0037】
図2及び図3に示した結果によれば、同じフォーカス電圧でもゲート−フォーカス電極間の距離が異なると電子ビームの集束状態も異なり、ゲート−フォーカス電極間を短くすると電子ビームの発散は大きくなり、アノード電流は増加することが分かる。したがって、ゲート−フォーカス電極間の距離を、冷陰極アレイ40の端部にある冷陰極素子20から冷陰極アレイ40の中央部にある冷陰極素子20に向かうに従って短くする構成が好ましい。
【0038】
具体的には、例えば図4に示すように、ゲート−フォーカス電極間の距離を冷陰極アレイ40の端部では2.5μmとし、中央部では2μmとする構成が好ましい。この構成において、冷陰極エミッタ21aのゲート−フォーカス電極間の距離は2.5μmなので、冷陰極エミッタ21aからの電子ビームaは、図3(b)に示す結果より半径86.5μmの大きさとなる。一方、冷陰極エミッタ21bのゲート−フォーカス電極間の距離は2μmなので、冷陰極エミッタ21bからの電子ビームbは、図3(a)に示す結果より半径96.2μmの大きさとなる。したがって、冷陰極エミッタ21bは、冷陰極エミッタ21aよりも9.7μm以上内側に設ければ、電子ビームbによる発光領域は電子ビームaによる発光領域よりも外側に出ることはない。
【0039】
また、図2に示した結果により、同一のフォーカス電圧を印加した場合において、ゲート−フォーカス電極間の距離を2μmとしたものは2.5μmのものよりもアノード電流が大きくなるので、ゲート−フォーカス電極間の距離が2.5μmで一定である従来のものよりも、図4に示した構成の方がアノード電流を大きくすることができ、高輝度化が図れる。
【0040】
以上のように、本実施の形態における冷陰極ディスプレイ10によれば、ゲート電極23とフォーカス電極24との間の距離を、冷陰極アレイ40の端部にある冷陰極素子20から冷陰極アレイ40の中央部にある冷陰極素子20に向かうに従って短くする構成としたので、冷陰極アレイ40の中央部に配置された冷陰極エミッタ21bからの電子ビームの発散を従来のものよりも大きくしてアノード電流を増加させることができる。したがって、本発明の冷陰極ディスプレイ10は、従来のものよりも画面の高輝度化を図ることができる。
【0041】
また、本実施の形態における冷陰極ディスプレイ10によれば、冷陰極アレイ40の中央部に配置された冷陰極エミッタ21bの上方に円形状の凹部24bを設け、この凹部24b上にフォーカス電極24を形成するという簡単な構成としたので、冷陰極アレイ40の中央部のフォーカス電極24と端部のフォーカス電極24とを分割して別個にフォーカス電圧を印加するものよりも、大幅に製造コストを低減することができる。
【0042】
なお、図2及び図3に示した結果は一例であるので、冷陰極ディスプレイ10として使用する際に印加する各電圧や構成に応じて、ゲート−フォーカス電極間の距離を適宜変えることにより、本発明の冷陰極ディスプレイ10は、従来のものよりも画面の高輝度化を図ることができる。
【0043】
また、前述の実施の形態において、9個の冷陰極エミッタ21で冷陰極アレイ40を構成し、冷陰極アレイ40の中央部のみにおいてゲート−フォーカス電極間の距離を端部よりも短くする例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、冷陰極アレイを構成する冷陰極エミッタの個数が5個×5個の25個の場合、冷陰極アレイの中心の1個、その外周を取り囲む8個、さらにその外周を取り囲む16個にそれぞれ対応するゲート−フォーカス電極間の距離を、端部から中央部に向かうに従って、段階的に又はテーパ形状で短くする構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る冷陰極ディスプレイの一実施の形態における構成を示す図 (a)冷陰極ディスプレイが備える冷陰極アレイの平面図 (b)冷陰極ディスプレイの断面図
【図2】本発明に係る冷陰極ディスプレイの一実施の形態において、フォーカス電圧とアノード電流との関係を示す図
【図3】本発明に係る冷陰極ディスプレイの一実施の形態において、計算機シミュレーションによる電子ビームの発散の計算結果 (a)ゲート−フォーカス電極間の距離が2μmの場合の計算結果 (b)ゲート−フォーカス電極間の距離が2.5μmの場合の計算結果
【図4】本発明に係る冷陰極ディスプレイの一実施の形態において、図2及び図3に示した結果から求めた冷陰極エミッタの位置関係と電子ビームの発散とを示す模式図
【図5】従来の冷陰極ディスプレイを示す図 (a)従来の冷陰極ディスプレイが備える冷陰極アレイの平面図 (b)従来の冷陰極ディスプレイの断面図
【符号の説明】
【0045】
10 冷陰極ディスプレイ
20 冷陰極素子
21(21a、21b) 冷陰極エミッタ
22 カソード電極
23 ゲート電極
24 フォーカス電極
24a フォーカスホール
24b 凹部
30 冷陰極電子源基板
40、50 冷陰極アレイ
60 アノード基板
61 アノード電極
62 蛍光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加された電界に応じて電子を放出する冷陰極エミッタと、前記冷陰極エミッタから電子を引き出すゲート電極と、前記電子のビームを集束するフォーカス電極とを含む冷陰極素子を有する冷陰極アレイを複数備えた冷陰極電子源基板であって、
前記ゲート電極と前記フォーカス電極との間の距離が、前記冷陰極アレイ端部の冷陰極素子から前記冷陰極アレイ中央部の冷陰極素子に向かうに従って短くなっていることを特徴とする冷陰極電子源基板。
【請求項2】
請求項1に記載の冷陰極電子源基板と、該冷陰極電子源基板から所定の間隔をおいて対向配置され、前記冷陰極電子源基板と対向する面側に蛍光体が設けられたアノード電極とを備えたことを特徴とする冷陰極ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−54317(P2009−54317A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217319(P2007−217319)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】