説明

凍結/融解安定性が向上したポリマー分散液を製造するための高分岐ポリマーの使用

本発明は、ポリマー分散液に高分岐ポリマーを添加することによって、凍結/融解安定性が向上したポリマー分散液を製造すること、および上記のための高分岐ポリマーの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー分散液に高分岐ポリマーを添加することによって、凍結融解安定性が向上したポリマー分散液を製造する方法、およびこの目的のための高分岐ポリマーの使用に関する。
【0002】
水性ポリマー分散液および当該分散液を基礎とするペイントは、存在する水が凍結する温度に曝されると所望の塗布特性を低下させる傾向がある。このプロセスで形成される氷結晶は、最初は依然として存在する残留液に、そして最終的には氷結晶の間にラテックス粒子を濃縮させる。これは、会合または凝集を通じて、望ましくないより大きなポリマー粒子の形成をもたらし得るため、一般に粘度を有意に上昇させる。融解しても、本来の塗布特性は、往々にして回復されない。これは、水性ポリマー分散液およびそれらを基礎とするペイントの貯蔵、輸送および処理上の問題をもたらす。
【0003】
低温に対するそれらの許容性を向上させる目的で、ポリマー分散液およびラテックスペイントに不凍剤を添加することが知られている。好適な不凍剤は、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th ed.,vol.A3,pp.23−31に記載されている。それらは、比較的高官能価のアルコール、ならびにエチレングリコール、ジエチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのアルコールエーテルを含む。しかし、被覆から環境に徐々に放出されるこの種の揮発性有機炭化水素化合物(VOC)の使用がますます望ましくなくなっている。したがって、凍結/融解安定性を向上させるためのポリマー分散液用の不揮発性添加剤が必要である。
【0004】
WO2005/054384には、小分率の揮発性有機化合物(VOC分)を含み、良好な凍結/融解安定性を特徴とする水性ペイントのための樹脂組成物が記載されている。これらの被覆材料は、重合性アルコキシ化表面活性化合物を共重合した形で含む多段ポリマーを基礎とする水性分散液を含む。
【0005】
凍結/融解安定性が向上したポリマー分散液を製造する目的で高分岐ポリマーを添加することは、今日まで知られていない。当該高分岐ポリマーは、それ自体既知であり、場合によっては水性ポリマー分散液の製造における添加剤としても使用される。
【0006】
WO00/29495には、溶媒、アルキド樹脂(ポリエステル樹脂)および星型ポリマーを含む被覆材料が記載されている。当該材料における星型ポリマーは、被覆材料の塗布特性を向上させるため、例えば、より低い粘度を達成するための改質剤として機能する。それらは、少なくとも3つのビニル性不飽和側鎖を含む多官能性チオールに由来する。
【0007】
WO01/96411には、そこから少なくとも3つのポリマーアームが伸びるメルカプタン系コアを有する両親媒性星型ポリマーが記載されているとともに、水性ポリマー分散液を安定させるためのこれらの星型ポリマーの使用が記載されている。
【0008】
WO2004/016700には、アルキレン基で官能化された少なくとも1つの樹枝状ポリマーを使用する共重合によって得られる水性コポリマー分散液が記載されている。得られたコポリマー分散液は、遮断特性の向上が顕著である。この文献には、凍結/融解特性を向上させる目的で、乳化重合の後に、高分岐ポリマーを水性ポリマー分散液に添加することが教示されていない。
【0009】
WO2005/003186には、少なくとも1つの疎水性アリル、ビニル、マレイン酸またはジエンモノマーを含むコポリマーを基礎とする水性ポリマー分散液を製造するための方法であって、重合が少なくとも1つの樹枝状ポリマーの存在下で行われる方法が記載されている。この系における樹枝状ポリマーは、乳化重合に0.001g/l未満の水溶解度を有する疎水性の強いモノマーを使用することも可能にする。その凍結/融解安定性を向上させるためのポリマー分散液への添加剤としての当該樹枝状ポリマーの使用が記載されていない。
【0010】
Z.XuおよびW.T.Fordは、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.41,597−605(2003)およびMacromolecules 2002,35,7662−7668において、ポリ(プロピレンイミン)デンドリマーおよびドデシル硫酸ナトリウムのドデカンアミド誘導体の存在下で水性乳化重合によって製造されたポリスチレンラテックスを記載されている。C.Yi、Z.XuおよびW.T.Fordは、Colloid.Polym.Sci.(2004),282,pp.1054−1058において、シード法による乳化重合によるポリ(アミドアミン)デンドリマー/ポリスチレン複合ラテックスの製造を記載している。
【0011】
本発明の目的は、凍結/融解安定性が向上した水性ポリマー分散液を提供することである。これらの分散液は、好ましくは、凍結/融解に曝された後も、塗布特性を実質的に変化させないこと、例えば、粘度を実質的に変化させないこと、粒径を実質的に変化させないこと、または粒径分布を実質的に変化させないことを目的とする。その目的は、同時に、分散液のVOC含有量を増加させる添加剤を可能な限り用いずになされることが好ましい。
【0012】
驚いたことに、この目的は、被覆材料のための水性ポリマー分散液における高分岐ポリマーの使用によって達成されることが判明した。
【0013】
よって、本発明は、第1に、少なくとも1つのα,β−エチレン性不飽和モノマーM)のラジカル乳化重合および少なくとも1つの高分岐ポリマーの添加によって、凍結/融解安定性が向上した水性ポリマー分散液PD)を製造する方法を提供する。
【0014】
本発明は、さらに、水性ポリマー分散液PD)、少なくとも1つの高分岐ポリマー、および場合によって少なくとも1つのさらなる膜形成ポリマーからなる、またはそれらを含むバインダ組成物を提供する。
【0015】
本発明は、さらに、
− 水性ポリマー分散液PD)、高分岐ポリマー、および場合によって少なくとも1つのさらなる膜形成ポリマーからなる、またはそれらを含むバインダ組成物、
− 場合によって少なくとも1つの無機充填剤および/または少なくとも1つの無機顔料、
− 場合によってさらなる助剤、および
− 水
を含む水性組成物の形の被覆材料を提供する。
【0016】
本発明は、さらに、凍結/融解安定性を向上させるための水性ポリマー分散液への添加剤としての高分岐ポリマーの使用を提供する。
【0017】
本発明は、さらに、少なくとも1つの高分岐ポリマーの添加により、少なくとも1つのα,βエチレン性不飽和モノマーM)のラジカル乳化重合によって得られる水性ポリマー分散液PD)の凍結/融解安定性を向上させる方法を提供する。
【0018】
ポリマー分散液PD)に対する高分岐ポリマーの添加をPD)の製造のための乳化重合の前および/または最中および/または後に行うことができる。好ましくは、高分岐ポリマーの添加は、乳化重合の後に行われる。乳化重合の後の添加は、少なくとも1つのα,βエチレン性不飽和モノマーM)を基礎とするエマルジョンポリマーを含む生成物の配合の一部としての添加を含む。その目的で、以下に定義される少なくとも1つの高分岐ポリマーを例えばペイントに添加剤として添加することができる。したがって、本発明は、さらに、生成物の凍結/融解安定性を向上させるための、以下に定義される少なくとも1つのα,βエチレン性不飽和モノマーM)を基礎とするエマルジョンポリマーを含む生成物のための添加剤としての少なくとも1つの高分岐ポリマーの使用を規定する。具体的には、これは、ペイントのための添加剤としての使用を含む。
【0019】
本発明は、さらに、ペイントにおける成分としての、少なくとも1つの高分岐ポリマーを添加剤として含む水性ポリマー分散液PD)の使用を提供する。
【0020】
凍結/融解安定性は、当業者に周知のパラメータである。凍結/融解安定性の測定の原理をISO1147規格から把握することができる。水性ポリマー分散液の凍結/融解安定性をASTM D2243−95(再認可2003)に従って測定することができる。その規格によれば、分散液を−18℃で17時間にわたって低温チャンバに仕込み、次いで室温(23℃)で7時間放置して、24時間の凍結/融解サイクルとする。続いて、凝塊が形成されたか否かを調査する。形成されていなければ、ラテックス分散液は凝塊の形成に対して安定しており、上記サイクル(冷却および融解)を繰り返した後、凝塊の形成について新たに調査する。凝塊の形成が確認されるか、または凝塊を形成させることなく最大5回のサイクルを消化するまでこの凍結/融解サイクルを継続する。
【0021】
高分岐ポリマーは、高分岐ポリマーとポリマー分散液の総重量に基づいて、好ましくは0.1重量%〜20重量%、より好ましくは0.2重量%〜15重量%、特に0.5重量%〜10重量%の量でポリマー分散液PD)に添加される。
【0022】
本発明の高分岐ポリマーの使用は、以下の利点の少なくとも1つを伴う。
− 凍結/融解に曝された分散液の粘度が実質的に変化しないこと;
− 凍結/融解に曝された分散液の粒径、粒径分布が実質的に変化しないこと;
− 凍結/融解に曝された分散液における凝塊の形成がほとんどまたは全くないこと;
− 凍結点に近い分散液も処理する可能性があること;
− 採用される高分岐ポリマーと複数の分散液との相溶性が高いこと;
− 分散液のVOC含有量の低下に関連する凍結剤の少なくとも部分的または全面的な回避。
【0023】
粘度の測定を、DIN EN ISO 3219に従って23℃の温度で、回転粘度計、例えばBrookfield RVT粘度計によって実施することができる。例えば、スピンドル#5が10rpmの回転速度で使用され、スピンドル#4が20rpmの回転速度で使用される。
【0024】
例えば、凍結/融解に曝した後に、規定のメッシュサイズ(例えば125μm)のスクリーンでポリマー分散液を濾過することによって凝塊の量を測定することができる。
【0025】
本発明によれば、少なくとも1つの高分岐ポリマーを使用して、ポリマー分散液PD)を製造する。「高分岐ポリマー」という表現は、本発明の目的では、極めて一般的に、強分岐構造および高官能性によって区別されるポリマーを指す。高分岐ポリマーの一般的な定義については、P.J.Flory,J.Am.Chem.Soc.1952,74,2718およびH.Frey et al.,Chem.Eur.J.2000,6,No.14.2499が参照される(それらは、ここで選択される定義を逸脱して、「超分岐ポリマー」と称する)。
【0026】
本発明の意味における高分岐ポリマーとしては、星型ポリマー、デンドリマー、アルボロール、および具体的には超分岐ポリマーなどの異なる高分岐ポリマーが挙げられる。
【0027】
星型ポリマーは、3つ以上の鎖が中心から伸びるポリマーである。この中心は、単一の原子または原子群であってよい。
【0028】
デンドリマーは、構造的に、星型ポリマーに由来するが、個々の鎖の各々に星型分岐を有する。デンドリマーは、絶えずより多くの数の分岐をもたらし、その終了時に、それぞれの場合において、さらなる分岐のための出発点になる官能基が存在する継続的に反復する反応連鎖によって小分子から出発して形成される。したがって、モノマー末端基の数は、反応工程毎に指数関数的に増加し、究極的には、理想的な場合に球状になるツリー構造をもたらす。デンドリマーの特徴は、それらの合成の目的で実施される反応段階(世代)の数である。それらの均一な構造(理想的な場合は、分岐のすべてが全く同数のモノマー単位を含む)に基づいて、デンドリマーは、実質的に単分散性である。すなわち、規定のモル質量を有する。
【0029】
分子的にも構造的にも均一な高分岐ポリマーも以下では共通にデンドリマーと称する。
【0030】
本発明の文脈における「超分岐ポリマー」は、上記デンドリマーと異なり分子的にも構造的にも不均一である高分岐ポリマーである。それらは、長さおよび分岐度ならびにそれらのモル質量分布(多分散度)が異なる側鎖および/または側枝を有する。
【0031】
本発明による高分岐ポリマーは、好ましくは、1分子当たりの分岐度(DB)が10%〜100%、より好ましくは10%〜90%、特に10%〜80%である。分岐度DBは、DB(%)=(T+Z)/(T+Z+L)×100
[式中、
Tは、末端結合モノマー単位の平均数であり、
Zは、分岐形成モノマー単位の平均数であり、
Lは、線形結合モノマー単位の平均数である]
によって定義される。
【0032】
デンドリマーは、一般に少なくとも99%、特に99.9%〜100%の分岐度DBを有する。
【0033】
超分岐ポリマーは、好ましくは10%〜95%、より好ましくは25%〜90%、特に30%〜80%の分岐度DBを有する。
【0034】
有利な光沢特性を達成するために、構造的かつ分子的に均一なデンドリマーばかりでなく、超分岐ポリマーを使用することが可能である。しかし、超分岐ポリマーは、一般に、デンドリマーより製造が容易であるため、経済的である。したがって、例えば、単分散性デンドリマーの製造は、各結合工程において、保護基が導入され、再び除去されなければならず、それぞれの新たな成長段階の開始前に、集中的な洗浄処理が必要であることにより複雑であり、それが、デンドリマーを実験室規模でしか製造できない理由である。超分岐ポリマーも、それらの分子量分布により、それらを用いて改質される分散液の粘度特性を有利に有することができる。さらに、超分岐ポリマーは、デンドリマーより柔軟な構造を有する。
【0035】
高分岐ポリマーとしての適性は、基本的には、エチレン性不飽和化合物の重縮合、重付加または付加重合によって得られるものによって保有される。重縮合物および重付加物が好ましい。重縮合とは、水、アルコール、HCl等の低分子質量の化合物の脱離を伴う官能性化合物と好適な反応性化合物との反復化学反応を指す。重付加とは、低分子質量の化合物の脱離を伴わない官能性化合物と好適な反応性化合物との反復化学反応を指す。
【0036】
適性は、好ましくはエーテル基、エステル基、カーボネート基、アミノ基、アミド基、ウレタン基および尿素基から選択される官能基を含むポリマーによって保有される。
【0037】
ポリマーとして、特に、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミンおよびポリアミド、ならびにそれらのハイブリッド形、例えば、ポリ(尿素ウレタン)、ポリ(エーテルアミン)、ポリ(エステルアミン)、ポリ(エーテルアミド)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(アミドアミン)、ポリ(エステルカーボネート)、ポリ(エーテルカーボネート)、ポリ(エーテルエステル)、ポリ(エーテルエステルカーボネート)等を使用することが可能である。
【0038】
好適な超分岐ポリマーは、エーテル、アミン、エステル、カーボネート、アミドならびにそれらのハイブリッド形、例えば、エステルアミド、アミドアミン、エステルカーボネート、エーテルカーボネート、エーテルエステル、エーテルエステルカーボネート、尿素ウレタン等を基礎とするものである。
【0039】
超分岐ポリマーとして、特に、超分岐ポリカーボネート、超分岐ポリ(エーテルカーボネート)、超分岐ポリ(エーテルエステル)、超分岐ポリ(エーテルエステルカーボネート)、超分岐ポリエステル、超分岐ポリエーテル、超分岐ポリウレタン、超分岐ポリ(尿素ウレタン)、超分岐ポリ尿素、超分岐ポリアミン、超分岐ポリアミド、超分岐ポリ(エーテルアミン)、超分岐ポリ(エステルアミン)、超分岐ポリ(エーテルアミド)、超分岐ポリ(エステルアミド)およびそれらの混合物を使用することが可能である。超分岐ポリマーの1つの具体的な型は、超分岐ポリカーボネートである。超分岐ポリマーの別の具体的な型は、窒素原子を含む超分岐ポリマー、特にポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド、ポリ(エステルアミド)およびポリ(エステルアミン)である。
【0040】
高分岐ポリマーとして、超分岐ポリカーボネート、ポリ(エーテルカーボネート)、ポリ(エステルカーボネート)またはポリ(エーテルエステルカーボネート)、または少なくとも1つの超分岐ポリカーボネート、ポリ(エーテルカーボネート)、ポリ(エステルカーボネート)またはポリ(エーテルエステルカーボネート)を含む超分岐ポリマーの混合物を使用するのが好適である。
【0041】
本発明の使用に好適な超分岐ポリマーおよびそれらの製造のための方法は、全体が参考として援用される以下の文献に記載されている。
− WO2005/026234に記載の高分岐および特に超分岐ポリカーボネート、
− WO01/46296、DE10163163、DE10219508またはDE10240817に記載の超分岐ポリエステル、
− WO03/062306、WO00/56802、DE10211664またはDE19947631に記載の高分岐ポリマー、
− WO2006/087227に記載の窒素原子を含む超分岐ポリマー(特に、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド、ポリ(エステルアミド)、ポリ(エステルアミン))、
− WO97/02304またはDE19904444に記載の超分岐ポリウレタン、
− WO97/02304またはDE19904444に記載の超分岐ポリ(尿素ウレタン)、
− WO03/066702、WO005/044897およびWO2005/075541に記載の超分岐ポリ尿素、
− WO2005/007726に記載の超分岐アミノ含有ポリマー、特にポリ(エステルアミン)、
− WO99/16810またはEP1036106に記載の超分岐ポリ(エステルアミド)、
− WO2006/018125に記載の超分岐ポリアミド、
− WO2006/089940に記載の超分岐ポリ(エステルカーボネート)。
【0042】
好適なポリマーは、約500〜500000、好ましくは750〜200000、特に1000〜100000の質量平均分子量Mwを有するポリマーである。モル質量を、ポリメチルメタクリレートなどの標準を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0043】
本発明の文脈において、「アルキル」という表現は、直鎖および分枝状アルキル基を含む。好適な短鎖アルキル基は、例えば、直鎖または分枝状C1−C7アルキル、好ましくはC1−C6アルキル、より好ましくはC1−C4アルキル基である。それらは、特に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、2−エチルペンチル、1−プロピルブチル等を含む。
【0044】
好適なより長鎖のC8−C30アルキル基は、直鎖または分枝状アルキル基である。それらは、好ましくは、天然または合成脂肪酸および脂肪アルコールならびにオキソ法アルコールの種類の主として直鎖状アルキル基である。それらは、例えば、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−ノナデシルを含む。「アルキル」という表現は、非置換および置換アルキル基を含む。
【0045】
アルキルについての上記表現は、アリールアルキルにおけるアルキル成分にも適用される。好適なアリールアルキル基は、ベンジルおよびフェニルエチルである。
【0046】
本発明の文脈におけるC8−C32アルケニルは、一不飽和、二不飽和または多不飽和であってよい直鎖および分枝状アルケニル基を表す。C10−C20アルケニルが好ましい。「アルケニル」という表現は、非置換および置換アルケニル基を含む。当該基は、特に、天然または合成脂肪酸および脂肪アルコールならびにオキソ法アルコールの種類の主として直鎖状アルケニル基である。それらは、特に、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、リノリル、リノレニル、エレオステアリールおよびオレイル(9−オクタデセニル)を含む。
【0047】
本発明の意味における「アルキレン」という表現は、メチレン、1,2−エチレン、1,3−プロピレン等の、1〜7個の炭素原子を有する直鎖または分枝状アルカンジイル基を指す。
【0048】
シクロアルキルは、好ましくは、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチルなどのC4−C8シクロアルキルを指す。
【0049】
「アリール」という表現は、本発明の目的では、非置換であっても置換されていてもよい単環式または多環式芳香族炭化水素基を含む。「アリール」という表現は、好ましくは、フェニル、トリル、キシリル、メシチル、ジュリル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル、フェナトレニルまたはナフチルを指し、より好ましくはフェニルまたはナフチルを指し、これらのアリール基は、置換されている場合は、通常、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つ、好ましくは1つ、2つまたは3つの置換基を担持することが可能である。
【0050】
本発明の方法における使用に好適な超分岐ポリマーの合成に対する適性は、特に、ABxモノマーと呼ばれるものによって保有される。これらのモノマーは、互いに反応して結合を形成することが可能な2つの異なる官能基AおよびBを有する。官能基Aは、1分子当たり1つしか存在せず、官能基Bは、2つ以上存在する(例えばAB2またはAB3モノマー)。ABxモノマーを分枝の形で超分岐ポリマーに完全に組み込むことができる。それらを末端基として組み込むことでx個の遊離B基を持たせることができる。それらを直鎖状基として組み込んで(x−1)個の遊離B基を持たせることができる。得られた超分岐ポリマーは、末端基としても側基としても、重合度に応じてより多くの、またはより少ないB基を有する。さらなる詳細は、例えば、Journal of Molecular Science,Rev.Macromol.Chem.Phys.C37(3),555−579(1997)に見いだされる。
【0051】
超分岐構造の合成を通じて得られる基(例えば、超分岐ポリカーボネートの場合はカルボネート基;超分岐ポリウレタンの場合はウレタンおよび/または尿素基、ならびにイソシアネート基の反応に由来するさらなる基;超分岐ポリアミドの場合はアミド基等)に加えて、本発明に従って使用される超分岐ポリマーは、好ましくは、少なくとも4つのさらなる官能基を含む。これらの官能基の最大数は、一般には重要でない。しかし、多くの場合、100を超えない。官能基の数は、好ましくは4〜100、特に5〜80、特に6〜50である。
【0052】
本発明に従って使用される超分岐ポリマーのさらなる末端官能基は、例えば、−OC(=O)OR、−COOH、−COOR、−CONH2、−CONHR、−OH、−NH2、−NHRおよび−SO3Hから互いに独立して選択される。OH、COOHおよび/またはROC(=O)O−基を末端とする超分岐ポリマーは、特に有利であることが証明された。
【0053】
超分岐ポリカーボネート
凍結/融解安定性を向上させるための使用に好適な超分岐ポリカーボネートを、例えば、
a)RaおよびRbがそれぞれ直鎖または分枝状アルキル、アリールアルキル、シクロアルキルおよびアリール基から互いに独立して選択され、RaおよびRbが、それらに結合した基−OC(=O)O−と一緒になって環式カーボネートになることも可能である一般式RaOC(=O)ORbの少なくとも1つの有機カーボネート(A)と、少なくとも3つのOH基を含む少なくとも1つの脂肪族アルコール(B)とを反応させ、アルコールRaOHおよびRbOHを脱離させて1つ以上の縮合生成物(K)を得て、
b)縮合生成物(K)を分子間反応させて高官能性超分岐ポリカーボネートを得ることによって製造することができ、反応混合物におけるカーボネートに対するOH基の比は、縮合生成物(K)が平均で1つのカーボネート基および2つ以上のOH基、または1つのOH基および2つ以上のカーボネート基を含むように選択される。基RaおよびRbは、同一の、または異なる定義を有することができる。1つの具体的な型において、RaおよびRbは同一の定義を有する。好ましくは、RaおよびRbは、以上に定義されているC1−C20アルキル、C5−C7シクロアルキル、C6−C10アリールおよびC6−C10アリール−C1−C20アルキルから選択される。RaおよびRbは、また、一緒になってC2−C6アルキレン基になり得る。特に好ましくは、RaおよびRbは、以上に定義されている直鎖および分枝状C1−C5アルキルから選択される。
【0054】
ジアルキルまたはジアリールカーボネートを、例えば、脂肪族、芳香脂肪族または芳香族アルコール、好ましくはモノアルコールとホスゲンとの反応から製造することができる。また、それらを、貴金属、酸素またはNOxの存在下でのCOによるアルコールまたはフェノールの酸化カルボニル化によって製造することもできる。ジアリールまたはジアルキルカーボネートの製造方法に関しては、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,6th,Edition,2000 Electronic Release,Wiley−VCHをも参照されたい。
【0055】
好適なカーボネートの例は、エチレンカーボネート、1,2−または1,3−プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ジキシリルカーボネート、ジナフチルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、ジデシルカーボネートおよびジドデシルカーボネート等の脂肪族または芳香族カーボネートを包含する。
【0056】
脂肪族カーボネート、特に、基が1〜5個のC原子を含むもの、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネートまたはジイソブチルカーボネートを使用することが好ましい。
【0057】
有機カーボネートと、少なくとも3つのOH基を含む少なくとも1つの脂肪族アルコール(B)、または2つ以上のアルコールの混合物とを反応させる。
【0058】
少なくとも3つのOH基を有する化合物の例は、グリセロール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミン、トリス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミン、ペンタエリスリトール、ビス(トリメチロールプロパン)、ジ(ペンタエリスリトール)、ジ、トリもしくはオリゴグリセロール、またはグルコールなどの糖、3以上の官能性を有し、3以上の官能性を有するアルコールを基礎とするポリエテロール、および酸化エチレン、酸化プロピレンもしくは酸化ブチレン、またはポリエステロールである。グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、および酸化エチレンまたは酸化プロピレンを基礎とするそれらのポリエテロールが特に好ましい。
【0059】
これらの多官能性アルコールを、使用されるアルコールすべての平均OH官能性が全部で2より大きいことを条件として、二官能性アルコール(B’)の混合物に使用することもできる。2つのOH基を有する好適な化合物の例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−および1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,2−、1,3−および1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールおよび二官能性ポリエテロールまたはポリエステロールを含む。
【0060】
本発明に従って使用される高官能超分岐ポリカーボネートを得るためのカーボネートとアルコールまたはアルコール混合物との反応は、一官能アルコールまたはフェノールのカーボネート分子からの脱離によって生じる。
【0061】
概説された方法によって形成された高官能性超分岐ポリカーボネートは、反応後、すなわちさらに変性することなく、ヒドロキシル基および/またはカーボネート基で終端される。それらは、様々な溶媒、例えば、水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、アルコール/水混合物、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピル、酢酸メトキシエチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートに容易に溶解する。
【0062】
高官能性ポリカーボネートとは、本発明の文脈において、ポリマー骨格を形成するカーボネート基の他に、さらに少なくとも4つ、好ましくは少なくとも8つの官能基を末端または側鎖に有する生成物を指す。官能基は、カーボネート基および/またはOH基である。基本的に、末端または側鎖官能基の数に上限はないが、非常に多くの官能基を有する生成物は、例えば高粘度または低溶解度などの望ましくない特性を示し得る。本発明の高官能性ポリカーボネートは、一般には500個の末端または側鎖官能基、好ましくは100個を超えない末端または側鎖官能基、特に50を超えない末端または側鎖官能基を有する。
【0063】
高官能性ポリカーボネートを製造するためには、得られた最も単純な縮合生成物(以降、縮合生成物(K)と呼ぶ)が平均で1つのカーボネート基および2つ以上のOH基または1つのOH基および2つ以上のカーボネート基を含むように、OH含有化合物とカーボネートとの比を設定する必要がある。カーボネート(A)とジアルコールまたはポリアルコール(B)との縮合生成物(K)の最も単純な構造は、構造体XYnまたはYXn(Xはカーボネート基であり、Yはヒドロキシル基であり、nは、1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数である)をもたらす。単一の基として得られる反応性基は、以降「焦点基」と称する。
【0064】
例えば、カーボネートおよび二価アルコールからの最も単純な縮合生成物(K)の製造において、反応比が1:1である場合は、結果は概して一般式1に示すXY型の分子になる。
【0065】
【化1】

【0066】
反応比を1:1としてカルボネートおよび三価アルコールから縮合生成物(K)を製造する場合は、結果は概して一般式2に示すXY2型の分子になる。焦点基はカーボネート基である。
【0067】
【化2】

【0068】
やはり反応比を1:1としてカーボネートおよび四価アルコールから縮合生成物(K)を製造する場合は、結果は概して一般式3に示すXY3型の分子になる。焦点基はカーボネート基である。
【0069】
【化3】

【0070】
式1〜3において、Rは冒頭で定義した意味を有し、R1は脂肪族基である。
【0071】
例えば、モルを基礎とする反応比が2:1である、一般式4に示すカーボネートおよび三価アルコールから縮合生成物(K)を製造することもできる。ここでは、結果は概してX2Y型の分子になり、焦点基は、OH基になる。式4において、RおよびR1は式1〜3と同じ意味を有する。
【0072】
【化4】

【0073】
二官能性化合物、例えばジオールのジカーボネートが成分にさらに添加される場合は、生成物は、例えば式5に示すように連鎖延長である。ここでも結果は概してXY2型の分子になり、焦点基は、カーボネート基になる。
【0074】
【化5】

【0075】
式5において、R2は有機基、好ましくは脂肪族基であり、RおよびR1は上記に定義した通りである。
【0076】
例えば式1〜5に示した単純な縮合生成物(K)は、本発明に従って分子間反応して、高官能性重縮合生成物(P)を形成する。縮合生成物(K)を得るとともに、重縮合生成物(P)を得るための反応は、通常0〜250℃、好ましくは60〜160℃の温度でバルクまたは溶液で行われる。この文脈において、一般に、それぞれの反応物質に対して不活性なあらゆる溶媒を使用することが可能である。例えば、デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたは溶媒ナフサなどの有機溶媒を使用することが好ましい。
【0077】
好適な一実施形態において、縮合反応はバルクで実施される。反応中に放出される一官能アルコールROHまたはフェノールを、適切であれば減圧下で、蒸留手段によって行われる除去のように、反応を加速させるために反応平衡から除去することができる。
【0078】
蒸留除去が意図される場合は、概して、140℃未満の沸点を有するアルコールROHを反応中に放出させるカーボネートを使用するのが適切である。
【0079】
反応を加速させるために、触媒または触媒混合物を添加することも可能である。好適な触媒は、エステル化またはエステル交換を触媒する化合物、例えば、好ましくはナトリウム、カリウムもしくはセシウムのアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、三級アミン、グアニジン、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、有機アルミニウム、有機スズ、有機亜鉛、有機チタン、有機ジルコニウムまたは有機ビスマス化合物、ならびに例えばDE10138216またはDE10147712に記載されている二重金属シアン化物として知られる種類の触媒である。
【0080】
水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、イミダゾール、例えばイミダゾール、1−メチルイミダゾールもしくは1,2−ジメチルイミダゾール、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、酸化ジブチルスズ、ジラウリル酸ジブチルスズ、ジオクタン酸スズ、アセチルアセトン酸ジルコニウムまたはそれらの混合物を使用するのが好ましい。
【0081】
触媒は、一般には、採用されるアルコールまたはアルコール混合物の量に対して50〜10000質量ppm、好ましくは100〜5000質量ppmの量で添加される。
【0082】
また、適切な触媒を添加することおよび/または好適な温度を選択することによって、分子間重縮合反応を制御することも可能である。加えて、ポリマー(P)の平均分子量を、出発成分の組成および滞留時間を介して調整することができる。
【0083】
高温で製造された縮合生成物(K)および重縮合生成物(P)は、通常、比較的長時間にわたって室温で安定する。
【0084】
縮合生成物(K)の性質に鑑みて、縮合反応は、分枝を有するが架橋を有さない異なる構造を有する重縮合生成物(P)をもたらす可能性がある。また、重縮合生成物(P)は、理想的には、1つのカーボネート焦点基および2つ以上のOH基、あるいは1つのOH焦点基および2つ以上のカーボネート基を含む。反応性基の数は、採用される縮合生成物(K)の性質および重縮合度に左右される。
【0085】
例えば、一般式2による縮合生成物(K)は、三重の分子間縮合によって反応して、一般式6および7で再生される2つの異なる重縮合生成物(P)を形成することができる。
【0086】
【化6】

【0087】
式6および7において、RおよびR1は上記に定義した通りである。
【0088】
分子間重縮合反応を終了させるために、様々な可能性がある。例として、温度を、反応が静止し、生成物(K)および重縮合生成物(P)が貯蔵に際して安定する範囲まで下げることができる。
【0089】
さらなる実施形態において、縮合生成物(K)の分子間反応が、所望の重縮合度を有する重縮合生成物(P)を生成させるや否や、(P)の焦点基と反応性がある基を有する生成物を生成物(P)に添加することによって反応を停止することができる。例えば、カーボネート焦点基の場合は、例えばモノ、ジまたはポリアミンを添加することができる。ヒドロキシル焦点基の場合は、生成物(P)に、例えば、モノ、ジまたはポリイソシアネート、エポキシド基を含む化合物、あるいはOH基と反応性がある酸誘導体を添加することができる。
【0090】
本発明の高官能性ポリカーボネートは、一般に、バッチ式、半バッチ式または連続式で動作する反応器または反応器カスケードにて、0.1mbar〜20bar、好ましくは1mbar〜5barの圧力範囲で製造される。
【0091】
前記反応条件の設定の結果として、かつ適切であれば好適な溶媒の選択の結果として、生成物を、さらに精製することなく、製造後にさらに処理することができる。
【0092】
さらなる好適な実施形態において、ポリカーボネートは、反応によって既に得られた官能基ばかりでなく、さらなる官能基を含むことができる。官能化は、この場合、分子量の増量時、あるいはその後、すなわち実際の重縮合の終了後に起こり得る。
【0093】
分子量の増量の前または最中に、ヒドロキシルまたはカーボネート基の他にさらなる官能基または官能性元素を有する成分が添加されると、ランダムに分布した、カーボネートおよびヒドロキシル基と異なる官能基を有するポリカーボネートポリマーが得られる。
【0094】
ヒドロキシル、カーボネートまたは塩化カルバモイル基に加えて、さらなる官能基または官能性元素、例えば、メルカプト基、一級、二級もしくは三級アミノ基、エーテル基、カルボン酸誘導体、スルホン酸誘導体、ホスホン酸誘導体、アリール基または長鎖アルキル基を担持する化合物を重縮合中に添加することによって、この種の効果を達成することができる。カルバメート基を用いた変性のために、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、2−(ブチルアミノ)エーテル、2−(シクロヘキシルアミノ)エーテル、2−アミノ−1−ブタノール、2−(2’−アミノエトキシ)エタノールもしくはアンモニアのより高級なアルコキシ化生成物、4−ヒドロキシピペリジン、1−ヒドロキシエチルピペラジン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンまたはイソホロンジアミンを使用することが可能である。
【0095】
メルカプト基を用いた変性のために、例えばメルカプトエタノールを使用することが可能である。例えば、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミンまたはN,N−ジメチルエタノールアミンを組み込むことによって、三級アミン基を生成することができる。例えば、2つ以上の官能性を有するポリエテロールを縮合中に組み込むことによってエーテル基を生成することができる。長鎖アルカンジオールとの反応は、長鎖アルキル基を組み込むことを可能にする。アルキルまたはアリールジイソシアネートとの反応は、アルキル、アリールおよびウレタン基を含むポリカーボネートを生成する。
【0096】
得られた高官能性超分岐ポリカーボネートと、ポリカーボネートのOH基および/またはカーボネート基と反応することが可能な好適な官能化剤とを反応させることによって次の官能基を得ることができる。
【0097】
ヒドロキシル基を含む高官能性超分岐ポリカーボネートを、例えば、酸基またはイソシアネート基を含む分子を加えることによって変性させることができる。酸基を含むポリカーボネートを、例えば、無水基を含む化合物との反応によって得ることができる。
【0098】
また、ヒドロキシル基を含む高官能性ポリカーボネートを、酸化アルキレン、例えば酸化エチレン、酸化プロピレンまたは酸化ブチレンとの反応によって高官能性ポリカーボネート−ポリエーテルポリオールに変換することもできる。
【0099】
本発明の方法の大きな利点は、その経済性にある。縮合生成物(K)または重縮合生成物(P)を形成するための反応および他の官能基または元素とポリカーボネートを形成するための(K)または(P)の反応の両方を1つの反応装置で行うことができ、それは、技術的にも経済的にも有利である。
【0100】
超分岐ポリエステル
超分岐ポリエステルとして、A2x型のものを使用するのが好適である。A23型の超分岐ポリエステルが特に好適である。これらのA23ポリエステルは、AB2型の超分岐ポリエステルと比較すると、より柔軟な構造を有する。そのため、AB2型の超分岐ポリエステルは比較的好適でない。凍結/融解安定性を向上させるための使用に好適な超分岐ポリエステルは、少なくとも1つの脂肪族、脂環式、芳香脂肪族もしくは芳香族ジカルボン酸(A2)またはその誘導体と、
a)少なくとも1つの少なくとも三官能性の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族もしくは芳香族アルコール(B3)とを、または
b)3つ以上のOH基を含む少なくとも1つのx価の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族もしくは芳香族アルコール(Cx)(xは、2より大きい数、好ましくは3〜8、より好ましくは3〜6、非常に好ましくは3〜4、特に3である)を有する少なくとも1つの二価の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族もしくは芳香族アルコール(B2)と、を反応させ、あるいは
少なくとも1つの脂肪族、脂環式、芳香脂肪族もしくは芳香族カルボン酸(Dy)(yは、2より大きい数、好ましくは3〜8、より好ましくは3〜6、非常に好ましくは3〜4、特に3である)、または3つ以上の酸基を含むその誘導体と、
c)少なくとも1つの少なくとも二官能性の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族もしくは芳香族アルコール(B2)とを、または
d)3つ以上のOH基を含む少なくとも1つのx価の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族もしくは芳香族アルコール(Cx)(xは、2より大きい数、好ましくは3〜8、より好ましくは3〜6、非常に好ましくは3〜4、特に3である)を有する少なくとも1つの二価の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族もしくは芳香族アルコール(B2)とを、
e)適切であればさらなる官能化単位Eの存在下で反応させ、
f)場合により続いてモノカルボン酸Fと反応させることによって得られ、
反応混合物における反応性基の比率は、OH基とカルボキシ基またはその誘導体とのモル比を5:1〜1:5、好ましくは4:1〜1:4、より好ましくは3:1〜1:3、非常に好ましくは2:1〜1:2に設定するように選択される。
【0101】
超分岐ポリエステルとは、本発明の目的では、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有し、構造的にも分子的にも不均一である非架橋ポリエステルを指す。非架橋とは、本明細書の目的では、ポリマーの不溶性部分により測定した、存在する架橋の程度が15質量%未満、好ましくは10質量%未満であることを意味する。ポリマーの不溶性部分は、ソックスレー装置にて、どの溶媒がポリマーに対してより良好な溶解力を有するかに応じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーに採用されたのと同じ溶媒、換言すればテトラヒドロフランまたはヘキサフルオロイソプロパノールを使用して4時間抽出し、残渣を一定質量まで乾燥させ、残った残渣を秤量することによって測定された。
【0102】
ジカルボン酸(A2)としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン−α,ω−ジカルボン酸、ドデカン−α,ω−ジカルボン酸、シス−およびトランス−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、シス−およびトランス−シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シス−およびトランス−シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シス−およびトランス−シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸、シス−およびトランス−シクロペンタン−1,3−ジカルボン酸が挙げられる。また、例えばフタル酸、イソフタル酸またはテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸を使用することも可能である。マレイン酸またはフマル酸などの不飽和ジカルボン酸も同様に使用することができる。
【0103】
前記ジカルボン酸は、C1−C10アルキル基、C3−C12シクロアルキル基、メチレンもしくはエチリデンなどのアルキレン基、またはC6−C14アリール基から選択される1つ以上の基によって置換されていてもよい。挙げることができる置換ジカルボン酸の代表例には、2−メチルマロン酸、2−エチルマロン酸、2−フェニルマロン酸、2−メチルコハク酸、2−エチルコハク酸、2−フェニルコハク酸、イタコン酸、3,3−ジメチルグルタル酸が含まれる。
【0104】
前記ジカルボン酸の2種以上の混合物を使用することも可能である。
【0105】
ジカルボン酸をそのまま、またはそれらの誘導体の形で使用することができる。
【0106】
1−C4アルキルは、具体的には、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチル、好ましくは、メチル、エチルおよびn−ブチル、より好ましくはメチルおよびエチル、非常に好ましくはメチルである。
【0107】
ジカルボン酸と1つ以上のその誘導体との混合物を使用することも可能である。1つ以上のジカルボン酸の2つ以上の異なる誘導体の混合物を使用することも可能である。
【0108】
マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,2−、1,3−もしくは1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(ヘキサヒドロフタル酸)、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはそのモノアルキルもしくはジアルキルエステルの使用が特に好ましい。
【0109】
反応させることができるトリカルボン酸またはポリカルボン酸(Dy)の例としては、アコニチン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)およびメリット酸ならびに低分子量ポリアクリル酸が挙げられる。
【0110】
トリカルボン酸またはポリカルボン酸(Dy)をそのまま、または誘導体の形で使用することができる。
【0111】
誘導体は、モノマーまたはポリマーの形の対応する無水物、モノまたはジアルキルエステル、好ましくはモノまたはジ−C1−C4−アルキルエステル、より好ましくはモノまたはジメチルエステルあるいは対応するモノまたはジエチルエステル、さらにモノおよびジビニルエステル、ならびに混合エステル、好ましくは、異なるC1−C4−アルキル成分を有する混合エステル、より好ましくは混合メチルエチルエステルである。
【0112】
トリカルボン酸またはポリカルボン酸と1つまたは複数のその誘導体との混合物、例えば、ピロメリット酸とピロメリット酸二無水物との混合物を使用することも可能である。1つまたは複数のトリカルボン酸またはポリカルボン酸の2つ以上の異なる誘導体の混合物、例えば、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸とピロメリット酸二無水物との混合物を使用することも可能である。
【0113】
使用されるジオール(B2)としては、例えば、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,2−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−2,3−ジオール、ペンタン−1,2−ジオール、ペンタン−1,3−ジオール、ペンタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ペンタン−2,3−ジオール、ペンタン−2,4−ジオール、ヘキサン−1,2−ジオール、ヘキサン−1,3−ジオール、ヘキサン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ヘキサン−2,5−ジオール、ヘプタン−1,2−ジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール、1,2−および1,3−シクロペンタンジオール、1,2−、1,3−および1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−、1,2−、1,3−および1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,1−、1,2−、1,3−および1,4−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、(2)−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールHO(CH2CH2O)n−HもしくはポリプロピレングリコールHO(CH[CH3]CH2O)n−H(nは、整数で4以上である)、ポリエチレン−ポリプロピレングリコール(酸化エチレンもしくは酸化プロピレン単位の連鎖がブロックもしくはランダムである)、好ましくはモル質量が5000g/molまでのポリテトラメチレングリコール、好ましくはモル質量が5000g/molまでのポリ−1,3−プロパンジオール、ポリカプロラクトン、または上記化合物の2つ以上の代表例の混合物が挙げられる。上記ジオールにおける1つまたは両方のヒドロキシル基が、SH基によって置換されていてよい。その使用が好適であるジオールは、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−、1,3−および1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−および1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンおよびジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールHO(CH2CH2O)n−HもしくはポリプロピレングリコールHO(CH[CH3]CH2O)n−H(nは、整数で4以上である)、ポリエチレン−ポリプロピレングリコール(酸化エチレンまたは酸化プロピレン単位の連鎖がブロックまたはランダムである)、またはポリテトラメチレングリコールである。ポリアルキレングリコールの分子量は好ましくは5000g/molまでである。
【0114】
二価アルコールB2は、さらなる官能基、例えばカルボニル、カルボキシル、アルコキシカルボニルまたはスルホニル、例えばジメチロールプロピオン酸もしくはジメチロール酪酸、ならびにそれらのC1−C4アルキルエステル、モノステアリン酸グリセロールまたはモノオレイン酸グリセロールを場合によって含むこともできる。
【0115】
少なくとも3の官能性を有するアルコール(Cx)は、グリセロール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミン、トリス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミン、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、トリグリセロールもしくはグリセロールのより高級な縮合体、ジ(トリメチロールプロパン)、ジ(ペンタエリスリトール)、トリスヒドロキシメチルイソシアヌレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)、トリス(ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート、イノシトールもしくは糖、例えばグルコール、フルクトースもしくはスクロース、糖アルコール、例えばソルビトール、マンニトール、トレイトール、エリスリトール、アドニトール(リビトール)、アラビトール(リキシトール)、キシリトール、ジュルシトール(ガラシトール)、マルチトール、イソマルト、3以上の官能性を有するアルコール、酸化エチレン、酸化プロピレンおよび/または酸化ブチレンを基礎とする、3以上の官能性を有するポリエテロールを含む。
【0116】
ここで、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ビス(トリメチロールプロパン)、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジ(ペンタエリスリトール)、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ならびに酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンを基礎とするそれらのポリエテロールが特に好ましい。
【0117】
反応を溶媒の非存在下または存在下で実施することができる。好適な溶媒の例としては、パラフィン、芳香族化合物、エーテルおよびケトンなどの炭化水素が挙げられる。好ましくは、反応は、溶媒を使用せずに実施される。反応の開始時に添加される添加剤としての水除去剤の存在下で反応を実施することが可能である。好適な例としては、分子篩、特に分子篩4Å、MgSO4およびNa2SO4が挙げられる。反応中に蒸留によって水および/またはアルコールを除去すること、および例えば水分離器を使用することも可能であり、その場合、共沸剤を利用して水を除去する。
【0118】
反応を触媒の非存在下で実施することができる。しかし、少なくとも1つの触媒の存在下で処理することが好適である。これらは、好ましくは、酸性無機有機金属もしくは有機触媒、または2つ以上の酸性無機有機金属もしくは有機触媒の混合物である。
【0119】
酸性無機触媒は、本発明の目的では、例えば、硫酸、硫酸塩および硫酸水素ナトリウムなどの硫酸水素塩、リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、硫酸アルミニウム水和物、ミョウバン、酸性シリカゲル(pH≦6、特に≦5)および酸性酸化アルミニウムである。使用できるさらなる酸性無機触媒としては、例えば、一般式Al(OR13のアルミニウム化合物およびチタン酸塩が挙げられる。好適な酸性有機金属触媒は、例えば、ジアルキルスズ酸化物またはジアルキルスズエステルである。好適な酸性有機触媒は、例えば、リン酸塩基、スルホン酸基、硫酸塩基またはホスホン酸基を含む酸性有機化合物である。酸性イオン交換樹脂を酸性有機触媒として使用することもできる。
【0120】
反応は、60〜250℃の温度で実施される。
【0121】
本発明に従って使用される超分岐ポリエステルは、少なくとも500、好ましくは少なくとも600、より好ましくは1000g/molの分子量Mwを有する。分子量Mwの上限は、好ましくは、500000g/molであり、特に好ましくは200000g/molを超えず、非常に好ましくは100000g/molを超えない。
【0122】
多分散度ならびに数平均分子量および質量平均分子量MnおよびMwについての数字は、ポリメチルメタクリレートを標準として使用し、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはヘキサフルオロイソプロパノールを溶離剤として使用してゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって得られた測定値を指す。該方法は、Analytiker Taschenbuch,vol.4,pp. 433−442,Berlin 1984に記載されている。
【0123】
本発明に従って使用されるポリエステルの多分散度は、一般に1.2〜50、好ましくは1.4〜40、より好ましくは1.5〜30、非常に好ましくは2〜30である。
【0124】
超分岐ポリウレタン
本明細書に使用されているように、「ポリウレタン」という用語は、慣習的な理解を超えており、ジ−またはポリイソシアネートと活性水素化合物との反応によって得られ、ウレタン構造ばかりでなく、尿素、アロファネート、ビウレット、カルボジイミド、アミド、ウレトニミン、ウレトジオン、イソシアヌレートまたはオキサゾリドン構造によって結合可能であるポリマーを含む。
【0125】
本発明に従って使用される超分岐ポリウレタンを、イソシアネート基ばかりでなく、イソシアネート基と反応して結合を形成することが可能な基を含むABxモノマーを使用して合成することができる。本発明に従って使用される超分岐ポリウレタンを合成するために、最初に、中間体として、ABx(xは、2〜8の自然数、好ましくは2または3である)構成単位を形成するモノマー混合物を採用することも可能である。当該超分岐ポリウレタンおよびそれらを製造するための方法は、参考として本明細書で援用されるWO97/02304に記載されている。ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートと、少なくとも2つのイソシアネート反応性基、その反応性が他の反応物質と異なる官能基を含む反応物質の少なくとも1つを有する化合物とを反応させ、核反応工程において、一定の反応性基のみがそれぞれの場合において互いに反応するように反応条件を選択することによって好適な超分岐ポリウレタンを得ることもできる。当該超分岐ポリウレタンおよびそれらを製造するための方法は、参考として本明細書で援用されるEP1026185に記載されている。
【0126】
イソシアネート反応性基は、好ましくは、OH−、NH2−、NHRまたはSH基である。
【0127】
ABxモノマーは、従来の方法で製造可能である。ABxモノマーは、例えば、保護基の技術を使用してWO97/02304に記載されている方法によって合成される。この技術を、2,4−トルイレンジイソシアネート(TDI)およびトリメチロールプロパンからのAB2モノマーの製造を参照して説明することができる。第1に、TDIのイソシアネート基の1つを、例えばオキシムとの反応によって従来の方法で遮断する。残留する遊離NCO基は、トリメチロールプロパンと反応するが、3つのOH基の1つだけがイソシアネート基と反応し、他の2つのOH基はアセタール化によって遮断される。保護基の脱離により、1つのイソシアネート基および2つのOH基を有する分子が残る。
【0128】
ABx分子を合成するための特に有利な方法は、保護基を必要としないDE−A19904444に記載の方法によるものである。ジまたはポリイソシアネートをこの方法に使用し、少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する化合物と反応させる。反応物質の少なくとも1つは、他の反応物質と異なる反応性を有する基を有する。好ましくは、両方の反応物質は、他の反応物質と反応性が異なる基を有する。反応条件は、一定の反応性基のみが互いに反応することができるように選択される。
【0129】
有用なジおよびポリイソシアネートとしては、先行技術から既知の脂肪族、脂環式および芳香族イソシアネートが挙げられる。好適なジまたはポリイソシアネートは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、モノマージフェニルメタンジイソシアネートとオリゴマージフェニルメタンジイソシアネート(ポリマーMDI)の混合物、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ドデシルジイソシアネート、リシンアルキルエステルジイソシアネート(アルキルは、C1−C10アルキルである)、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサンまたは4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネートである。
【0130】
反応性が異なるNCO基を有するジまたはポリイソシアネート、例えば、2,4−トルイレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、トリイソシアナトトルエン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2−ブチル−2−エチルペンタメチレンジイソシアネート、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、3(4)−イソシアナトメチル−1−メチルシクロヘキシルイソシアネート、1,4−ジイソシアナト−4−メチルペンタン、2,4’−メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネートおよび4−メチルシクロヘキサン1,3−ジイソシアネート(H−TDI)が特に好ましい。さらに、そのNCO基が最初は同等の反応性を有するが、アルコールまたはアミンのNCO基への第1の添加を利用して、第2のNCO基に対する反応性の低下を誘発することができるイソシアネート(b)が特に好ましい。それらの例は、そのNCO基が非局在化電子系を介してカップリングされたイソシアネート、例えば、1,3−および1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネートまたは2,6−トルイレンジイソシアネートである。
【0131】
さらに、例えば、ウレタン、アロファネート、尿素、ビウレット、ウレトジオン、アミド、イソシアヌレート、カルボジイミド、ウレトニミン、オキサジアジントリオンまたはイミノオキサジアジンジオン構造を用いた結合によって記載のジもしくはポリイソシアネートまたはそれらの混合物から製造可能なオリゴまたはポリイソシアネートを使用することが可能である。
【0132】
少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有するものとして使用される化合物は、好ましくは、その官能基がNCO基に対して異なる反応性を有する二、三または四官能性化合物である。少なくとも1つの一級ヒドロキシル基および少なくとも1つの二級ヒドロキシル基、少なくとも1つのヒドロキシル基および少なくとも1つのメルカプト基を有する化合物が好ましく、アミノは実質的にヒドロキシルよりイソシアネートとの反応性が強いため、少なくとも1つのヒドロキシル基および少なくとも1つのアミノ基を分子内に有する化合物、特に、アミノアルコール、アミノジオールおよびアミノトリオールが特に好ましい。
【0133】
少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する前記化合物の例は、プロピレングリコール、グリセロール、メルカプトエタノール、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールまたはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである。記載の化合物の混合物を使用することもできる。
【0134】
AB2分子の製造をジイソシアネートとアミノジオールについて説明することができる。第1に、1モルのジイソシアネートを1モルのアミノジオールと低温、好ましくは−10〜30℃の範囲の温度で反応させる。ウレタン形成反応は、この温度範囲で実質的に完全に抑制され、イソシアネートのより反応性の強いNCO基が、アミノジオールのアミノ基と専ら反応する。形成されたABx分子は、1つの遊離NCO基および2つの遊離OH基を有し、高分岐ポリウレタンを合成するために使用され得る。
【0135】
加熱および/または触媒添加すると、このAB2分子は、分子間反応して高分岐ポリウレタンを形成することができる。有利には、超分岐ポリウレタンの合成を、高温、好ましくは30〜80℃の範囲の温度で、さらなる反応工程においてAB2分子を予め単離することなく実施することができる。2つのOH基および1つのNCO基を有する上記AB2分子を使用すると、1分子当たり1つの遊離NCO基を有するとともに、重合度に応じて一定の数のOH基を有する超分岐ポリマーが得られる。反応を高変換率まで継続して非常に高分子量の構造を得ることができる。しかし、所望の分子量が達成されると、例えば、好適な一官能化合物の添加、またはAB2分子を製造するための出発化合物の1つの添加によって反応を停止することもできる。これにより、反応の終了に使用される出発化合物に応じて、完全NCO末端分子または完全OH末端分子が得られる。
【0136】
あるいは、例えば、1モルのグリセロールおよび2モルの2,4−TDIからAB2分子を製造することも可能である。一級アルコール基と4位のイソシアネート基が、低温で優先的に反応して、1つのOH基および2つのイソシアネート基を有し、記載されているように、より高温で超分岐ポリウレタンに変換され得る付加物を形成する。これにより、最初に、1つの遊離OH基を有し、重合度に応じて一定の数のNCO基を有する超分岐ポリマーが得られる。
【0137】
超分岐ポリウレタンを、基本的に、溶媒を使用することなく製造することができるが、好ましくは溶液で製造する。有用な溶媒としては、基本的に、室温で液体であり、モノマーおよびポリマーに対して不活性であるすべての化合物が挙げられる。
【0138】
さらなる変形合成法を通じて他の生成物が得られる。例えば、ジイソシアネートと、少なくとも4つのイソシアネート反応性基を有する化合物とを反応させることによってAB3分子が得られる。一例は、2,4−トルイレンジイソシアネートとトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとの反応である。
【0139】
それぞれのA基と反応することが可能な多官能性化合物を使用して重合を終了させることもできる。これにより、複数の小さい超分岐分子を互いに結合させて、大きな超分岐分子を形成することが可能である。
【0140】
例えば、重合反応ならびにさらにモル比が1:1のABx分子に対して、ジイソシアネートおよび2つのイソシアネート反応性基を有する化合物を使用することによって、連鎖拡張された分枝を有する超分岐ポリウレタンが得られる。しかし、これらのさらなるAAまたはBB化合物は、選択された反応条件下でAまたはB基に対して反応性を有してはならないさらなる官能基を有することもできる。これにより、さらなる官能基を超分岐ポリマーに導入することが可能である。
【0141】
超分岐ポリウレタンのためのさらなる変形合成法が、DE10013187およびDE10030869に開示されている。
【0142】
以上に記載したように、合成反応によって得られた超分岐ポリウレタンの官能基を疎水性化、親水性化またはトランス官能化することもできる。それらの反応性により、イソシアネート基を含む超分岐ポリウレタンは、トランス官能化に特に有用である。好適な反応パートナを用いてOH−またはNH2末端ポリウレタンをトランス官能化することも可能である。
【0143】
超分岐ポリウレタンに導入される好適な基は、−COOH、−CONH2、−OH、−NH2、−NHR、−NR2、−NR3+、−SO3Hおよびそれらの塩である。
【0144】
十分に酸性のH原子を有する基は、好適な塩基による処理によって、対応する塩に変換可能である。同様に、塩基性基は、好適な酸を使用して対応する塩に変換可能である。これにより、水に可溶である超分岐ポリウレタンを得ることが可能である。
【0145】
NCO末端生成物とアルコールおよびアミン、特に、C8−C40−アルキル基を有するアルコールおよびアミンとを反応させることによって、疎水性化生成物を得ることが可能である。
【0146】
NCO末端ポリマーとポリエーテルアルコール、例えばジ、トリ、テトラまたはポリエチレングリコールとの反応によって、親水化されているが、非イオン性の生成物が得られる。
【0147】
例えば、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシスルホン酸またはアミノ酸との反応によって酸基を組み込むことが可能である。好適な反応パートナの例は、2−ヒドロキシ酢酸、4−ヒドロキシ安息香酸、12−ヒドロキシドデカノン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、グリシンまたはアラニンである。
【0148】
異なる官能基を有する超分岐ポリウレタンを生成することも可能である。これを、例えば、様々な化合物の混合物との反応によって、あるいは本来存在している官能基の一部のみ、例えばOHおよび/またはNCO基の一部のみを反応させることによって達成することができる。
【0149】
超分岐ポリウレタンのトランス官能化を、有利には、NCO末端ポリウレタンを予め単離することなく、重合反応の直後に実施することができる。しかし、官能化を個別の反応で行うこともできる。
【0150】
本発明に従って使用される超分岐ポリウレタンは、一般に、平均で少なくとも4個〜100個までの官能基を有する。超分岐ポリウレタンは、好ましくは8〜80個、より好ましくは8〜50個の官能基を有する。好ましくは、使用される超分岐ポリウレタンは、1000〜500000g/mol、好ましくは5000〜200000g/mol、より好ましくは10000〜100000g/molの質量平均分子量Mwを有する。
【0151】
超分岐ポリ尿素
脱乳化剤として本発明に使用する高官能性超分岐ポリ尿素を、例えば、1つ以上のカーボネートと、少なくとも1つのアミンが少なくとも3つの一級および/または二級アミノ基を有する、少なくとも2つの一級および/または二級アミノ基を有する1つ以上のアミンとを反応させることによって得ることができる。
【0152】
好適なカーボネートは、脂肪族、芳香族または脂肪族−芳香族混合カーボネートであり、C1−C12アルキル基を有するジアルキルカーボネートなどの脂肪族カーボネートが好ましい。例は、エチレンカーボネート、1,2−もしくは1,3−プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ジナフチルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、ジデシルカーボネートまたはジドデシルカーボネートである。特に好ましく使用されるカーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートおよびジイソブチルカーボネートである。
【0153】
カーボネートと、少なくとも1つのアミンが少なくとも3つの一級および/または二級アミノ基を有する、少なくとも2つの一級および/または二級アミノ基を有する1つ以上のアミンとを反応させる。2つの一級および/または二級アミノ基を有するアミンは、ポリ尿素内に連鎖延長を生成するのに対して、3つ以上の一級または二級アミノ基を有するアミンは、得られた高官能性超分岐ポリ尿素における分枝に関与する。
【0154】
カーボネートまたはカルバメート基に対して反応性を有する2つの一級または二級アミノ基を有する好適なアミンは、例えば、エチレンジアミン、N−アルキル−エチレンジアミン、プロピレンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレンジアミン、N−アルキル−プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、N−アルキルブチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アルキルヘキサメチレンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ドデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、フェニレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−アミノプロピルシクロヘキシルアミン、3(4)−アミノメチル−1−メチルシクロヘキシルアミン、1,4−ジアミノ−4−メチルペンタン、(ジェファミンとして知られる)アミン末端ポリオキシアルキレンポリオールまたはアミン末端ポリテトラメチレングリコールである。
【0155】
アミンは、好ましくは、2つの一級アミノ基を有し、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、ブチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ドデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、フェニレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−アミノプロピルシクロヘキシルアミン、3(4)−アミノメチル−1−メチルシクロヘキシルアミン、1,4−ジアミノ−4−メチルペンテン、(ジェファミンとして知られる)アミン末端ポリオキシアルキレンポリオールまたはアミン末端ポリテトラメチレングリコールである。
【0156】
ブチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、フェニレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、(ジェファミンとして知られる)アミン末端ポリオキシアルキレンポリオールまたはアミン末端ポリテトラメチレングリコールが特に好ましい。
【0157】
カーボネートまたはカルバメート基に対して反応性を有する3つ以上の一級および/または二級アミノ基を有する好適なアミンは、例えば、トリス(アミノエチル)アミン、トリス(アミノプロピル)アミン、トリス(アミノヘキシル)アミン、トリスアミノヘキサン、4−アミノメチル−1,8−オクタメチレンジアミン、トリスアミノノナン、ビス(アミノエチル)アミン、ビス(アミノプロピル)アミン、ビス(アミノブチル)アミン、ビス(アミノペンチル)アミン、ビス(アミノヘキシル)アミン、N−(2−アミノエチル)プロパンジアミン、メラミン、オリゴマージアミノジフェニルメタン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(3−アミノプロピル)ブチレンジアミン、(ジェファミンとして知られる)3以上の官能性を有するアミン末端ポリオキシアルキレンポリオール、3以上の官能性を有するポリエチレンイミンまたは3以上の官能性を有するポリプロピレンジアミン
3つ以上の反応性一級および/または二級アミノ基を有する好適なアミンは、トリス(アミノエチル)アミン、トリス(アミノプロピル)アミン、トリス(アミノヘキシル)アミン、トリスアミノヘキサン、4−アミノメチル−1,8−オクタメチレンジアミン、トリスアミノノナン、ビス(アミノエチル)アミン、ビス(アミノプロピル)アミン、ビス(アミノブチル)アミン、ビス(アミノペンチル)アミン、ビス(アミノヘキシル)アミン、N−(2−アミノエチル)プロパンジアミン、メラミン、または(ジェファミンとして知られる)3以上の官能性を有するアミン末端ポリオキシアルキレンポリオールである。
【0158】
3つ以上の一級アミノ基を有するアミン、例えば、トリス(アミノメチル)アミン、トリス(アミノプロピル)アミン、トリス(アミノヘキシル)アミン、トリスアミノヘキサン、4−アミノメチル−1,8−オクタメチレンジアミン、トリスアミノノナン、または(ジェファミンとして知られる)3以上の官能性を有するアミン末端ポリオキシアルキレンポリオールが特に好ましい。
【0159】
前記アミンの混合物を使用することもできることが理解されるであろう。
【0160】
概して、2つの一級または二級アミノ基を有するアミンばかりでなく、3つ以上の一級または二級アミノ基を有するアミンも使用される。この種のアミン混合物を、非反応性三級アミノ基を無視した平均アミン官能性によって特徴づけることもできる。したがって、例えば、ジアミンとトリアミンの等モル混合物は、2.5の平均官能性を有する。平均アミン官能性が2.1〜10、特に2.1〜5であるアミン混合物の本発明による反応が好ましい。
【0161】
本発明に使用される高官能性超分岐ポリ尿素を形成するためのカーボネートとジアミンまたはポリアミンとの反応は、カーボネートに結合されたアルコールまたはフェノールの脱離によって達成される。1分子のカーボネートが2分子のアミノ基と反応すると、2分子のアルコールまたはフェノールが脱離し、1つの尿素基が形成される。1分子のカーボネートが1つのアミノ基と反応すると、アルコールまたはフェノールの分子が脱離してカルバメート基が形成される。
【0162】
1つまたは複数のカーボネートと1つまたは複数のアミンとの反応は、溶媒中で起こり得る。その場合、概して、それぞれの反応物質に対して不活性なあらゆる溶媒を使用することが可能である。デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたは溶媒ナフサなどの有機溶媒中での処理が好ましい。
【0163】
好適な一実施形態において、反応は、バルクで、すなわち不活性溶媒を用いずに使用される。アミンとカーボネートまたはカルバメートとの反応中に放出されたアルコールまたはフェノールを、適切であれば減圧下で蒸留により分離して、反応平衡から除去することができる。これは、反応を加速させるものでもある。
【0164】
アミンとカーボネートまたはカルバメートとの反応を加速させるために、触媒または触媒混合物を添加することも可能である。好適な触媒は、一般に、カルバメートまたは尿素の形成を触媒する化合物であり、例は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属炭酸水素塩、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属炭酸塩、三級アミン、アンモニウム化合物、またはアルミニウム、スズ、亜鉛、チタン、ジルコニウムもしくはビスマスの有機化合物である。例として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムもしくは水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムもしくは炭酸セシウム、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾールおよび1,2−ジメチルイミダゾールなどのイミダゾール、チタンテトラブトキシド、酸化ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジオクタン酸スズ、アセチルアセトン酸ジルコニウムまたはそれらの混合物を使用することが可能である。
【0165】
触媒の添加は、使用されるアミンの量に対して一般に50〜10000質量ppm、好ましくは100〜5000質量ppmの量でなされる。
【0166】
反応に続いて、換言すればさらに変性することなく、このようにして製造された高官能性超分岐ポリ尿素をアミノ基またはカルバメート基で終端させる。それらは、極性溶媒、例えば、水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、アルコール/水混合物、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートに容易に溶解する。
【0167】
高官能性超分岐ポリ尿素は、本発明の目的では、尿素基、および少なくとも4つ、好ましくは少なくとも6つ、特に少なくとも8つの官能基を有する生成物である。基本的に、官能基の数に上限はないが、非常に多くの官能基を有する生成物は、高粘度または低溶解度などの望ましくない特性を示し得る。本発明に使用される高官能性ポリ尿素は、一般に、100個を超える官能基を有さず、好ましくは30個を超える官能基を有さない。ここで官能基とは、一級、二級または三級アミノ基またはカーボネート基を指す。加えて、高官能性超分岐ポリ尿素は、超分岐ポリマーの合成に関与しないさらなる官能基を含むことが可能である(以下参照)。これらのさらなる官能基を、一級および二級アミノ基に加えてさらなる官能基を含むジアミンまたはポリアミンを用いて導入することができる。
【0168】
本発明に使用されるポリ尿素は、他の官能基を含むことができる。その場合、カーボネートと1つまたは複数のアミンとの反応中に、換言すれば分子量の増大をもたらす重縮合反応中に、あるいは重縮合反応の終了後に、得られたポリ尿素の次の官能化によって、官能化を実施することができる。
【0169】
分子量増大の前または最中に、アミノ基またはカルバメート基とともにさらなる官能基を含む成分が添加される場合は、生成物は、ランダムに分布したさらなる、すなわちカルバメート基またはアミノ基以外の官能基を有するポリ尿素である。
【0170】
例として、重縮合の前または最中に、アミノ基またはカルバメート基に加えて、ヒドロキシル基、メルカプト基、三級アミノ基、エーテル基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アリール基または長鎖アルキル基を含む成分を添加することができる。
【0171】
官能化のために添加することができるヒドロキシル含有成分は、例えば、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ブタノールアミン、2−アミノ−1−ブタノール、2−(ブチルアミノ)エタノール、2−(シクロヘキシルアミノ)エタノール、2−(2’−アミノエトキシ)エタノールもしくはアンモニアのより高級なアルコキシ化生成物、4−ヒドロキシピペリジン、1−ヒドロキシエチルピペラジン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはトリス(ヒドロキシエチル)アミノメタンを含む。
【0172】
官能化のために添加することができるメルカプト含有成分は、例えば、システアミンを含む。三級アミノ基については、例えばN−メチルジエチレントリアミンまたはN,N−ジメチルエチレンジアミンの使用によって超分岐ポリ尿素を官能化することが可能である。エーテル基については、(ジェファミンとして知られる)アミン末端ポリエテロールを使用することによって超分岐ポリ尿素を官能化することが可能である。酸基については、例えばアミノカルボン酸、アミノスルホン酸またはアミノホスホン酸の使用によって超分岐ポリ尿素を官能化することが可能である。長鎖アルキル基については、長鎖アルキル基を有するアルキルアミンまたはアルキルイソシアネートを使用することによって超分岐ポリ尿素を官能化することができる。
【0173】
また、アミノ基またはカルバメート基と異なる官能基を含む少量のモノマーを使用することによってポリ尿素を官能化することもできる。ここで例として、カーボネートまたはカルバメート官能基を介してポリ尿素に組み込むことができる2または3以上の官能性のアルコールを挙げることができる。したがって、例えば、長鎖アルカンジオール、アルケンジオールまたはアルキンジオールを添加することによって疎水性を得ることができ、ポリエチレンオキシドジオールまたはトリオールは、ポリ尿素に親水性をもたらす。
【0174】
重縮合の前または最中に導入されるアミン、カーボネートまたはカルバメート基以外の前記官能基は、アミノ、カルバメートおよびカーボネート基の総量に対して一般に0.1〜80モル%の量、好ましくは1〜50モル%の量で導入される。
【0175】
アミノ基を含む高官能性超分岐ポリ尿素の後の官能化を、例えば、酸基、イソシアネート基、ケト基もしくはアルデヒド基を含む分子、または活性化二重結合、例えばアクリル二重結合を含む分子を添加することによって達成することができる。例として、アクリル酸またはマレイン酸およびその誘導体との反応の後に適切であれば加水分解を行うことによって、酸基を含むポリ尿素を得ることが可能である。
【0176】
また、アルキレン酸化物、例えば酸化エチレン、酸化プロピレンまたは酸化ブチレンとの反応によって、アミノ基を含む高官能性超分岐ポリ尿素を高官能性ポリ尿素ポリオールに変換することが可能である。
【0177】
プロトン酸との塩の形成、またはハロゲン化メチルもしくは硫酸ジアルキルなどのアルキル化剤を用いたアミノ官能基の四級化は、高官能性超分岐ポリ尿素を水溶性または水分散性にする。
【0178】
疎水性化を達成するために、アミン末端高官能性超分岐ポリ尿素を飽和または不飽和長鎖カルボン酸、アミン基に対して反応性を有するそれらの誘導体、あるいは脂肪族または芳香族イソシアネートと反応させることが可能である。
【0179】
カルバメート基を末端とするポリ尿素を、長鎖アルキルアミンまたは長鎖脂肪族モノアルコールとの反応によって疎水性化することができる。
【0180】
超分岐ポリアミド
好適な超分岐ポリアミドは、少なくとも2つの官能基Aを有する第1のモノマーA2と、少なくとも3つの官能基Bを有する第2のモノマーB3とを反応させる(ただし、官能基AおよびBが互いに反応し、モノマーAおよびBの一方がアミンであり、モノマーAおよびBの他方がカルボン酸またはその誘導体である)ことによって製造される。
【0181】
好適な超分岐ポリアミドとしては、超分岐ポリアミドアミンが挙げられる(EP−A802215、US2003/0069370A1およびUS2002/016113A1参照)。
【0182】
第1のモノマーA2は、3つ以上の官能基Aを含むこともできるが、ここでは簡略化のためにA2と称し、第2のモノマーB3は、4つ以上の官能基Bを有することもできるが、ここでは簡略化のためにB3と称する。重要な要素は、単にA2およびB3の官能性が異なることである。
【0183】
官能基AおよびBが互いに反応する。この場合、官能基AおよびBは、AがAと反応せず(または微弱にしか反応せず)、BがBと反応しない(または微弱にしか反応しない)が、AとBが反応するように選択される。この場合、モノマーA2およびB3の一方がアミンであり、モノマーA2およびB3の他方がそのカルボン酸誘導体である。
【0184】
好ましくは、モノマーA2は、少なくとも2つのカルボキシ基を有するカルボン酸であり、モノマーB3は、少なくとも3つのアミノ基を有するアミンである。代替として、モノマーA2は、少なくとも2つのアミノ基を有するアミンであり、モノマーB3は、少なくとも3つのカルボキシ基を有するカルボン酸である。
【0185】
好適なカルボン酸は、通常、2〜4つ、特に2または3つのカルボキシ基を有し、1〜30個のC原子を有するアルキル、アリールまたはアリールアルキル基を有する。
【0186】
使用できるジカルボン酸の例は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン−α,ω−ジカルノン酸、ドデカン−α,ω−ジカルボン酸、シス−およびトランス−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、シス−およびトランス−シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シス−およびトランス−シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シス−およびトランス−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ならびにシス−およびトランス−シクロペンタン−1,3−ジカルボン酸であり、ここでジカルボン酸は、C1−C10アルキル基、C3−C12シクロアルキル基、アルキレン基およびC6−C14アリール基から選択される1つ以上基によって置換されていてよい。挙げることができる置換ジカルボン酸の例は、2−メチルマロン酸、2−エチルマロン酸、2−フェニルマロン酸、2−メチルコハク酸、2−エチルコハク酸、2−フェニルコハク酸、イタコン酸および3,3−ジメチルグルタル酸である。
【0187】
他の好適な化合物は、マレイン酸およびフマル酸などのエチレン性不飽和ジカルボン酸、ならびにフタル酸、イソフタル酸またはテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸である。
【0188】
好適なトリカルボン酸またはテトラカルボン酸の例は、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ブタントリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸およびシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸である。
【0189】
上記カルボン酸の2つ以上の混合物を使用することも可能である。カルボン酸をそのまま、または誘導体の形で使用することができる。これらの誘導体は、特に、
− 記載のカルボン酸の無水物、具体的にはモノマーまたはポリマーの形のカルボン酸の無水物;
− 記載のカルボン酸のエステル、例えば、
・ モノまたはジアルキルエステル、好ましくはモノまたはジメチルエステル、あるいは対応するモノまたはジエチルエステル、あるいはn−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノールなどのより高級なアルコールから誘導されたモノおよびジアルキルエステル、
・ モノおよびジビニルエステル、ならびに
・ 混合エステル、好ましくはメチルエチルエステルである。
【0190】
カルボン酸および1つ以上のその誘導体で構成される混合物、あるいは1つ以上のジカルボン酸の2つ以上の異なる誘導体の混合物を使用することも可能である。
【0191】
使用されるカルボン酸は、より好ましくは、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはそのモノもしくはジメチルエステルを含む。コハク酸およびアジピン酸が特に好ましい。
【0192】
好適なアミンは、通常2〜6つ、特に2〜4つのアミノ基、ならびに1〜30個のC原子を有するアルキル、アリールまたはアリールアルキル基を有する。
【0193】
使用できるジアミンの例は、式R1−NH−R2−NH−R3(R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素、または1〜20個の炭素原子を有するアルキル、アリールもしくはアリールアルキル基である)のジアミンである。アルキル基は、アルキル基は、直鎖状であってよく、または特にR2については環式であってよい。
【0194】
好適なジアミンの例は、エチレンジアミン、プロピレンジアミン(1,2−ジアミノプロパンおよび1,3−ジアミノプロパン)、N−メチルエチレンジアミン、ピペラジン、テトラメチレンジアミン(1,4−ジアミノブタン)、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、1,5−ジアミノペンタン、1,3−ジアミノ−2,2−ジエチルプロパン、1,3−ビス(メチルアミノ)プロパン、ヘキサメチレンジアミン(1,6−ジアミノヘキサン)、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、3−(プロピルアミノ)プロピルアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジンおよびイソホロンジアミン(IPDA)である。
【0195】
好適なトリアミン、テトラアミンまたはより高官能性のアミンの例は、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリス(2−アミノプロピル)アミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)、イソプロピレントリアミン、ジプロピレントリアミンおよびN,N’−ビス(3−アミノプロピルエチレンジアミン)である。
【0196】
2つ以上のアミノ基を有するアミノベンジルアミンおよびアミノヒドラジンも好適である。
【0197】
使用されるアミンは、特に好ましくは、DETAまたはトリス(2−アミノエチル)アミンまたはこれらの混合物を含む。
【0198】
2つ以上のカルボン酸またはカルボン酸誘導体の混合物、あるいは2つ以上のアミンの混合物を使用することも可能である。ここで様々なカルボン酸またはアミンの官能性は、同一であっても異なっていてもよい。
【0199】
特に、モノマーA2がジアミンである場合は、使用されるモノマーB3は、ジカルボン酸およびトリカルボン酸(またはより高官能性のカルボン酸)の混合物を含むことができ、混合物B3の平均官能性は、少なくとも2.1である。例として、50モル%のジカルボン酸および50モル%のトリカルボン酸で構成される混合物は、2.5の平均官能性を有する。
【0200】
同様に、モノマーA2がジカルボン酸である場合は、使用されるモノマーB3は、ジアミンおよびトリアミン(またはより高官能性のアミン)の混合物を含むことができ、混合物B3の平均官能性は、少なくとも2.1である。この変形は特に好適である。例として、50モル%のジアミンおよび50モル%のトリアミンで構成される混合物は、2.5の平均官能性を有する。
【0201】
モノマーA2の官能基Aの反応性が、同一であっても異なっていてもよい。同様に、モノマーB3の官能基Bの反応性は、同一であっても異なっていてもよい。特に、モノマーA2の2つのアミノ基またはモノマーB3の3つのアミノ基の反応性は同一であっても異なっていてもよい。
【0202】
好適な一実施形態において、カルボン酸は二官能性モノマーA2であり、アミンは三官能性モノマーB3であり、これは、ジカルボン酸およびトリアミンまたはより高官能性のアミンを使用するのが好ましいことを意味する。
【0203】
使用されるモノマーA2は、より好ましくはジカルボン酸を含み、使用されるモノマーB3は、より好ましくはトリアミンを含む。使用されるモノマーA2は、非常に好ましくはアジピン酸を含み、使用されるモノマーB3は、非常に好ましくはジエチレントリアミンまたはトリス(2−アミノエチル)アミンを含む。
【0204】
超分岐ポリアミドを得るためのモノマーA2およびB3の重合の最中または後に、連鎖延長剤として作用する二官能性またはより高官能性のモノマーCを使用することもできる。これは、ポリマーのゲル点(不溶性ゲル粒子が架橋反応によって形成される結合部;例として、Flory,Principles of Polymer Chemistry,Cornell University Press,1953,pp.387−398参照)および巨大分子の構造の変性、すなわちモノマー分枝の結合に対する制御を可能にする。
【0205】
よって、該方法の好適な一実施形態は、モノマーA2およびB3の反応の最中または後に、連鎖延長剤として作用するモノマーCをも使用する。
【0206】
好適な連鎖延長モノマーCの例は、異なるポリマー分枝のカルボキシ基と反応することで、それらを結合させる上記ジアミンまたはより高官能性のアミンである。特に好適な化合物は、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、n−メチルエチレンジアミン、ピペラジン、テトラメチレンジアミン(1,4−ジアミノブタン)、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、1,5−ジアミノペンタン、1,3−ジアミノ−2,2−ジエチルプロパン、1,3−ビス(メチルアミノ)プロパン、ヘキサメチレンジアミン(1,6−ジアミノヘキサン)、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、3−(プロピルアミノ)プロピルアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジンおよびイソホロンジアミン(IPDA)である。
【0207】
一般式H2N−R−COOHのアミノ酸も連鎖延長剤として好適であり、ここでC、Rは有機基である。
【0208】
連鎖延長剤Cの量は、通常、巨大分子の所望のゲル点または所望の構造に左右される。連鎖延長剤Cの量は、使用されるモノマーA2およびB3の全量に対して、一般に0.1質量%〜50質量%、好ましくは0.5質量%〜40質量%、特に1質量%〜30質量%である。
【0209】
官能化ポリアミドを製造するために、モノマーA2およびB3の反応の前、最中または後に添加することができる一官能コモノマーDが併用される。この方法により、コモノマー単位およびそれらの官能基によって化学的に変性されたポリマーが得られる。
【0210】
したがって、該方法の好適な一実施形態は、モノマーA2およびB3の反応の前、最中または後に官能基を有するコモノマーDを使用して、変性ポリアミドを与える。
【0211】
これらのコモノマーDの例は、脂肪酸およびそれらの無水物またはエステルを含む飽和または不飽和モノカルボン酸である。好適な酸の例は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ酪酸、トリメチル酢酸、カプロン酸、カプリル酸、ヘプタン酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、モンタン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ノナン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、およびメタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸、ならびに記載のモノカルボン酸の無水物およびアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルなどのエステルである。
【0212】
好適な不飽和脂肪酸Dの例は、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エルシン酸、ならびに大豆、アマニ、ヒマシ油およびヒマワリから誘導された脂肪酸である。
【0213】
特に好適なカルボン酸エステルDは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸ヒドロキシプロピルである。
【0214】
脂肪アルコールを含むアルコールが、コモノマーDとして好ましい。これらとしては、例えば、モノラウリン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレンモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、1−ドデカノール、1−テトラデカノール、1−ヘキサデカノールおよび不飽和脂肪アルコールを含むアルコールが挙げられる。
【0215】
他の好適なコモノマーDは、アクリレート、特に、アクリル酸アルキル、例えばアクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、またはアクリル酸ヒドロキシアルキル、例えばアクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルおよびアクリル酸ヒドロキシブチルなどである。超分岐ポリアミドのアミノ基におけるミカエル付加により、アクリレートを極めて簡単にポリマーに導入することができる。
【0216】
コモノマーDの量は、通常、ポリマーを変性する程度に左右される。コモノマーDの量は、使用されるモノマーA2およびB3の全量に対して、一般に0.5質量%〜40質量%、好ましくは1質量%〜35質量%である。
【0217】
使用されるモノマーの性質および量、ならびに反応条件に応じて、超分岐ポリアミドは、末端カルボキシ基(−COOH)または末端アミノ基(−NH、−NH2)あるいはその両方を有することができる。官能化のために添加されるコモノマーDの選択は、通常、Dが反応する末端基の性質および数に左右される。カルボキシ末端基を変性する場合は、カルボキシ末端基1モル当たり0.5〜2.5、好ましくは0.6〜2、特に好ましくは0.7〜1.5モル当量のアミン、例えばモノまたはジアミン、特に、一級または二級アミノ基を有するトリアミンを使用するのが好ましい。
【0218】
アミノ末端基を変性する場合は、アミノ末端基1モル当たり0.5〜2.5、好ましくは0.6〜2、特に好ましくは0.7〜1.5のモル当量のモノカルボン酸を使用するのが好ましい。
【0219】
記載したように、ミカエル付加反応を使用してアミノ末端基と記載のアクリレートとを反応させることができ、この目的に使用されるアクリレートモル当量の数は、アミノ末端基1モル当たり好ましくは0.5〜2.5、特に0.6〜2、より好ましくは0.7〜1.5である。
【0220】
最終ポリアミド生成物における遊離COOH基の数(最終ポリアミド生成物の酸価)は、一般に0〜400、好ましくは0〜200であり、ポリマー1グラム当たりのmgKOHを、例えば、DIN53240−2による滴定によって測定することができる。
【0221】
モノマーA2は、一般に、高温、例えば80〜180℃、特に90〜160℃でモノマーB3と反応する。水、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルアセトアミド(DMAC)などの溶媒の存在下または非存在下にて不活性ガス、例えば窒素下または真空中で処理するのが好ましい。良好な適性を有する溶媒混合物の例は、水および1,4−ジオキサンで構成されるものである。しかし、溶媒を使用する必要はない。例として、カルボン酸を初期充填物として使用し、溶融させ、アミンを溶融物に添加することができる。重合(重縮合)の過程を通じて形成された反応物の水は、例として、真空中で排出され、トルエンなどの好適な溶媒を使用して共沸蒸留によって除去される。
【0222】
圧力は、一般に重要でなく、例えば1mbar〜100bar(絶対)である。溶媒を使用する場合は、反応物の水を、真空中、例えば1〜500mbarで処理することによって簡単に除去することができる。
【0223】
反応時間は、通常5分〜48時間好ましくは30分〜24時間、より好ましくは1時間〜10時間である。
【0224】
カルボン酸とアミンの反応は、触媒の非存在下または存在下で起こり得る。好適な触媒の例は、以下の後の段階で記載されるアミド化触媒である。
【0225】
触媒が使用される場合は、それらの量は、モノマーA2およびB3の全量に対して、通常1〜5000質量ppm、好ましくは10〜1000質量ppmである。
【0226】
重合プロセスの最中または後に、望まれる場合は記載の連鎖延長剤Cを添加することができる。超分岐ポリアミドの化学的変性のために、重合プロセスの前、最中または後に記載のコモノマーDを添加することも可能である。
【0227】
必要であれば、コモノマーDの反応を、従来のアミド化触媒によって触媒することができる。これらの触媒の例は、リン酸アンモニウム、亜リン酸トリフェニルまたはジシクロヘキシルカルボジイミドである。特に感熱性コモノマーDを使用する場合、およびメタクリレートまたは脂肪アルコールをコモノマーDとして使用する場合は、酵素によって反応を触媒することができ、処理は、通常40〜90℃、好ましくは50〜85℃、特に55〜80℃にて、ラジカル抑制剤の存在下で実施される。
【0228】
ラジカル重合および不飽和官能基の望ましくない架橋反応は、抑制剤によって、かつ適切であれば不活性ガス下での処理によって抑制される。これらの抑制剤の例は、モノマーA2およびB3の全量に対して50〜2000質量ppmの量のヒドロキノン、ヒドロキノンのモノメチルエーテル、フェノチアジン、フェノールの誘導体、例えば、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、6−tert−ブチル−2,4−ジメチルフェノールまたはN−オキシル化合物、例えばN−オキシル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(ヒドロキシ−TEMPO)、N−オキシル−4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(TEMPO)である。
【0229】
製造は、例えば、静的もしくは動的ミキサー、ならびに圧力制御および温度制御ならびに不活性ガス下での処理のための従来の装置を備えることができる撹拌容器、管形反応器、塔形反応器または従来の反応器にて好ましくはバッチ式で実施され、あるいは連続的に実施され得る。
【0230】
溶媒を用いない処理の場合は、最終生成物は、一般に直接得られ、必要であれば従来の精製処理によって精製され得る。溶媒が使用される場合は、例えば真空蒸留によって、反応後に溶媒を反応混合物から通常の方法で除去することができる。
【0231】
本発明の方法は、非常に単純であることを特徴とする。それは、単純なワンポット反応での超分岐ポリアミドの製造を可能にする。中間体または中間体のための保護基の単離または精製の必要がない。該方法は、モノマーが市販されており、安価であるため、経済的利点を有する。
【0232】
超分岐ポリエステルアミド
例えば、少なくとも2つのカルボキシル基を有するカルボン酸と、少なくとも1つのアミノ基および少なくとも2つのヒドロキシル基を有するアミノアルコールとを反応させることによって、好適な超分岐ポリエステルアミドを製造することができる。
【0233】
該方法は、少なくとも2つのカルボキシ基を有するカルボン酸(ジカルボン酸、トリカルボン酸、またはより高官能性のカルボン酸)および少なくとも1つのアミノ基を有し、2つのヒドロキシル基を有するアミノアルコール(アルカノールアミン)から出発する。
【0234】
好適なカルボン酸は、通常、2〜4つ、特に2つまたは3つのカルボキシ基を有し、1〜30個のC原子を有するアルキル、アリールまたはアリールアルキル基を有する。考えられるカルボン酸としては、超分岐ポリアミドについて既に記載されているすべてのジ、トリおよびテトラカルボン酸、ならびにこれらの酸の誘導体が挙げられる。
【0235】
使用されるカルボン酸は、より好ましくは、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,2−、1,3−もしくは1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはそれらのジメチルエステルである。コハク酸およびアジピン酸が特に好適である。
【0236】
少なくとも1つのアミノ基および少なくとも2つのヒドロキシ基を有する好適なアミノアルコール(アルカノールアミン)は、ジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミンである。使用できるジアルカノールアミンの例は、式1
【化7】

[式中、R1、R2、R3およびR4は、互いに独立して、水素、C1-6アルキル、C3-12シクロアルキルまたはC6-14アリール(アリールアルキルを含む)である]のジアルカノールアミンである。
【0237】
好適なジアルカノールアミンの例は、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、ジブタノールアミン、ジイソブタノールアミン、ビス(2−ヒドロキシ−1−ブチル)アミン、ビス(2−ヒドロキシ−1−プロピル)アミンおよびジシクロヘキサノールアミンである。
【0238】
好適なトリアルカノールアミンは、式2
【化8】

[式中、R1、R2およびR3は、式1について定義されている通りであり、l、mおよびnは、互いに独立して、1〜12の整数である]のトリアルカノールアミンである。例として、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンが好適である。
【0239】
使用されるアミノアルコールは、好ましくはジエタノールアミン(DEA)およびジイソプロパノールアミン(DIPA)を含む。
【0240】
1つの好適な方法において、使用されるカルボン酸は、ジカルボン酸を含み、使用されるアミノアルコールは、1つのアミノ基および2つのヒドロキシ基を有するアルコールを含む。
【0241】
該方法を使用して、官能化ポリエステルアミドを製造することもできる。このために、コモノマーCも使用され、これらをカルボン酸、アミノアルコール、および適切であればモノマーMの反応の前、最中または後に加えることができる。これにより、コモノマー単位およびそれらの官能基によって化学的に変性されたポリマーが得られる。
【0242】
したがって、該方法の好適な一実施形態は、カルボン酸、アミノアルコール、および適切であればモノマーMの反応の前、最中または後にコモノマーCも使用して変性ポリエステルアミドを与える実施形態である。該コモノマーは、1つ、2つまたは3つ以上の官能基を含むことができる。
【0243】
好適なコモノマーCは、脂肪酸、それらの無水物およびエステルを含む飽和および不飽和モノカルボン酸、アルコール、アクリレート、ならびに先述の超分岐ポリアミドについて記載されている上記一官能またはより高官能性のアルコール(ジオールおよびポリオール等)、アミン(ジアミンおよびトリアミン等)およびアミノアルコール(アルカノールアミン)である。
【0244】
コモノマーCの量は、通常、ポリマーが変性される程度に左右される。コモノマーCの量は、使用されるアミノアルコールおよびカルボン酸モノマーの全量に対して、一般に0.5質量%〜40質量%、好ましくは1質量%〜35質量%である。
【0245】
最終ポリエステルアミド生成物における遊離OH基の数(最終ポリエステルアミド生成物のヒドロキシル価)は、一般に10〜500、好ましくは20〜450であり、ポリマー1グラム当たりのmgKOHを、例として、DIN53240−2による滴定によって測定することができる。
【0246】
最終ポリエステルアミド生成物における遊離COOH基の数(最終ポリエステルアミド生成物の酸価)は、一般に0〜400、好ましくは0〜200であり、ポリマー1グラム当たりのmgKOHを、同様に、DIN53240−2による滴定によって測定することができる。
【0247】
カルボン酸とアミノアルコールとの反応は、一般に、高温、例えば80〜250℃、特に90〜220℃、特に好ましくは95〜180℃で行われる。変性を目的として、ポリマーとコモノマーCとを反応させ、この目的のために触媒を使用する(以下の後の段階参照)場合は、使用する触媒を考慮して反応温度を調節することができ、処理は、一般に、90〜200℃、好ましくは100〜190℃、特に110〜180℃で実施される。
【0248】
処理は、好ましくは、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルアセトアミド(DMAc)などの溶媒の存在下または非存在下にて不活性ガス下、例えば窒素下または真空中で実施される。しかし、溶媒を使用する必要はない。例として、カルボン酸とアミノアルコールとを混合し、適切であれば触媒の存在下で、高温にて反応させることができる。重合(重縮合)プロセスの過程で形成された反応物の水は、例として、真空中で排出され、またはトルエンなどの好適な溶媒を使用する共沸蒸留によって除去される。
【0249】
カルボン酸とアミノアルコールとの反応の終了をしばしば反応物の粘度の急上昇から認識することができる。粘度が上昇し始めると、例えば冷却によって反応を終了させることができる。次いで、混合物の試料を使用して、例えばDIN53402−2により酸価を求めるための滴定によって(プレ)ポリマーにおけるカルボキシ基の数を測定することができ、次いで適切であれば、モノマーMおよび/またはコモノマーCを添加し、反応させることができる。
【0250】
圧力は、一般に重要でなく、例として1mbar〜100bar(絶対)である。溶媒を使用しない場合は、反応物の水を、真空中、例えば1〜500mbar(絶対)で処理することによって簡単に除去することができる。反応時間は、通常5分〜48時間、好ましくは30分〜24時間、より好ましくは1時間〜10時間である。
【0251】
記載されているように、超分岐ポリエステルアミドの化学的変性を達成するために、記載のコモノマーCを重合プロセスの前、最中または後に添加することができる。
【0252】
該プロセスは、カルボン酸とアミノアルコールとの反応(エステル化)を触媒する触媒を使用することができる。
【0253】
好適な触媒は、酸性の好ましくは無機触媒、有機金属触媒または酵素である。
【0254】
挙げることができる酸性無機触媒の例は、硫酸、リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、アルミニウム硫酸水和物、ミョウバン、酸性シリカゲル(pH≦6、特に≦5)および酸性酸化アルミニウムである。使用できる酸性無機触媒の他の例は、一般式Al(OR)3のアルミニウム化合物および一般式Ti(OR)4のチタネートである。好適な酸性有機金属触媒の例は、R2SnO(Rは以上に定義されている通りである)のジアルキルスズ酸化物から選択されるものである。酸性有機金属触媒の1つの特に好適な代表例は、「オキソスズ」として市販の酸化ジ−n−ブチルスズである。好適な物質の例は、Atofinaの酸化ジ−n−ブチルスズであるFascat(登録商標)4201である。
【0255】
好適な酸性有機触媒は、例として、リン酸塩基、スルホン酸基、硫酸塩基またはホスホン酸基を有する酸性有機化合物である。パラ−トルエンスルホン酸などのスルホン酸が特に好ましい。酸性有機触媒としての酸性イオン交換樹脂を使用することも可能であり、例は、スルホン酸基を含み、約2モル%のジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレン樹脂である。
【0256】
触媒を使用する場合は、その量は、カルボン酸およびアミノアルコールの全量に対して通常1〜5000質量ppm、好ましくは10〜1000質量ppmである。
【0257】
具体的には、コモノマーCの反応を、通常40〜90℃、好ましくは50〜85℃、特に55〜80℃にて、ラジカル抑制剤の存在下で機能する従来のアミド化触媒によって触媒することもできる。
【0258】
本発明の方法は、好ましくは、静的もしくは動的ミキサー、ならびに圧力制御および温度制御ならびに不活性ガス下での処理のための従来の装置を備えることができる撹拌容器、管形反応器、塔形反応器または従来の反応器にてバッチ式で、あるいは連続的に実施され得る。
【0259】
溶媒を用いない処理の場合は、一般に最終生成物を直接得て、必要であれば従来の精製処理によって精製することができる。溶媒を併用した場合は、これを、例えば真空蒸留によって、反応後に反応混合物から通常の方法で除去することができる。
【0260】
上記の超分岐ポリマーをさらにポリマー類似反応させることができる。このように、それらの特性を、一定の状況においてより効果的に様々な分散液でのそれらの用途に適応させることが可能である。ポリマー類似反応では、得られたポリマーが少なくとも1つの新しい官能基を含むように、本来ポリマーに存在する官能基(例えばAまたはB基)を反応させることが可能である。
【0261】
超分岐ポリマーのポリマー類似反応は、ポリマーの製造時に、または重合反応の直後に、または個別の反応工程で起こり得る。
【0262】
ポリマー合成の前または最中に、AおよびB基とともにさらなる官能基を含む成分が添加される場合は、生成物は、これらのさらなる官能基が実質的にランダムに分布した超分岐ポリマーである。
【0263】
トランス官能化に使用される化合物は、第1に新たな導入に向けた所望の官能基と、使用される超分岐ポリマー出発材料のB基と反応して結合を形成することが可能な第2の基とを含むことができる。この一例は、酸官能基を形成するためのイソシアネート基とヒドロキシカルボン酸またはアミノカルボン酸との反応、あるいは反応性アクリル二重結合を形成するためのOH基と無水アクリル酸との反応である。
【0264】
好適な反応パートナによって導入され得る好適な官能基の例は、特に、H原子を含む酸性または塩基性基および当該基の誘導体、例えば、−OC(O)OR、−COOH−、−COOR、−CONHR、−CONH2、−OH、−SH、−NH2、−NHR、−NR2、−SO3H、−SO3R、−NHCOOR、−NHCONH2、−NHCONHR等を含む。適切であれば、好適な酸または塩基を用いて、イオン性官能基を対応する塩に変換することも可能である。さらなる可能性は、例えばハロゲン化アルキルまたは硫酸ジアルキルを用いて一級、二級または三級アミノ基を四級化することである。この手順を用いて、例えば、水溶性または水分散性超分岐ポリマーを得ることができる。
【0265】
前記基の基Rは、好ましくは、直鎖または分枝状の非置換または置換アルキル基である。例えば、それらは、C1−C30アルキル基またはC6−C14アリール基である。好適な官能基の例は、−CNまたは−ORa(Ra=Hまたはアルキルである)である。
【0266】
分散液に超分岐ポリマーを使用する場合は、親水性成分および疎水性成分が互いに特定の割合を有することが有利であり得る。超分岐ポリマーの疎水性化を、例えば、存在する反応性基を重合の前、最中または後に変性させる一官能疎水性化合物によって達成することができる。したがって、例えば、本発明のポリマーを一官能飽和または不飽和脂肪族または芳香族アミン、アルコール、カルボン酸、エポキシドまたはイソシアネートとの反応によって疎水性化することができる。
【0267】
また、例えば、疎水性基を含む二官能性またはより高官能性のモノマーを分子量増大中に共重合によって組み込むことも可能である。この目的のために、例えば、反応性基に加えて芳香族基または長鎖アルカン、アルケンもしくはアルキン基を担持する二官能性またはより高官能性のアルコール、アミン、イソシアネート、カルボン酸および/またはエポキシドを使用することが可能である。
【0268】
この種のモノマーの例は、モノステアリン酸グリコール、モノオレイン酸グリセロール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、オクタデカンジオール、二量体脂肪アルコールなどのアルコール、ヘキサメチレンジアミン、オクタンジアミン、ドデカンジアミンなどのアミン、芳香族または脂肪族ジおよびポリイソシアネート、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびそのより高級なオリゴマー種、トリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、イソホロンジイソシアネート、ビス(ジイソシアナトシクロヘキシル)メタンまたはビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどのイソシアネート、およびアジピン酸、オクタン二酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸または二量体脂肪酸などの酸である。
【0269】
本発明に従って使用される超分岐ポリマーを親水性化することもできる。これを、例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレンまたはそれらの混合物などの酸化アルキレンとの反応によって、ヒドロキシル基および/または一級もしくは二級アミノ基を含む超分岐ポリマーを高官能性ポリマーポリオールに変換することによって実施することができる。アルコキシ化のために、酸化エチレンを使用するのが好適である。しかし、さらなる選択肢として、2以上の官能性の酸化アルキレンアルコールまたは酸化アルキレンアミンを、超分岐ポリマーの製造中に合成成分として使用することができる。
【0270】
異なる官能性を有する超分岐ポリマーを生成することも可能である。これを、例えば、トランス官能化のための異なる化合物の混合物との反応を通じて、あるいは本来存在している官能基の一部のみを反応させることによって達成することができる。
【0271】
さらに、重合にABCまたはAB2C型(Cは、選択された反応条件下でAまたはBと反応しない官能基を表す)のモノマーを使用することによって様々な官能性の化合物を生成することが可能である。
【0272】
ポリマー分散液PD)
ポリマー分散液PD)は、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー(M)を使用して製造される。モノマー(M)は、本発明の目的では、末端二重結合を有するモノマーを包含するα,β−エチレン性不飽和モノマーを含む。モノマー(M)は、好ましくは、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸とC1−C20アルカノールとのエステル、ビニル芳香族化合物、ビニルアルコールとC1−C30モノカルボン酸とのエステル、エチレン性不飽和ニトリル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、モノエチレン性不飽和カルボン酸およびスルホン酸、リン含有モノマー、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸とC2−C30アルカンジオールとのエステル、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸と、一級もしくは二級アミノ基を含むC2−C30アミノアルコールとのアミド、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸ならびにそれらのN−アルキルおよびN,N−ジアルキル誘導体の一級アミド、N−ビニルラクタム、開鎖N−ビニルアミド化合物、アリルアルコールとC1−C30モノカルボン酸とのエステル、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸とアミノアルコールとのエステル、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸と、少なくとも1つの一級もしくは二級アミノ基を含むジアミンとのアミド、N,N−ジアルキルアミン、N,N−ジアリル−N−アルキルアミン、ビニルおよびアリル置換窒素複素環、ビニルエーテル、C2−C8モノオレフィン、少なくとも2つの共役二重結合を有する非芳香族炭化水素、ポリエーテル(メタ)アクリレート、尿素基を含むモノマー、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0273】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸とC2−C20アルカノールとの好適なエステルは、(メタ)アクリル酸メチル、エタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、エタクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、エタクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸1,1,3,3−テトラメチルブチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ウンデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸アラキニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸リグノセリル、(メタ)アクリル酸セロチニル、(メタ)アクリル酸メリシニル、(メタ)アクリル酸パルミトレイル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸リノリル、(メタ)アクリル酸リノレニル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリルおよびそれらの混合物である。
【0274】
好適なビニル芳香族化合物は、スチレン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−(n−ブチル)スチレン、4−(n−ブチル)スチレン、4−(n−デシル)スチレンであり、スチレンが特に好ましい。
【0275】
ビニルアルコールとC1−C30モノカルボン酸との好適なエステルは、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステル、およびそれらの混合物である。
【0276】
好適なエチレン性不飽和ニトリルは、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびそれらの混合物である。
【0277】
好適なハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンは、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンおよびそれらの混合物である。
【0278】
好適なエチレン性不飽和カルボン酸およびスルホン酸またはそれらの誘導体は、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコチン酸、フマル酸、4〜10個、好ましくは4〜6個のC原子を有するモノエチレン性不飽和ジカルボン酸のモノエステル、例えば、マレイン酸モノメチル、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、アクリル酸スルホエチル、メタクリル酸スルホエチル、アクリル酸スルホプロピル、メタクリル酸スルホプロピル、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸、スチレンスルホン酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。好適なスチレンスルホン酸およびそれらの誘導体は、スチレン−4−スルホン酸およびスチレン−3−スルホン酸ならびにそれらのアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えば、スチレン−3−スルホン酸ナトリウムおよびスチレン−4−スルホン酸ナトリウムである。アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの混合物が特に好適である。
【0279】
亜リン含有モノマーの例は、例えばビニルホスホン酸およびアリルホスホン酸である。ホスホン酸およびリン酸と(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとのモノエステルおよびジエステル、特にモノエステルも好適である。また、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルで1回エステル化されたホスホン酸およびリン酸のジエステル、ならびにアルカノールなどの異なるアルコールで1回エステル化されたホスホン酸およびリン酸のジエステルが好適である。これらのエステルのための好適な(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルは、個別のモノマーとして以下に示されるもの、特に、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等である。対応するリン酸二水素エステルモノマーは、(メタ)アクリル酸2−ホスホエチル、(メタ)アクリル酸2−ホスホプロピル、(メタ)アクリル酸3−ホスホプロピル、(メタ)アクリル酸ホスホブチルおよび(メタ)アクリル酸3−ホスホ−2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ホスホアルキルを含む。ホスホン酸およびリン酸とアルコキシ化(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとのエステルも好適であり、例は、H2C=C(H,CH3)COO(CH2CH2O)nP(OH)2およびH2C=C(H,CH3)COO(CH2CH2O)nP(=O)(OH)2(nは1〜50である)などの(メタ)アクリル酸の酸化エチレン縮合体である。さらに、クロトン酸ホスホアルキル、マレイン酸ホスホアルキル、フマル酸ホスホアルキル、(メタ)アクリル酸ホスジホアルキル、クロトン酸ホスホジアルキルおよびリン酸アリルが好適である。リン基を含むさらなる好適なモノマーが、参考として本明細書で援用されるWO99/25780およびUS4,733,005に記載されている。
【0280】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸とC2−C30アルカンジオールとの好適なエステルは、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、エタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−ヒドロキシブチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、アクリル酸3−ヒドロキシ−2−エチルヘキシル、メタクリル酸3−ヒドロキシ−2−エチルヘキシル等である。
【0281】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸ならびにそれらのNアルキルおよびN,N−ジアルキル誘導体の好適な一級アミドは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(n−ブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(tert−ブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(n−オクチル)(メタ)アクリルアミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)(メタ)アクリルアミド、N−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(n−オクチル)(メタ)アクリルアミド、N−(n−デシル)(メタ)アクリルアミド、N−(n−ウンデシル)(メタ)アクリルアミド、N−トリデシル(メタ)アクリルアミド、N−ミリスチル(メタ)アクリルアミド、N−ペンタデシル(メタ)アクリルアミド、N−パルミチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘプタデシル(メタ)アクリルアミド、N−ノナデシル(メタ)アクリルアミド、N−アラキニル(メタ)アクリルアミド、N−ベヘニル(メタ)アクリルアミド、N−リグノセリル(メタ)アクリルアミド、N−セロチニル(メタ)アクリルアミド、N−メリシニル(メタ)アクリルアミド、N−パルミトレイル(メタ)アクリルアミド、N−オレイル(メタ)アクリルアミド、N−リノリル(メタ)アクリルアミド、N−リノレニル(メタ)アクリルアミド、N−ステアリル(メタ)アクリルアミド、N−ラウリル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、モルホリニル(メタ)アクリルアミドである。
【0282】
好適なN−ビニルラクタムおよびそれらの誘導体は、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタム等である。
【0283】
好適な開鎖N−ビニルアミド化合物は、例えば、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニル−N−メチルプロピオンアミドおよびN−ビニルブチルアミドである。
【0284】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸とアミノアルコールとの好適なエステルは、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノプロピルおよび(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノシクロヘキシルである。
【0285】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸と、少なくとも1つの一級または二級アミノ基を含むジアミンとの好適なアミドは、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]メタクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)ブチル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)ブチル]メタクリルアミド、N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)シクロヘキシル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)シクロヘキシル]メタクリルアミド等である。
【0286】
好適なモノマーM)は、また、N,N−ジアリルアミンおよびN,N−ジアリル−N−アルキルアミンならびにそれらの酸付加塩および四級生成物である。ここでアルキルは、好ましくはC1−C24アルキルである。N,N−ジアルキル−N−メチルアミンおよびN,N−ジアリル−N,N−ジメチルアンモニウム化合物、例えば塩化物および臭化物が好ましい。
【0287】
さらなる好適なモノマーM)は、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾールなどのビニルおよびアリル置換窒素複素環、ならびに2−および4−ビニルピリジン、2−および4−アリルピリジンなどのビニルおよびアリル置換複素環式芳香族化合物、ならびにそれらの塩である。
【0288】
少なくとも2つの共役二重結合を有する好適なC2−C8モノオレフィンおよび非芳香族炭化水素は、エチレン、プロピレン、イソブチレン、イソプレン、ブタジエン等である。
【0289】
好適なポリエーテル(メタ)アクリレートは、一般式(A)
【化9】

[式中、
酸化アルキレン単位の配列は任意であり、
kおよびlは、互いに独立して、0〜100の整数であり、kとlの合計は少なくとも3であり、
aは、水素、C1−C30アルキル、C5−C8シクロアルキル、C6−C14−アリールまたは(C6−C14−)アルキルであり、
bは、水素またはC1−C8アルキルであり、
Yは、OまたはNRcであり、Rcは、水素、C1−C30アルキルまたはC5−C8シクロアルキルである]の化合物である。
【0290】
好ましくは、kは、1〜100、より好ましくは3〜50、特に4〜25の整数である。好ましくは、lは、0〜100、より好ましくは3〜50、特に4〜25の整数である。
【0291】
kとlの合計は、好ましくは3〜200、より好ましくは4〜100である。
【0292】
好ましくは、式(A)におけるRaは、水素またはC1−C18アルキル、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ラウリル、パルミチルまたはステアリルである。
【0293】
好ましくは、Rbは、水素、C1−C6アルキル、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルまたはn−ヘキシル、特に水素、メチルまたはエチルである。特に好ましくは、Rbは水素またはメチルである。
【0294】
好ましくは、式(A)におけるYは、OまたはNH、特にOである。
【0295】
1つの具体的な型において、少なくとも1つのポリエーテル(メタ)アクリレートが、PD)を製造するためのラジカル乳化重合に使用される。このポリエーテル(メタ)アクリレートは、モノマーM)の全重量に対して、好ましくは25重量%まで、より好ましくは20重量%までの量で使用される。乳化重合は、より好ましくは、0.1重量%〜20重量%、好ましくは1重量%〜15重量%の少なくとも1つのポリエーテル(メタ)アクリレートを使用して実施される。好適なポリエーテル(メタ)アクリレートの例は、前記α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸および/またはジカルボン酸ならびにそれらの酸塩化物、酸アミドおよび酸無水物とポリエテロールとの重縮合生成物である。好適なポリエテロールは、酸化エチレン、酸化1,2−プロピレンおよび/またはエピクロロヒドリンと水または短鎖アルコールRa−OHなどの出発分子との反応によって容易に製造可能である。酸化アルキレンを個々に、あるいは連続して、または混合物として使用することができる。ポリエーテルアクリレートを、本発明に従って採用されるエマルジョンポリマーを製造するために単独または混合物ですることができる。
【0296】
ポリマー分散液PD)は、好ましくは、一般式IまたはII
【化10】

[nは、3〜15、好ましくは4〜12の整数であり、
aは、水素、C1−C20アルキル、C5−C8シクロアルキルまたはC6−C14アリールであり、
bは、水素またはメチルである]の化合物またはそれらの混合物から選択される少なくとも1つのポリ(メタ)アクリレートを共重合された形で含む。
【0297】
好適なポリエーテル(メタ)アクリレートは、例えば、Laporte Performance Chemicals(英国)の商品名Bisomer(登録商標)の様々な製品の形で市販されている。それらは、例えば、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートであるBisomer(登録商標)MPEG 350MAを含む。
【0298】
別の具体的な型において、PD)を製造するためのラジカル乳化重合は、尿素基を含む少なくとも1つのモノマーを使用して実施される。このモノマーは、好ましくは、モノマーM)の全重量に基づいて、25重量%まで、好ましくは20重量%までの量で使用される。特に好ましくは、乳化重合は、0.1重量%〜20重量%まで、より好ましくは1〜15重量%までの少なくとも1つの尿素基含有モノマーを使用して実施される。尿素基を含む好適なモノマーの例は、N−ビニル尿素もしくはN−アリル尿素またはイミダゾリジン−2−オンの誘導体である。それらは、N−ビニルおよびN−アリルイミダゾリジン−2−オン、N−ビニルオキシエチルイミダゾリジン−2−オン、N−(2−(メタ)アクリルアミドエチル)イミダゾリジン−2−オン、N−(2−(メタ)アクリルオキシエチル)イミダゾリジン−2−オン(すなわち、(メタ)アクリル酸2−ウレイド)、N−[2−(メタ)アクリルオキシアセトアミド]エチル]イミダゾリジン−2−オン等を含む。
【0299】
尿素基を含む好適なモノマーは、N−(2−アクリルオキシエチル)イミダゾリジン−2−オンおよびN−(2−メタクリルオキシエチル)イミダゾリジン−2−オンである。N−(2−メタクリルオキシエチル)イミダゾリジン−2−オン(2−ウレイドメタクリレート、UMA)が特に好適である。
【0300】
前記モノマーM)を個々に、1種類のモノマーの混合物の形で、または異なる種類のモノマーの混合物の形で使用することができる。
【0301】
乳化重合には、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸とC1−C20アルカノールとのエステル、ビニル芳香族化合物、ビニルアルコールとC1−C30モノカルボン酸とのエステル、エチレン性不飽和ニトリル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデンおよびそれらの混合物(主モノマー)から選択される少なくとも1つのモノマーM1)をモノマーM)の全質量に対して少なくとも40質量%、より好ましくは少なくとも60質量%、特に少なくとも80質量%使用するのが好適である。好ましくは、モノマーM1)は、モノマーM)の全質量に対して99.9質量%までの量、より好ましくは99.5質量%までの量、特に99質量%までの量で乳化重合に使用される。
【0302】
主モノマーM1)は、好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびそれらの混合物から選択される。
【0303】
少なくとも1つの主モノマーM1)に加えて、PD)を製造するためのラジカル乳化重合では、一般には少量で存在する少なくとも1つのさらなるモノマーM2)(二次モノマー)を使用することも可能である。該乳化重合には、エチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸ならびにエチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物およびモノエステル、エチレン性不飽和スルホン酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸C1−C10ヒドロキシアルキル、C1−C10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドおよびそれらの混合物から選択される少なくとも1つのモノマーM2)をモノマーM)の全質量に対して60質量%まで、より好ましくは40質量%まで、特に20質量%まで使用するのが好適である。好ましくは、モノマーM2)は、存在する場合は、モノマーM)の全質量に対して少なくとも0.01質量%、より好ましくは少なくとも0.05質量%、特に少なくとも0.1質量%、特に少なくとも0.5質量%、特に少なくとも1質量%の量で乳化重合に使用される。
【0304】
乳化重合には、0.1質量%〜60質量%、好ましくは0.5質量%〜40質量%、特に0.1質量%〜20質量%の少なくとも1つのモノマーM2)を使用するのが特に好適である。第1の型におけるモノマーM2)は、酸基を担持し、好ましくは、モノエチレン性不飽和C3−C8モノカルボン酸、モノエチレン性不飽和C4−C8ジカルボン酸、それらの無水物およびモノエステル、モノエチレン性不飽和スルホン酸、それらの無水物およびモノエステル、モノエチレン性不飽和スルホン酸ならびにそれらの混合物から選択される少なくとも1つのモノマーを含む。酸基を担持するモノマーM2の分率は、(存在する場合は)モノマーM)の全質量に対して好ましくは0.05質量%〜15質量%、より好ましくは0.1質量%〜10質量%である。第2の型において、モノマーM2)は、好ましくはモノエチレン性不飽和C3−C8モノカルボン酸のアミド、モノエチレン性不飽和C3−C8モノカルボン酸のヒドロキシ−C2−C4アルキルエステルおよびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの中性のモノエチレン性不飽和モノマーを含む。中性モノマーM2の分率は、(存在する場合は)モノマーM)の全質量に対して好ましくは0.01質量%〜15質量%、より好ましくは0.1質量%〜10質量%である。第3の型において、モノマーM2)は、酸基を担持する少なくとも1つのモノマーと、少なくとも1つの中性モノエチレン性不飽和モノマーとの混合物を含む。これらのモノマーM2)の合計は、モノマーM)の全質量に対して好ましくは0.1質量%〜20質量%、より好ましくは0.5質量%〜15質量%である。モノマーM2)は、特に、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミドおよびそれらの混合物から選択される。
【0305】
本発明の方法のための主モノマーM1)の特に好適な組合せの例は、
アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル;
アクリル酸n−ブチル、スチレン;
アクリル酸n−ブチル、メチルメタクリレート、スチレン;
アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸メチル;
アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、スチレン;
アクリル酸エチルヘキシル、スチレン;
アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸メチル
アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、スチレンである。
【0306】
主モノマーM1)の前記特に好適な組合せを、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびそれらの混合物から選択される特に好適なモノマーM2)と組み合わせることができる。
【0307】
本発明のポリマー分散液の製造において、前記モノマーM)に加えて、少なくとも1つの架橋剤を使用することが可能である。架橋機能を有するモノマーは、分子内に少なくとも2つの重合性エチレン性不飽和非共役二重結合を有する化合物である。架橋は、また、例えば光化学活性により起こり得る。その目的のために、光活性基を含む少なくとも1つのモノマーをさらに使用してPD)を製造することが可能である。光開始剤を個別に添加することもできる。架橋を、例えば、相補的な官能基と化学的架橋反応することが可能な官能基によって達成することができる。その場合、相補的な基をともにエマルジョンポリマーに結合させることができる。架橋には、エマルジョンポリマーの官能基と化学的架橋反応することが可能な架橋剤を使用することが可能である。
【0308】
好適な架橋剤は、例えば、少なくとも二価のアルコールのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アリルエーテルまたはビニルエーテルである。親アルコールのOH基を全面的または部分的にエーテル化またはエステル化することができるが、架橋剤は、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含む。
【0309】
親アルコールの例は、二価アルコール、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ブト−2−エン−1,4−ジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、2,5−ジメチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールモノエステル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシプロピル)フェニル]プロパン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、3−チアペンタン−1,5−ジオール、ならびにそれぞれの場合において200〜10000の分子量を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラヒドロフランである。酸化エチレンまたは酸化プロピレンのホモポリマーの他に、酸化エチレンまたは酸化プロピレンのブロックコポリマー、あるいは酸化エチレンおよび酸化プロピレン基を含むコポリマーを使用することも可能である。3つ以上のOH基を有する親アルコールの例は、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、シアヌル酸、ソルビタン、スクロース、グルコースおよびマンノースなどの糖である。勿論、多価アルコールを、対応するエトキシレートまたはプロポキシレートの形で酸化エチレンまたは酸化プロピレンとの反応後に使用することもできる。第1に、多価アルコールを、エピクロロヒドリンとの反応によって、対応するグリシジルエーテルに変換することもできる。
【0310】
さらなる好適な架橋剤は、ビニルエステル、または一価不飽和アルコールと、エチレン性不飽和C3−C6カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸もしくはフマル酸とのエステルである。当該アルコールの例は、アリルアルコール、1−ブテン−3−オール、5−ヘキセン−1−オール、1−オクテン−3−オール、9−デセン−1−オール、ジシクロペンテニルアルコール、10−ウンデセン−1−オール、シンナミルアルコール、シトロネロール、クロチルアルコールまたはシス−9−オクタデセン−1−オールである。代替的な選択肢は、一価不飽和アルコールを多塩基性カルボン酸、例えば、マロン酸、酒石酸、トリメリット酸、フタル酸、テレフタル酸、クエン酸またはコハク酸でエステル化することである。
【0311】
他の好適な架橋剤は、不飽和カルボン酸と上記多価アルコールとのエステル、例えば、オレイン酸、クロトン酸、桂皮酸または10−ウンデセン酸のエステルである。
【0312】
好適な架橋剤は、また、脂肪族炭化水素の場合は共役であってはならない、少なくとも2つの二重結合を有する直鎖または分枝状、線形または環式脂肪族または芳香族炭化水素、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、4−ビニル−1−シクロヘキセン、トリビニルシクロヘキサン、または200〜20000の分子量を有するポリブタジエンである。
【0313】
さらなる好適な架橋剤は、アクリルアミド、メタクリルアミド、および少なくとも二官能性アミンのN−アリルアミンである。当該アミンは、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,12−ドデカンジアミン、ピペラジン、ジエチレントリアミンまたはイソホロンジアミンである。アリルアミン、およびアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸、または上記種類の少なくとも二塩基性のカルボン酸から形成されたアミドも好適である。
【0314】
また、トリアリルアミンおよびトリアリルモノアルキルアンモニウム塩、例えば、塩化トリアリルメチルアンモニウムまたはメチル硫酸トリアリルメチルアンモニウムが架橋剤として好適である。
【0315】
尿素誘導体、少なくとも二官能性のアミド、シアヌレートまたはウレタン、例えば尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素またはタルタルアミドのN−ビニル化合物、例えば、N,N’−ジビニルエチレン尿素またはN,N’−ジビニルプロピレン尿素も好適である。
【0316】
さらなる好適な架橋剤は、ジビニルジオキサン、テトラアリルシランまたはテトラビニルシランである。
【0317】
前記化合物の混合物も使用できることが理解されるであろう。水溶性架橋剤を使用するのが好ましい。
【0318】
架橋性モノマーには、エチレン性不飽和二重結合とともに、添加された架橋剤と反応することが可能なアルデヒド基、ケト基またはオキシラン基などの反応性官能基を含むものがさらに含まれる。官能基は、好ましくは、ケト基またはアルデヒド基である。ケトまたはアルデヒド基は、好ましくは、ケトまたはアルデヒド基を有する共重合性エチレン性不飽和化合物の共重合を通じてポリマーに結合される。好適な当該化合物は、アクロレイン、メタクロレイン、1〜20個、好ましくは1〜10個の炭素原子をアルキル基に有するビニルアルキルケトン、ホルミルスチレン、好ましくは全部で3〜10個の炭素原子を含むアルキル基に1つまたは2つのケトまたはアルデヒド基あるいは1つのアルデヒド基および1つのケト基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、DE−A−2722097に記載されている(メタ)アクリルオキシアルキルプロパンである。また、例えばUS−A−4226007、DE−A−2061213またはDE−A−2207209から既知の種類のN−オキソアルキル(メタ)アクリルアミドも好適である。(メタ)アクリル酸アセトアセチル、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチル、特にジアセトンアクリルアミドが特に好適である。架橋剤は、好ましくは、ポリマーの官能基、特にケトまたはアルデヒド基と架橋反応することが可能な少なくとも2つの官能基、特に2〜5つの官能基を有する化合物である。ケトまたはアルデヒド基を架橋するための官能基としては、例えば、ヒドラジド、ヒドロキシルアミンまたはオキシムエーテルもしくはアミノ基が挙げられる。ヒドラジド基の好適な化合物は、例えば、モル質量が500g/molまでのポリカルボン酸ヒドラジドである。特に好適なヒドラジド化合物は、好ましくは2〜10個のC原子を有するジカルボン酸ジヒドラジドである。それらの例としては、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドおよび/またはイソフタル酸ジヒドラジドが挙げられる。アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドおよびイソフタル酸ジヒドラジドが特に興味深い。ヒドロキシルアミンまたはオキシムエーテル基を有する好適な化合物は、例えばWO93/25588に示されている。
【0319】
水性ポリマー分散液PD)の適切な添加剤添加によって、さらに表面架橋をもたらすことも可能である。当該添加剤添加は、例えば、光開始剤または乾燥剤の添加を含む。好適な光開始剤は、日光によって励起されるもの、例えばベンゾフェノンまたはその誘導体である。好適な乾燥剤は、例えばCoまたはMnを基礎とする、水性アルキド樹脂に推奨される金属化合物である(概要がU.Poth,Polyester und Alkydharze,Vincentz Network 2005,p.183fに示されている)。
【0320】
架橋成分は、(重合に使用される(架橋剤を含む)モノマーの全質量に対して、好ましくは0.0005質量%〜5質量%、より好ましくは0.001質量%〜2.5質量%、特に0.01質量%〜1.5質量%の量で使用される。1つの特殊な型において、乳化重合は、重合が可能な化合物の全質量に対して、少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%、特に少なくとも99.5質量%、特に100質量%のモノエチレン性不飽和化合物を使用して実施される。
【0321】
1つの具体的な実施形態は、共重合架橋剤を含まないポリマー分散液PD)である。
【0322】
モノマー混合物M)のラジカル重合は、少なくとも1つの調節剤の存在下で起こり得る。調節剤は、重合に使用されるモノマーの全質量に対して、好ましくは0.0005質量%〜5質量%、より好ましくは0.001質量%〜2.5質量%、特に0.01質量%〜1.5質量%の量で使用される。
【0323】
調節剤(重合調節剤)は、大きな移動定数を有する化合物に対する一般的用語である。調節剤は、全体的な反応速度に影響を与えずに、得られるポリマーの重合の程度を低下させるために連鎖移動反応を加速する。1つ以上の連鎖移動反応をもたらすことが可能な分子内の官能基の数に応じて、調節剤を一官能性、二官能性また多官能性調節剤に細分することができる。好適な調節剤は、例えば、K.C.Berger and G.Brandrup in J.Brandrup,E.H.Immergut,Polymer Handbook,3rded.,John Wiley & Sons,New York,1989,p.11/81−11/141に包括的に記載されている。
【0324】
好適な調節剤の例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒドおよびイソブチルアルデヒドなどのアルデヒドが挙げられる。
【0325】
使用することができる他の調節剤は、ギ酸、その塩またはエステル、例えば、ギ酸アンモニウム、2,5−ジフェニル−1−ヘキセン、硫酸ヒドロキシルアンモニウムおよびリン酸ヒドロキシルアンモニウムである。
【0326】
さらなる好適な調節剤は、ハロゲン化合物であり、例は、ハロゲン化アルキル、例えばテトラクロロメタン、クロロホルム、ブロモトリクロロメタン、ブロモホルム、臭化アリル、およびベンジル化合物、例えば塩化ベンジルまたは臭化ベンジルである。
【0327】
さらなる好適な調節剤は、アリル化合物、例えばアリルアルコール、官能化アリルエーテル、例えばアリルエトキシレート、アルキルアリルエーテルまたはグリセロールモノアリルエーテルである。
【0328】
調節剤として、結合した形の硫黄を含む化合物を使用するのが好適である。
【0329】
この種の化合物の例は、無機亜硫酸水素塩、二亜硫酸塩および二亜チオン酸塩または有機硫化物、二硫化物、多硫化物、スルホキシドおよびスルホンである。それらは、硫化ジ−n−ブチル、硫化ジ−n−オクチル、硫化ジフェニル、チオジグリコール、エチルチオエタノール、二硫化ジイソプロピル、二硫化ジ−n−ブチル、二硫化ジ−n−ヘキシル、二硫化ジアセチル、硫化ジエタノール、三硫化ジ−tert−ブチル、ジメチルスルホキシド、硫化ジアルキル、二硫化ジアルキルおよび/または硫化ジアリールを含む。
【0330】
好適な重合調節剤は、さらにチオール(SH基の形で硫黄を有し、メルカプタンとも呼ばれる化合物)を含む。好適な調節剤は、一、二および多官能性メルカプタン、メルカプトアルコールおよび/またはメルカプトカルボン酸である。これらの化合物の例は、チオグリコール酸アリル、チオグリコール酸エチル、システイン、2−メルカプトエタノール、1,3−メルカプトプロパノール、3−メルカプトプロパン−1,2−ジオール、1,4−メルカプトブタノール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオグリセロール、チオ酢酸、チオ尿素およびN−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタンまたはn−ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタンである。
【0331】
2つの硫黄原子を結合した形で含む二官能性調節剤の例は、二官能性チオール、例えば、ジメルカプトプロパンスルホン酸(ナトリウム塩)、ジメルカプトコハク酸、ジメルカプト−1−プロパノール、ジメルカプトエタン、ジメルカプトプロパン、ジメルカプトブタン、ジメルカプトペンタン、ジメルカプトヘキサン、エチレングリコールビスチオグリコレートおよびブタンジオールビスチオグリコレートである。多官能性調節剤の例は、3つ以上の硫黄原子を結合した形で含む化合物である。それらの例は、三官能性および四官能性メルカプタンである。
【0332】
記載の調節剤のすべてを個々に、または互いに組み合わせて使用することができる。1つの具体的な実施形態は、調節剤を加えるラジカル乳化重合によって製造されるポリマー分散液PDに関する。
【0333】
ポリマーを製造するために、遊離ラジカルを形成する開始剤を利用してモノマーを重合することが可能である。
【0334】
ラジカル重合のための開始剤として、その目的に慣例のペルオキソおよび/またはアゾ化合物、例えば、アルカリ金属もしくはアンモニウムペルオキシ二硫酸塩、過酸化ジアセチル、過酸化ジベンゾイル、過酸化スクシニル、過酸化ジ−tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチル、過ピバル酸tert−ブチル、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、過マレイン酸tert−ブチル、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルバメート、過酸化ビス(o−トルオイル)、過酸化ジデカノイル、過酸化ジオクタノイル、過酸化ジラウロイル、ペルイソ酪酸tert−ブチル、過酢酸tert−ブチル、過酸化ジ−tert−アミル、tert−ブチルヒドロペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリドまたは2−2’−アゾ−ビス−(2−メチル−ブチロニトリル)を採用することが可能である。これらの開始剤の混合物も好適である。
【0335】
使用できる開始剤のなかには、還元/酸化(すなわちレドックス)開始剤系がある。レドックス開始剤系は、少なくとも1つの通常は無機の還元剤および1つの有機または無機酸化剤で構成される。酸化成分は、例えば、乳化重合について既に以上に示されている開始剤を含む。還元成分の場合は、当該化合物は、例えば、亜硫酸のアルカリ金属塩、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸のアルカリ金属塩、例えば二亜硫酸ナトリウム、脂肪族アルデヒドおよびケトンの重亜硫酸付加化合物、例えば重亜硫酸アセトン、または還元剤、例えばヒドロキシメタンスルホン酸およびその塩、またはアスコルビン酸を含む。レドックス開始剤系を、その金属成分が複数の価状態で存在することが可能な可溶性金属化合物とともに使用することができる。典型的なレドックス開始剤系は、例えば、アスコルビン酸/硫酸鉄(II)/ペルオキソ二硫酸ナトリウム、tert−ブチルヒドロペルオキシド/二亜硫酸ナトリウム、tert−ブチルヒドロペルオキシド/Naヒドロキシメタンスルフィン酸である。個々の成分、例えば還元成分は、混合物、例えばヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩と二亜硫酸ナトリウムとの混合物であってもよい。
【0336】
開始剤の量は、重合されるモノマーのすべてに対して、一般に0.1質量%〜10質量%、好ましくは0.1質量%〜5質量%である。乳化重合に2つ以上の異なる開始剤を使用することも可能である。
【0337】
ポリマー分散液PD)の製造は、典型的には少なくとも1つの表面活性化合物の存在下で行われる。好適な保護コロイドの包括的な説明は、Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,volume XIV/1,Makromolekulare Stoffe,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,1961,pp.411−420に見いだされる。好適な乳化剤は、また、Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,volume 14/1,Makromolekulare Stoffe,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,1961,pp.192−208に見いだされる。
【0338】
好適な乳化剤は、アニオン性、カチオン性および非イオン性乳化剤である。表面活性物質として、その相対分子量が典型的には保護コロイドのそれを下回る乳化剤を使用するのが好適である。特に、専らアニオン性乳化剤を使用すること、または少なくとも1つのアニオン性乳化剤と少なくとも1つの非イオン性乳化剤との組合せを使用することが適切であることが証明された。
【0339】
有用な非イオン性乳化剤は、芳香脂肪族または脂肪族非イオン性乳化剤、例えば、エトキシ化モノ、ジおよびトリアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4−C10)、長鎖アルコールのエトキシレート(EO度:3〜100、アルキル基:C8−C36)ならびにポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドホモポリマーおよびコポリマーである。これらは、ランダム分布またはブロックの形で共重合された酸化アルキレン単位を含むことができる。例えば、EO/POブロックコポリマーが極めて好適である。長鎖アルカノールのエトキシレート(アルキル基C1−C30、平均エトキシ化度:5〜100)の使用が好ましく、これらのなかでも、直鎖状C12−C20アルキル基を有し、平均エトキシ化度が10〜50のもの、ならびにエトキシ化モノアルキルフェノールであるものが特に好適である。
【0340】
好適なアニオン性乳化剤の例は、硫酸アルキル(アルキル基:C8−C22)、エトキシ化アルカノール(EO度:2〜50、アルキル基:C12−C18)およびエトキシ化アルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4−C9)との硫酸モノエステル、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12−C18)ならびにアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9−C18)のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩である。さらなる好適な乳化剤が、Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,volume XIV/1,Makromolekulare Stoffe,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,1961,pp.192−208に見いだされる。ビス(フェニルスルホン酸)エーテルおよび/またはそれらのアルカリ金属、あるいはC4−C24アルキル基を一方または両方の芳香族環上に担持するアンモニウム塩もアニオン性乳化剤として好適である。これらの化合物は、例えばUS−A−4,269,749〜全般的に既知であり、例えばDowfax(登録商標)2A1(Dow Chemical Company)の形で市販される。
【0341】
好適なカチオン性乳化剤は、好ましくは、ハロゲン化四級アンモニウム、例えば、塩化トリメチルセチルアンモニウム、塩化メチルトリオクチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、またはN−C6−C20アルキルピリジン、−モルホリンもしくは−イミダゾールの四級化合物、例えば塩化N−ラウリルピリジニウムである。
【0342】
乳化剤の量は、重合されるモノマーの量に対して、一般に約0.01質量%〜10質量%、好ましくは0.1質量%〜5質量%である。
【0343】
ポリマー分散液PD)を典型的な助剤および添加剤とさらに混合することができる。これらは、例えば、pH調整剤、還元剤および漂白剤、例えばヒドロキシメタンスルフィン酸のアルカリ金属塩(例えば、BASF AktiengesellschaftのRongalit(登録商標)C)、錯化剤、脱臭剤、香料、芳香剤および粘度調整剤、例えばアルコール、例えば、グリセロール、メタノール、エタノール、tert−ブタノール、グリコール等を含む。これらの助剤および添加剤を供給物の1つで、または重合の終了後に初期充填物のポリマー分散液に添加することができる。
【0344】
重合は、概して、0〜150℃、好ましくは20〜100℃、より好ましくは30〜95℃の範囲の温度で行われる。重合は、好ましくは、雰囲気圧力下で行われるが、重合に使用される成分の自己圧力下などの高圧下での重合も可能である。1つの好適な型において、重合は、例えば窒素またはアルゴンなどの少なくとも1つの不活性ガスの存在下で行われる。
【0345】
重合媒体を水単独、または水とメタノールなどの水溶性液体との混合物で構成することができる。好ましくは、水だけが使用される。乳化重合を、バッチ処理として、または段階的もしくは勾配的手順を含む供給プロセスの形で実施することができる。重合バッチの一部またはポリマーシードが初期充填物として導入され、重合温度に加熱され、重合が開始され、次いで典型的には、その1つ以上が純粋の形もしくは乳化した形でモノマーを含む2つ以上の間隔をおいて配置された供給物によって重合バッチの残りが連続的に、段階的に、または濃度勾配の重畳下で重合域に供給され、重合が維持される供給プロセスが好ましい。
【0346】
「シードポリマー」という用語は、当業者により、水性ポリマー分散液の形の微細ポリマーであると理解される。シードポリマーの質量平均粒径(質量平均d50)は、典型的には200nm未満、往々にして10〜150nmの範囲である。シードポリマーのモノマー組成は、一般にさほど重要でない。適性は、主としてビニル芳香族モノマー、特にスチレン(スチレンシードとして既知である)から合成されるシードポリマーだけでなく、主としてアクリル酸C1−C10アルキルおよび/またはメタクリル酸C1−C10アルキル、例えばアクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルの混合物から合成されるシードポリマーによって保有される。典型的には、シードポリマーの少なくとも80質量%、特に少なくとも90質量%を占めるこれらの主モノマーの他に、シードポリマーは、これらと異なるモノマー、特に水溶性の高いポリマー、例えば、少なくとも1つの酸官能基を有するモノマー、および/または水溶性の高い中性モノマーを共重合された形で含むこともできる。この種のモノマーの分率は、一般に20質量%を超えず、特に10質量%を超えず、当該モノマーが存在する場合は、分率は、シードポリマーの構成モノマーの全量に対して、典型的には0.1質量%〜10質量%の範囲である。
【0347】
ラジカル水性乳化重合の過程で重合容器に開始剤を加える方法は、当業者に既知である。それを重合容器に対する初期充填物にすべて含めることができ、あるいはラジカル水性乳化重合の過程でその消費量に応じて段階的または連続的に採用することができる。それぞれの場合において、これは、本質的に当業者に既知であるように、開始剤系の化学的性質および重合温度に左右されることになる。好ましくは、一部を初期充填物に含み、残りをその消費量に応じて重合域に供給する。
【0348】
重合処理の後に、重合で形成された分散液に物理または化学的な後処理を施すことができる。当該技術の例は、好適な温度での重合開始剤または2つ以上の重合開始剤の添加による後処理;水蒸気またはアンモニア蒸気を用いたポリマー溶液の後処理;不活性ガスを用いたストリッピング;酸化試薬または還元試薬を用いた反応混合物の処理;例えば活性化炭素などの選択媒体への不純物への吸着などの吸着技術;あるいは例えば限外濾過などの残留モノマーを減少させるための既知の技術である。
【0349】
得られた水性ポリマー分散液PD)は、典型的には、ポリマー分散液に対して、20質量%〜70質量%、好ましくは40質量%〜60質量%の固形分を有する。固形分は、添加された高分岐ポリマーを含むと理解される。ポリマー分散液に存在するエマルジョンポリマーのガラス転移温度Tgは、好ましくは−50℃〜80℃、より好ましくは−10℃〜50℃の範囲である。
【0350】
得られた水性ポリマー分散液PD)をそのまま、あるいはペイントまたはワニス混合物などの、水性被覆材料におけるバインダ組成物としてのさらなるポリマー、一般には膜形成ポリマーとの混合物として使用することができる。
【0351】
本発明は、さらに、上記水性ポリマー分散液(PD)を含む、または当該ポリマー分散液(PD)からなるバインダ組成物を提供する。このバインダ組成物は、また、ポリマー分散液(PD)に添加された1つまたは複数の高分岐ポリマーを含む。
【0352】
さらにポリマー分散液PD)に加えて、バインダ組成物は、少なくとも1つのさらなる膜形成ポリマーを含むことができる。それらのなかには、例えばアルキド樹脂が含まれる。好適なアルキド樹脂の例は、好ましくは質量平均分子量が5000〜40000の水溶性アルキド樹脂である。また、質量平均分子量が40000を超え、具体的には100000を超えるアルキド樹脂が好適である。アルキド樹脂は、乾性油または脂肪酸等でエステル化されたポリエステルである(U.Poth,Polyester und Alkydharze,Vincents Newyork 2005)。
【0353】
好適な水溶性アルキド樹脂は、好ましくは30−60mgKOH/gの範囲の十分に高酸価のアルキド樹脂である。これらは、適切であれば、部分的または完全に中和された形であってよい。質量平均分子量は、好ましくは8000〜35000,より好ましくは10000〜35000である。
【0354】
被覆材料のVOC含有量を増加させる当該さらなる膜形成ポリマー、とくにアルキド樹脂の使用は、特定の状況において好適でない。したがって、特別な実施形態は、少なくとも1つの分散液PD)および少なくとも1つの高分岐ポリマーを含むが、ポリマー分散液に存在するエマルジョンポリマー以外の膜形成ポリマーを含まない被覆材料である。
【0355】
本発明のバインダ組成物は、好ましくは、水性被覆材料に採用される。これらの被覆材料は、例えば、無着色系(透明ワニス)または着色系の形をとる。顔料の分率を顔料容積濃度(PVC)で表すことができる。PVCは、バインダ(VB)、顔料および乾燥塗料膜の充填剤の容量で構成される全容量に対する顔料(VP)および充填剤(VF)の容量の比(パーセント)を表す。PVC=(VP+VF)×100/(VP+VF+VB)。被覆材料を、PVCに基づいて、例えば以下のように分類することができる。
高充填内装ペイント、抗洗浄、白色/無光沢 約85
内装ペイント、抗洗浄、白色/無光沢 約80
半光沢ペイント、シルク−無光沢 約35
半光沢ペイント、シルク−光沢 約25
外装石造ペイント、白色 約45−55
透明ワニス 0
【0356】
本発明は、
− 高分岐ポリマーを添加剤として含む、以上に定義されているバインダ組成物、
− 場合により、少なくとも1つの無機充填剤および/または少なくとも1つの無機顔料、
− 場合により、さらなる助剤、および
− 水
を含む水性組成物の形の被覆材料をさらに提供する。
【0357】
第1の好適な型において、本発明の被覆材料は、顔料および充填剤を含まない高度な凍結/融解安定性の透明ワニスを製造するのに好適である。
【0358】
第2の特に好適な型において、本発明の被覆材料は、高度な凍結/融解安定性を有するエマルジョンペイントを製造するのに好適である。
【0359】
− 固形分に対して10質量%〜60質量%の以上に定義されている少なくとも1つのポリマー分散液PD)、
− 10質量%〜70質量%の無機充填剤および/または無機顔料、
− 0.1質量%〜20質量%の典型的な助剤、および
− 全体を100質量%とする量の水
を含む被覆材料が好ましい。
【0360】
上記被覆材料に対する比率としてのPD)の分率は、固形分、すなわち水を含まないエマルジョンポリマーおよび高分岐ポリマーを基礎とする。
【0361】
水性組成物の形の本発明の被覆材料が、好ましくは被覆として採用される。本発明の一実施形態は、透明ワニスの形の被覆材料に関する。本発明の別の実施形態は、エマルジョンペイントの形の被覆材料を含む。本発明の着色被覆材料は、好ましくは、水性半光沢または高光沢ペイントの形をとる。
【0362】
典型的なエマルジョンペイントの組成を以下の文に明示する。エマルジョンペイントは、一般に30質量%〜75質量%、好ましくは40質量%〜65質量%の不揮発性構成成分を含む。これらは、水以外の少なくともバインダ、充填剤、顔料、低揮発性溶媒(沸点が約220℃)、例えば可塑剤、およびポリマー助剤の全質量を占める配合物のすべての構成成分を指す。この数字の内訳は、およその範囲で以下の通りである。
a)3質量%〜90質量%、特に10質量%〜60質量%の微細ポリマー分散液PD、
b)0質量%〜85質量%、好ましくは5質量%〜60質量%、特に10質量%〜50質量%の少なくとも1つの無機顔料、
c)0質量%〜85質量%、特に5質量%〜60質量%の無機充填剤、および
d)0.1質量%〜40質量%、特に0.5質量%〜20質量%の典型的な助剤。
【0363】
「顔料」という用語は、本発明の文脈において、顔料および充填剤、例えば、カラー顔料、白色顔料および無機充填剤を包括的に示すように使用される。これらは、好ましくはルチル形の二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛、三酸化アンチモン、リトポン(硫化亜鉛+硫酸バリウム)などの無機白色顔料、または有色顔料、例えば、酸化鉄、カーボンブラック、グラファイト、亜鉛イエロー、亜鉛グリーン、ウルトラマリン、マンガンブラック、アンチモンブラック、マンガンバイオレット、パリブルーもしくはシュバインフルトグリーンを含む。本発明のエマルジョンペイントは、それらの無機顔料の他に、有機カラー顔料、例えばセピア、ガンボージ、カセルブラウン、トルイジンレッド、パラレッド、ハンサイエロー、インジゴ、アゾ染料、アントラキノノイドおよびインジゴイド染料、ならびにジオキサジン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリノンおよび金属錯体顔料を含むこともできる。光散乱を増強するために空気を含む合成白色顔料、例えばRhopaque(登録商標)分散液も好適である。
【0364】
好適な充填剤は、例えば、アルミノケイ酸塩、例えば長石、ケイ酸塩、例えばカオリン、タルク、マイカ、マグネサイト、アルカリ土類金属炭酸塩、例えばカルサイトもしくはチョ−クなどの形の炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、アルカリ土類金属硫酸塩、例えば硫酸カルシウム、二酸化ケイ素等である。微細充填剤は、当然、被覆材料に好適である。充填剤を個々の成分として使用することができる。しかし、実際には、充填剤混合物、例えば炭酸カルシウム/カオリンおよび炭酸カルシウム/タルクが特に適切であることが証明された。光沢被覆材料は、一般に、非常に微細な充填剤を少量しか含まない。
【0365】
微細充填剤を使用して、隠蔽力を強化すること、および/または白色顔料の使用を節約することもできる。隠蔽力、色調および色の濃さを調整するために、カラー顔料および充填剤のブレンドを使用するのが好適である。
【0366】
顔料の分率を顔料容積濃度(PVC)によって、すなわち、乾燥ペイントの全容量に対する顔料の容量の比によって表すことができる。光沢ペイントは、例えば、12%〜35%、好ましくは15〜30%の範囲のPVCを有する。
【0367】
本発明の被覆材料(水性被覆材料)は、ポリマー分散液PD)に加えて、添加剤としての少なくとも1つの高分岐ポリマー、ならびに適切であればさらなる膜形成ポリマーおよび顔料、さらには助剤を含むことができる。
【0368】
典型的な助剤は、重合に使用される乳化剤に加えて、湿潤剤または分散剤、例えば、ポリリン酸ナトリウム、カリウムもしくはアンモニウム、アクリル酸コポリマーもしくは無水マレイン酸コポリマーのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸ナトリウムなどのポリホスホン酸塩、ならびにナフタレンスルホン酸の塩、特にそれらのナトリウム塩を含む。
【0369】
さらなる好適な助剤は、流動調整剤、消泡剤、殺生剤および増粘剤である。好適な増粘剤は、例えば、ポリウレタン増粘剤などの結合性増粘剤である。増粘剤の量は、被覆材料の固形分に対して、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.6質量%未満である。
【0370】
本発明のペイントは、その目的に慣例の混合装置にて成分をブレンドすることによって既知の方法で製造される。顔料、水および適切であれば助剤から水性ペーストまたは分散液を製造し、次いで単に、ポリマーバインダ、概してポリマーの水性分散液を顔料ペーストまたは顔料分散液と混合するのが適切であることが判明した。
【0371】
本発明のペイントは、一般に30質量%〜75質量%、好ましくは40質量%〜65質量%の不揮発性構成成分を含む。これらは、水でなく、ペイントの固形分に対して全量のバインダ、顔料および助剤である配合物のすべての構成成分を指す。揮発性構成成分は、主として水である。
【0372】
好適なペイントは、高光沢ペイントである。ペイントの光沢度をDIN 67530によって測定することができる。塗料を240μmの溝幅でガラス板に塗布し、室温で72時間乾燥する。試料を較正反射率計に挿入し、光の戻りが反射または散乱された程度を規定の入射角で測定する。反射率計の値を光沢度の測定値とする(その値が大きいほど、光沢度が大きい)。
【0373】
高光沢ペイントの光沢度は、好ましくは、20°で60を超え、60°で80を超える。反射率計の値を23℃で測定し、例えば20°で40などの入射角の関数としての無次元パラメータとして報告する。
【0374】
本発明のペイントを典型的な方法で、例えば、散布、吹付け、浸漬、圧延、ナイフ塗装等によって基板に塗布することができる。
【0375】
それは、好ましくは、構造ペイントとして、すなわち建築物または建築物の部品を塗装するために使用される。当該基板は、レンダー、石膏もしくは石膏ボードなどの無機基板、石造もしくはコンクリート、木材、木製材料、金属もしくは紙、例えば壁紙、またはプラスチック、例えばPVCであってよい。
【0376】
ペイントは、好ましくは、内壁、内扉、羽目板、手すり、家具等の建築物の内装部品に使用される。
【0377】
本発明のペイントは、取り扱いの容易さ、良好な加工特性および高度な隠蔽力を特徴とする。それらの汚染物質含有量は小さい。それらは、高度な防水性、特にアルキドペイントでは良好な湿性接着性、高度な耐ブロッキング性、良好な上塗り性および良好な塗布時流動性などの良好な性能特性を有する。使用される装置は、水で簡単に洗浄される。
【0378】
本発明を、以下の非限定的な実施例を参照しながらより詳細に解説する。
【0379】
実施例
I. 高分岐ポリマーの合成
HBP1:超分岐ポリカーボネート
攪拌機、内部温度計および還流冷却器を備えた6lのフラスコにおいて、1183.0gの炭酸ジエチル(10.00mol)と、トリメチロールプロパンを3個の酸化エチレン単位でエトキシ化することによって予め得られた2700.0gのトリオール(10.00mol)とを、雰囲気圧力にて炭酸カリウム(0.5g)の存在下で窒素で穏やかに導入しながら約130℃の温度にて反応させた。反応の過程で形成されたエタノールが、反応混合物の沸点を4時間にわたって100℃まで低下させた。沸騰温度が一定になると、還流冷却器を、20cmの充填カラム、下降コンデンサおよび受器からなる蒸留装置に取り換え、反応物に形成されたエタノールを連続的に蒸留除去した。約88%のエタノールに対する全変換率に対応する合計約810gのエタノールが除去されると、反応混合物を100℃まで冷却し、pHが7未満になるまで85%の強度のリン酸(0.5g)を添加することによって炭酸カリウムを中和した。該混合物を100℃でさらに1時間撹拌した。続いて、残留モノマーおよびエタノールの残留物を140℃および40ミリバールにて10分間で除去した。その後、生成物を冷却して分析した。
【0380】
OH価は、265mgKOH/gであった。GPC(溶離剤=DMAC、較正=PMMA)によって測定された分子量は、Mn=2100g/molおよびMw=7400g/molであった。
【0381】
HBP2:超分岐ポリカーボネート
攪拌機、内部温度計および還流冷却器を備えた6lのフラスコにおいて、590.7gの炭酸ジエチル(5.00mol)と、トリメチロールプロパンを12個の酸化エチレン単位でエトキシ化することによって予め得られた3350.0gのトリオール(5.00mol)とを、雰囲気圧力にて炭酸カリウム(0.5g)の存在下で窒素で穏やかに導入しながら約140℃の温度にて反応させた。反応の過程で形成されたエタノールが、反応混合物の沸点を4時間にわたって120℃まで低下させた。沸騰温度が一定になると、還流冷却器を、20cmの充填カラム、下降コンデンサおよび受器からなる蒸留装置に取り換え、反応物に形成されたエタノールを連続的に蒸留除去した。約88%のエタノールに対する全変換率に対応する合計約405gのエタノールが除去されると、反応混合物を100℃まで冷却し、pHが7未満になるまで85%の強度のリン酸(0.5g)を添加することによって炭酸カリウムを中和した。該混合物を100℃でさらに1時間撹拌した。続いて、残留モノマーおよびエタノールの残留物を140℃および40ミリバールにて10分間で除去した。その後、生成物を冷却して分析した。
【0382】
OH価は、146mgKOH/gであった。GPC(溶離剤=DMAC、較正=PMMA)によって測定された分子量は、Mn=2700g/molおよびMw=5500g/molであった。ガラス転移温度は、DSCによって、Tg=−56℃であることが判明した。
【0383】
II. ポリマー分散液の製造
分散液1:
アクリル酸、アクリルアミド、アクリル酸n−ブチルおよびメタクリル酸メチルの分散液
初期充填物:32.80gの供給物1
10.92gの供給物2
201.24gの完全脱塩水
0.13gの硫酸銅(II)(0.1%)
3.25gのMaranil A20(登録商標)(20%)(n−(C10−C13−アルキル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、Cognis)
添加物1:7.22gの完全脱塩水
供給物1:248.09gの完全脱塩水
8.67gのDowfax 2A1(登録商標)(45%)(アルキルジフェニルオキシドジスルホネート、Dow)
26.00gのLutensol TO 89(登録商標)(20%)(エトキシ化C13オキソ法アルコール、BASF Aktiengesellschaft)
8.45gのアクリル酸
19.50gのアクリルアミド(水中50%強度)
364.00gのアクリル酸n−ブチル
267.80gのメタクリル酸メチル
供給物2:31.20gのペルオキソ二硫酸ナトリウム(2.5%)
供給物3:3.90gの完全脱塩水
2.6gのアンモニア(25%)
供給物4:5.92gの完全脱塩水
3.90gのtert−ブチルヒドロペルオキシド(10%)
供給物5:9.3gの完全脱塩水
4.96gの重亜硫酸アセトン(13.10%)
供給物6:37.90gの完全脱塩水
供給物7:4.35gのActicid MBS(5%)(殺生剤、Thor−Chemie)
供給物8:11.05gの水酸化ナトリウム水溶液
11.57gの完全脱塩水
【0384】
最初に、計量装置および温度調節器を備えた重合容器に、初期充填物に属する量の完全脱塩水、硫酸銅(II)およびMaranil(登録商標)A20を充填し、この初期充填物を撹拌しながら95℃に加熱した。続いて、初期充填量の供給物1を添加し、混合物を10分にわたって重合した。その後、初期充填量の供給物2を添加し、初期充填物を5分間にわたって部分的に重合した。部分重合に続いて、供給物1および2の残留物を150分間にわたって計量供給し、供給物1の終了後に、それを添加物1で濯いだ。重合を15分間継続させ、その間、反応容器の温度を90℃に調整した。次いで、中和のために供給物3を15分間にわたって計量供給した後、供給物4および5を並行して1時間にわたって計量添加し、その後さらに15分間にわたって撹拌を継続した。続いて、反応バッチを90分間にわたって30℃まで冷却し、それがこの温度に到達した後に供給物6を添加した、最後に、同様に30℃で、供給物7および8を順次添加し、その後、反応バッチを室温まで冷却した。
【0385】
第1表:分析
【表1】

【0386】
III.性能実施例
1.水性ペイントの製造
個々の成分を、歯付き円板攪拌機を使用して撹拌しながら、第2表に示す量(質量部)および順序で計量供給した。分散液D1の添加前に、最初に1000rpmにおける15分間の分散によってペーストを製造し、その後、残留成分を同様に1000rpmで添加した。顔料ペーストが滑らかになるまで、すなわち塊状物がなくなるまで分散を継続した。分散液D1と超分岐ポリマーが予め混合されていた。比較調合物F1は、超分岐ポリマーを含んでいなかった。
【0387】
第2表:ペイント配合
【表2】

【0388】
第3表:結果
【表3】

【0389】
23℃にてスピンドル6で測定したブルックフィールド粘度
ペイント膜を60μmのドクター刃で剥落させた
ゲル斑点率:0(=非常に良好)から6(非常に不良)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの高分岐ポリマーを添加して少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーM)のラジカル乳化重合によって、凍結/融解安定性が向上した水性ポリマー分散液PD)を製造する方法。
【請求項2】
高分岐ポリマーとして、添加剤としての少なくとも1つの超分岐ポリマーが使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
超分岐ポリマーが、10%〜95%、好ましくは25%〜90%、より好ましくは30%〜80%の分岐度DBを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
高分岐ポリマーが、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミン、ポリアミド、ポリ(尿素ウレタン)、ポリ(エーテルアミン)、ポリ(エステルアミン)、ポリ(エーテルアミド)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(アミドアミン)、ポリ(エステルカーボネート)、ポリ(エーテルカーボネート)、ポリ(エーテルエステル)、ポリ(エーテルエステルカーボネート)およびそれらの混合物から選択される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記高分岐ポリマーとして、超分岐ポリカーボネート、ポリ(エーテルカーボネート)、ポリ(エステルカーボネート)もしくはポリ(エーテルエステルカーボネート)、または少なくとも1つの超分岐ポリカーボネート、ポリ(エーテルカーボネート)、ポリ(エステルカーボネート)もしくはポリ(エーテルエステルカーボネート)を含む超分岐ポリマーの混合物が使用される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
モノマーM)が、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸とC1−C20アルカノールとのエステル、ビニル芳香族化合物、ビニルアルコールとC1−C30モノカルボン酸とのエステル、エチレン性不飽和ニトリル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、モノエチレン性不飽和カルボン酸およびスルホン酸、リン含有モノマー、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸とC2−C30アルカンジオールとのエステル、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸と、一級もしくは二級アミノ基を含むC2−C30アミノアルコールとのアミド、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸ならびにそれらのN−アルキルおよびN,N−ジアルキル誘導体の一級アミド、N−ビニルラクタム、開鎖N−ビニルアミド化合物、アリルアルコールとC1−C30モノカルボン酸とのエステル、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸とアミノアルコールとのエステル、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸と、少なくとも1つの一級もしくは二級アミノ基を含むジアミンとのアミド、N,N−ジアルキルアミン、N,N−ジアリル−N−アルキルアミン、ビニルおよびアリル置換窒素複素環、ビニルエーテル、C2−C8モノオレフィン、少なくとも2つの共役二重結合を有する非芳香族炭化水素、ポリエーテル(メタ)アクリレート、尿素基を含むモノマー、ならびにそれらの混合物から選択される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
乳化重合のために、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸とC1−C20アルカノールとのエステル、ビニル芳香族化合物、ビニルアルコールとC1−C30モノカルボン酸とのエステル、エチレン性不飽和ニトリル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデンおよびそれらの混合物から選択される少なくとも1つのモノマーM1)が少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも60質量%、より好ましくは少なくとも80質量%使用される、請求項1から6までのいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
乳化重合のために、さらに、エチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸ならびにエチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物およびモノエステル、(メタ)アクリルアミド、C1−C10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、C1−C10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドならびにそれらの混合物から選択される少なくとも1つのモノマーM2)が60質量%まで、好ましくは40質量%まで、より好ましくは20質量%まで使用される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
高分岐ポリマーの添加が、乳化重合の後に行われる、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれかに定義されている方法によって得られる水性ポリマー分散液PD)。
【請求項11】
請求項1から9までのいずれかに定義されている方法によって得られる水性ポリマー分散液PD)、少なくとも1つの高分岐ポリマー、および場合によって少なくとも1つのさらなる膜形成ポリマーを含む、バインダ組成物。
【請求項12】
− 請求項11に定義されているバインダ組成物、
− 場合によって少なくとも1つの無機充填剤および/または少なくとも1つの無機顔料、
− 場合によってさらなる助剤、および
− 水
を含む水性組成物の形の被覆材料。
【請求項13】
ペイントの形の請求項12に記載の被覆材料。
【請求項14】
透明ワニスの形の請求項13に記載のペイント。
【請求項15】
分散液ペイントの形の請求項13に記載のペイント。
【請求項16】
少なくとも1つの高分岐ポリマーを添加することによって、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーM)のラジカル乳化重合により得られる水性ポリマー分散液PD)の凍結/融解安定性を向上させる方法。
【請求項17】
請求項1から5までのいずれか一項に定義されている少なくとも1つの高分岐ポリマーを、水性ポリマー分散液のための添加剤として、凍結/融解安定性を向上させるために用いる使用。
【請求項18】
請求項6から8までのいずれか一項に定義されている、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーM)を基礎とするエマルジョンポリマーを含む生成物のための添加剤としての少なくとも1つの高分岐ポリマーを、生成物の凍結/融解安定性を向上させるために用いる使用。
【請求項19】
ペイントのための添加剤、特に透明ワニスまたは分散液ペイントのための添加剤としての請求項18に記載の使用。
【請求項20】
請求項1から5までのいずれかに定義されている高分岐ポリマーを添加剤として含む水性ポリマー分散液PD)を、ペイントにおける成分として用いる使用。

【公表番号】特表2011−503336(P2011−503336A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534467(P2010−534467)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065860
【国際公開番号】WO2009/065867
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】