説明

凍霜害防止装置

【課題】温度分布が複雑となる地形を有する圃場においても、実際の圃場の状況に即して的確に圃場全体の凍霜害を防止することができるとともに、農作物への散水に関わる水の使用量の節約性を向上することができる凍霜害防止装置を提供する。
【解決手段】温度センサ4により検出される温度情報に基づき、水源5から散水器2への給水経路6の開閉を行う電磁バルブ3(開閉手段)の開閉を制御することにより、散水及びその休止を行う凍霜害防止装置1において、複数の温度センサ4・4・・により検出される温度情報を比較して最低温度情報を判定する最低温度判定回路11と、散水時間と休止時間との組合せからなる複数の散水パターンが予め記憶される記憶手段13を有し最低温度判定回路11から入力される前記最低温度情報に対応する散水パターンを選出しこの選出した散水パターンに基づいて電磁バルブ3の開閉を制御する散水制御回路12とを具備する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物の表面に散水することにより、水の凝固潜熱を利用して凍霜害を防止する凍霜害防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農業における凍霜害による農作物への影響は、特に茶や果樹においてその被害が甚大となる。このような農作物の凍霜害を防止する方法の一つとして、農作物の表面に散水し、この散水された水が凝固する際に発生する潜熱を利用して農作物の表面の温度を0℃付近に保持することによって凍霜害を防止するという散水氷結法がある。
【0003】
このような散水氷結法に関し、人が圃場へ出向く必要をなくすとともに、散水する水の量を節約すべく、農作物への散水の開始及び停止を自動的に行う凍霜害防止装置が特許文献1に開示されている。本文献に示されている凍霜害防止装置においては、圃場周辺の温度が下がり、圃場の温度を検出する温度センサの出力が予め設定された散水開始温度と一致した場合には散水を開始させ、やがて温度が上昇して温度センサの出力が予め設定された散水停止温度と一致した場合に散水を停止させることにより、農作物への散水の開始及び停止を自動的に行うこととしている。
【特許文献1】特開2002−125482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
確かに、前記従来の凍霜害防止装置においては、農作物への散水の開始及び停止を自動的に行うことにより、人が圃場へ出向く必要をなくすとともに、散水する水の量を節約することができる点で有用であるが、次に示すような不具合が生じるおそれがあり、改善の余地がある。
【0005】
すなわち、前記従来の凍霜害防止装置は、散水の開始及び停止それぞれについて予め設定される温度に対しての、農作物の表面付近の温度を測定するため圃場に設置される温度センサにより検出される温度の変化により、散水の開始及び停止を制御するものであるため、その制御が温度センサにより検出される温度に対して一元的なものとなる。このため、温度センサが設置されている付近が散水を開始する温度とならない限り散水が開始されることがないので、温度分布が複雑な地形の場合、効果的に凍霜害を防止することが困難となる。つまり、圃場の地形が複雑でその温度分布も複雑となる場合、圃場における霜の降り具合にムラが生じることがあり、温度センサが設置されている付近のみの温度の変化により散水の開始及び停止を制御することとすると、実際の圃場の状況に即して的確に圃場全体の凍霜害の防止を図ることが難しい。
【0006】
また、散水の停止に関し、その制御を温度センサにより検出される温度の変化によるものとすると、温度センサにより検出される温度が設定温度に達しないと散水が停止されることがないので、凍霜害を防ぐためには十分な量の水が散水されているにも関わらず散水が続けられ、必要量以上の水が散水されるということも考えられる。これは散水する水の量を節約するという観点から好ましくない。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、温度分布が複雑となる地形を有する圃場においても、実際の圃場の状況に即して的確に圃場全体の凍霜害を防止することができるとともに、農作物への散水に関わる水の使用量の節約性を向上することができる凍霜害防止装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、温度センサにより検出される温度情報に基づき、散水する水を貯溜する水源から散水を行う散水器への給水経路の開閉を行う開閉手段の開閉を制御することにより、散水及びその休止を行う凍霜害防止装置において、複数の温度センサにより検出される温度情報を比較して最低温度情報を判定する最低温度判定回路と、散水時間と休止時間との組合せからなる複数の散水パターンが予め記憶される記憶手段を有し前記最低温度判定回路から入力される前記最低温度情報に対応する散水パターンを選出しこの選出した散水パターンに基づいて前記開閉手段の開閉を制御する散水制御回路とを具備する構成としたものである。
【0010】
請求項2においては、前記最低温度判定回路から前記散水制御回路への前記最低温度情報の入力は、少なくとも、前記散水パターンにより定まる散水開始から散水停止までの時間よりも長い時間を隔てて行われるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、複数の温度センサにより検出される温度情報から判定される最低温度情報に基づいて散水が行われるので、複数の温度センサを圃場に適切に点在させて設置することにより、温度分布が複雑となる地形を有する圃場においても、実際の圃場の状況に即して的確に圃場全体の凍霜害を防止することができる。
また、最低温度情報に対応する複数の散水パターンを用いることにより、降霜温度条件に合わせた段階的な散水を行うことが可能となるとともに、各散水パターンにおける設定により温度条件に応じて的確な散水を行うことが可能となる。
【0013】
請求項2においては、いずれかの散水パターンに基づいて開始された散水が、その散水パターンにおいて予め設定された散水開始から散水停止までの時間が経過すると確実に終了することとなる。これにより、温度センサによって検出される温度情報に関係なく、予め設定される散水パターンによって散水の停止が行われるので、不必要な量の水を散水することを防止することができ、農作物への散水に関わる水の使用量の節約性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1を用いて、本発明の凍霜害防止装置1を用いた凍霜害防止構成について説明する。本発明に係る凍霜害防止構成においては、茶や果樹などの農作物が栽培される圃場に設置されるスプリンクラ等の散水器2により、農作物の表面に散水し、この散水された水が凝固する際に発生する潜熱を利用して農作物の表面の温度を0℃付近に保持することによって凍霜害を防止するという散水氷結法による凍霜害防止が行われる。
【0015】
本発明の凍霜害防止装置1は、前述のような散水氷結法による凍霜害防止を行う上で、圃場の温度に基づいて前記散水器2による散水及びその休止を制御するものである。この凍霜害防止装置1による散水及びその休止は、散水器2への給水経路の開閉を行う開閉手段としての電磁バルブ3の開閉が制御されることにより行われ、この電磁バルブ3の開閉が圃場の温度に基づいて制御される。すなわち、凍霜害防止装置1は、温度センサ4により検出される温度情報に基づき、散水する水を貯溜する水源5から散水を行う散水器2への給水経路6の開閉を行う開閉手段としての電磁バルブ3の開閉を制御することにより、散水及びその休止を行う。
【0016】
凍霜害防止装置1には、前記電磁バルブ3が接続されるとともに複数の温度センサ4・4・・・が接続される。複数の温度センサ4・4・・・は、散水器2により散水され凍霜害が防止される圃場に点在して設置される。ここで、各温度センサ4は、圃場において農作物の表面付近の温度を測定するのに適切に設けられ、使用環境が野外であることに鑑み故障に備えて適宜複数系統用意されるのが望ましい。また、温度センサ4としては、サーミスタや熱電対や測温抵抗体、また、赤外線を測定することで温度を測定するサーモパイル等が用いられる。
【0017】
また、前記散水器2は、散水される水が貯溜される水源5と給水経路6を介して接続されており、この給水経路6の中途部に、該給水経路6の開閉を行う開閉手段としての電磁バルブ3が設けられる。なお、給水経路6に設けられる開閉手段としては電磁バルブ3に限られるものではなく、凍霜害防止装置1から出力される制御信号に基づく指示に従って給水経路6の開閉を行うことができる構成のものであればよい。
【0018】
凍霜害防止装置1には、複数の温度センサ4・4・・・により検出される温度情報を比較して最低温度情報を判定する最低温度判定回路11と、後述する複数の散水パターンが予め記憶される記憶手段13を有しこの散水パターンに基づいて電磁バルブ3の開閉を制御する散水制御回路12とが具備されている。つまり、凍霜害防止装置1に接続される複数の温度センサ4・4・・・により検出される信号は、温度情報として最低温度判定回路11に入力され、散水制御回路12からの制御信号は、凍霜害防止装置1に接続される電磁バルブ3へ送られる。
【0019】
最低温度判定回路11は、各温度センサ4から送られてくる温度情報としての検出信号のうち、最も低い温度を示す検出信号についての温度情報を最低温度情報として判定し、この最低温度情報を散水制御回路12へと出力する。
【0020】
散水制御回路12は、最低温度判定回路11から入力される最低温度情報に対応する散水パターンを選出し、この選出した散水パターンに基づいて電磁バルブ3の開閉を制御する。つまり、この散水制御回路12の記憶手段13には、最低温度判定回路11から入力される最低温度情報に対応する複数の散水パターンが予め設定され記憶されており、これら複数の散水パターンのうち最低温度情報に対応する散水パターンを判断して選出し、この選出した散水パターンに基づいて電磁バルブ3の開閉を制御する。
【0021】
次に、散水パターンについて説明する。散水パターンは、前述の如く、最低温度判定回路11により判定される最低情報情報に対応して複数存在し、散水制御回路12の記憶手段13に予め設定され記憶される。散水パターンは、散水器2からの間欠的または連続的な散水を行うためのものであり、散水を行う散水時間と散水の休止を行う休止時間との組合せからなる。つまり、散水パターンにおける散水時間においては、散水制御回路12から電磁バルブ3へ該電磁バルブ3を開くための制御信号が送られ、散水制御回路12から電磁バルブ3への散水指示が行われる。また、散水パターンにおける休止時間においては、散水制御回路12から電磁バルブ3へ該電磁バルブ3を閉じるための制御信号が送られ、散水制御回路12から電磁バルブ3への休止指示が行われる。
【0022】
各散水パターンについては、最低温度判定回路11から入力される最低温度情報の対応する所定の温度範囲が予め定められており、この所定の温度範囲内に該当する最低温度情報が散水制御回路12に入力されることにより、該所定の温度範囲に対応する散水パターンが散水制御回路12において選出される。散水パターンとしては、例えば、図2及び図3に示す如くとなる。すなわち、最低温度判定回路11により判定される最低温度情報について、圃場に霜が降る可能性のある温度条件(以下、「降霜温度条件」)における高温側の温度範囲をT1〜T2(℃)とし、この温度範囲に対応する散水パターンをパターンAとする。このパターンAにおいては、その散水時間がSa1(秒)と、休止時間がSa2(秒)とそれぞれ設定されるとともに、これらが繰り返される回数がNa(回)と設定される。そして、降霜温度条件における前記温度範囲T1〜T2(℃)よりも低温側の温度範囲であるT2〜T3(℃)に対応する散水パターンとして、その散水時間がSb1(秒)と、休止時間がSb2(秒)と設定されるとともに、これらが繰り返される回数がNb(回)と設定されるパターンBが存在する。また、同様にして、降霜温度条件における前記温度範囲T2〜T3(℃)よりも低温側の温度範囲であるT3〜T4(℃)に対応する散水パターンとして、その散水時間がSc1(秒)と、休止時間がSc2(秒)と設定されるとともに、これらが繰り返される回数がNc(回)と設定されるパターンCが存在する。
【0023】
このような設定の下においては、複数の温度センサ4・4・・・により検出される温度情報から最低温度判定回路11により判定される最低温度情報が、前記T1(℃)よりも低い状態(前記T4(℃)まで)においては、凍霜害防止装置1により、前記パターンA、B及びCいずれかの散水パターンに基づいて電磁バルブ3の開閉が制御され、間欠的な散水が行われることとなる。つまり、いずれかの散水パターンに基づいて一旦開始された散水は、その散水パターンにおいて散水時間及び休止時間の繰り返しが予め設定された回数行われると散水が終了される。以下、いずれかの散水パターンに基づいた散水が開始されることを「散水開始」といい、その散水パターンに基づいた散水が終了されることを「散水停止」という。
【0024】
また、前記各パターンA、B及びCにおける繰り返し回数Na、Nb及びNcは、各散水パターンにおける散水時間と休止時間との合計時間が同一であれば、その繰り返し回数を同一回数とすることにより、各散水パターンにおける散水開始から散水停止までの時間を同一時間とすることができる。また、対応する最低温度情報が低温側になるに従い散水時間と休止時間との繰り返し回数を増加させることにより、散水開始から散水停止までの時間が長くなり、各散水パターンにおける散水時間の合計時間を長くすることができる。
【0025】
このように設定される散水パターンとしてのパターンA、B及びCは、対応する最低温度情報の温度範囲が低温側となる散水パターンとなるに従い、散水開始から散水停止までの間における散水時間の合計時間が長くなるようにそれぞれ設定される。ここで、散水開始から散水停止までの間における散水時間の合計時間を長くするために次のような設定がなされる。すなわち、各散水パターンにおける散水開始から散水停止までの時間を一定とした場合、各散水パターンにおいて交互に繰り返される散水時間と休止時間との時間の長さ関係について、休止時間に対して散水時間を長く設定することで、散水開始から散水停止までの時間に対する散水時間の比率を高く設定することにより、散水開始から散水停止までの間における散水時間の合計時間を長くする。また、散水パターンにおける散水開始から散水停止までの時間を長く設定する(散水時間及び休止時間の繰り返し回数を多く設定する)ことによっても、散水パターンにおける散水時間の合計時間を長くすることができきる。また、これらの設定の組合せでもよく、この場合、散水パターンにおける散水時間の長さを休止時間に対して長く設定するとともに、散水開始から散水停止までの時間を長く設定する(散水時間及び休止時間の繰り返し回数を多く設定する)。
ここで、各散水パターンにおける散水開始から散水停止までの時間(散水時間と休止時間との繰り返し回数)は、その対応する最低温度情報に応じて、散水氷結方による凍霜害防止効果が得られる長さ(好ましくは、凍霜害防止効果が得られる最低限の長さ)にそれぞれ設定される。
【0026】
本実施例においては、図3に示すように、最低温度情報が降霜温度条件における高温側の温度範囲T1〜T2(℃)となる場合に対応するパターンAについては、休止時間Sa2(秒)に比して散水時間Sa1(秒)の長さが短く、これら散水時間Sa1(秒)及び休止時間Sa2(秒)がNa回に亘って繰り返される(図3(a)参照)。また、パターンAに対応する最低温度情報の温度範囲T1〜T2(℃)よりも低温側となる温度範囲T2〜T3(℃)に対応するパターンBについては、散水時間Sb1(秒)と休止時間Sb2(秒)との長さが略同一であり、これら散水時間Sb1(秒)及び休止時間Sb2(秒)がNb回に亘って繰り返される(同図(b)参照)。また、パターンBに対応する最低温度情報の温度範囲T2〜T3(℃)よりも低温側となる温度範囲T3〜T4(℃)に対応するパターンCについては、休止時間Sc2(秒)に比して散水時間Sc1(秒)の長さが長く、これら散水時間Sc1(秒)及び休止時間Sc2(秒)がNc回に亘って繰り返される(同図(c)参照)。
【0027】
このように、各散水パターンは、対応する最低温度情報の温度範囲が低温側となる散水パターンとなるに従い、散水開始から散水停止までの間における散水時間の合計時間が長くなるようにそれぞれ設定される。なお、本実施例においては、散水パターンとしてパターンA、B及びCの3パターンを用いているが、これに限定されず、2パターンあるいは4パターン以上の散水パターンを用いてもよい。また、各散水パターンにおける散水時間と休止時間との時間の長さ関係やこれらの繰り返し回数についても、本実施例に限定されず、例えば、一つの散水パターンにおける散水時間及び休止時間の長さを時間の経過とともに徐々に短くまたは長くしていったりすることとしてもよい。さらに、散水パターンにおける休止時間を0(秒)と設定することにより、連続的な散水を行うこともできる。
【0028】
このようにして設定される散水パターンに基づいた、凍霜害防止装置1の動作について説明する。圃場に点在して設置される複数の温度センサ4・4・・・により検出される温度情報が、凍霜害防止装置1における最低温度判定回路11に入力される。最低温度判定回路11においては、複数の温度センサ4・4・・・から送られてくる温度情報から、最低温度に対応する最低温度情報が判定される。ここで判定された最低温度情報が、散水制御回路12に送られる。最低温度情報が入力された散水制御回路12においては、その最低温度情報が予め設定され記憶されているいずれかの散水パターンに対応する温度範囲内に該当すれば、この温度範囲に対応する散水パターンが選出される。つまり、本実施例においては、最低温度情報がT1〜T4(℃)までの範囲にある場合に、パターンA、B及びCいずれかの散水パターンが選出されることとなる。そして、ここで選出された散水パターンに基づいて、散水制御回路12から電磁バルブ3へ制御信号が出力され、該電磁バルブ3の開閉が制御されて散水器2からの散水及び休止が行われる。
【0029】
このように、本発明の凍霜害防止装置1は、複数の温度センサ4・4・・・により検出される温度情報から判定される最低温度情報に基づいて散水が行われるので、複数の温度センサ4・4・・・を圃場に適切に点在させて設置することにより、温度分布が複雑となる地形を有する圃場においても、実際の圃場の状況に即して的確に圃場全体の凍霜害を防止することができる。つまり、圃場の地形が複雑でその温度分布も複雑となる場合、圃場における霜の降り具合にムラが生じることがあるが、その温度分布に応じて温度センサ4・4・・・を点在させて設置することにより、圃場におけるいずれかの場所で降霜温度条件となる温度情報が検出されれば散水が行われることとなるので、複雑な地形の圃場においても圃場全体の凍霜害を的確に防止することができる。
【0030】
また、最低温度情報に対応する複数の散水パターンを用いることにより、降霜温度条件に合わせた段階的な散水を行うことが可能となるとともに、各散水パターンにおける設定により温度条件に応じて的確な散水を行うことが可能となる。
【0031】
また、前述したような凍霜害防止装置1の動作について、最低温度判定回路11から散水制御回路12への最低温度情報の入力は、少なくとも、各散水パターンにより定まる散水開始から散水停止までの時間よりも長い時間を隔てて行われる。つまり、最低温度情報が、最低温度判定回路11から散水制御回路12に一旦入力されてから、所定の時間が経過するまでは、最低温度情報が再度入力されないこととする。そして、この所定の時間が、少なくとも、各散水パターンにより設定される散水開始から散水停止までの時間よりも長い時間となるように設定される。
【0032】
ここで、複数の散水パターンによる散水開始から散水停止までの時間が異なる場合は、これらのうち最も長い時間よりも長くなるように前記所定の時間が設定される。また、この最低温度情報が一旦入力されてから再度入力されるまでの所定の時間は、いずれかの散水パターンに基づいて散水が行われた後、その散水による凍霜害防止効果が失われる前に再び散水されるように、最低温度判定回路11または散水制御回路12のいずれかにおいて予め設定される。
【0033】
このように、最低温度判定回路11から散水制御回路12への最低温度情報の入力について、前述の如く設定される所定の時間を隔てて行うことにより、入力された最低温度情報に対応していずれかの散水パターンに基づいて一旦開始された散水が、その散水パターンにおいて予め設定された回数の散水時間及び休止時間の繰り返しが行われ散水が終了するまで行われることとなる。言い換えると、いずれかの散水パターンに基づいて散水が開始されると、その散水パターンに基づいた散水が終了するまでは、同一のまたは他の散水パターンに基づいた散水が開始されないこととなる。
【0034】
すなわち、いずれかの散水パターンに基づいて開始された散水が、その散水パターンにおいて予め設定された散水開始から散水停止までの時間が経過すると確実に終了することとなる。これにより、温度センサ4・4・・・によって検出される温度情報に関係なく、予め設定される散水パターンによって散水の停止が行われるので、不必要な量の水を散水することを防止することができる。つまり、温度センサによって検出される温度情報に基づいて散水を停止させることとした場合、温度センサにより検出される温度が設定温度に達しないと散水が停止されることがないので、凍霜害を防ぐためには十分な量の水が散水されているにも関わらず散水が続けられるという不具合が考えられるが、予め設定される散水パターンによって散水が停止されることから、前記のような不具合を解消することができ、必要量以上の水が散水されるということがなくなるので、農作物への散水に関わる水の使用量の節約性を向上することができる。
【0035】
また、本発明の凍霜害防止装置1においては、次のような構成とすることもできる。
すなわち、図1に示すように、散水制御回路12に切換スイッチ等の散水パターン切換手段14を接続し、手動で散水パターンを切り換えられるような構成とすることもできる。つまり、予め用意した散水パターンにより散水を行ったとしても、現実にそぐわない場合も考えられるが、手動で散水パターンを切り換えられる構成とすることにより、オペレーターが最も適当な散水パターンを選択して、季節や圃場の状況や地形等に応じて切り換えられるようにするのである。
【0036】
また、散水制御回路12に散水パターン設定手段(入力手段)15を接続し、任意の散水パターンを成形して設定(入力)することが可能な構成とすることもできる。つまり、前述したように、予め設定される散水パターンだけでは、その土地に合った散水ができないことも考えられるが、その土地に合わせた任意の散水パターンを成形することができるような構成とすることにより、オペレーターが任意の散水パターンを成形して、確実に凍霜害を防止することができるようにするのである。
【0037】
さらに、本発明の凍霜害防止装置1を用いた凍霜害防止構成においては、水源5と散水器2とを接続する給水経路6を分岐させることで、圃場における地形の異なる位置に前記散水器2とは別の散水器22を配置する構成とすることもできる。この場合、電磁バルブ3よりも上流側から分岐経路6aを分岐させ、該分岐経路6aを介して水源5と散水器22とを接続させる構成とすることが好ましい。そして、分岐経路6aを介して水源5と散水器22とを接続させるとともに、分岐経路6aの中途部に、該分岐経路6aの開閉を行う開閉手段としての電磁バルブ23を設ける。つまり、散水器2への給水経路6を開閉する電磁バルブ3とは別に、凍霜害防止装置1に接続される電磁バルブ23を水源5と散水器22との間に設けることにより、散水器2に対する電磁バルブ3と、散水器22に対する電磁バルブ23とのそれぞれの開閉を、散水制御回路12からの異なる散水パターンに基づいて制御する構成とするのである。なお、同様な構成を用いることにより、2以上の散水器を配置することができる。
このような構成を採用することにより、圃場において異なる位置に配置される複数の散水器から、その地形に合った最適の散水パターンに基づいた散水を行うことが可能となるため、より圃場の状況に即した散水を行うことができ、より的確に凍霜害を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の凍霜害防止装置を含む凍霜害防止構成を示す図。
【図2】散水パターンの例を示す表。
【図3】各散水パターンにおける散水動作を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0039】
1 凍霜害防止装置
2 散水器
3 電磁バルブ
4 温度センサ
5 水源
6 給水経路
11 最低温度判定回路
12 散水制御回路
13 記憶手段
14 散水パターン切換手段
15 散水パターン設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサにより検出される温度情報に基づき、散水する水を貯溜する水源から散水を行う散水器への給水経路の開閉を行う開閉手段の開閉を制御することにより、散水及びその休止を行う凍霜害防止装置において、
複数の温度センサにより検出される温度情報を比較して最低温度情報を判定する最低温度判定回路と、散水時間と休止時間との組合せからなる複数の散水パターンが予め記憶される記憶手段を有し前記最低温度判定回路から入力される前記最低温度情報に対応する散水パターンを選出しこの選出した散水パターンに基づいて前記開閉手段の開閉を制御する散水制御回路とを具備する構成としたことを特徴とする凍霜害防止装置。
【請求項2】
前記最低温度判定回路から前記散水制御回路への前記最低温度情報の入力は、少なくとも、前記散水パターンにより定まる散水開始から散水停止までの時間よりも長い時間を隔てて行われることを特徴とする請求項1記載の凍霜害防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−238767(P2006−238767A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58008(P2005−58008)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000006851)ヤンマー農機株式会社 (132)
【出願人】(593043347)共立金属工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】